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流域ビジョン
流域基本計画 宮古・下閉伊地域流域ビジョン 森・川・海と人との共生による水と緑の保全・創造 平成25年3月 岩 手 県 目 次 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 第 1 章 計画の意味づけ等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1 計画の意味づけ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2 計画の対象区域・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 3 計画期間等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 4 他の計画との調和・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第2章 流域の現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第1節 流域の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 1 地域の概況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2 森林の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 3 河川の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 4 海岸及び湾の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 5 自然公園及び保全地域の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 6 希少野生動植物の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 7 廃棄物不法投棄の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 8 水質の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 9 汚水処理施設の整備状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 第2節 流域の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 1 地域の将来展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2 森・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 3 川・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 4 海・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 5 住民等の取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 6 環境学習・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 7 未利用資源等の再資源化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 8 放射性物質の問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 第3章 計画の目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 第4章 目指すべき流域像・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 第5章 取組みの基本的方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第 1 節 計画の推進・協働体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 1 協議会の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 2 協働体制の構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第2節 基本方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 1 川上・川下の交流・連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 2 住民・事業者・行政の協働・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 3 森の恵みの再評価と保全・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 4 人と流域の自然との共生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 第3節 重点プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 1 森の再生プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 2 川と海の環境整備プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 3 水質保全プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 4 不法投棄防止プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 5 安全安心な流域づくりプロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 6 資源循環型産業育成プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 7 環境学習推進プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 第4節 主な指標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 1 はじめに 宮古・下閉伊地域は、緑豊かな山々、良質で水量豊富な河川、世界有数の三陸漁場 を抱え、自然に恵まれた地域です。 