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市政クラブ21
平成21年度
会派視察報告書
記
日
程:
7月7日(火) 登別市→新千歳空港(9:30 発)→(11:05 着)羽田(11:35 発)
→那覇空港(14:05 着)→(10 ㎞
20 分)→
→総合精神保健福祉センター視察(南風原町 15:00~17:00)
→沖縄ワシントンホテル宿泊(17:30 頃)
7月8日(水) 沖縄ワシントンホテル(9:00 出発)
→就労サポートセンターミラソル視察(那覇市 9:30~12:00)
→ホテルルートイン名護宿泊
7月9日(木) ホテルルートイン名護(8:00 出発)→(70 ㎞・1 時間 20 分)→
那覇空港(10:30 発)→鹿児島空港(11:45 着)
→(76 ㎞・1 時間 25 分)→
→知覧特攻平和館視察(南九州市知覧町 14:30~15:30)
→(25 ㎞・50 分)→
→道の駅いぶすき視察(指宿市 16:00~17:30)
→(33 ㎞・1 時間 10 分)→
→鹿児島東急ホテル宿泊(18:30 頃)
7月10日(金)鹿児島東急ホテル(8:30 出発)→(38 ㎞・1 時間 20 分)→
→南さつま子どもの家視察(南さつま市 10:00~12:00)
→(75 ㎞・1 時間 40 分)→
→鹿児島空港(15:45 発)→(17:25 着)羽田(18:05 発)→
→新千歳空港(19:40 着)→登別市
1.沖縄県立総合精神保健福祉センター
(報告者:山田新一)
<所在地>
〒901-1104 沖縄県南風原町字宮平212-3
℡ 098-888-1443/FAX 098-888-1710/E-mail : [email protected]
<視察項目>
・ センター概要
・ うつ病外来の概要(治療プログラム、年齢性別構成など)
・ 企業、その他保健福祉機関などとの連携事例
・ 県下自殺者対策との関りについて
<内
容>
当センターでは、うつ病患者の回復を支援して、就労や家事等の復帰を図る目的で、全
国に先駆けて認知行動治療法中心としたプログラムによる「うつ病デイケア」に特化して、
平成17年から開始し、今年で5年目を向かえている。これまでに、多くの利用者が職場
復帰を果たすなど効果が顕著に表れている。
我が国では、自殺による死亡者数が急増している深刻な事態に対応するため、平成18
年に自殺対策基本法が施行された。「うつ病は直る。自殺と交換する事ではない」言う考
え方から当センターでは、自殺対策を総合的に展開するために行動計画を示して次の取り
組みを行っている。
「生き心地の良い社会の実現」を行動計画の目標として掲げ、取り組みとしては、「精
神デイケアー」「自殺防止対策 」「引きこもり対策」等であり、対象者は30歳から55
歳までとしている。
うつ病を改善する策としては、①今の自分の気分について把握すること。②マイナス思
考を自由に修正出来ること。③人間関係を増やせること。④自己主張が出来ること。の4
点が改善出来れば就労や家事等の復帰が図れる目安になると考えられる。さらに個人を取
り巻く環境は、本人では変えることが出来ない事が大半であるが、それを本人の心の中で
受け入れて、どうしたらプラス思考に切り替えて行く事が出来るのかを模索出来れば、う
つ病から脱皮出来た目安となるとの事であつた。
当センターでは、これまで、多くの施設利用者が、職場復帰を果たすなどその効果を上
げ、訓練を終了した人の就労は60%以上である。さらに就労先の職場内において、うつ
病の正しい知識と理解を得ることと、その対応の仕方についても、就労先の企業に職場復
帰が円滑に出来様に復職支援連絡会議等を実施している。本来必要としない施設であれば
一番いいのではあるが、、、、、、との説明を受けた。
当市においては、うつ病の患者が何人いるのか把握はしていないが、多くの人が潜在的
にその可能性を持っているのだろうと思われる。市単独での事業は難しく、少なくとも支
