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修 士 論 文
土石流頻発渓流における地下水流出
特性とそのモデル化
‐三重県いなべ市藤原岳西之貝戸川での事例‐
2013 年 3 月
三重大学大学院
生物資源学研究科
博士前期課程
共生環境学専攻
森林環境砂防学研究室
林
希宝
第1章
はじめに
第 2 章 研究方法
2.1 研究対象流域概要
2.1.1 西之貝戸川流域概要
2.1.2 西之貝戸川周辺の地形・地質
2.1.3 西之貝戸川中流部の地盤及び堆積物構成
2.2 水文データと観測機器
2.2.1 流量観測
2.2.2
2.2.3
第3章
水温観測
気温観測
長期間流出解析
3.1 流量の計算
3.1.1 マニング式で流量の算出
3.1.2 マニング式の検討
3.2 年間水収支
3.2.1 年間水収支の算出方法
3.2.2 蒸発散量の計算
3.2.3 西之貝戸流域の水収支
3.3 西之貝戸流域の流出率
3.4 流況曲線
3.5
長期間の流量のハイドログラフ
第 4 章 降雨流出解析
4.1 流出率の計算方法
4.2 前期雨量の算出方法
4.3 冬期の降雨イベント
4.4 夏期に通常の降雨イベント
4.4.1 地下水流量にピークが表れない場合
4.4.2 地下水流量にピークが表れる場合
4.5
4.6
4.7
豪雨の場合
降雨‐流出応答のパターンと降雨特性の関係
考察
第5章
5.1
5.2
5.3
5.4
タンクモデルの構築
従来の藤原岳タンクモデルの概要
タンクモデル各量の算出方法
従来のタンクモデルによるシミュレーション結果と検討
新たなタンクモデルの提案
5.5 考察
第 6 章 結果
謝辞
引用文献
はじめに
三重県鈴鹿山脈北部の藤原岳に源を発する西之貝戸川では,一般の渓流では
数 10 年から数 100 年の間隔で起こる土石流が,1999 年~2012 年の間に 11 回と
いう高頻度で発生している。
西之貝戸川の土石流の発生・流下区域は三重県によるボーリング調査の結果
によると,約 10m~20m にも及ぶ渓床堆積物により被覆されている。平常時や小
降雨時は,表面流は存在せず,渓床堆積物内とその下の岩盤内部に地下水が移
動し,一部は貯留されていると推察される。近年,渓床堆積物内では,豪雨時
にパイプ流が発生し,その変動を考慮した土石流発生モデルを検討していく必
要があることが提案された(山田ら,2009)。その後,西之貝戸川では,豪雨時
の地下水動態についての観測は積極
的になされるようになった。平山(2010)は,2009 年 10 月 7 日の降雨におい
て渓床堆積物中のパイプ孔流を観測し,パイプ孔の存在を確認した。更にパイ
プ流噴き出しは土石流発
生の前段階であると考えた。堀内(2011)は,パイプ流発生時における,地下
水の水温変化を観測した。花田(2011),佐藤(2012)はパイプ流の発生条件を
検討した。しかしながら,渓床堆積物内における長期にわたる地下水変動は観
測されていない。
降雨は土石流の誘因であり,降雨から土石流の発生を予測することに関する
研究が多くなされている。土石流は累加雨量がある限界値を超える時発生する
(平野ら,1987)。実効雨量とタンクモデルを用い土石流の発生予測を提案した
研究(鈴木ら,1979・牧原ら 1993)等がなされた。土石流発生時の渓床堆積物
の水分動態を捉えるために,土石流発生域において現地観測が行なわれた(速
見ら,2010)。予測を目的とした研究は土石流の発生限界に注目し,短期間の降
雨を対象とした研究が多かった。豪雨時の地下水変動パターンは流域の貯留状
態に大きく依存するので,それを評価するには流域の水収支と地下水の貯留変
化を解明する長期間流出モデルの構築が必要である。
本研究では,藤原岳の渓床堆積物中の地下水の短期,中期,長期の流出特性
を明らかにし,地下水の流出量と水温を長期間に現地観測し,降雨‐流出特性
を考察し,長期間の地下水変化を把握し,長期間の水収支と月別の流出率等地
下水の特性を解明した。次いで,その結果に基づいて地下水流出のタンクモデ
ルを提案することを目的とする。
1
第2章
2.1
2.1.1
研究方法
研究対象流域概要
西之貝戸川流域概要
西之貝戸川は,鈴鹿山系北部の藤原岳(標高 1,144.8 m)の北東斜面に流域を
持つ員弁川水系の二級河川真名川の右支流に当たる。図‐2.1 に示すように同流
域は左支川を1つ,右支川を 3 つ持つ渓流であり,周辺の流域を含め土石流危
険渓流に指定されている。本研究では同流域内の左支川は対象外とした。左支
川を除いた西之貝戸川の流域面積は 0.75km2,
標高は約 400m,流路延長は 2.9km,
流域最遠点から真名川合流部までの平均勾配は 18°であり,調査地の左岸,右
岸の勾配は 45°以上の V 字型渓谷である。1999 年から多発した土石流により,
渓谷は 20m 以上の厚さで渓床河床堆積物が堆積している(写真‐2.1)。
2012 年現在,大貝戸集落の直上流に 6 基の堰堤と導流堤が建設されており,
本研究では地下水流量と水温の観測は第 6 号砂防堰堤で行った。第 6 号堰堤は
高 14.5m,上流法 1:0.5,下流法 1:0.2 で岩着している(写真‐2.2)。
2
調査地
第6号砂防堰堤
いなべ市
藤原町
図‐2.1
西之貝戸川流域図
3
写真‐2.1.1
第 6 号砂防堰堤の直上流部における渓床堆積物
(撮影年月日:2012 年 9 月 20 日)
4
写真‐2.1.2
第 6 号砂防堰堤
(撮影年月日:2011 年 7 月 9 日)
5
2.1.2
西之貝戸川周辺の地形・地質
藤原岳頂上から北西の尾根によって連なった御池岳,鈴ヶ岳の頂上までの一
帯は,緩傾斜が広がり,カルスト地形を呈し藤原岳山頂の周辺には石灰岩地質
に特有のドリーネが見られる。藤原岳から御池岳,鈴ヶ岳に至る尾根を挟んだ
両側斜面の上部は,谷の発達が少なく,西之貝戸川が流下する藤原岳東側斜面
の上部も同様である。しかし,西之貝戸川のある東側斜面は,頂上付近の尾根
部とは対照的に急崖をなしており,顕著な V 字谷が形成されている(近藤ら,
2003)。
藤原岳周辺の地質は,美濃帯の中・古生層で構成される。この中・古生層は,
緑色岩‐石灰岩層の霊仙山相と砂岩・泥岩を主とする砕屑岩層の地質郡(大君
ヶ畑層など)に大別され,前者が後者の上に衝上断層を介して載っている。こ
れらが一志断層と,藤原岳の西側を北西‐南東方向に位置する御池断層によっ
て区切られた内側に存在する(近藤ら,2003)。
西之貝戸川流域は,主に二畳紀の霊仙山相によって構成されている。渓流沿
いに小規模な断層が存在し,南側の石灰岩層と北川の霊仙山相の石灰岩‐チャ
ート‐緑色岩類の互層との境界を成している。また,断層の大部分は崖錐堆積
物によって覆い隠されている(近藤ら,2004)。
西之貝戸川の主な地質は石灰岩であり,渓岸堆積物の上層には堆積物が雨水
の影響により再固結したさざれ石(石灰岩質角礫岩)の露頭が存在し,土石流
堆積物の中に混在している。また,上流部から源頭部にかけて基岩の間に断層
と思われる泥岩質の層が挟まれている箇所が多く見られた(小林,2006)。
6
2.1.3
西之貝戸川中流部の地盤及び堆積物構成
西之貝戸川中流部で,三重県桑名建設事務所により 2010 年に行われたボーリ
ング調査の結果によると,河床表面約 0.5m は,土石流堆積物である玉石,その
下位は河床堆積物である砂礫層,粘土混じり砂礫層,粘土質砂礫層が堆積して
いることが明らかにされた。一部では下位に礫混じり粘土層を薄く挟んでいる
箇所も見られた。ボーリング掘削位置により堆積深は一様でないものの,概ね
10~20m ほど河床堆積物が堆積していると見られ,主に土石流の堆積物からなる。
基盤は石灰岩で亀裂が多く,地下水は岩盤内の割れ目を浸透していると想定さ
れる(三重県桑名建設事務所他,2010)。
写真-2.1.3 に例として,ボーリング孔 Br.8 のボーリングコア写真を示す。
実際にコアを見ると,岩盤のコアの多くが 5cm 程度,最大で 16cm ほどの長さで
割れており,5cm 程度の間隔で亀裂等のもろい部分があると考えられる。22m 深
のコアには 3mm 程度の亀裂が 10cm ほど連続しているものが確認できた。また,
部分的に粘土質なコアが見られたが,礫も混ざっており難透水層となるほどで
はないと考えられた(堀内,2011)。
7
写真-2.1.3 ボーリングコア ボーリング孔 Br.8 の例
(縦方向の数字はボーリングコア採取深度(m)を表す)
(三重県桑名建設事務所)
8
2.2
水文データと観測機器
本研究で用いる水文データは第 6 号砂防堰堤の最下段水抜き孔から排出され
る地下水の流量,地下水の水温,調査地の気温と降雨量である。観測期間は 2011
年 11 月 13 日~2012 年9月 18 日である。2012 年9月 18 日に土石流が発生した
際,観測機器が壊れたため,2012 年9月 18 日以降は観測を中止した。降雨量の
データは三重県桑名建設事務所から提供していただいた。
2.2.1
流量観測
地下水流量を観測するために,藤原岳の第 6 号砂防堰堤の最下段の左岸と右
岸の水抜孔に超音波水位計を写真-2.1.3 示すように 1 基ずつ設置した。水抜孔
