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韓国における外国人労働者支援システム
佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 商学論集 第 79 巻第 3 号 2010 年 12 月 【 調査報告 】 韓国における外国人労働者支援システム ―― インタビュー調査を中心に ―― 佐 野 孝 治 I 課題と方法 1. なぜ韓国の外国人労働者支援システムを取り上げるのか 韓国は 1960 年代から 80 年代まではフィリピンなどの諸国と同様に労働者の送り出し国であっ た。海外出稼ぎ労働者からの外貨送金は経済成長に大きく寄与した1。その後,1988 年のソウルオ リンピック頃から外国人労働者2 が急増した。外国人労働者数は 1987 年の 6,409 人から 2009 年末 には 72 万 9,824 人へと,20 年で 114 倍に増加した。これは労働力人口 2,435 万人の 3% に相当する。 この送り出し国から受け入れ国への急激な転換は, 「圧縮的国際労働力移動」と呼ぶことができる3。 日本と同様に単一民族的意識を持つ韓国社会において外国人労働者の流入は大きな摩擦と混乱を 引き起こした。1990 年代には外国人労働者の 8 割は不法労働者4 であり,労働権も人権も保障され ていない悲惨な境遇であった。送り出しプロセスでの不正,賃金不払い,暴行など,まさに「現代 版奴隷制度」と呼ばれるほどであった。 しかし韓国の外国人労働政策は,2004 年 8 月に,雇用許可制(「外国人勤労者雇用などに関する 法律」 )が施行されたことにより, 大きく転換した。韓国における「圧縮的国際労働力移動」の中で, この雇用許可制はメルクマールとなりうる。すなわち 1988 年の送り出し国から受け入れ国への転 換という画期に次いで,2004 年の雇用許可制導入は,人権無視の不法労働者,研修生から,韓国 人労働者とほぼ同等の権利を保障された合法的労働者への転換を意味している。 この政策転換は, 「私たちも人間です」とプラカードをあげて座り込んだ外国人労働者の声にき ちんと向き合い,一緒に座り込んだ韓国の市民たちの力によるところが大きい。公的な支援が全く 韓国の海外出稼ぎ労働者は,中東だけで 1982 年 15 万 1,583 人,累計で 89 万人に達した。82 年の送金額は 1 19 億 3,890 万ドル,累計で 81 億 5,720 万ドルであった。これは当時の GDP の 3%,輸出の 11% に相当して いた。佐野孝治[1994]110 ページ。李明博大統領も現代建設の副社長時代に中東進出を進め,現代財閥の 発展の契機となった。 韓国では外国人労働者の用語として,移民労働者(migrant worker),外国人勤労者(foreign worker),外国人 2 力などの用語があるが,本稿では引用文,法律用語,インタビュー結果などを除き外国人労働者に統一して 使用する。 詳しくは佐野孝治[2010c]参照。 3 韓国では,市民団体を中心に「不法労働者」ではなく,「未登録労働者」と呼ぶ。入国管理法違反のレベルで 4 あり,労働法上の違反には当たらないという解釈である。 ― 47 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 なかった 1990 年代から 2000 年代央において,外国人労働者を支援してきたのは民間の教会,市民 団体であった。1970 年代のまだ貧しかった自分たちの姿を重ね合わせ,共感と怒りを持って,外 国人労働者とともに立ち上がった「市民力」に学ぶところが多い。 さらに,50 年という圧縮された期間の中で,韓国政府はスピーディに制度革新を進めるとともに, 韓国社会も外国人との共生に向けて転換しつつある。 「外国人処遇基本法」 (2007 年 5 月)や「多文 化家族支援法」 (2008 年 3 月)などが制定され,外国人参政権も認められるようになった。このよ うに外国人労働者政策から,移民政策,統合政策へとシフトしているため,結婚移民,多文化家族 に政策的な関心と支援が集中している。 他方,期限付きの外国人労働者に対する政策や支援は極めて弱くなっている。外国人労働者も包 括する移民政策であるはずが,外国人労働者はその対象から排除されている。インタビュー調査を したほぼすべての団体で,李明博政権は外国人労働者政策に関心が弱いという声が聞かれた。たと えばソウル外国人労働者センターでは「多文化共生の中,移住女性については積極的になったが, 外国人労働者については政府の支援はそれほど増えておらず,軽視されている印象がある。政策の 「李明博政権以降,言 一貫性がない」5 とコメントしている。また外国人移住・労働運動協議会では, 論報道が保守的に変わり,未登録労働者(不法労働者)たちは犯罪者と誤解されてイメージが悪化 した。合法的労働者に対しても,すでに法的保障があるのに,これ以上何が必要なのかと言う態度 6 とコメントしている。さらに であり,人間としてではなく労働者としてだけ見ているようである」 保健福祉家族部・多文化家族課でも, 「韓国には 100 万人の外国人がいるが,法的に手厚く保護さ れているのは 10 万人程度。われわれが支援しているのは国籍を取得する前の外国人および取得後 の韓国人。外国人処遇基本法ができたからと言って,実際にすべての外国人に手厚く対応している わけではない」 , 「短期間の滞在の後に帰国することが想定されるローテーション労働者や留学生に 7 とコメントしている。 関しては打ち出しているわけではない」 したがって,本稿では,外国人一般に対する支援ではなく,近年軽視されつつある外国人労働者 に対する支援システムと支援活動に関して考察する。 2. 先行研究と研究方法 日本において,韓国の外国人労働者に対する支援を取り上げた比較的初期の研究に,安里和晃 [2003],河本尚枝[2003]がある。産業研修制のもとで人権侵害が深刻化していた時期であり,市 民団体による支援活動をインタビュー調査により明らかにしている。その後 2004 年に雇用許可制 が導入され,外国人労働者は研修生ではなく労働者と認められたため,労働法の適用を受け,制度 ソウル外国人労働者センターへのインタビューによる。 5 外国人移住・労働運動協議会へのインタビューによる。 6 また「基本的に外国人全体をカバーする言語支援という概念はない。労働者に対する韓国語教育はあるには 7 あるが,労働者センターで週末の 1∼2 時間程度,単発で行われるもの。それに対して多文化家族センターで の韓国語教育は全く違う制度(中略)。もちろん労働者も多文化家族支援センターに来てもいいが,仕事のた め時間帯が合わない」などのコメントもある。新矢麻紀子・山田泉・大谷晋也・三登由利子[2010]193, 194 ページ,197 ページ。 ― 48 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 的な保護を受けることができるようになった。この雇用許可制をはじめとする外国人労働者政策に 関する研究は宣元錫[2006,2007,2009] ,白井京[2007,2009,2010]などにより,一定の蓄積 がなされつつある。筆者も外国人労働者政策の「日本モデル」から「韓国モデル」への転換につい ての考察と(佐野孝治[2010c] )と女性外国人労働者についての研究(佐野孝治[2010d] )を行った。 しかし雇用許可制以降の外国人労働者に対する支援活動に関する研究はほとんどないと言ってよ い。結婚移民の増加や多文化家族への関心の高まりにともない,多文化家族への支援については一 定程度研究がなされてきている。たとえば三本松政之氏を中心とする以下の研究などである。三本 松政之・大井智香子・朝倉美江[2009],新田さやか・三本松政之[2010],朝倉美江・原史子・ 中尾友紀・新田さやか[2010]などでは,外国人労働者に対する支援も取り上げられているものの, 考察の中心は結婚移民である。同様に,新矢麻紀子・山田泉・大谷晋也・三登由利子[2010]や呉 泰成[2009]でも,考察対象が,外国人あるいは移民全般になっているため,外国人労働者に対す る考察はごく一部にとどまっている。 次に,韓国語文献としては,ソルドンフン[2003]が代表的研究であり,調査にもとづいた基本 的文献といえる。その他,ソンジュンホ[2003] ,朴キョンテ[2005]などがある。2009 年に雇用 許可制 5 周年を迎えたこともあり,韓国産業人力公団[2009],国家人権委員会[2009]などでワー クショップが開催されるとともに,外国人移住労働運動協議会[2009],李チョルスン[2009]な どのアンケート調査も実施されている。続いて,英語文献としては,それほど数は多くないが, Amnesty International[2006,2009]などの調査がある。 研究方法は文献や統計資料による研究を行うとともに,2009 年 11 月から 2010 年 2 月にかけて, 外国人労働者関連団体・機関に対してインタビュー調査を実施した。さらに 2010 年 7 月から 9 月 にかけて,電話およびメールにて追加調査を実施した。本稿では,その一部を取り上げる8。主なイ ンタビュー項目は,① 雇用許可制の評価,② 世界金融危機の影響,③ 李明博政権の外国人労働者 政策,④ 女性外国人労働者の現況,⑤ 外国人労働者支援ネットワーク,などについてである。 本稿の構成は,まず II 節で,韓国における外国人労働者に対する支援活動の経緯と現況につい て述べたうえで,III 節で,公的支援システムとして,労働部(外国人力政策課) ,産業人力公団, 韓国勤労者支援センターを取り上げる。続いて,IV 節で,民間支援システムとして,支援ネットワー ,市民団体の「ソウル外国人労働者センター」 ,女 ク協議会である「外国人移住・労働運動協議会」 性外国人労働者の支援団体である「韓国移住女性人権センター」 ,外国人労働者による外国人労働 者のための労働組合である「移住労働者労働組合」を取り上げ,考察する。 他に,行政安全部・自治行政課をはじめ,宗教団体,学識経験者などへのインタビュー調査を行ったが,そ 8 の詳細は別稿の課題としたい。 ― 49 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 II 韓国における外国人労働者に対する支援活動の経緯と現況 1. 外国人労働者に対する支援活動の経緯9 雇用許可制導入以前には,外国人労働者に対する政府や自治体の支援は低調であり,宗教団体や 市民団体がその役割を担っていた。その理由として,第一に,当時は,法律や条例などが制定され ておらず,そもそも制度的・予算的スキームが存在しなかったこと,第二に,外国人労働者の 8 割 が不法労働者であり,行政当局にとっては保護の対象者というよりは,むしろ取締り,強制追放の 対象者であったこと,第三に, 「外国人労働者受入れの中心的存在であった研修制度が,彼らを雇 用する職場に寮の提供を義務付けていたことから,地域住民との関わりが限定されていた」10 こと が考えられる。 1980 年代末より外国人労働者が増加するにつれて,賃金不払いや労働災害,暴行などの労働権 の侵害や差別などが増加し,社会問題としてクローズアップされることとなった。これを受けて外 国人労働者を支援する活動が始まった。支援団体の嚆矢は 1992 年 5 月に結成された「外国人労働 者の人権を守る会」である。これはソウル市の紫陽洞聖堂で行われているフィリピン人牧師による 数百人のフィリピン労働者に対するミサの模様や労働者への権侵害の状況がマスコミに紹介された ことを受けて,彼らを支援しようとする市民団体が結成されたものである。