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長野県環境保全研究所研究報告 11:15―22(2015) <資 料> 野尻湖の湖水中の有機物実態調査 山下晃子 1・舘内知佳 1・川野政美2・寺澤潤一 3 赤池史子 4・小澤秀明 1 長 野 県 北 部 に 位 置 す る 野 尻 湖 の 湖 心, 弁 天 島 西 及 び 水 穴 の 3 地 点 に つ い て,2011 年 5 月 か ら 2014 年 3 月 まで湖水中の TOC 及び DOC の調査を実施した. また COD 及び D-COD も調査し, 過去 10 年間の水質常時監視 結 果 と あ わ せ て 有 機 物 の 実 態 に つ い て 解 析 を 行 っ た. 全 体 で は TOC と COD 及 び DOC と D-COD に は 高 い 相 関 が認められ,COD と TOC の関係性が導かれた. キーワード:TOC,DOC,COD,D-COD 1.はじめに そ こ で 2011 年 5 月 か ら 2014 年 3 月 ま で 湖 水 中 の TOC 及び DOC の調査を実施し, また COD 及び溶 野尻湖では,1988 年の夏にウログレナの異常増殖 存 態 COD(D-COD) も 調 査 し,過 去 10 年 間 (2004 1),2) 年 4 月から 2014 年 3 月) の公共用水域水質常時監 に 伴う淡 水 赤 潮 が 発 生し ,1994 年 に 湖 沼 水 質 保 8) 全特別措置法の指定を受けた.それ以降長野県では 視 (以 後 , 常 時 監 視) 結 果 4 期 20 年にわたり水質保全計画を策定し,浄化対策 態 に つ い て 解 析 し た. さ ら に TOC と COD の 関 係 性 を講じてきた.その結 果,富 栄 養 化の要因となる窒 について検討したので報告する. とあわせて有機物の実 素・りん 濃 度については徐々に低 下し,当初みられ た 淡 水 赤 潮 の 発 生も見られ なくなってきている 1),2). 2.方法 しかし化 学 的 酸 素 要 求 量(COD)については環 境 基 準(1.0mg/L 以下)の達成には至っていない 3). 2.1 調査地点 湖沼の有機汚濁物質の指標としては,COD が長年 野尻湖は長野県北部の標高 654m に位置し, 湖面 に わ た り 利 用 さ れ て い る.COD は 有 機 物 を 過 マ ン 積 4.56km2, 最 大 水 深 38.5m, 貯 水 量 95,676,000m3 ガン酸カリウム (KMnO4) により酸化する時に消費 であり,複雑な地形の堰き止め湖である.野尻湖の さ れ る 酸 素 の 量 と し て 表 す が,KMnO4 の 有 機 物 に 流 出 河 川 は 1 河 川 で, 流 入 河 川 は 11 河 川 あり 揚 水 対する酸化率により値が変動することや測定値が酸 発電などのために人為的に導水されている.調査地 点は,常時監視の測定地点である湖心,弁天島西及 化の温度や時間によりバラツキを生じるなど問題点 4) ~ 6) .水道法では有機物の基準 び 水 穴 の 3 地 点 と し た( 付 図 1). 採 水 場 所 は 表 層 と し て KMnO4 消 費 量 か ら 燃 焼 に よ り 有 機 物 を 酸 化 と し, 湖 心 及 び 弁 天 島 西 で は 下 層 も 加 え た.2012 分解して全炭素量を直接求める全有機炭素量(TOC) 年 4 月から 1 年間の湖心の全水深の平均は 33.3m(下 に 変 更 に な っ た. ま た, 全 国 的 に 湖 沼 の COD が 減 層 平 均 採 取 水 深 32.3m), 弁 天 島 西 の 全 水 深 の 平 均 少しない要因のひとつと考えられている難分解性の は 5.3m( 下 層 平 均 採 取 水 深 4.3m), 水 穴 の 全 水 深 溶存有機物 (DOM) を溶存態有機炭素量 (DOC) と の平均は 33.3m であった.表層は直接採水し,下層 も指摘されている して評価する研究 7) の 採 水 はバンドーン 採 水 器 を 用いた . なお 採 水 は 長 も進んでおり, 水中の有機物を 野保健福祉事務所に依頼した. 有 機 炭 素 と し て 測 定 す る TOC 及 び DOC は, 定 量 的 に評価する指標として有用と考えられる. 