から流出する地下水の水位を観測し,流量換算を行った。
写真-2.1.4
超音波水位計の設置
超音波水位計は U-GAGE QT50U シリーズ超音波センサであり,検出距離は 200mm
~8m,最小検出範囲は 20mm である。電源は 12V バッテリー3台(写真-2.1.5)
とソーラーパネル(30W)2台(写真-2.1.6)である。記録媒体は OPUS 200(i)
(写真-2.1.7)を使用し,記録間隔を 10 分間隔で行った。
9
写真-2.1.5
バッテリーの交換作業
写真-2.1.6
ソーラーパネル
10
写真-2.1.7
記録媒体
11
OPUS200(i)
2.2.2
水温観測
地下水水温を観測するために,水抜き孔直下のバケツ内に Trutrack 社製の静
電容量式水位計(写真-2.1.8)を写真-2.1.9 で示すように設置した。
静電容量式水位計はデータロガー内蔵の水位・水温・気温のセンサが付いて
おり,外部電源不要の内蔵電池によって動作する。今回の観測では水温を計測
するために使用した。内蔵センサの測定範囲は 0 から 70℃であり,精度は±0.3℃
である。観測方法は,パソコンと接続するコネクタ部を上から落ちてくる水の
衝撃から守るため,WT200 頭部へスポンジを巻きつけた。また水抜孔直下に 120l
バケツを設置し,排水をバケツで受け止めて,バケツに WT200 を差し込めるよ
うに加工を行い,設置した。記録間隔は 10 分間に設定,記録モードはリングメ
モリーとした。
但し,雨が強い時,右岸側の水抜き孔からの落下水はバケツに落ち込まなか
ったので,本研究の水温データは観測した左岸側の水抜き孔から落下する地下
水を使用した。
12
写真-2.1.8
写真-2.1.9
静電容量式水位計
第 6 号砂防堰堤左岸側最下段水抜き孔から
排出される地下水の水温の観測
13
2.2.3
気温観測
蒸発散量の算出のために,調査地の気温を観測した。ソーラーパネルにボト
ルを掛け,ボトルの中に温度計を設置した(写真-2.1.10)。4 月と 5 月は欠測
したため,代わりに桑名市消防本部いなべ北分署が測定したデータを利用した。
ボトルの中に温度計を設
置した
写真-2.1.10
調査地気温の観測
14
第3章
3.1
地下水流出実態
流量の計算
長期間の観測なので,収集した水文データは多少に欠測値や特異値があった。
そこで,データをまとめる前に,観測した生データの補正と補完を行った。超
音波水位計によって得られたデータを用い,水面までの距離を基に,次の方法
により,流量へ換算した。
3.1.1
マニング式による流量の算出
流量を算出する為に,水位から平均流速を求める。平均流速はマニング式を
用いて計算する。
…(3.1)
ここで,V:断面平均流速(m/s),n:マニングの粗度係数,R:径深(m),
I:動水勾配である
写真-3.1.1
第 6 号砂防堰堤の最下段水抜き孔に設置した
超音波水位計による水位計測方法
15
図-3.1.1
流量の計算方法
過去の流量測定事例によれば,水抜きの粗度係数 n は 0.018,動水勾配は 1.4°
であった(平山,2010)。水抜きの半径rは 0.3m,超音波水位計から管の底ま
での距離は 0.52mであった(写真 3.1.1)。図 3.1.1 の流量の計算方法を使用し,
水位データから流量を算出した。
16
3.1.2
マニング式の検討
平山(2010),花田(2011)は,第 6 号砂防堰堤の水抜き孔排水流量と水抜
き孔内での水流幅の関係から流量と流水幅の関係を求めた(図 3.1.2)。
0.03
y = 0.0001e12.726x
R² = 0.9854
0.025
流量(m3/s)
0.02
0.015
0.01
0.005
0
0
0.1
0.2
図-3.1.2
0.3
0.4
0.5
流水幅(m)
流水幅と流量の関係
表 3.1.1 に示すように,マニング式で計算した結果と実測した結果はほぼ一致
した。但し,水抜きの管は波状であるので,水深が小さい場合は,マニング式
が適用されないおそれがある,しかし,冬期の地下水流量が非常に小さくなる
時に,得られた流量の計算値と流量の実測値は大きな違いを認めなかった。従
って,本研究の流量計算はマニング式を利用できるとする。
表 3.1.1
実測の流量とマニング式で計算した流量の比較
流水幅(m)
実測の流量(m3/s)
マニング式で流量(m3/s)
0.16
0.00118
0.00109
0.2581
0.00289
0.00285
0.2813
0.00455
0.00457
0.3
0.00679
0.00680
0.3039
0.00631
0.00697
0.3538
0.01333
0.01341
0.4125
0.02643
0.02651
17
3.2
3.2.1
年間水収支
年間水収支の算出方法
年間水収支は,年間を通して流域に出入りする水の量をモデル化でおり,主
な構成要素は降雨,蒸発散,流出量と浸透量である。
図-3.1.3
西之貝戸流域に1年間の水収支の概念図
西之貝戸川の年間水収支の概念図を図-3.1.3 に示す。1 年間降雨のうち,あ
る程度の水は蒸発散としてなくなり,他の水は地表下に浸透する。浸透した水
は第 6 号砂防堰堤の水抜き孔と水抜き孔以外の所から流出する。水抜き孔以外
の所から流出した水は損失量と認め,損失量は基底流で流出すると仮定する。
豪雨時に表面流とパイプ流など中間流が発生する。
流域水収支法によると,
(3.2)式を得られる。長期間の流域水貯留量の変動量
を推定することは困難であるが,(3.2)式の他の項よりも相対的に小さくな
るので,
を 0 として損失量 G が求められる(鈴木,1985・稲葉,2009)。
R=Q+E+ G
…(3.2)
ここで,R:降雨量,Q:水抜きから流出量,E:蒸発散量, G:損失量,
:地下水貯留量の変動量である。
18
3.2.2
蒸発散量の計算
水収支の問題を考察する場合,蒸発散量の推定が一番難しい。蒸発散の機構
は地被の状況や気象条件などに影響されて複雑である。蒸発散量の計算式はハ
ーモン式,ペンマン式,パンマン・モンテース式,ソーンスウェイト式など種々
の計算式が提案されている。本研究で観測した気象データは気温しかないため,
蒸発散量の計算はソーンスウェイト式を採用した。ソーンスウェイト式は以下
の通り定義される。
EP=0.533DO(10tj/j)a
…(3.2)
a=6.75*10-7j3 -7.71*10-5j2 + 1.79*10-2j+0.49293
j=
(tj/5)1.514
ここで,Ep は可能蒸発散量(mm/d),tj は j 月の月の平均気温(℃),D0 は
可照時間(12 時/日を1とする)。
藤原岳の可照時間は「国立天文台天文情報センター暦計算室」というウェブ
サイトで簡単に計算することができる。計算の結果を表-3.1.2 に示す。
表-3.1.2
藤原岳の可照時間
月
可照時間(12 時/日)
月
可照時間(12 時/日)
1
0.836
7
1.184
2
0.905
8
1.117
3
0.995
9
1.029
4
1.087
10
0.940
5
1.165
11
0.858
6
1.203
12
0.816
19
表-3.1.3
西之貝戸流域の蒸発散量
年/月
可照時間
(12 時/日)
月平均気
温(℃)
可能蒸発散 蒸発散
量(mm/d)
比
実際蒸発散
量(mm/d)
月蒸発散
量(mm)
2011/11
0.858
7.0
0.78
0.84
0.66
19.8
2011/12
0.816
3.9
0.34
1.14
0.39
12.1
2012/1
0.836
1.4
0.09
0.74
0.07
2.1
2012/2
0.905
1.6
0.12
0.75
0.09
2.6
2012/3
0.995
5.3
0.63
1.12
0.70
21.8
2012/4
1.087
11.2
1.85
0.96
1.78
53.3
2012/5
1.165
15.9
3.15
0.8
2.52
78.2
2012/6
1.203
20.9
4.67
0.7
3.27
98.1
2012/7
1.184
23.9
5.49
0.67
3.68
114.1
2012/8
1.117
25.5
5.65
0.67
3.78
117.3
月平均気温は第 6 号砂防堰堤に設置された温度計で測ったデータを利用した。
欠測の 4 月と 5 月の気温は桑名市消防本部員弁北分署で測定されたデータを見
直し,使用した。藤原で測った気温は弁北分署で測定した気温より,約 3℃低い。
11 月のデータは 14 日~30 日までで,8 月のデータは 1 日~17 日までである。
ソーンスウェイト式はアメリカ合衆国の実測値に合うように経験的に定めら
れたもので,それ以外の地域に適用する場合には注意を要する。日本で実際の
蒸発散量はソーンスウェイト式により算出する可能蒸発散量より少なく,実用
的には可能蒸発散量の約7割前後の値と言われている(板寺一洋,2005)。その
ため,蒸発散比という経験的な乗数を乗じなければいけない。本研究の蒸発散
比は角屋の「山地小流域における蒸発散の推定」
(角屋睦ら,1989)という論文
