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セルロースナノファイバーを用いた花粉・アレルゲン除去剤の開発(PDF

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セルロースナノファイバーを用いた花粉・アレルゲン除去剤の開発(PDF
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あいち産業科学技術総合センター 研究報告 2012
研 究 ノート
セルロースナノファイバーを用いた花粉・アレルゲン
除去剤の開発
森川
豊*1、伊藤雅子*1
Development of the Pollen Allergen Removal Agent Using Cellulose Nanofiber
Yutaka MORIKAWA *1 and Masako ITO *1
Industrial Research Center* 1
花粉アレルギーの原因物質を吸着除去する目的で、吸着材に用いるセルロースをファイバー化した後、
表 面 処 理 し た 。セ ル ロ ー ス に 3-ア ミ ノ プ ロ ピ ル ト リ エ ト キ シ シ ラ ン で 表 面 処 理 を 行 っ た と こ ろ 、ゼ ー タ 電
位 が 25.2m V と い う 正 の 値 に な っ た 。 表 面 処 理 に よ り セ ル ロ ー ス の Pectinase 吸 着 量 が 増 加 し 1mg あ た
り 0.58mg の 吸 着 量 と な っ た 。 さ ら に 、 セ ル ロ ー ス フ ァ イ バ ー を 用 い て 空 気 清 浄 機 の フ ィ ル タ を 試 作 し 、
花 粉 除 去 性 能 を 調 べ た と こ ろ 、 表 面 処 理 に よ り 除 去 率 が 56% か ら 80% に 増 加 し た 。
1.はじめに
より吸着材原材料のファイバー化を行った 1)。なお粉砕
花粉症は、現代日本人の多くが発症し、対処を望まれ
時には、各原材料をイオン交換水で 1wt%混合液として
ているアレルギー反応である。ここ数年、マスク、フィ
用いた。処理条件は圧力 180MPa、150℃として 5 回処
ルタなどの開発が盛んに行われている。一般に、アレル
理を行った。処理後の吸着材用ファイバーの形状は電子
ゲンの多くは荷電しており、花粉もその表面に荷電物質
顕微鏡:SEM(日立製作所社製 S-3000)及び原子間力
である 2 種類のペクチン分解酵素をアレルゲンとして有
顕微鏡:AFM(パークシステムズ社製 XE-100-ASN)を
している。
用いて観察し、寸法測定した。
本研究では、セルロースなどのファイバーに表面処理
2.3 表面処理及び表面電位測定
を施し、荷電割合を制御した材料を開発する。さらに、
吸着材用ファイバーの表面処理は、既報に準じて自己
花粉・アレルゲン吸着除去性能を評価し、除去フィルタ
組織化単分子膜(SAM)処理を行った 2)。処理に際して、
への適用を検討する。
吸着材用ファイバーは凍結乾燥して水分を除去した。処
理は、密閉容器中に 10gの吸着材用原材料と 0.5mL の
2.実験方法
3- ア ミ ノ プ ロ ピ ル ト リ エ ト キ シ シ ラ ン を 投 入 し て 、
120℃で 1 時間反応して行った。処理後の官能基変化は
2.1 原材料及び試料
吸着材の原材料には、結晶性のセルロースであるセオ
赤外分光光度計:FT-IR(IRAffinity-1 島津製作所製)
ラス® (旭化成ケミカル社製)とキチン(和光純薬工業
を用いて調べた。処理前後の吸着剤、花粉、及び酵素の
社製)及びキトサン(和光純薬工業社製)を使用した。
表面電位は(株)堀場製作所製 nano Partica SZ-100 を用
吸着剤の表面処理用試薬には、3-アミノプロピルトリエ
いて測定した。
トキシシラン(ナカライタスク社製)を用いた。花粉に
2.4 酵素の吸着試験
は、日本スギ花粉(生化学バイオビジネス社製)及び日
酵素の吸着試験は、20mg/mL の酵素溶液 250μL に吸
本ヒノキ花粉(和光純薬工業社製)を用いた。また、花
着材1mg を投入し 1 分間攪拌後の溶液のタンパク質濃
粉代替物質として、Pectinase from Aspergillus niger
度変化を測定して評価した。なお、タンパク質濃度の測
(SIGMA-ALDRICH 製)及び Macerozyme R-10 from
定には Lowry 法を用いた。
Rhizopus sp. (和光純薬工業社製)の 2 種の酵素を使用
2.5 フィルタの試作及び集塵、花粉吸着試験
した。
ポリピレンの不織布を用いて、空気清浄機用プリーツ
2.2 吸着材原材料のファイバー化及び形状測定
