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Page 1 Page 2 Page 3 ている。 最近まで離国における医薬品の大部分
明 治 大 学 農 学 部 研 究報 告
第128号(2001)21∼38
研究資料
クマザサの体 機 能正 常化作 用 に関す る実験 的研 究
行動 に対 す る影響 お よび制癌効果 を例 に
長 澤
弘
2001年7月5日
受理
ExperimentalStudyontheNormalizationEffectsofLeaf
ExtractofBambooGrass(sαs6zsθ
クzαη6ηsゑs1∼
θぬ6」6γ)with
SpecialReferencetoItsInfluenceonBehaviouran(1
MammaryTumourigenesis.
HiroshiNAGASAwA
Summary'
Mentalandphysicalimbalancesaresometimesreflectedbyabnormalbehaviourandcausethe
diseases,especiallythosewithlonglatencylikecancers.Thus,adjustmentoftheseimbalances
orapproachofhypo-orhyper-functiontonormallevelsisamostpotentmethodforprevention
ofthesedisorders.Inthispaper,theresultsobtainedinthislaboratoryontheeffectsofSasa
Health⑯,amedicinalpreparationfrombamboograssleafextract(S),onbehaviourand
malnmarytumourigenesisinmicearebrieflyreviewed.Spontaneousmotoractivitydeclinedby
gonadectornywaselevatedbyS.Bycontrast,thestimulationofactivitybyrestrictedfeeding
wassignificantlydecreasedbyS.SalsosupPressedthedevelopmentandgrowthofmammary
tumours.Associatedwiththese,Smodulatedpユasrnaandurinecomponentlevelspotentiated
thymicimmunefunctionandsuperoxidedismutaseactivityanddecreasedplasmaprolactinlevel.
AUfindingsrevealedthatScannormalizeorganismsthroughitsmodulationofgeneralmetabolismandstimulationofimmunefunction,throughwhichitmodifiesthebehaviourandprevents
mammarytumourigenesis.Basedonbodyweightchangeanyfoodandwaterintakesaswellas
externalappearance,fewdeleteriousside-effectsofSwasconfirmed.SasaHealth⑧isconcludedtobeamostpotentandsafemedicineforpreventionandtherapyofmentalandphysical
disordersand,thus,forthemaintenanceofhealth,throughitsnormalizationeffects.
は
クマ ザ サ(図1)は
じ
め
に
生命 力 の極 めて 強 い植 物 で あ る。 その 葉 は竹 葉 と して 「神 農 本 草経 」 に収
録 され て以 来,「傷 寒 論 」,「金 置概 要 」,そ の他 古典 医書 の 中 の処 方 に も見 られ る生 薬 で あ る。民 間
にお い て も古 くか ら火傷,犬
な どに よ る咬傷,吐 血,下 血,尿 渋 滞 な どの治 療 に用 い られ て きた
(2)。 近 年,こ の クマ ザ サ の有 効 成 分 の 効 率 的 な抽 出法 が開 発 され,そ の 薬 効 に関 して も多 くの
一21一
明治大学農 学部研究報告
第128号(2001)
報 告 が み られ る。 す なわ ち,ク マ ザ サ の熱 水 抽 出液 に お け る抗 炎 症 作 用,血 圧 降 下 作 用,利 尿 作
用,抗 潰 瘍 作 用(3,4)の
作 用(6),抗
ほか,ア ル カ リ加 水 分 解 抽 出 液 にお け る抗 疲 労 作 用(5),食
腫 瘍作 用(7)が
報 告 され て い る。 また多 くの 研 究 者 に よっ て ク マザ サ抽 出画 分 に
お け る抗 腫 瘍 性 が 認 め られ て い る(8,9)。
さ らに ク マ ザサ の ア ル カ リ加 水 分 解 液 で 鉄 ク ロロ フ ィ
リ ンーNaを 主成 分 とす る画 分(「サ サ ヘ ル ス⑪ 」)につ い て大 泉 らは抗 炎 症 作 用(10),細
化 作 用(11),網
図1.ク
内系 機 能 賦 活 作 用(12),抗
マ ザ サ(Sosαsθ
20∼25cm,幅4∼5cm,先
[A]が,秋
ス トレ ス作 用(12),胃
ηαη6ηs公s1∼
θゐ4θ7)(A,B)(大
桿 は 高 さ1∼2m,直
径5∼8mmで
端 は や や 尖 り,上
さ れ て お り,葉
海 道,本
粘膜 保護 作 用(12)を
和 生 物 研 究 所 原 図),お
胞膜安定
報告 し
よ び 主 要 産 地(C)(1)
基 部 で ま ば ら に 分 枝 す る。 葉 身 は 披 針 状 で 長 楕 円 形,長
面 は 無 毛,下
に な る と縁 辺 が 枯 れ て 白 くな る[B]。
サ ハ リ ン を北 限 と し て,北
欲増進
州,四
国,九
こ れ を歌 舞 伎 の く ま ど り に 見 立 て て ク マ ザ サ と い う 。
州 に 分 布 す る[C]。
