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有害廃棄物管理2008
有害廃棄物管理2008 3年後期(選択)科目 環境システム学科 宮脇健太郎 第9回 有害物質管理(2) バーゼル法 先進国の有毒産廃、途上国へ 「エコマフィア」密輸横行(朝日新聞2007.3.7) 西アフリカのコートジボワールで昨夏、欧州から持ち込まれ た有毒産業廃棄物が経済の中心都市アビジャンのあちこち に捨てられ、15人が死亡、10万人が吐き気や頭痛を訴えて 病院に駆け込む事件が起きた。 ジュネーブのバーゼル条約事務局 越境する世界の廃棄物は約850万トン(01年) 9割以上が「有害廃棄物」と推定 先進国から途上国へ 数十万∼100万トン/年程度。 麻薬や武器の密輸にかかわる国際犯罪組織がネットワーク を利用して廃棄物の密輸・処分 に乗り出しているのがその 理由という。「エコマフィア」と呼ばれる。 有害廃棄物が違法に持ち込まれている 主な国には、中国、ベトナム、インドネシア 、フィリピン、インド、ナイジェリア、 コートジボワール、セネガルなどがある。 1 バーゼル条約 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規 制に関するバーゼル条約 発効1992.5.5 Basel Convention on the Transboundary Movements of Hazardous Waste and their Disposal 目的 有害廃棄物による汚染の防止 輸送に際して汚染対策をした場合でも,有害廃棄物 の移転行為そのものを禁止または規制 条約の背景 有害な廃棄物の国境を越える移動 1970年代から欧米諸国を中心 1980年代に入り、ヨーロッパの先進国からの廃棄 物がアフリカの開発途上国に放置されて環境汚染 が生じるなどの問題が発生 何等の事前の連絡・協議なしに有害廃棄物が国境 を越えて移動が行われ、最終的な責任の所在も不 明確であるという問題が顕在化した。 2 背景 OECD及び国連環境計画(UNEP) 1989年3月、スイスのバーゼルにおいて、一定の 有害廃棄物の国境を越える移 動等の規制につい て国際的な枠組み及び手続等を規定した「有害廃 棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関 するバーゼル条約」が作成された(1992 年5月5日 効力発生。2006年12月現在締約国数は168カ国、 1機関(EC))。 日本は1993年9月17日に同条約への加入書を寄 託、同年12月16日効力を生じた。 バーゼル条約 近接処理原則,発生者責任原則 発生国・輸出国の責任と義務 行方不明防止 輸出者から最終受領者にいたるまでの監視 事前通告,事後報告手続き,情報管理手続き 違反に関する通報制度 非締結国への移転禁止 WTO/GATTとの調整 通過国通告制度 海洋汚染に関する諸条約,海洋投棄規制 条約,南極条約環境保護議定書などとの調整 3 主な規定(1) (1)この条約に特定する有害廃棄物及びその他の廃棄物 (以下、「廃棄物」)の輸出には、輸入国の書面による同意を 要する(第6条1項∼3項)。(2)締約国は、国内における廃 棄物の発生を最小限に抑え、廃棄物の環境上適正な処分の ため、可能な限り国内の処分施設が利用できるようにするこ とを確保する(第4条2項(a)及び(b))。(3)廃棄物の不法取 引を犯罪性のあるものと認め、この条約に違反する行為を 防止し、処罰するための措置をとる(第4条3項及び4項)。 (4)非締約国との廃棄物の輸出入を原則禁止とする(第4条 5項)。(5)廃棄物の南極地域への輸出を禁止する(第4条6 項)。(6)廃棄物の運搬及び処分は、許可された者のみが行 うことができる(第4条7項(a))。 主な規定(2) (7)国境を越える廃棄物の移動には、条約の定める適切な 移動書類の添付を要する(第4条7項(c))。(8)廃棄物の国 境を越える移動が契約通りに完了することができない場合、 輸出国は、当該廃棄物の引き取りを含む適当な措置をとる (第8条)。(9)廃棄物の国境を越える移動が輸出者又は発 生者の行為の結果として不法取引となる場合には、輸出国 は、当該廃棄物の引取を含む適当な措置をとる(第9条2)。 (10)締約国は、廃棄物の処理を環境上適正な方法で行うた め、主として開発途上国に対して、技術上その他の国際協 力を行う(第10条)。(11)条約の趣旨に反しない限り、非締 約国との間でも、廃棄物の国境を越える移動に関する二国 間または多数国間の取決めを結ぶことができる(第11条)。 4 バーゼル損害賠償責任議定書 有害廃棄物の輸送手段への積載時(又は輸出国の 領海を離れたとき)から当該廃棄物の処分完了時ま でに生じた、当該廃棄物の有害性から生じる人的損 害、財産 損害、逸失利益、回復措置費用、防止措 置費用につき、当該廃棄物が処分者に渡るまでは 条約上の通報者(基本的に輸出者)が、それ以後は 処分者が、それぞれ 厳格責任(いわゆる無過失責 任)を負う。 