...

(インド) の報告書

by user

on
Category: Documents
24

views

Report

Comments

Transcript

(インド) の報告書
海外研修報告
土木・環境工学科 2年 大野 耕平
1.はじめに
私は2011年9月におよそ3週間ほど、土木・環境工学科の海外体験研修
制度を利用して、インドに滞在しました。インドを研修先に決めた理由は二つ
あります。一つは、IT 業界など様々なところで活躍する一方、インフラなど多
くの部分はまだ発展途上である、というその状況を実際に見てみたかったこと。
もう一つは、インドに行ったことのある人が口を揃えて言う、「インドに行くと価値観が変わる。若
いうちに一度は行った方がいい。」という言葉です。以上のような理由でインド行きを決めた僕は、
まだ暑さの残る9月7日、デリー空港に向けて成田を発ちました。
2.インドに着くまで
僕は、上海で飛行機を一度乗り継いでデリー空港に向かいました。飛行機が上海を離れて数時間後、
僕は早速“異文化”に衝撃を受けることになります。原因は機内食でした。知ってのとおりインドは
とても人口の多い国ですが、総人口12億人のうち82%の人がヒンドゥー教徒であるとされていま
す。ヒンドゥー教は不殺生を旨とし、肉食を忌避しているため、基本的に菜食主義です。身分などに
よってその度合いは異なりますが、なかには収穫の際に地中の生物を殺す恐れのある玉ねぎなどの根
菜類を不可とする人もいます。そのような人のもとに、何かの手違いで、一般の人向けの機内食が出
されてしまいました。何かがひっくり返ったような音で驚いて振り向いた僕は、そこに散らばってい
る食べ物を見ました。僕の真後ろにいた乗客がさながらちゃぶ台返しのような勢いで機内食を吹っ飛
ばしたのです。これは今回の研修旅行の中で最初に受けた衝撃です。
深夜一時、僕は人生で初めてインドの地を踏みました。デリー空港に夜中に着いたものの、まだ今
夜の宿は決めていません。深夜、インドに着いたら、空港内で朝まで待った方がいい、それが一番安
全だ、という友人のアドバイスをすっかり忘れていた僕は、ふらふらと空港の外に出てしまいました。
するとそこには、溢れんばかりのホテルの呼び込みたちがいます。初めて体験した人は必ず衝撃を受
けるといわれているほどの凄まじい呼び込みです。四方八方から怒鳴り声が聞こえてきます。なかに
は日本語を話す人もいます。そういう人が一番危険です。異国に来た日本人の心に生じる不安な感情
につけこみます。そのような人々をかわして、地下鉄の駅に到着しました。
図 1.デリー空港前
構内はとてもきれいで、ここで一夜を明かすことに決めた僕は、さっそく歯を磨こうとトイレに向か
いました。そこでも僕は驚きました。深夜二時にもかかわらず、そこではたくさんの人たちが歯を磨
いたり髪を洗ったりしていたのです。ここで夜を明かす人は僕だけではないようです。地下鉄駅近く
のベンチに座っている時、隣には少し汚い恰好をしている男が座っていました。そこに、裕福そうな
身なりの夫婦がやってきました。すると夫婦はその男に向かって「どけ、そこは私たちの席だ」と言
い、当たり前のようにそこに座りました。堂々とそのような主張をする夫婦にも驚きましたが、何よ
りも、そんな理不尽なことをいわれても文句ひとつ言わず、申し訳なさそうに去っていく男の方に衝
撃を受けました。身分の違いがここまで人々の生活に影響しているのも、カースト制の影響なのでし
ょうか。
3.寄付のみで成り立つ学校
カジュラーホー村に滞在している時、僕はある学校を見学する機会がありました。そこは、寄付の
みで成り立っている学校でした。カースト制によって住むところが制限されている地区の奥の方にそ
の学校がありました。この学校は、生徒数に比べて学校の敷地が狭く、生徒を二つのグループに分け、
午前と午後に分けて授業を行っているそうです。これでは、やはり授業時間数も減ってしまい不便で
しょう。また、机やいすはありません。水道もなく、中庭に一つある井戸をみんなで利用します。そ
れでも、子供たちは皆、とても楽しそうに勉強していました。自分の勉強の姿勢を改めて考えさせら
れるような光景でした。
図 2.教室と楽しそうな子供たち
4.インドの交通
インドの交通は日本のそれとは大きく違います。とにかくインドの交通は整理されていません。
何も知らされずに、日本の人がいきなりインドで運転しろと言われたら、間違いなく事故に遭うでし
ょう。僕は今回のインド旅行で 3 回の事故に遭遇しました。そのうちの一回は僕が乗っていた車の衝
突事故です。一カ月に満たない旅行でも事故に遭遇するのですから、インド人は皆一回は交通事故に
遭っているのではないでしょうか。また、とにかく道が悪いです。大都市の一部のように日本と変わ
らないくらい道路が整備されているところもありますが、そのほかの多くの部分は凹凸が目立つ、か
なりひどい道です。また、雨季には多くの雨が降るインドですが、その雨によって道路がかなりひど
く冠水します。僕がコルカタに滞在している時、強い雨が数時間降り続きました。雨がやんだのを見
計らって外に出てみると、そこは一面川のようになっていました。この中を歩くのはなかなか気持ち
の良いものではありません。とりあえず食事を取ろうと入ったレストランもしっかり冠水しています。
図 3.冠水した道路と店内
この水が引くのに半日くらいかかりました。この冠水のあいだはどこも水道の調子が悪くなり、とて
も不便です。日本とインドとのインフラの整備具合の差を痛感する出来事でした。
5.バナーラスの火葬場
バナーラスはガンジス川とガートで有名な町です。ガートとは、岸辺から階段になって河水に没し
ている堤のことで、沐浴する場として使われていますが、ヒンドゥー教の火葬場になっているものも
あります。観光地として有名で、日本人はよく、河を渡るボートに乗ったり、火葬を見物したりしま
す。僕も、火葬しているところが良く見える建物の屋上でその様子を見ていました。その時はちょう
ど 40 歳くらいで亡くなった女性を火葬しているとのことでした。ぼんやりとその光景を眺めていたと
きに火葬場から僕に向かって何か言っている少年に気付きました。10 歳くらいの少年は必死に身振り
手振りを使って、どっかに行けというようなことを伝えているようでした。その時にハッとしました。
僕が好奇心で見ている火葬風景は、誰かの大切な人の火葬なのだと。その子と、火葬をされている人
の関係はよくわかりません。親子かもしれないし、そうじゃないかもしれません。後には、このよう
なところを観光地としてよいのだろうかという疑問が残りました。
図 4.早朝のガート
6.おわりに
今回の研修旅行では、上記以外にも様々な異文化体験ができました。ぼったくりに遭ったり、ぼ
ったくられそうになってけんかしたり、象に乗ったりラクダに乗ったり。宗教関係では特に驚くこと
が多くありました。
将来、世界を舞台にして仕事をするとき、語学力はもちろん必要です。しかし、それ以上に必要な
ものは相手の文化を理解し、求められているものを作ることなんじゃないかなと思いました。そうい
う意味で、今回、海外研修旅行に行かせていただいて様々な文化と交流できたことはとてもいい経験
になりました。このような素晴らしい機会を与えてくださった土木工学科同窓会「丘友」の皆さまに
深くお礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
Fly UP