で求める月別の蒸発散比を採用した。藤原岳にソーンスウェイト式で計算した
可能蒸発散量は月別の蒸発散比を乗じて実際の蒸発散量とした(表 3.1.3 西之
貝戸流域の蒸発散量)。
20
3. 2.3
西之貝戸流域の水収支
表-3.1.4
西之貝戸流域の月別水収支
月
月雨量(mm)
月蒸発散量(mm)
月流出高(mm)
損失量(mm)
2011/11
66
19.8
47.7
-1.5
2011/12
32
12.1
30.8
-10.9
2012/1
39
2.1
20.5
16.4
2012/2
121
2.6
27.1
91.3
2012/3
200
21.8
51.2
127
2012/4
495
53.3
85.8
355.9
2012/5
161
78.2
74.7
8.1
2012/6
573
98.1
95.0
379.9
2012/7
368
114.1
101.4
152.5
2012/8
212
117.3
50.3
44.4
西之貝戸流域の月別水収支を表 3.1.4 に示す。損失量は降雨量から蒸発散量と
水抜きから観測した流出高を引いた値である。
月降雨量の最大値は 6 月の 573mm,最小値は 12 月の 32mm であった。一
方,月流出量の最大値は 7 月の 101.4mm,最小値は 1 月の 20.5 mm であった。
11 月や 12 月の損失量はマイナスになった。降雨量が大きい 4 月,6 月と 7 月に,
月流出高は大きくなったが,損失量も大きくなった。雨は水抜き以外の所から
流出すると思われる。流出量は降雨量より 1 ヶ月遅れの傾向を示した。5 月の降
雨量は比較的少ないが,流出高が大きかった原因は 4 月に降雨量が多かったた
めと考えられる。
21
3. 3
西之貝戸流域の流出率
表-3.1.5
西之貝戸流域の月別流出率
月間蒸発
散量
月間流
出高
月間総
雨量
(mm)
(mm)
(mm)
2011/11
43.9
47.7
66
72.3%
22.1
215.8%
2011/12
12.1
30.8
32
96.1%
19.9
155.0%
2012/1
2.1
20.5
39
52.6%
36.9
55.6%
2012/2
2.6
27.1
121
22.4%
118.4
22.9%
2012/3
21.8
51.2
200
25.6%
178.2
28.8%
2012/4
53.3
85.8
495
17.3%
441.7
19.4%
2012/5
78.2
74.7
161
46.4%
82.8
90.1%
2012/6
98.1
95.0
573
16.6%
474.9
20.0%
2012/7
114.1
101.4
368
27.6%
253.9
39.9%
2012/8
117.3
50.3
212
23.7%
94.7
53.1%
月
月間流
出率
月間有
効降雨
(mm)
月間有効
流出率
西之貝戸流域の月別流出率を表 3.1.5 に示す。月間総雨量は桑名市事務所から
提供していただいた雨量データで,月間有効降雨は,月間総雨量から月間蒸発
散量を減した,地表面下に浸透した雨量である。
ρ=100* H / R
…(3.4)
ƒ =100*H/r=100*H/(R-E)
…(3.5)
ここで,ρは月間流出率,ƒ は月間有効流出率,H は水抜きから月間流出高(mm)
,
R は月間総雨量(mm),r は月間有効降雨(mm),E は月間蒸発散量(mm)。
月流出率の最大値は 12 月の 96.1%,最小値は 4 月の 17.3%であった。月有効
流出率の最大値は 11 月の 215.8%%,最小値は 4 月の 19.4%であった。観測期
間に 11 月や 12 月の有効流出率は 100%を超えた。一般的に,冬期に月流出率と
月有効流出率が高く,夏期に月流出率と月有効流出率が低い。
22
観測期間を 4 つの季節,冬(12 月~2 月),春(3 月~5 月),夏(6 月~8 月)
に分け,各季節の流出率を表 3.1.6 に示す。同様的に,
P=100* H1/ R1
…(3.6)
F=100*H1/r1=100*H1/(R1-E1)
…(3.7)
ここで,P は季節流出率,Fは季節有効流出率,H1は水抜きから季節流出高
(mm),R は季節総雨量(mm),r は季節有効降雨(mm),E は季節蒸発散量
(mm)。
季節的な観点からみると,水抜きから流出地下水の流出率と有効流出率は
20%~50%になった。
季節流出率=季節流出高/季節総雨量×100,季節有効流出率=季節流出高/季
節有効降雨×100。
表-3.1.6
西之貝戸流域の季節別流出率
季節
流出率P
有効流出率F
冬(12,1,2)
40.8%
44.7%
春(3,4,5)
24.7%
28.5%
夏(6,7,8)
21.4%
30.0%
23
3.4
流況曲線
流況曲線とは,河川のある地点での 1 年間の日平均流量について,横軸に 1
年間の日数をとり,縦軸に日流量をとって最大から順番に配列したものである。
森林などによる水源涵養機能の評価などによく利用され,流域の流出特性を把
握するための基本的な表現形式である。
図 3.1.4 は藤原岳の 2011 年 11 月 14 日から 2012 年 8 月 17 日まで地下水の
流況曲線である。
40
流出高(mm)
35
30
25
流出高(mm)
20
15
10
5
1
12
23
34
45
56
67
78
89
100
111
122
133
144
155
166
177
188
199
210
221
232
243
254
265
276
287
298
309
320
0
図-3.1.4
地下水の流況曲線
流況曲線は 1 年間のものであるが,2012 年 9 月 18 日に土石流が発生し,調
査地の超音波水位計,水温計などの観測機器は全部壊れてしまったので,土石
流後の観測は継続せず,9 月下旬から 11 月上旬までのデータは欠測であったが,
その間に豪雨を伴った大きい流量は現れなかった。故に,320 日の流況曲線と
360 日の流況曲線の形に大きな変化がないと思われる。
観測期間の日最大流出高は 2012 年 9 月 8 日の 34.7mm であり,日最小流出
高は 2012 年 1 月 18 日の 0.2mm であった。西之貝戸流域の流況曲線は「L」型
になっており,豊水期とそれ以外の時期の流量の差は大きいことが明らかとな
った。
24
3.5
流量のハイドログラフ
16
水温(℃)
14
12
10
左岸水温(℃)
8
6
0
0.8
流量(m3/s)
0.6
40
0.5
60
0.4
0.3
0.2
80
総流量(m^3/s)
流量(m3/s)
時間雨量(mm)
1時間雨量(mm)
100
0.1
0
図-3.1.5
120
水抜きにおける地下水の水温変化と流量ハイドログラフ
2011 年 11 月 13 日から 2012 年 9 月 18 日の第 6 号砂防堰堤の水抜きから流
出した地下水の水温変化と流量のハイドログラフを図 3.1.5 に示す。
水温計は 2 本設置したが,雨が強い時,右岸の水はバケツの中に落ち込まな
25
1時間雨量(mm)
20
0.7
かったので,本研究では左岸に観測した水温計のデータを使用した。
観測期間に地下水の水温はあまり変動せず,冬期は約 12℃弱で,夏期は約
12℃であった。冬期の雨が強い時,水温は下り,夏期の雨が強い時,水温が上
がった。その理由は,冬期の雨において,バケツの周りのたまった雪を融けた
ため,冷たい雪水はバケツ中に入り,バケツ内の水温を下がらせたと推定され
る,夏期の強い雨では,基底流が存在すると考えられる,雨は渓床堆積物より
深部まで浸透せず,渓床堆積物内を中間流として水抜きから流出したためと考
えられる。
11 月~2 月に雨は少なく,地下水貯留は低水位になった。12 月中旬から 2 月
上旬までに地下水の流出量は最小になったが,流量はゼロになる日がなかった。
最大の時間雨量は 2012 年 9 月 15 日に 96mm/hour であった。最大流出量は 2012
年 9 月 8 日に 0.85m3/s であった。
降雨によって流出応答は違うが,一般的に,地下水の流出応答と降雨強度は
正相関になる,降雨強度が強い時,流出応答は強く,明瞭な流出ピークが見ら
れ,降雨強度が弱い時,流出応答は弱い。2012 年 8 月 15 日頃のやや強い降雨
で,流量があまり増加しなかった理由は前期雨量が少ないためと考えられる。
26
第4章
流出解析
流出解析をする前に,本章の様々な指標と定義を紹介する。
4.1
流出率の計算方法
降雨流出解析では降雨流出の主要な部分を占める直接流出成分を対象として
解析が行われることが多い。雨量のうち直接流出として流出する分を有効雨量
といい,樹木遮断,窪地貯留,地中保留,地下水貯留などにより直接流出に寄
与しない分を損失雨量という。有効雨量と総雨量の比 f は流出率という。
流量(mm)
観測したデータを用いて有効雨量を求めるためには,ハイドログラフを直接
流出成分と基底流出成分に分離する。本研究では,ハイドログラフを直接流出
成分と基底流出成分に分離する方法は勾配急変点法を採用した(越前明,2004・
高崎忠勝,2009)。
図-4.1.1
勾配急変点法による直接流出と基底流出の分離
ハイドログラフにおける逓減曲線の変曲点 b 付近は,直接流出が終わった点
