Comments
Transcript
Page 1 Page 2 Page 3 ている。 最近まで離国における医薬品の大部分
明 治 大 学 農 学 部 研 究報 告 第128号(2001)21∼38 研究資料 クマザサの体 機 能正 常化作 用 に関す る実験 的研 究 行動 に対 す る影響 お よび制癌効果 を例 に 長 澤 弘 2001年7月5日 受理 ExperimentalStudyontheNormalizationEffectsofLeaf ExtractofBambooGrass(sαs6zsθ クzαη6ηsゑs1∼ θぬ6」6γ)with SpecialReferencetoItsInfluenceonBehaviouran(1 MammaryTumourigenesis. HiroshiNAGASAwA Summary' Mentalandphysicalimbalancesaresometimesreflectedbyabnormalbehaviourandcausethe diseases,especiallythosewithlonglatencylikecancers.Thus,adjustmentoftheseimbalances orapproachofhypo-orhyper-functiontonormallevelsisamostpotentmethodforprevention ofthesedisorders.Inthispaper,theresultsobtainedinthislaboratoryontheeffectsofSasa Health⑯,amedicinalpreparationfrombamboograssleafextract(S),onbehaviourand malnmarytumourigenesisinmicearebrieflyreviewed.Spontaneousmotoractivitydeclinedby gonadectornywaselevatedbyS.Bycontrast,thestimulationofactivitybyrestrictedfeeding wassignificantlydecreasedbyS.SalsosupPressedthedevelopmentandgrowthofmammary tumours.Associatedwiththese,Smodulatedpユasrnaandurinecomponentlevelspotentiated thymicimmunefunctionandsuperoxidedismutaseactivityanddecreasedplasmaprolactinlevel. AUfindingsrevealedthatScannormalizeorganismsthroughitsmodulationofgeneralmetabolismandstimulationofimmunefunction,throughwhichitmodifiesthebehaviourandprevents mammarytumourigenesis.Basedonbodyweightchangeanyfoodandwaterintakesaswellas externalappearance,fewdeleteriousside-effectsofSwasconfirmed.SasaHealth⑧isconcludedtobeamostpotentandsafemedicineforpreventionandtherapyofmentalandphysical disordersand,thus,forthemaintenanceofhealth,throughitsnormalizationeffects. は クマ ザ サ(図1)は じ め に 生命 力 の極 めて 強 い植 物 で あ る。 その 葉 は竹 葉 と して 「神 農 本 草経 」 に収 録 され て以 来,「傷 寒 論 」,「金 置概 要 」,そ の他 古典 医書 の 中 の処 方 に も見 られ る生 薬 で あ る。民 間 にお い て も古 くか ら火傷,犬 な どに よ る咬傷,吐 血,下 血,尿 渋 滞 な どの治 療 に用 い られ て きた (2)。 近 年,こ の クマ ザ サ の有 効 成 分 の 効 率 的 な抽 出法 が開 発 され,そ の 薬 効 に関 して も多 くの 一21一 明治大学農 学部研究報告 第128号(2001) 報 告 が み られ る。 す なわ ち,ク マ ザ サ の熱 水 抽 出液 に お け る抗 炎 症 作 用,血 圧 降 下 作 用,利 尿 作 用,抗 潰 瘍 作 用(3,4)の 作 用(6),抗 ほか,ア ル カ リ加 水 分 解 抽 出 液 にお け る抗 疲 労 作 用(5),食 腫 瘍作 用(7)が 報 告 され て い る。 また多 くの 研 究 者 に よっ て ク マザ サ抽 出画 分 に お け る抗 腫 瘍 性 が 認 め られ て い る(8,9)。 さ らに ク マ ザサ の ア ル カ リ加 水 分 解 液 で 鉄 ク ロロ フ ィ リ ンーNaを 主成 分 とす る画 分(「サ サ ヘ ル ス⑪ 」)につ い て大 泉 らは抗 炎 症 作 用(10),細 化 作 用(11),網 図1.ク 内系 機 能 賦 活 作 用(12),抗 マ ザ サ(Sosαsθ 20∼25cm,幅4∼5cm,先 [A]が,秋 ス トレ ス作 用(12),胃 ηαη6ηs公s1∼ θゐ4θ7)(A,B)(大 桿 は 高 さ1∼2m,直 径5∼8mmで 端 は や や 尖 り,上 さ れ て お り,葉 海 道,本 粘膜 保護 作 用(12)を 和 生 物 研 究 所 原 図),お 胞膜安定 報告 し よ び 主 要 産 地(C)(1) 基 部 で ま ば ら に 分 枝 す る。 葉 身 は 披 針 状 で 長 楕 円 形,長 面 は 無 毛,下 に な る と縁 辺 が 枯 れ て 白 くな る[B]。 サ ハ リ ン を北 限 と し て,北 欲増進 州,四 国,九 こ れ を歌 舞 伎 の く ま ど り に 見 立 て て ク マ ザ サ と い う 。 州 に 分 布 す る[C]。 は 料 理 や 菓 子 の 装 飾 品 と し て も用 い ら れ て い る。 一22一 さは 面 に は軟 毛 が 密 生 す る。新 葉 は緑色 で あ る 生 薬 と し て の 他,鑑 賞 用 に も栽 培 て い る。 最近 まで先 進 国 に お け る医 薬 品 の大 部 分 はい わ ゆ る化 学 的 に合 成 され た もの で あ った 。 それ ら の 人類 の健 康 に対 す る貢 献 につ い て は今 更 述 べ る まで もな いが,そ の 一 方,こ れ ら化 学 合 成 薬品 の 効 力 の 限界 とそ の副 作 用 が 深 刻 な 問題 とな って い る。 さ らに多 くの疾 患 は治療 よ り も予 防 の重 要 性 が 指 摘 され て い るが,こ の た め の化 学 合 成薬 品類 の常 用 は実 際 的 で ない。 これ らの 理 由 か ら, 生 薬 類 の効 用 が再 認 識 さ れ,臨 床 的 に 広 く用 い られ て い るほ か,健 康(機 能)食 品 や飲 料 に も用 い られ て い る。