そこで不払い賃金,産 業災害,暴行事件などの人権侵害に対する相談活動をした。次に同年 8 月には明洞大聖堂内に「カ トリックソウル大教区外国人労働者相談所」が設立され,不払い賃金,労働災害,出入国などの問 題に対する相談活動をするとともに相互扶助のための自治会結成を支援した11。 続いて同年 11 月には九老洞12 で韓国初の「外国人労働者シェルター」が設立された。また同月「韓 国キリスト教教会協議会」は「韓国教会外国人労働者宣教委員会」を設立して,九老洞の Galilee 教会で相談活動と無料診療を始めた。 産業研修生制度が導入され,外国人労働者が急増するとともに,その人権侵害事例も急増したこ とを受けて,1994 年から 1997 年にかけて支援団体が数多く設立された。 この時期はキリスト教,仏教,イスラム教など宗教団体を母体にするものが多い。カトリック系 の外国人労働者相談所は各教区の下に個別的に運営されていた。プロテスタント系は韓国教会外国 人労働者宣教協議会を結成した。仏教系では, 経済正義実践佛教市民連合を中心に 1994 年 1 月「外 国人労働者人権保護のための仏教対策委員会」を設立し,仏教信者が多いネパール人労働者を対象 に支援を始めた。また 1995 年に曹渓寺内に外国人労働者村(現・外国人労働者人権文化センター) 1990 年代における支援団体の設立経緯はソルドンフン[2003] 「韓国の外国人労働者運動」金ジンギュン編『抵 9 抗,連帯,記憶の政治 2』文化科学社を参考にしている。 呉泰成[2009]249 ページ。 10 南相瓔・金信一・笹川孝一[2001]には,これが外国人支援活動の最初であるとの記述があるが,「外国人労 11 働者の人権を守る会」の方が数ヶ月早く活動を開始している。 九老洞はソウル市内の外国人特に韓国系中国人の密集地域である。 12 ― 50 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム を設立した。イスラム教系では,光州地域外国人ムスリム保護協議会などがあるが,特に専門機関 を設置しないで,教会内で支援している。 他方,宗教団体とは一定の距離を置く市民団体として,1994 年 5 月中国労働者センター,1995 年 3 月富川外国人労働者の家,1996 年 10 月釜山外国人労働者の人権を守る会,1998 年青い市民 連帯,2001 年 4 月韓国移住労働者人権センターなどが設立された。労働組合でも 2001 年 5 月にソ ウル京仁地域平等労働組合傘下に移住労働者支部が設立された。 また医療や法律など専門家による支援として,外国人労働者医療共済会が 1999 年 9 月から全国 各地域の外国人労働者相談所と連携して医療サービスを提供している。ソウル地方弁護士会は 1994 年 12 月から外国人労働者法律相談所を開設して無料法律相談をしている。 その後 1997 年 12 月に発生したアジア通貨危機によって,外国人労働者が減少したため,支援団 体の新設数も減少した。その後,韓国経済の回復にともない外国人労働者数が急増したことを受け て,支援団体の数も増加した。特に「現代版奴隷制」とさえ呼ばれる産業研修制度が社会問題化す ることによって支援活動は本格化した。 外国人労働者支援団体の数は 2000 年には,90 団体で,宗教系が 87.8% と大部分を占めている。 内訳はイエス長老会 48 団体(53.3%) ,キリスト教長老会 11 団体(12.1%),カトリック教 11 団体 (12.1%)などが占めている。その他市民運動団体 5 団体(5.6%) ,医療奉仕団体 4 団体(4.4%) , 各種行事(86.4%), 医療支援事業(76.5%), 法律サービス団体 2 団体(2.2%)である13。主要な活動は, ニュースレター・出版物製作(65.4%) ,連帯事業(64.2%),シェルター運営(42.0%),外国人労 働者コミュニティ支援 (35.8%) などである。また相談件数 2 万 1,437 件の内訳は, 医療 6,759 件, シェ ルター提供 5,597 件,賃金不払い 4,782 件などである14。 2. 外国人労働者支援団体のネットワーク形成 韓国における外国人労働者支援団体のネットワーク形成の最初の試みは 1993 年 9 月に西江大学 校で開催された「外国人労働者のための韓日連帯会議」である。これは,外国人労働者の人権を守 る会,カトリック労働司牧全国協議会,韓国教会外国人労働者宣教協議会が共同で主催したもので ある。この連帯会議には外国人労働者支援団体の関係者がほとんど参加して,各団体の経験とノー ハウを共有しながら連帯を図った。また日本の外国人労働者支援団体と交流した15。 その後 1995 年 7 月の明洞聖堂での座り込みに参加した外国人労働者の人権を守る会,城南外国 人労働者の家など 38 団体たちの中で 10 団体が外国人労働者対策協議会を結成した。創立目的は, 「自主的で,民主的な団結を通じて外国人労働者の労働条件の改善及び政治・経済・社会的地位の 向上を求めること」 であった。この協議会は外国人労働者支援のネットワーク組織としては代表的 な存在であるが,2000 年に入り,分化している。まず外国人労働者の組合結成を目指して闘争本 部を設立し,2001 年にソウル京仁地域平等労働組合の外国人労働者支部となった。その後 2005 年 にはソウル,京畿,仁川の移住労働組合として発展した。また 3 団体が協議会を脱退し,2001 年 ソルドンフン[2003],2 ページ。 13 同上。サンプル数は 81,複数回答。 14 ソルドンフン[2003]76∼99 ページ。 15 ― 51 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 に移住女性人権連帯を結成し,その後 2004 年には移住労働者人権連帯を発足させた。2009 年現在 では協議会のメンバーは 39 団体になっている16。 国内の市民社会団体,人権団体などのネットワークを通じた情報交流と連帯活動を介しての政策 提言などを行っている。他のネットワーク組織に先述の移住労働者人権連帯がある。事務局はない が韓国移住労働者人権センターなど全国 13 団体からなっており,協議会とも共同行動をとってい る。ソウル外国人労働者センターへのインタビューによれば, 「外国人労働者への支援団体は 90% 程度見解がまとまっている。民主労総系では移住労働者組合などが積極的に活動しているが,雇用 許可制に対する考えは,当センターと若干異なっている。韓国労総系の外国人労働者支援活動は規 模が小さくあまり目立っていない」という。 3. 外国人支援団体の現況 2009 年現在における外国人に対する支援機関・団体は,743 団体であり,1 市郡区あたり 3.2 団 体である。内訳は民間団体が 352 団体と一番多く, 次いで公共機関 304 団体, 宗教団体 87 団体となっ ている。2008 年に比べて 179 団体増加したが,これは公共機関が 3 倍に増加したためであり,逆 に民間団体は 47 団体減少している(図表 1) 。主な団体としては,民間団体では,外国人勤労者相 談所,シェルター,移住女性人権センター,公共機関では多文化家族支援センター,外国人勤労者 センター,国際交流財団,総合社会福祉館,雇用支援センター,宗教団体では教会などの宣教セン 図表 1 外国人支援機関・団体の現状(単位 : 箇所) 出所 : 行政安全部[2008]『2008 地方自治団体 外国人住民現況』および行政安 全部[2009]『2009 地方自治団体 外国人住民現況』より作成。 外国人労働者対策協議会へのインタビューによる。毎年の総会ごとに変動するという。 16 ― 52 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム ター,仏教,カトリック教の施設などがある17。 第二に,支援団体・機関の地理的分布を見てみると,京畿道 20%,全羅北道 9%,江原道 9%, 慶州南道 9%,ソウル市 7% となっており,ほぼ全国的に分布している(図表 2)。これを外国人の 分布と比べてみると,外国人は京畿道 31%,ソウル市 29% と首都圏に集中しており(図表 3) ,必 ずしも外国人数に対応したものとはなっていない。インタビュー調査では, 「ソウルよりは田舎に 外国人が多いのに,支援団体はソウルに集中されている点も改善の必要がある」18 というコメント 図表 2 外国人支援団体・機関の地理的分布(2009 年 4 月末現在) 出所 : 行政安全部[2009] 『2009 地方自治体 外国人住民現況』より作成。 図表 3 外国人の居住地域(2010 年 3 月現在,単位 : %) 出所 : 法務部[2010]『出入国・外国人政策統計月報』より作成。 行政安全部[2009]『2009 地方自治団体外国人住民現況』12 ページ。 17 韓国外国人勤労者支援センターへのインタビューによる。 18 ― 53 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 があったが,少なくとも団体数からいえばソウルに集中しているとはいえない。 外国人住民を支援する民間・宗教団体が 1 ヶ所以上ある自治体は 131 ヶ所であり,全体の 56% を占めている。支援機関がない自治体は 30 ヶ所であり,13% を占めている。全自治体で,外国人 支援業務担当部署がある。2008 年度に比べ,外国人専門担当部署が 3 ヶ所から 13 ヶ所に拡大,京 義本庁,安山,全北本庁,専門担当課があるのは京義と安山である。それ以外は係である。 III 外国人労働者に対する公的支援システム 本節では,雇用許可制による法的・制度的支援について概観したうえで,インタビュー調査結果 にもとづいて韓国における公的支援システムについて考察する。公的な支援システムとしては,図 表 4 のとおりである。そのうち労働部(外国人力政策課) ,産業人力公団,韓国勤労者支援センター を取り上げる。 1. 雇用許可制による法的・制度的支援 産業研修制とは異なり,2004 年 8 月以降の雇用許可制によって外国人労働者の権利と支援は格 段に改善した。「外国人勤労者雇用等に関する法律」では, 「使用者は外国人労働者であることを理 由で不当に差別的処遇をしてはならない」 (第 22 条)と規定され,外国人労働者は,労働基準法, 労働組合法,最低賃金法,産業安全保護法等の労働法の適用を受ける。労働部は法令を順守させる ため,雇用支援センター(全国 55 ヶ所)を管理している。外国人労働者独自の問題については全 国 5 ヶ所に外国人勤労者支援センターがある19。労働組合の結成も保障されているが,後述する移 住労働者労働組合のみである。これも不法労働者が組合員に加入していることを理由として,政府 図表 4 韓国における外公的国人労働者支援システム 労働部・外国人力政策課へのインタビューによる。 19 ― 54 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム は認めず,裁判で係争中である。 また四大保険のうち,労災保険と国民健康保険は当然適用,雇用保険は任意加入,国民年金は相 互主義原則により加入者資格を付与している。さらに,中小企業が,外国人労働者に対する退職金 を一時的に支払うことに伴う負担を軽減し,外国人労働者の不法滞在の防止や自主帰還を誘導する ため出国満期保険が適用される。加入しない使用者には 500 万ウォン以下の罰金が課せられる。