27
とみなされ,この点以後の曲線は,降雨特性と関係なく流域特性のみを表わす
ものと考えられる。下降部の流量を対数にとって片対数方眼紙にプロットする
と,図 4.1.1 のように第一変曲点 b が表面流出の終わった点,第二変曲点 c が
中間流出の終わった点で,この点 c が基底流出の始まる点であるとみなせる。
したがって,直接流出と基底流出は e と c を結び直線 ec を分離線とする。直
線 ec 上部分の流量は有効雨量にする。
4.2
前期雨量の算出方法
一般的に,前期降雨はその後の降雨イベントの降雨-流出応答に影響を与え
ると考えられる。
前期降雨は,一連の降雨(前後に 24 時間以上の無降雨期間があるひとまとま
りの降雨)の降り始め時刻から起算して,ある時間までの降雨を示す。時間の
決め方によって,前期雨量は変化する。通常の前期雨量は 1 週間前までの累積
降雨量を求めるが,土石流の研究では 24 時間前の前期雨量がよく採用される。
流出解析する前に,前期雨量の決定を行う。
雨が非常に強い時,地下水流出の損失量が高く,一方で,冬期に前期雨量は
少ないために,本研究では,夏期の降雨イベントから降雨がやや強く,流出応
答が顕著な降雨事例(E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7)を抽出し,前期雨量の算出方法
を検討する。
各降雨事例の異なる前期雨量の値とそれぞれの流出率を表 4.1.1 に示す。抽出
した事例のうち 4 事例は,2 日前までの前期降雨がゼロのため,2 日前までの前
期雨量の検討は意味ないと思われ,3 日前までの前期雨量から検討する。
表-4.1.1
異なる前期雨量の算出方法とそれぞれの流出率
前期雨量
E1
E2
E3
E4
E5
E6
E7
1 日前(mm)
0
6
0
17
0
0
0
2 日前 (mm)
1
33
64
17
0
0
0
3 日前(mm)
2
91
75
60
0
23
0
4 日前 (mm)
3
91
75
80
1
23
0
5 日前 (mm)
3
92
75
126
1
25
2
6 日前 (mm)
7
93
75
155
9
25
24
7 日前(mm)
8
94
85
155
18
26
358
流出率
4.9%
6.2%
8.4%
9.6%
6.8%
5.7%
6.8%
28
3日前の前期雨量
100
R² = 0.2203
90
降雨量(mm)
80
70
60
50
40
30
20
10
流出率(%)
0
0
2
図-4.1.2
4
6
8
10
12
3 日前の前期雨量と流出率の相関係数
4日前の前期雨量
100
R² = 0.3268
90
80
降雨量(mm)
70
60
50
40
30
20
10
流出率(%)
0
0
2
図-4.1.3
4
6
8
10
4 日前の前期雨量と流出率の相関係数
29
12
5日前の前期雨量
140
R² = 0.4992
120
降雨量(mm)
100
80
60
40
20
流出率(%)
0
0
2
図-4.1.4
4
6
8
10
12
5 日前の前期雨量と流出率の相関係数
6日前の前期雨量
180
R² = 0.6078
160
降雨量(mm)
140
120
100
80
60
40
20
流出率(%)
0
0
2
図-4.1.5
4
6
8
10
6 日前の前期雨量と流出率の相関係数
30
12
7日前の前期雨量
400
R² = 0.1059
350
降雨量(mm)
300
250
200
150
100
50
流出率(%)
0
0
2
図-4.1.6
4
6
8
10
12
7 日前の前期雨量と流出率の相関係数
降雨の流出率と 6 日前の前期雨量の相関性が一番強く,相関係数 R² は
0.6078 である,従って,藤原岳における 6 日前までの前期降雨は降雨イベント
の流出率に影響を与えると分かった。
31
流量(m3/s)
0.025
0.02
1
0.015
雨量
0.01
流量
図-4.3.1
0.02
0.01
図-4.3.2
2
0.035
0.025
雨量(mm)
0.015
流量(m^3/s)
流量(m3/s)
2
0.005
0
3
降雨イベント 2(2012 年 2 月 13 日~17 日)
32
雨量(mm)
0.035
雨量(mm)
13.01.09:10:…
13.01.18:40:…
14.01.04:10:…
14.01.13:40:…
14.01.23:10:…
15.01.08:40:…
15.01.18:10:…
16.01.03:40:…
16.01.13:10:…
16.01.22:40:…
17.01.08:10:…
17.01.17:40:…
18.01.03:10:…
18.01.12:40:…
18.01.22:10:…
19.01.07:40:…
19.01.17:10:…
20.01.02:40:…
20.01.12:10:…
20.01.21:40:…
21.01.07:10:…
21.01.17:00:…
22.01.02:30:…
22.01.12:00:…
22.01.21:30:…
23.01.07:00:…
23.01.16:30:…
0
13.02.17:10:00
13.02.20:50:00
14.02.00:30:00
14.02.04:10:00
14.02.07:50:00
14.02.11:30:00
14.02.15:10:00
14.02.18:50:00
14.02.22:30:00
15.02.02:10:00
15.02.05:50:00
15.02.09:30:00
15.02.13:10:00
15.02.16:50:00
15.02.20:30:00
16.02.00:10:00
16.02.03:50:00
16.02.07:30:00
16.02.11:10:00
16.02.14:50:00
16.02.18:30:00
16.02.22:10:00
17.02.01:50:00
17.02.05:30:00
17.02.09:10:00
流量(m3/s)
4.3
冬期の降雨イベント
西之貝戸流域の地下水流量が最も小さくなる時期は 1 月から 2 月までで,流
量は約 0.005m3/sになった。その間の降雨イベントを図 4.3.1,4.3.2,4.3.3 に
示す。
0
0.03
0.005
3
降雨イベント1(2012 年 1 月 13 日~23 日)
0
0.03
1
0.035
0
0.025
1
雨量
0.02
流量
0.015
2
0.01
雨量(mm)
流量(m3/s)
0.03
0.005
3
17.02.15:30:00
18.02.00:20:00
18.02.09:10:00
18.02.18:00:00
19.02.02:50:00
19.02.11:40:00
19.02.20:30:00
20.02.05:20:00
20.02.14:10:00
20.02.23:00:00
21.02.07:50:00
21.02.16:40:00
22.02.01:30:00
22.02.10:20:00
22.02.19:10:00
23.02.04:00:00
23.02.12:50:00
23.02.21:40:00
24.02.06:30:00
24.02.15:20:00
25.02.00:10:00
25.02.09:00:00
25.02.17:50:00
26.02.02:40:00
26.02.11:30:00
0
図-4.3.3
表-4.3.1
降雨イベント 3(2012 年 2 月 17 日~26 日)
冬期の降雨イベントの降雨特性と流出率
前期雨量
最大 10 分間雨量
総雨量
流出率
(mm)
(mm)
(mm)
(%)
降雨イベント 1
2
1
33
応答ない
降雨イベント 2
1
1
14
明瞭なピーク
を表れない
降雨イベント 3
0
1
46
8.8
冬期は,降雨事例が少なく,かつ降雨の強度と前期雨量が小さいが,降雨‐
流出応答のパターンは 3 つ認められた。第 1 のパターンは地下水の流出応答が
ほとんどない(図 4.3.2)。第 2 のパターンは流量が全体的に増えたが,明瞭な
流出ピークは良く表れない(図 4.3.1)。第 3 のパターンは流出ピークが明瞭に
現れる(図 4.3.3)。
表 4.3.1 より,総雨量は非常に小さかった時(降雨イベント 2),地下水流出
応答はほぼなかった。総雨量が 33mm の降雨イベント 1 の場合は,流量は増え
たが,明瞭な流出ピークは良く表れなかった。総雨量が 46mm の降雨イベント
3 は流出ピークが明瞭に現れ,流出率は 8.8%となった。冬期において,総雨量
は降雨‐流出応答に影響を与えると分かった。
33
14
0.03
12
0.025
0.02
0.015
図-4.4.1
0.025
0.02
図-4.4.2
34
雨量(mm)
10
流量(m^3/s)
流量(m3/s)
水温(℃)
8
0.035
0.03
雨量
流量
水温
降雨イベント 5(2012 年 8 月 7 日~16 日)
6
0.01
4
0.005
2
0
0
10
8
0.015
6
0.01
4
0.005
2
0
0
水温(℃)/ 雨量(mm)
0.035
水温(℃)/ 雨量(mm)
