Comments
Description
Transcript
今からまける果菜類
れからタネまきできる果菜類はたくさんあります。5月以降は 発芽もしやすく、保温などの手間も省けるので初心者にも手軽 にチャレンジできます。今回は、オクラ、キュウリ、エダマメ、 インゲンの栽培法をご紹介します。 千葉大学園芸学部卒業後、高校教師 として園芸(主に野菜)や生物工学 (バイオテクノロジー)の指導をす る。退職後は、書籍の執筆や園芸講 座の講師として活躍するかたわら、 家庭菜園を楽しむ。生け花や水彩画、 写真など多彩な趣味をもつ。著書に 『はじめてのコンテナ野菜づくり』 (ナツメ社)などがある。 オクラ ! い な く 遅 も で ト ー 5月スタ タネまきのポイントを押さえて おいしい野菜を収穫しよう ! になるため病害虫が発生しやすくなりま は植え付けには早すぎる小さな苗が売ら 月下旬∼ 月上旬は果菜類のタネま きや植え付けの適期です。園芸店などで 栽培されている品種を選ぶ、整枝や追肥 培時期にあった品種を選ぶ、その土地で それを防ぐには、肥料を過剰に与えな い、病害に抵抗性のある品種を選ぶ、栽 す。 れていることがありますが、慌てて早植 ・中耕・土寄せなどの管理を適切に行う、 品種の組みあわせで 長期間の収穫が可能に えすると、低温の影響などで初期生育が などが大切です。 ③ 適期に追肥や土寄せなどの管理をする。 悪くなり、かえって収穫時期が遅れたり、 かつ病害に抵抗性のある品種を選ぶ。 収量が少なくなったりします。小さな苗 ② 栽培時期や栽培法にあった品種で しか手に入らない場合は、一回り大きな ポットに植え替えて、定植に適した大き さになるまで暖かい場所で管理するのが 賢明です。 今回紹介する 種類の野菜は、苗を入 手して栽培することもできますが、タネ から直まきして栽培することも可能です。 キュウリやエダマメは、品種をうまく組 みあわせて栽培すれば、直まきでも初夏 から秋まで途切れずに収穫することがで きます。 梅雨の多湿と夏の暑さを 乗り切るポイントは? 夏野菜の栽培の成否は、梅雨時の多湿、 夏の暑さと乾燥をいかに乗り切るかがポ イントです。そのためには、冬の間に畑 に有機物をまいて深く耕し、土の通気性、 ① 適期のタネまき、植え付けを心掛ける。 5 4 排水性をよくする土づくりを行いましょ 5月から栽培する野菜の 栽培のコツは? 教えて! トマトやナスなどの植え付けが最盛期となる5月。でも、こ 麻生 健洲 4 う。また、チッソ肥料が多いと苗が軟弱 2014.05 18 け ん しゅう 今からまける果菜類 あそ う キュウリ インゲン エダマメ 夏の日差しと 暑さが大好き オクラ オクラは高温を好む野菜です。そこで、早くから収穫したい時にはポットま きにして育苗(発芽適温25∼30℃を確保する)し、日中の気温が生育適温(20 ∼30℃)になったら定植します。オクラは細かい根が少なく、植え傷みしやす さや いので、苗が小さいうちに根を切らないよう、ていねいに移植します。莢には 五角形や丸いもの(丸莢)があります。丸莢は収穫が遅れてもかたくなりにく いため、家庭菜園向きです。幼苗期は土壌の多湿に注意し、生育期は乾燥に注 意しましょう。生育期間が長いので、定期的な追肥もポイントです。 栽培カレンダー 月 3 タネまき 4 5 6 7 8 9 10 ポットまき 直まき 収穫 収穫 う ね 4 追肥 収穫が始まった ら2週間に1回、 1㎡当たり化成 肥料30 g を追肥 する。 1 土づくり・畝立て・ マルチ張り 化成肥料 化成肥料はマル チの穴の部分か、 畝の肩の部分に まく。 