そ の期 待 され る効 用 の一 つ に生体 機 能 の正 常 化 作 用 の あ る こ と はい うまで も ない。 しか し これ ら生 薬 類 あ るい は天 然生 理 活性 物 質 は もっ ぱ ら 中国4千 れ,生 薬 類 の作 用機 構,お 年 の 経 験 に基 づ い て 用 い ら よび それ らを構 成 分 とす る漢 方 薬 の 処分 の理 論 的 根 拠 な ど はほ とん ど 不 明 で あ り,い わ ん や 一般 の 消費 者 が 自分 の用 い て い る生 薬 類 に対 して十 分 な知 識 を もっ て い な い こ とは化 学 合 成 薬 品 に対 す る と同程 度 か あ るい は それ 以 上 で あ る。 これ らの観 点 か ら,我 々 は生薬 類 の作 用 機構 を解 明 す るた め に実 験 動 物(マ ウ ス)を 用 い て広 範 な 基 礎研 究 を行 っ て い るが,本 稿 で は,ク マ ザ サ の体 機 能 正 常 化 作 用 につ い て,そ の行 動 に対 す る影 響,お よび乳 癌 の 予 防 ・治療 効 果 を例 に筆 者 の研 究 室 に お け る成 果 を概 説 す る。 な お 実験 試料 の ク マザ サ として はク マ ザサ 抽 出液 製 剤 の 「サ サ ヘ ル ス⑧ 」(大 和 生 物 研 究 所)を 用 いた 。 また 実 験 動物 と して用 い られ たSHNお よびSLNマ 近 交 系 と して 維 持 され て きた もの を,ま たICRは ウ ス(13-15)は 筆 者 に よ っ て確立 され, 日本 ク レ ア よ り購 入 し,1週 間 以 上,環 境 に慣 ら した もの を使 用 した。 実験 期 間 中,マ ウス は床 敷 を敷 い た プ ラス チ ック あ る いは ア ル ミニ ウム 製 ケ ー ジ[18(W)×28(L)×13(H)cm]に4-5匹 ず つ 収容 し,飼 料 と して は市販 の 固形 飼 料 と水 道 水 を 自 由 に与 え,14時 間 照 明(5:00∼19:00),室 温(22℃),湿 度(55-70%)に 調 節 され た無 窓 動 物 室 で 飼 育 管 理 した。 1.ク マ ザ サ の 行 動 に 対 す る影 響 生 薬 の効 用 は図2に 示 す よ うで,化 学 合 成 薬 品 の薬 効 が局 所 的,治 療 的(対 症 療 法 的)で あ る の に対 レて 生薬 の そ れ は全 身 的,予 防 的 で あ る。 言 い換 えれ ば生 薬 の作 用 は生体(細 胞)の 発育, あ る い は機 能(は た ら き)に 対 す る正 常 化(normalization)作 用 で あ っ て,正 常 な状 態 で は影響 は ほ とん ど現 れ な い か,現 れ て もそれ ほ ど顕 著 で な いが,異 常(体 細 胞 の増 殖,機 能 の昂 進 も し くは減 退)な 条 件 下 で は生 体 を正 常 に戻 す ホ メ オ ス タ シ ス作 用 で あ る。 現 代 社 会 の よ う に,情 報 と騒 音 に溢 れ,自 然 は情 け容 赦 な く破 壊 され て人 間 が 自 らの首 を絞 め て い る よ うな環 境 下 で は,人 々 は,食 料 を は じめ物 質 的 に は いか に満 ち足 りて い て も精 神 的 に は きわ め て貧 し く,か つ 情 緒 不安 定 な状 況 にお か れ て い る。 殺 人,虐 待,暴 力 行 為 な ど極 端 な場 合 一23一 明 治 大 学 農 学 部 研 究報 告 第128号(2001) を除 い て も,い わ ゆ る多 種 多様 な ス トレス に よ って,意 識 す る と しな い に か かわ らず,人 々 は精 神 的 に も生 理 的 に も追 い ま くられ,追 い詰 め ら乳 た状 況 に あ る とい っ て も過 言 で はな い。 一 方 ,人 間 に おい て も動 物 に お い て も,行 動 は神 経,内 分 泌,免 疫 な ど と相 互 に 緊密 に関 係 し, しば しば情 緒 的(精 神 的),生 理 的(肉 体 的)状 況 を よ く反 映 す る(16,17)。 この よ うな意 味 合 い か ら,精 神 的/生 理 的面 の正 常 化 に対 す る クマザ サ の効 用 を検 討 す る一 環 として,ス トレ ス要 因 として 内 分 泌 的,あ る い は栄 養 的 変 化 を受 けた マ ウス の行 動 に対 す る クマ ザ サ の影 響 を検 討 し た。 なお 試料 と して の クマ ザ サ は 「サ サ ヘ ル ス⑪ 」 を水 道水 で希 釈(鉄 ク ロ ロ フ ィ リンーNa濃 度 で 0.044%あ る い は0.088%)し た もの を用 いた 。 また行 動 量 の測 定 は 自発 行 動量 測 定 解 析 シ ステ ム(SUPER-MEX:室 生 化学合成薬品 薬 (全 身 的:予 町 機 械,東 京)に よっ た。 防 的) ● (局所 的:対 症 療 法 ・治 療 的) 轟" Ψー ー 異常(機 能 昂進) ↓ 正常化 異 常(機 能減 退) 図2.生 ↑ 薬(天 然生 理 活性 物 質)の 作 用機 構 生薬 は体 機 能 を調節,正 常 化 させ,全 身 の バ ラ ンス を保 つ こ とに よって 健 康 を 回復,維 持 させ る作 用 が 大 きい。 この働 きゆ え に,化 学 合 成 薬 品 の効 用 が局 所 的 ,対 症 療 法 的 で あ る の に対 して,生 薬 の 効 用 は全身 的,予 防 的 で あ る。 一24一 この装 置 に よ っ てマ ウス の体 温(熱 エ ネ ル ギ ー)か 二 次元,お 1-1.性 らその個 体 の位 置 が 感 知 され,移 動 に よ って よ び三 次 元 の全 行 動 量 が 一 時 間 ご とに集 計,記 録 され る(18)。 機 能 減退 に よ る行 動 量 の 変化 とク マザ サ の影 響 結 果 は図3に 示 す よ うで あ る。す なわ ち2ケ 月齢 のICR雌 マ ウス で は両 側卵 巣 を除 去 一週 間以 降 自発 行 動 量 は著 し く低 下 した が,ク マ ザサ を1ケ 月 間投 与 した とこ ろ,卵 巣 除 去 群 の み で な く, 正 常 対 照 群 で も明期 にお け る行 動 量 の上 昇 が 見 られ,と くに午 前5時 か ら8時 に か け ての 上 昇 が 顕 著 で あ った 。 明期 にお け る行 動:量の 上 昇 率 は卵 巣 除去 群 で71.5%,対 (19)。一 方,2ケ 照 群 で68.5%で あ った 月齢 の 雄 で は精 巣 除 去 の 行動 量 に対 す る影 響 は1ケ 月 後 に若 干 現 れ ・また クマ ザ サ の投 与 に よ って正 常 対 照 群 も去 勢群 もそ の行 動 量 は著 し く低 下 した(減 少率 は それ ぞれ 投与 前 の56.5%お よび47.9%)(19)。 性 腺 除 去1週 (Counts,X103) 8 間後 4 6 3 4 2 戯1 2 0 性 腺 除 去1ヶ 自8 月後 4 発6 3 行4 2 動2 1 凶L。 