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宇宙空間で有効な骨格筋維持装置開発の研究

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宇宙空間で有効な骨格筋維持装置開発の研究
1.題名
第 8 回(平成 17 年度)選定 宇宙環境利用に関する公募地上研究 研究成果報告書(概要版)
2.研究期間
平成 17 年度〜19 年度
3.研究分野
生命科学系
4.研究区分
次期宇宙利用研究
5.研究テーマ名
宇宙空間で有効な骨格筋維持装置開発の研究
6.研究者名
志波直人*,田川善彦**,梅津祐一*,副島崇*
7.所属機関
*
久留米大学医学部,**九州工業大学工学部
8.研究成果概要
【背景】微小重力下では筋骨格系への力学的な負荷が著しく減少し,筋骨格系は萎縮する.しかしなが
ら,有効な予防法は無く,今後の有人宇宙開発の発展のために,筋骨格系廃用予防は重要な課題と
される.この課題の克服には無重力環境では,重力に代わる運動抵抗をいかに有効に作製するかが
重要と考察した.リハビリテーション分野で用いる骨格筋電気刺激の応用で,目的の筋に電気刺激を
与えていたのとは逆転の発想で,拮抗筋の電気刺激で得られる筋収縮を主動作筋の運動抵抗とする
新しい方法を開発した.電気刺激と自発筋収縮の混合運動であり,ハイブリッド訓練法(図1)とした.
本法は,外部抵抗に代わり自身の拮抗筋力を運動抵抗とし,無重力空間で重力に代わる運動抵抗
を自身の身体内で発生させる.主動筋は求心性,拮抗筋は電気刺激による遠心性収縮と同時に収縮
し,骨には長軸方向に荷重が加わる.機器は簡便で大がかりなトレーニング装置は不要である.既存
の骨格筋電気刺激法は使用者の意思とは無関係に電気刺激されるのに対し,ハイブリッド訓練法では
使用者の意思で関節運動したときのみ,拮抗筋に電気刺激を与えて運動抵抗を作製する.
【目的】1) 宇宙空間で有効な骨格筋維持装置の開発と作製.2) 筋力増強筋肥大効果の科学的検証.
3) 骨への影響を検証.4) 臨床での効果検証と実用化.以上が研究の目的である.
【実施した研究内容と結果概要】1) 宇宙飛行士用機器開発.インテリジエントスーツ開発,刺激電極の
改良,衛生面の検討,刺激装置の改良・開発及びバーチャルリアリティー機器の開発を行った.2)上
肢,下肢,及び体幹における実験で,筋力増強効果,手指巧緻動作に与える影響,歩行に与える影響
及び全身に与える影響を検証.適切な刺激強度を設定し安全に筋力維持増強効果があった.3)筋力
増強,肥大の機序のための筋生検を行い,現在検証中である.平成 19 年度,宇宙空間での使用を前
提とした上下肢用インテリジエントスーツを作製(図2).4)航空機による無重力実験,パラボリックフラ
イトを実施した.無重力環境においても機器は作動し,ハイブリッド訓練が可能であった.本装置は宇
宙環境において有用と可能と考えられた.
【今後の展望と展開】リハビリテーション医学の技術応用であるハイブリッド法によって、宇宙空間,臨
床の両方の筋骨格系の廃用性萎縮は効率的に予防することができると考えられる。宇宙飛行士用の
装置の開発は,臨床実験においても同時に実施することができ、そして、宇宙の研究の成果から,臨
床分野へのスピンオフが同時に可能である。今後もさらに安全で効率的なハイブリッド訓練機器の開
発を目指して研究を進めたい.
図1
図2
図1:ハイブリッド訓練法(特許取得).関節が屈曲運動するとき拮抗筋の伸筋に電気刺激を与え収縮さ
せる(伸展運動では逆).図2:パラボリックフライトに用いたインテリジエントスーツ(特許出願中).電源,
刺激装置,電極などを組み込み,同時に上肢,下肢,体幹の訓練が可能.
9.論文・特許等
1.
Hiroo Matsuse, Naoto Shiba, Yuichi Umezu, Takesi Nago, Yoshihiko Tagawa, Tatsuyuki Kakuma,
Kensei Nagata, and Jeffrey R Basford: Muscle Training by Means of Combined Electrical
Stimulation and Volitional Contraction. Aviat Space Environ Med 2006; 77: 581-585.
2.
Naoto Shiba, Yoshihiko Tagawa, Yuichi Umezu, Hiroo Matsuse, Keisuke Hirota, Arata Narita,
Kiyoshi Numada, and Tetsuya Nishi: Study of the development of device to maintain the skeletal
muscles in the space. Proceeding of the twenty-fifth international symposium on space technology
and science (selected papers) pp.1233-1235, Japan, 2006.
3.
特願 2007-169554 代表発明者:志波 直人,出願人:久留米大学,九州工業大学,㈱ゴールドウ
インテクニカルセンター,積水化成品工業㈱,(財)日本宇宙フォーラム,(独)宇宙航空研究開発機
構,発明の名称:電気的筋肉刺激用着用具
10.備考
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