庁単位でこの様な施設が必要で有ることを認識した。道、国への働き掛けへの方向性の足
がかりとなつた意義ある視察であった。
2.就労サポートセンターミラソル
(報告者:熊野正宏)
<所在地>
〒900-0005
那覇市天久 2-19-22
℡/FAX 098-894-5570/E-mail : [email protected]
※ひまわりハウス
〒903-0125
沖縄県中頭郡西原町字上原 97 番地/TEL 098-944-2874(FAX 兼)
<視察項目>
・法人概要
・ 「ミラソル」施設概要
・ 就労支援プログラム概要
・ 利用者状況詳細(障がい種別、年齢性別構成、定着率、就労意向率など)
・ 職場実習の現地視察
・ 沖縄県下の障がい者就労の現況について
<内
容>
1.視察先
就労サポートセンターミラソルを訪問し、その施設の概要、就労支援プログラム概要、
利用者状況、職場実習の様子、沖縄県下の障がい者就労の現況などを聞いた。
2.就労サポートセンターミラソルの概要
……
一杉光男氏
平成18年3月、つまり自立支援法の訓練
給付がスタートする半年前にこのミラクル
を立ち上げた。障がい者を半年間、自立支援
法が始まるまで無償で就職をさせてきた。
厚生労働省から平成20年度障害者自立
支援基盤整備事業での補助820万円を受
けて、就労サポートセンター・ミラソルをリ
ニューアルし、これまでの19坪ほどの狭い
環境から、ミラソル全体での面積は、126.
545㎡(38坪)になった。
3.事業概要
…… 葛原明美氏
ミラソル会は、平成9年(1997年)9月20日。
地域で暮らす精神障害者の就労支援・生活支援を目的
に、主婦やボランティア、精神保健福祉に携わる一般
市民が中心になって立ち上げた精神障害者小規模作業所「ひまわりハウス共同作業所」が
基盤の市民団体です。地域福祉活動を行うための市民グループとして立ち上げた。
平成13年(2001年)からは、特定非営利活動法人として沖縄県知事より認証を受
け、作業所活動以外にもグループホーム事業(働く方のための)、平成14年から、職場適
応援助者(ジョブコーチ)事業、職業委託訓練事業、就労移行支援事業、グループ就労事
業、障害者就労支援実践講座等を通して、広域にまたがるハンディキャップのある方々の
生活・住居支援、就労支援を行っている。
平成18年サポートセンターを立ち上げるまで、作業所の間に、8年間で20名の就職
者を出しました。非常に定着率も高く、個人の特質を見据えた支援をしてきた。
施設から押し出さないような授産活動を行わず、民間企業での職場実習とグループ就労
訓練を主体とした実践的な職業リハビリテーションを行い、就労移行していくのを支援し
ている。
障がい者の方の働きたいという本人の夢を大事にし、働きたい夢を実現する就労支援と
言うことがこのセンターの理念です。現在は、5障害(5障害=知的、身体、精神、発達、
高次脳)を対象にしているので、大変な部分もある。
4.就労実績
知的
精神
身体
平成18年度
10
6
2
……18名
平成19年度
15
9
1
……25名
平成20年度
12
7
0
……19名
平成21年度
4
1
0
……
5名
現在、4年間で合計67名の方が就職した実績がある。全員民間の企業に就職している。
月に、1人ないし2人平均である。
主な就職先:
沖縄トヨタ(知的)、佐川コンピュータシステム(精神)、サンエーウイングシティ(接客)、
沖縄三越(精神
レジ)、明治安田生命(封筒わけ、銀行まわり)、オリックスゴルフマネ
ジメント(ダウンー調理)、JA(精神)など多岐にわたる。
障害があるからと言って小規模事業所というのではなくて、大きな企業で社会保障もき
ちんとしている企業で長く勤務が出来るところを選んでいる。
10年後に、今より良い生活が出来る、つまり先を見据えた支援を目指している。一ヶ
所にまとめて就労というのではなく、障害の度合いや本人の希望を重要視している。
また介護の仕事も多い。就労の27%は介護の仕事に就いている。流れがゆるやかで、