しかし、この豊かな自然も、近年の生活様式の変化や産業活動の活発化などによっ て変貌しつつあり、放置しておけば、次の世代に残すことが難しくなっています。 水は森を通じて流れ出し、川を通って海に注ぐという水循環と流域の視点から、環 境と地域を考えることが求められています。 平成 15 年 10 月に制定された 「ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例」 に基づき、環境保全上健全な水循環を確保し、良好な自然環境を後世に伝えていくた めに、住民・NPO・地域づくり団体、事業者及び行政が協働で取り組むべき方向性を 示すことを目的として、平成 17 年 1 月に宮古・下閉伊地域流域ビジョン(以下「平成 17 年ビジョン」という。 )を策定し、目標年次を迎えた平成 23 年2月には、県民の皆 様の意見をいただきながら、新しいビジョンを策定しました。 しかし、策定直後の平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災津波で当地域の沿 岸部は壊滅的な被害を受け、海岸周辺の環境、産業の拠点、住民の居住地、その他様々 な状況が大きく変動したため、現状に合わせ計画を一部見直すこととしました。 当地域は、その地形的特徴から、有史以来多くの津波災害を受けてきました。近代 では、明治三陸大津波(1896) 、昭和三陸大津波(1933) 、チリ地震津波(1960)によ り大きな打撃を受けましたが、それを乗り越え、現在の岩手県があります。 知事は、 「岩手県は、これまで幾度も大きな自然災害に見舞われてきましたが、その 都度屈することなく、苦難を乗り越えてきました。今回の想像を絶する大災害にあた っても、県民の皆様を初め、関係機関、企業、NPO などあらゆる方々の力を結集する ことにより、必ずや克服できることを信じています。 」と発言しています。 当地域においても、この度の震災を乗り越え、豊かな自然を未来へとつなげる取組 みを継続していきたいと考えております。 [NPO] Nonprofit Organization の略で、直訳すると非営利組織という意味です。一般的には公益的な 活動を自主的・自発的に行う民間団体を指し、NPO のうち特定非営利活動推進法に基づく認証 を受けて登記した団体を特定非営利活動法人(NPO 法人)といいます。 [協働] 住民・NPO・地域づくり団体、事業者、行政が、それぞれの果たすべき責務及び役割を役割 を自覚し、互いに尊重しながら、協力して取り組むことをいいます。 2 第1章 計画の意味づけ等 1 計画の意味づけ この計画は、宮古・下閉伊地域の森・川・海の保全及び創造に関し、住民、事 業者及び行政が一体となって健全な流域をつくるための取組みの指針とするもの です。 計画の推進に当たっては、それぞれの主体の自主的、積極的な取組みを期待す るものです。 2 計画の対象区域 宮古・下閉伊地域の 4 市町村(宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村)を対象と します。 3 計画の期間等 計画の期間は、平成 23(2011)年度を初年度とし、平成 29(2017)年度を目 標年次とする 7 年計画とします。 目標としては、平成 17 年ビジョンを引き継ぎ、概ね 20 年後(2030 年頃)の流 域のあるべき姿を念頭に、目標年次(2017 年)の流域を次世代に継承する姿とし て設定し、施策の推進に取り組むこととします。 4 他の計画との調和 本計画は、いわて県民計画その他の県が策定する計画や宮古・下閉伊地域の 4 市町村が策定する計画との調和を図るものとします。 早池峰山 3 第2章 流域の現状と課題 第1節 流域の現状 1 地域の概況 宮古・下閉伊地域は宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村の1市2町1村から 構成されており、面積は 2,672.4km 2 と岩手県全体の 17.5%を占めています。 地形は、西は北上高地中央部から東は太平洋に至っていますが、北上高地の 支脈が海岸部まで迫るため、地域の大部分が山岳地または高原状で占められ、 平野部は極めて少なくなっています。また、沿岸部は複雑な地形で、自然海岸 率が高く、その豪壮な景観を目当てに多くの観光客が訪れています。このよう な地形のため、耕地率は 2.1%と県平均の 10.1%に比べて著しく低く、一方、 地域の総面積に占める森林の割合 (森林率) は県平均の 77.2%を大きく上回り、 91.9%と高い割合を示しています。 気候は、内陸部は冬の寒さが厳しい内陸性気候であり、沿岸部は比較的温暖 な海洋性気候を示していますが、夏季には沿岸部特有の冷涼な偏東風「やませ」 の影響を受けることがあります。年間降水量は、約 1,000mm~約 1,500mm と なっています。 人口は、87,606 人で県全体の人口に占める割合は 6.7%であり、年々減少傾 向にあります。年齢構成では、年少人口(15 歳未満)の占める割合は全ての市 町村で県平均を下回っており、老年人口(65 歳以上)の占める割合は全ての市 町村で県平均を上回っています。 【自然海岸率】 自然海岸率(%) 自然海岸延長(km) 海岸総延長(km) 宮古市 79.46 80.57 101.40 田老町 85.43 26.39 30.89 山田町 76.63 56.43 73.64 岩泉町 90.03 10.74 11.93 田野畑村 79.80 18.80 23.56 岩手県 77.00 516.87 671.25 全国 53.09 17413.94 32799.02 (出典:環境庁第 5 回自然環境保全基礎調査海岸調査報告書(1998)) ※ 田 老 町は、調査時点では宮古市と合併していなかったため、別に掲げています。 [自然海岸]海岸が人工によって改変されないで、自然の状態を保持している海岸。 【市町村別人口と老年人口の割合】 市町村名 宮古市 総人口(人) 57,169 年少人口の割合(%) 11.8 老年人口の割合(%) 31.5 山田町 16,406 11.7 32.2 岩泉町 田野畑村 10,342 3,689 10.2 12.0 38.1 33.6 岩手県 1,303,351 12.5 27.8 (出典:平成 24 年岩手県毎月人口推計(年報)(2012)) 4 2 森林の状況 当地域の森林面積は 245,550ha で県全体の森林面積の 20.8%を占めており、 森林率は 91.9%と、県内他地区と比較して最も高い率となっています。 【市町村・地区別森林面積】 市町村・地区 区域面積(ha) 森林面積(ha) 森林率(%) 宮古市 125,989 115,650 91.8 山田町 26,345 23,960 90.9 岩泉町 99,292 92,418 93.1 田野畑村 15,619 13,523 86.6 宮古地区計 267,245 245,550 91.9 盛岡地区計 364,190 272,873 74.9 花巻・遠野地区計 173,394 128,203 73.9 北上地区計 102,833 78,288 76.1 胆江地区計 117,312 66,442 56.6 両磐地区計 131,964 83,082 63.0 気仙地区計 89,042 76,449 85.9 釜石地区計 64,202 57,212 89.1 久慈地区計 107,686 89,933 83.5 二戸地区計 109,850 81,923 74.6 県 計 1,527,718 1,179,955 77.2 (出典:平成 21 年度版岩手県林業動向年報(2011)) ※ そ れ ぞれの項目で四捨五入をおこなったため、合計が合わないことがあります。 3 河川の状況 地域には、15 水系 34 の大小河川(2級河川)があり、この河川の総延長は 約 386km に及んでいます。 [水系] 同じ流域内にある本川、支川(本川に合流する川)、派川(本川から分かれる川) およびこれらに関連する湖沼を総称して「水系」といいます。 【水系および河川延長】 水系名 河川名 延長 大沢川 1.5 小国川 13.2 刈屋川 11.6 倉の沢川 3.8 鈴久名川 3.9 近内川 5.9 閉伊川 飛沢川 3.1 長沢川 8.5 夏屋川 4.0 二又川 3.8 閉伊川 75.7 薬師川 13.2 山口川 1.8 水系名 安家川 明戸川 大沢川 重茂川 小本川 織笠川 関口川 摂待川 (単位:km) 河川名 延長 水系名 河川名 延長 安家川 神田川 27.9 2.7 田代川 明戸川 田代川 3.0 12.3 川平川 2.4 荒川川 4.5 津軽石川 大沢川 5.7 津軽石川 13.1 重茂川 2.7 平井賀川 平井賀川 1.8 大川 45.6 普代川 普代川 23.4 長内川 2.9 松前川 松前川 9.7 小本川 48.7 八木沢川 八木沢川 1.9 清水川 5.7 織笠川 7.4 馬指野川 1.8 関口川 4.4 摂待川 8.5 計 385.9 ※ 普代川および安家川の延長には普代村の区域も含みます。 (出典:沿岸広域振興局土木部宮古土木センター及び岩泉土木センター) 5 宮古・下閉伊地域の主な河川及び湾 太 平 洋 閉 伊 川 ふれあい公園 6 4 海岸及び湾の状況 田野畑村から山田町までの海岸は、陸中海岸国立公園に指定されている区域 に含まれており、海岸線の総延長は 246.8km で県全体の 34.9%を占めます。平 成 20 年度時点では漁港は 32 港あり、養殖漁場は 3,917ha で県全体の 23%、定 置漁場 823ha で県全体の 26%を占めています。しかし、それら漁場の多くが東 日本大震災津波で大きな被害を受けており、早期の復旧が望まれます。 【湾(閉鎖性海域) 】 湾 名 D1 D2 閉鎖度指数 W S 宮古湾 船越湾 山田湾 4.8 3.1 3.9 24.1 9.4 32.0 76 55 90 76 55 90 1.02 0.99 1.43 (出典:財団法人国際エメックスセンター) [閉鎖度指数] 湾の閉鎖性の度合いを表す数値で、この値が高いほど海水の交換が悪く富 栄養化のおそれがあることを示します。 閉鎖度指数=(√S×D1)/(W×D2) 湾口幅 W:その海域の入口の幅(km) 面積 S:その海域の内部の面積(km2) 湾内最大水深 D1:その海域の最深部の水深(m) 湾口最大水深 D2:その海域の入口の最深部の水深(m) [富栄養化] 水の中に含まれる窒素やリンなどの栄養塩の濃度が高まり、植物プランクト ン等が異常増殖を起こす現象です。進行すると、赤潮やアオコの発生、異臭な どの水質障害や、酸素濃度の低下による魚介類の死滅、水質の悪化などを引き 起こします。 5 自然公園及び保全地域の状況 地域には、毎年多くの観光客が訪れる陸中海岸国立公園や早池峰国定公園を 始めとして多くの自然環境が残されています。 区 分 名 称 管内関係市町村 田野畑村、岩泉町、宮古 国立公園 陸中海岸国立公園 市、山田町 国定公園 早池峰国定公園 宮古市 県立自然公園 外山早坂県立自然公園 岩泉町 自然環境保全地域(国) 早池峰自然環境保全地域 宮古市 沼袋・田野畑自然環境保全地域 田野畑村 宇霊羅山自然環境保全地域 岩泉町 自然環境保全地域(県) 青松葉山自然環境保全地域 岩泉町、宮古市 櫃取湿原自然環境保全地域 岩泉町 区界高原自然環境保全地域 宮古市 環境緑地保全地域 黒森山 宮古市 (出典:岩手県環境生活部自然保護課) [自然環境保全地域] 自然環境保全法及び岩手県自然環境保全条例に基づき、優れた自然 環境保全地域として指定されたものです。 [環境緑地保全地域] 岩手県自然環境保全条例に基づき、市街地やその周辺地に所在し、 良好な生活環境を維持するために必要な緑地として指定されたもの です。 7 6 希少野生動植物の状況 「いわてレッドデータブック」に記載されている希少種 1,029 種のうち、当 地域には、イヌワシ、イワウサギシダ、チョウセンアカシジミ、クザカイタン ポポなど、多くの希少種が生息しています。 [いわてレッドデータブック] 県内に生息・生育する希少な野生生物の現状を明 らかにし、野生生物保護の基礎資料とするとともに、 県民の方にこの現状を理解していただくため、作成 したものです。 