は 料 理 や 菓 子 の 装 飾 品 と し て も用 い ら れ て い る。
一22一
さは
面 に は軟 毛 が 密 生 す る。新 葉 は緑色 で あ る
生 薬 と し て の 他,鑑
賞 用 に も栽 培
て い る。
最近 まで先 進 国 に お け る医 薬 品 の大 部 分 はい わ ゆ る化 学 的 に合 成 され た もの で あ った 。 それ ら
の 人類 の健 康 に対 す る貢 献 につ い て は今 更 述 べ る まで もな いが,そ の 一 方,こ れ ら化 学 合 成 薬品
の 効 力 の 限界 とそ の副 作 用 が 深 刻 な 問題 とな って い る。 さ らに多 くの疾 患 は治療 よ り も予 防 の重
要 性 が 指 摘 され て い るが,こ の た め の化 学 合 成薬 品類 の常 用 は実 際 的 で ない。 これ らの 理 由 か ら,
生 薬 類 の効 用 が再 認 識 さ れ,臨 床 的 に 広 く用 い られ て い るほ か,健 康(機 能)食 品 や飲 料 に も用
い られ て い る。そ の期 待 され る効 用 の一 つ に生体 機 能 の正 常 化 作 用 の あ る こ と はい うまで も ない。
しか し これ ら生 薬 類 あ るい は天 然生 理 活性 物 質 は もっ ぱ ら 中国4千
れ,生 薬 類 の作 用機 構,お
年 の 経 験 に基 づ い て 用 い ら
よび それ らを構 成 分 とす る漢 方 薬 の 処分 の理 論 的 根 拠 な ど はほ とん ど
不 明 で あ り,い わ ん や 一般 の 消費 者 が 自分 の用 い て い る生 薬 類 に対 して十 分 な知 識 を もっ て い な
い こ とは化 学 合 成 薬 品 に対 す る と同程 度 か あ るい は それ 以 上 で あ る。
これ らの観 点 か ら,我 々 は生薬 類 の作 用 機構 を解 明 す るた め に実 験 動 物(マ ウ ス)を 用 い て広
範 な 基 礎研 究 を行 っ て い るが,本 稿 で は,ク マ ザ サ の体 機 能 正 常 化 作 用 につ い て,そ の行 動 に対
す る影 響,お
よび乳 癌 の 予 防 ・治療 効 果 を例 に筆 者 の研 究 室 に お け る成 果 を概 説 す る。
な お 実験 試料 の ク マザ サ として はク マ ザサ 抽 出液 製 剤 の 「サ サ ヘ ル ス⑧ 」(大 和 生 物 研 究 所)を
用 いた 。
また 実 験 動物 と して用 い られ たSHNお
よびSLNマ
近 交 系 と して 維 持 され て きた もの を,ま たICRは
ウ ス(13-15)は
筆 者 に よ っ て確立 され,
日本 ク レ ア よ り購 入 し,1週
間 以 上,環 境 に慣
ら した もの を使 用 した。 実験 期 間 中,マ
ウス は床 敷 を敷 い た プ ラス チ ック あ る いは ア ル ミニ ウム
製 ケ ー ジ[18(W)×28(L)×13(H)cm]に4-5匹
ず つ 収容 し,飼 料 と して は市販 の 固形 飼
料 と水 道 水 を 自 由 に与 え,14時
間 照 明(5:00∼19:00),室
温(22℃),湿
度(55-70%)に
調
節 され た無 窓 動 物 室 で 飼 育 管 理 した。
1.ク
マ ザ サ の 行 動 に 対 す る影 響
生 薬 の効 用 は図2に 示 す よ うで,化 学 合 成 薬 品 の薬 効 が局 所 的,治 療 的(対 症 療 法 的)で あ る
の に対 レて 生薬 の そ れ は全 身 的,予 防 的 で あ る。 言 い換 えれ ば生 薬 の作 用 は生体(細 胞)の 発育,
あ る い は機 能(は た ら き)に 対 す る正 常 化(normalization)作
用 で あ っ て,正 常 な状 態 で は影響
は ほ とん ど現 れ な い か,現 れ て もそれ ほ ど顕 著 で な いが,異 常(体 細 胞 の増 殖,機 能 の昂 進 も し
くは減 退)な 条 件 下 で は生 体 を正 常 に戻 す ホ メ オ ス タ シ ス作 用 で あ る。
現 代 社 会 の よ う に,情 報 と騒 音 に溢 れ,自 然 は情 け容 赦 な く破 壊 され て人 間 が 自 らの首 を絞 め
て い る よ うな環 境 下 で は,人 々 は,食 料 を は じめ物 質 的 に は いか に満 ち足 りて い て も精 神 的 に は
きわ め て貧 し く,か つ 情 緒 不安 定 な状 況 にお か れ て い る。 殺 人,虐 待,暴 力 行 為 な ど極 端 な場 合
一23一
明 治 大 学 農 学 部 研 究報 告
第128号(2001)
を除 い て も,い わ ゆ る多 種 多様 な ス トレス に よ って,意 識 す る と しな い に か かわ らず,人 々 は精
神 的 に も生 理 的 に も追 い ま くられ,追 い詰 め ら乳 た状 況 に あ る とい っ て も過 言 で はな い。
一 方 ,人 間 に おい て も動 物 に お い て も,行 動 は神 経,内 分 泌,免 疫 な ど と相 互 に 緊密 に関 係 し,
しば しば情 緒 的(精 神 的),生 理 的(肉 体 的)状 況 を よ く反 映 す る(16,17)。
この よ うな意 味 合
い か ら,精 神 的/生 理 的面 の正 常 化 に対 す る クマザ サ の効 用 を検 討 す る一 環 として,ス
トレ ス要
因 として 内 分 泌 的,あ る い は栄 養 的 変 化 を受 けた マ ウス の行 動 に対 す る クマ ザ サ の影 響 を検 討 し
た。
なお 試料 と して の クマ ザ サ は 「サ サ ヘ ル ス⑪ 」 を水 道水 で希 釈(鉄 ク ロ ロ フ ィ リンーNa濃 度 で
0.044%あ
る い は0.088%)し
た もの を用 いた 。
また行 動 量 の測 定 は 自発 行 動量 測 定 解 析 シ ステ ム(SUPER-MEX:室
生
化学合成薬品
薬
(全 身 的:予
町 機 械,東 京)に よっ た。
防 的)
●
(局所 的:対
症 療 法 ・治 療 的)
轟"
Ψー ー
異常(機 能 昂進)
↓