量o ㎞ ク マ ザ サ 投 与1ヶ 月 後 8 4 6 3 4 2 0 5194519451945194(時 』 対 照 群(5)卵 2 1 。 〔 繍[』 巣 除 去 群(5)対 照 群(5)去 雌 図3.雌 雄ICRマ 期鋤 刻) 勢 群(6) 雄 ウ スの 自発 行 動:量に対 す る性 腺 除 去 とクマ ザ サ の影 響(平 均値 ±標 準 誤差)(19)。 2ケ 月 齢 で 性 腺 を 外 科 的 に 除 去 し,そ た 。 動 物 室 内:□ 明 期(5:00∼19:00),■ の1ケ 月 後 か ら ク マ ザ サ を 飲 水 と し て1ケ 暗 期(19:00∼5:00)。()例 一25一 数。 月 間 自由 摂 取 させ 明治大学農 学部研究報告 第128号(2001) Counts(×103) 12 SHN 10 8 6 4 2 昇'・. 行 動12 量 10 8 6 4 2 0 正常対照群 精巣除去群 ① 精 巣 除去30日 後 図4.SHNお よ びSLN雄 4-6ケ 正常対照群 ①+ク 精巣除去群 マ ザ サ20日 間投 与 マ ウ ス の 自 発 行 動 量 に 対 す る精 巣 除 去 と ク マ ザ サ の 影 響(平 均 値 ±標 準 誤 差)(20)。 月 齢 に 精 巣 を 除 去 し,そ の30日 数 。8-c異 な っ た も の 同 士 はP<0.05/0.01で 後 よ り ク マ ザ サ を20日 有 意。 一26一 間 飲 水 と し て 自 由 摂 取 さ せ た 。†例 ㌧ この よ うに,も っ とも一 般 的 な モ デル マ ウス で あ るICRに お い て性腺 除 去,お よび クマ ザサ の 影 響 は雄 で は雌 ほ ど顕著 で な か った 。 多 くの現 象(反 応)に お い て性 差 の み られ る こ とは珍 しく な い が,行 動 に対 す る精 巣 除 去 一 クマ ザ サ の影 響 を よ り明 らか に す るた め,他 の2っ の 近 交系 (SHN,SLN)(13-15)の 雄 に お いて この 点 を検 討 した(20)。 図4に 示 す よ うにSHNで は自 発 行 動 量 は精 巣 除 去 に よっ て無 処 置 対 照 群 に較 べ て有 意 に低 下 した が,ク マ ザ サ を20日 間 投与 す る こ とに よ って有 意 に上 昇 した 。 正常 対 照 群 で もクマ ザ サ に よっ て行 動量 は若 干 上 昇 した 。一 方,SLNで は精 巣 除 去 の 行 動量 に対 す る影 響 は認 め られ ず,従 っ て その 後 の ク マ ザサ の影 響 は無 処 置 対 照 群 で若 干認 め られた の み で あ っ た(20)。 な お いず れ の 実験 に お いて も,対 照群,性 腺 除 去群 と も クマ ザサ の 投与 に よっ て体 重,摂 餌 ・ 摂 水 量 な どに明 らか な違 い は認 め られ な か っ た。 1-2.摂 餌制 限 に よ る行 動 量 の変 化 とク マザ サ の影 響 「腹八 分 は健 康 の元 」 と云 わ れ る よ うに,あ る程 度 の食 事 制 限 は健 康 に よ い。 事 実,実 験 動物 に お い て も擬餌 制 限 は加 齢 に伴 う免 疫 低 下 を抑 制 し(21),種 々 の疾 患 を予防 し,寿 命 を延 長 させ る の に有効 で あ る こ とが 知 られ て い る(22)。 しか し同 時 に,摂 餌 制 限 は しば しば生 理 異 常,代 謝 異 常 を もた ら し,そ れが 行 動 異 常 と して現 れ る場 合 が あ る(23,24)。 投 与 の行 動 に対 す る影 響 を検 討 す る た め,1-1の SHN雄 擬 餌 制 限,お よ び クマ ザサ 実 験 に お い て処 置 に 対 す る反 応 の高 か った マ ウ ス を用 い て2ケ 月 齢 よ り飼料 自由給 与 の 自 由摂 餌 群(対 照群)と,摂 餌 量 を対 照群 の 70%に 制 限 され た制 限摂 餌 群 の2群 に分 け;そ れ ぞれ の一 部 に クマ ザ サ を飲 水 と して 投与 した。 結 果 は図5に 示 す通 りで あ る。 そ れ ぞ れ の処 置3週 間 に お い て は 自由摂 餌 の対 照 群(自)で クマ ザ サ の併 用(自+S)に よ って行 動 量 は若 干 増加 した。 一 方,摂 餌 制 限群(制)で 対 照 群 に較 べ て2倍 以 上 に上 昇 した が,そ の 上 昇 は クマ ザ サ との併 用(制+S)に 下 した(25)。 この結 果 は,先 の1-1の は は行 動 量 は よ って有 意 に低 実 験 の 正 常雌 に対 す る場 合 と同様 に,正 常 な 条件 下 で は クマ ザ サ は行 動 量 に若 干 の 影響 を与 え る に過 ぎ なか っ たが,異 常 に上 昇 した 行 動 量 を顕著 に低 下 させ て正 常 に近 づ け る作 用 の あ る こ とを示 す。 同様 の傾 向 は7週 間継 続 した 場 合 に も見 られ た (図5)(25)。 この こ とはそ の長 期 投 与 に よ って も効 果 が 持 続 す る とい うクマ ザ サ の 大 きな特 徴 を裏 づ け る もの で あ る。 以 上 の研 究 で得 られ た性 腺 除去 お よ び摂 餌制 限 と行 動 量 の関 係 の結 果 を要 約 す る と表1の に な る。す なわ ち性 腺 除去 に よ って低 下 したICR雌,SHN雄 て 上 昇 した.SHN雄 よう の行 動 量,お よび 摂 餌制 限 に よ っ の行 動 量 はク マ ザ サ に よ っ て それ ぞれ 上 昇,あ るい は低 下 した 。 これ はクマ ザ サ の 正常 化 作 用 の 顕 著 な 現 れ で あ る。 本 実験 の結 果,性 腺 除 去 に対 す る クマ ザ サ の 影響 に性 あ る い はマ ウ ス の系 統 に よ る違 い の存在 す る こ とは,ク マ ザ サ に対 す る感 受 性 の性 差,あ る い はマ ウス の 系統 差 に よ る と も考 え られ るが, 一27一 明治大学農 学部研究報告 第128号(2001) Counts(×104) 5 4 be Cba C 3 a a aa 2 自 発行動量 b 1 0 自 白+S制 制+S自 ク マザ サ3週 間 投 与 白+S制 制+S クマ ザ サ7週 間 投 与 図5.SHN雄 マ ウ スの 自発 行 動 量:に対 す る擬 餌 制 限 とクマ ザ サ の影 響(平 均 値 ±標準 誤 差)(25)。 2ケ 月 齢 よ り自 由摂 餌 群(自)と その70%に 飼料 を制 限 され た摂 餌 制 限群(制)を 設 け,そ れ ぞれ の 群 の一 部 に クマ ザ サ(S)を 投与 した(そ れ ぞ れ 自+S,制+S)。 例 数 は3週 間投 与 群 は各12,7週 間投 与 群 は各6。a-c異 なっ た もの 同 士 はP〈0.05/0.01で 有意。 表1.