1 長野県環境保全研究所 水・土壌環境部 〒 380-0944 長野市安茂里米村 1978 2 長野県立木曽病院 〒 397-8555 木曽郡木曽町福島 6613-4 3 長野県環境保全研究所 食品・生活衛生部 〒 380-0944 長野市安茂里米村 1978(2015 年3月退職) 4 長野県立須坂病院 〒 382-0091 須坂市須坂 1332 15 Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.11(2015) 下 層 に お け る COD,D-COD 及 び P-COD の 月 別 濃 度 2.2 測定時期及び測定項目 2012 年 4 月から 2014 年 3 月まで毎月 1 回 COD, を 図 1 に 示 す. 湖 心 表 層 で は, こ の 間 の COD の 平 D-COD,TOC 及 び DOC の 測 定 を 実 施 し た.2011 年 均 値 は 2.01mg/L で あ り, 夏 か ら 秋 に か け て 上 昇 し 5 月 か ら 2012 年 3 月 の 間 は 湖 心 及 び 弁 天 島 西 で 冬 に 下 が る 季 節 変 化 を 示 し た. 一 方, 湖 心 下 層 で TOC 及び DOC の測定のみ実施した. は,COD の 平 均 値 が 1.79mg/L で 顕 著 な 季 節 変 化 を 湖 心 の 水 温 鉛 直 測 定 に つ い て は,2013 年 7 月, 示 さ な か っ た. 2004 年 4 月 か ら 2014 年 3 月 ま で 8 月,10 月及び 2014 年 5 月に各 1 回実施した. の 10 年 間 ( 以 後, 過 去 10 年 間 ) の 測 定 結 果 8) の 平均値と比較すると,表層の COD は夏から秋 (7-11 月 ) に か け て 平 均 値 を 超 え る こ と が 多 く, 下 層 の 2.3 測定方法 測 定 方 法 は JIS K0120 に 準 拠 し,D-COD 及 び COD は 季 節 に か か わ ら ず 平 均 値 を 超 え る 月 が あ り, DOC は 450 ℃ で 2 時 間 処 理 し た ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 特に 7-8 月に大きく超える傾向がみられた. P-COD (Whatman 社 製 GF/F) で ろ 過 し た ろ 液 に つ い て 分 は 表 層 で は,2014 年 の 2-3 月 に 高 い ほ か は, 初 夏 析した.TOC 及び DOC は島津社製 TOC-VCSH(NPOC に高くなる傾向がみられたが, 下層では顕著な季節 法 ) を 用 い 測 定 し た. な お, 懸 濁 態 COD(P-COD) 変化はみられなかった. は COD と D-COD の 差 と し, 懸 濁 態 TOC(POC) は 2011 年 5 月から 2014 年 3 月(35 ヶ月間)の湖心 TOC と DOC の差として算出した. 表層及び下層における TOC、DOC 及び POC 濃度の月 湖 心 の 水 温 の 鉛 直 測 定 は ,YSI 社 製 650MDS 多 項 別 変 化を図 2 に示す.表 層におけるこの間の平 均 値 目 水 質 計 を 用 い て, 水 深 14m ま で は 1m ご と に そ は,TOC で 1.38mg/L,DOC で 1.19mg/L であった.こ れ以深は 2m ごとに実施した. の間のクロロフィル(Chl-a)濃度の平均値 μg/L, 透 明 度 の 平 均 値 3.結果及び考察 は 2.56 は 6.4m で あ っ た. こ の Chl-a 及び透明度の平均値から OECD の富栄養度の区 分 9) によって判定すると,野尻湖は貧栄養湖に分類さ れ る.また TOC 及 び DOC は COD と同 様 の 季 節 変 化 3.1 湖心の COD 及び TOC の季節変化 がみられたが,夏期の TOC の上昇はわずかであった. 2012 年 4 月 か ら 測 定 し た 2 年 間 の 湖 心 表 層 及 び 3.0 8) 8) 表層 2.5 COD,D-COD及びP-COD(mg/L) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 3.