正常化
異 常(機 能減 退)
図2.生
↑
薬(天 然生 理 活性 物 質)の 作 用機 構
生薬 は体 機 能 を調節,正 常 化 させ,全 身 の バ ラ ンス を保 つ こ とに よって 健 康 を 回復,維 持 させ る作 用
が 大 きい。 この働 きゆ え に,化 学 合 成 薬 品 の効 用 が局 所 的 ,対 症 療 法 的 で あ る の に対 して,生 薬 の 効 用
は全身 的,予 防 的 で あ る。
一24一
この装 置 に よ っ てマ ウス の体 温(熱 エ ネ ル ギ ー)か
二 次元,お
1-1.性
らその個 体 の位 置 が 感 知 され,移 動 に よ って
よ び三 次 元 の全 行 動 量 が 一 時 間 ご とに集 計,記 録 され る(18)。
機 能 減退 に よ る行 動 量 の 変化 とク マザ サ の影 響
結 果 は図3に 示 す よ うで あ る。す なわ ち2ケ 月齢 のICR雌
マ ウス で は両 側卵 巣 を除 去 一週 間以
降 自発 行 動 量 は著 し く低 下 した が,ク マ ザサ を1ケ 月 間投 与 した とこ ろ,卵 巣 除 去 群 の み で な く,
正 常 対 照 群 で も明期 にお け る行 動 量 の上 昇 が 見 られ,と
くに午 前5時 か ら8時 に か け ての 上 昇 が
顕 著 で あ った 。 明期 にお け る行 動:量の 上 昇 率 は卵 巣 除去 群 で71.5%,対
(19)。一 方,2ケ
照 群 で68.5%で
あ った
月齢 の 雄 で は精 巣 除 去 の 行動 量 に対 す る影 響 は1ケ 月 後 に若 干 現 れ ・また クマ
ザ サ の投 与 に よ って正 常 対 照 群 も去 勢群 もそ の行 動 量 は著 し く低 下 した(減 少率 は それ ぞれ 投与
前 の56.5%お
よび47.9%)(19)。
性 腺 除 去1週
(Counts,X103)
8
間後
4
6
3
4
2
戯1
2
0
性 腺 除 去1ヶ
自8
月後
4
発6
3
行4
2
動2
1
凶L。
量o
㎞
ク マ ザ サ 投 与1ヶ 月 後
8
4
6
3
4
2
0
5194519451945194(時
』
対 照 群(5)卵
2
1
。
〔
繍[』
巣 除 去 群(5)対
照 群(5)去
雌
図3.雌
雄ICRマ
期鋤
刻)
勢 群(6)
雄
ウ スの 自発 行 動:量に対 す る性 腺 除 去 とクマ ザ サ の影 響(平 均値 ±標 準 誤差)(19)。
2ケ 月 齢 で 性 腺 を 外 科 的 に 除 去 し,そ
た 。 動 物 室 内:□
明 期(5:00∼19:00),■
の1ケ
月 後 か ら ク マ ザ サ を 飲 水 と し て1ケ
暗 期(19:00∼5:00)。()例
一25一
数。
月 間 自由 摂 取 させ
明治大学農 学部研究報告
第128号(2001)
Counts(×103)
12
SHN
10
8
6
4
2
昇'・.
行
動12
量
10
8
6
4
2
0
正常対照群
精巣除去群
① 精 巣 除去30日 後
図4.SHNお
よ びSLN雄
4-6ケ
正常対照群
①+ク
精巣除去群
マ ザ サ20日 間投 与
マ ウ ス の 自 発 行 動 量 に 対 す る精 巣 除 去 と ク マ ザ サ の 影 響(平 均 値 ±標 準 誤 差)(20)。
月 齢 に 精 巣 を 除 去 し,そ
の30日
数 。8-c異 な っ た も の 同 士 はP<0.05/0.01で
後 よ り ク マ ザ サ を20日
有 意。
一26一
間 飲 水 と し て 自 由 摂 取 さ せ た 。†例
㌧
この よ うに,も っ とも一 般 的 な モ デル マ ウス で あ るICRに
お い て性腺 除 去,お よび クマ ザサ の
影 響 は雄 で は雌 ほ ど顕著 で な か った 。 多 くの現 象(反 応)に お い て性 差 の み られ る こ とは珍 しく
な い が,行 動 に対 す る精 巣 除 去 一 クマ ザ サ の影 響 を よ り明 らか に す るた め,他 の2っ の 近 交系
(SHN,SLN)(13-15)の
雄 に お いて この 点 を検 討 した(20)。 図4に 示 す よ うにSHNで
は自
発 行 動 量 は精 巣 除 去 に よっ て無 処 置 対 照 群 に較 べ て有 意 に低 下 した が,ク マ ザ サ を20日 間 投与
す る こ とに よ って有 意 に上 昇 した 。 正常 対 照 群 で もクマ ザ サ に よっ て行 動量 は若 干 上 昇 した 。一
方,SLNで
は精 巣 除 去 の 行 動量 に対 す る影 響 は認 め られ ず,従 っ て その 後 の ク マ ザサ の影 響 は無
処 置 対 照 群 で若 干認 め られた の み で あ っ た(20)。
な お いず れ の 実験 に お いて も,対 照群,性 腺 除 去群 と も クマ ザサ の 投与 に よっ て体 重,摂 餌 ・
摂 水 量 な どに明 らか な違 い は認 め られ な か っ た。
1-2.摂
餌制 限 に よ る行 動 量 の変 化 とク マザ サ の影 響
「腹八 分 は健 康 の元 」 と云 わ れ る よ うに,あ る程 度 の食 事 制 限 は健 康 に よ い。 事 実,実 験 動物
に お い て も擬餌 制 限 は加 齢 に伴 う免 疫 低 下 を抑 制 し(21),種 々 の疾 患 を予防 し,寿 命 を延 長 させ
る の に有効 で あ る こ とが 知 られ て い る(22)。 しか し同 時 に,摂 餌 制 限 は しば しば生 理 異 常,代 謝
異 常 を もた ら し,そ れが 行 動 異 常 と して現 れ る場 合 が あ る(23,24)。
投 与 の行 動 に対 す る影 響 を検 討 す る た め,1-1の
SHN雄
擬 餌 制 限,お よ び クマ ザサ
実 験 に お い て処 置 に 対 す る反 応 の高 か った
マ ウ ス を用 い て2ケ 月 齢 よ り飼料 自由給 与 の 自 由摂 餌 群(対 照群)と,摂
餌 量 を対 照群 の
70%に 制 限 され た制 限摂 餌 群 の2群 に分 け;そ れ ぞれ の一 部 に クマ ザ サ を飲 水 と して 投与 した。