性 腺 除 去 お よび摂 餌 制 限 とクマ ザ サ の行 動 量 に対 す る影 響 雌 対照群 卵巣除去群 対照群 精巣除去群 ICRt(↓)a↑ 』雄 ← ① ( → ◎ ( ⇒ ⇒ m S 勤 ( 囲 S ■▼ ⇒ 聡 対照群 擬餌制限群 SHN⇒(↑)1 1「上昇,J」 、 低下,⇒ a性腺 除 去 影響 な し ,あ る い は擬餌 制 限 の影 響(対 照 群 に対 して)。 一28一 そ れ よ りもむ し ろク マ ザサ の正 常化 作 用 を裏 づ け る もの と理 解 す る方 が 妥 当 で あ る。 現 にSLN 雄 に お け る よ う に クマ ザ サ の 影 響 が 認 め られ て い な い場 合 に は性 腺 除 去 の影 響 も見 られ て い な い。 同様 に9∼12ヶ 月齢 のICR雌 雄 マ ウ スの 行 動 や血 漿 成 分 は性 腺 除 去 あ る い は ク マ ザ サ投 与 の いず れ に もほ とん ど影 響 され な か った(19)。 す なわ ち これ らの場 合,行 動 を含 む生 体 の機 能が 性 腺 除 去 の影 響 を受 けず 正 常 の ま まで あ るた め,ク マ ザ サ が正 常 化作 用 を発 揮 す る必 要 が な いの で あ る。 また正 常 個 体 で もICR雌 で は クマ ザ サ によ っ て行 動 量 の 上 昇 が,反 対 にICR雄 降 が 認 め られ たが,こ れ はホ ル モ ンの影 響 下 て程 度 の差 は あれ,常 で は下 に受 け て い たス トレス が,ク マ ザ サ に よっ て解 除,正 常化 され た 結 果 と理 解 す る の が正 しい 。SHNお よ びSLNの 正常雄で は この 点 に 関 して ホル モ ンの影 響 が 少 なか っ たた め クマ ザ サ の影響 も軽微 で あ った と考 え られ る。 2.ク マ ザ サ の 乳 癌 の発 生,増 殖 抑制 効 果 よ く知 られ て い る よ うに わが 国 に お け る最近 の癌 の発 生 状 況 は欧米 化 の傾 向 を示 して い るが, 乳 癌 も例 外 で な く,そ の発 生 率 は年 々増 加 の傾 向 に あ る。 最 近,.種 々 の ス トレ スが 免疫 機 能 を低 下 させ る こ とに よ って発 癌 を促 進 させ る こ と も報 告 され て い る(26)。 癌 の よ う に発 症 す る まで に 長期 間 を要 す る疾 患 で は生 体 の抵 抗 力 が 大 きな要 因 とな る。 言 い換 え れ ばた とえ細 胞 が癌 化 して も生 体 の正 常 化 機 能 が 旺盛 な ら癌細 胞 の増 殖 を抑 え続 けて,と くに問 題 とな らず,健 康 な生 活 を 続 け る こ とが で き る』 したが っ て あ る物 質 の癌 の発 生 や 増 殖 を抑 制 させ る効 果 は,そ の物 質 が ど の くらい体 機 能 を正常 に維 持 す る働 き を もっ て い るか の 重 要 な指 標 とな る。 い う まで もな く人 間 の癌 は"自 然 発 生"で あ る か ら,そ の モ デ ル と しての 実 験 動物 の癌 もや は り自然発 生 の もの でな けれ ば な らな い。 この 意 味 か ら筆 者 は,乳 癌 に対 す る生 薬 類 の 予 防 ・治療 効 果 を,筆 者 自身 に よっ て作 出 され た 近 交 系 のSHNマ ウス(13-15)を 月齢 か ら自然 に乳癌 を発 生 し始 め115-17ケ 全 て が 悪 性 のadenocarcinomaで 用 い て 行 って い る。 この 系 の マ ウ ス は4-6ケ 月齢 で ほ ぼ100%乳 癌 を発生 す る。発 生 した乳 癌 の あ る。本 研 究 で も このSHNマ ウス を用 い て 乳 癌 の発 生 抑制 (予 防)お よ び増 殖 抑 制(治 療)に 対 す るク マザ サ の 影 響 を検 討 した 。 2-1.ク マ ザサ に よ る乳 癌 の発 生 抑 制 結 果 を図6に 示 す。 対 照 群,実 験 群 と も実 験 開 始4ケ 月 日か ら乳 癌 が発 生 し は じめ,対 照 群 の 発 生 率 は その 後直 線 的 に増 加 した が,実 験 群 で は4,5ケ 月 日で の発 生 は著 し く抑 制 され た 。 し か し6ケ 月 目 には殆 ど対 照 群 の レベ ル まで上 昇 した 。 そ の た め ク マザ サ の 濃度 を2倍 に した とこ ろ,7,8ケ 月 まで の発 生 はほ ぼ完 全 に抑 え られ た。 しか し10ケ 月 以 降 は対 照 群 と同様 に乳 癌 の 発 生 は上 昇 した(27)。 これ は加 齢 と と もに急 上 昇 す る乳 癌 の発 生 ポ テ ン シ ャル が ク マ ザサ の 発生 抑 制 効 果 を超 えた結 果 と考 え られ るqこ の こ とは今 回 と同 じ実 験 条 件 で他 の多 くの生 薬 に も見 ら 一29一 明治大学農学部 研究報告 第128号(2001) れ る現 象 で あ る。 この結 果 か ら,人 に よ っ て は,「ク マザ サ は若 い 時期 に は あ る程 度 まで乳 癌 の発 生 を抑 え るが や が て効 か な くな っ て しま うの で,高 い乳 癌 予 防効 果 が あ る とは云 えな い の で は な い か」 とい う考 え もで るか も知 れ な いが,こ れ は正 し くな い。 この系 の マ ウス の よ うに極 め て高 い(100%)乳 癌 の発 生 率 を持 っ た例 で もこの くらい効 くの で あ るか ら,こ の マ ウス とは比 較 に な らな い くらい乳 癌 発 生率 の低 い人 間(米 国人 で0.1∼0.2%,日 本人 で0.05%)で は十 分 有 効 と考 え る の が動 物 実 験 の 結果 か ら導 か れ る正 し い結論 で あ る。 なお,こ の こ とは乳 癌 の み で な く,他 の癌 に対 して も一 般 的 にい える こ とで あ る。 この条 件 に お い て実験 開始 後7ケ 月 まで の 摂餌 ・摂 水 量 を測 定 した とこ ろ,摂 餌 量 に は対 照 群 と実 験 群 の 間 に違 いが な く,摂 水 量 は実 験 群 の 方が やや 多 く推 移 した。 また 体 重 は両 群 と も漸 増 した が,群 の間 に違 い は見 られ な か っ た。 これ らの 結 果 か ら本 実験 は きわ めて健 全 な状 態 で行 わ れ た こ とが確 認 され た(27)。 一一 0.044% 80 ■:実 .'0.088% 「一一一一一 験 群(25) 60 40 累 積 乳 癌 発 生 率 % ( 20 0 456789101112 投 与 期 間(月) 図6.ク マザ サ に よる乳 癌 の発 生 抑 制(27)。 SHN雌 マ ウ ス に2-3ケ 月齢 か らク マ ザサ 水道 水 溶 液(鉄 ク ロ ロ フ ィ リ ンーNa濃 度 で0.044%,7ケ 月 目か ら0.088%に 週2回,触 増 加)を 飲水 と・ して 自由 摂取 させ た(対 照群 に は水 道 水 を与 えた)。 