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 2.5 3 (月) 下層 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2012 年 COD 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2013 年 D-COD P-COD 2014 年 COD 10年平均 D-COD 10年平均 図 1 湖心における COD,D-COD 及び P-COD の月別濃度(2012.4 ~ 2014.3) 10 年平均は , 常時監視結果の過去 10 年間(2004.4 ~ 2014.3)の月別平均濃度 16 2 3 (月) 2.5 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 表層 2.0 1.5 0.5 0.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 10 下層 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) Chl-a(μg/L) TOC,DOC及びPOC(mg/L) 1.0 Chl-a(μg/L)及び透明度(m) 長野県環境保全研究所研究報告 11 号(2015) 2011年 年 2012年 TOC 2013年 DOC POC Chl-a 2014 透明度 図 2 湖心における TOC,DOC 及び POC の月別濃度(2011.5 ~ 2014.3) Chl-a 及び透明度は常時監視測定値(2011.4 ~ 2014.3) 一方,下層のこの間の平均値は,TOC で 1.24mg/L, 2013 年 7 月 ~ 2014 年 5 月 に 湖 心 で 得 ら れ た 水 温 DOC で 1.02mg/L であり,冬から春にかけて TOC 及 の鉛直分布を図 4 に示す.今回測定した湖心におい び DOC が や や 上 昇 す る が, 年 間 を 通 し て み る と 明 て成層しているときの水温躍層(変水層)は 8-16m 瞭な季節変化は認められなかった. であった.1986 年の調査では 8-15m であり 14) 同様 表 層 の POC 及 び Chl-a は,2012 年 の 初 冬 か ら 春 の結果であった. を除いて年間の中では, 秋以降から春まで高い傾向 湖心では, 春期以降の成層の進行とともに, 下層 がみられ, 透明度は下がる傾向がみられた. 野尻湖 より高くなった表層の有機物の濃度は, 初冬の湖水 図 2 湖心における TOC,DOC 及び POC の月別濃度(2011.5~2014.3) の植物プランクトンの優占種としては珪藻類が報告 循環期の鉛直混合により, 表層, 下層で一様になる Chl-a 及び透明度は常時監視測定値(2011.4~2014.3) されており 10),11) ことが確認された. ,珪藻類は一般に水温の低い状態 を好み湖水が循環している時期に増える傾向 12) が あることから, 湖心では冬期を中心として時期に珪 3.3 弁天島西の COD 及び TOC の季節変化 2012 年 4 月 か ら 2 年 間 の 弁 天 島 西 地 点 に お け る 藻類などの植物プランクトンが増えることにより COD,D-COD 及 び P-COD の 月 別 濃 度 を 図 5 に 示 す. POC が高くなったと推察される. こ の 間 の COD の 平 均 値 は 表 層 で 2.04mg/L, 下 層 で 2.13mg/L で あ り,表 層 よ り 下 層 の 濃 度 が や や 高 3.2 湖心の水温及び溶存酸素量の季節変化 かったが大きな差はなかった. 表層, 下層ともに夏 比較的深い湖沼では一般に夏季を中心に成層が観 測 さ れ る 13). 過 去 10 年 間 の 湖 心 の 水 温 酸素量 8) 8) 及び溶存 から秋にかけて上昇し, 冬に下がる季節変化を示し を 月 別 に 平 均 し て 図 3 に 示 す. 湖 心 表 層 た. 過去 10 年間の COD の平均に比べると表層下層 ともに 7-9 月と初冬に高くなる傾向がみられた. の こ の 間 の 年 平 均 水 温 は 13.7℃ で 月 別 平 均 水 温 は 2011 年 5 月から 2014 年 3 月までの弁天島西地点 2.7℃~ 26.4℃までの大きな季節変化を示した.一方, 水深 33m 付近の下層の年平均水温が 5.7℃で年間を における TOC,DOC 及び POC の月別濃度を図 6 に示 通じてほぼ一定であった.