同 様に賃金未払いを早急に解決し,外国人労働者の事業場の移動等の円滑な雇用管理を図るために賃 金未払い保証保険を事業者に義務付けている(図表 5)。 雇用許可制には依然として,低賃金・長時間労働,人権侵害などの問題点も残っているが,概ね 成功していると評価できる20。G2G(政府対政府)にしたことにより送り出しプロセスでの不正は防 止され,送り出し費用も低下した。不法労働者化率も 50% から 6.9% に低下した(図表 6)。賃金 不払い,パスポートなどの取り上げも減少している。また暴力や性暴行などあからさまな人権侵害 も減少している。 2010 年からは,産業人力公団を中心に, 「ハッピーリターンプログラム」を開始している。これ 図表 5 外国人労働者に対する社会保険 保険名 適用状況 概要 1 労災保険 当然適用 常時労働者 1 人以上の事業又は事業場。 ただし農林漁業は 5 人以上 2 健康保険 当然適用 使用者及び外国人労働者は国民健康法により加入義務。 3 雇用保険 任意加入 常時労働者 1 人以上の事業又は事業場で外国人労働者 と企業が望む場合に限り,任意加入。 (2006 年 1 月 1 日から施行) 4 国民年金 相互主義 相互主義に基づいて,外国人に対して当然適用される 国の労働者に対してのみ適用。 5 出国満期保険 義務加入 常時労働者 5 人以上の事業又は事業場。 6 賃金未払い保証保険 義務加入 賃金未払いに備えて,事業主が義務加入。 賃金未払い事件を早急に解決し,外国人労働者の事業 場の移動等の円滑な雇用管理を図る。 賃金未払いの保証金額 : 最高 200 万ウォン。 外国人労働者 1 人当たり保険金 16,000 ウォン。 出所 : 韓国産業人力公団ウェブサイト(http://www.hrdkorea.or.kr)より作成 図表 6 産業研修制と雇用許可制の比較 送り出し費用 不法労働者化率 賃金不払い率 産業許可制 3,500 ドル (2001 年) 約 50% (2002 年) 36.8% (2001 年) 雇用許可制 500∼1,200 ドル (2009 年) 6.9% (2009 年) 9% (2007 年) 出所 : 佐野孝治[2010c]より作成。 詳しくは佐野孝治[2010c]参照。 20 ― 55 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 は雇用許可制が施行後 6 年を経過し,改正前の在留期間である 3 年+1 ヶ月出国+3 年間21 を超え る外国人労働者が増加し,不法労働者化しないための措置である。在留期間が満了した外国人労働 者の自発的な帰還と本国での安定的な再定住を目的としている。このプログラムでは意識教育(帰 国の準備教育) ,滞在中の様々な就業・創業教育,在留期間の満了時に様々な保険や帰国手続きの 案内,現地に進出している韓国企業への就職斡旋などを行う22。外国人労働者が滞在期間を終えて 帰国した時,韓国に対して良いイメージを持てば,外交的に活用することができるという23。 2. 労働部・雇用政策室外国人力政策課24 (1) 雇用許可制の評価 1993 年に導入された産業研修生制度の時には,原則は研修生導入制度だったが,実際は,中小 企業の労働力不足のため労働者として働いた。政府の規制もなかったため外国人労働者に対する人 権侵害が多かった。また不法滞留者も増加した。外国人労働者の立場でも問題が多かったし,事業 者の立場からも,韓国の学歴水準が高くなったため,非専門労働力不足が深刻であった。 2004 年に雇用許可制が導入されたことにより,中小企業では,合法的雇用が可能になり,労働 力不足が解消し,不法滞留者も減少した。政府としても合法的フレームの中でさまざまな制裁が可 能になり,外国人労働者の人権を守ることができるようになった。 雇用許可制の初期には手続き面が重視されたが,現在は不法滞留者に対する管理面や事業者の面 で難しい問題を解決しなければならない。 政府の調査では,送り出し費用は 1,000 ドル(100 万ウォン)が標準であるが,慶南外国人労働 者相談所やアムネスティなどが 2009 年に実態調査を行い,送り出し費用と事業場変更関連で雇用 許可制の問題点を指摘している。これに対し,労働部が再調査をした結果,調査対象に産業研修生 と中国人(訪問就業)も含まれていること,また韓国語試験にかかる費用は 17 ドルなのに,そこ に語学院の授業料等々が追加されていることなどが判明した。しかし非公式の送り出し費用もある 2010 年 4 月施行の改正では 3 年+2 年未満になっている。 21 産業人力公団へのインタビューによる。 22 労働部・外国人力政策課へのインタビューによる。 23 2009 年 12 月 10 日,金ユンへ氏(行政事務官)との面談による。 24 ― 56 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム ようなので,現地にいる駐在員を中心にモニタリングをもっと強化しなければならない。 事業場変更をする場合,現在の制度は 1 ヶ月以内に退社を申し込んで 2 ヶ月以内に再就職をしな ければならない。事業場の変更回数は 3 回が限度である。ただし休業,閉業など不可抗力の場合は 例外的に 1 回多く許容される。2009 年の法改正により, 求職期間は 3 ヶ月に延長される。また妊娠, 疾病などがあって求職ができないことが認められれば延長される。事業場の変更回数は変わらない が,休業など外国人労働者の直接的な原因ではなければ,3 回プラスアルファとなる。 これは事業者と外国人労働者の利害が対立する問題であり,事業者の立場からすれば,2,3 ヶ 月間準備をして外国人労働者を雇用したが, 外国人労働者はより良い条件の事業場に移ろうとする。 労働部としては,どちらの立場に立つのかと言うことには限界がある。統計では求職期間 2 ヶ月の 内に 95% が再就業している。しかも再就業率の低い国はほとんど決まっている特定国家である。 したがって求職期間をこれ以上延長しても事実上意味はないと思う。逆に,事業者が雇用許可の発 給を受けて 6 ヶ月以内に解雇すれば外国人労働者の使用を 3 年禁止する措置をとっている。 外国人労働者と韓国人労働者の競合関係については,統計的に調査しにくいので,研究機関を通 じて把握している。一般雇用許可制の場合,ほとんど影響はないと思う。同胞労働者は一部業種や サービス業で韓国人労働者に代替しているので,韓国人労働者が影響を受ける場合もある。これを 防止するために制度的措置が必要だと考える。四大河川事業など大規模公共事業は 2010 年 4 月か ら工事が本格的に開始されるが,景気対策のため韓国人労働者を中心にして,外国人労働者の雇用 限度を決めて実施する予定である。 2008 年の調査では,外国人労働者の賃金水準は,労働生産性とリンクしている。韓国人労働者 の労働生産性を 100 とすると,外国人労働者は 90 であり,賃金格差も同程度である。これは事業 主 100 名程度に主観式でアンケート調査をしたものであり,同一業務をしている韓国人労働者に比 べて,業務処理速度,仕事完成度などの水準を見たものである。 また中小企業,業種団体への調査では,事業主が宿泊費を負担している。これを義務付ける労働 法はなく,強制力もないが,事業主が負担するのが慣例だった。このため賃金が高くなっている。 以前は事業主が 100% 負担したが,最近ではそれが義務ではないということを認知してきたため, 負担しなくなっている。雇用契約を締結する時,宿泊費等を労働者がどの位負担するか,労働者が すべて負担するかを決定するようになっている。 (2) 世界金融危機の影響 回復過程にはあるとはいえ,景気低迷が続く中で,韓国内で失業者が増加している。外国人労働 者により,韓国人の雇用が代替されることに対して対策が必要になっている。毎年クォータを決め ているが,2009 年は去年の 3 分の 1 水準に縮小した。理由は韓国人の就職先が不足し,昨年の 12 月から失業率が増加したためである。さらに現在韓国に入国している外国人労働者の再就職のため に,新規に入国する外国人労働者数を制限している。 (3) 李明博政権の外国人労働者政策について 李明博政権になって多文化家庭を重視している。その理由として,結婚移住者たちは韓国国籍を ― 57 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 持っており,かつ増加速度がとても早いからである。また少子化の中で,2 世たちが韓国社会にう まく適応できるように,さまざまな統合政策を進めている。他方,非専門職労働者たちは一定期間 滞留してから帰国する人々であるから,結婚移住者とは異なっている。未登録滞留者については法 務省で担当し,不法滞留しないように管理している。外国人労働者に対して労働部は主に非専門労 働者が中心であったが,過剰になっているので,非専門労働者の導入に対しては保守的になってい る。他方,専門外国人労働者に対しては寛大である。経済活性化に重点を置き,彼らの雇用手続き の簡素化を推進している。 (4) 外国人労働者に対する支援 外国人労働者が滞在期間を終えて帰国した時,韓国に対して良いイメージを持てば外交的に活用 することができる。そのために滞在期間中,良い印象を与えて人権保障に力をつくすことが必要で ある。 2010 年から雇用滞留支援に対して大幅に強化する予定である。韓国語教育,職業訓練に加えて, 帰国した時,現地に進出している韓国企業に就職を斡旋して,定着できるように支援をしていく。 労働部と産業人力公団で公共機関を担当している。労働部では雇用支援センター(全国 55 ヶ所) を管理している。産業人力公団では外国人労働者の選抜を行っている。政府の委託を受けた外国人 勤労者支援センターでは韓国語教育,相談,通訳支援などを行っている。現在は全国 5 ヶ所である が,今後 3 ヶ所が追加される予定である。人件費支援,シェルター運営(失職者が再就職されるま での期間の宿泊所)などを行っている。 3. 韓国産業人力公団25 (1) 雇用許可制の評価 雇用許可制は 2003 年 7 月に公布され,2004 年 8 月に施行された。韓国の雇用許可制に対する関 心は強く,日本政府とフランスからもインタビューに来た。雇用許可制の長所は労働者に対する人 権保障,送り出し不正の防止,労働市場を補ってくれる点である。第一に,外国人労働者に対する 2009 年 12 月 2 日,ウマンスン氏(雇用企画チーム長)との面談による。ウマンソンチーム長は元インドネ 25 シア支社長で 2004 年 11 月から 2007 年 3 月まで約 3 年勤務した。 ― 58 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 権益保護である。色々な国の外国人労働者たちの好む国は日本より韓国である。賃金は少ないが, 国内労働者と等しい賃金と権利が与えられている。 第二に,送り出し不正の減少をみると,東南アジアで移住労働者として外国へ行く時は費用が 1 万ドル位かかる。シンガポールの場合 1 万ドル。オーストラリア, アメリカ, ヨーロッパは 1 万 5,000 ドルから 2 万ドルである。これに比べて韓国の場合十分の一の千ドルしかかからない。G2G(政府 対政府)のため,民間機関を一切介入させないで,送り出し不正を徹底的に遮断している。ただし 少数の送り出し国家で,公務員へのわいろがある。とにかく韓国は初期費用が少ないため,韓国へ 来て多くのお金を儲けることができるし,一定期間仕事ができる。特にベトナムは韓国と国民性が 似ている。ベトナム人が韓国に一番多い理由でもある。特に国民所得の高い国が韓国を好む。