生育中のオクラ。初期 のころは特に、アブラ ムシの被害にあいやす いので注意。 黒マルチ 畝立て後、乾 燥や雑草を防 止する黒マル チを張る。 15cm 60∼70cm 2 タネまき 5 収穫・摘葉 莢の長さが6∼7㎝になれば収穫(こ れは5角オクラの目安。丸莢なら15㎝ 程度で収穫)する。日当たりや風通し をよくするため、収穫した莢の下の葉 を1∼2枚残し、それ以下の葉を切り とる「摘葉」を行う。草丈が高くなる と風などで倒れやすくなるので、株の わきに支柱を立てて支えるとよい。ワ タノメイガ(ハマキムシ) やフタトガリコヤガの幼 虫が発生するので、見つ け次第捕殺する。 1㎡当たり苦土石灰 たい ひ 100 g 、完熟堆肥2 ㎏、化成肥料 100 g をまき、畝幅60∼70 ㎝、高さ15㎝ほどの 畝を立てる。 育苗後に定植(移植栽培)する場合は、3号ポリポットに3∼4粒のタ ネをまく。畑に直まきする場合は、株間30∼40㎝で、1カ所5∼6粒の タネをまく。 1カ所5∼6粒 保温ポットなど オクラのタネはか たいので、30℃程 度のぬるま湯を入 れたポットにタネ を入れ、1∼2日 おいてからまくと 発芽が揃いやすい。 オクラの花は野菜の中でも特 に美しく、観賞価値が高い。 収穫する莢 30∼40㎝ マルチに30∼40㎝間隔で穴をあけ、タネを ふく ど 5∼6粒まいた後、覆土して手で押さえる。 とり遅れると莢がかたくなるので早めの 収穫を心掛ける。莢を収穫したら、収穫 した莢の下の葉を1∼2枚残し、それ以 下の葉を切りとる。 3号(直径約9㎝) のポリポットにタ ネまき用培養土を 入れ、3∼4粒の 3号ポット タネをまく。 3 間引き ワンポイント こぶ オクラはネコブセンチュウが発生しやすい作物。収穫後の根に瘤が ついていたら、殺センチュウ剤で土壌消毒するか、野菜栽培を一作 休み、センチュウを忌避するマリーゴールドやクロタラリア、ギニ アグラスなどを栽培するとよいでしょう。 間引く株 ポットまき、直まきのいずれも、本葉1∼ 2枚のころまでに2本に間引く。直まきは、 本葉3∼4枚で1本立ちにする。ポット苗 の場合は2本立ちにした後も育苗し、本葉 3∼4枚になるまでに1本に間引き、畑に 定植する。 子葉が開いたら、本葉1∼2枚の ころまでに2本立ちにする。 残す株 ※この特集( p.18∼21)の栽培で使用する化成肥料は、N - P - K=10 - 10 - 10のものです。 ◀◀◀オクラの種子はp.68で販売。 2014.05 19 コンスタントに に 収穫できる キュウリ タネからでも容易に栽培できます。品種が豊富に揃うので、季節にあった品 種を選べば初夏から秋まで収穫が続けられます。キュウリは、ウイルス病やう どんこ病、べと病、アブラムシなどの病害虫が発生しやすい野菜です。また、 浅根性のため土の乾燥にも弱い野菜です。そのため、日々の観察と適切な管理、 病気に強い品種選択が必要になります。栽培方法は、支柱を立てる立体栽培が じ ば 主流ですが、地面につるを わせる地 い栽培も可能。それぞれの栽培方法に あった品種があるので、適したものを選んで栽培しましょう。 栽培カレンダー 月 3 4 タネまき 5 6 7 8 9 10 ポットまき・直まき 収穫 収穫 4 整枝・摘芯 5節目までの側枝は元か 側枝 ら、それより上から出た 側枝は本葉2枚を残して 先端を切る(摘芯)。主 主 枝は支柱の先(25節程度) 程度) まで伸びたら摘芯する。 