溶存酸素量は 7 月から表 す. こ の 間 の TOC の 平 均 値 は , 表 層 で 1.33mg/L, 下 層と 下 層 に 差 が みら れ, 下 層 で は 12 月に 最 低 濃 度 層 で 1.46mg/L で あ っ た.DOC の こ の 間 の 平 均 値 は と なり, そ の 後 表 層 と 下 層 の 濃 度 が 同 じ に な っ た. 表 層 で 1.14mg/L, 下 層 で 1.20mg/L で あ っ た.TOC 17 0 14 0 25 12 5 20 10 10 15 10 水深(m) 30 DO(mg/L) 水温(℃) Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.11(2015) 8 6 15 2013年7月 2013年8月 2013年10月 2014年5月 30 0 35 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 30 25 2 0 水温(℃) 20 20 4 5 10 表層 40 下層 図 3 過去 10 年(2004.4 ~ 2014.3)の常時監視結果の湖心における月別平均水 温及び溶存酸素量 図 4 湖心の水温鉛直分布 3.0 表層 図 3 2.5 過去 10 年(2004.4~2014.3)の常時監視結果の湖心における 月別平均水温及び溶存酸素量 図 4 COD,D-COD及びP-COD (mg/L) 2.0 湖心の水温鉛直分 布 1.5 1.0 0.5 0.0 4 3.0 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 下層 2.5 3 (月) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2012年 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2013年 COD D-COD 2 2014年 P-COD 3 (月) COD 10年平均 図 5 弁天島西における COD,D-COD 及び P-COD の月別濃度(2012.4 ~ 2014.3) 10 年平均は , 常時監視結果の過去 10 年間(2004.4 ~ 2014.3)の月別平均濃度 及 び DOC と も に 表 層 よ り 下 層 で や や 高 く, 表 層, 弁 天 島 西 の 有 機 物 の 濃 度 が 表 層, 下 層 と も に 同 下層ともに夏から秋にかけて上昇し冬に下がる季節 様な季節変化を示したのは, 水深 (平均水深 5.3m) 変 化 を 示 し た.POC は 初 夏 と 11-12 月 に 高 く な る が浅いため成層せずに全層が一様であるためと考え 傾向がみられ, 特に下層で顕著であった. られるが, 下層の有機物の濃度は表層よりもやや高 過 去 10 年 間 の 弁 天 島 西 地 点 に お け る 水 温 溶存酸素量 8) 8) い傾向がみられた. 及び を 月 別 に 平 均 し て 図 7 に 示 す. 弁 天 図 5 弁天島西における COD,D-COD 及び P-COD の月別濃度(2012.4~2014.3) 3.5 溶存態有機物の地点別比較 10 年平均は,常時監視結果の過去 10 年間(2004.4~2014.3)の月別平均濃度 島 西 地 点 の こ の 間 の 全 平 均 水 温 は, 表 層 で 13.6℃, 2012 年 4 月 か ら 2 年 間 の 湖 心 表 層, 弁 天 島 西 表 下 層 で 13.5 ℃ で あ り 温 度 差 は 認 め ら れ な か っ た. また月別の平均水温及び平均溶存酸素量は表層と下 層及び水穴表層における DOC の月別濃度を図 8 に示 層が同様に変化していた. す.この間の DOC の平均値は湖心表層で 1.16mg/L, 18 長野県環境保全研究所研究報告 11 号(2015) 2.5 表層 2.0 TOC,DOC及びPOC(mg/L) 1.5 1.0 0.5 0.