国民 所得が非常に低いということは,怠けているとみられ,韓国の国民性とも違うと見られるからである。 第三に,研修生制度は民間対民間だったため,国内外の労働市場を把握できなかった。そのため 韓国人労働者の雇用を保護できなかった。国務総理室の外国労働者政策委員会で毎年受入労働者数 や職種を決める。そして徹底的に統制する。理由は韓国人の雇用を保護するためである。 次に,雇用許可制の成果の第一は不法滞留者が減少したことである。産業研修生の時には不法労 働者化率は 48% であったが,今は 4% にすぎない。現在不法滞留者は 18 万名である。 第二に,中小企業の労働力不足の解消である。盧武鉉政権時には,単純労働力の不足率が 7% で あったが,雇用許可制後は 4% に低下した。 第三に,外国人労働者の人権を保障し,最適な労働環境を提供している。賃金未払い保証保険や 出国満期保険があり,入国時の 2 泊 3 日の教育課程で外国人労働者に直接通帳を作って渡すので, 事業主が通帳を管理する問題は改善している。ILO で 5 日間のワークショップがあったが,韓国の 雇用許可制に対して外国人労働者のためのよくできた制度であると評価された。このような肯定的 評価は今までなかった。2010 年には,ILO,APEC 会議がタイで開かれる予定なので,雇用許可制 に対して大々的な広報をする予定である。逆に,韓国人と同じ権利保障,資格,賃金等の待遇をし なければならないため,事業者たちの不満は大きくなっている。 続いて,雇用許可制の課題としては,依然として,送り出し国に対して不正を徹底的に遮断する ことができないという点である。送り出し国で行われる公務員に対するわいろまでは阻むことがで きない。選抜過程で問題が発生しているが,送り出し国に任せている。そもそも需要と供給があっ ていない。1 年間のクォータ 5 万名に対して,希望者は約 40 万名にのぼっている。送り出し国で 韓国語試験に合格した者が雇用契約を結ぶことができる。技能工を募集するのに,テストを韓国語 だけというのは問題である。今年 9 月の改正では,韓国語試験だけではなく技能テストという制度 をつくった。 使用者が外国人労働者を採用するのに,現在 120 日間かかる。中小企業が 3 ヶ月後を計画して外 国人労働者を採用するのは現実的に難しい。必要な時期に採用できるように政策を改善しようとし ている。 (2) 世界金融危機の影響 現在,外国人労働者は一般雇用許可制(E 7)が 15 万人,特例雇用許可制(H 2)は盧武鉉大統 - - ― 59 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 領時に外国籍同胞優遇政策を実施したため,倍の 31 万人が入国している。経済危機の時にも外国 籍同胞は自由に出入国可能である。逆に一般雇用許可制は出入国が不自由である。2008 年 1 年間 で外国籍同胞が韓国に 11 万 5 千人入国し,一般雇用許可制では 7 万人入国した。しかし世界金融 危機の影響で 2009 年に,政府はクォータを同胞を 1 万 7 千人,一般雇用許可制を 1 万 7 千人へと 大幅に減らした。李明博大統領は外国人労働者の導入に反対する立場である。ただし 3D(3K)業 種では,外国人労働者でさえ拒否する場合があるのに,韓国人はもっと忌避している。したがって 外国人労働者の減少は中小企業の労働力不足という副作用を生むこともある。 (3) 李明博政権の外国人労働者政策 李明博政権に変わって,多文化政策が中心になり,外国人労働者に対しては疎かな部分もあると 思う。2009 年 9 月 16 日から,多くの法律が改定された。2010 年からは滞留支援事業にもとりく む予定である。一番問題となる言語支援を重点にしている。外国人労働者が入国して最初の 3 ヶ月 間は,外国人労働者と使用者との間で葛藤が高まり,問題が多発する。また事業場変更等の問題に 対して予算を投入し,全面的に支援する予定である。2010 年からの新規事業計画としては,求職 期間の職業訓練,産業災害に対する補償の拡大,帰還プログラムなどがある。特に帰還プログラム の内容は,在留期間が満了した外国人労働者を送り出し国に進出している韓国企業に斡旋すること, 小規模創業(バイク,自動車整備,コンピューター修理など)に対する教育を実施することである。 これにより本国での安定的な再定住が可能になり, 自発的に帰還することができると期待している。 さらに韓国の良いイメージを広報する機会になると思う。また外国人雇用制事業を電算システム化 する予定である。これにより一層効率的になると思う。 4. 韓国外国人勤労者支援センター26(ソウル特別市九老区) (1) 団体概要 韓国外国人勤労者支援センターは,外国人労働者を支援するために 2004 年 12 月に労働部が設立 し,産業人力公団が管理し, (社) 「地球の愛分かち合い」 (代表金ヘソン)が委託運営している非営 利団体である。前身は 1990 年代に城南市で結成した「韓国外国人労働対策組合」である。現在の 2009 年 12 月 4 日,李ヒョジョン氏(相談チーム主任)への面談による。 26 ― 60 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 活動拠点は,ソウル市以外には外国人労働者が多い安山市,広州市,楊州市などにある。スタッフ 数は約 150 名である。主な財源は政府の補助金であり,プログラムの運営と人件費として使用され る。宝くじの資金は建物の賃貸料に,寄付金は外国人専用の病院と無料食堂の運営に使われる。 2008 年の収入は 11 億 8,466 万ウォンで,内訳は補助金 11 億 6,799 万ウォン,寄付 864 万ウォン, 収益 803 万ウォンである。支出は 11 億 4,301 万ウォンで,内訳は,人件費 4 億 7,545 万ウォン, 相談事業 2 億 4,800 万ウォン,メディア事業 2 億 52 万ウォンなどである 。 (2) 主要活動 ① 相談事業。17 ヶ国語での電話相談をする「ヘルプライン」がある。相談室には,13 ヶ国出身 のセラピストが常駐しており,2009 年には電話相談が,3 万 9,462 件,訪問相談も 8,465 件行われた。 設立以来,相談累計件数は 14 万件に達した。相談内容は賃金不払い(60%),事業場移動など労働 問題が中心だが,国際結婚の増加に伴い家庭内暴力など多岐にわたっている。不景気の中で未登録 労働者の相談が増えなかったが,解雇の問題に対して相談が増えている(図表 7)。2007 年の満足 度調査(190 名対象)では,相談事業に対して「とても満足」56.3%,「満足」37.4% と満足度が 高かった 。 ② 教育事業。外国人に必要な教育を実施し,韓国の伝統文化を知らせるために,韓国語,コン ピューター,テコンドーなどの無料教室を開催している。韓国語教室はレベル別になっている。 2007 年の満足度は,韓国語,コンピューター教室ともに 87% と高かった。 ③ メディア事業。7 つの言語で発行する無料ニュースレター「Migrant OK」 (毎月 3 万 6,000 部) , (訪問者数 10 14 ヶ国出身のアナウンサーが直接ニュースを伝える インターネット放送「MNTV」 万人),情報共有サイトを運営している。 ④ 外国人専用病院。2004 年に韓国で初めて外国人労働者専用の病院を設立した。病床 30 で 20 図表 7 韓国外国人勤労者センターにおける相談内容(単位 : 件) 出所 : 韓国外国人勤労者センター資料より作成。 ― 61 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 人のスタッフがいる。医者はボランティアであり,内科,外科,産科,放射線科などがある。無料 のため患者は遠隔地からも訪れ,1 日 250 人程度である。これまで未登録労働者や失業者を含め 17 万 5 千人の治療を行ってきた。そのうち 4 割を韓国系中国人が占めている。しかし不景気の中,国 民銀行など企業の寄付金が半減し,閉鎖の危機に追い込まれている。 (3) 雇用許可制の評価 雇用許可制は人権的な面では過渡期的である。 登録労働者と未登録労働者は同じ労働をしており, 書類上の問題に過ぎない。雇用許可制は外国人労働者の立場よりは経営者の立場を反映していると いえる。制度的には産業研修生の時は労働者と認めないで権利を剥奪し,2 年間研修を受けて 1 年 間就業だから 1 年間だけ労働者と認定していた。これに比べれば雇用許可制で 3 年間認められるよ うになったことは前進である。さまざまな問題点があるが,韓国人労働者を保護するという政府の 見解も理解できる。しかし韓国人労働者保護と人権とは対立する現象ではないので,韓国人と外国 人の両立が重要だと思う。 例えば 70 年代における社会の雰囲気は中小企業の発展が困難だったため,大企業中心であり, 経営者の経済論理が中心になっていた。1990 年代における建設業の日当が 7∼10 万ウォンだった が,現在は 10 年前よりもっと少ない 5∼8 万ウォンの日当である。この原因を外国人労働者が増加 したため賃金が減少したと言っている。外国人労働者,韓国人労働者,企業,政府などの利害が対 立しているが,お互いに譲歩する必要,特に大企業が譲歩する必要があると思う。 さらに雇用期間を 3 年から 5 年未満に延長した。これでは外国人労働者たちが韓国で 5 年間を過 ごしたければ 5 年間家族に会うことができない。途中で帰国をすれば延長申し込みができなくなる からだ。また 2009 年春から企業らに公文書を送って宿舎費と食費(20∼30 万ウォン)を賃金から 控除することを公知した。 雇用許可制になっても慣例として負担していた企業が公知を受けて実施。 実質的に賃金が削減されたのと同じである。また李明博大統領は経済発展委員会で地域別に賃金を 差別化させるなど多くの発言はあったが適用されなかった。 ソウルよりは田舎に外国人が多いのに, 支援団体はソウルに集中されている点も改善の必要があると思う。ちなみに地方に住む日本人には 統一教会関係が多いという。 金ヘソン代表によると,雇用許可制を一定評価しつつも,送出不正の清算,事業場変更の回数制 限,職探しの期間限定,不十分な情報の提供など課題が残っていると指摘している。外国人労働者 が負担する非公式の入国の費用は,まだ大きな負担である。また事業場変更の回数制限により,外 国人労働者は,事業主の不当な横暴に耐えなければならない。外国人労働者に提供される情報が不 足しており,韓国に馴染めずに苦しむ外国人労働者は,産業研修制の時と変わっていないと批判し ている27。 (4) 世界金融危機の影響 世界金融危機以後,企業の倒産が多くなったため,多数の外国人労働者が出国した。企業が一番 金へソン[2009]参照。 27 ― 62 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 望む国はベトナムであり,残りの国に対してはクォータが減らされ,入国が難しくなっている。零 細企業では外国人労働者がいないと言う。逆に外国人労働者の不当解雇も多く,仕事がなくて問題 が続出している。ウォンの価値が暴落したため,ドルベースの送金額は減少した。外国人労働者た ちはウォンの回復を待って,送金を控えたという。去年までは相談件数が多かったが,多くの外国 人労働者が出国したことによって相談件数が減った。 (5) 外国人女性労働者の現状 相談者に占める女性の比率は,一般雇用許可制は 25%,特別雇用許可制は 50% で,全体として は 30% 程度である。相談内容は主に労働問題で男性と同じである。女性特有の問題は,婚姻や子 育てなどである。