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猫ヘモプラズマ(FHM

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猫ヘモプラズマ(FHM
Real PCRTM 猫ヘモプラズマ(旧ヘモバルトネラ)検査
Feb, 2015 Updated
猫の貧血の原因を診断しようとしても,徒労に終わる可能性があり,「難しい」というのが関の山です.
出血や腎不全のようなわかりやすい原因が否定されても,鑑別診断のリストが残ることが珍しくなく,
やっかいな問題になりがちです.多くの場合,猫ヘモプラズマ症,以前はヘモバルトネラ症と呼ばれて
いた猫感染性貧血が原因である可能性が残ります.この感染症の診断は,伝統的に顕微鏡検査で患者の
血液塗抹標本中の微生物の有無を確認することに頼っていましたが,これは感度の低い検査で,誤った
結果を導くことがあります.この診断を確認するためのよくある手段のひとつが,治療に対する反応の
評価です.しかし,よい反応が認められたとしても 確定診断とはいえず,猫が反応を示さなければ,貧
血の真の原因をつきとめるための貴重な時間を失うことになります.正確で信頼性が高く,コストパフ
ォーマンスが高く迅速な IDEXX Real PCRTM 猫ヘモプラズマ症の検査を実施することで,早期診断とよ
り適切な治療が可能となり、患者の生命を救うことができるのです.
猫ヘモプラズマ症(FHM)
赤血球表面に付着して,貧血を引き起こす微生物です.この細菌は以前,
「ヘモバルトネラ」という名で
知られていましたが,近年の RNA 配列解析結果に基づき,マイコプラズマに再分類されました.FHM
は小型(0.3~0.8μm)のグラム陰性菌で,細胞壁をもたず,ヒトを含むさまざまな種の哺乳類に感染し
ます.付着による障害と宿主の免疫反応によって赤血球が破壊され,貧血を引き起こします.猫では 3
種類の FHM が同定されていま す.
Mycoplasma haemofelis,
Candidatus Mycoplasma haemominutum,
最近同定された Candidatus Mycoplasma turicensis がそれにあたります(Candidatus は,完全には位
置づけが 決まっていない菌に暫定的に与えられる名称です)
.
最近の研究から,
健康な血液ドナー猫の 12.7% ,ルーチンの血液検査を実施した健康な飼い猫の 14.5%,
猫ヘモプラズマ症が疑われる病気の猫の 28%が FHM 感染陽性であることがわかりました
感染の原因となるリスクファクター
屋外に出ること,ノミ,雄,4~6 歳未満,夏,FeLV 陽性,猫の咬傷による膿瘍の既往歴およびワクチ
ン未接種があげられます. ノミのほか,マダニやシラミが感染を媒介する可能性があります.母猫から
子猫への垂直感染もあります.咬みつきや攻撃的な行動も伝染の原因になります
臨床症状
感染猫の血液を輸血すると,レシピエントが感染します. 猫ヘモプラズマ症に罹患した猫は,沈うつ,
無気力,食欲廃絶や食欲不振,衰弱,体重減少,脱水症状などを示します.身体検査では,可視粘膜が
蒼白または黄疸を示します.呼吸促迫,頻脈や心雑音が認められることがあります.発熱や脾腫も珍し
くありません.無症候性の FHM キ ャリアの場合は,臨床徴候が認められません.
臨床検査所見
猫ヘモプラズマ症の臨床症状を示す猫の CBC 検査では,ヘマトクリットが正常値の 50%程度になるこ
ともあります.貧血は通常強い再生性ですが,併発疾患や FeLV 感染がある場合は非再生性のこともあ
ります.無症候性の場合は,CBC は正常であるか,軽度貧血のみを示すと考えられます.血液化学検査
は通常正常ですが,低酸素による ALT 上昇,溶血による高ビリルビン血症が認められることがありま
す.
治療
猫ヘモプラズマ症の診断が確定したら,ドキシサイクリンまたはエンロフロキサシンによる治療を始め
ます.免疫系が赤血球破壊の一因になるため,多くの場合,重度の貧血患者にはグルココルチコイドを
投与します. 緊急の場合は,輸血が必要なこともあります.また,さらなる感染の予防のため,ノミの
寄生をコントロールする必要があります.適切な治療を行えば,予後は良好です.良好な予後を得るた
めには,早期診断と適切な治療が重要です.