11.06.09:20:00
11.06.12:00:00
11.06.14:40:00
11.06.17:20:00
11.06.20:00:00
11.06.22:40:00
12.06.01:20:00
12.06.04:00:00
12.06.06:40:00
12.06.09:20:00
12.06.12:00:00
12.06.14:40:00
12.06.17:20:00
12.06.20:00:00
12.06.22:40:00
13.06.01:20:00
13.06.04:00:00
13.06.06:40:00
13.06.09:20:00
13.06.12:00:00
13.06.14:40:00
13.06.17:20:00
13.06.20:00:00
13.06.22:40:00
流量(m3/s)
4.4.1
07.08.00:00:00
07.08.09:40:00
07.08.19:20:00
08.08.05:00:00
08.08.14:40:00
09.08.00:20:00
09.08.10:00:00
09.08.19:40:00
10.08.05:20:00
10.08.15:00:00
11.08.00:40:00
11.08.10:20:00
11.08.20:00:00
12.08.05:40:00
12.08.15:20:00
13.08.01:00:00
13.08.10:40:00
13.08.20:20:00
14.08.06:00:00
14.08.15:40:00
15.08.01:20:00
15.08.11:00:00
15.08.20:40:00
16.08.06:20:00
16.08.16:00:00
流量(m3/s)
4.4
夏期に通常の降雨イベント
地下水流量にピークが表れない場合
降雨イベント 4(2012 年 6 月 11 日~13 日)
14
12
表-4.4.1
夏期に流量ピークが表れない降雨イベントの降雨特性と流出率
前期雨量
最大 10 分間雨量
総雨量
流出率
(mm)
(mm)
(mm)
(%)
71
2
19
明瞭なピーク
16
7
45
明瞭なピーク
降雨
イベント 4
降雨
イベント 5
を表れない
を表れない
降雨イベント 4(図 4.4.1)と降雨イベント 5(図 4.4.2)の流出応答のパター
ンは流量が全体的に増えたが,明瞭な流出ピークは良く表れない。なお,地下
水の水温はほとんど変動がなく,約 12℃になった。
表 4.4.1 より,降雨イベント 4 に明瞭なピークが表れない原因は総雨量が小さ
かった,降雨イベント 5 に明瞭なピークが表れない原因は前期雨量が小さかっ
たと考えられる。
35
4.4.2
地下水流量にピークが表れる場合
夏期には降雨に応じて明瞭な流量ピークが現れる事例が多かった。ピーク流
量が 0.05m3/s 以上になった事例を抽出し,降雨-流出特性を解析する。
累積雨量とは,雨の降り始めから流量ピークまでの累積雨量,ピークの遅れ
の時間とは,雨量ピークと流量ピークの遅れ時間,増水時間とは,増水から流
量ピークまでの時間,減衰時間とは,流量ピークから直接流出成分が無くなる
までの時間である。
各降雨イベントが年間ハイドログラフに占める時期を図 4.4.3 に示す。丸中の
番号は降雨イベントを表わす。
0.85
0
0.8
0.75
20
0.7
0.65
総流量(m^3/s)
流量(m3/s)
0.55
15
40
時間雨量(mm)
11
0.5
0.45
60
0.4
0.35
13
0.3
80
12
0.25
8
0.2
7
0.15
6
0.1
14
9
10
100
0.05
0
120
図-4.4.3
年間ハイドログラフにおける各降雨イベントの時期
36
雨量(mm)
流量(m3/s)
0.6
0.25
12
0.15
雨量
10
流量
8
6
0.1
4
0.05
2
0
0
図-4.4.4
0.3
14
0.25
12
雨量
0.2
流量
0.15
0.1
図-4.4.5
降雨イベント 7(2012 年 4 月 5 日~12 日)
37
10
8
水温
6
4
0.05
2
0
0
雨量(mm)
14
水温(℃)/ 雨量(mm)
29.03.00:00:00
29.03.08:20:00
29.03.16:40:00
30.03.01:00:00
30.03.09:20:00
30.03.17:40:00
31.03.02:00:00
31.03.10:20:00
31.03.18:40:00
01.04.03:00:00
01.04.11:20:00
01.04.19:40:00
02.04.04:00:00
02.04.12:20:00
02.04.20:40:00
03.04.05:00:00
03.04.13:20:00
03.04.21:40:00
04.04.06:00:00
04.04.14:20:00
04.04.22:40:00
05.04.07:00:00
05.04.15:20:00
05.04.23:40:00
06.04.08:00:00
流量(m3/s)
0.2
05.04.00:00:00
05.04.07:50:00
05.04.15:40:00
05.04.23:30:00
06.04.07:20:00
06.04.15:10:00
06.04.23:00:00
07.04.06:50:00
07.04.14:40:00
07.04.22:30:00
08.04.06:20:00
08.04.14:10:00
08.04.22:00:00
09.04.05:50:00
09.04.13:40:00
09.04.21:30:00
10.04.05:20:00
10.04.13:10:00
10.04.21:00:00
11.04.04:50:00
11.04.12:40:00
11.04.20:30:00
12.04.04:20:00
12.04.12:10:00
12.04.20:00:00
流量(m3/s)
0.3
降雨イベント 6(2012 年 3 月 29 日~4 月 6 日)
0.2
0.15
15.04.00:00:00
15.04.08:50:00
15.04.17:40:00
16.04.02:30:00
16.04.11:20:00
16.04.20:10:00
17.04.05:00:00
17.04.13:50:00
17.04.22:40:00
18.04.07:30:00
18.04.16:20:00
19.04.01:10:00
19.04.10:00:00
19.04.18:50:00
20.04.03:40:00
20.04.12:30:00
20.04.21:20:00
21.04.06:10:00
21.04.15:00:00
21.04.23:50:00
22.04.08:40:00
22.04.17:30:00
23.04.02:20:00
23.04.11:10:00
流量(m3/s)
0.25
12
0.2
0.15
図-4.4.6
図-4.4.7
雨量
10
流量
8
水温
6
0.1
4
0.05
2
0
0
0.3
14
0.25
12
10
雨量
流量
8
水温
0.1
9
降雨イベント 9(2012 年 4 月 15 日~23 日)
38
6
4
0.05
2
0
0
水温(℃)/ 雨量(mm)
14
水温(℃)/ 雨量(mm)
13.04.22:50:00
14.04.05:40:00
14.04.12:30:00
14.04.19:30:00
15.04.02:20:00
15.04.09:10:00
15.04.16:00:00
15.04.22:50:00
16.04.05:40:00
16.04.12:30:00
16.04.19:20:00
17.04.02:10:00
17.04.09:00:00
17.04.15:50:00
17.04.22:40:00
18.04.05:30:00
18.04.12:20:00
18.04.19:10:00
19.04.02:00:00
19.04.08:50:00
19.04.15:40:00
19.04.22:30:00
20.04.05:20:00
20.04.12:10:00
20.04.19:00:00
流量(m3/s)
0.3
降雨イベント 8(2012 年 4 月 13 日~20 日)
ント 6
ント 7
ント 8
ント 9
ント 10
25.08.00:00:00
25.08.07:40:00
25.08.15:20:00
25.08.23:00:00
26.08.06:40:00
26.08.14:20:00
26.08.22:00:00
27.08.05:40:00
27.08.13:20:00
27.08.21:00:00
28.08.04:40:00
28.08.12:20:00
28.08.20:00:00
29.08.03:40:00
29.08.11:20:00
29.08.19:00:00
30.08.02:40:00
30.08.10:20:00
30.08.18:00:00
31.08.01:40:00
31.08.09:20:00
31.08.17:00:00
01.09.00:40:00
01.09.08:20:00
01.09.16:00:00