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 2.5 下層 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 2011年 2012年 2013年 2014年 m TOC DOC POC 30 14 25 12 DO(mg/L) 水温(℃) 図 6 弁天島西における TOC,DOC 及び POC の月別濃度(2011.5 ~ 2014.3) 20 15 10 8 6 10 4 5 2 0 0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月) 表層 下層 図 6 弁天島西における TOC,DOC 及び POC の月別濃度(2011.5~2014.3) 図 7 過去 10 年(2004.4 ~ 2014.3)の常時監視結果の弁天島西における月別平均水温及び溶存酸素量 2.5 図 7 過去 10 年(2004.4~2014.3)の常時監視結果の弁天島西における月別平均 水温及び溶存酸素量 DOC (mg/L) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 4 5 6 7 8 9 10 11 2012年 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 2013年 湖心表層 弁天島西表層 水穴表層 図 8 湖心・弁天島西・水穴の表層における DOC の月別濃度(2012.4 ~ 2014.3) 19 12 1 2 3 (月) 2014年 Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.11(2015) 弁天島西表層で 1.14mg/L, 水穴表層で 1.13mg/L で 以下の結果を得た. あ っ た. 測 定 し た 3 地 点 で は, 概 ね 同 様 な 季 節 変 (1) 湖心では夏に成層し, 有機物は表層では夏に上 化をしており, 溶存態有機物濃度には地点間で差は 昇 す る 季 節 変 化 を 示 し, 下 層 で は 明 瞭 な 季 節 変 みられなかった. 化が認められなかった. (2) 弁 天 島 西 で は , 有 機 物 は 表 層, 下 層 と も に 夏 に 上 昇 す る 季 節 変 化 を 示 し た が, 表 層 に 比 べ て 下 3.6 TOC と COD の関係 2012 年 4 月 か ら 2 年 間 に 測 定 し た 3 地 点 の TOC 層で濃度がやや高い傾向がみられた. と DOC 及 び DOC と D-COD の 関 係 を 図 9 に 示 す. (3) 表層 の溶存 態有機 物は, 湖心, 弁 天島西 及び水 TOC と COD は 相 関 係 数 0.61(n=120 p<0.001), 穴では明らかな濃度差がみられなかった. DOC と D-COD は 0.76(n=120 p<0.001) で あ り 高 (4) TOC と COD, 及 び DOC と D-COD に は, 季 節 に い相関を示した. 同一の水域では, 有機物の構成が よって差はあるが全体的には高い相関が認めら 似ているため溶存態, 懸濁態ともに高い相関関係が れた. あるといわれており 4) 同様な結果が得られた. これ 謝 辞 に よ り 過 去 の TOC の 推 測 が 可 能 と な っ た. し か し 季 節 ご と に 相 関 係 数 を 比 較 し て み る と, 春 期 (4-6 月)の相関係数が低く,その時期のデータを除くと, 本調査にあたり, 試料採取及び水温鉛直測定にご DOC と D-COD は 相 関 係 数 0.79(n=90 p<0.001) 協力いただきました長野保健福祉事務所検査課の皆 となりさらに高い相関を示した. この時期の湖水は 様, また野尻湖水草復元研究会の皆様に感謝いたし 他の時期と異なることが考えられるが詳細は不明で ます. ある. さらにデータを蓄積して関係性を調べていく 文 献 必要がある. 1) 落合照雄 (1992) 野尻湖のプランクトン, 日本 3.5 水処理生物学会誌 ,28(2):147-151. COD(mg/L) 3.0 2.5 2) 落合照雄 (1998) 野尻湖にみられる数種のプラ 2.0 ンクトンについて , 清泉女学院短期大学研究紀 1.5 要 ,17:101-114. 