雇用許可制になって送り出しの不正がなくなり, 男女ともに状況は改善している。 また賃金や労働時間,人権などで男性外国人労働者と女性外国人労働者の間に大きな差はない。む しろ制度的には,妊娠や危険労働禁止など女性保護規定がある。 (6) 李明博政権の外国人労働者政策 李明博政権になって外国人労働者政策から,多文化政策にシフトしている。外国人労働者はいつ か出国する人だが,多文化家族は韓国で住む人という認識と低出産問題の解決という側面で多文化 家族に焦点が当てられている。結婚移民に対する韓国民の関心も高く,支援団体も増加している。 逆に,外国人労働者たちは男性が多く,コミュニティのつながりもなく,犯罪やさまざまな問題を 発生させているとイメージが悪くなっている。政府は多文化のフレームワークを強要するが,多文 化家庭も労働者になることができる。政府は多文化政策,外国人労働者問題を別々のものと考えず に,一つに統合して考えれば良いと思う。 (7) 支援ネットワーク 当センターは産業人力公団が管理し,政府の補助金を財源とする政府系の非営利団体である。し たがって一般の支援団体とは異なり,政府系の産業人力公団を中心とする政府系ネットワークの一 翼を担っている。ただし金へソン代表の発言にも現れているように,政府とまったく同じ見解,行 動パターンをとっているわけではない。たとえば,これまでインターネット放送など当センターの アイディアは制限を受けてなかなか実施できなかった。今後,政府は民間団体の提案に耳を傾け, 協力してくれれば良いと思う。 IV 外国人労働者に対する民間支援システム 本節では,まず民間の支援システムとして, 「外国人移住・労働運動協議会」に加盟する団体の 支援活動の概要を見たうえで, インタビュー調査にもとづいて, 支援ネットワーク協議会である「外 国人移住・労働運動協議会」 ,NPO 法人の「ソウル外国人労働者センター」 ,女性外国人を支援す る社団法人の「韓国移住女性人権センター」 ,外国人労働者による,外国人労働者のための労働組 合である「移住労働者労働組合」を取り上げ,考察する。 ― 63 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 1. 民間団体による外国人労働者に対する支援活動 先述したように, 1990 年代から 2000 年半ばにかけて, 外国人労働者に対する公的支援が全くなかっ た時期に,彼らを支援したのは宗教団体,市民団体であった。2009 年現在,外国人を支援する民間 団体は 352 団体,宗教団体は 87 団体である。このうち韓国で最も影響力のある外国人移住・労働 運動協議会に加盟している 39 団体の内,外国人移住・労働運動協議会[2009b] 『第 14 次 定期総 会資料集』に記載されている団体 20 団体を整理したのが,図表 8 である。ソウルだけでなく,全 国的に外国人労働者の多い地域で支援活動を行っている。主な支援活動は,① 相談活動,② 医療 支援,③ シェルターの運営,④ 教育活動,⑤ コミュニティ・サポート,⑥ 文化事業,⑦ PR と政 策提言であるが,ほぼすべての団体で実施しているのが相談活動である。相談件数は 100 件から数 千件まで,団体の規模に応じて多様である。この相談件数を,公的支援システムである韓国外国人 図表 8 外国人移住・労働運動協議会加盟団体における支援活動(相談内容,シェルター,医療,2008 年,単位 : 件,人) 総計 1 慶南外国人労働者相談所 2 光州外国人労働者センター 3 光州外国人労働者の家・中国同胞の家 4 賃金 産業 不払い 災害 出入国・ 事業場 在留 の変更 詐欺・ 暴行 医療 生活 法律 その他 シェルター 1,648 375 49 23 56 1,051 14 80 128 62 6 4 36 7 2 11 2,025 1,244 75 11 14 358 664 4 118 5,577 金海 YMCA 外国人労働者支援センター 153 89 2 62 55 5 南楊州シャロームの家 107 49 6 太田外国人移住労働者総合支援センター 482 7 木浦移住外国人相談センター 841 141 8 富川移住労働者福祉センター 221 45 9 ソウル外国人労働者センター 140 66 4 23 9 10 ソウル外国人労働者の家・中国同胞の家 5,502 3,284 368 357 727 11 城南外国人労働者の家・中国同胞の家 1,863 398 61 228 281 257 12 城東外国人勤労者センター 656 156 43 65 62 156 13 シフン市外国人福祉センター 40 87 136 14 アサン外国人労働者支援センター 106 14 43 56 1,324 293 21 91 9 8 49 59 15 ヨンイン移住労働者シェルター 840 16 外国人移住労働者人権のための集まり 229 155 18 17 全北外国人移住労働者支援センター 804 276 47 18 キリスト教会富川ナヌムの家 移住民支援センター 299 118 88 19 韓国移住女性人権センター 600 20 216 124 275 99 63 330 29 23 70 38 44 659 318 38 565 1,700 174 595 61 1,000 891 49 5 107 35 20 926 840 80 2,738 180 56 71 163 247 840 36 57 184 120 20 (社) 韓国移住民健康協会 総計 医療 240 325 17,374 5,395 842 936 2,318 2,251 162 486 4,384 10,089 注 : 仁川外国人労働者センターも相談,医療支援を行っているが詳細不明のためリストから除外した。 出所 : 外国人移住・労働運動協議会[2009b]『第 14 次定期総会資料集』より作成。 ― 64 ― 6,819 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 勤労者センターの件数と比べると,四分の一程度である(図表 9) 。相談内容は,協議会加盟団体の 場合,賃金不払いの相談が 32% 占めているのに対し,外国人勤労者センターは 24% であり,その 分事業場変更に関する相談割合が高い。またシェルター事業は 5 割,医療支援は 3 割の団体が実施 している。 次に,図表 10 により,収入の内訳を見てみると,韓国外国人勤労者センターは総収入(2008 年) 11 億 8,466 万ウォンであり,98% を政府の補助金に依存しているのに対し,民間団体はその 1/10 の規模である。外国人移住・労働運動協議会は総収入 1 億 1,498 万ウォンの内,会費が 19%,寄付 が 25%,事業収入 45% を占めており, 政府の補助金に依存していない。ソウル外国人労働者センター は,総収入 1 億 2,132 万ウォンの内,会費が 72%,補助金が 25% である。民間団体でも個別プロジェ クトの委託業務により事業費補助金を受け取っている。 ところで,今回インタビュー調査を行ったのは,図表 11 に記載した団体である。協議体,NPO, 社団法人,労働組合と形態はさまざまだが,労働者の人権を守るという点では共通している。支援 活動の経緯でも述べたように,もっとも古い団体でも 1995 年設立であり,比較的歴史が浅いとい える。支援活動として共通するのは,相談活動,教育・文化活動,PR・キャンペーンなどである。 特に注目に値するのは,コミュニティ・サポートであり,フィリピン人や中国人,ベトナム人など 各国のコミュニティの設定とサポートを行っている。また政策提言(アドボカシー)に積極的であ り,労働政策や制度の改善につなげている。 図表 9 韓国外国人勤労者センターと外国人移住・労働運動協議会加盟団体(19 団体)における相 談内容(2008 年,単位 : 件) 出所 : 韓国外国人勤労者センター資料及び外国人移住・労働運動協議会[2009b]より作成。 ― 65 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 図表 10 外国人労働者支援団体の収入内訳(2008 年,単位 100 万ウォン) 出所 : 韓国外国人勤労者センター資料,外国人移住・労働運動協議会[2010b],ソウル外国人 労働者センター決算書より作成。 図表 11 外国人労働者を支援する団体の概要 団体名 1 2 3 4 形態 設立年 外国人移住・労働運動協議会 協議体 (外国人移住労働者対策協議会) 民間団体 ソウル外国人労働者センター 韓国移住女性人権センター 移住労働者労働組合 NPO 社団法人 労働組合 主要活動 1995 年 ① 人権と労働権の保護 ② 制度の改善活動 ③ 教育・文化活動 ④ 自発的帰還及び再就職支援 1997 年 ① 人権相談と労働相談 ② 医療活動 ③ シェルターの運営 ④ 教育活動 ⑤ コミュニティ・サポート ⑥ 法制度の改善への働きかけ ⑦ 文化事業 ⑧ PR と提言 2002 年 ① 相談活動 ② 教育・文化活動 ③ 政策・研究活動 ④ 母性保護活動 ⑤ コミュニティ・サポート ⑥ 出版・PR 2005 年 ① 相談活動 ② 労働者の人権保障運動 ③ 労働組合の組織化 ④ 教育活動 ⑤ PR・キャンペーン ⑥ 政策提言 出所 : 各団体へのインタビュー調査により作成。 ― 66 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 2. 外国人移住・労働運動協議会28(ソウル市特別市西大門区) (1) 団体概要 外国人移住・労働運動協議会(外国人移住労働者対策協議会)は,外国人労働者の労働基本権と 人権を確立するために,1995 年 7 月に設立された非営利の民間団体である。単一機関ではなく, 外国人,外国人労働者を支援する諸団体の協議機関である。当初は 13 団体であったが,現在は 39 団体であり,毎年総会のたびに変動がある。すべての加入団体が同等の資格を持っており,共同し て支援活動や政策提言を行っている。スタッフは事務所に 2 人である。2008 年の総収入は 1 億 1,498 万ウォンであり,内訳は,会費が 19%,寄付が 25%,事業収入 45% を占めており,政府の補助金 に依存していない。支出は事業費 40%,人件費 37%,業務推進費 6%,運営費 16%,施設費 1% となっ ている29。 (2) 主要活動 ① 人権と労働権の保護 外国人労働者の人権と労働権の保護のため外国人労働者に対する暴行,賃金未払い等の不当労働 行為と人権侵害行為の監視,告発をしている。そのため当団体では,様々な実態調査を行っている。 特に雇用許可制が導入される 3,4 年前は,外国人労働者は深刻な人権侵害の環境にあったため, 多くの実態調査がなされた。例えば,2000 年には産業研修生の実態調査,「外国人白書」,2002 年 外国人労働者の人権の実態調査,女性移住労働者の実態調査などである。また外国人労働者の生活 のために 12 ヶ国語でマニュアル本を出版した。作成に当たり,6 ヶ国を訪問するとともに外国人 労働者へのインタビュー調査を行った。 ② 制度の改善活動 「現代版奴隷制度」と呼ばれた研修生制度を撤廃させるために,上述の実態調査に基づいて , 1997 年に「外国人労働者保護法」制定を要求する明洞聖堂でのハンガーストライキ,2004 年に研 2009 年 12 月 2 日,李キョンスク氏(幹事)との面談による。 28 外国人移住・労働運動協議会[2010b]決算書を参照。 29 ― 67 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 修制度の撤廃,労働許可制の実施のための路上ハンガーストライキなどを行い,研修生制度廃止に 一役買った。