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非開削工法による線路下横断構造物施工時の軌道横移動

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非開削工法による線路下横断構造物施工時の軌道横移動
4-067
土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)
非開削工法による線路下横断構造物施工時の軌道横移動防止工
東日本旅客鉄道株式会社 東北工事事務所
東日本旅客鉄道株式会社 東北工事事務所
正会員 ○井上 崇
正会員
佐藤 豊
1.はじめに
平面図
断面図
線路下横断構造物を構築する場合、
列車の走行安全性を確保するためには、
路盤陥没対策とともに軌道の横移動を
防止することが重要である。従来の軌
道横移動防止工としては、圧縮材を用
線軌道中心
いたバリ構造が一般的である。この構
造では、まくら木の重心を正確に押え
る必要があり、それがずれると上下、
左右にまくら木とバリの結合部等で折
れ角が発生し、これにより変位が出る
C c部詳細
部 詳 細
a a部詳細
部 詳 細
場合がある。一方、引張材を用いた構
造では、引張材を水平に設置するだけ
b
部 詳 細
b部詳細
で変位を抑えることができる。バリ構
硬質塩化ビニル管
φ=50mm
造に比べ確実に軌道の横移動防止がで
不等辺山形鋼
75
125×75×10
きる引張材を用いた構造を提案する。
2.概要
4.5
40
本構造は、発進、到達立坑の仮土留
2×16=32
ネジきり鉄筋
D16
10
壁を反力体とし、ネジきり鉄筋をまく
ら木の間に通し、まくら木脇に設置し
た腹起し材にダブルナットで固定する
図−1 構造一般図
ものである(図−1)
。
本軌道横移動防止工の効果を確認するため、
JES エレメント推進中の軌道変位(通り、高低)
の計測および引張鋼材の応力測定等を実施した。
S-4
S-1
図−2に計測工の平面図を示す。
K-2
K-3
S-5
K-1
S-2
3.計測結果および考察
本報告では、
データの一部を抜粋して報告する。
S-6
S-3
(1)軌道変位
図−3にエレメント通過直上の軌道変位
(通り)
を示す。K-2 は防止工設置箇所の測点、K-5 は防
止工を設置していない箇所の測点である。
K-2 の通りは、1.0m 推進時に発進側へ 4mm、
その後到達側へ最大 2mm 変位し最終的には
0mm に戻った。
防止工設置の有無による軌道変位(通り)の比
較をすると、軌道整備の回数は、防止工設置箇所
図−2 計測工平面図
で 1 回(エレメント推進完了時)
、防止工を設置し
ていない箇所は5日間毎夜作業終了時に実施した。グラフの K-5 の数値は軌道整備をしない場合の値を示している。防
止工を設置した場合、軌道の到達側への通り変位の最大は 2mm であった。防止工を設置しない場合、軌道は到達側へ
変位し続け、通り変位は約 6mm であった。つまり、本防止工設置による軌道の横移動防止効果を確認した。
(2)鉄筋計
S-1、S-2、S-3、S-4、S-5、S-6 の鉄筋の応力および推進力の関係を図−4に示す。
推進力は、推進延長 4.0m(総延長 6.0m)で最大値 490KN であった。推進延長 4.0m は、まくら木端部であり列車
荷重履歴を受けているため推進抵抗が高いと考えられる。また、設計上の所要推力内(950KN)であることを確認して
いる。
S-1、S-2、S-3 について、推進延長が 2.0m 程度までは圧縮傾向を示す。その後は、推進力の増加に伴い、基本的に
キーワード:バリ構造,ネジきり鉄筋,軌道変位
連絡先:〒980-8580 宮城県仙台市青葉区五橋一丁目 1 番 1 号 TEL022-266-9661 FAX022-262-1487
6
▽202.033
R.L=202.158
F.L=201.643
932
985
390
50
340
75
130
硬質塩化ビニル管
φ=50mm
ネジきり鉄筋
D16
2100
溝形鋼
200×80×7.5×11
c部
b部
270
3000
a部
10
12
1067
不等辺山形鋼
125×75×10
130×130×12
ネジきり鉄筋
D16
等辺山形鋼
100×100×10
ネジきり鉄筋
D16
2100
932
985
木マクラギ
硬質塩化ビニル管
φ=50mm
3000
12
10
75
130
鋼矢板III型
125
125
不等辺山形鋼
125×75×10
130×130×12
250
80 125 125
ネジきり鉄筋
D16
鋼矢板III型
6
6
55mm以上
100
120
11
4.5
7.5
125
鋼矢板III型
676
200
等辺山形鋼
100×100×10
80
6
硬質塩化ビニル管
φ=50mm
476
40
32
11
390
31.2
座金D=32
125
130
ネジきり鉄筋
D16
▽201.643
200
-133-
270
平座金
t=4.5 D=32
130×130×12
140
70 70
10
12
130
75
118
65
12
10