ク ザ カイタンポポ 7 廃棄物不法投棄の現状 当地域では、 平成 23 年 3 月末現在で、 大規模不法投棄が 5 件確認されており、 行為者等に対して適正に処理するよう指導しています。なお、発生頻度は減少 傾向にあります。 【不法投棄残存件数】 (単位:件) 大規模不法投棄 市町村名 産業廃棄物 一般廃棄物 3 2 0 0 5 宮古市 山田町 岩泉町 田野畑村 計 0 0 0 0 0 (沿岸広域振興局保健福祉環境部宮古保健福祉環境センター調べ) ※「大規模不法投棄」とは、1ヶ所当たり 10t 以上のものをいいます。 [産業廃棄物] 事業活動に伴って排出される廃棄物で燃え殻、汚泥など 20 種類(法律で 規定)のものをいいます。また、 「産業廃棄物」のうち、爆発性、毒性、感 染性その他人の健康又は生活環境に係る被害を生ずる恐れがあるものを「特 別管理産業廃棄物」といい、産業廃棄物とは別の処理方法等が定められてい ます。 [一般廃棄物] 産業廃棄物以外の廃棄物をいい、日常生活に伴って排出される生活系廃棄 物(ごみ、し尿)と事業活動に伴って排出される廃棄物のうち産業廃棄物以 外の廃棄物(事業系一般廃棄物)をいいます。なお、事業系一般廃棄物とさ れる廃棄物には事務所、商店等から排出される紙くず等があります。また、 「一般廃棄物」のうち、爆発性、毒性、感染性その他人の健康又は生活環境 に係る被害を生ずる恐れがあるものを「特別管理一般廃棄物」といいます。 8 8 水質の状況 県では主な河川及び海域の汚濁状況を把握するため、毎年、健康項目や生 活環境項目を調査しています。宮古・下閉伊地域では有害物質等による汚濁 は認められず、水質は概ね良好に保全されています。 有機物による汚濁に係る代表的な水質指標である BOD や COD の経年変化 の状況は次のとおりです。河川における BOD は全ての年度で環境基準を達 成しています。海域における COD は環境基準を達成できなかった年度があ りましたが、平成 19 年度以降から現在までは環境基準を達成しています。 【河川における水質の経年変化(BOD)】 (出典:平成 16 年~23 年公共用水域測定結果) [BOD(生物化学的酸素要求量)] 微生物が水中の有機物を酸化、分解 することにより消費される酸素の量 のことで、河川の汚濁状況の指標とし て用いられます。 ※ 0.5未満も 0.5として表示しています。太線は類型ごとに定められた環境基準です。 【海域における水質の経年変化(COD)】 (出典:平成 16 年~23 年公共用水域測定結果) [COD(化学的酸素要求量)] 酸化剤により水中の被酸化物質を酸化した際、消費される酸化剤中の酸素量のことで、海 域や湖沼の汚濁状況の指標として用いられます。 9 9 汚水処理施設の整備状況 地域全体の汚水処理施設の整備状況は 63.5%と県全体の 75.1% (陸前高田市、 大槌町の2市町を除いた集計値)を下回っていますが、平成 17 年ビジョン策定 時と比較すると、各市町村とも向上しています。 【汚水処理人口普及率(平成 23 年度末)】 (単位:%) 汚 水 処 下 水道 農業集 漁 業集 合併処理 コミュニティ 市町村名 理 施 設 普及率 落排水 落 排水 浄化槽等 フ ゚ ラ ン ト 整備率 整備率 整備率 整備率 整備率 宮古市 75.3 62.1 1.3 2.5 9.4 0.0 山田町 41.7 10.0 0.0 22.7 9.1 0.0 岩泉町 39.0 26.4 0.0 0.0 12.6 0.0 田野畑村 52.8 11.1 0.0 27.4 14.3 0.0 管内計 63.5 45.6 0.8 7.1 9.9 0.0 県 計 75.1 54.6 8.0 0.9 11.4 0.1 (出典:岩手県県土整備部下水環境課) ※ そ れ ぞれの項目で四捨五入をおこなったため、合計が合わないことがあります。 【汚水処理施設整備率の推移】 管内では、汚水処理施設の整備が進んでお り、供用が開始されれば、汚水処理人口普及 率の向上が期待されます。 このように、管内の汚水処理人口普及率は 向上していますが、一方で、集合処理方式の 汚水処理施設が整備されても、接続していな い世帯があります。接続率の低さは、適正な 料金収入が得られないことであり、汚水処理 経営を厳しくする要因のひとつとなること から、接続率の向上も課題となっています。 (出典:岩手県県土整備部下水環境課) 【管内における集合処理方式の汚水処理区】 下水道 宮古、田老、船越(船越地区) 、岩泉、田野畑、山田、織笠(整備中) 農業集落排水 蟇目 漁業集落排水 津軽石、千鶏・石浜、大沢、大浦、船越(田の浜地区)島越、平井賀、 ※ 船越地区公共下水道と田の浜地区漁業集落排水は、処理施設を共有します。 ※ 山田地区と織笠地区の公共下水道は、処理施設を共有します。 10 第2節 流域の課題 1 地域の将来展望 当地域の人口は、平成 24 年岩手県毎月人口推計(年報)によると 87,606 人 と、平成 17 年ビジョン策定時の 105,543 人と比較すると 17.0%減少しました。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、平成 26(2015)年に約 8.5 万人、平成 47(2035)年には約 6.0 万人まで減少し、現在と比較して約 32% も減少すると予測されています。 また、年齢の区分では年少人口の減少が続き、老年人口が増加しています。 開発行為の縮小や人口の減少により、環境に対する負荷も少なくなっていくこ とが予想されますが、一方では、経済活動や雇用の場の縮小により、若年者の 流出が加速し、産業の衰退が懸念されます。 さらに、経済情勢や地方自治体の財政状況は劇的な改善が見込まれないこと や、東日本大震災津波からの復旧・復興に多くの時間・経費が費やされると思 われることから、地方自治体が多額の経費を支出して事業を行っていくことが 困難であると考えられます。 このように、産業の担い手の減少や地方自治体の財政規模の縮小などにより、 地域の自立性が弱まることから、地域間(川上・川下)連携をより一層強めて いく必要があり、また、住民・NPO・地域づくり団体、事業者及び行政の協働 がますます重要になってきます。 2 森 川や海に豊かな恵みをもたらす森は、木材価格の低迷による森林所有者の経 営意欲の減退や作業従事者の高齢化などのため適正な管理が困難となってきて おり、水源のかん養、土砂崩れや山地災害の防止などの県土の保全、野生動植 物の保護、生態系の維持、地球温暖化の防止など森林の持つ多面的機能が著し く低下していくことが懸念されています。 