また 2009 年には雇用許可制 5 周年を迎えて 533 人に対しアンケート調査を行い,制 度の改正を提言した。 その他,重要な活動として,当団体が中心となり,1999 年に外国人労働者の医療共済制度であ る「韓国移住民健康協会」を設立した。これは日本へ訪問した際に見学した医療控除活動等を模範 としたものである。近年では,移住女性の人権,外国人のシェルターの人権実態の監視や入国管理 局の人権侵害行為を監視,告発するなど,法制度の改善活動を行っている。 ③ 教育・文化活動 国内の外国人労働者支援団体や教育機関,政府,移住労働者送出国の NGO 団体や政府とのネッ トワークを構成して,移住労働者に様々な文化の教育と技術訓練の機会を提供している。例えばコ ンピューター,自動車整備などである。自動車整備は韓国政府とシンフン大学と協力して実施して いる。また多文化祭りも 2007 年から 3 年間実施している。 ④ 移住労働者の自発的帰還及び再就職支援 李明博政権の統合政策で未登録者労働者の強制追放が増加したことにより,母国での就職難など さまざまな問題が発生している。帰還後の再就職と定着に必要な技術を習得し,移住労働者自らの 未来を設計できるように,具体的なモデルを作るために努力している。仁荷大学法科とシンフン大 学との間でコンソーシアムを作って,3 年間ほど当団体でプロジェクトを実施した。現在は個別団 体で運営されている。 (3) 雇用許可制の評価 未登録労働者を含んで約 75 万人いる外国人労働者の 3 分の 1 が雇用許可制によって入国してい る。雇用許可制の肯定的側面は労働権保障と賃金制度が改善されたことと,G2G(政府対政府)に なり民間機関が関与しないことにより,送り出し不正が減少したこと,また事業場離脱も減少した ことである。さらに人権侵害は減少したといえる。特に企業による人権侵害は大幅に減少した。し かし韓国人が持つ差別的認識は不変である。構造的制度による差別は大幅に減少したが,認識的差 別は相変らずである。特にコミュニケーション不足による差別があり,外国人労働者が韓国に適応 するまでの初期のイメージが持続して,信頼関係がうまく作られていない。 雇用許可制以降,外国人労働者は制度的・法的には韓国人労働者と同じ条件が保障されているが, 実際,慣行上で同じ待遇にはなっていない。例えば韓国人労働者は事業場移動に制限がないが,外 国人労働者は事業場変更が 3 回に制限されている。 当団体が,外国人労働者 533 人に対しアンケート調査を行ったが,労働部の実態調査とは乖離し ている。政府の調査は, 労働部の委託運営をしている外国人勤労者センターなどのデータを使用し, 人権団体の調査を活用していない。記者会見を開いて,相違点をアピールすることで,より詳細な 実態調査につなげていきたい。 具体的ケースとして,インドネシア人が雇用許可制で韓国に入国したと思っていたが, ブローカー を通じて入国していたことが発覚した。これにより韓国政府はインドネシアからの雇用許可制によ る入国を 6 ヶ月間禁止した。またミャンマー人労働者の賃金の一部が本人の知らないうちに毎月 ― 68 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム ミャンマーに送金されていた。調査によるとブローカーが企業に要求していたのだという。 (4) 世界金融危機の影響 経済危機の 2008 年秋から 2009 年春までに企業が数多く倒産し,事業場の移動が難しかった。韓 国語が分からないため,自分で探すのは困難であり,全国から救援要請がある。しかし実際に助け るのは困難である。求職期間も 2 ヶ月であり,台湾が 6 ヶ月であることを考えれば短い。2009 年 からは労働部でシェルター事業を始めているが,対応が非常に遅い感じである。 労働者の労働条件は,賃金が 1 ヶ月平均 120 万ウォン(残業代,夜勤手当含む)であり,12 時 間労働である。しかし倒産や休業が多くなり,夜勤,残業等がなくなったため月給が低くなった。 さらに慣習的に企業が負担していた宿舍費が個人負担になったため大きな問題となった。 (5) 李明博政権の外国人労働者政策 李明博政権になったことにより,雰囲気が非常に違う。経済危機のため政府は国家競争力の強化 を最重要視している。受け入れのクォータが 7 分の 1 に削減され,同胞就業者も大幅に減った。中 小企業で必要な労働者より,受け入れのクォータが不足したため,問題が発生した。未登録労働者 の取締りと強制出国が強化された。未登録労働者を取締れば国家競争力が強化されるという論理ら しい。李明博政権以降, 言論報道が保守的に変わり, 未登録労働者たちは犯罪者と誤解されてイメー ジが悪化した。合法的労働者に対しても,すでに法的保障があるのに,これ以上何が必要なのかと 言う態度であり,人間としてではなく労働者としてだけ見ているようである。 (6) 支援ネットワーク 外国人移住・労働運動協議会は韓国内における外国人労働者支援のネットワーク組織としては歴 史も古く代表的な存在である。 国内の市民社会団体,人権団体などのネットワークを通じた情報の交流と連帯の活動を介しての 政策提言,人権侵害への対応など,様々な国内の連帯活動を展開しており,アジアの移住労働者 フォーラム(MFA)などの国際団体とも連帯して, 各国の情報の共有, 共同行動などを展開している。 加盟 39 団体のうち,特色のある活動をしている団体は,韓国女性移住人権センター(女性外国 人労働者,結婚移民),城東外国人勤労者センター(移住児童たちのための放課後教育) ,アジア人 権文化連帯(多文化教育),外国人移住労働者人権を守る会(韓国初の外国人人権センター) ,全国 教師労組とともにモンゴル人スタッフも参加して外国語教科書を作成する活動を行っている。 他のネットワークでは移住労働者人権連帯がある。事務局はないが韓国移住労働者人権センター など全国 13 団体からなっており,当団体とも共同行動をとっている。 ― 69 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 3. ソウル外国人労働者センター30(ソウル特別市中区) (1) 団体概要 ソウル外国人労働者センターは外国人労働者の人権保護と支援を目的として,1997 年 9 月に設 立され,2000 年に NPO 団体登録をしている。2005 年には社団法人「外国人労働者と一緒に」を 設立した。スタッフ(専従)5 人,ボランティアは 10 人である。会員は 1,000∼2,000 人いたが, 現在は 300∼500 人に減っている。個人の後援会員は約 400 人で,企業の支援は多くない。政府の 支援は失業率が高くなっているので,人件費の支援と住居費の支援がある。2009 年の決算書によ ると,総収入は 1 億 2,132 万ウォンである。内訳は,会費 8,132 万ウォン,助成金 1,001 万ウォン, 事業費補助金 1,758 万ウォン,その他 417 万ウォンである。支出の内訳は,人件費 3,400 万ウォン, ビジネス教育費 1,189 万ウォン,事業支援費 1,031 万ウォン,運営費 3,980 万ウォンである。特別 事業費は 1 億 576 万ウォンであり,内訳は,シェルター事業 2,877 万ウォン,医療事業 2,774 万ウォ ン,雇用創出事業(産業人力公団)4,925 万ウォンである。 (2) 主要活動 ① 人権相談と労働相談。外国人労働者の賃金未払い,労働災害,暴行などの被害相談や出国の 問題,家庭問題,送金問題などの相談をしている。単純労働者,韓国系中国人からの相談が多い。 近年は,相談件数は少なくなっている。これは事業者の意識の変化と未登録労働者が 27 万人から 18 万人に減少していることと関連している。不法滞在者は短期滞在ビザで入る場合が多い。京義 道ポチョンからの相談が多い。ソウル市内では東大門での零細縫製工場で働いている。芸能興行ビ ザはかつてロシア人,フィリピン人が多かったが,性売買が問題となり,2005 年以降入国が難し くなった。 「良き隣人クリニック」 ② 医療支援。1999 年より医療共済会に参加している。毎月 2 回教会の中の での無料診療事業を行っている。入院,手術など緊急時の医療費を助成している。最近は政府の無 料医療が増えているので,受診者が減ってきている。 ③ シェルターの運営。病気やケガをした外国人労働者のためのシェルターを提供している。 2009 年 11 月 30 日,朴ソンヒ氏(スタッフ),李ホンチャン氏との面談による。 30 ― 70 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 1998 年に男性用,2001 年に女性用を開設した。 ④ 教育活動。1998 年より毎週日曜日に韓国語教育とコンピューター教育を実施している。その 他労働,教育,帰還教育,生活教育,技術教育(自動車整備)などを必要に応じて実施している。 ⑤ コミュニティ・サポート。同じ国の人同士の情報交換や親睦を図るために,ネパール,バン グラデシュ,ウズベキスタンなど国別のコミュニティを作ることを支援している。 ⑥ 法制度の改善への働きかけ。外国人労働者の人権侵害への最も根本的な原因である不正な法 制度を改善する仕事をしている。 ⑦ 文化事業。サッカー大会,体育大会,旅行,美術展,韓国文化体験,お祭りなどを開催して いる。 ⑧ PR と提言。外国人労働者のための放送局「Salad TV」の開設,daum のカフェ,ウェブサイト, 隔月で発行するニュースレター「旅人合唱」などを通じて,外国人労働者問題に関する広報活動を 行っている。 (3) 雇用許可制の評価 政府は雇用許可制を評価しているが,企業からの視点であり,中小企業が教育を遮断している。 事業場の変更制限など人権問題が残っている。ただし雇用許可制を否定する外国人労働者支援団体 もあるが,当センターは雇用許可制を改善していく立場である。 (4) 女性外国人労働者の現状 相談に占める女性比率は 1 割である。相談内容は男性とほとんど同じであるが,女性特有の問題 としては事業主や上司によるセクハラなどある。賃金や労働時間は性別よりも企業ごとの差の方が 大きい。人権面では性的問題,宗教(イスラム教)などで差がある。雇用許可制になって性別に関 係なく一般的に外国人労働者の状況は改善されたといえる。 (5) 李明博政権の外国人労働者政策 多文化共生の中,移住女性については積極的になったが,外国人労働者については政府の支援は それほど増えておらず,軽視されている印象がある,政策の一貫性がない。むしろ取締りが 2 倍に なっている。取り締まりは一定期間に集中的に行われる。その期間はセンターへの訪問は減る。ビ ザがない場合は,暴力団とつながる場合があり,ひどい状態になる。かつては 10 年以上不法滞在 している場合,事情を斟酌して一時帰国で対応する場合があったが,現在は出入国管理局が法的に 厳密に対応しているため,合法化は困難となっている。 (6) 支援ネットワーク 国内では良き隣人クリニック,アガペー・クリニック,外国人移住・労働運動協議会,外国人移 住労働宣教会,外国人移住労働者医療共済会,生命宣教連帯,社会福祉協議会などと協力して,情 報を共有し,政策提言の際は協力して記者会見をしている。外国人労働者への支援団体は 90% 程 度見解がまとまっている。民主労総系では移住労働者組合などが積極的に活動しているが,雇用許 ― 71 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 可制に対する考えは,当センターと若干異なっている。