乳 癌 の発 生 は毎 診 に よっ て調 べた(習 熟 す る と3-5mmの 大 き さで十 秀 確 認 で き る。 マ ウ ス の乳 腺 は5対 (10ケ)あ るので,体 の両 側 の ほ とん ど全 て の とこ ろが ら乳 癌 の 発生 す る可 能性 が あ る。*乳癌 の 発 生率 と発 生 月 齢 を同 時 に 考 慮 した2因 子 分 散 分 析 に よっ て ク マ ザ サ投 与9ケ 月 まで実 験 群 と対 照 群 の 間 に 発 癌 ポ テ ン シャル に 統計 的 に有 意差 が認 め られ た(P〈0.05)。 一30一 2-2.ク マザ サ に よ る乳 癌 の増 殖 抑 制 乳 癌 の 増 殖 に対 す る ク マ ザ サの 影響 は 図7に 示 す よ うで,乳 癌 発 生 前 か らク マ ザ サ を飲 ませ て ・い た場 合(実 験1)で も ,乳 癌 発 生後 に投 与 され た 場 合(実 験2)で 制 さ れた 。 しか し実験1で も乳癌 の増 殖 は明 ら かに抑 は始 め はあ ま り効 か ず,後 半 で顕 著 に抑 制 した の に対 し,実 験2で 始 め の方 が 抑制 効 果 が大 きか った(27,28)。 は この原 因 と して ク マ ザサ の 投与 期 間 に よ る動 物体 の 免 疫 作 用 の違 いが考 え られ る が その詳 細 は現 在 の とこ ろ明 らか で な い。 いず れ に せ よ,転 移 す る 前 に マ ウ ス を殺 して し ま う く らい増 殖 の盛 ん な癌(29)を この よ うに抑 え る クマ ザ サ の効 果 は特 (%》 乳 癌 の 大 き さ の 変 化 率 % ( 100 対照群 実 験1(10カ 50 * 月 投 与) ** ** 実 験2(12'日 間 投 与) ** ** 0 036912 測 定 期 間(日) 図7.ク マ ザ サ に よ る乳 癌 の増 殖 抑 制(平 均 値 ±標 準誤 差)(28)。 乳 癌 の 大 きさ(長 径 と短径 の幾 何 平 均)が5-7mmに 達 した 日(0日)を 基 準 と して各 測 定 日に お け る太 き'さの変 化 率 を増 殖 の指 標 と した。実 験 は未発 癌 時 よ り10ケ 月間 クマ ザ サ を投 与 した 実 験1と, 増 殖 測 定 開始 日に投 与 を開始 した 実験2が あ る。 一31一 明治大学農学 部研究報告 第128号(2001) 筆 に値 す る。 遠 赤 外 線(FIR)は 示 す よ うに,FIR単 FIRの 照 射 時 期 に よ って は 乳癌 の増 殖 を顕 著 に抑 制 す る(30)。 図8の 実 験 群IIIに 独 で 有意 な乳 癌 増 殖 抑 制効 果の あ る場 合 には ク マ ザサ を併 用 して も(III+S), 効 果 を さ らに促進 させ な い(31)。 しか し実 験 群1,IIに 見 られ るよ うにFIR単 独照射が oo 2 50 1 乳癌 の 大 き さ の変 化 率 (16 日間 )% ( * * oo 1 ** 50 15a 0 15151718 ll+SllII+Sllllll+S 対照群 実 図8.ク マ ザ サ と遠 赤 外 線(FIR)併 実 験 群1,II,III:そ 用 に よ る 乳 癌 の 増 殖 抑 制(平 れ ぞ れ1-5ケ 投 与(乳 癌 の 大 き さ が5-7mmに 月 齢,5ケ 月 齢 以 降,乳 な っ た 日 よ り16日 験 群 均 値 ± 標 準 誤 差)(31)。 間)。o例 癌 発 生 後 にFIRを 照 射 。S:ク 数 。 零対 照 群 に 対 し てP〈0.05で マザサ 有意 。 (%)0102030405060708090100 対照群(15)■ ■ ■40.0■ ■ ■==26 .7==麗 露 露 盤 実 験群 1(15)20 .066.713.3 1十S(15)66.726 .76.6 11(17)47.135.317,6 11十S(18)61.133.35.6 1[正(20)65 .030 皿 十S(20)35 図9.ク .065.00.0 マ ザ サ と遠 赤 外 線(FIR)併 癌 の 増 殖 率 の 違 い(31) .05.0 用 に よ る 乳 癌 の 増 殖 抑 制=各 .。乳 癌 増 殖 率:■ 群(詳 細 は 図8参 〈100%,□100-200%,駆>200%。()例 一32一 照)に お け る16日 数。 間 の乳 あ ま り有 効 で な い場 合 に は,ク マ ザ サの併 用(1+S,II+S)は きわ め て有 効 で 乳 癌 の増 殖 は有 意 に抑 制 され た(32)。 同様 の事 実 が 図9か ら も明 らかで あ る。 す な わ ち実 験 群1,IIで サ の併 用(1+S,II+S)に 下 の増 殖 率 を示 した乳 癌 は顕 著 に上 昇 し,逆 に200% よ って100%以 は クマ ザ 以 上 の 増 殖 率 を示 した乳 癌 の 割 合 は下 降 した が,実 験 群IIIでは ク マ ザ サ 投 与 の 影 響 は見 られ な か った(31)。 これ もク マ ザ サの 正 常 化作 用 の ひ とつ の現 れ で あ る。 3.ク マ ザ サ の 生 体 に対 す る 影 響 マ ウ ス の 行 動 お よ び 制 癌 に 関 す る これ ら一 連 の 実 験 か ら ク マ ザ サ を飲 水 と し て 投 与 す る こ と に よ っ て 体 の 機 能 を 正 常 化 さ せ る働 き の あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 上 に も述 べ た(図2)よ 生 薬 の 作 用 は 全 身 的 で,そ の 標 的 箇 所 は 必 ず し も 明 らか で な い の で,ク う に, マ ザ サ が どの よ う な 機 構 で 正 常 化 作 用 を 示 す か を 知 る た め に い くつ か の 項 目 を 検 討 した 。 そ の 結 果, [1]体 重,摂 餌 ・摂 水 量 は,実 SHN,SLN,ICRの 験 が 正 常 に行 わ れ て い る か ど う か の 最 も重 要 な 指 標 で あ る 。 雌 雄 の い ず れ に お い て も,こ れ ら の パ ラ メ ニ タ に対 す る ク マ ザ サ に よ る悪 い 影 響 は認 め ら れ な か っ た(19,20,27,28,31-34)。 [2]体 内 の 物 質 代 謝 を 順 調 に す る こ と は,健 こ の 観 点 か ら諸 成 分 の 血 液,お 患 予 防 の た め の重 要 な要 因 で あ る。 よ び尿 中 レベ ル を検 討 し た 。血 液 に 関 し て はICR,SHN,SLN雄 に お け る精 巣 除 去(19,20),ICR雌 ウ ス の 血 漿 中 の13成 康 維 持,疾 に お け る 卵 巣 除 去(19),SHNに お け る 摂 餌 制 限(25)マ 分(albumin,alkalinephosphatase,alanineaminotransferase(ALT), amylase,asparateaminotransferase(AST),globulin,totalbilirubin,bloodureanitrogen,calcium,cholesterol,creatinine,glucose,totalprotein)を ム(ABAXISEA:室 町 機 械,東 京)に よ っZ測 簡 易血 液 生 化 学 分 析 シス テ 定 し た 。 