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活動例
『国際文化フォーラム通信』no.89 特集関連資料 活動例 ■真のコミュニケーションとは 【従来の活動例】 学習者に 3 本の鉛筆を見せ、「鉛筆は何本ありますか」という質問をし、「鉛筆は 3 本あり ます」という答えを要求する。 ↓ 【真のコミュニケーションの例】 両親から文房具を買うために千円もらいました。みなさんの筆箱の中などを調べて、今鉛 筆や消しゴムがどれくらいあるか調べましょう。何がどれくらい必要ですか。千円で買え る範囲で、どんな文房具をどれくらい買うかリストを作りましょう。隣の人とリストを比 べてみましょう。 【活動例 1:導入】 イラストを見せながら、趣味に関連する新出語彙を導入する。音声と文字の両方を使って 語彙を提示する。 【活動例 2:趣味当て遊び(語彙のインプット活動)】 次の人はどんな趣味を持っていると思いますか。 1. (山田さん)走るのが好きです。 a. 絵画 2. (金井さん)コンサートによく行きます。 b. グルメ 3. (村山さん)食べることが好きです。 c. ジョギング 4. (小林さん)歌が上手です。 d. 音楽鑑賞 5. (飯野さん)ゴッホやピカソが好きです。 e. カラオケ この活動では、先生が「山田さんは走るのが好きです。山田さんの趣味は何だと思います か」と言ったら、学習者は答のリストを見て、 「c」と言う。形式と意味の関係がわかるまで は、目から、あるいは耳からのインプットをたくさん得るようにし、まだ口頭で言ったり、 書いたりしてアウトプットさせない。 【活動例 3:仲間はずれ探し】 仲間はずれの言葉はどれですか。なぜですか。 1. サッカー、野球、バレーボール、ジョギング、バスケットボール 2. 書道、茶道、華道、柔道、香道 3. マンガ、アニメ、コスプレ、ヨガ、ビデオゲーム 4. チェス、碁、将棋、ドミノ、数独 学習者の学習状況に応じて、仲間はずれの言葉を言わせてもいいし、フラッシュカードの 中から選ばせてもいい。答はいろいろ可能で、学習者が自分に与えられた言葉を自分で分 ©Yasu-Hiko Tohsaku, 2011 『国際文化フォーラム通信』no.89 特集関連資料 析し、どれがほかのものと違うかを考えるうちに、形式と意味の関係がより強力なものと なり、語彙の学習が進む。正しい答は1つではない、いろいろな可能性を考えさせること により、言語能力のみならず、高度の思考能力も発展させることができる。もっと思考能 力を身につけさせようとするならば、仲間はずれの言葉を選んだ後、自分で関係する語彙 をもう1つ足させてもよい。 【活動例 4:趣味のクラスの紹介】 あなたは町のカルチャー・スポーツセンターのアドバイザーです。次の人たちがアドバイ スを求めています。どのような趣味のクラスをすすめますか。 例: 手が器用です。 → 毎日走りたいです。 クラフトのクラスはどうですか。 → ジョギングのクラスがありますよ。いかがですか。 1. 音楽が大好きです。 2. 字が上手になりたいです。 3. たくさんの人と友達になりたいです。 4. 体がかたいです。 5. 最近ストレスがたまっています。 まずインプットを与えることが大切である。インプットを学習者の頭の中で、プロセスさ せて形式と意味の関係が強くなった時点で、アウトプットをさせるようにする。また、自 然なコンテクストの中で、できるだけ現実に近いコミュニケーションの状況を作り、コミ ュニケーションすること自体に目的を持たせて練習することが必要である。この活動はペ ア活動として、学習者同士で練習させる。自由な会話の形で練習させる。この活動でも、 答は正しい答は1つではない。それぞれの学習者が自分の知識・経験をもとに相手にアド バイスを与え、相手はそれに答えて、自然な会話を発展させるようにする。 【活動例 5:趣味を聞く(文法の導入)】 以上の活動をしてくると、趣味に関する語彙の形式と意味の関係を理解する。今度は趣味 というトピックをコンテクストとして、文法を導入する。文法もわかりやすい、現実の場 面に近いコンテクストの中で導入し、文法形式がどのような意味を持っているか、どのよ うな言語機能を果たすかを学習者に理解させる。 山田さんと田中さんが話しています。 山田:田中さんの趣味は何ですか。 田中:趣味ですか。そうですね。水泳かな。 山田:水泳ですか。どれくらい泳げますか。 田中:10 キロくらい泳げますね。 ©Yasu-Hiko Tohsaku, 2011 『国際文化フォーラム通信』no.89 特集関連資料 下線部を変えて練習しなさい。 