結 果 は図5に 示 す通 りで あ る。 そ れ ぞ れ の処 置3週 間 に お い て は 自由摂 餌 の対 照 群(自)で
クマ ザ サ の併 用(自+S)に
よ って行 動 量 は若 干 増加 した。 一 方,摂 餌 制 限群(制)で
対 照 群 に較 べ て2倍 以 上 に上 昇 した が,そ の 上 昇 は クマ ザ サ との併 用(制+S)に
下 した(25)。 この結 果 は,先 の1-1の
は
は行 動 量 は
よ って有 意 に低
実 験 の 正 常雌 に対 す る場 合 と同様 に,正 常 な 条件 下 で は
クマ ザ サ は行 動 量 に若 干 の 影響 を与 え る に過 ぎ なか っ たが,異 常 に上 昇 した 行 動 量 を顕著 に低 下
させ て正 常 に近 づ け る作 用 の あ る こ とを示 す。 同様 の傾 向 は7週 間継 続 した 場 合 に も見 られ た
(図5)(25)。
この こ とはそ の長 期 投 与 に よ って も効 果 が 持 続 す る とい うクマ ザ サ の 大 きな特 徴
を裏 づ け る もの で あ る。
以 上 の研 究 で得 られ た性 腺 除去 お よ び摂 餌制 限 と行 動 量 の関 係 の結 果 を要 約 す る と表1の
に な る。す なわ ち性 腺 除去 に よ って低 下 したICR雌,SHN雄
て 上 昇 した.SHN雄
よう
の行 動 量,お よび 摂 餌制 限 に よ っ
の行 動 量 はク マ ザ サ に よ っ て それ ぞれ 上 昇,あ
るい は低 下 した 。 これ はクマ
ザ サ の 正常 化 作 用 の 顕 著 な 現 れ で あ る。
本 実験 の結 果,性 腺 除 去 に対 す る クマ ザ サ の 影響 に性 あ る い はマ ウ ス の系 統 に よ る違 い の存在
す る こ とは,ク マ ザ サ に対 す る感 受 性 の性 差,あ る い はマ ウス の 系統 差 に よ る と も考 え られ るが,
一27一
明治大学農 学部研究報告
第128号(2001)
Counts(×104)
5
4
be
Cba
C
3
a
a
aa
2
自 発行動量
b
1
0
自
白+S制
制+S自
ク マザ サ3週 間 投 与
白+S制
制+S
クマ ザ サ7週 間 投 与
図5.SHN雄
マ ウ スの 自発 行 動 量:に対 す る擬 餌 制 限 とクマ ザ サ の影 響(平 均 値 ±標準 誤 差)(25)。
2ケ 月 齢 よ り自 由摂 餌 群(自)と
その70%に 飼料 を制 限 され た摂 餌 制 限群(制)を 設 け,そ れ ぞれ の
群 の一 部 に クマ ザ サ(S)を 投与 した(そ れ ぞ れ 自+S,制+S)。
例 数 は3週 間投 与 群 は各12,7週
間投
与 群 は各6。a-c異 なっ た もの 同 士 はP〈0.05/0.01で
有意。
表1.性
腺 除 去 お よび摂 餌 制 限 とクマ ザ サ の行 動 量 に対 す る影 響
雌
対照群
卵巣除去群
対照群
精巣除去群
ICRt(↓)a↑
』雄
←
①
(
→
◎
(
⇒
⇒
m
S
勤
(
囲
S
■▼ ⇒
聡
対照群
擬餌制限群
SHN⇒(↑)1
1「上昇,J」 、 低下,⇒
a性腺 除 去
影響 な し
,あ る い は擬餌 制 限 の影 響(対 照 群 に対 して)。
一28一
そ れ よ りもむ し ろク マ ザサ の正 常化 作 用 を裏 づ け る もの と理 解 す る方 が 妥 当 で あ る。 現 にSLN
雄 に お け る よ う に クマ ザ サ の 影 響 が 認 め られ て い な い場 合 に は性 腺 除 去 の影 響 も見 られ て い な
い。 同様 に9∼12ヶ
月齢 のICR雌
雄 マ ウ スの 行 動 や血 漿 成 分 は性 腺 除 去 あ る い は ク マ ザ サ投 与
の いず れ に もほ とん ど影 響 され な か った(19)。 す なわ ち これ らの場 合,行 動 を含 む生 体 の機 能が
性 腺 除 去 の影 響 を受 けず 正 常 の ま まで あ るた め,ク マ ザ サ が正 常 化作 用 を発 揮 す る必 要 が な いの
で あ る。 また正 常 個 体 で もICR雌
で は クマ ザ サ によ っ て行 動 量 の 上 昇 が,反 対 にICR雄
降 が 認 め られ たが,こ れ はホ ル モ ンの影 響 下 て程 度 の差 は あれ,常
で は下
に受 け て い たス トレス が,ク
マ ザ サ に よっ て解 除,正 常化 され た 結 果 と理 解 す る の が正 しい 。SHNお
よ びSLNの
正常雄で
は この 点 に 関 して ホル モ ンの影 響 が 少 なか っ たた め クマ ザ サ の影響 も軽微 で あ った と考 え られ る。
2.ク
マ ザ サ の 乳 癌 の発 生,増
殖 抑制 効 果
よ く知 られ て い る よ うに わが 国 に お け る最近 の癌 の発 生 状 況 は欧米 化 の傾 向 を示 して い るが,
乳 癌 も例 外 で な く,そ の発 生 率 は年 々増 加 の傾 向 に あ る。 最 近,.種 々 の ス トレ スが 免疫 機 能 を低
下 させ る こ とに よ って発 癌 を促 進 させ る こ と も報 告 され て い る(26)。 癌 の よ う に発 症 す る まで に
長期 間 を要 す る疾 患 で は生 体 の抵 抗 力 が 大 きな要 因 とな る。 言 い換 え れ ばた とえ細 胞 が癌 化 して
も生 体 の正 常 化 機 能 が 旺盛 な ら癌細 胞 の増 殖 を抑 え続 けて,と
くに問 題 とな らず,健 康 な生 活 を
続 け る こ とが で き る』 したが っ て あ る物 質 の癌 の発 生 や 増 殖 を抑 制 させ る効 果 は,そ の物 質 が ど
の くらい体 機 能 を正常 に維 持 す る働 き を もっ て い るか の 重 要 な指 標 とな る。 い う まで もな く人 間
の癌 は"自 然 発 生"で あ る か ら,そ の モ デ ル と しての 実 験 動物 の癌 もや は り自然発 生 の もの でな
