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鳥害痕跡図鑑(pdfファイル 2545kb)
鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 鳥害痕跡図鑑 2009 年 4 月 10 日版 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム(編) この図鑑は、現場で鳥獣被害対策を指導する方の参考となること を目的とし、鳥による農作物食害状況の写真を集め、加害種判定 のポイントを解説したものです。 利用にあたっては、このままの形で配布・掲示等を行うものとし、 編集・加工しないこと。一部または全部を他の資料等へ転載する ことを希望する場合は鳥獣害研究サブチームに連絡すること。公 刊資料ではないため、引用はできません。 1 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 温州ミカン 加害種:ヒヨドリ? 判定理由:果皮についているV 字型の切り裂きが比較的細く、 カラスよりもヒヨドリの嘴の大きさ に近く見える(カラスの嘴は長さ 5~7cm、ヒヨドリは約 2.5cm)。ム クドリは柑橘を加害しない。 2006 年 12 月 19 日 福岡県 山口撮影 温州ミカン 加害種:ヒヨドリまたはカラス 判定理由:果皮についているV 字型の切り裂きは比較的太い が、種の判定は難しい。ムクドリ は柑橘を加害しない。 2006 年 12 月 19 日 福岡県 山口撮影 温州ミカン 加害種:ヒヨドリまたはカラス 判定理由:食害痕からは嘴の大 きさが判断できない。ムクドリは 柑橘を加害しない。 2006 年 12 月 19 日 福岡県 百瀬撮影 2 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 温州ミカン 加害種:ヒヨドリ 判定理由:果皮についているV字 型の切り裂きが比較的細く、果肉 の食害部分の形状も、細い嘴を 差し込んでできたように見える。 ムクドリは柑橘を加害しない。 2006 年 12 月 19 日 福岡県 百瀬撮影 日本ナシ 加害種:ハシブトガラス 判定理由:果皮および果肉についてい るV字型の切り裂きが太く、ハシブトガ ラスの嘴の大きさである。ハシボソガラ スの食痕は、これほど明瞭な太いV字 型にはならない。ただし、ハシブトガラス でも細い食痕になることは多いので、食 痕が細い場合は種の区別が困難。 2006 年 8 月 29 日 福岡県 百瀬撮影 日本ナシ 加害種:ハシブトガラス 判定理由:果皮についているV 字型の切り裂きが太くて明瞭。 鳥による食害は、枝等に止まっ てつつける位置が食害される点 が特徴である。 2006 年 8 月 29 日 福岡県 百瀬撮影 3 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 巨峰 加害種:カラス 判定理由:果実袋が大きく破けて おり、力のあるカラスの加害と考え られる。なお、ハクビシンやアライ グマも同様に果実袋を破くが、こ れらの獣類の食害では、果肉を吸 い出した後の果皮が下に多数落 ちる点が特徴であるという。 2006 年 8 月 29 日 福岡県 百瀬撮影(2 枚とも) 巨峰 加害種:ムクドリ? 判定理由:果実袋にあいた穴が小 さく、カラスよりも小さい嘴で何回も 突いてあけたような形状である。ヒ ヨドリの嘴はムクドリと同様だが、ム クドリは物をこじ開けて中の餌を食 べる習性をもつため、ムクドリの可 能性が高い。(カラスの嘴は長さ 5 ~7cm、ムクドリは約 2.5cm) 2006 年 8 月 29 日 福岡県 百瀬撮影 4 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム カキ 加害種:カラス? 判定理由:食痕に嘴の形が分かる 跡がなく、形状から種類の判定は できないが、撮影時は付近にカラス が多数おり、カキを食べている個体 もいたことから、カラスの可能性が 高い。 2003 年 10 月 21 日 茨城県 吉田撮影 カキ 加害種:ムクドリ 判定理由:ムクドリが 50 羽ほど 集まって食べているところを確 認した。食痕の形状から種類の 判定は難しい。 2003 年 12 月 19 日 茨城県 吉田撮影(2 枚とも) 5 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム トウモロコシ 加害種:カラス 判定理由:収穫前のトウモロ コシの包皮を破いて食害す る鳥はカラスと考えられる。 食痕からハシボソとハシブト の判別はできない。 2002 年 8 月 29 日 茨城県 吉田撮影(2 枚とも) トウモロコシ 加害種:カラス 判定理由:収穫前のトウモロコシの包皮を破 いて食害する鳥はカラスと考えられる。食痕 からハシボソとハシブトの判別はできない。 なお、アライグマの食害では株ごと倒された りするというが、カラスの場合は穂が折れる 程度である。穂に止まって食害しているうち にカラスの体重で穂が根元で折れる。 2005 年 6 月 17 日 茨城県 百瀬撮影 6 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 飼料用トウモロコシ(出芽期) 加害種:カラス 判定理由:カラスは出芽したトウモロコシを引き抜き、 種子部分を食べる(上の写真)。引き抜くために土を 掘った穴があり、抜かれた部分が欠株になっている (中の写真)。食害された部分では引き抜かれた苗が 枯れて落ちている(下の写真)。 食痕からハシボソとハシブトの判別はできないが、こ の写真を撮影した圃場での主要な加害種はハシボソ ガラスであった。ハシブトガラスも出芽期のトウモロコ シを食害したという北海道での報告がある。 