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新しいフォード車

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新しいフォード車
】
経済 論 叢
第111巻
第2号
現 代 帝 国 主 義 分 析 と 理 論 的 保 守 主 義 ・・
・
… … … … 杉
本
昭
七1
自 動 車 産 業 成 立 期 と フ ォ ー ド社 の 生 産 力 構 造 … 塩
見
治
人18
装 置 論 を め ぐる理 論 的 諸 問題 … … … … … … … …下
谷
政
弘42
フ ォ ー ド の 市 場 独 占 価 格 と資 金 調 達 … … … … … 小
野
秀
生65
藤
一
郎91
書
評
ジ ェ ー ム ズ ・M.ブ
(山 之 内 光 躬,日
キ ャ ナ ン
「財 政 理 論 」
向 寺 純 雄 訳)…
… … … ・
・
… ・… 加
昭和48年2月
京 涜β文 學 経 済 學 會
18(102)
自動 車 産 業 成 立 期 と フ ォ ー ド社 の
生産力構造
一
ア ォー ド経 営 に お け る大 量 生 産 体 制 の 成 立 過 程 ① 一
塩
1問
わ た し は,前
編 で1920年
見
治
人
題 の 設 定
代 フ ナ ー ド自 動 車 会 社 の 経 営 体 系 の 全 体 像 を 説 明 し,
そ れ が 原 料 生 産 → 部 品 生 産 → 部 品 組 立 → 販 売 に わ た る主 要 経 営 の 垂 直 的 結 合・
と
原 料 ・製 品 の 輸 送 な ど の 補 助 経 営 お よ び 副 生 品 の 合 理 的 処 理 に か ん す る 多 く の
副 次 経 営 と を 有 機 的 に 統 合 し た 巨 大 な 結 合 企 業 で あ る こ と を,具
た1)。 本 稿 は,こ
程 を,そ
う し た 結 合 企 業 ≒ し て の フ ォ ー ド社 の 生 産 力 的 基 礎 の 成 立 過
の 内 部 構 造 に た ち 入 っ て,あ
と こ ろ で,フ
を 終 え る1927年
体的 にしめし
き ら か に す る こ と を 課 題 と し て い る。
ォ ー ド社 が 事 業 を は じ め た1903年
か ら有 名 な 丁型 車 が そ の 生涯
に い た る フ ォ ー ド社 の 生 産 体 制 の 発 展 は,お
お よ そ 表1に
しめ
し た と お り で あ る。
こ の 期 間 は,ア
メ リ カ 自 動 車 工 業 史 に と っ て,泡
沫会 社 の 乱 立 に よ る生 成 期
(1900年 代)・ 新 規 需 要 の 飛 躍 的 な 拡 大 に よ る 成 長 期(1910年 代)・ 新 規 需 要 の 頭 打
ち と 代 替 市 場 へ の 転 化 に 対 応 し た 寡 占 体 制 へ の 移 行 期(1920年
る が,フ
し,こ
ォ ー ド社 は 巨 額 の 設 備 投 資 を く りか え す こ と に よ っ て 生 産 体 制 を 拡 充
の 局 面 を 圧 倒 的 に 主 導 し た 。 生 産 力 発 展 の 過 程 は.㈲
大(年 産1,500台 体 制 か ら200万 台 体 制 へ),(5)欄
ら360ド ル へ)に
の 増 大(10万
1)拙
代)を ふ くん で い
の 販 売 価 格 の 低 下(丁
よ っ て 数 量 的 に 把 握 で き る し,生
ドル か ら7億
欄 の生 産 台数 の 増
型 車850ド ル か
産規模 の拡大をの欄で純資産
ド/レへ)に よ っ て 推 測 で き よ う。 し か も
稿,フ ォー ド経 営の全体像,「 経済論叢」第109巻第2号 参照 ・
この よ うな飛
自動 車産 業成立期 とフォ ー ド社 の生産力構 造(103)19
躍 的 な 生 産 の 拡 大 ・生 産 の 集 積 は,た
ん な る量 的 増 大 で は な く,な
に よ り もま
ず 自 動 車 生 産 の 労 働 過 程 の 生 産 力 構 造 に お け る 質 的 ・段 階 的 な 発 展 を 内 包 し そ
れ を基 軸 にす る こ とな し に は不 可 能 で あ った 。
フ ォ ー ド社 に よ る 自 動 車 の 大 量 生 産 体 制 は,一
ば れ て い る が,そ
れ は,18世
般 に フ ォ ー ド ・シ ス テ ム と よ
紀 後 半 か ら19[匡 紀 を つ う じ て 開 発 さ れ て き た ア メ
リ カ 工 業 史 の 歴 史 的 遺 産,す
な わ ち,互
ベ ア ・シ ス テ ム に よ る 搬 送 の 機 械 化,高
換 性 部 品 方 式,専
門 的 工 作 機 械,コ
ン
度 な 作 業 分 割 に よ る 品 種 別 作 業 組 織,
動 作 研 究 ・時 間 研 究 に よ る 個 々 の 作 業 の 不 要 動 作 の 排 除 な ど を,た
ん に大 量 生
産 体 制 の 要 素 と し て 統 合 す る こ と に よ っ て 成 立 し た と い わ れ て い る2)。 わ た し
は,本
稿 の 課 題 を 達 成 す る た め に,(1欄
た4つ
の 段 階 を 設 定 し て,こ
フ ォ ー ドの 自動 車 プ ラ ン トを 指 標 と し
うした基 本 的 な工 業 原 理 が ひ とつ ひ とつ 自動 車 製
造 の 労 働 過 程 の 生 産 力 要 素 と し て 導 入 さ れ,そ
ス テ ム を 形 成 し て ゆ く過 程 を た ど り,生
す る 。 な お,こ
れ を 変 革 し て 漸 次 フ ォ ー ド ・シ
産 力 構 造 の段 階 的 発 展 を具 体 的 に設 明
の 生 産 力 構 造 を 基 礎 と す る 資 本 ・賃 労 働 関 係 の 展 開 に つ い て は
別 稿 にゆ ず る。
11マ
・7ク ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 段 階(1903∼04年)
フ ォ ー ド社 の 事 業 は,デ
月75ド ル で 賃 借 し,フ
ト ロ イ トの 石 炭 業 者 の 馬 車 製 造 木 工 職 場 を,3年
ォ ー ド.の構 想 を も と に3,000∼4,000ド
間,
ル を費 して改 装 を
ほ ど こ し た マ ヅ ク ・ア ヴ ィニ ュ ー 工 場(MackAvenuePlant)に,以
前 フォー ド
が 実 験 ・試 作 を お こ な っ て い た 機 械 職 場(ParkPlaceShop)の
機 械 設 備 ・労 働
`者 を も ち 込 ん
で は じ め ら れ た 。 マ ッ ク ・ ア ヴ ィ ニ ュ 」 工 場 は,1903年6月
ま
で に 生 産 準 備 を 整 え て 操 業 に は い り,そ
の 後5,000ド
ル の 追 加 投 資 に よ っ て2
2)AFordMotorCompanyPublication,TheEvolutionofMussProduction,1965の
は.フ
Whitney)の
Root)の
4要
著 者
ォ ー ドの 大 量 生 産 の 前 提 と な っ た ア メ リ カ 工 業 史 の 歴 史 的 遺 産 を,ω
互 換 性 部 品 生 産 方 式,〔2匡
作 業 の 分 割,(al一
素 に 総 括 し て い る.そ
production)の
ヴ ァ ン ス(0.Evans)の
ラ ー(F.W.Tay】or)の
ホ イ ッ ト ニ ー(E.
自 動 コ ソ ベ ァ,131ル
ー ト(E.
個 々 の 作 業 に お け る ム タな 動 作 の 排 除 の
し て フ ォ ー ド ・ シ ス テ ム を こ れ ら4要
も と へ 綜 合 と し て と ら え て い る 、(PP.14-15)
素 の 高 速 度 生 産(high-speed
20(104)
第2号
第111巻
フ ォー ド社 に お け る生 産 体 制 の
表1
生 産力構造 の美本的表現
プ
年 次
(・
膿
艶1
一段階 年
1903
ラ
ン
ト
1翻
造 工 場1
■ ■ ■r..
匠
〃
・ア ヴ ・ 三 ・ 一 止 揚1(19,徽
業)
1904
第2脇
・1・
1906
・.。…
E・ レヴ ・ 一
ヴ・一一
蜴1(灘
翻
…1
300
...1
300
第3段
575
450
丁 型 車 の 販 売 開 始(10月1日)
[・ イ ラ ン ド …
一 ・ 工 場1(}8鷲
薬)
19].0
1912
買収
コ ン ベ ア ・シ ス テ ム 最 初 の 導 入
1913
コ ン ベ ア ・シ ス テ ム 充 実 ・整 備 さ れ る
1915
・農 村 小 分 工 場 の建 設 は じま る
1918
1922
・LincolnMotorCo.の
1923
・C .E.JohansonCo.の
道 の 買 収
9
2
買 収
.