受け入れ態勢もいいし、定着率が高い。
沖縄県は、8%以上の失業率であり、零細企業が67%を占める。その中で障がい者が
就職するというのは非常に厳しいものがあるが、本人達が働きたいという意欲を持つかぎ
り、支援していくし、本人が働きたいという職種を開拓していく。この点が、ミラソルの
特徴でもある。
5.就労移行4つのポイント
1)夢を具現化するアセスメント……本人の夢、希望
それに沿った就職先を探す
2)徹底した SST(ソーシャルスキルズトレーニング)……職業準備性の課題を繰り返し
トレーニングする方法と座学。朝の挨拶からきちんとやる。座学も15種類
職員が担当
し、外部講師はいない。
3)実践型職業リハビリ……民間で通用する職業人に育てる。3個所で職場実習をしてい
る。627円の時給をもらうわけだから、それに対応した職業人を育てる。
4)ジョブコーチ3名が評価、開拓、コーディネートを行う。担当者の一人はハローワー
クで専門援助をしていたことがある。
6.職業準備性の3段階
1)職業適合性
自分の持つ労働能力を知り、自分に合った仕事との適合ができること。
ここでは、お金の管理が出来るなど職業生活の準備性を整えようとしている。
2)職業生活の準備性
業務遂行に必要な指示伝達、報告力、集中力、持続性、熟練度、社会的責任感、謝罪す
る能力、適応性などを磨く。
3)社会生活の準備性
健康管理、人との約束、金銭管理、時間の管理、公私のけじめ、善悪の判断、生活上の
規律性、向上心、規則正しい生活など、人としての基本的なことが出来ること……これが
ないとジョブコーチとして教えても身に付かない
7.一日の流れ
ミラソルの一日はミーティングから始まる。登所してから、ミーティングが始まるまで、
私語は禁止。
ミーティングは体調のチェックと 1 日の予定確認、その後マナー訓練を行う(訪問時は、
ちょうどミーティングの最中だった)。
大きな声で挨拶や、接客用語を全員で復唱します。室内屋外の清掃後、それぞれの職場実
習場所へ向かいます。時間に余裕のある時は、障害者自らが、一般求人情報誌から自分の
希望求人を探しているという。
1)コミュニケーションをよくする言葉の復習
お早うございます、お帰りなさい、失礼いたします、ありがとうございます、など
2)仕事の心得十ヶ条
・失敗したら素直に謝る ・時間を守る ・与えられた仕事に感謝する ・身だしなみ
・
体調管理……こういう基本的なことすら守れないとお金をもらうことは難しいと言うこと
を厳しく教える
3)企業実習の場所
・カトリック文化センター、スポーツデポ、うまんちゅ首里(企業施設)、まんまるちんす
こう(食品工場)、マンション管理など
ここで、清掃活動(1時間程度)、ハンギング、清掃活動など(1時間半程度)、ベッド
メイキング、配膳など実習作業(食事もともにする)、パッキング作業、シール貼り、袋詰
めなど、徐々に、仕事の内容、時間など負荷を増やしていく。
4)座学の種類……働くのに必要な技術、対人技能、自己表出性を高める訓練
・OA(パソコン)講座、電話接遇、販売接客シミュレーション
・雇用面接シミュレーション、音楽療法、履歴書・職務経歴書講座、家計簿学習(自立の
ための訓練……自分が一ヶ月生活するのに必要な金額と働いて得られる金額の把握)、新聞
を使っての情報処理など
・厚生労働省一般職業適性検査など
・座学では実践力をつけることを目的にしている。
また、興味深いプログラムの一つに郷土講座があります。沖縄の地理や風習、特産物な
どを学ぶことで、就労後、職場の方々とスムーズなコミュニケーションを取るのに役立つ
そうです。
8.企業との連携(障がい者雇用へ向けて)
・企業の求める人材は、働ける人……生産性のある人間を求めている
・福祉に関係しているとその点が、甘くなる
実際は通用しない。
・事業者側からの視点で送り出すよう心懸けている、そうでないと、定着しない。
企業に対し障害者雇用を提案する際に重要なのは、事業所の視点に立った具体的な情報
提供とアドバイスです。
1.制度の提示