厳格責任については、責任限度まで保険等の財務 的補償によってカバーされる。条約上の通報者は、 輸入国への通報に際し、当該通報に係る越境移動 が保険等によりカバーされている旨の証明を通報に 添付する。 本議定書の下でカバーされない損害費用が生じた 場合に対応するため、既存のメカニズムを活用して、 本議定書の下でカバーされない損害費用を適切に 補填する追加的かつ補完的な措置をとることができ る。 5 技術ガイドライン 第6回締約国会議において、医療廃棄物、プラス チック廃棄物とその処理、廃鉛蓄電池に係る技術ガ イドラインが採択された。また、船舶解撤の管理に 関する技術ガイドラインについては、勧告との位置 づけで採択された。金属及び金属化合物の再利用 に係るガイドラインに関しては、現在検討中とされた。 また、第7回締約国会議(ジュネーブ)においては、 POPs廃棄物(残留性有機汚染物質)について、現 段階で最大限の知見が反映され、途上国において も現実的に適用可能な実用的基準にて技術ガイド ラインが採択された。 国内 バーゼル条約を実施するため、「特定有害廃棄物 等の輸出入等の規制に関する法律」及び「廃棄物 の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法 律」が1993 年、第125国会で成立。 1993年9月には国内法の所管省庁である環境庁、 厚生省、通産省(当時)において関係政省令等の整 備を完了した。 6 バーゼル法 1.正式名称 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成 4年法律第108号) 2.目的 バーゼル条約の的確かつ円滑な実施を確保するため、特 定有害廃棄物等の輸出、輸入、運搬及び処分の規制に関す る措置を講じ、もって人の健康の保護及び生活環境の保全 に資する。 3.概要 特定有害廃棄物の外為法による輸出入承認、条約に基づ く移動書類の携帯、環境大臣及び経済産業大臣による回 収・処分等の措置命令等を規定。 バーゼル法規制対象物 バーゼル法では,船舶の航行に伴い生ずる廃棄物、放射性 物質・汚染物を除く以下の2つに該当するものを特定有害廃 棄物として定義 1.条約附属書Ⅳの処分(最終処分又は再生・回収)を行うた め輸出入される物であって以下のいずれかに該当するもの 条約附属書Ⅲの有害特性を有するものであって、かつ条約附属書Ⅰ の廃棄物の経路・含有成分に該当するもの(平成10年告示別表1に 該当せず別表2又は3に該当するもの) 条約附属書Ⅱの家庭系廃棄物・我が国が独自に定め、条約の事務 局に通報したもの(条約3条) 他国が条約3条に基づき事務局に通報したもので環境省令で定める もの 2.2国間又は多数国間の地域的な条約以外の協定等に基 づき規制を行っているもの(条約11条) <OECD理事会決定(平成13年12月)> 7 バーゼル法規制対象国(2006.5現在) 【西欧その他】(27か国と1機関)ア ンドラ、オーストラリア、 オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フ ランス、ドイツ、ギリシア、アイスランド、アイルランド、イスラ エル、イタリア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、マルタ、 モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、 スペイン、スウェーデン、 スイス、トルコ、イギリス 及び EC 【中東欧】(22か国)ア ルバニア、アルメニア、アゼルバイ ジャン、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツゴビナ、ブルガリア、ク ロアチア、チェコ、エストニア、ジョージア、ハンガリー、 ラトビ ア、リトアニア、ポーランド、モルドバ、ルーマニア、ロシア、ス ロバキア、スロベニア、ユーゴスラビア、マケドニア、ウクライ ナ 【中南米・カリブ諸島】(30か国)ア ンティグア・バーブーダー、アルゼンチ ン、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、 コスタリカ、キューバ、ドミニカ、ドミ ニカ共和国、エクアドル、エルサルバ ドル、グアテマラ、ガイアナ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ニカラグ ア、パナマ、パラグアイ、ペルー、セン ト・キッツ・ネーヴィス、セント・ルシ ア、セント・ヴィンセント及びグレナディーン諸島、トリニダード・トバゴ、ウ ルグアイ、ベネズエラ 【アジア・太平洋】(42か国)バー レーン、バングラデシュ、ブータン、ブル ネイ、カンボジア、中華人民共和国、クック諸島、キプロス、インド、インド ネシア、イラン、日本、ヨルダン、カザ フスタン、キリバス、クウェート、キ ルギスタン、レバノン、マレーシア、モルジブ、マーシャル諸島、ミクロネシ ア、モンゴル、ナウル、ネパール、オマー ン、パキスタン、パプアニューギ ニア、フィリピン、カタール、大韓民国、サモア、サウディ・アラビア、シンガ ポール、スリランカ、シリア、タイ、トルクメ ニスタン、アラブ首長国連邦、 ウズベキスタン、ベトナム、イエメン 8 【アフリカ】(46か国)ア ルジェリア、ベナン、ボツナ ワ、ブルキナ・ファソ、ブルンジ、カメルーン、ケープ ベルデ、チャド、中央アフリカ、コモロ、コートジボ ワール、コンゴ、ジブ チ、エジプト、赤道ギニア、エリ トリア、エチオピア、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニ アビサウ、ケニア、レソト、リベリア、リビア、マダガス カル、マラ ウィ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、 モロッコ、モザンビーク、ナミビア、ニジェール、ナイ ジェリア、ルワンダ、セネガル、セーシェル、南アフリ カ、 スーダン、スワジランド、トーゴ、チェニジア、ウ ガンダ、タンザニア、ザンビア OECD加盟国 一覧オー ストラリア、オーストリア、ベルギー、カナ ダ、デンマーク、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、 ギリシア、ハンガリー、アイスランド、アイルラン ド、 イタリア、日本、大韓民国、ルクセンブルク、メキシコ、 オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、 ポルトガル、スロヴァキア、スペイン、 スウェーデン、 スイス、トルコ、イギリス、アメリカ(※)(※)アメリカ はバーゼル条約に加盟していないが、リサイクル目 的の場合、OECD理事会決定に従って輸出入する ことができる。 9 適用規制 バーゼル条約締結国 OECD加盟国 → OECD理事会決定 OECD非加盟国 → バーゼル条約 バーゼル条約非締結国 OECD加盟国 → OECD理事会決定 OECD非加盟国 → なし(輸出入不可) [北朝鮮] 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第二条第 一項第一号イに規定する物 (別表第一) (以下省略) 10 別表第二 (以下省略) 別表第三 (以下省略) 本資料 別表第一∼第四および関連基準値 全43ページ 11 規制対象物 原則規制対象のもの バーゼル条約附属書Ⅰかつ附属書Ⅲに該当するもので、 具体的には附属書Ⅷに該当するものが対象。 バーゼル法では、告示別表第2又は別表第3に該当する ものが対象。 鉛蓄電池(リストA1160) シュレッダーダスト(A3120) 医療廃棄物(A4020) 、医薬品(A4010) 廃油(A3020) 分析により判断するもの 鉛等の有害物質を含む可能性がある場合は、分析 を行いバーゼル法告示別表3の基準により判断を 行う。 メタルスクラップ(B1110又はA1180) (モーター、配電盤、電線、基板、変圧器など) 塩化ビニル (PVC) (B3010又は鉛基準) パチンコ台(B1110又はA1180) 携帯電話(B1110又はA1180) 12 原則規制対象外 バーゼル条約附属書Ⅸに該当するもの・バーゼル 法では、告示別表第1に該当するもの 鉄くず(スチールスクラップ)(B1010) 廃プラスチック(PVCを除く) (B3010) 紙くず(B3020) 繊維くず(B3030) ゴムくず(B3040) バーゼル法対象物輸出入手続き 13 現在(環境省Webページ参照) 平成18年 特定有害廃棄物等 輸出 17,357トン (申請99,850トン,相手国から同意53,600トン) 輸入 4,314トン (申請23,228トン,輸入同意16,107トン) 輸出品目 鉛スクラップ(鉛蓄電池)、ハンダのくず、鉛灰及びドロス、ニッケルス ラッジ等 いずれも金属回収を目的 輸入品目 ニカド電池スクラップ、電子部品スクラップ、亜鉛スラッジ、基板くず、 銀スラッジ、金属スクラップ等 金属回収など再生利用を目的 課題 バーゼル条約の背景として,1980年代、( ) の先進国からの廃棄物がアフリカの( ) に放置されて環境汚染が生じる問題が発生したこと などが挙げられる。 ( )及び( )(UNEP)により 1989年3月、スイスのバーゼルにおいて、一定の 有害廃棄物の国境を越える移 動等の規制につい て国際的な枠組み及び手続等を規定した 「( )の国境を越える移動及びその処分の 規制に関するバーゼル条約」が作成された 14 課題 バーゼル条約では,( )及びその他の廃棄 物の輸出には、輸入国の( )による同意を要 することや,( )との廃棄物の輸出入を原 則禁止とすることが定められている。 非締約国との間でも、廃棄物の国境を越える移動 に関する( )または多数国間の( ) を結ぶことができる バーゼル法(国内法)では,特定有害廃棄物の外為 法による( )承認、条約に基づく( ) の携帯、環境大臣及び経済産業大臣による回収・ 処分等の( )等を規定 15