6 7 8
6
3
9
6
■ 3
6
3
買 収
1925
1926
丁型 車 の生 産 打 切 り(5月26日)
6 6
・D.T&1鉄
、91鮮操業)
蜀(19'6年
着工
林 の 買 収 は じ ま る
9
2
1921
田,森
4 6
ー ジ 江
32,53133,699
4
・ル
・鉄 鉱 山 ,炭
35,24636,4]一1
8
2
パ ー
1924
"
18,02818,892
8
2
巨
1920
1927
12,880…
7 2
8
2
1917
階
1919
6,867…
14,366…
31,29832,696
1916
第4段
3,976…
8 2
8
2
1914
2,773・.・
3 8
3
1 2
.」.R.KeimMillsの
1911
1,655…
2 3
階
1909
r.■
700
ア ヴ ・ 二 ・ 一 工 場1(19。6襟)
1907
1908
労購
(2)ノ ヅ ク ダ 3)デ ト ロ (4)国内各
ウ ン 工 場 i( イ ト
地
国内 国外
.杏
125
51,902
48,264
57,410
63,568
38,337
50,358
64,68
81,360
99,080
128,188
102,137
140,007
107,473
155,552
98,099
141,729
80,246
102,029
自動 車 産 業 成 立 期 と フ ォ ー ド社 の生 産 力構 造
(105)21
発展過程
備 考
生 産力発展 の数 量的表現
自 動車 生 産
⑤ 車種 ・価格
興
A㊤85⑪
B①2,000
C①900
F⑤1,000
{
{
B①2,000
F⑤1,000
N㊤600
R①750
S⑦7⑪0
{
K(tD2,800
⑥生産台数
台
1,798
よ び23べ.一
稿,前
ジ 表2参
提 論 文
照 、{3[,
ハ血 η,the(わ
加
ηゆ απy,ユ95≦,Appendix
VII.p.648;Nevins,A.,andHill,F
翫4鋤
$
側5わ
.E.,
η 研4G肋
傭 η解1915∼
1933,1957,.Appendixlll,p.687よ
り作
成.㈲
欄 はNevins,A、,op.c髭.,Appendix
V,p.646;Ford,H、,MyLifeandWork.
1,695
100,000
1922,p,145;Chandler∫r.,A.F.,G臨
伽'6励
窺
磁,Ford,GeneralMotors,and
AutomobileIndus".1{嗣,p.33よ
1,7工6
220,758
り作
成 。 な お,A,B,C...R,S,Tは
の 販 売 し た 車 種A型
フ ォ ー ド社
車 … 丁 型 車,ま
は 車 体 の 形 式 ラ ソ ナ バ ウ ト型(2座
8,828
15,214
231,807
297,867
S㊤700
T⑤850
10,524
1,038,822
T⑤950
18257
2,028,553
T㊥780
33,333
2,101,723
T⑤690
72,567
4,408,961
T(D600
177,834
TOO550
215,186
16,867,366
T⑤490
322,545
30,259,2ユ4
T⑤440
530,329
53,875,266
T⑤360
768,691
T⑤450
722,222
114,060,908
T①525
572,154
133,604,907
9,956,535
61,135,111
T㊥575∼440
ユ,047,858
T⑮440∼355
582,647
T⑤415∼355
1,050,741
141,529,641
T⑤348∼298
1,452,930
173,951,173
T295
2,201,188
359,962,693
T290
2,083,48工
459,305,581
T…
2,103,541
559,740,997
T310
1,752,075
639,631,393
555,796
714,902,288
T…
欄 に つ い て は,拙
ー ジ 表6お
〔4欄 は,Nevins,A.,翻,theTimes,オ
(の純 資 産
R㊤750
{
囲,〔61,働
37ペ
156,288,721
202,135,296
ア リ ン グ型(4座
る。
席)を
た ①,⑤
席),ツ
そ れ ぞ れ しめ し てい
22(106)第111巻
階 を 加 え,1904年
次 にA型
車(2座
第2号
に は 完 成 姿 態 を と っ た3)。 こ う し て,フ
席 ラ ンナ パ ウ ト型850ド ル,後 部 座 席付 卜.ソノウ型950ド ル),第2年
次 に 高 価 格 車 のB型(2,000ド
ドル,ト
ォ ー ド社 は,第1年
ル)とA型
ソ ノ ゥ型1,0DOド ル),F型
車 を 改 良 し たC型
車(1,000ド
ル)を
ル で あ っ た の.と く ら べ て,フ
と し て 出 発 し た と い え よ う。 こ の よ う に,自
ン ナ パ ゥ ト型900
製 造 ・賑 賑 し た 。 当 時,世
最 初 の 量 産 車 と し て 有 名 な オ ー ル ズ(Ranso皿E.Olds)の
ン ナ・ミゥ ト型)が650ド
車(ラ
界
オ ー ル ズ モ ビ ル 車(ラ
ォ ー ド車 は む し ろ 中 価 格 車
動 車 工 業 の 形 成 期,フ
ォ ー ド社 は
毎 年 改 良 新 型 モ デ ル に 転 換 し,同
時 に数 種 の モ デ ル を製 造 し てい た 。 この期 の
マ ヅ ク ・ア ヴ ィ 二 二 ー 工 場 は,自
動 車 生 産 に 専 門 化 し て は い た が,数
∼
レを 市 場 生 産 す る こ と を 前 提 と し た 年 産 約1,500育
ductionsystem)で
の 能 力 を も つ 生 産 体 制(prい
あ った(表1)。
マ ッ ク ・ア ヴ ィ ニ ゴー 工 場 は,1904年
組立 室1階(約250x50フ
テ ー シ 。 ソが4個
に は 表2の
よ うに整 備 され た。
ィー ト)の 広 い 部 分 を し め.自
所 設 置 さ れ て お り,そ
表2マ
事
務
室
ス ペ ア部 品 室
1階
組
立
れ ぞ れ の 組 立 台 に は 組 立 工2∼3人
室
〔
継ll鎌
験
動 車 の 台上 組 立 ス
ッ ク ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場
2階
実
継
・・
… ・作業班)
室
(旋 盤(複 数)・ フ ラ イ ス盤 ・平 削 盤 十 ガ ソ リン機 関)
鍛
造 職
場
製
図
室
備 考
組 立 室 面 積
約250x50フ.f一
PP.244-245よ
3)マ
ッ ク
・ ア ヴ
Pant,1954,PP.23〔
種 のモデ
ィ ニ ュ ー 工 場
に つ い
ト。Nevins,A.,OP.d`..
り 作 成.
て は,Nevins,A.,Ford,theTunes,theMan,theCom-
卜一233,236-237,240,244-245を
参 照 。
自動 車産業 成立 期 とフォー ド社の生産力構造(107)23
か ら な る 組 立 作 業 班 が 配 置 さ れ て い る 。 こ の 組 立 室 は,職
(A.Degner)の
監 督 ・指 揮 の も と に,4つ
の 組 立 作 業 班.10∼12人
り構 成 さ れ て い る4)。 組 立 作 業 班 は.組
組 立 台 の ま わ り12∼15個
上 に 運 び,組
長 で あ る デ グナ ー
立 工 の 協 業=い
の組 立 工 よ
わ ゆ る組 作 業 に よ って,
所 に区 分 け し て積 み上 げ られ た 各種 部 品 を一 品 ず つ台
付 け て 自 動 車 を 完 成 させ た 。 ま ず,エ
ン ジ ンを シ ャ ー シ ー ・フ レ
ー ム に 取 付 け → キ ャ ブ レ ー タ ー の 調 整 → バ ル ブ装 置 の試 験 → ブ レ ー キ.の取 付 け
を へ て 動 力 装 置 の 組 立 が お わ る と,車
シ ョ ン を の せ → 塗 装 を し て,最:後
輪 な ど足 ま わ り品 を 取 付 け一 》
車 体 とクッ
に 始 動 検 査 ・点 検 を し て 組 立 作 業 を 完 了 し た 。
部 品 は 外 註 品 で あ っ た こ と と も 関 係 し て,組
・調 整 を 必 要 と し た で あ ろ う.こ
に 調 整 ・検 査 を 内 包 し,き
さ て,組
立 室 は,こ
終組 立全 般 と と も
わ め て 多様 な作 業 を分 担 し て いた 。
の4つ
の台 上 組 立 ス テ ー シ ョ ンの 協業 編成 よ り な る静 止
組 立 法(stati。nalyassembly)に
組 立 て た ω。1台
立 作 業 は手 作 業 に よ る部 品 の 補正
の よ うに 組 立 作 業 班 ば,最
よ っ て,合
計 日産(9∼10時
上 組 立 ス テ ー シ ・ ン 当 り 日産4台,自
間)で15台
動 車1台
の 自動 車 を
当 り2.5時 間 を,
わ た し は 当時 の静 止 組 立 法 に よ る 自動 車 の最 終 組 立 工 程 に お け る生産 能 力 の水
準 を し め す もの と推 定 す る。
実 験 室7オ
れ,自
ー ド,ウ
ィ!レス(C.H.Wills)と
数 人 の助 手 に よっ て構 成 さ
動 車 の試 作 と 実 験 が お こ な わ れ る。 数 台 の 旋 盤 と フ ラ イ ス 盤,平
ボ ー ル 盤 な ど を そ な え,こ
れ ら の 工 作 機 械 は オ ー ル ズ社 の 大 型 ガ ソ リ ン機 関1
台 に よ っ て 駆 動 さ れ て い た 。 実 験 室 は,組
に お か れ,工
削 盤,
作 機 械 台 数 は5台
前 後,多
立 室 が 大 部 分 を し め る1階
の小 区画
く て も10台 を こ え る こ と は な く,こ
れ
ら は試 作 車 の小 物 部 品 を 機械 加 工 す るた め の万 能 機 で あ った とお もわ れ る。 こ
う し て,実
験 室 は,自
動 車 の 部 品 生 産 と は 関 係 の な い,き
わ め て 小規 模 な 万 能
機 械 加 工 職 場 で あ っ た6)。
製図室
実 験 室 の 隣 に 位 置 し,新
4)Nevin3.A.,qρ.・ ゴ
診.,P,236,p・240・
5)Nevins,A,,op.o露.,p.240,
6)Nevi..,A.,op.ci.,p.245,p.230.
モ デ ル と部 品 の 設 計 ・製 図 が お こ な わ れ
24(108)第U1巻
第2号
た 。 フ ォ ー ド,ウ
ィル ス の ほ か に5人
の 設 計 工 の み が 入 る こ と を 許 され た フ ォ
ー ド社 の 技 術 開 発 セ ン タ ー で あ っ た7〕
。
鍛造職場
職 長 で あ る ク ー リ ヅ ク(A.Kulick)に
よ っ て 運 営 され るQ小
物
部 品 の補 助 的 な加 工 を お こな って い た に す ぎ ない と思 わ れ る。 機 械 設 備 は不 明
で あ る8)。
スペア部品室
修 理 に も ち い られ る ス ペ ア 部 品 が マ ー チ ン(P.E.Martin)に
よ っ て 保 管 さ れ て い る9)。
事務室
フ ォ ー ド社 の 経 理 ・販 売 担 当 者 カ ズ ン(J.S.Cou恐e皿s)が
執務 をお
こ な う夏o)D
結 局,マ
ヅ ク ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は,日
な 自 動 車 組 立 工 場 で あ り,技
ド社 は 部 品 の す べ て を,外
産15台
の 能 力 を も つ.きわ め て 小 規 模
術 開 発 セ ン タ ー で あ っ た こ とが 判 明 す る 。 フ ォ ー
部 供 給 者 に 依 存 し て い た 。 こ の 場 合,す
部 品 生 産 が 定 着 し て い た ア メ リ カ機 械 工 業 の 基 盤 が 利 用 さ れ た が,フ
表3フ
部
品 供
で に互 換 性
ォ ー ド社
ォ ー ド社 へ の 主 要 部 品 の供 給 者
給
1.TheDodgeBrothers
(MunroeAvenueShop)
フ ォ ー ド社 へ の 供 給 部 品
者
自転 車 ・蒸 気 艇 な ど
.各 種 機 械 製 作
150名 雇 用
シ ャ ー シ ー
エ アシソ
ト ラ ソ ス ミ ッ シ5ン
ア ク スル
フ レー ム
ロ {
2.GeorgeHolly自
動 車 な ど製 作
キ ャフ レー タ ー
3.C.R.WilsonCarrageCo.馬
車 業 者
木製ボ デー
ク ッシ ョン
4.HartfordRubberCo.
ゴ ム業 者
タイ ヤ
5.PruddenCo.
車輪
自転 車 業 者 ・蒸 気 自
6,J.R.KeimMills
(1911年
フ ォ ー
ド社 へ 吸 収 合 併)
7.DetroitFoundry
鋳 物業 者
備 考Nevins,A.,ψ.cit,pp.231-233p.325よ
ー一「場 段 階 か ら 部 品 供 給 者 に 加 わ っ た 。
7).8),9),10)Nevins,A.,ψ.6髭.,p.245,
プ レ入部 品
動 車 な ど製 作
鋳物
り 作 成 。 た だ し6,7は
ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ
自動 車産業成立期 とフォー ド社 の生産 力構造
へ の 部 品 供 給 者 に お い て,と
(109)25
くに 従 来 の 自 転 車 ・蒸 気 機 関 ・馬 車 な ど の 製 造 業
者 が 新 興 の 自動 車 工 業 へ 部 品 メ ー カ ー と し て 結 集 さ れ て い く過 程 を み る こ とが
で き る(表3)。
当 時 の フ ォ ー ド社 の 経 営 実 態 を し め す,1903年
車 の コ ス ト明 細 で は,ラ
の 開 業 目論 見 書 に お け るA型
ソ ナ バ ウ ト型 で 原 価554ド
外 注 部 品 が し め て い る(表4)。
ル の う ち 約70%,384ド
ルを
こ の よ う に,マ ッ ク ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 段 階 の フ
アセ ン
ォ ー ド社 は 自 動 車 製 造 工 程 の う ち 最 終 の 組 立 工 程 の み を 掌 握 し た,た
ん な る組
ブ リ 立
メ ー カ ー で あ っ た11)。
表41903年A型
車 の 原 価 見 積 り表
$
部品供給者
ボ デ ー 車 輪 を の ぞ く機 械 部 品(theDodgeBrothersと
ボ デ ー(C.R.WilsonCarriageCo.と
車 輪1セ
ッ ト(4個)(ラ
固 定 契 約)52
ン シ ン グ の 企 業 と 固 定 契 約)26
ク ッ シ ョ ン な ど室 内 装 飾(上
タ イ ヤ1セ
組 立 費 用(賃
金,工
オ
「
販 売 費 用(広
告 費,す
ド
記C.R.WilsonCarriageCo.と
ッ ト と(HartfordRubberCo.固
フ 社
固 定 契 約)250
場 賃 借 料,保
険 料,そ
べ て の 給 料,手
出 し 価 格 の20%と
固 定 契 約)16
定 契 約)40
の 他 雑 費 を ふ くむ)20
数 料 を ふ くむ1台
し将 来 は10∼
ユ2%に
当 りの売
な る も の とす る)150
ラ ソ ナ バ ウ ト型 の 原 価554
ト ソ ノ ウ 型(後
部 座 席 付)に
要 す る 追 加 費 用50
ト γ ノ ウ 型 の 総 原 価604
トン ノ ウ型 の販 売 価 格
.トソ ノ ウ型 の粗 利 益(販 売 価格.総
850
246
原 価)
46
特 別 臨 時 費 用 差 引分
トソ ノ ウ型1台
200
当 り利 益
ラ ソナ パ ウ ト型 の販 売 価 格
750
ラ ソナ パ ウ ト型 の 原価
554
ラ ンナ パ ウ ト型 の粗 利 益(販 売 価 格 一 原 価)
196.
46
特 別 臨 時 費 用 差 引分
ラ ソナ バ ウ ト型1台
当 り利 益
150
備 考Seltzer,L.H.,FinancialHistoryoftheAmericanAutomobileIndustry,1928,
PP.89-90よ
11)Ford,H.,ル
り作 成 。
亀'LifeandWork,1922幽p.52,フ
ォ ー ド}よ幽 マ ッ ク ・ア ヴ ィr再
彼 の 設 計 の も と に 部 品 製 作 は す べ て 外 部 業 者 に ゆ だ ね,フ
一 工 場 で は.
ォ ー ド社 は 組 立 と い っ て も 車 輛 タ イ ヤ
車 体 な どを 取 付 け る最 終 組 立 を お こな って い た に す ぎな い と述 べ て い る。
26(110)
第111巻
ml夏
島L草
第2号
♂島
盛
場」段β
皆(・9・
・
一・8年).
フ ォ ー ド車 の 好 調 な 売 行 き と 生 産 能 力 の ギ ャ ッ プ を 克 服 す る た め,1904年4
月 に 新 工 場 用 地(430×308フ
ィー ト)が23,500ド
ッ ク ・ ア ヴ ィ ニ ニ ー 工 場 の10倍
工 場(PiquettAvenuePlant)の
の 主 建 物(建
1905年
ノレを 費 し て 購 入 さ れ,5月
規 模 と い わ れ る 新 し い ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー
建 設 に着 手 され た。 新 工 場 の レ ンガ造
物 面 積403x507T一
ト)は76.500】
ごル の 設 備 投 資 で,同
り3階
建
年 末 か 翌 年
初 頭 に は 完 成 し 操 業 を は じ め たL2)。
と こ ろ で,当
時,フ
ォ ー ド社 の 出 資 者 の 内 部 で は,経
な 軽 量 大 衆 車 路 線 を 主 張 す る フ ォ ー ド と,利
営 方 針 に つ い て.廉
こ の た め,フ
ォー
の対 立 が 表 面 化 した。
ドは 大 衆 車 の 生 産 を 継 続 す る た め,1905年11月
ド ・ マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア リ ン グ 社(FordManufacturingCc.資
を 設 立 し,賃
ベ ル ヴ ュー
借 し た2階
価
幅 の大 きい 高価 な高 級 車 路 線 を主
張 す る 財 務 担 当 取 締 役 マ ル コ ム ソ ソ(A.Y.Malcomson)と
ー
か ら マ
第 二 会 社 フ ォ
本 金10万
ドル)
建 の嬉 物 で大 衆 車 の 機 能 部 品 生 産 を は じめ た。 これ が
・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場(BellevueAvenuePlant)で
あ る13)。 新 し い 両 工
場 の 操 業 開 始 に よ る フ ォ ー ド車 の 生 産 体 制 は お よ そ 表5の
高 級 車 に つ い て は,部
とお りで あ る。
品 生 産 を 従 来 と お な じ 外 部 業 者 に 依 存 し ピ ケ ッ ト ・ア
ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 で 組 立 て て い た が,大
衆 車 に つ い て は ベ ル ウ ユ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ
一一工 場 で 主 要 機 能 部 品 の 機 械 加 工 → 部 分 組 立 を お こ な い,完
成 ユ ニ ッ ト を4マ
イ ル は な れ た ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 に 馬 車 で 運 ん で 組 立 て る こ と に な っ
た 。 こ う し て,こ
型 →C型
→F型
の段 階 の フ ォ ー
→N型
→R型
→S型
ド社 で は,B型
→K型
系 統 の 高 級 車 生 産 とA
そ して の ち の 丁型 につ ら な る系 統 の大 衆 車
生 産 とが 並 行 し て い た 。
1.ピ
ケ ッ ト ・ア ヴ ィニ ュ ー 工 場
12)ピ
ケ ッ ト ・ア ヴ ィニ 一一 工 場 に つ い て は,Nevins,A..op.σf'.PP.262-26き.265-273i
SorensenlC.E.,MyFortyYearswithFord,1956(福
島 正 雄 訳 「自動 車 王 フ ォ ー ド」)99
ぺ..ジ 参 照 。
13)ベ
ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュー 工 場 に つ い て は,Nevins,A.,op.czt.,PP.281-282PP.324-326.
参 照 の こ と。
表5ピ
ク.ッ ト ・ア ヴ ィ 轟 ユ ー 工 場 とベ ル ・
ソ ユ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー エ 」
易
3階
夕ト1:.[三
ド
劉
二占III
最 終 組 立 職 場 … 台 ⊥ 組 立 ステ ー シ ョ ン12∼15
(表3参
照)
塗 装 ・仕 上 職 場
部品置場
皿
N型 エ ン ジ ン
2階
一
策2機
載 耳職場
二1=ン ジ
山八型 工 レ ペ L タ i
卜7ン
入 ミ ツ シ ロ ン、
、7■
ヤ、 その 他
(組 立 ・巾 体 塗 装 仕 上 げ?)