2004 年 6 月 3 日(中) 2004 年 6 月 12 日(上・下) 茨城県 吉田撮影(3 枚とも) 7 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 水稲(湛水直播) 加害種:カルガモ ※網室内でのカルガモ放飼実 験時の写真。芽と根は残し、 モミ部分を食べる。やわらか い田面には水かきのある足跡 が残る(下の写真)。 2001 年 10 月 2 日 茨城県 吉田撮影(2 枚とも) 水稲(乾田直播) 加害種:キジバト ※網室内でのキジバト放飼実験時の写真。キジバトは種モミを掘り出し、芽と根も含めて丸ごと飲み込 む。生長して飲み込みにくい苗は、この写真のように掘り出して放置する。写真の左右両端には、未食害 の苗が見える。スズメはモミがらをむいて胚乳を食べるので、スズメの食害ではモミがらや芽が散らばる。 2001 年 5 月 11 日 茨城県 吉田撮影 8 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム ヒマワリ(油用品種) 加害種:カワラヒワ、スズメ、キジバト 判定理由:収穫前のヒマワリを食害 する主な種は、日本では上記 3 種と 考えられる。この圃場では 3 種とも食 害しているのを確認した。 茨城県 吉田撮影(2 枚とも) 2006 年 9 月 10 日 → 2006 年 10 月 17 日 → ヒマワリ(油用品種) 加害種:カワラヒワまたはスズメ 判定理由:キジバトはヒマワリの種子を 丸ごと食べるが、カワラヒワとスズメは 種皮をむいて食べるため、周囲に種皮 が散らばる。 2006 年 10 月 17 日 茨城県 吉田撮影 9 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム メロン 加害種:カラス 判定理由:メロンの果皮は硬いため、力の あるカラスの食痕と考えられる。獣類であ れば齧ったような形状になると思われる。 なお、このメロンは収穫後に放置されてい たくず果実が食べられた状況である。 2003 年 7 月 22 日 茨城県 吉田撮影 ニンジン 加害種:カラス 判定理由:ニンジンは比較的硬く、周囲にはカラス の足跡があったため、カラスの食痕と考えられる。 なお、このニンジンは収穫後に放置されていたく ずが食べられた状況である。 2003 年 1 月 22 日 茨城県 吉田撮影 10 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム ラッカセイ 加害種:カラス 判定理由:地中のラッカセイを掘り出す鳥 はカラスと考えられる。カラスは殻を割っ て中の豆を食べる。 2003 年 8 月 21 日(上の 2 枚) 2003 年 9 月 25 日(下の 2 枚) 茨城県 吉田撮影(4 枚とも) 11 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム ハクサイ 加害種:ヒヨドリ 判定理由:食痕がギザギザであ り、昆虫による食害ではない。 2004 年 1 月 25 日 茨城県 吉田撮影 チンゲンサイ 加害種:ヒヨドリ 判定理由:食痕がちぎり取ったよ うな形状であり、昆虫による食害 ではない。 2004 年 2 月 20 日 茨城県 吉田撮影 ブロッコリー 加害種:ヒヨドリ 判定理由:食痕がちぎり取ったよ うな形状であり、昆虫による食害 ではない。ヒヨドリは、花蕾は食べ ずに葉を食べることが多い。 2004 年 2 月 26 日 茨城県 吉田撮影 12 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム キャベツ 加害種:ヒヨドリ 判定理由:多数のヒヨドリが食 害しているのを確認した。外葉 と結球部が食害されている。3 枚目の写真は結球をえぐるよ うに食害された例。濃緑色の 塊はキャベツを食べたヒヨドリ の糞。 2007 年 1 月 25 日 茨城県 吉田撮影(3 枚とも) 13 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム コマツナ 加害種:ヒヨドリ 判定理由:食痕がちぎり取った ような形状であり、昆虫による 食害ではない。この圃場では、 多数のヒヨドリが食害している のを確認した。 2005 年 3 月 3 日 茨城県 山口撮影(3 枚とも) もみ殻を入れた袋 加害種:カラス 判定理由: 丈夫なビニール袋にこのような形状の穴をあけるのはカラスであろう。 2004 年 1 月 22 日 茨城県 吉田撮影(2 枚とも) 14 鳥害痕跡図鑑 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム 鳥害痕跡図鑑 2009 年 4 月 10 日版 この図鑑は、現場で鳥獣被害対策を指導する方の参考となること を目的とし、鳥による農作物食害状況の写真を集め、加害種判定 のポイントを解説したものです。 利用にあたっては、このままの形で配布・掲示等を行うものとし、 編集・加工しないこと。一部または全部を他の資料等へ転載する ことを希望する場合は鳥獣害研究サブチームに連絡すること。公 刊資料ではないため、引用はできません。 著作権者: 〒305-8666 つくば市観音台 3-1-1 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 鳥獣害研究サブチーム Email: [email protected] http://narc.naro.affrc.go.jp/kouchi/chougai/index.html 編集・著作: 吉田 保志子(鳥獣害研究サブチーム) 企画・立案: 百瀬 浩(鳥獣害研究サブチーム) 資料提供:吉田保志子、百瀬浩、山口恭弘(以上鳥獣害研究サブチーム) 協力:川崎敦之(佐賀県農業技術防除センター) 堀江裕一郎(福岡県農政部農業技術課) 15