内容の説明
地域で使える制度の説明をしながら企業と連携する
2.いい人を送り出す
3.後のフォローもジョブコーチがやる
定着率8割以上をキープしたい。そのためには、フエードアウトしてからのフォローも
必要。10年後も働いているか、納税者として社会人の勤めを果たしているを確認したい。
助成金制度など事業所にとって有益な情報を伝えるとともに、障害特性、個々の障害者
の個性の把握、接し方や指導方法など、障害者雇用のノウハウをしっかりと伝えます。ジ
ョブコーチは、利用者にとって働きやすい職場環境を整えるのはもちろんのこと、時には
「求める成果がその程度で本当に障害者が自社の戦力になると思うか」など企業の立場に
立って本音で担当者と話し合い、形だけの障害者雇用にならないようアドバイスします。
利用者、事業所双方の目指すレベルをすり合わせ、同じ目標を持って仕事を開始・継続
することが重要なのです。
ミラソルのスタッフは、利用者と事業所双方のサポーター役を担っているといえる。
職場が求めている人は障害種別に関係なく、職業準備性が整っていることと、
「継続して
働きたい!」という強い思いを持っている人である。
個人個人の希望に出来るだけ添った仕事の場面を経験することで「自分も働ける!」と
いう成功体験を重ねさせる。
支援者には、職場の中で対象者を確実に評価していくことが必要であり、働く能力のあ
る人を社会人として送り出していきたいという強い子持ちとねばり強い支援が求められて
いると思う。
9.養護学校における問題点
・養護学校は卒業と同時に手を切るなど、後のフォロー態勢が不備
・養護学校だけでは、職業準備性がない、ジョブコーチがいないなど、企業に送り出すに
は不備
・養護学校から送り出した生徒の定着率が非常に低い……企業も、以後の採用に難色を示
す
・養護学校の評価とミラソルの評価では異なる場合が多い。養護学校での評価は、例えば
シール貼りだけは出来ますという一面からだけの評価である。しかし、それだけでは働く
ことが出来ない。つまり、社会生活への準備性が整っているかなどの評価が必要というこ
とを認識してもらう。
10.ミラソルの特徴(一杉理事長)
1)ミラソルでは授産活動は一切行なわない。
なぜ、授産事業をやらないか……合理的でない、資金がかかる、企業への就職ができる人
を育てることが出来ないなどの問題もあるが、最大の理由は、授産施設では、6割から8
割まで職員がつくる。本人達は、残りの2割しか担当しない。つまり、授産施設では一般
企業で働く力を養成することは困難だと判断している。
2)職業訓練を目的とする活動メニューは、①民間企業での実習と
②就職に向けた座学
一般就労を見据え、企業内で実習、訓練を行うことが、その人の働く力を高めるのに最
も効果的であると考えています。座学では、民間企業で通用する基本的な職業スキルを身
につけます。
「就職の準備が整った人から、就労移行させる」ことにしており、就労移行支援、就労継
続支援 B 型、いずれの所属であっても平均3カ月~6ヶ月という短期間での就職を実現さ
せています。
また、リハビリ、企業開拓、ジョブマッチングの全てが、自前で全部出来る。さらに、
座学も全部自前、評価もきちんと出来るし、企業マッチングもきちんと把握できる(外部
講師では出来ない)
3)ミラソルは職業リハビリからジョブマッチング、フォローアップまでの一貫支援とい
うシンプルなプログラムが特徴です。
「就職したい人を支援し、確実に就職させる」という目的に照らし、「余分なことはしな
い」、「限られた資源で最大限の成果を狙う」という姿勢を貫いている。
4)職業訓練のための生産設備は自前で持たないのも方針の一つ。企業で通用するスピー
ドと処理量を学ぶには現場に入るのが一番効果的だという。
支援のポイントは、ゴールから逆算した最短コースの支援計画と実践にこだわった訓練。
ゴールは「民間企業で通用する職業人を作る」というただ一点です。
ジョブコーチや職業カウンセラーのノウハウを活用し、実習との組み合わせが重要な座学