械 職
場
、
伊
1階
鋳 物
〔表3参
重 機 械]r哉
場'
(筋 盗}欝
1階
陽
臨
試験室
蒸1上
立1r機 場」
エンジン蝋,1盗
製品発送室
(
電 気室
豹
鞠.
工 場 敷 ナ也1面積430×308フ
ィー.ト
工 場 建 物 田 租402×50フ
ィー ト
ε汗.,PP.261-262,P.2SIIPP・324-325よ
(ベ ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場)
ジran者 数125ノ
り{乍成 日
、
(同コ) 鷺
(ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 〉
個言
考NeヤLnSrA,10P、
斗
照)1
械川口:シ
ィン)
第1機 械職場
事務室
倒
懸 ・
軽 機
部 品置場
一
場
2階
実 験 室.・1
設 計 ・製 図室
ン 試 験
28(112)第111巻
第2号
ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 の 職 場 構 成 は,表5の
第1機
械職 場
第1機
第2機
械職 場
れ の 階 の 一 小 区 画 を し め る に す ぎ な い 。 第1が
械 加 工,第2が
械 職 場 は,1階,第2機
とお りで あ る。
械 職 場 は2階
に あ り,そ
大 物 部 品 の機
小 物 部 品 の 機 械 加 工 を お こ な っ て い た と 推 測 さ れ る が,機
備 は 不 明 で あ る。 い ず れ に せ よ,2つ
の 機 械 職 場 と も,き
場 の 付 滞 設 備 の 域 を で る も の で は な く,汎
れぞ
械設
わ め て 小 規 模 で,工
用工作機械 をそなえた万能職場で あ
っ た と 思 わ れ る14)。 ピ ケ ッ ト ・γ ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 の 機 械 職 場 は,こ
う し て,高
級 車 の 部 品 の 一 部 に つ い て 補 助 的 な 機 械 加 工 を お こ な っ て い た に す ぎ な い 。.
組 立 職 場3階
に あ り,従
止 組 立 法 に よ っ て,高
来 の マ ッ ク ・ア ヴ ィ ニ ー 一 工 場 と お な じ 台 上 静.
級 車 と大 衆 車 と の2系
統 か ら な る フ ォ ー ド車 の す べ て の
車 種 の 最 終 組 立 が お こ な わ れ た 。 組 立 職 場 は,依
ら な る雑 然 と し た 作 業 場 で あ り,組
し て,た
然 と し て 組 立 台 と部 品 置 場 か
立 て る 車 種 の 変 更,部
品 の不 足 な どが 発 生
え ず 作 業 の 中 断 が お こ っ て い た と い う。 た だ 組 立 職 場 の 規 模 は ず っ と
大 き く な り,台
上 組 立 ス テ ー シ 。 ソ を15∼16も
の 拡 大 に よ り 同 時 に 生 産 さ れ る 台 数 が15∼16台
そ な え,こ
へ と増 大 し た15)。 さ き に の べ た
台 上 組 立 ス テ ー シ ョ ン の 生 産 能 力 か ら判 断 し て,ピ
の組 立 職 場 の 日産 能 力 は,お
な お,2階
の 一 部 に も,組
そ ら く約60台
の た ん な る協 業 規 模
ケ ヅ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ.一工 場
に な っ た も の と考 え ら れ る 。
立 作 業 場 が あ っ た よ う で あ る が,こ
こで は 最 終 組
立 の 前 作 業 で あ る簡 単 な部 分 組 立 の 一 部 が お こ な わ れ て い た もの と思 わ れ る 。
塗 装 ・仕 上 職 場2階
と3階
の 一 部 を し め,外
律 品 で あ る車 体 の 塗 装 や 艤 装
な ど仕 上 作 業 が お こ な わ れ た16)。
試験室
は じ め 街 路 や 工 場 内 の 空 地 で お こ な わ れ て い た が,の
移 さ れ こ の 階 の 広 い 部 分 を し め た 。 ダ.ッジ社(DodgeBrothers)か
エ ン ジ γ の 始 動 試 験,そ
ち に1階
に
ら納 入 され た
の 他 外 注 品 の 機 能 検 査 と完 成 車 の 点 検 が お こ な わ れ た
と思 わ れ る。
14)Nヒvln5.A.,oψ,諺.,p,266.
!5)Nevins.A.0.誑
りp.267.
16),17),18),19)Nevus,A.pσ
汐..it.,p.2G6.
自動車産業成立期 とフォ ー ド社 の生産力構造(113)29
製 品 発 送 室1階
に あ り完 成 車 の 荷 造 ・発 送 を お こ な う17)。
実験室
マ ッ ク ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 に あ った も の が,そ
の ま ま こ の2
設 計 ・製 図室
階 に 移 さ れ た と 思 わ れ る 、 た だ 規 模 は 大 き くな っ た と 思 わ れ,
そ れ ぞ れ 数 室 ず つ を し め て い た18)。
事 務 室1階
の 小 区 画 を し め,J.5.カ
ズ ソ を 中 心 に 経 埋 ・販 売 ・広 告 の
事 務 を お こ な う19)。
こ の よ う に,各
職 場 は3階
ベ ー タ ー が 結 び つ け ,部
い た 。 な お,工
建 の工 場 に 配 置 され て い た が,そ
品 を 揚 げ,3階
で 組 立 ら れ た 完 成 車 を1階
場・
設 計 の 段 階 で は こ の 主 工 場 の ほ か に,発
試 験 棟 の 建 物 が 付 属 し て い た と い う.こ
職 場,試
れ らを大 型 エ レ
へ おろして
電 設 備,塗
装 職 場,
れ ら と主 工 場 内 部 の 電 気 室.塗
験 室 と の 関 係 は 不 明 で あ る が,さ
装仕上
き に の べ た試 験 室 の よ うに の ち にキ
工 場 へ 吸 収 さ れ た と も考 え ら れ る 。
結 局,こ
の 時 点 の ピ ケ ヅ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は,小
規 模 な万能 機械 職場 を
も ち 部 品 の 機 械 加 工 を 部 分 的 に お こ な っ て は い た が 本 格 的 な も の で は な く,全
体 と し て 以 前 の マ ッ ク ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 の 規 模 が 拡 大 さ れ た 日産60台
の能力
を も つ 組 立 工 場 で あ っ た20)。
2.ベ
ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場
ベ ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は,.大 衆 車 で あ るN型
ス ・ ミ ッ シ ョ ン,ラ
ン ニ ン グ ・ギ ヤ,ア
品 製 作 の た め の 粗 形 品 で あ る鋳 物 は,
外 部 の デ ト ロ イ ト鋳 造 工 場 ・(DetroitFoundry)か
(lnternationalHavesterCo.)や
FoundryCo.)で
春,イ
ら購 入 し(表3.),機
ン タ ー ナ シ 。ナ ル …
械 加 工 と コー
一ベ ス タ ー社
ク リー ブ ラ ン ドの ホ ノ マ γ社(HoffmanHindgeand
働 い た 経 験 を も つ 機 械 技 師 ウ ォ ー レ リ ソ グ(M..F.W・llerEng)
を 工 場 長 と し て 招 き,整
20)Ford,H.,OP.σ
ラン
ク ス ル な ど機 能 部 品 を 作 る 機 械 工 場 で
あ る 。 こ の 工 場 に は 鋳 造 設 備 が な く,部
ニ ッ ト組 付 を お こ な っ た 、1906年
車 の エ ン ジ ン,ト
備 さ れ た べ ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー工 場 は,表5の
鉱.,p.58.フ
な ワ て は い た が,基.本
ォ ー ドは,ピ
と
ケ ソ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は 部 品 製 作 と組 立 を お こ
的 に は ま だ 組 立 工 場 に す ぎ な い こ と を 述 べ て い る。
30(114)第111巻
第2号
お りで あ る。
重 機 械 職 場1階
に あ り,重
工 作 機 械 に よ っ てN型
部 品 の 機 械 加 工 が お こ な わ れ た 。 こ の 重 機 械 職 場 は,作
旋 盤,ボ
ー ル 盤,中
ぐ り盤,フ
エ ン ジ ン のた め の大 物
業 の タ イ プ に 応 じ て,
ラ イ 入 盤 な ど が 何 個 所 か に ま と め て 機 種 別 に配
置 さ れ た 機 種 別 職 場 で あ っ た と 思 わ れ る が,ウ
配 置 と新 し い 機 械 の 導 入 が お こ な わ れ,加
ォ ー レ リ ソ グ に よ っ て 機 械 の再
工 対 象 に た い す る 作業 系列 に した が
っ て各 種 機 械 を配 列 す る 品種 別 機 械 加 工 ラ イ ソ形 成 の萌 芽 が す で にエ ン ジ ンの
主 要 部 品 で あ る エ ン ジ ン ・ブ ロ ッ ク の 機 械 加 工 工 程 に 認 め ら れ る 点 は 注 目 に あ
た い す る。N型
車 エ ン ジ ン ・ブ ロ ッ ク の 機 械 加 工 は,ウ
要 約 す れ ば,つ
ぎ の と お りで あ る2D。
工 程1エ
↓
工 程2エ
↓
工 程3エ
↓
工 程4エ
↓
工 程5エ
ン ジ ン ・ブ μ.ッ ク(粗
形 鋳 物)を
ォー レ リソ グ の記 述 を
ジ グ に取 付 け る
ンジ ン ・ブ ロ ックの 底 面 の フ ライ ス 削 り
特 殊 フ フイ ス盤
ン ジ ン ・ブ ・ ッ ク に ク ラ ン ク ・ケ ー ス 取 付 穴 を 穿 孔
多 軸 ボ ール 盤
ソ ジ ソ ・ブPヅ
特 殊 中 ぐ り盤
クの中 ぐり
ンジ ン ・ブ ロ ック に バル ブ座 の 中 ぐり
N型 車 の エ ン ジ ン は4気
筒 で あ る が,エ
多 軸 ボ ー ル盤
ン ジ ン ・プ ロ ヅ ク は2気
筒 の 鋳 物2
個 か ら で き て い る。 外 注 品 で あ る エ ン ジ γ ・プ ロ ヅ ク の 粗 形 鋳 物 は,上
程 か ら な る 作 業 系 列 を 通 過 し て,完
業 で あ る 工 程1を
の ぞ い て,ほ
記5工
成 部 品 とな る。 加 工 対 象 の ジ グへ の取 付 作
か の4工
程 は す べ て 機 械 化 さ れ て お り,エ
ンジ
ン ・ブ ロ ッ ク の 機 械 加 工 だ け に 専 門1こ も ち い ら れ る 一 系 列 の 専 用 工 作 機 体 系 が
成 立 し て い る。 各 種 工:作機 械 は,す
て 説 明 さ れ て お り,と
盤 で あ っ た 。 つ ぎ に,各
べ て 「特 殊 な 」(special)と
く に ボ ー ル 盤 は 同 時 に8個
い う言 葉 を つ け
の穴 が 穿孔 で き る多 軸 ボ ール
作 業 地 点 間 ・各 機 械 問 は ス ラ イ ド台(w・ ・kslide)に
よ
っ て 結 び つ け ら れ て い る 。 ひ とつ の 作 業 が 終 る と エ ン ジ ン ・ブ ロ ッ ク は,ス
ラ
イ ド台 の 斜 面 に 乗 せ ら れ,手
で 押 し て つ ぎ の 作 業 地 点 に 送 ら れ,そ
21),22)Nevins.A..oφ.`ゴ`.,p.325.