摘芯する 6 5 4 3 2 3 1 2 雌花 1 土づくり・畝立て・ マルチ張り 側枝 1 黒マルチ 畝立て後、乾 燥や雑草防止 のため黒マル チを張る。 15∼20㎝ 6節目より先から出た 先か 側枝は、本葉2枚を残 して摘芯する。 100 ∼ 120 ㎝ 下から5節目までの側 枝や雌花は摘みとる。 2 タネまき・間引き 5 追肥 定植1カ月後から月に1回のペースで、1㎡当たり化成肥料を30 g 追肥 する。 6 収穫・敷きわら 各品種で適正の大きさになったら収穫す る。梅雨前には雨のはね返りを防ぐため に株元に薄くわらを敷き、梅雨明け後は 土の乾燥と高温になるのを防ぐため、厚 めにわらを敷く。栽培中は、うどんこ病、 ウイルス病、べと病などが発生しやすい ので早めに見つけて防除する。ウイルス 病はアブラムシを防除することで防げる。 各品種で適正の大きさになっ たらハサミで切って収穫する。 ワンポイント つる枯病の予防には、キュウリの根に絡ませるようにして、ネギを 混植すると防除効果があります。また、バンカープランツ(病虫害 に対する天敵にすみかを提供する目的で生育させる植物)として畑 のところどころにコムギをまいておくと、アブラムシ類の被害を防 ぐことができ、ウイルス病の防除にも役立ちます。 20 1㎡当たり苦土石灰 150 g 、完熟堆肥5 ㎏、化成肥料 150 g をまき、畝幅 100 ∼ 120 ㎝、高さ15∼20 ㎝の畝を立てる。 2014.05 ◀◀◀キュウリの種子はp.64で販売。 移植栽培の場合は、3号ポリポットに2∼3粒のタネをまく。畑に直ま きする場合は、株間50㎝、条間70㎝間隔でまき穴をあけ、1カ所当たり 3∼4粒のタネをまく。発芽後、直まき、ポットまきともに本葉3∼4 枚までに1本に間引く。ポットまきの苗は、本葉3∼4枚で定植する。 やあんどん 気温が低い時はホットキャップやあんどんで保温するとよい。 直まきの場合は、 株間50㎝、条間70 ㎝の2条で、1カ 所当たり3∼4粒 のタネをまく。 1カ所3∼4粒 50㎝ 70㎝ タネまき用培 養土を入れた 3号ポットに 2∼3粒のタ ネをまき、本 葉3∼4枚ま でに1本立ち にする。 3 支柱立て・ネット張り つるが伸びてきたら合掌仕立てで支柱を 立て、ネットを張る。伸びたつるを適宜 誘引する。 50㎝間隔で支 柱を立て、キ ュウリネット などを張る。 180 ㎝ キュウリ ネットなど 50㎝ 定植後のキュウリ。 つるが伸びると巻き ひげを伸ばして支柱 やネットに絡みつく が、風などであおら れることもあるので、 適宜つるをネットに 絡めるようにすると よい。 とれたては甘みも風味も最高級 エダマメ スーパーなどで入手するエダマメは収穫後に時間が経っているものが多いのですが、家 時間が が経 てい いるも るものが が多 多い いの 庭菜園のエダマメは収穫後すぐに調理でき、エダマメ本来の甘さと風味が楽しめます。生 育期間によって、早生、中生、晩生などのタイプがあります。また、外観からは、莢の毛 が白いものや茶色いもの、子実(豆)が黒いエダマメなどがあります。7月にまける品種 もあるので、栽培する時期や好みに応じて品種を選ぶとよいでしょう。 栽培カレンダー 月 3 4 5 タネまき 6 7 8 収穫 3 土寄せ・追肥 1 土づくり・畝立て・マルチ張り 本葉3枚のころ、最初の土寄せをする。土寄 せは子葉が隠れるくらい十分に。花が咲き始 めたころに、1㎡当たり化成肥料30 g を追肥 生育中のエダマメ。 カメムシなどの害虫 し、中耕・土寄せする。 1㎡当たり苦土石灰 100 g 、完熟堆肥1㎏、化成肥料 100 g をまき、畝幅60㎝ ∼1m、高さ5∼10㎝の畝を立てる。