当 然 の こ とな が ら,各 ル の 変 動 し や す い こ と も あ っ て,多 く の 成 分 で 実 験 ご と に 必 ず し も一 定Q変 成 分 の 血 漿 レベ 化 を 示 さ な か っ た が, 総 体 的 にみ て この面 に お い て も クマ ザ サ の正 常 化作 用 が うかが わ れ た 。 1H-NMR(核 月,10ケ 磁 気 共 鳴 装 置)に よ っ てSHN雌 の 尿 成 分 を 測 定 し た と こ ろ,ク マ ザ サ 投 与2ケ 月 の い ず れ に お い て も実 験 群 で は対 照 群 に、 く ら べ て ほ とん どの 成 分 で 高 い 値 を 示 した (図10)(27,33)。 ま たSHN雄 が 促 進 さ れ た(20)。 で ク マ ザ サ に よ っ てALT,AST,cholesterolの 尿 量 も ク マ ザ サ の 投 与 に よ っ て 増 加 す る こ と(27)を 尿 中へ の排 出 考 え あ わ せ る と,ク マ ザ サ に よ っ て 多 くの 成 分 の 排 泄 は促 進 さ れ る と結 論 さ れ た 。 本 実 験 に 用 い た 乳 癌 高 発 系 のSHN マ ウ ス は 一 般 の マ ウ ス に 比 べ て 尿 成 分 の レベ ル の 低 い と こ ろ が ら,ク マ ザ サ の乳 癌 予 防 効 果 の ひ と つ と して そ の 体 内 物 質 の 排 泄 促 進 作 用 が 考 え られ た 。 [3]ク 表2に マ ザ サ は 胸 腺 の 重 量 を著 し く増 加 さ せ た 。 またFlowCytometryに 示 す よ う に,実 験1(5ケ 月 齢)で は 未 成 熟 胸 腺 細 胞(CD4+CD8+)の 一33一 よ る測 定 の 結 果, 割 合 を 低 下 させ, 明治大学農学 部研究報告 成 熟 細 胞(CD4+CD8一,CD4-CDf+)の 癌 個 体)で はCD4+CD8+を 第128号(2001) 割 合 を増 加 させ た 。・ 一 方,実 増 加 さ せ,CD4+CD8一 験2(12-15ケ お よ びCD4℃D8+を 月 齢,担 低 下 さ せ,加 齢,あ る い は 発 癌 に よ っ て 変 化 し た 胸 腺 機 能 が ク マ ザ サ に よ っ て 正 常 化 さ れ る こ とが 示 さ れ た(33,34)。 [4]生 進,発 体 内 でATP生 成 時 や ウ イ ル ス の 侵 入 な ど に よ っ て 発 生 す る 活 性 酸 素 が,細 胞 の老 化 促 癌 な ど 有 害 な 作 用 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る。 生 体 内 で 発 生 す る 活 性 酸 素 の 一 つ で あ る superoxideanineを 分 解 す るsuperoxidedismutase(SOD)の 血 中 活 性 を測 定 し た と こz,ク マ ザ サ に よ っ て そ の 活 性 は 顕 著 に 促 進 さ れ た(27)。 [5]正 常 乳 腺 の 発 育 は ク マ ザ サ に よ っ て 若 干 促 進 さ れ た が,マ 表2.胸 ウス の 乳癌 の前 癌 症 状 で あ る 腺 細胞 表 面 抗 原 マ ー カ ー発 現 の割 合(平 均 値 ±標準 誤 差)(34) CD4』CD8+ 群CD4-CD8一(P re)CD4+CD8+(lmmature)・ ・瓢 器 ・ 鼎 誕錨 実 験1 対 照 群(5)1.6±0.285.0±2.810.5±2.23.0±0,6 実 験 群(5)2.4±0.479.5±2.213.7±1.64.4±0.6 実 験2 対 照 群(4)2.7±0.454.1‡2.432.2±2.]11.1±1.0 実 験 群(3)3.6±2.268.6±2,8**22.5±2.1'5.3±L9* 実 験1:ク マ ザ サ(0.044%鉄 ザ サ(0.044→0.088%)2ケ に対 し てP〈0,05,0.Olで ク ロ ロ フ ィ リ ン ーNa)3ケ 月 齢 一 乳 癌 発 生(12-1Eケ 有意。 ク マ ザ サ(O.044%)投 与2ヶ 月 後 ク マ ザ サ(0.044%⇒0.088%)投 5Hippurato 5 与 。 実 験2:ク マ 数 。*・**対 照 群 与10ヶ 月後 5 直一_ト Urea AlIantoln 月 間(2-5ケ 月 齢)投 月 齢)ま で 投 与 。():例 ・ 臼;ヒ 」 ** Creatlnlne Creatlne * Taurine ND Betalne * Citrate D N Oxo- ** Acetate D N 9lutarate ** しactate rr一 一 一 「一 一 一4一 一 一 一 〒一 一一「 「一一 一 一 一 一 一 ガ グ ー一 一一 一 一 一 一 〇1020303008500500010203080100120140 図10.尿 成 分 の 排 泄 に対 す る ク マ ザ サ の 影 響(平 均 値 ±標 準 誤 差)(27)。 □ 対 照 群,■ 実 験 群 。a例 数 。ND:測 定 レ ベ ル 以 下 。#.#%対 照 群 に対 し てP<0.05,0.01で 一34一 有意。 表3.ク マ ザサ の 生体 機 能 に対 す る影 響 .パ ラ メ [1]体 重,摂 餌 ・摂 水 量 [2]代 謝 関 係:血 液 成 分 量 尿 成 分 排 泄量 [3]細 胞免疫 [4]活 性 酸 素抑 制 作 用(SOD活 [5]正 常 乳 腺 の 発育 ー 果 正常化 正常化 ↑ 性)'↑ ⇒ 乳癌 の前 癌症 状:形 成 ⇒ 増殖 ↓ [6]内 HANの 効 ⇒ 形質 転 換 成 長 因子(TGFα)の ↑ タ 発 現:乳 腺 ⇒ 乳癌 ⇒ 分 泌 関 係:Estrogen,progesteroneの 分 泌'⇒ prolactinの 分 泌 ↓ 内分 泌 器 官重 量 ⇒ 増強(促 進)⇒ 変化 なし ↓ 抑制(低 下) 増 殖 は ク マ ザ サ に よ っ て 明 ら か に 抑 え ら れ た(27,33)。 酵 素 で あ るthymidylatesynthetaseの が,thymidinekinaseレ こ れ と並 行 し て1)NA合 成律速 乳 腺 細 胞 に お け る レ ベ ル に は ク マ ザ サ に よ っ て 上 昇 した ベ ル は有 意 に 抑 制 さ れ た(27,33)。 い くつ か の 癌 遺 伝 子 が 乳 腺 の 発 育 や 乳 癌 の 増 殖 に 関 与 し て い る こ とが 知 ら れ て い る 。 そ の 中 で も っ と も 代 表 的 なTGFα(形 質 転 換 成 長 因 子)の 乳 癌,あ る い は 乳 腺 に お け る発 現 に ク マ ザ サ 投 与 の 影 響 は 見 ら れ な か っ た(27,28)。 [6]い う ま で も な くホ ル モ ン は体 機 能 の 平 衡 維 持 の み な ら ず,乳 腺(癌)に と っ て 最 も重 要 な 要 因 で あ る 。 こ こ で は そ の 中 で も と くに 直 接 関 係 す る卵 巣 か ら のestrogen(E)とprogesterone(P),お よ び 脳 下 垂 体 前 葉 か ら のprolactin(PRL)に 情 周 期 の 型 か らEとPの 射 免 疫 法 で 測 定 し たPRLの 対 す る ク マ ザ サ の 影 響 を検 討 した 。 発 分 泌 パ タ ー シ に は ク マ ザ サ の 影 響 は な い と推 定 さ れ た(27,33)が,放 血 中 レ ベ ル は ク マ ザ サ を投 与 さ れ た 実 験 群 で は 明 ら か に 低 下 し て い た(27)。 以 上,体 機 能 に 対 す る ク マ ザ サ の 影 響 を要 約 す る と,表3の 常 化(normalization)作 用 は,そ の 代 謝,免 疫,内 れ た 結 果 と考 え られ る 。 一35一 分 泌,そ よ う に な り,ク マ ザ サ の体 機 能正 の 他生 体 の諸 々 の作 用調 節 の複 合 さ 明治大学 農学部研究 報告 お わ 第128号(2001) り に 現 代 は多 くの面 にお い て人 工 化 が著 しいが 医薬 品 の分 野 もそ の例 外 で な い。 一 方,当 然 の こ と と して,そ れ らの 欠点,反 省 点 も指 摘 され つ つ あ る。 化 学 合成 薬 品 の効 果 の 限 界 と重 篤 な副 作 用 な どは そ の一例 で,そ れ と と もに生 薬,漢 方 薬 をは じめ とす る,い わ ゆ る天 然物 の効 用 が再 認 識 され つ つ あ る こ とはは じめ に も述 べ た とこ ろで あ る。 しか し天 然 物,あ るい は 自然 物 とい っ て も そ の多 くは,化 学肥 料,農 薬 な どにた つぶ り漬 か って お り,さ らに は人 工培 地 に よる培 養 な どバ イオ テ ク ノ ロ ジー によ っ て生 産 され た"人 工 物"で あ る。 天 然 物 に比 べ て これ ら栽 培(培 養)物 の効 用 の 低 い の は朝 鮮 ニ ン ジ ン を は じめ 多 くの生 薬 類 で つ とに いわ れ て い る と ころ で もあ る。 そ の 原 因 として は現 代 の 土 壌 学 や 植物 栄養 学 で は明 らか に され て い ない 土壌 中 の(微 量)成 分 や微 妙 な 自然環 境 の関 与 な どが 考 え られ て い る。 いず れ にせ よ,ク マ ザ サ は完 全 な天 然 物 で あ り,自 然 の 恩 恵 の濃 縮 物 とい え る。本 稿 で述 べ た と ころが ら もクマ ザ サ(サ サ ヘ ル ス⑪)は 癌,そ の他 の疾 患 の治 療,予 防 の た め の み で な く,心 身 の健康 維 持 のた めに も有 益 と考 え る。 謝辞 貴 重 な クマ ザ サ 抽 出液(サ サヘ ル ス⑧)を 恵 与 され,研 究 に多 くの示 唆,御 助 言 を頂 いた 大 和 生 物 研 究 所 の 大泉 高 明社 長,お よ び久 保 田 泉氏 に厚 く御 礼 申 し上 げ る。 また天 然 物 の薬 効 に 関 して の情 報 収 集 に御 尽 力下 さ った本 学商 学 部 兼 任 講 師 の金 美 花 氏 に感 謝 す る。 本 原 稿 の 作 成 に は当研 究 室 の村 山 祐 士氏 に御 助 力 願 った。 謝 意 を表 す る。 1)鈴 木 貞 雄i:日 本 タ ケ 科 植 物 総 目録.学 2)赤 松 金 芳:和 漢 薬.医 3)柴 田 竹 美 和,坂 丸,山 歯 薬 出 版,東 本 満 夫,金 マ 笹 水 可 溶 分 画(Folin)の 4)柴 田 丸,久 保 恭 子,小 村 豊 幸,藤 井 彰,小 関 す る研 究 一.薬 6)久 保 山 昇,藤 野田 保山 昇,藤 京,PP649-650,1970 森 政 人,高 真:ク . 木 敬 次 郎,岡 部 進=ク 潰 瘍 作 用 .目 マ 笹 の 薬 理 学 的 研 究(第2報) マ 笹 の 薬 理 学 的 研 究(第1報) .ク 薬 理 詰71:481-490,1975. .ク マ 笹 可 溶 分 画(Folin)の 中枢 抑 薬 理 誌72:531-541,1976. 林 寿 美:臨 床 薬 理 に 関 す る研 究(第9報)一 熊 笹 エ キ ス(BLE)抗 疲労効果に 理 と 治 療12:5379-5383,1984. 井 彰,大 熊 一 雄,田 と治 療11:2065-207E,1983 7)久 献 京,P174,1978. 急 性 毒 性 な ら び に 抗 炎 症,抗 制 作 用 お よ び 毒 物 解 毒 作 用.日 5)田 文 習 研 究 社,東 井 村 豊 幸:熊 笹 葉 エ キ ス(BLE)の 食 欲 増 進 作 用 に 関 す る 研 究 .薬 . 彰,田 村 豊 幸:熊 笹 エ キ ス(BambooLeafExtracts)の 抗 腫 瘍 作 用 に関 す る研 究 目 薬 理 詰77:579-59f,1981. 8)SakaiS,SugayamaJ,KamasukaT,TakanoT ,TakadaS:Anticancereffectofpolysaccharide fractionpreparedfrombamboograss.GANN55=197-203 ,1964. 一36一 理 9)山 本 郁 夫,緒 方 幸 雄,金 森 政 人,中 沢 昭 三,辻 明 良:熊 崎 恭 子,中 山 貞 男,岡 崎 雅 子,坂 本 浩 二:ク 笹 抽 出 成 分 の 抗 腫 瘍 作 用 に 関 す る 研 究.杏 林 医 誌2:78-83,1971. 10)大 泉 高 明,白 作 用,貧 11)大 食 能 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て.昭 泉 高 明,児 玉 恭 子,辻 ま ゆ み,小 マ ザ サ 抽 出 液 に 関 す る薬 理 学 的 研 究 抗 炎 症 医 会 誌48:595-600,1988. 口 勝 司:ク マ ザ サ 抽 出 液 と 生 薬 エ キ ス の 膜 作 用 に つ い て.昭 医 会 誌 49:315-327,1989. 12)OhizumiT,NakayamaS,OguchiK:EffectsofSasasenanensisrehderextract(SE)onstressor ethanolinducedgastriclesionsinrat:.ShowaUnivJMedSci3:133-i41,1991. 13)長 澤 弘:同 特 性 の 比 較 一 基 礎 集 団 よ り乳 癌 の 発 生 能 を 指 標 と し て 確 立 さ れ た2つ と そ の 利 用:AutobiographicResearchReview.明 の 近 交 系 マ ウ ス(SHN,SLN)の 大 農 研 報 告(125):1-77,2000. 