こ で 取 り上
自動車産業成立期 とフォー ド社 の生産 力構 造(115)31
げ ら れ て 機 械 に セ ッ ト さ れ る。 こ う し て,エ
点 で 機 械 加 工 を 完 了 し て,エ
は,け
ン ジ ン ・プ ロ ヅ ク は 最 後 の 作 業 地
ン ジ ン の 組 立 職 場 へ 送 られ た 吻。 こ の ス ラ イ ド台
っ し て 自 動 的 な 機 械 的 搬 送 手 段 で は な か っ た が,当
を と る 機 械 工 場 で 一 般 に み ら れ た,機
時 の機 種 別 件 茉 組 織
械 加 工 を お え た 品物 を 箱 に 入 れ 一 定 量 た
ま る と つ ぎ の 作 業 地 点 に 搬 送 人 を つ か っ て 運 ぶ 方 式 に く ら べ る と,は
す ん だ も の で あ り,搬
こ の よ う に,エ
るか にす
送 補 助 労 働 者 は排 除 され た。
ソ ジ γ ・ブ ロ ッ ク の 機 械 加 工 は 専 用 工 作 機 械 体 系 か ら な る機
械 加 工 ラ.イン に よ る ラ イ ン生 産 が 実 施 され て い た 。 ラ イ ン 生 産 に よ っ て.エ
ジ ン ・ブ ロ ッ ク の 製 作 は 一 定 の 流 れ を 形 成 し.継
起 的 な 進 行 作 業 で 什.Eげ
と が 可 能 と な っ た 。 機 種 別 職 場 に お い て し ば し ば 発 生 し た.各
け る 作 業 手 順 の 交 錯 に よ る,待
ち 時 間 の ロ ス,作
付 具,刃
具 の 使 用 が 可 能 と な り,標
るこ
種 部 品 の間 に お
業 地 点 間 搬 送 の時 間 ロス な ど
作 業 の 中 断 は 克 服 さ れ た 。 そ れ ぞ れ の 専 用 工 作 機 械 に つ く機 械 工 は,専
グ,取
ン
用 の ジ
準 化 され た操 作 の反 復 作 業 を お こ な
う こ と に な った 。
な お,エ
ソ ジ ソ ・ブ ロ ッ ク以 外 の エ ソ ジ ソ 部 品 に つ い て は,機
械加工 ライン
の 形 成 は 不 明 で あ る 。 お そ ら く,機 種 別 職 場 の ま ま で あ った と思 わ れ る。
軽 機 械 職 場2階
に あ り,軽 工 作 機 械 に よ っ て,ラ
ン ニ ン グ ・ギ ャ,ア
ク
ス ル な ど小 物 部 品 が つ く られ た 。 こ こ で は 機 械 加 工 ラ イ ンは 形 成 され ず,機
種
別 作 業 組 織 の機 械 加 工 職 場 で あ った と思 わ れ る。
組 立 職 場1階
ジ ン ・ブ ρ ック,ク
に あ り,重
機 械 職 場 で つ く ら れ た 各 種 エ ソ ジ シ 部 品(エ
ラ ソク シ ァ フ ト,ピ ス トン,ピ
が 特 製 の 箱 に 入 れ て 運 び 込 ま れ.一
れ た 。 組 立 作 業 は,や
ス トン 。ロ ッ ド,ベ ア.リング な ど)
部 の 外 注 品 と と も にN型
エ ン ジ ンに組 立 ら
は り台 上 静 止 組 立 法 で お こ な わ れ た 。 組 立 台 上 に す え ら
れ た ク ラ ン ク ・ケ ー ス に エ ン ジ ン ・プ ロ ヅ ク が の せ られ,つ
ク ・シ ャ フ トが 挿 入 され,そ
る一
ン
ぎに それ に ク ラ ン
れ か ら ピ ス トン と ピス ト ン ・ ロ ッ ドが 組 付 け ら れ
と い っ た 一 連 の エ ソ ジ ソ組 立 作 業 が,さ
一 工 場 の 最 終 組 立 作 業 と お な じ 方 式 で.組
き に の べ た マ ヅ ク ・ア ヴ ィ ニ..
立 作 業 班 に よ って 展 開 され た と思 わ
32(116)第111巻
第2号
れ る 恥。
こ の エ ソ ジ ソ 組 立 職 場 は,台
ジ ン の 生 産 能 力 は,合
産 約15台,エ
上 組 立 ス テ ー シ ・ ソ数5∼6台
計 日産75台
ン ジ ン1台
で あ った 鋤。1台
当 り1.5時 間 は,当
も ち,N型
エ ン
上 組 立 ス テ ー シ ョン当 り 日
時 の 静 止 組 立 法 に よ る エ ン ジ ン組
立 工 程 に お け る 生産 能 力 の水 準 を し め す もの と思わ れ る。
試験棟
組 立 を 完 了 し た エ ン ジ ン は,7ラ
車 に の せ ら れ て,屋
イ ・ホ イrル
外 に 建 て ら れ た 試 験 棟 に 運 ば れ,こ
ガ ソ リ ン を 注 入 し,バ
が組 付 け られ 手 押
こ で 点 火 装 置 を 組 付 け,
ヅ テ リ ー に 接 続 し て 始 動 試 験 が お こ な わ れ た 。 当 時,試
験 棟 に は 動 力 計 が な く,き
わ め て 粗 野 な 方 法 で 試 動 点 検.・ 検 査 が お こ な わ れ て
い た と い う25)。
以 上 が,ウ
ォ ー レ リ ン グ 自身 に よ っ て
と よ ば れ た,エ
ソ ジ ソ 日産75台
二 一工 場 の 姿 で あ る 、1906年
数 は 約125人
で あ り,彼
(departmentalhead)に
そ 表6の
「素 晴 し い 小 工 場 」(anicelittleplane)
そ の 他 機 能 部 品 を つ く る べ.ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ
当 初 の ベ ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 の 労 働 者 総
ら は 工 場 長 で あ る ウ ォ ー レ リ ソ グ と7人
の部 門 職 長
よ って 管 括 され て い る。 こ の 工 場 の 管 理 体 制 は,お
お よ
よ う.にし め す こ とが で き よ う26)。
表6ベ
ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 の 管 理 体 制
糊 謙
艶1三葦
蕊
.一 機 械 加 工 部 門 職 長(軽
工 場 長 一 一 組 立 部 門 職 長(エ
一 試 験 部 門 職 長(エ
毒簾1::::::} 職
場
機 械 職 場 の 担 当)・ … ・・・
・・… … … … 軽 機 械 職 場
ン ジ γ 組 立 の 担 当)… … … ・
… … ・・… … 組 立 職 場
ン ジ ン試 験 の 担 当)・ … … … ・… … ・・
… ・
・試 験 棟
一 検 査 部 門 職 長 … ・・
・… … … … ・・… ・… … … … … ・'・
… … … …'"P
一 工 具 部 門 職 長(工
具 製 作 お よ.び工 具 の 供 給 で 担 当)・ … ・
・2
備 考Nevhls,A.,OP.```.,p.281よ
ま た,そ
れ ぞ れ
の 職 場
23),24)Nevin3,A、,oφ.6露.,p.326.
25)Nev正ns,A.OP.C..P.326.
26)Nevins,A.,砂.o髭.,p.281.