昭和 40 年代以降に急速に拡大が進められた人工造林地は、現在では、質的な 充実が求められており、今後、健全な森林を維持していくためには、計画的な 間伐などの森林整備により、適切に管理していくとともに、地域材の積極的な 活用や間伐材などの未利用資源を有効利用していくための取組みを活発化させ ていかなければなりません。 林業労働力が減少する中にあって、森林整備や素材生産を行う際に必要不可 欠となる作業道は、地形等の自然環境に配慮した適切な施工がなされない場合 に、大雨などによる山地災害の一因となることが懸念されることから、丈夫で 簡易な構造とし、適切な施工により災害発生の未然防止に努める必要がありま す。 また、当地域は急峻な地形が多く、地域内民有林における山地災害危険地区 は 754 箇所(平成 23 年度末)あることから、住民の生命や財産を守るための治 山事業を計画的に行っていくことが必要です。 さらに、森林は人の目に付きにくい場所が多く、大規模な不法投棄が行われ ることもあることから、不法投棄を防止するための監視体制の充実が求められ 11 ています。 【間伐面積及び利用率】 (単位:ha、%) 年 度 H13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H19 H 20 H21 間伐実施面積 2,962 2,953 2,502 2,001 2,083 2,087 1,829 2,304 2,048 間伐材利用率 23 13 17 16 28 31 39 36 15 (出典:平成 16 年度版~平成 22 年度版岩手県林業動向年報(2004~2010)) [ナンブアカマツ] 「アカマツ」という名は、樹皮の色が赤褐色 をしていることから名づけられました。本県に 生育するアカマツは、江戸時代から幹がまっす ぐで木目が細かく、色調や光沢の良さが人気と なり「ナンブアカマツ」と呼ばれ有名になりま した。昭和 41 年 9 月、公募によって「県の木」 に指定されています。 ア カマツ林 3 川 河川は、森と海をつなぐ重要な役割を担うとともに、古来より地域の歴史や 文化、風土と密接な関わりを持ってきました。 当地域には、大小多くの河川がありますが、川には、魚類をはじめ、昆虫や 動植物などの生態系維持のほか、親水、教育、スポーツ・レジャーの場として の機能も備えています。 しかし、大雨時には土砂が流れ込み、河床が上昇するほか、流木の発生によ る河岸崩壊や流水阻害が起こり、生態系の維持も危ぶまれています。流木の処 理には、多くの時間と費用を要することから、その手順や合理的な処理方法に ついて、一部取り組まれていますが、引き続き検討する必要があります。 近年における環境意識の高まりの中で、環境に配慮した護岸工事や魚道整備 など、新たな工法が採用されており、このような手法による工事を今後とも進 めていく必要があります。また、砂防えん堤や治山ダムの設置又は管理にあた っては、生態系への影響に配慮した手法が検討され、取り組まれています。 一方、工事に使用する資材などによる周辺環境への影響を懸念する声がある ことから、これに配慮する必要もあります。 地域に残る多くの清流は、釣り客やレジャー客による賑わいを見せている一 方、モラルの低下した一部の者によるゴミの不法投棄が後を絶ちません。 このことが、水質汚染や景観阻害を招くほか、更なる不法投棄を助長する結 果にもなることから、不法投棄の防止策とあわせて処理方法の検討も不可欠と なっています。 さらに、家庭から排出される雑排水が水質の悪化を招くとの懸念もされてお り、早急な汚水処理施設の整備と未加入者の加入促進が求められています。 12 4 海 世界有数の漁場である三陸の海は、豊かな水産資源を生み出し、経済を支え る大きな基盤となっていた他、豪壮で美しい景観は人々を魅了し、毎年多くの 観光客を呼び込んでいました。 しかし、東日本大震災津波で漁業地、観光地とも大きな被害を受け、復旧に は時間がかかると予想されます。 震災前の宮古湾や山田湾ではカキ・ホタテなどの養殖が盛んで、現在は復旧 が進められているところです。震災前に懸念されていた閉鎖性水域における水 質の悪化は、津波による影響を把握し、今後も注意深く見守っていく必要があ ります。 また、養殖業が復興してカキ殻・ホタテ殻等の漁業系廃棄物の発生増加に伴 い、再資源化へ向けた適正な処理に引き続き取組んでいく必要があります。 当地域への観光客数は、自然系の観光施設が多いことから夏季を中心として 天候に大きく左右されますが、平成 22 年度までは漸減傾向にありました。浄土 ヶ浜や龍泉洞を中心に平成 22 年度は約 230 万人の観光客が訪れましたが、東 日本大震災津波により立ち入りができなくなった観光施設が多く、また被災地 のイメージも影響して観光客は激減しています。観光施設の復旧が急務となっ ています。 また、過去からの問題として、レジャー客のモラルの低下によるゴミの不法 投棄などは、海浜景観を阻害するほか、漁場や漁港への影響が懸念されること から、海を楽しむためのルールづくりを進めていく必要があります。 【年次別観光地入込推計】 ※ 平成 21 年度以前は統計の手法が異なるため、年度別の単純比較はできません。 (出典:平成 24 年度版岩手県観光統計概要(2012)) 13 5 住民等の取組み 最近の環境に対する意識の高まりから、住民自らが流域の環境を守り育てて いこうという機運が高まっています。 現在、地域では 30 を超える団体が自主的に活動しており、河川や海岸の清掃 活動などのほか、稚魚の放流、水質や生物の調査、植樹などに積極的に取り組 んでいます。 今後は、住民一人ひとりに対する意識啓発を引き続き行うとともに、自主的 な活動の拡大をさらに推進していく必要があります。 また、事業者は、地域社会の一員として経済活動を行っていますが、環境の 保全を推進するうえで大きな役割が期待されています。このため、廃棄物の適 正な処理や従業員等に対する意識啓発など、地域の環境を守るための積極的な 取組みが求められています。 6 環境学習 小・中・高等学校における環境教育及び環境学習は、関連教科、特別活動及 び総合的な学習に時間などにおいてそれぞれの教育課程に基づいて実施されて います。 