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カウンタを使用した パルスドRF/マイクロ波 測定
MEASUREMENT TIPS Volume 11, Number 1 カウンタを使用した パルスドRF/マイクロ波 測定 スナップショット はじめに レーダや軍事電子(EW)機器の設計で、デザ インが正しく機能していること、仕様を満 たしていることを検証するには、パルスド RF信号やマイクロ波信号の特性を正確に評 価することが必要です。図1に、パルスド信 号の一般的な測定を示します。測定には、 パ ル ス 幅(PW)、 パ ル ス 繰 り 返 し 周 波 数 (PRF)、パルス繰り返し間隔(PRI)、パルス 周波数(PF)、パルス立ち上がり/立ち下が り時間、信号パワーなどがあります。 最近では、パルスドRF/マイクロ波測定機能 を備えた高度なカウンタが、電子計測器市 場に再び出回っています。これらの高度な カウンタでは通常、パルスドRF/マイクロ波 信 号 のPF/PW/PRF/PRI測 定 が 行 え ま す。 この測定のヒントでは、以下について説明 します。 1. カウンタを使用したパルスドRF/マイク ロ波測定の利点と欠点 2. カウンタを使用した低価格の包括的なパ ルスドRF/マイクロ波測定ソリューショ ンの構築 3. カウンタを使用した掃引信号/チャープ 信号のパルスド周波数測定 大型遠洋船用の航行レーダ・システムを製造しているメーカで、製造テ スト環境にパルスド・マイクロ波測定システムが必要でした。特に大口 契約の入札では、競争力を維持するために、機器のコ ストを低く抑えることが不可欠です。エンジニア たちは、高確度な測定機能を備えた低価格の Agilent 53230Aユニバーサル・カウンタを 使 用 し て い ま し た。53230Aは、PW、 PRF、PRI、PFを 測 定 で き ま す。 ま た、 パルス・パワーを測定するために、広帯 域ピーク・パワー・メータを追加してい ました。こうすることにより、包括的なパ ルスド・マイクロ波測定システムを200万 円以下で構築できました。 PWeff ピーク・ パワー PF t=0 PRF = 1 PRI PRI デューティ・サイクル(%) = PW x 100 PRI PWeff = 総パワーがピーク・パワーと同じ高さの方形パルスとした場合のパルス幅 図1. パルスドRF/マイクロ波測定パラメータ カウンタを使用したPW/PRF/PRI/PF測定 PW/PRF/PRI/PF測定にカウンタを使用することの大きな利 点は、測定器のコストが比較的安いことです。通常は約100 万円以下で、これらのパラメータを高い確度で測定できるカ ウンタを手に入れることができます。これに対して、一般的 に使用される方法 (スペクトラム・アナライザまたは広帯域オ シロスコープと信号解析ソフトウェア・パッケージを組み合 わせる方法、PRF/PRI/PFの測定にスペクトラム・アナライ ザを使用し、PW測定用にいくつかのタイプのディテクタを搭 載したオシロスコープを使用する方法など)では合計価格が 800万円を軽く超えてしまいます。 他のパルスドRF測定ソリューションでは、はるかに複雑な コード、より長い測定器コマンド・シーケンス、場合によっ てはカスタム・ハードウェアが必要ですが、これらはすべて、 エンジニアリング・コストやサポート・コストの増加につな がります。 カウンタを使用することの欠点は、パルス・パワーを測定で きないこと、パルス形状の情報がほとんど得られないこと、 チャープ信号/掃引信号のRF測定が難しいことです。以下の セクションでは、こうした欠点を補うための方法について説 明します。 他の測定用にスペクトラム・アナライザやオシロスコープを すでに搭載している場合は、上述の機器コストの削減例が当 てはまらないこともあります。しかし、カウンタは、テスト・ システムのセットアップ時間の削減というもう1つの方法で、 コストの削減を実現します。いくつかのSCPIコマンドとコー ドを用いるだけで、カウンタはPW/PRF (またはPRI)/PFの 測定値をテスト・システム・ソフトウェアに返すことができ ます。