り作 成 。
に.は,さ
き に マ
ッ ク
・ ア ヴ
ィ ニ ュ ー 工
場 の 組 立 室 で み
自動車産 業成立期 とフォー ド社の生産力構造(117)33
た よ うな 作 業 班 が 形 成 さ れ て い た と思 わ れ,こ
ュ ー 工 場 の 管 理 は,工
organization)に
う し て,ベ
ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ
場 長 → 部 門 職 長 → 作 業 長.と い う 簡 単 な 直 系 組 織(line
よ っ て お こ な わ れ た と考 え ら れ る 。 た だ し,フ
ォ ー ドは ,こ
う
い つた地 位 の公 式 的 な等 級 づ け を 好 ま なか った 。
さ て,ピ
ケ ッ ト ・ア ヴ ィニ ュ ー 工 場 ・ベ ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 に よ っ
て フ ォ ー ド社 は,ほ
3.再
ぼ 年 産1万
編 ・拡 充 さ れ た ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィニ ュ ー 工 場
1906年,フ
ォ ー ド.社の 名 目上 の 社 長 グ レ イ(∫.S.Gray)の
社 長 就 任 を 機 会 に6月
と,フ
台 体 制 に 到 達 し た もの と思 わ れ る(表1)。
マ ル コ ム ソ ン も退 社 し,フ
死 去 と フ ォ ー ドの
ォ ー ドの 支 配 体 制 が 確 立 す る
ォ ー ド社 の 経 営 方 針 は 大 衆 車 路 線 一 本 に し ぼ られ,1907年5月
に別 会社
で あ っ た フ ォ ー ド ・マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア リン グ 社 は フ ォ ー ド社 に 吸 収 合 併 さ れ
た 。 こ の こ と に よ り,ベ
ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィニ ュ ー 工 場 は 閉 鎖 され て,機
機設 備
が ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 に 移 さ れ る.こと に な っ た27)。 ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ
ニ ュ ー工 場 で は ,こ
れ を 契 機 に 再 編 ・拡 充 が お こ な わ れ た 。 ふ る い ベ ル ヴ ュ ー
・ア ヴ ィ ニ ュ ー工 場 か ら も ち 込 ま れ た 機 械 と と も に ,新
れ,ま
し い 機 械 屯す え 付 け ら
た そ の う ち の い くつ か は 特 別 に 設 計 さ れ た 専 用 機 で あ っ た 。 そ し て,新
し い よ り よ い 作 業 系 列 の 整 備 が も た ら さ れ た 。 ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー工 場 の
各 職 場 に お こ っ た 変 化 は,お
第1機 械 職 場1階
は,重
お よ そつ ぎ の とお』
り で あ る28)。
工 作機 械 に よ る大 物 部 品 の機 械 加 工 職 場 とな った ぴ
機 械 は と り あ つ か う部 品 の 種 類 ご と に編 成 さ れ て,シ
・ケ ー ス 部 門 ,ク
とは,さ
リ ン ダ ー 部 門,ク
き に の べ た ベ ル ヴ ュ ー ・ ア ヴ ィ ニ ェ ー工 場 の エ ン ジ ン ・ブ ロ ッ ク 機 械
加 工 ラ イ ン に 相 当 す る も の と考 え ら れ,整
備,充
実 さ れ た 第1機
械 職場は複数
の 機 械 加 ⊥ ラ イ ン よ り構 成 さ れ て い た と推 定 で き る。 フ ォ ー ドは,か
27)Nevins,A.,OP,c∫
28)再
編
372に
ランク
ラ ン ク ・シ フ ト部 門 が 成 立 し た29)。こ の 「部 門 」(department)
彦.,p.364.
・拡 充
詳
し い.
さ れ た
29)Nしvhls,A,op.Lit..P.364.
ピ ク.ッ
ト ・ ア1グ
ィ ニ ュ ー 工 場 に
つ い て は ,Nevills,A.,砂,cit.,PP,364-
れ の 著f乍
34(118)第111巻
で,ピ
第2号
ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は,こ
う い つ た 部 品 製 作 の た め の 「部 門 」 を
18種 も っ て い た と述 べ て い る讐)。
こ う し て,こ
の 頃 よ リ フ ォ ー ド社 の 部 品 製 作 の 機 械 体 系 は,そ
れ ぞれの部品
の 種 類 に 照 応 す る機 械 の 品 種 別 直 列 編 成 す な わ ち 機 械 加 工 ラ イ ソ と よ ば れ る 部
品 ご と の 専 用 機 械 体 系 へ と し だ い に 分 化 し て ゆ き,機
械 職 場 は い くつ か の 品 種
別 機 械 加 工 ラ イ ソ の結 合 体 に 発 展 す る 傾 向 が 定 着 し て い っ た と 思 わ れ る 。
第2機
械 職 場2階
は,軽
工 作 機 械 に よ る小 物 部 品 の機 械 加 ⊥ 職 場 とな った。
詳 し い こ とは 不 明 で あ る が,機
種 別 職 場 で 機 械 加 工 ラ イ γ は形 成 され て い な か
っ た と 思 わ れ る。
最 終 組 立職 場
機 械 加 工 を お わ っ た 各 種 単 一 部 品 は,お
門 に 付 属 す る 部 分 組 立 職 場 で ユ 三 ッ トに 部 分 組 立 さ れ,大
そ ら く機 械 職 場 の 部
型 エ レ ベ ー タ ー で3
階 の 最 終 組 立 職 場 に 運 び 揚 げ ら れ た 。 こ の 最 終 組 立 職 場 の 整 備 は.台
上静止組
立 を よ り能 率 的 に お こ な う た め の も の で あ っ た 。 組 立 に 必 要 な 部 品 を 組 立 台 の
ま わ り の 最 適 地 点 に 整 理 し て 配 備 す る こ とは 組 立 作 業 の 能 率 を 大 き く左 右 し た 。
こ の た め,特
別 の 部 品 分 類 用 の 箱 戸 だ な が 設 置 さ れ た31)。 ま た,重
や 車 体 を 組 立 台 に 運 ぶ た め に,モ
機)が
設 置 さ れ た 鋤。 こ の 頃,2本
いエ ンジン
ノ レ ー ル の 上 を 動 く 一 種 の ホ イ ス ト(巻 揚 げ
の レ ー ル に 組 立 負 を お き.ロ
ー プで 引張 っ
て 移 動 さ せ な が ら 自動 車 を 最 終 組 立 す る方 法 な ど ア セ ン ブ リ ー ・ ラ イ ン を つ く
る た め の 各 種 の 実 験 が な さ れ て い た よ うで あ る が,こ
の段 階 で は ま だ実 験 の域
を 出 な か っ た 鋤。
こ う し た 整 備 を へ て,こ
日産(10時
間)101台
の 最 終 組 立 職 場 は1908年6月
お よ びS型
と い う記 録 を つ く る ま で に な った 。 あ る1台
14分 で 組 立 → 試 験 を 完 了 し た と い う鋤(こ れ は,そ
で あ るが1)。
にN型
に
の ま ま信 じ られ な い よ うな 数 字
組 立 ス テ ー シ ョ ン の 数 が 以 前 と お な じ15∼16台
30)Ford,H.,OP.6肱,p.85,
31)Nevins,A.,OP.誘.,p.364.
32)Nevi..,A.,OP.C.,p.368.
33)Nevi..,A.,ψ.碗.,p.369.
34),35)Nevins,A.,OP.6髭,,p.371.
な ど は,実
車 の
で増 大 し て い な い
自動車産業成 立期 とフォ ー ド社 の生産力構造(119)35
と す れ ば,日
産60台
前 後 か ら100台 前 後 へ,約1.5倍
の能 率 の 向上 と して認 識 で
き る。 ネ ヴ ィ ン ス は こ う い つ た 記 録 が 達 成 さ れ た 原 因 を,つ
ぎ の2つ
の側面か
ら 説 明 し て い る35)。
(1)部
品 の正 確 さ の 向 上 とや す り か けf乍業(flung)や
皿mering)な
②
ハ ン マ ー 打 ち 整 形(ha一
ど組 付 る直 前 の 調 整(1争 ミ亡
一
皿inutet・uch)カ ミ不 要 に な った こ と。
組 立 台 へ 正 し い 順 序 で 正 し い 時 間 に 部 品 が 供 給 さ れ る 体 制 が 考 案 され た
こ と。
(1)は,フ ォ ー ド社 に よ る部 品 の 内 製 率 の 増 大 と関 連 し て い る で あ ろ う。機 械 職
場 の 専 用 機 に よ る機 械 加 工 精 度 の 向 上 は,組
立 工 程 に お い て 組 立 作 業 か ら部 品
の 相 互 調 整 作 業(mutua艮fitting・fpa・t8)を 排 除 し て ゆ く。 単 な る組 立 作 業(as・em・
bly)の 成 立 は,の
ち の ア セ ン ブ リー ・ラ イ ン に よ る 移 動 組 立 法 の た め の 技 術 的
前 提 で あ った 。 ② は.さ
き に の べ た 部 品 整 理 設 備 や ホ イ ス トで あ ろ う。 ま た.
