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第六十四回:中国の「麺」事情

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第六十四回:中国の「麺」事情
第六十四
六十四回:
中国の「麺」
中国
「麺 事情
常陽銀行上海駐在員事務所
中国の食文化は大変豊かで、料理方法も驚くほど多くあります。麺料理も特に地域によって多種多様
な素材や調理方法があるため、太さ、形、食感のどれをとっても驚くほど多様です。今回は、中国で広
く知られている麺料理についてご紹介します。
1.中国の麺文化
麺の発祥については、中国発祥説・アラビア発祥説・イタリア発祥説などがあるようですが、中国青
海省にある新石器時代(約4000年前)の遺跡から保存状態の良い麺が発掘されたことから、現在では麺
の発祥は中国と言われています。
中国の麺は、一般的には小麦を使った麺ですが、米を原料とするビーフンや緑豆を原料とする麺もあ
ります。湯麺(熱いスープに茹でた麺を入れて食べる)
、拌麺(スープがなく麺と具を和えて食べる)
、
炒麺(麺を具と一緒に炒めて食べる)などの料理法があります。
2.中国の代表的な麺
昨年夏に中国商務部、中国飯店協会による「中国十大麺」が発表されました。中国の専門機関による「中
国十大麺」の選出は今回が初めてです。
【中国十大麺】
麺の名前
地 域
1位
熱乾麺(re gan mian)
湖北省武漢市
2位
炸醤麺(zha jiang mian)
北京市
3位
刀削麺(dao xiao mian)
山西省
4位
蘭州拉麺(lan zhou la mian)
甘粛省蘭州市
5位
担担麺(dan dan mian)
四川省成都市
6位
ᐶ麺(hui mian)
河南省
7位
片兒川(pian er chuan)
浙江省杭州市
8位
奥竈麺(ao zao mian)
江蘇省昆山市
9位
鍋蓋麺(guo gai mian)
江蘇省鎮江市
10位
冷麺(leng mian)
吉林省延吉市
以前から一般的に中国五大麺といわれていた武漢の熱乾麺、北京の炸醤(ジャージャー)麺、山西の
刀削麺、蘭州拉麺、四川の担担麺は当然ランクインしましたが、中にはあまり馴染みのない麺もあり、
中国国内でもこの結果には賛否両論あるようです。
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ここからは、中国五大麺と、ランク外ながら特徴のあるビャンビャン麺について紹介します。
⑴ 熱乾麺
熱乾麺は、湖北省武漢市を代表する食べ物
です。細めの麺を茹でてから油に絡ませて干し、
再び食べる直前に熱を加えるという独特の調
理をします。その結果、十分な弾力感と歯ご
たえのある食感が生まれます。食べる際には、
ゴマ油、練りゴマ、黒酢、ラー油、干しエビ
や五香醤菜(五香粉というミックススパイス
や醤油などで漬けた漬物)を絡めて食べます。
かき混ぜた後の麺にはタレが満遍なく絡まり、
食べ終わった後のお椀にスープは残りません。
【写真1】中国十大麺の第1位:熱乾麺
⑵ 炸醤麺
炸醤麺は、中国の北部(主に北京市近辺など)
の家庭料理である麺料理です。日本でもジャー
ジャー麺などの名称で知られています。豚の
ひき肉と細かく切ったタケノコ、シイタケな
どを豆味噌で炒めて作った「炸醤」と呼ばれ
る肉味噌を麺に絡ませて食べます。好みで千
切りのキュウリや細切りのネギなどを乗せる
こともあります。
【写真2】第2位:炸醤麺
⑶ 刀削麺
刀削麺は、山西省で生まれた麺の一種です。
小麦粉を水で練った生地の塊を持って湯の沸
いた鍋の前に立ち、くの字型に曲がった包丁
を用いて生地を麺状に削り落として直接鍋の
中に入れ、茹でて作ります。曲がった包丁で
削るため麺に薄いところと厚いところができ、
それが独特の食感を生み出します。その麺に
酸味の利いたトマトソースをかけたり、豚肉
の脂身とニンニクの芽が入った肉餡を絡めて
【写真3】第3位:刀削麺
食べます。生地を同じ長さ、太さに削り、鍋