では SST(ソーシャルスキルズトレーニング)も用いて、就労生活を送るための準備を繰
り返しトレーニングします。
5)雇用開発協会やハローワークとの連携
事業者へ制度の認識を高めさせる必要もある
6)高い就職率と定着率の秘訣は、
①本人の夢と特性に合わせたプレのない就労支援
②職場実習と並行して、スタッフは
・アセスメント
・職場開拓
・企業コーディネート・サポート
りの夢と特性に合わせて進めることにある。
を利用者一人ひと
これらのサポートを、センター長を含め
わずか7人のスタッフ(うち、3名がジョブコーチ)で行なっている。
11.一杉理事長の言葉から
・全国に3千個所就労移行支援事業所がある。そのうちの、54%は就労移行事業所であ
るにもかかわらず、就労移行を行っていない。つまり、補助金目当ての施設さへ存在して
いる。
・ここの施設入所者の程度は高いのではないかという問いに……いや、それは違う。ここ
の入所者の8割は重度判定の認定を受けている。
・その子達は、職安から、つまり、国から働けないと認定をうけた障がい者ばかりだ。
・大事なのは、それをあのレベルまで持っていく努力だ。
・ここでは、リハビリの基本システムの中で、最低限の社会性順応性をもたせる訓練を徹
底している。だから、レベルが高いように見えるのかも知れない。
・本来は、養護学校でここまでやるべきなのだ。ところが現実は、履歴書ひとつ書けない
子ども達を送り出している。
・いまの養護学校のあり方は、見直すべきだと考える。
・一定レベルの資格をとらせるくらいの内容にしないと世間では通用しないと考える。
・授産施設に送り込む程度の教育でいいと考えている養護学校のありかたが問題だ。
・ここの利用者の内、94%の就職率を保っている。
・ここの利用者は、働くことに対するモチベーションが高い。養護学校の卒業生などは、
親が働かせたいと願うケースが多いが、ここは、自ら働きたいという意識が高い。
・就業体験を多くさせることで、働くことへの意識を高める努力が必要。
・養護学校でも、企業実習を多く取り入れるべき
・5障害の子供達
重度の障害を持つ子供達でも出来ることは必ずある。
・障害はデメリットではない、メリットでもある、その子の特性を見つけて生かしてやれ
ば、だれでも就職できる
・まずは、本人の夢を希望を聞く
そこが、このミラソルの他との違いだ。
・車イスで身体合併症で、しかも知的障害を持つ子どもを就職させたいと夢を持っている。
・彼等が働く場所は必ずある、それも授産施設ではなくて民間企業の中にきっとある。
・それが出来れば不可能なことは何もない。これまで取り残されてきた身体合併症の問題
を取り組んでいきたい。
・今年はそれを最重要課題として、職員に宿題として出している。私も、職員共々頑張っ
ていきたい。
12.まとめ
障がい者の自立支援というと、授産施設を出来るだけ多く設け、そこでの働き場所を確
保するのが最適の方法だと認識していたが、今回、ミラソルを訪問して、その考えが間違
っていたことを知ることが出来た。
「障害はデメリットではない、メリットでもある。その子の特性を見つけて生かしてや
れば、だれでも就職できる」という一杉氏の熱い言葉は、これからの障がい者の自立支援
という施策の本質を、的確に言い表していると思う。深く感銘を受けた視察であった。
3.特攻記念開館・武家屋敷
(報告者:沼田一夫)
<所在地>
南九州市知覧町郡 17881(旧知覧町)
℡
0993-83-2525
<視察項目>
・ 平和教育の現地視察
<内
容>
同館は太平洋戦争末期の沖縄決戦において飛行機もろとも敵艦に体当たりした陸軍特
別攻撃隊員の遺影や遺品・記録などの資料を展示し、当時の真情を正しく伝えると共に世
界恒久の平和を願って、まちづくり特別対策事業の一環として昭和60年から2年間継続
事業で建設された。
昭和17年に大刀洗陸軍飛行学校知覧分教所が開校。少年飛行兵をはじめ学徒出陣の特
別操縦見習士官らの訓練をしていたが、戦況が緊迫すると特攻基地へと変容した場所であ
る。