けれ ば な らな い。 この 意 味 か ら筆 者 は,乳 癌 に対 す る生 薬 類 の 予 防 ・治療 効 果 を,筆 者 自身 に よっ
て作 出 され た 近 交 系 のSHNマ
ウス(13-15)を
月齢 か ら自然 に乳癌 を発 生 し始 め115-17ケ
全 て が 悪 性 のadenocarcinomaで
用 い て 行 って い る。 この 系 の マ ウ ス は4-6ケ
月齢 で ほ ぼ100%乳
癌 を発生 す る。発 生 した乳 癌 の
あ る。本 研 究 で も このSHNマ
ウス を用 い て 乳 癌 の発 生 抑制
(予 防)お よ び増 殖 抑 制(治 療)に 対 す るク マザ サ の 影 響 を検 討 した 。
2-1.ク
マ ザサ に よ る乳 癌 の発 生 抑 制
結 果 を図6に 示 す。 対 照 群,実 験 群 と も実 験 開 始4ケ 月 日か ら乳 癌 が発 生 し は じめ,対 照 群 の
発 生 率 は その 後直 線 的 に増 加 した が,実 験 群 で は4,5ケ
月 日で の発 生 は著 し く抑 制 され た 。 し
か し6ケ 月 目 には殆 ど対 照 群 の レベ ル まで上 昇 した 。 そ の た め ク マザ サ の 濃度 を2倍 に した とこ
ろ,7,8ケ
月 まで の発 生 はほ ぼ完 全 に抑 え られ た。 しか し10ケ 月 以 降 は対 照 群 と同様 に乳 癌 の
発 生 は上 昇 した(27)。 これ は加 齢 と と もに急 上 昇 す る乳 癌 の発 生 ポ テ ン シ ャル が ク マ ザサ の 発生
抑 制 効 果 を超 えた結 果 と考 え られ るqこ の こ とは今 回 と同 じ実 験 条 件 で他 の多 くの生 薬 に も見 ら
一29一
明治大学農学部 研究報告
第128号(2001)
れ る現 象 で あ る。 この結 果 か ら,人 に よ っ て は,「ク マザ サ は若 い 時期 に は あ る程 度 まで乳 癌 の発
生 を抑 え るが や が て効 か な くな っ て しま うの で,高 い乳 癌 予 防効 果 が あ る とは云 えな い の で は な
い か」 とい う考 え もで るか も知 れ な いが,こ れ は正 し くな い。 この系 の マ ウス の よ うに極 め て高
い(100%)乳
癌 の発 生 率 を持 っ た例 で もこの くらい効 くの で あ るか ら,こ の マ ウス とは比 較 に な
らな い くらい乳 癌 発 生率 の低 い人 間(米 国人 で0.1∼0.2%,日
本人 で0.05%)で
は十 分 有 効 と考
え る の が動 物 実 験 の 結果 か ら導 か れ る正 し い結論 で あ る。 なお,こ の こ とは乳 癌 の み で な く,他
の癌 に対 して も一 般 的 にい える こ とで あ る。
この条 件 に お い て実験 開始 後7ケ 月 まで の 摂餌 ・摂 水 量 を測 定 した とこ ろ,摂 餌 量 に は対 照 群
と実 験 群 の 間 に違 いが な く,摂 水 量 は実 験 群 の 方が やや 多 く推 移 した。 また 体 重 は両 群 と も漸 増
した が,群 の間 に違 い は見 られ な か っ た。 これ らの 結 果 か ら本 実験 は きわ めて健 全 な状 態 で行 わ
れ た こ とが確 認 され た(27)。
一一
0.044%
80
■:実
.'0.088%
「一一一一一
験 群(25)
60
40
累 積 乳 癌 発 生 率 %
(
20
0
456789101112
投 与 期 間(月)
図6.ク
マザ サ に よる乳 癌 の発 生 抑 制(27)。
SHN雌
マ ウ ス に2-3ケ
月齢 か らク マ ザサ 水道 水 溶 液(鉄 ク ロ ロ フ ィ リ ンーNa濃 度 で0.044%,7ケ
月 目か ら0.088%に
週2回,触
増 加)を 飲水 と・
して 自由 摂取 させ た(対 照群 に は水 道 水 を与 えた)。 乳 癌 の発 生 は毎
診 に よっ て調 べた(習 熟 す る と3-5mmの
大 き さで十 秀 確 認 で き る。 マ ウ ス の乳 腺 は5対
(10ケ)あ るので,体 の両 側 の ほ とん ど全 て の とこ ろが ら乳 癌 の 発生 す る可 能性 が あ る。*乳癌 の 発 生率
と発 生 月 齢 を同 時 に 考 慮 した2因 子 分 散 分 析 に よっ て ク マ ザ サ投 与9ケ 月 まで実 験 群 と対 照 群 の 間 に
発 癌 ポ テ ン シャル に 統計 的 に有 意差 が認 め られ た(P〈0.05)。
一30一
2-2.ク
マザ サ に よ る乳 癌 の増 殖 抑 制
乳 癌 の 増 殖 に対 す る ク マ ザ サの 影響 は 図7に 示 す よ うで,乳 癌 発 生 前 か らク マ ザ サ を飲 ませ て
・い た場 合(実 験1)で
も
,乳 癌 発 生後 に投 与 され た 場 合(実 験2)で
制 さ れた 。 しか し実験1で
も乳癌 の増 殖 は明 ら かに抑
は始 め はあ ま り効 か ず,後 半 で顕 著 に抑 制 した の に対 し,実 験2で
始 め の方 が 抑制 効 果 が大 きか った(27,28)。
は
この原 因 と して ク マ ザサ の 投与 期 間 に よ る動 物体 の
免 疫 作 用 の違 いが考 え られ る が その詳 細 は現 在 の とこ ろ明 らか で な い。 いず れ に せ よ,転 移 す る
前 に マ ウ ス を殺 して し ま う く らい増 殖 の盛 ん な癌(29)を
この よ うに抑 え る クマ ザ サ の効 果 は特
(%》
乳 癌 の 大 き さ の 変 化 率 %
(
100
対照群
実 験1(10カ
50
*
月 投 与)
**
**
実 験2(12'日
間 投 与)
**
**
0
036912
測 定 期 間(日)
図7.ク
マ ザ サ に よ る乳 癌 の増 殖 抑 制(平 均 値 ±標 準誤 差)(28)。
乳 癌 の 大 きさ(長 径 と短径 の幾 何 平 均)が5-7mmに
達 した 日(0日)を
基 準 と して各 測 定 日に お
け る太 き'さの変 化 率 を増 殖 の指 標 と した。実 験 は未発 癌 時 よ り10ケ 月間 クマ ザ サ を投 与 した 実 験1と,