韓国労総系の外国人労働者支援は規模が小 さくあまり目立っていない。 当センターの代表は牧師である。また長老会と協力関係にあるが布教につなげようとするので, バランスを取りながら活動している。海外とはフィリピンの MFA と協力している。 4. (社)韓国移住女性人権センター31(ソウル特別市市鍾路区) (1) 団体概要 移住女性人権センターは移住女性の人権と福祉のために活動している非営利の社団法人である。 設立当初は移住女性労働者への支援を行ってきたが,近年では結婚して韓国に居住する移住女性の 置かれている状況が深刻なため,移住女性への支援が中心である。韓国においては移住女性に対す る支援団体は増えてきているが,女性外国人労働者を支援する団体は当団体のみである。代表はハ ン・グクヨム氏である。前身は,2001 年に設立されたソウル外国人労働者センター付属の「外国 人移住女性労働者の家」である。 2 月に外国人移住女性の母性保護と新生児の支援事業の開始,移 住女性のためのシェルター事業を開始した。2002 年に独立して,ソウル市の非営利団体の登録を した,2005 年には社団法人の認可を受けている。現在釜山,大邱,忠北,全南など全国 5 ヶ所に 支部がある。活動の目的は移住女性の権益の強化,移住女性の韓国生活適応能力の向上,移住女性 のリーダーシップ開発を通じた自助グループの育成,性差別,人種差別,民族・国籍差別を超える 多民族共生社会への市民の認識転換,姉妹愛と連帯を通じたアジアの平和共存である。 (2) 主要活動 ① 相談活動。電話や面談で,家庭内暴力や性的暴行の被害,性産業に流入して苦しむ外国人女 性の人権被害を相談し,被害者のための心理療法や,医療,法律支援を実施している。相談者は結 婚移民がほとんどである。相談件数は月 70∼80 件で,うち面談は月約 40 件である。国別では中国 56%,ベトナム 28% などである。相談内容は,滞留ビザ問題,家庭問題,家庭内暴行,経済問題 などが多い。 2010 年 10 月 25 日,カンソンウィ氏(事務局長)との面談及び 2010 年 7 月 19 日電話でのインタビューによる。 31 ― 72 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム ② 教育・文化活動。同化政策には必ずしも賛成ではないが,コミュニケーション及び韓国の社 会適応のための韓国語教育,生活文化の教育や体験,情報化教育,移住女性のリーダーシップ開発 のための教育を行っている。韓国語が堪能な人には韓国語の初級教師をしてもらっている。また多 文化社会を拓く支援活動家の教育,性暴行・家庭内暴力の予防教育などを行っている。2 年間の教 育課程を 200 人程度が修了しており,一部は各支部でスタッフとして働いている。移住女性は働き たがるが,学歴インフレ社会の韓国では難しい場合が多い。モンゴル,フィリピンは高学歴が多く, 逆に,ベトナム,カンボジアは低学歴,中国は中間である。 ③ 政策・研究活動。移住女性の権利向上と制度の改善のための定例シンポジウムの開催,アジ ア移住女性の国際会議の開催と連帯活動,国民の意識の向上と制度の改善のためのキャンペーン実 施,移住女性と関連した政策のモニタリング活動を行っている。また移住女性関連政策の研究のた めに,政策研究チームを運営している。 ④ 母性保護活動。医療保険の恩恵を受けられない移住女性に対して医療共済会の無料診療所で 医療サービスを提供し,出産,新生児のサポートなど,母性保護のための医療支援も行っている。 ⑤ 出版,PR。資料の発行, ニュースレターの発行とともに, ウェブサイトで情報を発信している。 一例として外国人女性による写真集「新しく出会う日々」 (写真参照)を発行している。 ⑥ コミュニティ・サポート。女性外国人のエンパワーメントを図るために自己評価の向上プロ グラムを実施している。また各国のコミュニティを支援している。特にモンゴル人女性会は約 4,000 人の会員で全国的に活発に活動している。フィリピン女性は大学路にフィリピン聖堂があって,ミ サの後情報交換をしている。彼女らは英語ができるので多くの情報に接することができる。 (3) 雇用許可制に対する評価 雇用許可制は産業研修制度に比べれば改善されているが, 長期的に見てあまり良い制度ではない。 特に事業場変更の制限や求職期間 3 ヶ月という制度は変更する必要がある。求職期間は住居や食 事の問題もある。また労働者組合にも加入することができない。したがって家族が一緒に住むこと ができる環境と人間としての権利を保障しなければならない。 2004 年に雇用許可制が導入されて,そもそも女性外国人労働者の割合が減った。以前は全体の 3 分の 1 を占めていたのに, 現在は 4 分の 1 から 5 分の 1 に過ぎない。特に製造業分野で顕著である。 韓国内の中小企業がフィリピンやベトナムから安い外国人研修生を雇っていたが,グローバル化が 進む中,企業の海外進出が進み,製造業の空洞化が進んでいるためと思われる。 (4) 世界的金融危機の影響 国内が不景気になったことで外国人労働者のおかれた環境は悪化している。特に,これまで慣例 的に使用者負担だった宿舎費と食費が賃金から差し引かれることにより,外国人労働者の受け取る 金額は 20∼30 万ウォン減少してしまった。これにより平均して最低賃金を下回る外国人労働者も 出てきている。 ― 73 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 (5) 李明博政権の外国人労働者政策 多文化社会を志向する政策は,対象者が結婚移民者に限られているのがほとんどである。しかし 結婚移民者は移住労働者の 20% に過ぎないから,多文化に焦点を合わせるのは意味がない。結婚 移民者の 52% が低所得層であり,彼らに対する支援は低所得層に対する当然実施すべき支援であ ると思う。 李明博政権になって,競争力が重視され,全般的に人権が軽視されている。典型的には,不法滞 在者に対する取締りと強制退去の強化である。以前は取締り期間が決められていたが,現在は一年 中行われている。また以前は組織の仕事だったが,個人の歩合になって評価や昇進の対象になるた め,みんな一生懸命に取締りするようになった。特に今年は,G20 の会議があるため,取締りが強 くなった。まるで外国人労働者を犯罪者扱いしているようで, 李明博政権の人権意識が現れている。 また李明博政権になって各種の移住者支援事業が相次いで廃止・縮小されている。女性部は 2009 年 10 月「1366 移住女性緊急電話」事業を受託運営してきた移住女性人権センターに公文書 を送り契約解約を通知した。家庭暴力など緊急で差し迫った状況に置かれた移住女性に対し相談・ 支援するこの事業は,2006 年から移住女性人権センターなど民間団体が 1 年単位で契約を更新し て受託運営してきた。ハン・グクヨム代表は「女性部では政府が直接運営するという意を表明して いるが,長い間の経験とネットワークを持った民間団体を排除すればむしろ混乱だけを引き起こし 効率は落ちるだろう」と述べている32。 (6) 支援団体のネットワーク 市民団体と政府の関係については,市民団体は外国人と直接接触するので具体的状況を把握して いるのに対し,政府は社会のニーズをよく分かっていないので,法務省や外国人会議,出入国管理 等の委員に市民団体の代表を加え,情報収集をしている。市民団体は政策に対するモニタリングと 問題提起をしている。 女性外国人労働者を支援している民間団体は当団体だけである。結婚移民を支援するネットワー クには入っている。2003 年には他団体と協力して,研修生制度の廃止と労働許可制を要求して, ハンガーストライキを行った。2004 年に韓国女性団体連合に加入している。 『ハンギョレ』2008 年 12 月 06 日付。 32 ― 74 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 5. 移住労働者労働組合33(ソウル特別市西大門区) (1) 団体概要 ソウル京畿仁川移住労働者労働組合(MTU)は 2005 年 4 月に設立された外国人労働者による, 外国人労働者のための労働組合である。ソウル特別市,京畿道,仁川市対象を包括する地域労働組 合で業種にかかわらず加入することができる。当団体の方針は移住労働者の基本的権利を確保する ために,事業場の移動の自由が保証され,未登録労働者が全面的に合法化される労働許可制を要求 している。労働基本権が保障され,劣悪な労働条件を改善するための闘争を展開する。全国の 40 万人の外国人労働者を 1 つの労働組合に組織し,韓国の労働者たちと一つになって共闘していく。 しかし韓国政府は移住労働者組合を認めなかった。未登録労働者に対して労働組合の結成権を認め ることはできないという立場であり,裁判で係争中である。1 審では労働部が勝訴し,2 審では組 合が勝訴をした。現在,高裁と最高裁判所の判決を残している。最近 ILO がこの労働組合を認め るよう勧告を出したが,基本的には設立の承認を受けることはできず,労働組合としての固有の活 動はまだできていない。 設立の契機は,未登録労働者に対する政府の弾圧と雇用許可制の実施に反対して,2003 年 11 月 から 2004 年 12 月にかけて座り込みが行われたことである。盧武鉉政権は,雇用許可制の実施に伴 い,2003 年 3 月 31 日を基準日とする救済措置を提示した。 ① 不法滞在期間が 3 年未満は,最大で 2 年の滞在延長を許可,② 滞在期間が 3 年以上 4 年未満は,一時出国後再入国を認め,これまでの 滞在期間と合わせて 5 年になるまで滞在・就労を許可,③ 滞在期間が 4 年以上は,2003 年 11 月 15 日までに自主的に国外退去,期限後は罰金の上強制退去である。このため 2003 年から 2004 年 にかけて,大規模離脱や未登録外国人労働者が大量に発生した。同時に政府は大規模な強制退去を 開始した。それに対する抗議活動が盛り上がり,全国から約 1,000 人の外国人労働者たちが明洞聖 堂で座り込みに参加した。 2009 年 11 月 30 日,李ジョンウォン氏(教育デレクター),ネパール人労働者 A 氏との面談による。 33 ― 75 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 現在は会員数約 200 人で,スタッフは委員長,組職局長,地域幹部を含め 8,9 人である。リーダー が何回も逮捕されたが,リーダーがいなければ組織の維持が難しいので,新しいリーダーを立てな ければならない。経費は組合員の会費と韓国人の定期的な支援金に加えて,移住労働者たちを支援 する団体から補助金を受けている。 年に一度食べ物を作って販売するイベントを通じて, 収益が入っ て来る。最近は未登録労働者だけではなく登録労働者たちの割合も高くなって状況が少し改善した。 (2) 主要活動 ① 相談活動。賃金不払い,産業災害,労働権と係わる相談や解決を主に行っている。人権侵害 の事例は労働者相談で 70% 以上解決される。 ② 労働者の人権保障運動。悪質事業者の公開,政府の取締り・追放政策に抗議するキャンペー ンなど労働者の人権保障運動を行っている。使用者たちが未登録労働者の弱い立場につけこんで, 賃金不払いや産業災害の未補償をしている点や,取締り政策を悪用して労働者たちの権利を侵害し ている点に抗議し,合法的身分を取り戻すために運動している。毎年 3 万人∼10 万人まで追放す るという取締り政策は解決策になるどころか,労働権問題を悪化させるといえよう。 ③ 労働組合の組織化。移住労働者は現在 60 万から 70 万人いるが,依然として労働組合による 保護の死角地帯に置かれている。