アブラムシよけに銀線入りの黒マルチを 敷くとよい。 を見つけたら早めに 取り除く。 2 タネまき・間引き き ワンポイント 莢がふくらんだら、熟した ものからハサミで切るか、 株ごと抜きとる。 10 ポットまき・直まき 収穫 4 収穫 9 1条植えでは畝幅60㎝ 15∼20㎝ (2条では1m)とし、 株間15∼20㎝とする。 5∼10㎝ 直まきは1カ所2∼3 粒まきにし、本葉2枚 60㎝ で2本に間引きする。 1穴に2∼3粒のタネをまく。畑に 移植栽培では3号ポッ トに2∼3粒まきにし、 まいたタネは鳥にねらわれやすいの ふ しょく ふ 本葉2枚で2本立ちに で、タネまき後に不織布をベタがけ して植え付ける。 するか、ポット育苗して苗を植え付 エダマメの花は根元の方から順 番に咲くので、下の方の実が大 きくなっても上の方の実はまだ 入っていないということが起こ ります。ポットで苗をつくって 移植すると、ガッチリした苗に なり、花が揃って咲くため一斉 に実が入ります。 やわらかい莢を丸ごと食べる ける移植栽培をするとよい。 1カ所 2∼3粒 本葉2枚で1穴 当たり2本に間 引く。ポットま きの場合も同様。 インゲン 若い莢を食べるインゲンにはつるあり、つるなしがあります。また、莢が平たくやわら るなしが るな があり あります ます す また 莢が 莢が かい「モロッコインゲン」と呼ばれる平莢種と、丸くて長い丸莢種、莢が紫色のものなど があります。インゲンはスジを取るのが面倒ですが、中にはスジなしの品種もあります。 アブラムシやカメムシ類が発生することがありますが、致命的な病害虫がないことから、 畑の空きスペースにまいておくと重宝します。 栽培カレンダー 月 春まき 3 4 5 6 ポットまき・直まき 7 ポットまき・直まき 夏まき 3 支柱立て・追肥 つるあり種はつるが伸び始めたら支柱を立てる(合掌仕立て)。 本葉5枚のころと収穫最盛期に化成肥料1㎡当たり50 g を追肥し、 中耕・土寄せをする。つるなし種は本葉5枚のころに1回行う。 4 収穫 莢が十分に 膨らんだら 収穫する。 ワンポイント エダマメやインゲンなどマ メ科の根には、根粒菌が共 生しています。根粒菌は空 中のチッソを豆が利用でき るような形にして供給しま す。そのため、チッソ肥料 膨らんだ莢から 順に、手で摘み とるか、ハサミ で切りとる。 8 は控えめに。やりすぎると 茎葉が茂りすぎ、豆の出来 が悪くなるので注意。 ◀◀◀エダマメ、インゲンの種子はp.65で販売。 9 10 収穫 収穫 1 土づくり・畝立て・マルチ張り 1㎡当たり苦土石灰 100 g 、完熟堆肥1㎏、化成肥料80 g をまき、畝幅 100 ㎝、 高さ5∼10㎝の畝を立てる。アブラムシよけに銀線入りの黒マルチを敷くとよ い。 2 タネまき・間引き き つるあり種は株間40㎝、条間60 ㎝、つるなし種は株間30㎝、条 間40㎝でまき穴をあけ、1カ所 当たり2∼3粒のタネをまく。 発芽が揃ったら2本に間引く。 鳥害を防ぐためには不織布をベ タがけするか、移植栽培する。 移植栽培では3号ポットに3粒 まきにし、発芽が揃ったら2本 に間引く。その後、本葉2∼3 枚で植え付ける。 1カ所 2∼3粒 (つるあり種) 60㎝ 5∼ 40㎝ 10㎝ 100 ㎝ 2条まきの場合は、幅 100 ㎝、 高さ5∼10㎝の畝を立て、各穴 に2∼3粒のタネをまく。銀線 入りの黒マルチを張るとよい。 2014.05 発芽が揃った ら、2本に間 引く。ポット まきの場合も 同様。 21