吉田機械興業社製の湿式粉砕機を用いた既報の方法に
*
1 産業技術センター
環境材料室
型フィルタ(160×300×20mm)を試作した。試作フィル
タにセルロースファイバーを付着させ花粉吸着用フィル
35
タとした。試作フィルタによる、スギ花粉の除去性能評
表2
ゼータ電位(mV)
1h処理 2h処理 3h処理 4h処理
セルロース -61.0
-50.8
4.6
25.2
キトサン
0.0
0.5
5.6
13.6
価は、(財)ボーケン品質評価機構のマスク素材の花粉通
過性試験に準じて行い、試作フィルタを通過して直径
33mm の黒色濾紙に付着した花粉重量を測定した。
3.実験結果及び考察
3.1 原材料のファイバー化
セルロースとキトサンのゼータ電位
用いて、Pectinase の吸着試験を行った。処理によりセ
ルロースは 1mg あたり 0.36mg から 0.58mg と吸着量が増
吸着材用の原材料を吉田機械興業(株)製の湿式粉砕機
加し、キチンも同様に 0.88mg から 1.12mg へと大きく増
でナノファイバー化した。SEM 画像よりセルロースは
加した。この結果より、フィルタの試作には、ゼータ電
1)
、キトサンはファイバー
位が最も大きいセルロースの 4 時間処理品を用いること
と薄い膜が共存する様な形状であることを確認した(図
とした。なお、キトサン、セルロースの表面積など、ゼ
1)。
ータ電位以外の吸着量に影響する要因を検討する必要性
ファイバー形状であることを
b
a
が考えられた。
3.3 フィルタの試作及び集塵、花粉吸着試験
試作フィルタを用いて、(財)ボーケン品質評価機構の
マスク素材の花粉通過性試験を行った。使用した 50mg
のスギ花粉のうち、対照の試作品(セルロース無し)は
30mg が通過し、未処理のセルロースをつけた試験区は
図1
キトサンの SEM 像
a: キトサン 未処理、b:キトサン処理
22mg が通過した。今回、表面電位を変えたセルロース
をつけた試験区は 10mg の通過となり、80%の除去率と
なった。
また、AFM による形状測定は、処理後のセルロース
は太さ 10~20nm、処理後のキトサンは約 4.5nm であっ
4. 結び
本研究では表面処理を行い、表面電位を段階的に変化
た。なお、キチンは吸水膨潤により粒子径が大きくなり、
装置が目詰まりして処理ができなかった。
させる技術を検証した。表面処理によりゼータ電位の正
3.2 表面電位測定結果
の値を増加させる事により、逆の電位を持つ物質の吸着
表1に花粉と酵素のゼータ電位測定結果を示した。花
量は増加する。本研究では、セルロースの付着量を増や
粉のゼータ電位は-24.5mV、-52.2mV と大きな負の値を
すこと、もしくは、SAM 処理時間を長くして表面電位
示した。
の正の値をより大きくすることにより、さらに花粉除去
花粉と酵素のゼータ電位測定結
スギ
ヒノキ Pectin- Macero花粉
花粉
ase
zyme
ゼータ電位(mV) -52.2
-24.5
-6.6
-1.6
率向上が可能となることが想定された。
また、酵素も負の値を示したが、花粉に比べ小さい値
度研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム
であった。以後の試験には、表面電位の大きいスギ花粉、
(A-STEP)フィージビリティスタディ【FS】ステージ
酵素には Pectinase を用いることとした。
探索タイプの研究開発にて実施した内容の一部である。
表1
付記
本研究は、独立行政法人科学技術振興機構 平成 23 年
セルロース及びキトサンを 3-アミノプロピルトリエ
トキシシランで表面処理を行った。処理後のセルロース
謝辞
の FT-IR には、2900cm-1 から 3000cm- 1 に 3-アミノプ
ご助言・ご協力をいただいた吉田機械興業(株)、三喜
ロピルトリエトキシシラン由来の CH3-及び-CH2 の官能
ゴム(株)に感謝いたします。
基付与が原因と考えられる強い吸収が確認された。処理
文献
1時間から 4 時間後のゼータ電位測定結果を表2に示し
た。
1)
になり 4 時間後にはセルロース 25.2mV、キトサン 13.6
mV となった。さらに、未処理及び 4 時間処理の試料を
森川 豊,伊藤雅子,楳田慎一:化学工学論文集,36(4),
259(2010)
処理時間の増加に伴い、両試料のゼータ電位は正の値
2)
森川 豊,伊藤雅子,阿部祥忠:愛知県産業技術研究
所研究報告,10,18(2011)
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あいち産業科学技術総合センター 研究報告 2012
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