ここから出撃した者は20代前後の若者が殆どで、時代背景はあるものの、1,036 人の尊
い命が「お国のために」と散っていった。
展示されている遺品の中には、出撃前に書いた肉親宛ての手紙(遺書)も多く含まれて
おり、その心情を思い涙を誘う。改めて戦争の残酷さを知ると共に、この若者の尊い命が
今日の平和をもたらしていることを感じた。
そして、多くの若者にもこの事実を知ってもらいたいと願った。
4.道の駅いぶすき
PFI 方式
(報告者:上村幸雄)
<所在地>
〒891-0314
℡
鹿児島県指宿市小牧 52 番地 4
0993-27-9022
<視察項目>
・事業概要
・PFI 方式導入までの経緯
・PFI 方式導入による評価・課題
・現地視察
<内
容>
1.建設までの経緯について
□ 農産物加工組合より、地場産品の消費拡大を図る為の産地と直結した販売所などの
設置要望。
□ 漁業者などからも、地場産品の鮮魚・魚加工品の直接販売する事のできる場所など
の設置要望。
□ 市民まつり委員会より、平成13年度指宿市総合振興計画において『地元産品販売
物産会』の設置などの設置要望。
□ 指宿市市議会・指宿商工会議所より、『直売物産センター』や『道の駅』などの設
置要望。
この様に市民・地域・各種団体より設置要望があり、市は指宿市総合振興計画(H13
年~H22年間での計画)に地場産業の振興育成を図る観点から『物産センター』・『物産
館』などの機能を持った『地域交流施設』の建設を盛り込みました。
この様な考えから、民間活力の積極的な導入を図ることにより、民間の有する各種ノウ
ハウや、良質なサービスが市民に提供される可能性が高く、最も地場産業や地域振興に貢
献できるとの考えから、
『道の駅いぶすき』を南九州地区で初めてのPFI方式による導入
を推進致しました。
2.『道の駅いぶすき』の整備内容について
□地域交流施設の『彩花館』の建設(PFI方式)
指宿地域の観光案内や地元特産品・農産物・水産物の販売展示などができる施設
を民間の資金で整備して、建設後施設の運営を行う。
①鉄骨2F建・面積809㎡・総事業費364,904千円
②施設整備費206,086千円・15年間の維持管理費158,818千円
③H16年からH31年までの15年間に渡り長期の委託契約を締結して
いる。
□トイレ・駐車場・道路案内標識の設置(オストメイト・ベビーシート)
①指宿市民や『彩花館』を利用する観光客などが24時間を年中無休で利用できる
施設(国土交通費整備380,000千円)
□観音崎公園整備事業
①道路利用者や観光客の休憩や地域住民のふれあいの場・イベント広場な
どの多目的に利用できる広場として、指宿市が国からの補助金で整備し
た公園の面積は12,000㎡で事業費は483,600千円である。(国補19
9,000千円・起債213,400千円・市負担71,200千円)
3.『PFI方式』によるメリットについて
①民間が自分の資金で地域交流施設を建設し、完成後に所有権を指宿市に移
し
た後に運営を実施する。指宿市は地域交流施設の建物代金と道の駅の維持管理経費
を15年間分割で支払い、完成年度に一括して全額を支払う必要が無くなる為に、
その分を他の事業に回す事ができる。
また、民間は運営事業の利益・販売手数料など、指宿市からのサービスを収入と
し、15年間にわたり事業を展開する。
②『道の駅』をこれまでの公共事業方式で整備・維持管理・運営した場合とPFI方
式で行った場合を比べると、PFI事業の方が15年間で1億8千万円の経費削減
につながり、また36パーセントの削減にも貢献する。
③民間事業者の経験や経営ノウハウを生かすことにより、お客さんにはサービス水準
の向上があり、生産者には集客力の増加による生産意欲の向上が期待され、さらに
地域活性化への波及効果なども期待される。
この様に、民間の創意工夫やノウハウを活用する事により、特産品の販売やレス
トランの経営などの業務は、行政機関よりも民間の方が実績がある思われる。
【民間活力による商品開発】
