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11 月中旬までに実施すべき分析作業案
資料 2−1 平成 21 年 11 月 2 日 (財)地球環境産業技術研究機構 11 月中旬までに実施すべき分析作業案 11 月中旬までという、2週間程度の限られた時間の中で、可能な限り副大臣級検討チー ムから出された要請に答えなければならない。限られた時間の中で、モデル分析が困難な 要請に徒に時間を費やすことは適切でなく、実施可能で、かつ説明性が高く、しかも意味 のある分析を峻別し、その項目についてモデル分析を集中的に行うべきである。その上で、 分析できなかった要請に対しては、モデル分析を行わなかった理由及び想定される影響に ついての定性的な評価を行うことで、副大臣級検討チームからの要請に答えていくことが 現実的かつ効果的な作業方針と考えられる。 なお、以下の提案のうち、RITE 以外での対応部分については、時間的な制約の下でどこ まで実行可能かについての他機関からの検証が必要。 1. 複数シナリオの分析 中期目標検討委員会の分析と同様のマクロフレームによって、90 年比▲10%、▲15%、▲ 20%、▲25%の4シナリオに関し、国内経済モデル(GDP 影響、家計への影響など)で行う。 このとき、可能であれば海外排出クレジット購入と真水を総合評価すべきであるが、難 しいようであれば、真水部分のみの経済分析を行い、クレジットについては別途必要購入 金額等を併記してはどうか。 なお、クレジットの価格は、交渉に基づいて決定される国際制度により決まってくるた め、現時点で想定することは困難であり、一定の仮定が必要。例えば、欧米の同様の研究 における海外クレジット価格を活用することは一案であり、必要あれば RITE から情報提供 が可能である。 分析のマクロフレームは変更する必要はないと考えるが、その理由は、1)経済危機が あっても 2020 年といった少し先の経済状況について、途上国を中心とした経済発展の大き なトレンドが変わったとは考えらない、2)中期目標検討委員会の分析においては、それ ぞれの研究機関による分析根拠の議論、業界ヒアリングを通して決定したものであり、2 週間程度の期間でそれを覆すだけの根拠ある検証を行うことは不可能、3)下記の感度解 析で傾向を把握することが可能、であることによる。 2. 感度解析 感度解析として以下を実施する。 1 <感度解析項目およぶ分析の数値> 感度解析項目は、以下の4項目とする。 (1) 粗鋼生産量の想定をリファレンスである約 1.2 億トンから、±1 千万トンで感度解 析を実施 (2) 交通需要量の想定をリファレンス(2020 年旅客 05 年比同程度、貨物 05 年比 10% 増程度)から、±10%で感度解析を実施 (3) 原子力発電リファレンスである発電量 4374 億 kWh(発電所:9基新設、稼働率: 80%)に対して、発電量が±10%で感度分析を実施。 (4) 原油価格をリファレンスの 2020 年 121$/bbl(名目価格。実質では 90$/bbl)に対 して±10$/bbl として感度解析を実施(4.追加的分析の項を参照) <感度解析によるアウトプット> ① 国内積み上げモデルを用いて、各感度解析の項目において、どれだけ CO2 排出量が 増減すると期待されるのかについて分析する。分析対象とすべき複数のシナリオ(90 年比▲10%、▲15%、▲20%、▲25%)にあまり依存しないと考えられるため、これ まで緻密な分析を行ってきたケース 90 年比▲8%をベースに実施(もしくはそれに近 い 90 年比▲10%)。 ② 経済モデルによって、90 年比▲10%および▲25%のシナリオについて(可能であれば、 ▲15%、▲20%もやるべきであるが、時間の都合上、上記の2つを優先してはどうか)、 上記(3)、 (4)についての感度解析を実施。アウトプットは、GDP や可処分所得等 に対する感度。 3. 共通政策シナリオの策定 政策シナリオを分析するには、基本的には、制度の基本的な骨格、もしくは、具体的な 数値が必要である。これらをモデル分析者が設定することは適当とは考えられず、閣僚委 員会等からの具体的な指示を受けざるを得ない。しかしながら、2 週間という期間に具体的 なシナリオの提示を受け、研究機関が分析を行い、TF において議論するという作業を行う ことは不可能であるため、検討を要望される項目について、モデル分析が可能かどうか、 及び、どのような影響が想定されるかを定性的に報告することが妥当であると考える。む しろ、政策シナリオの策定に時間を費やすよりも、こうした定性的な報告の内容について 議論を深めていくことが有意義と思われる。 時間がないからといって、根拠なく TF において政策シナリオを設定し分析するといった ことは、要請されている科学的・論理的な分析に反し、混乱を招く恐れがあるため慎むべ きである。 2 上記を前提に、 (11 月中旬まででなく、それ以降の課題として)政策シナリオをモデル分 析する場合には、例えば、少なくとも以下のような情報が必要となる。ただし、モデル分 析のために政策シナリオを策定することは本末転倒であり、実際の政策の詳細な制度設計 を行っていく中で、詳細な情報も加味しつつ分析を行っていくべきものであることを付言 したい。 ① 温暖化対策税 ・ 温暖化対策税のみで削減目標達成を目指す場合は、税収の使途が問題となるが、特 に下記の iii)の場合は情報が必要。 i) ランプサム(一括)で家計に戻す(日経センター、国立環境研の従来分析) ii) 国債償還に充てる(慶応大の従来分析) iii) 環境政策をはじめとした財政支出に充てる:この場合、どのような方針で財政 支出を行うのかについての情報が必要 ・ 温暖化対策税の対象範囲の想定があれば、その情報が必要。 ② キャップアンドトレード型の排出量取引 ・ 対象部門、対象部門の排出削減量(もしくは考え方。日本全体の削減費用を最小化 するような配分であれば、従来分析どおり)、価格上限の有無(有る場合はその上限 価格)、無償配分かオークションか、国際市場にリンクした排出量取引を想定するの か否か、の情報が必要。 ・ 温暖化対策税と併用であれば、併用方法の考え方 ③ 再生可能エネルギー導入割合 10%/全量全種類フィードインタリフ ・ フィードインタリフの売電単価の指示があれば、再生可能エネルギー導入量の推定 はある程度可能であると考えられる。よって、フィードインタリフの分析をするの であれば、売電単価の想定が必要(2倍で良いか、それとも再生可能エネルギー導 入割合が 10%になるように、フィードインタリフの売電単価を推定するか) ・ 再生可能エネルギー導入割合 10%としたときの内訳の考え方:費用効率性を考えて 内訳を決定するのが一案と考えられるが、太陽光発電に対する支援策等を踏まえれ ば現実には、必ずしも費用効率的な割合を目指していないように思われる。 4. 追加的分析 2.の感度解析において原油価格を取り扱うが、世界全体で温暖化対策を進めることに より、化石燃料への世界需要が低下し、価格が下落することによる日本経済へのプラスの 3 影響は、温暖化対策の効果として非常に重要な論点である。 (日本の石油輸入総額は年間 70 兆円を超えており原油価格の下落の影響は大きい)。 そこで、2.の原油価格の感度解析における価格想定の前提条件として、世界の原油利 用がどのような状況になれば、どの程度、原油価格が変化することが期待できるのかを、 RITE の世界モデルを利用し分析を行う。これによって原油価格の感度解析をより意義の大 きいものとする。 また、依頼事項に対して定性的な評価を行っていくにあたって有用な欧米の同様の研究 成果について、RITE では相当の研究蓄積があることから、必要に応じ、TF に提示し、議論 に貢献していきたい。 以上 4