01.09.23:40:00
流量(m3/s)
14
0.25
12
0.2
0.15
ピーク流
量
(m3/s)
雨量
10
流量
8
水温
図-4.4.8
6
0.1
4
0.05
2
0
0
表-4.4.2
ピーク雨量
(mm/10min)
前期
累積
流
ピーク
雨量
雨量
出率
遅れ時
(mm)
(mm)
(%)
間
39
増水
時間
めから
増水ま
での時
水温(℃)/ 雨量(mm)
0.3
降雨イベント 10(2012 年 8 月 25 日~9 月 1 日)
降雨イベント 6~10 の降雨特性と流出特性
降り始
減衰
時間
間
降雨イベ
降雨イベ
降雨イベ
降雨イベ
降雨イベ
0.068
11
25
57
5.7
3:40
9:00
0:50
14:00
0.062
2
12
61
5.9
2:20
6:40
0:40
15:00
0.133
12
7
20
4.9
3:20
3:10
0:20
11:00
0.121
3
93
108
6.2
2:20
20:10
0:30
17:20
0.085
9
10
56
3.8
1:00
4:10
0:20
7:00
表-4.4.3
降雨イベント 6~10 においてそれぞれの
前期雨量と流出率の相関係数
30
前期雨量(mm)
25
R² = 0.5735
20
15
10
5
0
0
1
2
3
4
5
6
7
流出率(%)
表 4.4.2 より,ピーク流量が 0.05m3/s 以上になった降雨イベントでは,一般
的に累積雨量が 50mm 以上であった。降雨イベント 8 の累積雨量ただ 20mm で
あったが,ピーク雨量は 12mm であったので,ピーク流量は 0.121 m3/s になっ
た。
明瞭なピークが出現した降雨イベントでは水温が変化した。その原因は夏期
の強い雨において,より冷たい基底流が押し出され,基底流成分と渓床堆積物
内に発生した中間流はバケツ中の水温に複雑な影響を与えたと推定される。
雨のピークと流量ピークの遅れ時間は約 1~3 時間,雨を降り始めから増水開
始までの時間は約 20 分~50 分であった。
雨の継続時間が長ければ,減衰時間が長くなった。
表 4.4.3 より,ピーク流量が 0.05m3/s 以上になった降雨イベントでは,前期
雨量と流出率の相関係数は 0.5735 である。
40
4.5
豪雨の場合
ここでいう豪雨とはピーク流量が 0.2 m3/s 以上にならせた降雨とした。通常時
と豪雨時に堰堤の水抜きのイメージを写真 4.5.1 と写真 4.5.2 に示す。
写真-4.5.1
通常時に水抜き孔から排出される地下水の状況
(撮影年月日:2012 年 7 月 2 日)
写真-4.5.2
豪雨時に水抜き孔から排出される地下水の状況
(撮影年月日:2012 年 7 月 3 日)
41
27.06.00:00:00
27.06.10:10:00
27.06.20:20:00
28.06.06:30:00
28.06.16:40:00
29.06.02:50:00
29.06.13:00:00
29.06.23:10:00
30.06.09:20:00
30.06.19:30:00
01.07.05:40:00
01.07.15:50:00
02.07.02:00:00
02.07.12:10:00
02.07.22:20:00
03.07.08:30:00
03.07.18:40:00
04.07.04:50:00
04.07.15:00:00
05.07.01:10:00
05.07.11:20:00
05.07.21:30:00
06.07.07:40:00
06.07.17:50:00
07.07.04:00:00
07.07.14:10:00
流量(m3/s)
0.4
12
雨量
0.3
流量
図-4.5.1
0.25
0.2
図-4.5.2
10
水温
8
0.2
6
4
0.1
2
0
0.3
雨量
10
流量
42
11
0.15
10
8
0.1
6
0.05
4
2
0
0
降雨イベント 12 と 13(2012 年 6 月 27 日~7 月 7 日)
水温(℃)/ 雨量(mm)
0.5
雨量(mm)
13.06.04:30:00
13.06.11:30:00
13.06.18:30:00
14.06.01:30:00
14.06.08:30:00
14.06.15:30:00
14.06.22:30:00
15.06.05:30:00
15.06.12:30:00
15.06.19:30:00
16.06.02:30:00
16.06.09:30:00
16.06.16:30:00
16.06.23:30:00
17.06.06:30:00
17.06.13:30:00
17.06.20:30:00
18.06.03:30:00
18.06.10:30:00
18.06.17:30:00
19.06.00:30:00
19.06.07:30:00
19.06.14:30:00
19.06.21:30:00
20.06.04:30:00
20.06.11:30:00
20.06.18:30:00
流量(m3/s)
各豪雨の降雨特性とそれぞれの流出特性の解析を以下の図と表に示す。
14
0
降雨イベント 11(2012 年 6 月 13 日~6 月 20 日)
18
16
14
12
08.09.00:00:00
08.09.07:10:00
08.09.14:20:00
08.09.21:30:00
09.09.04:40:00
09.09.11:50:00
09.09.19:00:00
10.09.02:10:00
10.09.09:20:00
10.09.16:30:00
10.09.23:40:00
11.09.06:50:00
11.09.14:00:00
11.09.21:10:00
12.09.04:20:00
12.09.11:30:00
12.09.18:40:00
13.09.01:50:00
13.09.09:00:00
13.09.16:10:00
13.09.23:20:00
14.09.06:30:00
14.09.13:40:00
14.09.20:50:00
15.09.04:00:00
15.09.11:10:00
15.09.18:20:00
流量(m3/s)
0.25
12
雨量
0.2
0.15
図-4.5.3
0.4
0.3
図-4.5.4
10
流量
水温
8
6
0.1
4
0.05
2
0
0
0.6
0.5
16
雨量
流量
12
水温
0.2
8
0.1
4
0
0
降雨イベント 15(2012 年 9 月 8 日~9 月 15 日)
43
水温(℃)/ 雨量(mm)
14
水温(℃)/ 雨量(mm)
14.07.00:00:00
14.07.07:50:00
14.07.15:40:00
14.07.23:30:00
15.07.07:20:00
15.07.15:10:00
15.07.23:00:00
16.07.06:50:00
16.07.14:40:00
16.07.22:30:00
17.07.06:20:00
17.07.14:10:00
17.07.22:00:00
18.07.05:50:00
18.07.13:40:00
18.07.21:30:00
19.07.05:20:00
19.07.13:10:00
19.07.21:00:00
20.07.04:50:00
20.07.12:40:00
20.07.20:30:00
21.07.04:20:00
21.07.12:10:00
21.07.20:00:00
流量(m3/s)
0.3
降雨イベント 14(2012 年 7 月 14 日~7 月 21 日)
20
降雨イベント 11~15 の降雨特性と流出特性
表-4.5.1
ピーク流
流出
ピーク
率
遅れ時
(%)
間
221
9.9
3:10
12:40
12:40
75
53
8.4
2:00
7:20
7:20
17
155
66
9.6
2:10
3:10
14:20
0.264
11
9
67
6.8
2:10
8:00
4:10
0.420
16
31
110
7.0
2:50
12:40
12:00
ピーク雨量
前期雨
累積雨
(mm/10min)
量(mm)
量(mm)
0.478
8
109
0.261
7
0.197
量
(m^3/s)
減衰時
増水時間
間
降雨イベ
ント 11
降雨イベ
ント 12
降雨イベ
ント 13
降雨イベ
ント 14
降雨イベ
ント 15
表-4.5.2
降雨イベント 11~15 においてそれぞれの
前期雨量と流出率の相関係数
180
160
R² = 0.8718
140
120
100
80
60
40
20
0
0
2
4
6
44
8
10
12
表 4.5.1 より,豪雨の直接流出率は前述の降雨(表 4.4.2)より高い。豪雨の
累積雨量は 53mm 以上である。累積雨量が大きかったため,中間流成分が増え,
流出率が高くなったと考えられる。
豪雨時に地下水の水温が変化した,その原因は前述の降雨(表 4.4.2)同様に,
豪雨において,より冷たい基底流が押し出され,基底流成分と渓床堆積物内に
発生した中間流はバケツ中の水温に複雑な影響を与えたと推定される。
豪雨の雨量ピークと流量ピークの遅れ時間は約 2~3 時間,雨を降り始めから