○ 特産品のびわ・フルーツを使用した『びわアイスクリーム』や『フルーツソフトク
リーム』
○ 水産者や農家が朝取れた食品(鮮魚、野菜)などで作成する『さしみ定食ご膳』
○ 薩摩焼の器を使い、ベルギー産チョコレートに焼酎を練り込んだバレンタインチョ
コレート『燃ゆる想ひ』
○ 有名菓子店とのタイアップにより、地元特産の菜の花の蜂蜜などを使用した『菜の
花蜂蜜マドレーヌ』
4.『PFI方式』による今後の課題とその解決方法について
①PFIの事業化に向けての、議会への対応について
②地元消費者の買い物動向や、観光客の人数や人気商品の市場調査・正確な数字の把
握について
③『道の駅』施設内容の徹底検討について
④事業参加者にインセンティブを持たせる様な、スキームの検討について
⑤地元企業者にPFI事業への参画について
⑥事業開始後のモニタリング(監視)について
5.南さつま子どもの家
(報告者:辻弘之)
<所在地>
鹿児島県南さつま市加世田川畑 5630 番地
〒897-0003
℡
0993-52-1131/FAX
0993-52-1132/E-Mail [email protected]
<視察項目>
・法人概要
・具体的な事業内容<対象児童数(男女・年齢・支援内容比等)・職員体勢(配置
数・資格名・業務内容等)等>
・事例<不登校児支援・虐待被害児童に関する、家庭・学校・地域・自治体との関わ
り・不登校児支援・虐待被害児童に関する、支援プログラム等>
・社会的擁護を必要とする児童を取り巻く現況について<必要とされる市町村自治体
の支援とは何か等>
・その他
<内
容>
1.南さつま市概要
2005 年 11 月 7 日、加世田市・大浦町・坊津町・金峰町が合併。人口約 4,000 人、世帯数
1900 世帯、市域面積約 283k ㎡。主な産業は農業、漁業。
平成 19 年度歳入総額 215 億 2701 万 1 千、歳出総額 210 億 5368 万 2 千、実質収支 4 億 5631
万 3 千円。市議会議員定数 26 人(市町合併特例により平成 21 年 11 月まで 27 人)
2.社会福祉法人
明澈会
南さつま子どもの家概要
南さつま子どもの家は児童福祉法で定めるところの児童養護施設である。
「環境上養護を要する児童」が対象で、具体的には保護者の死亡や疾病、離婚や拘禁や
著しい経済的な理由で保護者による養育が困難な子ども。最近では、虐待を理由に入所す
る事例が増えており、虐待問題に対する取り組み過程を学ぶ上でも重要な施設であると考
え、視察地に選定した。
鹿児島県内には 14 か所の児童養護施設があり、その多くが戦災孤児に対する衣食住確保
を目的とした社会保障や慈善事業が基となっている。その後、時代の変容とともに入所事
由も変化し、明確な数値は把握できなかったが、“児童虐待”被害児童の入所数が増加傾
向にある。
南さつま子どもの家は、元々、知覧町に設置されていたが、これまでの集団室による入
所生活を見直し、個室・小規模化を進めるするにあたり、施設の再建設が検討される。そ
の際、入所児童が学校に通いやすく、アルバイト等の活動もしやすい環境である、南さつ
ま市が候補地となる。同市長が受け入れに積極的であり、地域自治会等の受け入れ印象も
良好であったこともあり、平成7年4月に現在地へ移転されている。
同施設は先進的に不登校児童指導施設や心理療法実施施設・児童虐待相談窓口の設置な
ど市・県からの指定や委託事業を実施。また、職員に対しては海外研修や、非暴力的危機
介入法トレーニングを導入し支援技術向上への取組みも積極的である。
3.主な専門職員体制
嘱託医、社会福祉士、教職、保育士、児童指導員、社会福祉主事、西日本心理劇学会会
員、栄養士など。
4.主な設備
●南さつま子どもの家<雲・虹・風・空の家>/小規模児童擁護施設
2階建て4LDK×4ごとに7名の小中学生が自室を持って生活。
●自立支援ホーム
14名の中高生が個室で生活。
5.施設運営における主たる方針・理念
●
個室・小グループによる安心できる空間・環境の提供。