1. カラオケ、上手に歌う、プロ並みに歌う 2. 料理、どんなものを作る、何でも作る 【文法・表現の導入(=語彙活動の⑤)】 何もないところに何かを作り出してやるというのは教育の基本である。 新しいことを導入 するのは外国語教育では一番難しい部分である。ここではダイアログでコンテクストを作 り出し、形式(可能形)=意味(何かができることを表す)を導入している。可能形の活 用を先に説明するか、後で説明するか、あるいは 学習者に独自に学習させるか、あるいは まったく説明をしないで、学習者が徐々に自分で規則を作り上げるのを待つかは、カリキ ュラム、教師、学習者のニーズによる。 【活動例 6:できる人探し(インプット活動)】 誰のことですか。 1. ピザを一度に 10 枚食べられます。 a. イチロー 2. ヒットをたくさん打てます。 b. 草彅剛 3. 韓国語が話せます。 c. ギャル曽根 4. いろいろな人の真似ができます。 d. ドラえもん 5. すぐにどこでも行けます。 e. コロッケ 文法・表現も言語習得の過程を考慮に入れるならば、アウトプットをさせる前に、インプ ットをたくさん与え、形式と意味の関係を理解させ、その関係を強化し、形式を聞いた時、 見た時に無意識のうちに意味が思い浮かぶように練習することが必要である。ここでは、 先生が「ピザを一度に 10 枚食べられます」と可能形を使っているが、学習者はそれを聞い ているだけ、あるいは見ているだけで、まだアウトプットはしていない。インプットを受 けているだけである。形式のインプットを受けて、その意味を考え、それが誰に関するこ とかを判断し、答を言うことになる。 【活動例 7:何ができますか(文法・表現のアウトプット活動(1)コンテクスチャライズド メ カニカル活動)】 例にならって、下の言葉から選んで、適当な形に変えなさい。 例:(車の修理が好きな本田さん)壊れた車を____________ なおす → 1. (水泳が得意な田中さん)3000メートル__________ 2. (イタリア料理が得意な森山さん)パスタをいろいろ________ 3. (お菓子作りが好きな太田さん)ケーキを上手に_____________ 4. (外国語が得意な中野さん)10ヵ国語を上手に______________ 5. (オペラが好きな村井さん)イタリアの歌曲を_____________ ©Yasu-Hiko Tohsaku, 2011 なおせます 『国際文化フォーラム通信』no.89 特集関連資料 《歌う、作る、話す、泳ぐ、食べる》 ここでは、単に動詞を可能形に変えるのではなく、( )内のコンテクストを考えながら、 動詞を変える必要がある。意味に対する注意がなければ、効果的な言語習得は起こらない。 どんなに単純な練習でも、意味を考えるようにすることが重要である。 【活動例 8:何ができる?(文法・表現のアウトプット活動(2) ミーニングフル活動)】 次のような場所ではどんなことができますか。できることを言ってください。 例:マクドナルド → ハンバーガーが食べられる、コーヒーが飲める、インターネット が使える、… 1. ディズニーランド(see Mickey Mouse, …) 2. 図書館 (read books, …) 3. 秋葉原 (go to AKB48’s concerts,…) 4. 京都 (visit temples, …) 5. デパート (window shop, …) ここでは、それぞれの場所を考えて、そこでできることを学習者が考える必要がある。前 の活動では日本語の動詞が与えられていて、そこから適切な動詞を選び、活用すればよか ったが、ここでは英語の例は与えられているが、学習者が自分の知識、経験をもとに考え る必要がある。単に「~できる」と言うのではなく、自然な発話として、「〜たり、〜たり できます」、「水曜日は~できます」など学習者のレベルに応じて、アウトプットを調節す ることができる。 【活動例 9:求む、手伝い人(文法・表現のアウトプット活動(3) コミュニカティブ活動) 】 ペアを作ってください。一人は仕事を持った家庭の主婦です。来週ニューヨークに出張に 行くことになったので、家のことを手伝ってくれる人を雇うことにしました。面接に来た 人にどのようなことができるかいろいろ質問してください。もう一人の人は今仕事を探し ています。ウェブサイトの仕事の募集案内を見て、面接に来ました。質問に正直に答えな さい。 1. 料理する 2. 犬のめんどうを見る 3. 