図2は、これらの測定値を読み取るためのMATLAB®コー ドを示したものです。 低価格の包括的なパルスドRF測定システム 前述のように、パルスドRF/マイクロ波信号の最も一般的な 測定として、PW、PRF/PRI、PF、パルス立ち上がり/立ち 下がり時間、信号パワーがあります。これらの測定をすべて 実行できる単一の測定器は既製品にはないので、パルスド RF/マイクロ波信号のテストは大掛かりになってしまいます。 機器コストに800万円以上を費やせるだけの予算があれば、 スペクトラム・アナライザ、オシロスコープ、水晶ディテク タを組み合わせて使用したり、スペクトラム・アナライザと 信号解析ソフトウェアを組み合わせて使用することができま す。しかし、必要な機能をすべて得られるさらに安価な方法 があります。 PW、PRF、PFを測定/保存 するためのコードと SCPIコマンド パルスドRF/マイクロ波測定機能を備えたカウンタと広帯域 ピーク・パワー・メータを組み合わせて使用すれば、PW、 PRF、PRI、RFを測定できます。ピーク・パワー・メータは、 パルスドRF/マイクロ波信号の信号パワーの測定で最高の確 度を実現します。信号パワー以外にも、広帯域ピーク・パワー・ メータは通常、PW、PRF、PRI、パルス立ち上がり/立ち下 がり時間を測定できます。カウンタは信号パワーを測定でき ないので、信号パワーを測定できるというのがピーク・パワー・ メータの長所であり、ピーク・パワー・メータはPFを測定で きないので、PFを測定できるというのがカウンタの長所です。 このため、これらの測定器はお互いを補完し合います。これ らの測定器を組み合わせても、コストは平均的なスペクトラ ム・アナライザをはるかに安価になります。例えば、チャネ ル3パ ル ス ドRF/マ イ ク ロ 波 オ プ シ ョ ン 搭 載 のAgilentの 53230Aカウンタ、N1911Aパワー・メータ、N1921A広帯域 パワー・センサを組み合わせた価格は、約200万円程度です。 カウンタと広帯域ピーク・パワー・メータを組み合わせて使 用することにより、低価格の包括的なパルスド/RFマイクロ 波測定ソリューションが実現します。 測定結果 図2. PW/PRF/PF測定のサンプル・コード 測定のヒント パルスドRF/マイクロ波信号に対しては、カウンタには、いくつ かの制限はありますが立ち上がり/立ち下がり時間を測定した り、パルス情報を得ることができます。これらの測定は、PW測 定の実行時にカウンタの振幅トリガ・ポイントを調整することに より行えます。例えば、2つの振幅しきい値ポイント、パルスの −6 dBポイント(パルスの50 %ポイント)またはパルスの−12 dBポイント(パルスの25 %ポイント)でトリガをかけるように、 Agilentの53230Aカウンタを設定することができます。−6 dB と−12 dBの両方のポイントでPW測定を実行し、以下の計算式 を使用することで、2つのポイント間の立ち上がり/立ち下がり 時間が測定できます。 測定のヒント カウンタと広帯域ピーク・パワー・メータとを組み合わせて包括 的なパルスドRF/マイクロ波測定システムを構築した場合は、通 常、測定機能に重複する部分があります。どちらの測定器も PW/PRF/PRIを測定できます。このような状況では、これらの 重要な測定にどちらの測定器を使用しますか?カウンタの方が パワー・メータより分解能と確度に優れているので、これらの測 定にカウンタを使用すべきです。例えば、PWが10 μsのパルス では、Agilent N1911Aピーク・パワー・メータとN1921Aパワー・ センサを組み合わせて使用した場合の測定確度が約±300 nsで あるのに対して、Agilent 53230Aカウンタの測定確度は約±20 nsです。しかし、パワー・メータは、パルス全体をデジタイズ するので、パルス全体の形状を測定できます。 PW6を−6 dBポイントでのPW測定、PW12を−12 dBポイントでの PW測定とします。 