40
2×16=32
4.5
130
12
溝形鋼
200×80×7.5×11
▽202.033
高力六角ナット
(M16用)
31.2
座金D=32
178
40mm以上
100 20
溝形鋼
200×80×7.5×11
125
4-067
土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)
軌道変位(mm)
2夜目
1夜目
8
4夜目
3夜目
5夜目
6
4
2
K-2 通り
K-5 通り
0
-2
-4
-6
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
推進延長(m)
図−3 軌道変位(通り)
エレメント近傍の鉄筋応力
鉄筋の応力(KN)
2夜目
1夜目
4.0
3夜目
S-1
3.5
推進力(KN)
4夜目
S-2
5夜目
600
S-3
500
3.0
引張傾向↑ ↓圧縮傾向
400
S−1
2.5
S−2
2.0
300
S−3
推進力
(KN)
1.5
200
1.0
100
0.5
0.0
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
推進延長(m)
エレメントから離れた位置の鉄筋応力
鉄筋の応力(KN)
1夜目
2夜目
4.0
3夜目
S-4
3.5
推進力(KN)
4夜目
S-5
5夜目
600
S-6
500
3.0
引張傾向↑ ↓圧縮傾向
鉄筋応力も増加傾向にある。通りが発進側へ
4mm 変位しそれ以降は推進力の増加に伴い推
進方向へ変位している。これらは、推進延長
2.0m までは、掘削に伴い地山が緩み軌道が発
進側へ動こうとし鉄筋応力は圧縮傾向を、それ
以降は軌道が到達側へ変位し鉄筋応力は引張傾
向を示したと考えられる。緩みの傾向は、エレ
メント近傍に設置した S-1 ゲージを取付けた鉄
筋が離れている S-4 ゲージよりも顕著である。
刃口が鉄筋計設置位置直下に迫った時に鉄筋
応力は上がっているものが多い。刃口が鉄筋計
直下を通過した後は、鉄筋応力は減少傾向にあ
る。すなわち、鉄筋の引張力の負担が小さくな
る。刃口の鏡への推進力がエレメントの周面摩
擦力よりも多分に影響しており、エレメントの
周面摩擦力は道床表面にはあまり伝わっていな
いことを示唆している。
推進力の伝達比率(推進力の増分に対する鉄
筋応力の増分比)について、推進延長 L=3.0m
から 3.5m において、軌道中心に位置する鉄筋
計であるS-2 とS-5 から、
推進力の増分
(60KN)
に対し引張鉄筋に作用した応力の増分は
4.8KN であり、伝達比率は約 8%程度であるこ
とが分かった。
図−5に鉄筋応力と軌道変位の関係を示す。
推進延長が 3.0m から 3.5m において、軌道の
通りは到達側へ 1mm 変位している。また、仮
土留は 0.1mm 到達側へ変位したため、推進方
向への相対変位は 0.9mm である。一方、S-1
および S-2 から引張鋼材の伸び量を合算すると
0.12mm(S-1:0.08mm、S-2:0.04mm)であ
る。また、まくら木脇の腹起し材について、引
張鋼材の作用力をまくら木中心からの荷重分布
に換算し l=2.0m(引張鋼材配置間隔)の単純梁
として算出したたわみ量は 0.36mm となり、引
張鋼材の伸び量と腹起し材の変形量の和は
0.48mm となる。軌道の相対変位(通り)0.9mm
に対し引張鋼材の伸び量と腹起し材の変形量は
半分程度である。これは、腹起し材とまくら木
の間に設置した調整木材に変位が発生したため
であると想定される。
4.おわりに
土かぶりが 65cm 程度の条件下での試験施工
のみではあるが、計測データを整理した結果、
本構造は、非開削工法による線路下横断構造物
施工時の軌道横移動防止対策としての効果が十
分にあることを確認した。
今後、非開削工法により線路下横断構造物を
構築する場合の軌道横移動防止工の一つとして、
本構造が有効活用できるようにまとめていきたい。
400
2.5
S−4
S−5
2.0
300
S−6
推進力
(KN)
1.5
200
1.0
100
0.5
0.0
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
推進延長(m)
図−4 鉄筋計
鉄筋の応力(KN)
軌道変位(mm)
2夜目
1夜目
4.00
S-1
3.50
4夜目
3夜目
5夜目
3
S−1
S-2
2
S−2
3.00
1
2.50
0
2.00
-1
1.50
-2
1.00
-3
0.50
-4
0.00
-5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
推進延長(m)
図−5 推進延長と鉄筋応力,軌道変位
【参考文献】1)井上崇,佐藤豊:非開削工法による線路下横断構造物の構築時における軌道横移動防止工の開発,
平成 15 年度土木学会東北支部技術研究発表会講演概要/Ⅵ−4,2004.3,PP676−677
-134-
K-2 通り
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