100 人未満の小さな事業場では,韓国労働者も含め労働組合に組 職されていないので,組織化を進めている。 ④ 教育活動。韓国語ができないことにより法律・制度に対して無知であることを改善するため, 教育を行っている。 ⑤ PR・キャンペーン。政府の不当な政策に対して,告発する活動をしている。また韓国人の支 援が重要なので,韓国人に対するキャンペーン活動もしている。 ⑥ 政策提言。移住労働者に関する法律や制度の改正,立法活動を民主的なものにするため多く の団体と協力して活動している。 (3) ネパール人労働者 A 氏へのインタビュー A 氏は 1994 年に産業研修生として,韓国に入国し,2005 年に紹介を通じて当組合に加入した。 現在ネパール人は 7,000 人程度で 40,50 のコミュニティがある。移住労働者組合は 6 年前からで ネパール人が 50% でバングラデシュ人が 30%,フィリピン人が 15%,その他 5% である。会員は 200 人程度。未登録者が多くて取締りにあうため,会員の変更が多い。以前は出入国管理局が取締 りをしたが,最近は警察も取締りに加わって,一層強化された。 特に夜間の仕事をして帰る朝 の 5 時から 6 時の間,帰宅途中に警察に取締りされるケースが多い。移住労組で長い間活動しながら, 企業の不当な待遇や不払い賃金等の相談を受けて,解決した時が一番嬉しかった。しかし未登録状 態で外出すれば,取締りにあうため,労組の建物の中でずっと生活をし,外出できないことが一番 苦しい。 (4) 雇用許可制の評価 研修生制度の時は労働者として認定されなかった。雇用許可制になって極端な横暴は消えた。強 ― 76 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム 制的に賃金を管理するという事例もほとんど消えたと思う。ただし契約延長権は事業主にだけある ので,再契約を望む外国人労働者たちは積極的に権利を行使することができない。これでは改善し た意味がないと思う。未登録労働者たちが続出して,差別などの根本的な問題を解決することがで きなかった。短期ビザで入国して不法滞留する場合が多い。そのためバングラデシュ等は観光ビザ を受けるのが困難になっている。また返還金制度があり, 企業が倒産した 1 年以内に届けると 2, 3ヶ 月の賃金を政府で支援してくれる。申告期間が過ぎても訴訟をすれば部分的に受け取れることもあ る。 政府は外国人労働者の定住化と家族の呼び寄せを阻止するために,不当な政策をとっている。こ れでは低賃金,長時間労働の「人力搾取制」である。移住を弾力的に運営し,選択の機会を増やす とともに,滞在期間を延長できる制度的改善が必要である。そのほうがむしろ長期滞在を減らすこ とができると思う。また出生率低下で深刻な問題になっているので,人口問題の解決につながるの ではないかと思う。 韓国経済は短期間で発展し,民主化も短期間に急激な変化をもたらした。外国人労働者問題がイ シューとなったのは,外国人労働者たちの悲惨な境遇が韓国の 70 年代における労働者たちの現実 とオーバーラップしたためと考えられる。これまで外国人労働者自身が声を上げることによって, 支援団体と世論が結合しながら,部分的改善がなされたと思う。これからも外国人自身が声を出す ことができる空間を確保していかなければならない。 (5) 世界的金融危機の影響 世界的金融危機のため倒産や休業する企業が増え,優先的に外国人労働者を解雇する問題や賃金 不払い等の問題が深刻になった。さらに事業者,労働者合議の下に慣例上,事業者が提供して来た 宿舍費を労働者が支払うようになった。政府は雇用許可制のクォータを 3 万∼5 万人に半分以上減 らした。特に特例雇用許可制(韓国系外国人,H 2 ビザ)での入国者を大幅に削減した。3D 分野 - の中小企業では,不景気の中でも,韓国人労働者と外国人労働者は必ずしも衝突はしていない。衝 突は実証されているというよりは,イメージによるところが大きい。しかし建設業やサービス業は 韓国系中国人が多くて衝突する場合がある。ウォンの価値が落ちて,送金額が大幅に減った労働者 たちが増加した。それでも本国には帰国しないで耐えている。 (6) 女性外国人労働者について 女性外国人労働者の比率は 30% 程度で,相談内容は賃金不払い,退職金,職場移動,不当解雇 などであり,男性と大きな違いはない。女性特有の問題は,妊娠をしたときに解雇されるケースで, これは当然不当解雇だが,使用者はいろいろ不便だと考え,解雇をする場合が少なくない。また事 業場内での性暴行,セクハラ問題がある。この問題は実際に発生している件数に比べて,相談依頼 は極めて少ないと考えられる。被害女性が申告しても,言語コミュニケーション問題,目撃者の陳 述確保などの問題で非常に不利だからである。事業主が頑として否定する場合には,問題が解決さ れないケースが非常に多い。 賃金,労働時間,人権等における男性との格差では,賃金は女性外国人労働者が男性外国人労働 ― 77 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 者に比べて少ない。韓国人労働者と外国人労働者の間に格差があって,また同じ外国人労働者でも 男性と女性の間に格差が存在している。労働時間は特に差がなく,むしろ各事業場により差がある だけである。 人権問題は女性たちがより厳しい境遇にあることが事実である。外国人という差別に加え,女性 として差別を経験するからである。特に先述の事業場内の性暴行問題が非常に深刻である。制度で は均等処遇を法で明示しているが,現実は違う。韓国の場合,政府の外国人女性関連政策が圧倒的 に結婚移住女性に合わせられていて, 女性外国人労働者たちの問題は完全になおざりにされている。 女性外国人労働者の実態調査さえ十分ではない状況である。 また女性たちの場合,人身売買により入国をするケースが報告されている。就業ビザを得ること ができない場合,ブローカーや犯罪組職を通じて偽装結婚で入国し,性売買業店などに強制に送ら れる。彼女らはビザなどの費用を払うため,セックスワーカーとして働き続けなければならない。 また芸術興行(E 6)ビザ を受けて入って来た女性たちもこのような性売買業店に強制に送られる - ケースが報告されている。 産業研修制に比べれば,労働法の適用を受けることができるという点で改善したということもで きるが,産業研修制自体はまさに野蛮な制度だから,この制度と比べて改善したと言うのは,今日 特に意味はないと思う。むしろ韓国では雇用許可制施行 6 年が経過し,この制度の深刻な問題点が 明らかになった状態である。先述のように,女性外国人労働者たちは,低賃金,長期間労働と事業 場内性暴行とセクハラ 問題などに苦しんでいるにもかかわらず,その実態さえ充分に把握されな い状況だから憂慮が大きい。 (7) 李明博政権の外国人労働者政策 盧武鉉政権と李明博政権とは基本政策が同じだが,外国人労働者に対しては徹底的に統制する政 策になった。またより一層取締りが強化されたという点をあげることができる。 他方,高学歴,専門職,韓国への投資者に対しては,滞在期間が 5 年未満でも永住権申し込みが 可能になった。また不動産投資をする外国人もお金を支払えば永住権申し込みが可能になった。こ のように両極化された政策が続いている。政府は結婚移住女性,子供たちに対する多文化政策には 予算を投入しているが,これはすべての外国人を包括していない。多文化家庭に対する進展はある が,外国人労働者たちに対する政策は全然改善していない。 おわりに そもそも筆者が外国人労働者に対する支援活動に関心を抱いたのは,日本における外国人研修生 たちの悲惨な実態を知ったことがきっかけである。時給 300 円という低賃金, パスポート取り上げ, 34 と批判 強制貯金,未払い賃金,人権侵害など様々な問題点があり,国際的にも「現代版奴隷制」 国連決議に基づき,日本に住む移住者の人権状況を調査している「国連移住者の人権に関する特別報告者」 34 であるホルス・ブスタマンテ氏は 2010 年「研修・技能実習制度は,往々にして研修生・技能実習生の心身の 健康,身体的尊厳,表現・移動の自由などの権利侵害となるような条件の下,搾取的で安価な労働力を供給し, ― 78 ― 佐野 : 韓国における外国人労働者支援システム されている。福島県においても,縫製業者が,ベトナム人女性の外国人研修生からパスポートを取 り上げ,時給 300 円と言う低賃金で働かせ,しかも強制貯金を含めた未払い賃金は数百万円におよ ぶという典型的な事件が発生した。これに対し,福島大学の坂本恵教授が解決に立ち上がった。そ れに賛同するメンバーが集まり,2009 年には,国際女性教育振興会福島県支部,中小企業団体, 弁護士,行政書士,大学研究者らとともに,外国人研修生らを支援する「地球市民の働き方ふくし まネットワーク」を立ち上げた。さらにアクションプランを策定した35。筆者もメンバーの一人で あり,外国人研修・技能実習生制度に代表される「日本モデル」を廃止し, 「韓国モデル」である 雇用許可制を導入すべきであると提言している。 支援システムに関しても,韓国の市民運動・市民団体から学ぶことが大きかった。まずは「一粒 36 の精神である。当初はどの団体も 1 人のリーダーから始まっている。外国 の麦,もし死なずば」 人労働者に対する共感と不正に対する怒りを持って立ち上がった。それが,マスコミによって増幅 され,国民運動となり,政策を大転換させる原動力となった。 次に,「何かをしてあげる」といういわゆる「支援」にとどまらず,外国人労働者のエンパワー メントに力点を置き始めている。外国人労働者のコミュニティの形成,外国人労働者自身によるイ ンターネット放送局,外国人労働者による労働組合など,韓国人はバックアップに徹している。 逆に,「熱しやすく,冷めやすい」側面も持っている。外国人労働者のおかれた環境が一定程度 改善すると,支援団体数や支援金額は急減してしまっている。政府の政策もスピーディだが,盧武 鉉前大統領から李明博大統領に変わって, 外国人労働者に対する関心と支援は急速に弱まっている。 「地 以上,問題点も抱えているとはいえ,スピード感と情熱にあふれた韓国の支援活動に学び, 球市民の働き方ふくしまネットワーク」においても活かしていきたい。 謝 辞 本稿は福島県男女共生センター公募研究( 「外国人研修・技能実習制度にかかわる男女平等の労 働環境構築のための『アクションプラン』策定と派遣国の実態把握に関する国際比較・調査研究」 ) および福島大学プロジェクト研究推進経費( 「福島県在住外国人労働者の権利擁護施策の検討と, アクションプラン策定に関する国際比較・調査研究」 )の研究成果の一部である。またインタビュー 調査に応じてくださった皆様に対して改めて感謝の意を表したい。 奴隷的状態にまで発展している場合さえある。このような制度を廃止し,雇用制度に変更すべきである。」と 述べている。国連広報センタープレスリリース「移住者の人権に関する国連専門家,訪日調査を終了」,2010 年 3 月 31 日付。 坂本恵編[2010]「外国人研修・技能実習制度にかかわる男女平等の労働環境構築のための『アクションプラ 35 ン』策定と派遣国の実態把握に関する国際比較・調査研究」参照。 「一粒の麦もし,地に落ちて死なずば,ただ一つにてあらん,死なば多くの実を結ぶべし」『ヨハネ伝』第 12 36 章 24 節。 ― 79 ― 商 学 論 集 第 79 巻第 3 号 参考文献 A. 日本語文献 天瀬光二[2006] 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