流域を将来に渡って健全に維持していくためには、地域を支える子どもたち が、自分たちが住む地域のことをよく知り、何をすべきかを考える機会を増や すとともに、地域住民が一緒になって行動に移していくことが、今後ますます 重要になってきます。 [水生生物による水質調査] 川に住む指標生物の生息状況を調べ、その 結果から水質を「きれいな水(水質階級Ⅰ) 」 、 「すこしきたいない水(水質階級Ⅱ) 」、 「きた ない水(水質階級Ⅲ) 」 、 「たいへんきたない水 (水質階級Ⅳ) 」の 4 段階に判定するものです。 津 軽 石 川 水 生生物による水質調査 7 未利用資源等の再資源化 これまでは“ゴミ”としか見られなかったものが、資源として新たなものに 生まれ変わるための検討が進められています。 例えば、カキ殻は農業分野への利用が検討されていますし、間伐材や流倒木 は木材加工品の原料としての道が模索されています。 廃棄物を抑制する、資源循環型社会の構築とあわせて、未利用資源や低利用 資源の活用を推進していく必要があります。 14 8 放射性物質の問題 東日本大震災津波に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により、県内に もセシウム 137 などの放射性物質が飛散し、宮古・下閉伊地域でも、一部地域 において原木生しいたけが国による出荷制限指示を受けたことや、基準を超え た牧草、堆肥、しいたけホダ木が利用できなくなる影響を受けました。 県及び関係団体は、生活圏試料、農林水産物等及び産業活動に伴って生じる 試料の放射線量を測定し、測定値を公表することにより住民の不安を解消し、 風評被害を防止するよう取り組んでいます。また、牧草地再生対策事業により 牧草地の除染作業を計画的に実施しています。 宮古市内で放射線レベル(空間線量率)を常時測定 し て い るモニタリングポスト 岩 手県環 境保健 研究セン ターに あるゲ ルマニ ウム 半導体検出器(食品や水等に含まれる放射性物質の 検 出 装 置) 15 第3章 計画の目標 現状と課題を踏まえ、概ね 20 年後(2030 年)における流域のあるべき姿を考え、 本計画の目標を次のとおりとします。 森・川・海と人との共生による水と緑の保全・創造 ■計画の体系■ 目標 森 ・ 川 ・ 海 と 人 と の 共 生 に よ る 水 と 緑 の 保 全 ・ 創 造 目指すべき流域像 基本方向 川上と川下の連携による共生 重点プロジェクト 森の再生 住民、事業者、行政の協働 ○川上・川下の連携交 流 川と海の環境整備 森の適正な整備・保全・利用 ○住民、事業者、行政 豊かな清流ときれいな海 の協働 水質保全 不法投棄防止 自然景観の保全と交流 ○森の恵みの再評価と 安全安心な暮らしと自然との 安 全 安 心な流域づくり 保全 ふれあい ○人と流域の自然との 環境に配慮した暮らし、産業 共生 環境を大切にする子どもたち 16 資源循環型産業育成 環境学習の推進 第4章 目指すべき流域像 計画の目標を具現化するため、目指すべき流域像を次のとおりとします。 1 川上と川下が連携・協力し、自然と共生する流域 2 住民と事業者、行政の協働により、環境が保たれる流域 3 森が適正に整備・保全・利用され、川や海に豊かな恵みをもたらす流域 4 水量豊かな清流ときれいな海が持続的に存在する流域 5 美しい自然景観が保全され、人々の交流が盛んに行われる流域 6 安全・安心な暮らしの中で、森・川・海に親しみ、自然とのふれあいを通じて 四季が感じられる流域 7 環境に配慮した暮らしや産業が永続的に営まれる流域 8 子どもたちが地域の環境に興味を持ち、自然を大切にする流域 荒 神 海 水浴場 17 目指すべき流域像の実現に向けた基本的な取組みと、その推進に当たっての体制を 第5章 取組みの基本的方向 次のとおりとします。 第 1 節 計画の推進・協働体制 1 協議会の役割 本計画の推進や施策の評価、流域が抱える課題の解決に当たっては、宮古・下 閉伊地域「森・川・海」保全・創造協議会が関係機関と連携を図りながら行うこ ととします。 2 協働体制の構築 本計画を推進するに当たって必要となる住民、事業者及び行政機関の協働体制 については、宮古・下閉伊地域「森・川・海」保全・創造協議会が中心となって 構築することとします。 住 民 NPO 地域づくり団体 宮古・下閉伊地域「森・川・ 海」保全・創造協議会 ●計画の推進● ●協働体制の構築● ●施策の評価● 行 政 事 18 業 者 第2節 基本方向 1 川上・川下の交流・連携 森・川・海の恩恵は、それぞれの存在する地域が単独で受けるものではありま せん。これからは、流域と水循環の視点に立って、川下が川上を思い、川上が川 下を思い、互いに理解し合いながら交流と連携を深めていく必要があります。 2 住民・NPO・地域づくり団体、事業者、行政の協働 地域住民・NPO・地域づくり団体と事業者、行政が、それぞれの立場で役割を 自覚しながら連携を図り、一体となって、対等の立場で流域の環境保全や地域づ くりに取り組んでいく必要があります。 また、様々な外部の団体が宮古・下閉伊地域で震災復興のボランティア活動や 交流活動を積極的に行っています。人や組織の新しいつながりを広げていくこと も、地域づくりの一環として推進する必要があります。 そのためには、有識者や専門機関の指導・助言も得ていく必要があります。 3 森の恵みの再評価と保全 森林は、木材等の生産のほか、水源のかん養、土砂崩れや山地災害防止などの 県土保全、野生動植物の保護、生態系の維持、自然景観や休養の場の提供など、 人々の暮らしと密接に関わり、大きな役割を果たしています。河川や海岸を健全 に維持していくためには、森林の健全化が不可欠であることから、森林の持つ多 面的機能を再評価し、森林を守り、その環境を適切に保っていく必要があります。 4 人と流域の自然との共生 流域に住む人々の生活や地域の経済を考えるうえで、産業活動などさまざまな 営みは欠かせないものです。 しかし、自然環境は一度損なわれるとその復元のために相当の時間と費用、労 力を要し、それでも完全な状態に復元できないこともあります。 また、有害物質の蓄積や野生動植物の減少という課題も含んでいます。 その一方で、ツキノワグマやニホンジカによる農林業被害の拡大、ハクビシン 等の従来は生息していなかった外来生物の出没等、過去と比べて野生動物との共 存に支障となる課題が生じています。 そのため、森・川・海という自然環境に対する負荷を最小限に留めるための産 業活動や生活様式について考えるとともに、科学的知見も取り入れるなど、良好 な状態を維持していくための取組みが必要です。 