増 殖 測 定 開始 日に投 与 を開始 した 実験2が
あ る。
一31一
明治大学農学 部研究報告
第128号(2001)
筆 に値 す る。
遠 赤 外 線(FIR)は
示 す よ うに,FIR単
FIRの
照 射 時 期 に よ って は 乳癌 の増 殖 を顕 著 に抑 制 す る(30)。 図8の 実 験 群IIIに
独 で 有意 な乳 癌 増 殖 抑 制効 果の あ る場 合 には ク マ ザサ を併 用 して も(III+S),
効 果 を さ らに促進 させ な い(31)。
しか し実 験 群1,IIに
見 られ るよ うにFIR単
独照射が
oo
2
50
1
乳癌 の 大 き さ の変 化 率 (16 日間 )%
(
*
*
oo
1
**
50
15a
0
15151718
ll+SllII+Sllllll+S
対照群
実
図8.ク
マ ザ サ と遠 赤 外 線(FIR)併
実 験 群1,II,III:そ
用 に よ る 乳 癌 の 増 殖 抑 制(平
れ ぞ れ1-5ケ
投 与(乳 癌 の 大 き さ が5-7mmに
月 齢,5ケ
月 齢 以 降,乳
な っ た 日 よ り16日
験
群
均 値 ± 標 準 誤 差)(31)。
間)。o例
癌 発 生 後 にFIRを
照 射 。S:ク
数 。 零対 照 群 に 対 し てP〈0.05で
マザサ
有意 。
(%)0102030405060708090100
対照群(15)■
■ ■40.0■
■ ■==26
.7==麗
露 露 盤
実 験群
1(15)20
.066.713.3
1十S(15)66.726
.76.6
11(17)47.135.317,6
11十S(18)61.133.35.6
1[正(20)65
.030
皿 十S(20)35
図9.ク
.065.00.0
マ ザ サ と遠 赤 外 線(FIR)併
癌 の 増 殖 率 の 違 い(31)
.05.0
用 に よ る 乳 癌 の 増 殖 抑 制=各
.。乳 癌 増 殖 率:■
群(詳
細 は 図8参
〈100%,□100-200%,駆>200%。()例
一32一
照)に
お け る16日
数。
間 の乳
あ ま り有 効 で な い場 合 に は,ク マ ザ サの併 用(1+S,II+S)は
きわ め て有 効 で 乳 癌 の増 殖 は有
意 に抑 制 され た(32)。 同様 の事 実 が 図9か
ら も明 らかで あ る。 す な わ ち実 験 群1,IIで
サ の併 用(1+S,II+S)に
下 の増 殖 率 を示 した乳 癌 は顕 著 に上 昇 し,逆 に200%
よ って100%以
は クマ ザ
以 上 の 増 殖 率 を示 した乳 癌 の 割 合 は下 降 した が,実 験 群IIIでは ク マ ザ サ 投 与 の 影 響 は見 られ な
か った(31)。
これ もク マ ザ サの 正 常 化作 用 の ひ とつ の現 れ で あ る。
3.ク
マ ザ サ の 生 体 に対 す る 影 響
マ ウ ス の 行 動 お よ び 制 癌 に 関 す る これ ら一 連 の 実 験 か ら ク マ ザ サ を飲 水 と し て 投 与 す る こ と に
よ っ て 体 の 機 能 を 正 常 化 さ せ る働 き の あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 上 に も述 べ た(図2)よ
生 薬 の 作 用 は 全 身 的 で,そ
の 標 的 箇 所 は 必 ず し も 明 らか で な い の で,ク
う に,
マ ザ サ が どの よ う な 機 構
で 正 常 化 作 用 を 示 す か を 知 る た め に い くつ か の 項 目 を 検 討 した 。 そ の 結 果,
[1]体
重,摂
餌 ・摂 水 量 は,実
SHN,SLN,ICRの
験 が 正 常 に行 わ れ て い る か ど う か の 最 も重 要 な 指 標 で あ る 。
雌 雄 の い ず れ に お い て も,こ れ ら の パ ラ メ ニ タ に対 す る ク マ ザ サ に よ る悪 い
影 響 は認 め ら れ な か っ た(19,20,27,28,31-34)。
[2]体
内 の 物 質 代 謝 を 順 調 に す る こ と は,健
こ の 観 点 か ら諸 成 分 の 血 液,お
患 予 防 の た め の重 要 な要 因 で あ る。
よ び尿 中 レベ ル を検 討 し た 。血 液 に 関 し て はICR,SHN,SLN雄
に お け る精 巣 除 去(19,20),ICR雌
ウ ス の 血 漿 中 の13成
康 維 持,疾
に お け る 卵 巣 除 去(19),SHNに
お け る 摂 餌 制 限(25)マ
分(albumin,alkalinephosphatase,alanineaminotransferase(ALT),
amylase,asparateaminotransferase(AST),globulin,totalbilirubin,bloodureanitrogen,calcium,cholesterol,creatinine,glucose,totalprotein)を
ム(ABAXISEA:室
町 機 械,東
京)に
よ っZ測
簡 易血 液 生 化 学 分 析 シス テ
定 し た 。 当 然 の こ とな が ら,各
ル の 変 動 し や す い こ と も あ っ て,多 く の 成 分 で 実 験 ご と に 必 ず し も一 定Q変
成 分 の 血 漿 レベ
化 を 示 さ な か っ た が,
総 体 的 にみ て この面 に お い て も クマ ザ サ の正 常 化作 用 が うかが わ れ た 。
1H-NMR(核
月,10ケ
磁 気 共 鳴 装 置)に
よ っ てSHN雌
の 尿 成 分 を 測 定 し た と こ ろ,ク
マ ザ サ 投 与2ケ
月 の い ず れ に お い て も実 験 群 で は対 照 群 に、
く ら べ て ほ とん どの 成 分 で 高 い 値 を 示 した
(図10)(27,33)。
ま たSHN雄
が 促 進 さ れ た(20)。
で ク マ ザ サ に よ っ てALT,AST,cholesterolの
尿 量 も ク マ ザ サ の 投 与 に よ っ て 増 加 す る こ と(27)を