子どもの遊び相手になる 4. your own questions この人を雇いますか。 ©Yasu-Hiko Tohsaku, 2011 『国際文化フォーラム通信』no.89 特集関連資料 ここでは 使われる文法・表現は限られているが、 実生活でもありそうな状況を練習して いる。先生に言われたこと、教科書に書いてあることを繰り返すのではなく、学習者はそ れぞれ自分のニーズ、自分の能力を考慮して、創造的な自己表現をしている。また、この 交渉では、最後に意志決定をする必要があり、現実のコミュニケ−ションに近いものである。 文法・表現を習得し、実際のコミュニケーションができるようになるためには、どの文法・ 表現に関しても、このレベルまで練習させなければならない。コミュニケーションの能力 を身につけるのには、実際のコミュニケーションをしなければならないのである。 このような過程で、最初に選んだ語彙、文法・表現をいろいろ練習していると、自己紹介 で自分のこと、家族のこと、自分の身のまわりのことを表現できる学習者ができ、最初に 用意してあった評価でも良い結果をうむ学習者ができる。このようなレッスンプランを実 行することにより、コミュニケーションができる学習者を効果的に作り出すことができる わけである。 さらに学習が進んだら、この後に、次のような語彙活動、文法活動、あるいは総合的な活 動をすることにより、さらに実践的なコミュニケーション能力を発達させることが可能で ある。 【語彙(趣味を表す語彙)の拡張活動】 グループで活動しましょう。学校のクラブ活動の部員を募集することになりました。それ ぞれのグループでクラブを1つ選び、そのクラブ活動でできること、いい点などを書いた ポスターを作りましょう。作ったポスターを壁に貼って、その前で部員の勧誘活動をしま しょう。 【文法・表現(可能形)のシチュエーショナル活動】 グループで活動しましょう。あなたたちは会社の人事部に勤めています。今度会社で社員 を雇うことになりました。新しく雇う社員をどのような条件で雇いますか。この社員は何 が出来ないといけませんか。グループで募集要項を書いてください。その募集要項を見て、 応募してきた人を面接して、雇うかどうか決めなさい。 この活動の流れは、大人が外国語を習得する効果的なプロセス、すなわち、言語習得に はインプットがまず必要であり、それにより形式と意味の関係を理解した後、それを実際 の場面でアウトプットし、形式と意味の関係を確認し、その関係を強化していくプロセス に従っている。アウトプットのプロセスも単純なものから複雑なもの、与えられたものを 繰り返すレベルから、創造的に自分の意味を表現するレベルに進んでいる。 ©Yasu-Hiko Tohsaku, 2011 『国際文化フォーラム通信』no.89 特集関連資料 【高度な思考力を高めるための例】 のこぎり、電気洗濯機、バケツ、ソーラー電気、マッチ、かなづち、コンピュータ、扇風 機、時計、懐中電灯、小型テレビ、包丁、電気毛布 以上のような相互にあまり関係のない語彙を単純に覚えたり、語彙リストをつくって覚え るのは外国語学習としてはそれほど効果があがるものではない。 次のような活動をすると、効果的な語彙活動になるし、高度の思考力を高める活動ともな る。 【例 1】 物置の中を掃除していたら、次のようなものが出てきました。全部捨てるのはもったいな いので、これから行くところに使えそうなものを残すことにしました。次のようなところ に持っていきたいものをそれぞれ2つずつ選び、なぜ、それを選んだか説明しなさい。 のこぎり、電気洗濯機、バケツ、ソーラー電気、マッチ、かなづち、コンピュータ、扇風 機、時計、懐中電灯、小型テレビ、包丁、電気毛布 (1) 海岸のキャンプ (2) 東京都心のマンション (3) 長野県の山小屋 (4) 宇宙船の中 【例 2】 豪華客船に乗って南太平洋を航行中に嵐にあい、船は沈没し、あなたは一人で南の無人島 にたどり着くとします。島には水も食べ物も豊富にありますが、それ以外何もありません。 無人島に持っていくといいもののリストがあります。この中から8つ、このような状況の ときにあったらいいものを選んで、重要なものから並べてください。クラスのみんなにな ぜそれらを選んだか、なぜ重要と思うか説明しなさい。クラスメートからの質問に答えな さい。 マッチ、拡大鏡、斧、ウイスキー、世界地図、金属製の編み針、トランジスタラジオ、ナ イロン製テント、カメラ、切り傷、やけど用の軟膏、フライパン、ナイフとフォーク、20 メートルのナイロンロープ、毛布、時計、タオル、紙と鉛筆 ©Yasu-Hiko Tohsaku, 2011