●
基本的生活習慣の確立。情緒的な不安定さをもつ子ども達も生活リズムを整えること
で7割の不安定さは解消される。
●
「力の威圧」を排除する。職員はもちろん、子ども同士の関係においても、身体的・
精神的威圧が生まれることのないよう環境を整備。小さなことであっても子ども達が
相談しやすい雰囲気が図られる。
●
食事は「いのち」。手作りを提供し、正しい配膳をはじめとするマナーを伝え、食文
化の確立と伝承を大切にする。最近では、食べることに無関心な職員も増えてきてお
り、職員に対する指導事項としても位置づけている。
●
清掃は職員の責任。子ども達はあくまでも「手伝い」であって、罰や訓練として清掃
を行わせてはならない。
6.子ども達の生活について
●
高校卒業以上の学歴をもつこと。車の免許を取得することを支援。
●
一般的な中高生と同じく、皆、部活動やアルバイト、塾に忙しくなっている。食事が
同じ時間にならなくなってきているが、起きて勉強している子どもには23時に夜食
を提供している。
7.子ども達の入所事由について
戦災孤児に対する衣食住の保障からは施設目的は大きく変化している。同施設では不登
校児童への支援に早くから取組んでいる。
●
中学生以上の不登校児童の多くは、自発的に入所。生活環境を整えることで、その殆
どは早期に通学再開をしている。
●
虐待被害児童の入所者数は年々増加しており、虐待種別としてはネグレクトが多い。
ネグレクトの中には、明確な悪意はなく御菓子や既成食品だけを子どもに与えていた
事例もあり、保護者の子育て能力を高める取り組みが必要となってきている。
8.心理療法実施施設について
●
県下で始めて認可を受け実施しているが、本来は「生活」の中で安定した環境を提供
することが重要。心理療法はあくまでも、生活のしづらさを解消する一手段に過ぎな
いと位置づけている。
●
心理療法実施施設に限らず、同施設では毎年16件ぐらいの補助事業を申請・受託し
ている。それらの申請・報告業務はすべて副園長が行うこととし、事務作業により、
直接指導職員が子ども達との関りに影響が出ないよう、配慮している。
9.総括
全国的に被虐待児童に対する支援策が求められる中、現在においては被虐待児童の主た
る生活支援施設となった児童擁護施設の現況を把握するためにも視察先に選定させていた
だいた。
児童相談所に十分な専門職員配置が行えていない現況は鹿児島県も北海道と同様であり、
登別市の虐待相談窓口についても、十分な専門的支援体制があるとは言えない。そのよう
な現況の中で、専門職員が配置されている児童擁護施設が、今後、虐待児童に対する主た
る支援機関として機能していく可能性があるのではないかとの仮説をもった上で視察に臨
ませていただいた。
しかしながら、今回視察した中で繰り返し説明されたことは、「子ども達が安心して落ち
着ける生活を整える」ことである。児童擁護施設が法制上、「施設」であろうとも、子ども
達にとっては生活し、育む場である。その生活の場で、「訓練」を全面的に実施したり、親
との再統合を積極的に支援したりすることは、必ずしも適切なことではないように感じた。
もちろん、子ども達一人ひとりの事情や希望に応じて、必要な訓練や支援を行うことは
あるであろうが、それが児童擁護施設の主目的ではない。
社会福祉分野において、唯一、職員配置基準や報酬額などの変動が殆どない分野が児童
福祉である。虐待に限らず、発達障害など、児童を取り巻く多くの課題が持たれる中、新
しい支援策を模索しがちであったが、まずはそれぞれの支援機関がその機能を明確にし、
専門性を高めることが大切である。そのための制度改革は地方議会の立場からも取組む必
要性があるが、まず重要なことは、それら制度や設備にとらわれるのではなく、子ども達
が安心して生活し、育むに最適な環境は何であるかを考えることが最優先であることを学
ばせていだいた。
以上
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