尿 中へ の排 出
考 え あ わ せ る と,ク マ
ザ サ に よ っ て 多 くの 成 分 の 排 泄 は促 進 さ れ る と結 論 さ れ た 。 本 実 験 に 用 い た 乳 癌 高 発 系 のSHN
マ ウ ス は 一 般 の マ ウ ス に 比 べ て 尿 成 分 の レベ ル の 低 い と こ ろ が ら,ク
マ ザ サ の乳 癌 予 防 効 果 の ひ
と つ と して そ の 体 内 物 質 の 排 泄 促 進 作 用 が 考 え られ た 。
[3]ク
表2に
マ ザ サ は 胸 腺 の 重 量 を著 し く増 加 さ せ た 。 またFlowCytometryに
示 す よ う に,実
験1(5ケ
月 齢)で
は 未 成 熟 胸 腺 細 胞(CD4+CD8+)の
一33一
よ る測 定 の 結 果,
割 合 を 低 下 させ,
明治大学農学 部研究報告
成 熟 細 胞(CD4+CD8一,CD4-CDf+)の
癌 個 体)で
はCD4+CD8+を
第128号(2001)
割 合 を増 加 させ た 。・
一 方,実
増 加 さ せ,CD4+CD8一
験2(12-15ケ
お よ びCD4℃D8+を
月 齢,担
低 下 さ せ,加
齢,あ
る
い は 発 癌 に よ っ て 変 化 し た 胸 腺 機 能 が ク マ ザ サ に よ っ て 正 常 化 さ れ る こ とが 示 さ れ た(33,34)。
[4]生
進,発
体 内 でATP生
成 時 や ウ イ ル ス の 侵 入 な ど に よ っ て 発 生 す る 活 性 酸 素 が,細
胞 の老 化 促
癌 な ど 有 害 な 作 用 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る。 生 体 内 で 発 生 す る 活 性 酸 素 の 一 つ で あ る
superoxideanineを
分 解 す るsuperoxidedismutase(SOD)の
血 中 活 性 を測 定 し た と こz,ク
マ ザ サ に よ っ て そ の 活 性 は 顕 著 に 促 進 さ れ た(27)。
[5]正
常 乳 腺 の 発 育 は ク マ ザ サ に よ っ て 若 干 促 進 さ れ た が,マ
表2.胸
ウス の 乳癌 の前 癌 症 状 で あ る
腺 細胞 表 面 抗 原 マ ー カ ー発 現 の割 合(平 均 値 ±標準 誤 差)(34)
CD4』CD8+
群CD4-CD8一(P
re)CD4+CD8+(lmmature)・
・瓢
器
・
鼎
誕錨
実 験1
対 照 群(5)1.6±0.285.0±2.810.5±2.23.0±0,6
実 験 群(5)2.4±0.479.5±2.213.7±1.64.4±0.6
実 験2
対 照 群(4)2.7±0.454.1‡2.432.2±2.]11.1±1.0
実 験 群(3)3.6±2.268.6±2,8**22.5±2.1'5.3±L9*
実 験1:ク
マ ザ サ(0.044%鉄
ザ サ(0.044→0.088%)2ケ
に対 し てP〈0,05,0.Olで
ク ロ ロ フ ィ リ ン ーNa)3ケ
月 齢 一 乳 癌 発 生(12-1Eケ
有意。
ク マ ザ サ(O.044%)投
与2ヶ 月 後
ク マ ザ サ(0.044%⇒0.088%)投
5Hippurato
5
与 。 実 験2:ク
マ
数 。*・**対 照 群
与10ヶ
月後
5
直一_ト
Urea
AlIantoln
月 間(2-5ケ
月 齢)投
月 齢)ま で 投 与 。():例
・
臼;ヒ
」
**
Creatlnlne
Creatlne
*
Taurine
ND
Betalne
*
Citrate
D
N
Oxo-
**
Acetate
D
N
9lutarate
**
しactate
rr一
一 一 「一 一 一4一
一 一 一 〒一 一一「 「一一 一 一 一 一 一 ガ
グ
ー一
一一 一 一 一 一
〇1020303008500500010203080100120140
図10.尿
成 分 の 排 泄 に対 す る ク マ ザ サ の 影 響(平
均 値 ±標 準 誤 差)(27)。
□ 対 照 群,■ 実 験 群 。a例 数 。ND:測
定 レ ベ ル 以 下 。#.#%対 照 群 に対 し てP<0.05,0.01で
一34一
有意。
表3.ク
マ ザサ の 生体 機 能 に対 す る影 響
.パ
ラ
メ
[1]体
重,摂 餌 ・摂 水 量
[2]代
謝 関 係:血 液 成 分 量
尿 成 分 排 泄量
[3]細
胞免疫
[4]活
性 酸 素抑 制 作 用(SOD活
[5]正
常 乳 腺 の 発育
ー
果
正常化
正常化
↑
性)'↑
⇒
乳癌 の前 癌症 状:形 成
⇒
増殖
↓
[6]内
HANの
効
⇒
形質 転 換 成 長 因子(TGFα)の
↑
タ
発 現:乳 腺
⇒
乳癌
⇒
分 泌 関 係:Estrogen,progesteroneの
分 泌'⇒
prolactinの 分 泌
↓
内分 泌 器 官重 量
⇒
増強(促 進)⇒
変化 なし
↓
抑制(低 下)
増 殖 は ク マ ザ サ に よ っ て 明 ら か に 抑 え ら れ た(27,33)。
酵 素 で あ るthymidylatesynthetaseの
が,thymidinekinaseレ
こ れ と並 行 し て1)NA合
成律速
乳 腺 細 胞 に お け る レ ベ ル に は ク マ ザ サ に よ っ て 上 昇 した
ベ ル は有 意 に 抑 制 さ れ た(27,33)。
い くつ か の 癌 遺 伝 子 が 乳 腺 の 発 育 や 乳 癌 の 増 殖 に 関 与 し て い る こ とが 知 ら れ て い る 。 そ の 中 で
も っ と も 代 表 的 なTGFα(形
質 転 換 成 長 因 子)の
乳 癌,あ
る い は 乳 腺 に お け る発 現 に ク マ ザ サ 投
与 の 影 響 は 見 ら れ な か っ た(27,28)。
[6]い
う ま で も な くホ ル モ ン は体 機 能 の 平 衡 維 持 の み な ら ず,乳
腺(癌)に
と っ て 最 も重 要
な 要 因 で あ る 。 こ こ で は そ の 中 で も と くに 直 接 関 係 す る卵 巣 か ら のestrogen(E)とprogesterone(P),お