管内市町村のキャッチフレーズ 宮古市 山田町 岩泉町 田野畑村 「森・川・海」とひとが共生するやすらぎのまち 響きます人・海・森のハーモニー 森と水のシンフォニー岩泉 人と自然が輝き 心ふれあう創造の村・たのはた 19 第3節 重点プロジェクト 1 森の再生プロジェクト ~森の恵みを再評価し、森の再生を図る~ 森の健全化が川や海の健全化につながることを再認識し、川上の住民と川下の 住民との連携による森林の適正な保全や林業の活性化、木材の高付加価値化など により森の再生を図ります。 【主な取組み】 取 組 み 内 森林の間伐 容 実施主体 森林の適切な整備・保全のための計画的な間伐 林道・作業道の適正な施工・管理 災害の防止や自然環境に配慮した道づくり 植樹・育樹(祭)への参加 行政で行う森づくり事業への積極的な参加 森林ボランティアへの参加 民間で行う森づくり活動への積極的な参加 緑化活動への参加 緑の募金、自然観察会、森林教室など 行政、事業者 行政、事業者 住民、行政 住民、事業者 住民、行政 森林認証の取得 森林の適切な管理による林業のブランド化、森林認証 事業者、行政 制度の周知、普及 [木の日・木材利用推進月間] 漢字の「十」と「八」を組み合わせ ると「木」になることから、10 月 8 日 は「木の日」とすることが昭和 52 年に 定められました。また、10 月は木材利 用推進月間と定められています。 木 材 利 用普及啓発月間(10 月) 間伐材を利用したゴミ箱 20 2 川と海の環境整備プロジェクト ~河川、海岸の流倒木を処理し、良好な水辺環境を整備する~ 住民、事業者及び行政が互いに連携して流倒木の処理体制を構築するとともに、 川上の住民と川下の住民との連携による清掃活動や環境に配慮した多自然型川づ くりなど、川と海の環境整備を行います。 【主な取組み】 取 組 み 内 容 環境や動植物に配慮した多自然型の川づくり 親水護岸、魚道の整備など 河川清掃への参加 実施主体 行政 住民、事業者、行政 住民や事業者が参加 海岸清掃への参加 住民、事業者、行政 住民や事業者が参加 流倒木の撤去(山・川・海の再生緊急特別対策) 河川等の流倒木の撤去、撤去した流倒木の再資源化 河川、漁港の流倒木等の撤去に森林所有者や漁業 従事者等が参加するシステムの検討 持続的なネットワーク化・組織化、参加しやすい環境 づくり 河川利用者からの河川管理料の徴収検討 流倒木の処理経費等の負担検討 行政 行政、事業者、住民 行政、事業者 小 谷 鳥 海岸 海岸清掃 [海岸漂着物処理推進法] 日本各地の海岸で、漂着したごみの堆積が問題となっています。ボランティア活動による継続的 なゴミ清掃が行われていますが、回収が追いつかないのが現状です。 平成21年7月には、海岸における良好な景観及び環境を保全するため、海岸漂着物の円滑な処理 及び発生の抑制を図ることを目的として、美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な 景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(海岸漂着物処理推進法)が 施行されました。 21 3 水質保全プロジェクト ~住民、事業者、行政が連携して、河川や海岸の水質を保全する~ 地域に存在する河川や海岸の優れた水質の保全するため、水質調査や環境整備 を推進するとともに、水質保全に対する意識の高揚を図ります。 【主な取組み】 取 組 み 内 容 汚水処理施設の整備及び加入促進 実施主体 下水道、農業集落排水、漁業集落排水、浄化槽 身近な川や海の水質調査 自治会活動、グループ活動等による水質の調査 行政、住民 住民 水生生物等調査 自治会活動、グループ活動等による水生生物等の生息 住民 状況調査 水質保全意識の向上 家庭排水や事業所排水が河川等の水質に与える影響 住民、行政 についての意識啓発 水質測定 行政 主な河川及び海域における水質測定 公 共 用 水域(海域)水質調査 [公共用水域常時監視] 県では、水質汚濁防止法の規定に基づき、公共用水域(海域や河川、湖沼)及び地下水の代表的 な地点における水質を測定し、その結果を毎年度公表しています。また、県が測定していない地点 において、市町村独自の水質測定が実施されています。 なお、水質汚濁防止法では、国民の責務として、 「何人も、公共用水域の水質の保全を図るため、 調理くず、廃食用油の処理、洗剤の使用等を適正に行うよう心がけるとともに、国又は地方公共団 体による生活排水対策の実施に協力しなければならない。 」と規定されています。 22 4 不法投棄防止プロジェクト ~不法投棄を防止し、流域の環境汚染防止と美しい景観の保全を図る~ 地域ぐるみでの不法投棄防止のための監視・通報体制の構築と意識啓発、不法 投棄された廃棄物の撤去方策を検討するとともに、緊急に撤去が必要な箇所につ いては、速やかに撤去を行うことができるシステムの構築を図ります。 【主な取組み】 取 組 み 内 廃棄物の適正処理対策 容 監視員の配置、パトロールの実施、意識啓発など 不法投棄された廃棄物の撤去・処理システムの構築 処理体制や負担のあり方の検討 実施主体 行政 行政 野 鳥 の 保護と不法投棄の防止を呼びかけるポスター [産業廃棄物適正処理指導員(産廃 G メン)] 県では、廃棄物の適正処理に係る監視指導を強化するため、平成 11 年度から産業廃棄物適正処 理指導員(産廃 G メン)を配置しています。また、市町村では、監視員を配置したり、住民等に よるパトロールを行ったりしています。 [エコショップいわて認定制度] ごみの減量化やリサイクルに積極的に取り組むお店を岩手県、市町村と指定 NPO 法人との協働 で認定しています。この制度では、認定店に認定証と認定プレートを贈り、環境に配慮しているお 店としての姿勢を広くアピールしていただくことができます。県などにおいても、認定店の情報を 広く PR し利用を推奨します。 [岩手県再生資源利用認定製品認定制度] 限りある資源の有効利用を促進し、循環型地域社会の形成を図るため、一定の基準を満たすリサ イクル製品を県が認定し、利用拡大を図ることを目的とした制度です。県では認定製品を優先的に 購入または使用するよう努めています。 23 5 安全安心な流域づくりプロジェクト ~災害に強い安全な流域をつくる~ 行政では、流域住民の安全安心な暮らしを確保するため、山地災害、河川の氾 濫、土砂災害などを未然に防止するための環境整備を行ってきました。 