ポイント間の立ち上がり/立ち下がり時間= (PW12−PW6)/2 この方法では、パルス・エッジが対称であると仮定しています。 2 掃引信号/チャープ信号のRF測定 カウンタは通常、パルス・エンベロープの立ち上がりエッジ でトリガすることによりRF測定を実行した後で、周波数測定 を開始します。パルスの立ち下がりエッジに達するまで、可 能な限り測定を実行します。次に、すべての周波数測定をア ベレージングして、その結果を実測RFとして返します。この 方法では、シングル・キャリア周波数の場合は最高の確度が 得られますが、掃引/チャープ搬送波の場合は最高の確度は 得られません。しかしカウンタは、非常に確度の高い掃引周 波数/チャープ周波数測定を実現する機能を備えています。 例えば、 53230Aカウンタの統計機能を用いれば、掃引の最小 周波数、掃引の最大周波数、標準偏差、掃引のピークツーピー ク / ア ラ ン 分 散 測 定 値 が 得 ら れ ま す。 例 と し て、 図3に、 53230AのパルスドRF/マイクロ波信号の統計測定のスクリー ンショットを示します。 遅延時間を変更して何度も測定し、各測定値に統計機能を使 用すれば、掃引のさまざまなポイントで複数の周波数測定が 可能です。ゲート時間と遅延時間がわかっているので、掃引 のどのポイントでこれらの周波数が発生したか正確にわかり ます。測定回数を増やし、遅延時間を変更し、いくつかの演 算機能を使用すれば、掃引全体で確度の高い周波数測定が行 えます。例では、単純なリニア掃引と仮定していますが、レー ダやEW機器をテストする場合には必ずしもそうとは限りませ ん。計算は多少複雑になりますが、他の掃引信号やチャープ 信号に対しても同様の方法を用いることができます。 まとめ 現在発売されている高性能カウンタは、パルスドRF/マイク ロ波信号を測定できます。通常は、PW、PRF、PRI、PF測 定機能があります。この測定分野でカウンタが他の既存のソ リューションより優れている点として、高確度/高分解能の 測定ができること、設定が簡単で低価格なことがあります。 Agilentの53230Aなどのカウンタの高度な機能を使用するこ とにより、制限はありますが立ち上がり/立ち下がり時間測 定や掃引/チャープRF測定も可能です。 図3. 53230Aカウンタの搬送波掃引パルスドRF信号の統計測定の スクリーンショット 53230Aカウンタでは、ゲート時間(周波数測定ウィンドウ)や パルスのエッジからPFの開始までの遅延時間を調整できま す。繰り返しのあるパルスドRF/マイクロ波掃引信号に対し ては、これは、掃引のさまざまなポイントで複数の周波数を 測定してパルスの周波数成分をより広範囲にわたって測定す ることができるということを意味します。図4に、2種類のPF 測定を使用して、このコンセプトの例を示します。この図では、 両方の測定のゲート時間は同じですが、遅延時間は異なりま す(最初の測定の遅延時間は0です)。 最初の測定の ゲート時間 2回目の測定の ゲート時間 T0 図4. パルスドRF/マイクロ波掃引 信号のRF測定 2回目の測定の 遅延時間 3 Agilent 53200シリーズ 周波数カウンタの 詳細 www.agilent.co.jp/find/FrequencyCounters アジレント・テクノロジー株式会社 本社〒 192-8510 東京都八王子市高倉町 9-1 計測お 客様窓口 受付時間 9:00-18:00(土・日・祭日を除く) TEL ■■ FAX ■■ 0120-421-345 (042-656-7832) 0120-421-678 (042-656-7840) Email [email protected] 電子計測ホームページ MATLABは、The Math Works, Inc.の登録商標です。 ● www.agilent.co.jp 記載事項は変更になる場合があります。 ご発注の際はご確認ください。 © Agilent Technologies, Inc.2010 Published in Japan, November 4, 2010 5990-5646JAJP 0000-00DEP