Real PCRTM 猫ヘモプラズマ症
伝統的に,猫ヘモプラズマ症は赤血球の細胞学的評価で診断されています.しかし,感染細胞数は急速
に変動するため(3 時間足らずの間に 90%から 1%以下まで低下する例もあります)
, FHM 感染は見
逃されやすいのです.また,FHM は染色液の沈殿,乾燥や固定の際に生じるアーティファクト,よく
染まっていないハウエル・ジョリー小体,好塩基性斑点,鉄陽性封入体, Cytauxzoon elis や小型
Babesia 属.との鑑別が難しいため,結果が偽陽性となる可能性がありま す.IDEXX Real PCRTM 猫ヘ
モプラズマ症 検査は,FHM に特有の DNA 配列に結合する蛍光プローブを利用しており,FHM に対
して高い特異性を示します.この検査は,顕微鏡では検出不可能なレベルのごく少数の微生物でも検出
することができます.また,DNA のみを検出するため,細胞学的に FHM に似ているその他の物質を
検出することはありません.特異性・感度が高く,また高速であることから,この検査は猫ヘモプラズ
マ症の診断において,鏡検による微生物の確認よりはるかに正確で信頼性の高い検査なのです.
IDEXX では,ヘマトクリットが 25%未満の猫の全血検体について,FHM の有無を検査しました.ま
たそれぞれの検体で塗抹鏡検による評価も行いました.調査した 303 例のうち,ルーチ ンの鏡検で
FHM を検出できたのは 10 例でしたが,すべてが IDEXX RealPCR 検査で M. haemofelis 陽性でした.
IDEXX RealPCR では,このほかに 29 例,計 39 例(13%)が M. haemofelis 陽性を 示しました.
計 88 例(29%)でいずれかの FHM が検出され,13 例は二重感染,7 例は三重感染でした.この結
果は,PCR 検査の感度は最大で鏡検の 10 倍になるという以前の研究結果を確認するもので,猫ヘモプ
ラズマ症の検査に重要な影響を与えることになるでしょう.
Real PCRTM 猫ヘモプラズマ症 利用例
・再生性貧血で,明白な出血がみられない猫
再生性貧血の主な原因は失血と溶血の二つです.出血の証拠が認められなければ,赤血球破壊の可能性
が非常に高く,猫ヘモプラズマ症を除外する必要があります.
・貧血のある FeLV 陽性の猫
FHM と FeLV に同時に感染していると,非再生性貧血または再生性貧血になる場合があります. こう
いった猫が FHM に持続感染していると,骨髄増殖性疾患をひきおこすことがあります.
・他の慢性疾患に罹患している猫で,非再生性貧血が予想より重度の場合
猫ヘモプラズマ症によって起こる貧血は通常再生性ですが,貧血に対する骨髄反応を抑制するような併
発疾患(腎不全,新生物など)がある場合,貧血が非再生性のようにみえることがあります.猫ヘモプ
ラズマ症は慢性疾患由来の貧血をさらに増悪させることがあります.
・非再生性貧血の猫で,明らかな原因が見つからない場合
原発性骨髄疾患が疑われるときは,骨髄穿刺の前もしくは同時に検査を実施して,猫ヘモプラズマ症を
除外する必要があります.
・血液ドナー猫
血液を提供する猫はすべて,レシピエントの感染を予防するために,スクリーニングをする必要があり
ます.
検査の限界
どの PCR 手法でも,新しい分離株や新興分離株は検出されない可能性があり,結果が偽陰性になること
があります.健康な猫が FHM に感染する可能性があるため,PCR 解析の対象は臨床徴候を伴う貧血が
認められる猫と,血液ドナー猫に制限する必要があります.3 種類の FHM の病原性は異なります.M.
haemofelis は最も病原性が高く,免疫が保たれている猫でも重度の溶血性貧血を引き起こします.これ
に対して,Candidatu M. haemominutum は,免疫が保たれている猫では貧血を引き起こすことはない
と考えられています .病気の猫では貧血の一因になると 考えられますが,FeLV・FIV・Cytauxzoon
felis・Ehrlichia などの感染や併発疾患(腎疾患,新生 物など)
,凝固不全といった他の貧血の原因の可
能性を検討する必要があるでしょう.最近同定 された FHM である Candidatus M. turicensis の病原性
は中等度であると考えられています.
参考文献
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以上
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