東日本大震災津波では各地の防潮堤が損壊し、海岸・港湾関連施設が多数被害 を受けました。これからは、住民等生活者の視点に立ち、地域が求めている環境 整備・地域復興を行うため、計画から管理に至る各段階において、住民・NPO・ 地域づくり団体と行政との協働が求められています。また、道路、水路や公園等 の公共施設の草刈や清掃作業を住民・NPO・地域づくり団体が行うボランティア 制度の導入を推進し、協働により地域課題に取り組むことが重要となります。 【主な取組み】 取 組 み 内 容 実施主体 治山 山地災害危険地区の解消に向けた計画的な治山施設 行政 の整備 砂防 土石流等の発生による災害を防止するための砂防ダ 行政 ムの建設等 河川の改修・整備 治水安全度を向上させ浸水被害をなくすための河川 行政 の改修、整備 海岸施設等の改修・整備 津波災害を防止するための防潮堤の整備 沈下した土地の嵩上げ等 道・川と海ボランティア活動 行政 住民、行政 公共施設の清掃等を住民等が行う 24 6 循環型産業育成プロジェクト ~カキ殻、流倒木、間伐材など低利用資源、未利用資源の再資源化を推進する~ 流域の観点から、未利用資源等の再資源化を推進するとともに、循環型産業や ゼロエミッション型産業の育成と支援、環境に対する負荷の少ない産業活動を推 進します。 また、県では、環境への負荷を低減した農業の推進と、本県農産物に対する安 全・安心への信頼性を高める取組みを総合的かつ積極的に推進するため、平成 20 年 1 月に岩手県環境と共生する産地づくり基本計画を策定し、エコファーマーの 育成等、環境に配慮した持続的農業を推進しています。 【主な取組み】 取 組 み 内 未利用資源の活用研究 容 カキ殻等の漁業系廃棄物、間伐材の利活用など 実施主体 事業者、行政 家畜排せつ物の適正処理 法や計画に基づく処理施設の整備、資源としての有効 事業者、行政 活用など ゼロエミッションの普及 廃棄物をできるだけゼロに近づける「ゼロエミッショ 事業者、行政、住民 ン」の考え方の普及 安全・安心の産地づくり 環境・安全に配慮した農業生産方式の推進 住民、事業者、行政 木材の多段階的利用方法の検討 製品価値の高い順に可能な限り繰り返し利用 木材・木質バイオマスの利用促進 事業者、行政 いわて農林水産業のシンボルマーク・キャッチフレーズ ●いわての農林水産業のシンボルマーク 農業、林業、水産業それぞれを大地、森林、さかなのモチーフとして組み合わせ、全体で漢字の 「岩」の字にまとめ農林水産の一体感をイメージしています。 ●いわての農林水産業のキャッチフレーズ 「てのひら」は、生産者の手のひらでもあり、消費者の手のひらでもあります。生産者一人一人 が一生懸命安全・安心な農林水産物を育て、消費者はこうした農林水産物を手にした幸せ、喜びを イメージしています。 25 7 環境学習推進プロジェクト ~多様な生物との共生や自然とのふれあいなど自然環境を大切にする心を育む~ 小中学生や NPO、地域づくり団体等と連携し、地域特有の自然環境に配慮しな がら清浄な流域をつくるとともに、環境に関する学習や自然にふれあう機会を拡 大し、子どもたちが流域(森・川・海)を大切にする心をはぐくみます。 【主な取組み】 取 組 み 内 小中学校等における環境学習 容 実施主体 各教科や総合的な学習の時間等において、環境教育の 充実を図る。 行政、住民 屋外での様々な体験を通じて、災害時の対応を学ぶな ど防災教育としての役割も持たせる。 ビオトープの整備 住民、事業者、行政 生物の生息空間の保全、復元など 自然体験型イベントの開催 四季折々の自然に親しむイベントの開催 稚魚の放流 住民、行政 住民、事業者、行政 多様な生物が生息する環境の保全 内 陸 部 に住む子どもを対象としたシーカヤック体験教室 [地球温暖化を防ごう隊] 小学生を対象として、家庭でできる身 近な省エネルギー活動を通して、地球温 暖化防止に対する意識を高めることを 目的とした活動です。 参加する小学生を「地球温暖化を防ご う隊員」に任命し、各家庭において温暖 化対策を任務として遂行してもらいな がら、普段の生活の見直しや環境の取組 などに気づき、実践して、家庭での省エ ネルギー活動に対する知識と理解を深 めるものです。 地 球 温 暖化を防ごう隊表彰式 旧島越小学校 26 第4節 主な指標 森、川、海が健全に再生・保全されていることを判断するために、計画期間内に 次の指標を設定します。この指標は毎年最新の数値を公表することとします。 【主な指標】 区分 項 目 森林面積(ha) 現状(H24) 目標(H29) (H21) 245,550 1 目 標 値 の 説 明 245,542 現状を維持する 岩手県森林吸収量確保推進 計画 震災前の水準(平成 22 年度 19 19 回)への回復を目指す 震災前の水準(平成 22 年度 33 33 回)への回復を目指す 森林間伐面積(ha) (H21)2,048 (H24)2,500 2 3 4 5 6 7 河川清掃ボランテ ィア回数(回) 海岸清掃ボランテ ィア回数(回) BOD 環境基準達成 率(%) COD 環境基準達成 率(%) 汚水処理施設整備 率(%) 海水浴場の水質(水 浴適当割合) (%) 12 28 (H23) 100.0 100.0 現状を維持する (H23) 100.0 100.0 現状を維持する (H23) 63.5 100.0 新たな不法投棄(10t 以上)の件数(件) いわて道のボラン ティア活動等支援 事業及びいわて川 と海岸ボランティ ア活動等支援制度 参加団体数 カキ殻再資源化率 (%) エコファーマー認 定者数(人) 小中学校の環境学 習実施率(%) 環境ボランティア 団体数(団体) 1 8 77.1 い わて汚 水処理 ビジ ョン 2010 100.0 現状を維持する 0 不法投棄の発生を抑える いわて道のボランティア活 動等支援事業及びいわて川 10 と海岸ボランティア活動等 支援制度参加団体を増やす (H20)69.2 70.0 現状を維持する 157 157 現状を維持する 100 100 現状を維持する 38 38 現状を維持する 区分 1 森の再生プロジェクト 2 川と海の環境整備プロジェクト 3 水質保全プロジェクト 4 不法投棄防止プロジェクト 5 安全安心な流域プロジェクト 6 循環型産業育成プロジェクト 7 環境学習推進プロジェクト 27