14)NagasawaH,YanaiR,TaniguchiS,TokUzenRandNakaharaW:Two-wayselectionofastock ofSwissalbinomiceformammarytumorigenesis:Establishmentoftwonewstrain=,(SHNandSLN). JNatlCancerInst57=425-430,1976. 15)StaatsJ:Standardizednomenclaturefor'inbredstrainsofmice.Sixthlisting.CancerRes36= 4333-4377,1976. 16)JacobyROandHombergerFR:Internationalstandardsforrodentquality.LabAnimSci49:230, 1999. 17)CumminsRA,WalshRN,Budtz-OlsenOE,KonstantinosTandHorsfallCR:Environmentally -inducedchangesinthebrainsofelderlyrats .Nature243:516-518,1973. 18)MasuoY,NoguchiS;MoritaSandMatsumotoY:Effectsofintracerebroventricularadministration ofpituitaryadenylatesynthetase-activatingpolypeptide(PACAP)onthemotoractivityandreSerpine -inducedhypothermiainmurines .BrainRes700:219-226,1995. 19)NagasawaHandHattoriA=EffectsofgonadectomyatdifferentagesandSasaHealth⑧,bamboo grassleafextract,onspontaneousmotoractivityinfemaleandmalemicE.InVivo15:印 20)長 響.実 澤 弘,服 部 亜 樹 子=雄 マ ウ ス の 自 発 行 動 量:に 対 す る 去 勢 と ク マ ザ サ 抽 出 液(サ 験 動 物 技 術36:9-16,2001. 21)VenkatramanJandFernandesG:Modulationofage-relatedalterationsinmembranecomposition andrelatedreceptor-associatedimmunefunctionsbyfoodrestrictioninFischer344rats.Mechanism QfAgeingDev63:27-44,1992. 22)TothLAandGardinerTW:Foodandwaterrestrictionprotocol<.=Phyiologicalandbehavioural considerations.Contemporarytopics.LabAnimSci39:9-17,2000. 23)GalloPVandWeingergJ:Corticosteronerhythmicityintherat:Interactiveeffectsofdietary restrictionandscheduleoffeeding.JNutr111:208-218,1981. 24)DuffyPH,LeakeyJEA,PipkinJL,TurturroAandHartRW:Thephysiologic,neurologic,and behavioraleffectsofcaloricrestrictionrelatedtoaging,diseases,andenvirQnmentalfactors.Environ Res73:242-248,1997. 25)NagasawaH,MurayamaYandIshigameH:Foodrestrictionandspontaneousmotoractivityin malemice:Effects.offeedingpattern,far-infraredrayandbamboograssleafextracrt.InVivol5:印 刷 中,2001. 26)ShamgerBE:Evidencethatstressandsurgicalinterventionspromotetumourdevelopmentby suppressingnaturalkillercellactivity.IntJCancer80:880-888,1999. 27)TsunodaS,YamamotoK,SakamotoS,InoueHandNagasawaH:EffectsofSasaHealth③, 一37一 刷 中,2001. サ ヘ ル ス ⑭)投 与 の 影 明治大学農学 部研究報告 第128号(2001) extractofbamboograssleaves,onspontaneousmammarytumourigenesisinSHNmice.Anticancer Res18:153-158,1998. 28)角 田 聡,長 澤 弘:「 ク マ ザ サ 抽 出 液 」 に よ る 自 然 発 生 乳 癌 の 増 殖 抑 制.明 大 農 研 報 告(111):41-46, 1997. 29)MoriTandNagasawaH=LungmetastasisofmammarytumorsinSHNmice.JFacSci,Univ Tohyo16=129-132,1986. 30)NagasawaH,UdagawaYandKiyokawaS:Evidencethatirradiationoffar-infraredraysinhibit: mammarytumourgrowthinmice.AnticancerRes19;1797-1800,1999. 31;長 澤 弘,本 間 静,宇 田 川 葉 子:遠 赤 外 線 マ ウ ス 乳 癌 の 増 殖 抑 制 と,サ サ ヘ ル ス ⑭ に よ る 抑 制 促 進.明 大 農 研 報 告(122):35-44.2000. 32)NagasawaH,HonmaSandUdagawaY:Inhibitionofspontaneousmammarytumourigenesisin micebyiirradiationwithfar-infraredraysandtheeffectsofbamboograssleafextractontumour growth.JpnJHyperthermicOncol16:27-35,2000. 33)角 '1 田 聡,長 澤 弘:乳 腺 の 発 育 と 関 連 形 質 に 対 す る 「ク マ ザ サ 抽 出 液 」 の 影 響.明 τ12,1996. 34)KobayashiT,TsunodaS,IhoueH,IijimaK,ToriizukaK,CyongJ-CandNagasawaH:Effects ofSasaHealth⑧,extractofbamboograssleaves,onthethymicinvolutionthymocytephenotypic alterationsinSHNfemalemice.Bu11FacAge,MeijiUniv(115)=39-49 .,1998. 一38一 大 農 研 報 告(108):