組 立 工 と組 立 工 の 助 手 と し て の 部 品 運 搬 工 と の 分 化 が 成 立 した と思 わ れ る。
以 上,再
は,ほ
編 ・拡 充 さ れ た ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ.ニュ ー工 場 を 基 盤 に,フ
ぼ 年 産1∼2万
台 体 制 が 確 立 し,し
ォ ー ド社
か も機 械 加 工 工 程 を 掌 握 し て 部 品 製
作 か ら 最 終 組 立 ま で を お こ な う.自動 車 メ ー カ ー に 成 長 し た 。 ま た,「
成 や ア セ ン ブ リ ー ・ラ イ ン の 実 験 に み ら れ る よ う に,の
部門」形
ち の フ ォ ー ド ・シ ス テ
ム に 結 合 さ れ る 要 素 を ひ と つ ひ と つ 生 み 出 し て い った 。
.IV小
わ た し は,会
社 設 立 時(1903年)か
括
ら フ ォ ー ド社 の 経 営 史 の み な ら ず 自 動 車 工
業 史 に 残 る 画 期 的 な 大 衆 車 で あ っ た 丁 型 車 の 登 場 の 直 前(1908年)ま
での期間 に
お け る フ ォ ー ド社 の 自 動 車 製 造 の 労 働 過 程 に 焦 点 を し ぼ り,生 産 力 構 造 の 発 展
過 程 を あ とづ け て き た。
マ ッ ク ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は,台
上 組 立 ス テ ー シ ョ ン を4台
も ち,静
止組立
法 に よ っ て 自 動 車 を 製 造 す る 小 規 模 な 組 立 工 場 で あ り,日 産 能 力 は 約15台 で あ
った。 部 品 は す べ て 外 注 され た 。
36(120)第111巻
第2号
ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィニ ュ ー 工 場 は,当
つ 静 止 組 立 法 の 組 立 工 場 で,日
機 械 加 工 職 場 を2つ
も ち,一
初,台
産 能 力 は 約60台
で あ っ た 。 ま た,小
も
規 模 な万 能
部 補 助 的 な部 品 製作 を お こな った 。
ベ ル ヴ ュ ー ・ア ヴ ィ ニ ュ ー工 場 は,機
テ ー シ ・ ソ を5∼6台
上 組 立 ス テ ー シ 三.ンを15∼16台
種 別 機 械 加 工 職 場2つ
と,台
上組立 ス
もつ エ ソ ジ ソ の 組 立 職 場 を も ち ゴ 大 衆 車 の 各 種 機 能 部 品
を つ く っ た 。 エ ソ ジ ソ の 日産 能 力 は75台 で あ っ た 。 大 衆 車 に つ い て は,主
能 部 品 が 内 製 化 さ れ る と と も に,エ
要機
ンジ ン ・ブ ロ ッ ク機 械 加工 ラ イ ンが は じ め
て登 場 し た。
以 上 の 過 程 を へ て 再 編 ・拡 充 され た ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は,品
に わ か れ た18の.「 部 門 」 が 成 立 し,主
が 形 成 さ れ,こ
要 部 品 につ い て は数 本 の機 械 加 工 ライ ソ
う し て 整 備 さ れ た 機 械 加 工 職 場 に 従 来 の 静 止 組 立 法 に よ る組 立
職 場 が 結 び つ け ら れ て い た 。 部 品 の 内 製 率 は 増 大 し た で あ ろ う が,日
約100台
種 別
に と ど ま っ た 。 ネ ヴ ィ ソ ス は,こ
ー 工 場 に つ い て ,「
実 際.好
産 能力は
の 整 備 さ れ た ピ ケ ッ.ト ・ア ヴ ィ ニ ュ
ま し い 端 初 に す ぎ な か っ た け れ ど も,変
化は当時
ほ と ん ど 革 命 的 だ と 思 わ れ た よ うだ 。」 と の べ て い る95)。こ の 端 初 的 で は あ る が
重 合 的 な 変 化 と い う二 面 的 な 評 価 は,す
考 え ら れ よ う。1906年
べ て 機 械 加 工 工 程 の 変 化 と結 び ら け て
後 半 ベ ル ヴ 二一 ・ア ヴ ィニ ュ ー工 場 の ニ ン ジ ン ・ブ ロ
ッ ク の 製 作 で 成 立 し,さ
ら に ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 で ク ラ ン ク ・ ケ ー ス
や ク ラ ン ク ・シ ャ フ トに も導 入 され た 機 械 加 工 ラ イ ン に よ る 部 品 の ラ イ ン生 産
は,ア
メ リカ で は す で に ホ イ ッ トニ(E.Whitney)が1800年
銃 に,コ
ル ト(S.C・lt)が1849∼54年
頃か ら マス カッ ト
に 連発 拳 銃 につ いて 開 発 され て い た生 産
方 法 で は あ る が 、 自動 車 工 業 で の 採 用 は フ ォ ー ド社 が お そ ら く最 初 で あ っ た 。
こ う し.て機 械 職 場 は,工
換 さ れ,品
種 別 機 械 加 工 部 門 が 形 成 さ れ て い った が,ピ
二[場の 部 門 数 は18で
Plant)に
作 機 械 が 従 来 の 機 種 別 配 置 か ら次 第 に 品 種 別 配 置 へ 転
あ って,の
お け る 当 初 の150部
36)Nevins,A.,OP.C26,P-364.
ケ ッ ト ・ノ ヴ ィ ニ ュ 一
ち の ・・イ ラ ン ド ・パ ー ク 工 場(HighlandPark
門 ま た1922年
の500部
門 と い う フ ォ ー ドの つ た え る
自動 車 産 業成 立 期 と フォ ー ド社 の 生 産 力 構 造.(121)37
数 字 に く ら べ る と,極
ラ イ ン を み る と,ピ
さ れ る単 純 な
端 に 少 な い 訂)。 さ ら に,エ
ソ ジ ソ ・ブ ロ ッ ク の 機 械 加 工
ケ ッ ト ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 は5工
も の で あ っ た が,ハ
程
・工 作 機 械4台
イ ラ ン ド ・パ ー ク 工 場 の28工
116台
関)さ ら に リ バ ー ・
・ル ー ジ ュ 工 場(RiverR・ugePlant)の43工
236台
鋤 と い う 数 字 に く ら べ る と,こ
程
・工 作 機 械
程
・工 作 機 械
れ ま た極 端 に小 規 模 で あ る。
ち の フ ォ ー ド社:の 工 場 と く ら べ て,も
っ と も 著 し い お く れ は,組
で構 成
し か し,の
立 工 程 に み ら
れ る の で あ る 。 組 立 工 程 は ピ ケ ッ ト ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 に お い て も,ふ
ッ ク ・ ア ヴ ィ ニ ェ ー 工 場 段 階 か ら ラ ジ カ ル な 変 化 は お こ ら ず,依
るい マ
然 と して 台上
静 止 組 立 法 の ま ま で あ っ た 。 さ き に も 述 べ た と お り,台
上 静 止 組 立 法 を と るか
ぎ り.1台
せ い ぜ い6(」7台
上 組 立 ス テ ー シ 且 ソ 当 り 生 産 能 力 は 日 産4台
界 で あ る 。 こ う し て ピ ケ ヅ ト ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 段 階 に お い て は,む
工 程 の 能 力 が,大
が限
し ろ組 立
量 生 産 体 制 を 確 立 す る う え で 重 大 な技 術 的 ネ ヅ ク に な っ て い
た と い え よ う。 こ の 機 械 加 工 工 程
と組 立 工 程 の 間 の ギ ャ ッ プ が,組
け る 移 動 組 立 ラ イ ン(movingassamblyline)の
立 工程 にお
成 立 に よ り 克 服 さ れ,こ
に 組 立 ラ イ ン を 基 軸 と し て 全 工 程 が 整 備 さ れ る 時,は
ん どは 逆
じ め て フ ォ ー ド ・シ 久 テ
ム が 成 立 す る 。 革 命 的 な 整 備 を へ た ピ ケ ッ ト ・ ア ヴ ィ ニ ュ ー 工 場 に お い て も,
ま だそ の前 夜 に あ った。
さ て,以
上 の よ う な 生 産 力 構 造 の 技 術 的 限 界 性 は,さ
らに製 品 で あ る 自動車
自 体 が 当 時 ま だ 技 術 開 発 段 階 に あ っ た と い う事 情 に よ っ て,規
表7は,フ
ォ ー ド社 が 製 造 販 売 し た 全 車 種(試
定 され て い る。
作 車 を の ぞ く)の
主 要 仕 様 の変
遷 過 程 を 総 括 し た も の で あ る40)。
37)Ford,H.,OP,6庭,,p.85.
38)Amold,H,L,,FozdMethodsandtheFordShops,III・HowtheWorki.theFord
Factory3sachiallydone,in二7ヲ
≧βE照 る8θ
痒'zビ晦
αz自肥,June1914,PP,340-348
.
39)VanDeventer,J.H.,FordPrinciplesandPractlceaヒRiverRouge
,X-MachineOperationsonFordCylindersandFords..Pistons,in=乃
訊盈♂
∫2ガorル 血"αg耀"ちJune1923
,
PP,361-367.
40)最
近 の モ ノ コ ッ ク ・タ イ プ の登 場 以 前 の乗 用 者 は 大 ぎ くシ ャ ー シ ー部 分 と車 体 部 分 とか ら構 成
され てい た 。A型 車 ∼ 丁型 車 な ど フォ ー ド車 の車 種(Model)は
シ ァー シ ー の形 式 に よ って 決定
され
シ型
ャー
シ ー の上 に載 せ られ る車 体 に よ って お な じ車 種 の も の に も製 品 差 別 が うまれ る。
た
と る。
えに 丁
車は
,車 体 の ちが い に よ り.2人
乗 りス ポ ー ツ型 か ら6人 乗 リバ ス型 ま で,全 部 で
6つ の バ リ エ ー シ ョン が あ った(FordTimes,Vol.4,No
.13,Sept.1911の
フ ォ ー ド社 の広
告 「フノ...ド丁 型 車 の フル ・ラ イ ン」 を 参照).
38(122)
第1ユ1巻
第2号
表7フ
A型B型CmF型
エ ン ジ ン
動力 装置
点 火 装 置
伝動装 置
シャ ーシ ー関係
・
2気 筒 ・水 平 型 4気 筒 ・垂 直 型 2気 筒 ・水 平 型 2気 筒 ・水 平 型
3
24
10
1.2
ポ ン プ方 式
ポ ソ ブ方 式
ポ ン プ方 式
ポ ンプ方 式
乾
蓄
乾
乾
馬 力(H.P.)
エ ソ ジ ソ冷 却
ォー ド祉 全車種g主 要仕様明細表
電
池
電
池
電
池
電
池
潤 滑 油装 置
重 力 シス テ ム
重 力 シス テ ム
重 力 シ ス ラム
重 力 シ ス テ ム'
ク ラ ッ チ
コー ン方 式
コ 一 図方 式
コー ン 方 式
コ ー γ方 式
惑 星 運 動方 式
惑星運動方式
惑 星 運動 方 式
惑 星運動方式
チ 二 一 ソ方 式
チ ェ ー ン方 式
チ ェ ー ン方 式
チ ェー ン方 式
トラ γ ス ミ ッシ
ョ ソ
最 終 駆 動 装置
変 速 ・操 向
車 輪(イ
足 ま わ り装 置
タ
イ
前 進2段 後 退1段 前 進2段 後 退1段 前 進2段 後 退1段 前 進2段 後退1段
右 側 ハ ン ドル 右 側 ハ ン ドル 右 側 ハ ン ドル 右 側 ハ ン ドル
28
ン チ)
ヤ
全 楕 円 型
ホイーノ
レベ ー ス
(イ ン チ)
72
ト レ ッ ド
(イ ン チ)
55%
トソ ノ ウ型
2
D4
じヘ
ウの
ソ ン
一
9
リ
グ
ク赤
.