よ び 脳 下 垂 体 前 葉 か ら のprolactin(PRL)に
情 周 期 の 型 か らEとPの
射 免 疫 法 で 測 定 し たPRLの
対 す る ク マ ザ サ の 影 響 を検 討 した 。 発
分 泌 パ タ ー シ に は ク マ ザ サ の 影 響 は な い と推 定 さ れ た(27,33)が,放
血 中 レ ベ ル は ク マ ザ サ を投 与 さ れ た 実 験 群 で は 明 ら か に 低 下 し て い
た(27)。
以 上,体
機 能 に 対 す る ク マ ザ サ の 影 響 を要 約 す る と,表3の
常 化(normalization)作
用 は,そ
の 代 謝,免
疫,内
れ た 結 果 と考 え られ る 。
一35一
分 泌,そ
よ う に な り,ク
マ ザ サ の体 機 能正
の 他生 体 の諸 々 の作 用調 節 の複 合 さ
明治大学 農学部研究 報告
お
わ
第128号(2001)
り
に
現 代 は多 くの面 にお い て人 工 化 が著 しいが 医薬 品 の分 野 もそ の例 外 で な い。 一 方,当 然 の こ と
と して,そ れ らの 欠点,反 省 点 も指 摘 され つ つ あ る。 化 学 合成 薬 品 の効 果 の 限 界 と重 篤 な副 作 用
な どは そ の一例 で,そ れ と と もに生 薬,漢 方 薬 をは じめ とす る,い わ ゆ る天 然物 の効 用 が再 認 識
され つ つ あ る こ とはは じめ に も述 べ た とこ ろで あ る。 しか し天 然 物,あ
るい は 自然 物 とい っ て も
そ の多 くは,化 学肥 料,農 薬 な どにた つぶ り漬 か って お り,さ らに は人 工培 地 に よる培 養 な どバ
イオ テ ク ノ ロ ジー によ っ て生 産 され た"人 工 物"で あ る。 天 然 物 に比 べ て これ ら栽 培(培 養)物
の効 用 の 低 い の は朝 鮮 ニ ン ジ ン を は じめ 多 くの生 薬 類 で つ とに いわ れ て い る と ころ で もあ る。 そ
の 原 因 として は現 代 の 土 壌 学 や 植物 栄養 学 で は明 らか に され て い ない 土壌 中 の(微 量)成 分 や微
妙 な 自然環 境 の関 与 な どが 考 え られ て い る。 いず れ にせ よ,ク マ ザ サ は完 全 な天 然 物 で あ り,自
然 の 恩 恵 の濃 縮 物 とい え る。本 稿 で述 べ た と ころが ら もクマ ザ サ(サ サ ヘ ル ス⑪)は 癌,そ の他
の疾 患 の治 療,予 防 の た め の み で な く,心 身 の健康 維 持 のた めに も有 益 と考 え る。
謝辞
貴 重 な クマ ザ サ 抽 出液(サ
サヘ ル ス⑧)を 恵 与 され,研 究 に多 くの示 唆,御 助 言 を頂 いた
大 和 生 物 研 究 所 の 大泉 高 明社 長,お
よ び久 保 田 泉氏 に厚 く御 礼 申 し上 げ る。
また天 然 物 の薬 効 に 関 して の情 報 収 集 に御 尽 力下 さ った本 学商 学 部 兼 任 講 師 の金 美 花 氏 に感 謝
す る。
本 原 稿 の 作 成 に は当研 究 室 の村 山 祐 士氏 に御 助 力 願 った。 謝 意 を表 す る。
1)鈴
木 貞 雄i:日
本 タ ケ 科 植 物 総 目録.学
2)赤
松 金 芳:和
漢 薬.医
3)柴
田
竹 美 和,坂
丸,山
歯 薬 出 版,東
本 満 夫,金
マ 笹 水 可 溶 分 画(Folin)の
4)柴
田
丸,久
保 恭 子,小
村 豊 幸,藤
井
彰,小
関 す る研 究 一.薬
6)久
保 山
昇,藤
野田
保山
昇,藤
京,PP649-650,1970
森 政 人,高
真:ク
.
木 敬 次 郎,岡
部
進=ク
潰 瘍 作 用 .目
マ 笹 の 薬 理 学 的 研 究(第2報)
マ 笹 の 薬 理 学 的 研 究(第1報)
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.ク
マ 笹 可 溶 分 画(Folin)の
中枢 抑
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林 寿 美:臨
床 薬 理 に 関 す る研 究(第9報)一
熊 笹 エ キ ス(BLE)抗
疲労効果に
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井
彰,大
熊 一 雄,田
と治 療11:2065-207E,1983
7)久
献
京,P174,1978.
急 性 毒 性 な ら び に 抗 炎 症,抗
制 作 用 お よ び 毒 物 解 毒 作 用.日
5)田
文
習 研 究 社,東
井
村 豊 幸:熊
笹 葉 エ キ ス(BLE)の
食 欲 増 進 作 用 に 関 す る 研 究 .薬
.
彰,田
村 豊 幸:熊
笹 エ キ ス(BambooLeafExtracts)の
抗 腫 瘍 作 用 に関 す る研 究
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一36一
理
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本 郁 夫,緒
方 幸 雄,金
森 政 人,中
沢 昭 三,辻
明 良:熊
崎 恭 子,中
山 貞 男,岡
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サ ヘ ル ス ⑭)投
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明治大学農学 部研究報告
第128号(2001)
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33)角
'1
田
聡,長
澤
弘:乳
腺 の 発 育 と 関 連 形 質 に 対 す る
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一38一
大 農 研 報 告(108):
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