増水開始までの時間は約 20 分~50 分であった。
増水時間は 13 時間以内,雨の継続時間が長ければ,減衰時間が長くなった。
表 4.4.3 より,豪雨イベントでは,前期雨量と流出率の相関係数は 0.8718 で
ある。
45
4.6
降雨‐流出応答のパターンと降雨特性の関係
観測結果から,藤原岳西之貝戸川における降雨-流出応答には,3 つのパター
ンがあることが明らかにされた。1 つ目は,降雨に対する流出応答が表れないパ
ターン,2 つ目は地下水の流量は増えるが明瞭な流量ピークは現れないパターン,
3 つ目は流量ピークが明瞭に出現するパターンである。
観測期間に降雨に対する流出応答が表れない降雨イベントの前期降雨,10 分
間雨量,累積雨量を表 4.6.1 に示す。流量は増えるが明瞭な流量ピークは現れな
い降雨イベントの特性を表 4.6.2 に示す。流量ピークが明瞭に出現する降雨イベ
ントの降雨特性を表 4.6.3 に示す。
表-4.6.1
降雨に対して流出の応答が見られない降雨イベントの降雨特性
前期雨量(㎜)
10 分間雨量(㎜)
累積雨量(㎜)
26
1
7
33
1
2
35
1
2
37
1
3
12
1
1
0
1
2
0
2
16
16
1
6
1
1
14
88
1
9
3
1
7
2
2
4
71
2
19
58
2
4
46
表-4.6.2
明瞭な流量ピークが現れない降雨イベントの降雨特性
前期雨量(㎜)
10 分間雨量(㎜)
累積雨量(㎜)
2
2
18
4
3
23
58
1
14
3
5
15
27
7
34
58
5
22
39
6
30
22
3
56
19
3
48
212
2
50
2
3
55
0
3
61
1
4
56
104
4
48
表-4.6.3
明瞭な流量ピークが現れる降雨イベントの降雨特性
前期雨量(㎜)
10 分間雨量(㎜)
累積雨量(㎜)
25
11
57
12
2
61
8
12
20
93
3
108
21
4
103
109
8
221
383
5
84
15
7
70
75
7
53
155
17
66
9
11
67
10
9
59
20
10
398
31
16
110
158
17
129
(赤字は豪雨事例)
47
観測期間の全部降雨イベントを用い,座標空間を作成する。x 軸は累積雨量,
y 軸は 10 分間雨量,z 軸は前期雨量を示す(図 4.6.1)。L は流出の応答が見ら
れない降雨イベント,M は流量増えるが明瞭な流量ピークが現れない降雨イベ
ント,H は明瞭な流量ピークが現れる降雨イベント。豪雨イベントを黄色の縦
棒に示す。
H
400
400
L:応答が見られない事例
M
300
前 期 雨 量 (mm )
350
M:流量ピークが見られない事例
H:流量ピークが現れる事例
300
250
250
200
L
200
ML
L M
L
M LLL
LLL
LM
M M
LMMMH
M
150
H H
100
50
MM MMM H
H
H
H
150
100
H
50
H
H
0
H
H
0
H
0
50
0
H
100
2
4
6
150
8
200
250
累積
雨量
(mm
)
図-4.6.1
300
350
18
16
14
10
)
(mm
量
間雨
10分
12
降雨‐流出応答パターンと降雨特性の関係
48
前 期 雨 量 (mm )
350
4.7
考察
降雨‐流出応答パターンが「応答が見られない」の場合は,10 分間雨量と累
積雨量は座標の原点の付近になる(図 4.6.1)
。10 分間雨量で 2mm 以下,累積
雨量で 20mm 以下,前期雨量の範囲で 0~88mm である。
降雨‐流出応答パターンが「流量増えるが明瞭な流量ピークを現れない」場
合は,10 分間雨量の範囲で 1~7mm,累積雨量の範囲で 14~61mm,前期雨量
の範囲で 0~212mm である。前期雨量が大きくても,10 分間雨量と累積雨量が
小さい場合は,明瞭な流量ピークが現れないことが分かった。
降雨‐流出応答パターンが「明瞭な流量ピークを現れる」場合は,10 分間雨
量の範囲で 2~17mm,累積雨量でほぼ 50mm 以上であり,前期雨量の範囲で 8
~383mm である。さらに,豪雨の場合は,10 分間雨量で 7mm 以上,累積雨量
で 53mm 以上,前期雨量の範囲で 9~383mm である。前期雨量と累積雨量が小
さくても,10 分間雨量が大きい場合(表 4.6.3 の 3 行目)は,明瞭な流量ピー
クが現れることが分かった。
49
第5章
5.1
タンクモデルの構築
従来の藤原岳タンクモデルの概要
タンクモデルは,1976 年に菅原によって提案された流出計算法である(菅原
正巳,1972)。仮想の貯留型タンクを複数段組み合わせることにより,流出機構
をモデル化するものである。対象流域の大きさや特性に応じて,組み合わせる
タンクの段数や配置を変化させることができる。ただし,流出機構から精度高
いシミュレート結果を得るためには,孔の位置及び孔の係数などのパラメータ
を適切に設定する必要がある。
藤原岳では土壌雨量指数を算出する為に,3 段タンクモデルが作られた(藤原
岳土石流発生基準雨量等検討委員会 , 2002)。このタンクモデルの模式図を図
5.1.1 に示す。
タンクモデルの各定数は以下の値が用いられる。
L11(mm)
L12(mm)
L2(mm)
L3(mm)
15
60
15
15
α11(1/hr) α12(1/hr) α2(1/hr) α3(1/hr)
0.10
0.15
0.05
0.01
β1(1/hr) β2(1/hr) β3(1/hr)
0.12
0.05
0.01
この定数は,(Ishihara & Kobatake,1979)によって求められた木津川流域
のパラメータである。地質が異なれば降雨流出特性は異なるため,指数値も変
化するが,降雨イベントごとの指数値が大きく変わることが少ないため,花崗
岩を多く含む地層の定数は全国一律に採用している(岡田,2001)。
50
図-5.1.1 藤原岳の土石流発生限界基準雨量
を検討するためのタンクモデル模式図
51
5.2
タンクモデル各量の算出方法
ある時刻を t,それからΔt だけ経過した時刻を t+Δt とすると,タンクモデ
ルの各量は以下の式によって求められる。なお,文中の記号は図 5.1.1 の記号
と対応している。
1 )各タンクからの流出量 Q
流出量 Q は,貯留量 S と流出孔の位置 L,流出係数αによって求まる。各流出
孔からの流出量はそれぞれ,以下の式で表される。
S1(t)>L11 の時,
Q11(t)= α11 ×〔S1(t)-L11〕
・・・(5.1)
S1(t)>L12 の時,
Q12(t)= α12 ×〔S1(t)-L12〕
・・・ (5.2)
S2(t)>L2 の時,
Q2(t) = α2 ×〔S2(t)-L2〕
・・・ (5.3)
S3(t)>L3 の時,
Q3(t) = α3 ×〔S3(t)-L3〕
・・・ (5.4)
S≦L のとき各流出孔からの流出量は0である。流出量 Q は各流出孔からの流出
量の合計で表され,以下の式で求まる。
Q(t) = Q11(t) + Q12(t) + Q2(t) + Q3(t)・・・ (5.5)
2 )各タンクからの浸透量 Z
浸透量 Z は貯留高 S と浸透係数βの積によって求められる。各浸透孔からの
流出量はそれぞれ,以下の式で求まる。
Z1(t)=β1×S1(t)
・・・(5.6)
Z2(t)=β2×S2(t)
Z3(t)=β3×S3(t)
・・・(5.7)
・・・(5.8)
3 )各タンク内の貯留量 S
52
t+Δt における貯留量 S(t+Δt)は,t における貯留量 S(t)に雨量 R(Δ
t)を足し合わせた後,流出量 Q と浸透量 Z を引いたもので貯留量はそれぞれ,
以下の式で求まる。
S1(t+Δt)=S1(t)-〔Q11(t)+Q12(t)十 Z1(t)〕+R(Δt)
S2(t+Δt)=S2(t)-〔Q2(t)+Z2(t)〕+Z1(Δt)
S3(t+Δt)=S3(t)-〔Q3(t)+Z3(t)〕+Z2(Δt)
・・・(5.9)
・・・(5.10)
・・・(5.11)
ここで,S1:第一タンク貯留量,S2:第二タンク貯留量,S3:第三タンク貯
留量。
53
5. 3
従来のタンクモデルによるシミュレーション結果と検討
2003 年のタンクモデルの構造及び係数は短期間流出の解析のために作られて
いるため,長期間の流出解析への適用性の再検討が必要だと思われる。
2003 年に検討されたタンクモデルのパラメータを用い,西之貝戸流域の地下
水流量を求めた。計算値と水抜き孔から測った実測値のハイドログラフを図
5.1.2 に示す。
90
0
80
50
70
150
実測値
50
計算値
200
40
250
30
300
20
10
350
0
400
図-5.3.1
2003 年のタンクモデルによるシミュレーション結果と実測値
従来の藤原岳タンクモデルでは,実測した地下水流量を再現性が良くない,
特に流量のピークを表現することができないことが明らかにされた。
54
日雨量(mm)
流量(m3/s)
60
100
日雨量
5. 4
新たなタンクモデルの提案
本研究では,藤原岳において長期間に適用できるタンクモデルのパラメータ