に入れるのを素早く行うには高い技術が必要
です。そのために中国では、刀削麺ロボット(機甲厨神)が普及し始めています。
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⑷ 蘭州拉麺
蘭州拉麺は、元々は甘粛省蘭州市で多くみ
られる麺ですが、現在では中国全土で蘭州拉
麵を出す店を見ることができます。牛肉のスー
プに、手打ちで伸ばして茹でた麺が特徴です。
店頭の目立つ場所で麺を手で伸ばすところを
見せる店舗が数多くあります。
ちなみに、拉麺の「拉」は「引っ張る」や「延
ばす」という意味で、生地を延ばして折りた
たみ、ひも状にして作った麺のことを言います。
【写真4】第4位:蘭州拉麺
⑸ 担担麺
担担麺は、四川省発祥の麺料理です。一般
的には、四川風の花椒とラー油の風味を利か
せた醤油系の少なめのたれに、茹で麺を入れ、
豚肉のそぼろとネギ、ザーサイ、刻んだピー
ナッツなどを載せ、混ぜてから食べます。そ
ぼろは、豚肉をみじん切りにし、調味料を加
えてぱらぱらになるまで炒めます。また、各地
でアレンジされ、豆板醤や芝麻醤を使った担
担麺もあります。
【写真5】第5位:担担麺
⑹ ビャンビャン麺
ビャンビャン麺は中国の陝西省で一般的な
幅広の麵です。小麦粉で生地を作り、茹でる
直前に両手で伸ばし、2∼3cmの幅に平たく
伸ばします。中には1本の麺の長さが1mにな
るものもあります。この麵はその長さと広い
幅のため、通称「ベルト麺」と言われています。
茹でた麺の上に唐辛子や刻み葱をかけ、それ
にピーナッツ油などをかけて香りを出し、和
えて食べる方法が主流です。その他、酸味と
辛みのあるスープに入れることもあります。
【写真6】ビャンビャン麺(通称、ベルト麺)
また、近年ではその風変わりな名前や表記
からも脚光を浴びています。名称の「ビャン」に用いられる漢字は57 画で構成され、非常に複雑です。
余りに複雑なため、字の書き方となる詩が存在します(【写真7】がビャンの漢字とその書き方の詩)。
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3.上海の麺事情 ∼日式ラーメンの進出∼
世界各国、中国各地の料理が集まる上海で
は、様々な麺料理を楽しむことができますが、
日本式のラーメンも楽しむことができます。
中国では、日本式のラーメンは中国の麺料理
とは別ジャンルの麺料理として認識されてい
ます。価格も30 ∼ 50元程度と中国の麺料理の
数倍となっています。
日本式のラーメンが広く認知されたのは、
熊本にあるラーメン店が中国に進出し、人気
になったことがきっかけと言われています。
そのラーメン店は、日式ラーメンとして中国
に500店舗以上展開しており、日本のラーメン
とは熊本ラーメン(=豚骨ベースのラーメン)
と思っている人が数多くいると思われます。
最近では、都内の有名ラーメン店や専門店
(つけ麺、ちゃんぽん、ご当地ラーメン)など
【写真7】ビャンの漢字(57画)と漢字の覚え方
も上海に進出しています。そのため、中国人
向けの情報誌等で数ページにわたり日式ラー
メンの特集が組まれるなど、日本のラーメン
の多様性も徐々に認知されるのではないかと
期待しています。拌麺(和え麺)が人気な中
国ですので、茨城のご当地ラーメンである「ス
タミナラーメン」が進出すれば、意外と人気
になるかもしれません。
4.まとめ
私たちが日頃食べているラーメンのルーツ
は中国です。
中国の麺料理は、中国十大麺のランキング
結果からみると和え麺が好まれているようで
【写真8】雑誌に掲載された日式ラーメン特集
出所:写真1∼5、7は百度図片より引用、それ以外は筆者
撮影。
すが、多種多様な麺料理がまだまだあります。
今回紹介した中国の麺料理はほんの一部に過ぎません。機会がありましたら、日本のラーメンとは違
う中国各地の麺料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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