備 考FordTimes,Vol.4,No.10,June1911,PP.262-263よ
一
O
B
速 度(マ イル/陶
ダ ン
ン ド)
リ
グ
0
5
2
1
そ の他
重 量(ポ
ー
ミ ン
ク
ー
ダソ
カ
色
55%
円 型
55%
ラ ン ナ バ ウ ト型
トソ ノ ウ型
ッ ア.リ ン グ 型
(ラ ン ナ バ ウ ト)2(
ト ン ノ ウ)4
全 楕
84
55%
ラ ソ ナ バ ウ ト型
トソ ノ ウ型
ブルチ ニ
78
..92
ガ ノ
数
全 楕 円 型
ラ ト
( (
員
(前)車 輪 の 型
(後)全 楕 円 型
4
ボ デ ー関係
・
乗
30
ブ ル ・チ 3イ ン チ ダ ブ ル 3%ダ
3イ γ チ ・ ダ ブ 3%ダ
ー ブ
・チ ュ ー ブ
ューブ
ルチューフ
ス プ リソ グ
車 体 形式
28
32
2又
は4
ダ ー ク ・.グ リ ー
ン
1,700
1,3⑪0
1,300
40
30
30
り作 成 。
自動車産業成立期 とフォー ド社 の生産力構造
(123)39
(A型 か ら丁型 まで)
R型
K型N型
S型
丁型
6気 筒 ・垂 直 型 4気 筒 ・垂 直型 4気 筒 ・垂 直型 4気 筒 ・垂 直 型
40
15
ポ ン プ方 式
蓄 電 池 と発 電 機
15
15
20
熱 サ イ フ ォγ方 式
ポ ン プ方 式
ポ ンプ方 式
ポ ン プ方 式
乾 電
乾
乾
池
電
池
4気 筒 ・垂 直 型
電 池
発
電
機
o_
ス ク ワ ッ シ ュ ・ ス プ ラ ッシ ュ ・ ス プ ラ ッ シ ュ ・ ス プ ラ ッ シ ュ ・
システム
システム
システム
シス テム
重 力 シ ス テ ム とス プ ラ
ッ シ ニ」 ・ シ ス テ ム
マル チ ・デ ス ク マ ル チ ・デ ス ク マ ル チ ・デ ス ク マ ル チ ・デ ス ク
方式
方式
方式
方式
惑星運動方式
惑星 運動方式
惑星運動方式
惑 星運 動 方 式
シ ャ フ ト方 式
シ ャ フ ト方 式
シ ャフ ト方 式
シ ャ7ト 方 式
マ ル チ ・デ ス ク方 式
惑星運動 方式
シ ャフ ト方 式
前 進2段 後 退1段 前 進2段 後 退1段 前 進2段 後 退1段 前進2段 後 退1段
右 側 ・・ン ドル 右 側 ハ ン ドル 右 側 ハ ン ドル
右 側 ン ドル
(K)34
(KR)36
4イ
o
28
ン チ
3イ
(前)半 楕 円型(前)半
全 楕 円型(後)全
前 進2段 後 退1段
左 側 ハ ン ドル
30
ン チ
3イ
楕 円 型(前)半
楕 円 型(後)全
30
ン チ
3イ
楕 円型(前)半
楕 円型(後)全
30
(前)3イ
(後)3%イ
ン チ
楕 円型(後)
楕 円型
ンチ
ンチ
横半楕 円型
120
84
84
84
100
56
56
56
56
56
P一
ドス タ 一 型 ラ γ ナ バ ウ ト型 ラ ン ナ パ ウ ト型
ツ ア リン グ型
2
2
一( 青
ω赤 の
↓"
煽
3又 は5
轡 黒"悔
ラ ン ナ パ ウ ト型
カ ー ドス タ ー 型
2又 は3
賄
ツ ア リ ン グ 型.ナ
ープ
ソ ・ ラ ソナ バ ウ ト型,
タ ウ ン 型,ト
ルペ ド ・
ラ ソ ナ バ ウ ト型,ロ
ー
ドス タ ー 型,ク
ーペ 型
2又 は6
策 婁 物 一一… …
2,000
1,050
1,050
1,100
1,200
60
45
45
45
45
40(124)第111巻
こ の 期 間,毎
第2号
年 改 良 型 が 登 場 し,大
れ た 。 エ・ソ ジ ン,点
り,ま
火 装 置,ク
ラ ッ チ,駆
統 が 平行 して 生産 さ
動 装 置 な ど が,つ
ぎつ ぎ新 方 式 に 変
だ 確 固 と し た 規 格 方 式 が 成 立 し て い な い 。 こ うい つ た 状 況 の も と で,事
業 を お こ な っ た フ ォ ー ド社 が,部
な理 由 を 別 に し て も,む
N型
衆 車 と 高 級 車 の2系
品 生 産 を 外 部 業 者 に 依 存 し た の は,さ
し ろ 当 然 で あ っ た し,ま
た 自動車 技術 が 一 応 出 そ ろ う
車 の 時 点 を 機 会 に 部 品 生 産 に 着 手 し た の も理 解 で き る 。 し か し,自
大 量 生 産 が 本 格 化 す る に は,革
以 上 が,ア
まざま
動車 の
命 的 な 丁 型 車 の 登 場 を 待 た ね ば な ら な か った 。
メ リ カ 自 動 車 工 業 の 成 立 期 に お い て 着 実 な 企 業 成 長 を とげ て き た
フ ォ ー ド社 の1908年
1908年 に,ア
に い た る生 産 力 構 造 の 発 展 史 で あ る』 こ の 期 間,1900∼
メ リ カ で は 総 計502社
うち29社 は 他 部 門 へ 参 入)が
の 自 動 車 メ ー カ ー が 設 立 され,302社(こ
消 滅 し た41)。 初 期 ア メ リ カ 自動 車 工 業 が い わ ば
の
「泡
沫 会 社 」 の族 出 と 消 滅 が く り返 され る 「原 子 的 競 争 」 状 態 が 現 出 し た 背 景 に つ
い て,本
稿 で 説 明 し た 企 業 の 生 産 力 構 造 の 視 角 か ら 見 れ ば,フ
的 に み ら れ た よ う に,当
ォ ー ド社 に 典 型
時 自動 車 は 技 術 開 発 段 階 に あ り 自 動 車 メ ー カ ー は 簡 単
な ア イ デ ィア を も と に 固 定 設 備 を ほ と ん ど 必 要 と し な い 小 規 模 な 組 立 職 場 だ け
で 十 分 事 業 が や っ て い け た こ と に 求 め ら れ よ う。 と こ ろ で,世
とし て有 名 な
「オ ー ル ズ ・モ ビ ル 」 を販 売 し た オ ー ル ズ 社(OldsMotorVehicle
Co.資 本 金,1897年
1904年
一5,000ド ル,1899年
一50万 ドル)の
当 時 の フ ォ ー ドの工 場 よ り規 模 が 大 き く,よ
て い た と い わ れ る 引2)。し か し,オ
ー ル ズ 社 は,エ
・フ ァル コ ナ 一社(LelandandFaulconerCo.)に,変
る な ど,ほ
界 最:初 の 量 産 車
ラ ン シ ン グ に あ る新 工 場 は,
く整 備 さ れ,設
備が充実 し
ン ジ γ を リ ー ラ ン ド ・ア ン ド
速 器 を ダ ッジ社 に 発 注 す
と ん ど の 部 品 を 外 注 す る 組 立 メ ー カ ー で あ り,生 産 台 数 は1901年
600台,1902年一2500台,1903年一4,000台,1904年
台 で あ.つた 姐)。 し た が って 整 備 さ れ る以 前1906年
一
一5,000台,1905年一6,500
の ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ_一
工
41)N巳vin9,A.,oφ.`産,p.234.ま
た下川浩一.米 国 自動 車工業 経営 史の一断面.「 経営史学」
Vol.3,No.2,33ペ
ージ参照,
42)Nevins,A.,op-cat..P.2陥.
43)Rae,J.B.,TheAmerica.AutmnobileManufacturer∫,1959,p.23.ま
た下川浩一 米
国 自動 車産業経営史序説(上)「 経営志林」第8巻 第3号.29ペ ージ参 照。
自動車産 業成立期 と7オ ー ド社 の生産 力構造(ユ25)41
場 の 域 を 出 る も の で は な か っ た で あ ろ う、 整 備 さ れ た ピ ケ ッ ト ・ア ヴ ィ ニ ュ ー
工 場 は,当
1907年
ク4」
Co.),マ
時 の最 高 水 準 に あ った と思 わ れ る。
の 恐 慌 を へ て,1908年
一 フ ォ ー ド社,ビ
の ア メ リ カ 自 動 車 ⊥ 業 は よ うや く有 力 な 「ピ ッ
ュ イ ッ ク社(BuickMotorC。,).レ
オ 社(Re。MoterCar
ク ス ウ ェ ル ・ ブ リス コ(Maxwell・B■iscuMutりrCu.)一
く る鋤。 同 時 に1908年9月8目,デ
社 を 中 心 に 自 動 車 メ ー カ ー10社,ト
が うか び あ が っ て
ニ ラ ン(W.C.Durant)に
よ って ビ ュ イ ッ ク
ラ ッ ク ・ メ ー カ ー3社.部
を 傘 下 に 組 み 入 れ た 持 株 会 社GM(Ge.eralMotorsCo.)が
設 立 され,ま
か ら は フ ォ ー ドの 丁 型 車 が 登 場 す る 。 こ う し て.ア
の 飛 躍 的 成 長 期 を 向 え る。 こ の 時 期 に,フ
品 メ ー カ ー10社
た10月
メ リ カ 自動 車 産 業 は10年 代
ォ ー ド社 で は.フ
ォ ー ド ・シ ス テ ム
に よ る 丁 型 車 大 量 生 産 体 制 が 成 立 す る。 ア メ リ カ 自動 車 工 業 に お け る寡 占 体 制
は,こ
め 生 産 力 構 造 の 新 し い 技 術 的 変 革 の う え に 成 立 す る大 規 模 な 生 産 単 位 の
出 現 と 自動 車 市 場 の 飽 和 と の条 件 の も と に,20∼30年
定 着 し た と い え るQ
、
44)Nevins,A.,OP.6髭,,p.354.
代 に は じ め て 確 固 と し て.
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