の最適化を試みた。まずはタンクモデルの段数を検討した。長期間流出解析は,
長期流出と豪雨時の短期流出の双方を解析するので,4 段型のタンクモデルが使
われることが多い。4 段型のタンクモデルの模式図を図 5.4.1 に示す。
図-5.4.1
4 段型のタンクモデルの模式図
流出孔は,上から表面流,速い中間流,遅い中間流,基底流を示す。基底流
出を表すためには,最小限 1 段のタンクが必要と思われるが,豪雨時の短期流
出を何段のタンクで表わすかは議論のあるところである。調査地の渓床堆積物
についての三重県のボーリング調査結果(2010)等を基に,速い中間流と遅い
中間流のタンクを一つにする。各種係数を最適化すると,1 段目タンクの上の流
出孔の係数は非常に小さくなり,実用上,大きな意味を持たないため,1 段目の
流出孔を一つする。一方,表面流と中間流のタンクを一つにする 2 段型モデル
の方がパラメータは少ないが,地下水流量の再現性は 3 段型タンクモデルより
良くなかった。従って,本研究のタンクモデルは 3 段型を採用した。
次に浸透孔と流出孔を検討した。通常の森林流域では,降雨は一度,地表下
に浸透した後に流出する成分と,浸透せずに表面流出する成分に分けるが,西
之貝戸流域の渓流区間は,石礫を中心とした土石流堆積物により被覆されてい
るため,雨水は浸透しやすいと考えられる。また,平常時と小,中降雨時には
表面流は発生しないので,流出係数を浸透係数より小さくする。
55
タンクモデルからの地下水流出の計算値と実測値の誤差基準値(J)が解析期
間で最小となるようパラメータの構造や各種係数を最適化する。誤差基準値は,
角屋ら(1980)が用いた次式で求めた。
J = {∑(qt-q)/q}/N
・・・(5.13)
ここで,J:誤差基準値
qt:計算値
q:実測値
N:データ数である。
最適化には Microsoft Excel のソルバーという機能を用いた。ソルバー機能
による最適化の条件としては,制約条件をα2≧α3,α3≧0.001,β1≧β2,
β1≧0.001 とし,最適解の探索方法に準ニュートン法を用い,制限時間を最大
100000 秒,反復回数を 100000 回とし,最適解が見つかるまで計算した。図 5.3.1
に最適化の条件を示す。
図-5.4.2
タンクモデルの最適化の条件
ソルバー機能で最適化したタンクモデルは菅原の方法に従って試行錯誤によ
り同定作業を行った。ピーク部分等を流出孔の高さ,流出孔の係数を変えて調
整する。そして次に,タンクモデルの最初水位を設置する。藤原岳において長
期間のタンクモデルの最初水位は上段に 0mm,中段に 10mm,下段に 160mm
を設定した。提案したタンクモデルの模式図を図 5.3.2 に示す。Q1,Q2,Q3
の和は堰堤の水抜き孔から流出する水である。またタンクモデルのパラメータ
と誤差基準値を表 5.3.1 に示す。
56
図-5.4.3
表-5.3.1
L1
L2
L3
100 150
0
提案したタンクモデル
提案したタンクモデルのパラメータと誤差基準値
βI
β2
β3
α1
α2
α3
1.20 1.00 0.03 0.10 0.02 0.01
J=0.46
57
提案したタンクモデルによる計算値と実測値のハイドログラフを図 5.3.3 に
示す。比較的良好に実測のハイドログラフを再現できる結果となった。
40
0
35
50
30
100
25
150
実測量
計算値
20
200
15
250
10
300
5
350
0
400
図-5.4.4
提案したタンクモデルによるシミュレーション結果と実測値
58
日雨量(mm)
流量(m3/s)
日雨量
5. 5
考察
図5.3.2と図5.3.3より,従来の藤原岳タンクモデルに比べて,本研究の提案し
たモデルの精度が飛躍的に上がったことが分かる。
従来の藤原岳タンクモデルの浸透係数は流出係数より小さく,提案したタン
クモデルにおいて,浸透係数は流出係数より大きい。
提案したタンクモデルでは豪雨時に,計算値が実測値より高くなる場合があ
る,その原因は堰堤の真ん中の水抜き孔から地下水が流出する場合があり,こ
の時は,その流量を計測できないので,実測値が小さくなるためと考えられる。
(写真5.1)。
以上から,本研究で提案したタンクモデルは長期間の流量解析に適用可能で
あることが示された。
写真-5.1 タンクモデルの計算値が実測値と上がる場合の事例
(真ん中の水抜き孔からの排水の流量が現状では計測できない)
(撮影年月日:2012 年 9 月 20 日)
59
第6章
結論
本研究では,いなべ市藤原岳西之貝戸川の渓床堆積物中の地下水の短期,中
期,長期の流出特性を明らかにするために,地下水の流量と水温を現地観測し,
降雨‐流出特性を考察した。次いで,その結果に基づいて長期間の地下水流量
解析に適用できるタンクモデルを提案した。
本研究より,以下のことが明らかにされた。
a.藤原岳における地下水の流況曲線は「L」型になっており,通常の森林流
域よりも,高水部分と低水部分の判別が容易にでき,豊水期とそれ以外の時期
の流量の差が大きいことが明らかとなった。
b.観測期間に地下水の水温はあまり変動せず,冬期は約 12℃弱で,夏期は約
12℃であった。冬期の雨が強い時,水温は下り,夏期の雨が強い時,水温が上
がった。
c.季節的な観点からみると,冬(12 月~2 月),春(3 月~5 月),夏(6 月~8
月)に第 6 号砂防堰堤の水抜き孔から流出する地下水の流出率は 20%~50%に
なった。
d.藤原岳における降雨イベントは,6 日前までの前期雨量が降雨の流出率に
影響を与えていることが分かった。
e.藤原岳西之貝戸川における降雨-流出応答のパターンは 3 つあることが明
らかにされた。一つは,降雨に対する流出応答が表れないパターン,2 つ目は地
下水の流量は増えるが明瞭な流量ピークは現れないパターン,3 つ目は流量ピー
クが明瞭に出現するパターンである。1 つ目のパターンは,10 分間雨量で 2mm
以下,累積雨量で 20mm 以下,前期雨量の範囲で 0~88mm である。2 つ目のパ
ターンは,10 分間雨量の範囲で 1~7mm,累積雨量の範囲で 14~61mm,前期
雨量の範囲で 0~212mm である。前期雨量が大きくても,10 分間雨量と累積雨
量が小さい場合は,明瞭な流量ピークが現れない。3 つ目のパターンは,10 分
間雨量の範囲で 2~17mm で,累積雨量でほぼ 50mm 以上,前期雨量の範囲で
8~383mm である。前期雨量と累積雨量は小さくても,10 分間雨量が大きい場
合は,明瞭な流量ピークが現れることが分かった。
f.雨のピークと流量ピークの遅れ時間は約 1~3 時間であり,雨を降り始めか
ら増水開始までの時間は約 20 分~50 分である。降雨は勾配急変点法による計算
した直接流出率で 10%弱となる。ピーク流量が 0.05m3/s 以上になった降雨イベ
ントでは,前期雨量と流出率の相関係数は 0.57 であり,豪雨イベントでは,前
期雨量と流出率の相関係数は 0.87 である。
g.藤原岳における長期間の地下水流量解析に適用できるタンクモデルは直列
3 段タンクであり,各段に一つ孔ずつを設けるものである。各流出孔の位置は,
60
上段:100,中段:150,下段:0 であり,各流出係数は,上段:0.1,中段:0.02,
下段:0.01 であり,各浸透係数は上段:1.2,中段:1.0,下段:0.03 である。
61
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65
謝辞
本研究を進めるにあたり,先生方をはじめ多くの方々に御世話になりました。
本当にありがとうございました。
はじめに,日本に私を招いてくださった森林環境砂防学研究室,林拙郎教授
と山田孝教授に深く感謝の意を表します。山田孝先生には,研究の指導者とい
う立場から私を導き,的確な指示と提案をしていただきました。一方,私の日
本語は下手ですので,困ったことがあったら何でも先生に頼んでしまい,仕事
を増やしてしまい,申し訳ありません。
次に,沼本晋也准教授には,人間としての優しさ,研究に対する姿勢を教え
ていただきました。
そして,森林環境砂防学研究室のメンバーには,研究の面だけでなく充実し
過ぎた多くの時間を過ごさせていただき,ありがとうございました。大学院生
の宅見さん,半田さん,澤さんには,3年間ご一緒に研究生活は楽しいでした。
4年生の山田君には,素晴らしい若者で,藤原岳に大きく時間を共有でき嬉し
かったです。
更に,4年生の高橋さん,北野君,中嶋君,奥村さんと原君,田原口君をは
じめ3年生の皆様,藤原岳の調査などに参加してくださりありがとうございま
した,僕はあなた達なしには修士論文は書けなかったと思っています。本当に
ありがたいです。
最後にこの砂防研究室に卒業した前年と昨年のメンバー,皆様のお陰で楽し
い3年間の日本生活が送れたと思います。
最後の最後にここまで面倒をかけた山田先生にも一回感謝します。本当に多
くの人たちの助けていただきました。ありがとうございました。
2013/2/1
66
林
希宝
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