1.0 y = 0.9512x + 0.7514 R² = 0.3678 0.5 3) 長 野 県 , 野 尻 湖 に 係 る 湖 沼 水 質 保 全 計 画 ( 第 4 期 ):http://www.pref.nagano.lg.jp/mizutaiki/ 0.0 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 kurashi/shizen/suishitsu/4ki/documents/nojiri-4th. pdf (2015 年 1 月確認) TOC(mg/L) 3.5 4) 国立環境研究所 (1998) 湖沼環境指標の開発と D-COD(mg/L) 3.0 2.5 新たな湖沼環境問題の解明に関する研究 , 国立 2.0 環境研究所特別研究報告 SR-24-‘98:8-26. 5) 安 藤 正 典 (2006) 水 道 水 質 に お け る 有 機 物 指 標 1.5 1.0 y = 1.4357x + 0.0979 R² = 0.5803 0.5 ( 上 ), 資源環境対策 ,42(15):105-108 6) 安 藤 正 典 (2006) 水 道 水 質 に お け る 有 機 物 指 標 0.0 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 ( 下 ), 資源環境対策 ,42(17):103-108 DOC(mg/L) 7) 国 立 環 境 研 究 所 (1998) 湖 沼 に お け る 有 機 物 の循環と微生物生態系との相互作用に関する研 図 9 野 尻 湖 3 地 点 に お け る TOC と COD 及 び DOC と D-COD の相関 究 , 国 立 環 境 研 究 所 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト 報 告 SR103-2012:19-27. 4.まとめ 8) 長野県 , 水質測定結果 2004 年版 -2013 年版(長 野県環境部水大気環境課) 図9 野尻湖の 3 観測地点における TOC と COD 及び DOC と D-COD の相関 野尻湖における湖水中の有機物の実態調査を行い 9) OECD(1982),Eutrophication of Waters. 20 長野県環境保全研究所研究報告 11 号(2015) Monitoring, Assessment and Control アーバンクボタ ,36:20-41. 10)酒 井 倫 子・ 赤 尾 秀 雄 (1980) 野 尻 湖 の 植 物 プ ラ 13)西 条 八 束 ・ 三 田 村 緒 佐 武 , 新 編 湖 沼 調 査 法 ( 講 ンクトン , 日本水処理生物学誌 ,15(2):33-37. 談社 ):53-60. 11)長野市 , 水質年報 平成 13-16 年版 (長野市上下 14)川村 實 ・ 樋口澄男 ・ 丸山正人 ・ 中沢雄平 (1986) 水道局浄水課) 野尻湖の水質について , 長野県衛生公害研究所 12)沖 野 外 輝 雄 (1997), 特 集 諏 訪 湖 生 物 相 の 変 遷 , 報 ,9:18-24. Survey of organic matter concentration in Water of Lake NOJIRI Akiko YAMASHITA1, Chika TACHIUCHI1, Masami KAWANO2, Junichi TERASAWA3, Fumiko AKAIKE4 and Hideaki OZAWA1 1 Water and Soil Environment Division, Nagano Environmental Conservation Research Institute, 1978 Komemura, Amori, Nagano 380-0944, Japan 2 Nagano Prefectural Kiso Hospital, 6613-4 Fukushima, Kiso 397-8555, Japan 3 Food and Pharmaceutical Sciences Division Nagano Environmental Conservation Research Institute, 1978 Komemura, Amori, Nagano 380-0944, Japan(Retired March 31, 2015) 4 Nagano Prefectural Suzaka Hospital, 1332 Suzaka, Suzaka 382-0091, Japan 21 Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.11(2015) 弁天島西 ○ 湖心 ○ 水穴 △ ○:環境基準点 △:補助点 付図 1 野尻湖採水地点図 付図 1 野尻湖採水地点図 22