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金山町地域新エネルギービジョン」(木質バイオマス導入プロジェクトに

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金山町地域新エネルギービジョン」(木質バイオマス導入プロジェクトに
金山町地域新エネルギービジョン
木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン (本編)
平成19年2月 山形県金山町
目
次
1. 木質バイオマス利用可能量調査............................................................................................. 1
1.1 金山町の森林資源 ............................................................................................................... 1
1.2 木質バイオマス燃料の供給可能性調査............................................................................... 5
1.3 燃料特性調査..................................................................................................................... 22
2. 熱需要調査........................................................................................................................... 24
2.1 金山町における熱利用施設調査........................................................................................ 25
2.2 個別施設の熱需要調査 ...................................................................................................... 26
2.3 地域熱需要調査 ................................................................................................................. 32
3. 木質バイオマスボイラー利用技術調査 ................................................................................ 36
3.1 チップボイラー利用技術調査 ........................................................................................... 36
3.2 ブリケットボイラー利用技術調査 .................................................................................... 44
3.3 木質バイオマス利用技術の選定........................................................................................ 45
3.4 チップボイラーの運転と管理について............................................................................. 47
4. 木質バイオマスエネルギー導入システムの検討.................................................................. 50
4.1 チップボイラーの導入方針 ............................................................................................... 50
4.2 木質バイオマス利用システムの最適規模の検討 .............................................................. 51
4.3 チップボイラー導入の検討【CASE1:ホットハウスカムロ】........................................................ 54
4.4 チップボイラー導入の検討【CASE2:ホットハウスカムロ+シェーネスハイム金山】................................ 59
4.5 チップボイラー導入の検討【CASE3:金山中学校+学校給食共同調理場】 ................... 64
4.6 チップボイラー導入最適規模のまとめ............................................................................. 68
5. 地域熱供給の導入可能性の検討........................................................................................... 70
5.1 地域熱供給について概要................................................................................................... 70
5.2 グリーンバレー神室エリアにおける熱供給の可能性の検討 ............................................ 72
5.3 金山地域エリアにおける熱供給の可能性の検討 .............................................................. 76
5.4 金山町における地域熱供給の可能性について .................................................................. 87
6. 灰の利用方法の検討............................................................................................................. 88
6.1 チップボイラー運転による灰の発生量............................................................................. 88
6.2 灰の活用事例調査 ............................................................................................................. 89
7. 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討 .............................................................. 90
7.1 ホットハウスカムロにおける事業性の検討...................................................................... 92
7.2 ホットハウスカムロ+シェーネスハイム金山における事業性の検討.............................. 97
7.3 金山中学校+学校給食共同調理場における事業性の検討.............................................. 102
7.4 木質バイオマスボイラー導入の事業性のまとめ ............................................................ 107
7.5 木質バイオマスエネルギー導入の課題........................................................................... 109
7.6 金山町での木質バイオマスボイラーの導入方策 .............................................................111
8. 木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討 ...............................................116
8.1 木質バイオマスエネルギーを活用した地域振興策......................................................... 116
8.2 今後の木質バイオマスエネルギー導入の推進 ................................................................ 119
9. バイオマスエネルギー利用に係る関連法令 ....................................................................... 120
10. 利用可能な助成制度......................................................................................................... 126
資料編
木質バイオマスボイラー.導入施設の先進地調査.............................................................................................資 1
国内の熱供給導入事例...................................................................................................................................................資 9
金山町地域新エネルギービジョン
(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)の策定と背景
《 調査の背景 》
金山町では平成 12 年度から平成 22 年度までの金山町総合発展計画において、「新エネ
ルギーの導入の推進」を掲げ、公共施設に新エネルギーシステムの導入を積極的に導入す
る旨の内容が謳われている。その導入の一歩として平成 17 年度に「金山町地域新エネル
ギービジョン策定調査」を行った。当該ビジョンでは、地球温暖化の原因となる二酸化炭
素削減に向けて、町民、事業者、行政が協同し、身近にできる新エネルギーの導入と省エ
ネルギーの普及を行い、環境にやさしいまちづくりに取組むことが示された。なかでも、
重点プロジェクトとして「森に暖められるまちづくりプロジェクト」を位置づけ、町内の
化石燃料エネルギーの消費が多い主要施設において、重点的に木質バイオマスエネルギー
への転換を図り、単体施設への木質バイオマスエネルギーの導入に留まらず、周辺の住宅
や施設を含めた将来的な熱供給の検討を重ね、町内の木質バイオマスエネルギーの導入を
推進していくことが定められている。本事業は、この重点プロジェクトの実現に向けて具
体的に検証するものである。
《 本調査の目的 》
現在、金山町で確認される木質バイオマス資源として、製材所、木工・工務店からの廃
材や森林整備の際に発生する林地残材や切捨て間伐材などがあげられる。これら木質バイ
オマス資源を段階的に製品やエネルギーに変換することによって、合理的かつ最大限利用
し、余すところなく利用することが求められている。木質資源はエネルギー源として高い
可能性を有しており、本調査において、その活用方法を検討していく。具体的な活用方法
として、新エネルギービジョンの重点プロジェクトで想定されたグリーンバレー神室エリ
アと金山中心地エリア内の主要施設における木質バイオマスボイラーの導入をするため
の諸課題と対応策を検討し、さらに主要施設単体の導入から発展させた地域熱供給につい
て検討をおこなう。また、木質バイオマスエネルギーを利用した町内の振興策について検
討をおこなう。
本事業では、未利用木質資源を活用したバイオマスの利用を推進することにより、既存
の化石燃料から木質バイオマスエネルギーへの代替による二酸化炭素排出量削減を図り、
地球温暖化等の環境問題の改善に資するとともに、地域が有する再生可能な資源を活用し
た循環型社会の構築と町の関係事業の雇用促進やグリーンツーリズムと連携させた観
光・地域振興に結びつけることを目的としている。
用語の定義
(1)SI 接頭語
十進の倍量単位を作成するために、単一記号で表記する単位。
接頭語の記号
名称
科学的記数法
k
キロ
103
M
メガ
106
G
ギガ
109
T
テラ
1012
(2)熱量・仕事エネルギー単位
MJ(メガジュール) kWh(キロワット時) kcal(キロカロリー)
MJ
1
0.278
239
kWh
3.6
1
860
kcal
0.04186
0.00116
1
J(ジュール)
:熱量の単位。以前は、cal(カロリー)が利用されていた。4.186J=1cal で
定義される。
(1J は 1W の仕事率を 1 秒間行ったときの仕事とも定義でき、
これを 1 時間行なった場合 3,600J=1Wh となる。)
(3)発熱量について
発熱量には、高位(総)発熱量と低位(真)発熱量があり、高位発熱量は一般的な熱量
計によって測定された値で、水蒸気の蒸発熱を含んだ発熱量をいう。
一方、高位発熱量から水蒸気分の蒸発熱を減じた発熱量を低位発熱量というが、水蒸気
となって排気される発熱量は回収システムを取り入れなければ利用できない。したがっ
て、本事業における燃料の発熱量は低位発熱量を用いるものとする。
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1. 木質バイオマス利用可能量調査
本町では、第 1 次産業である農林業が基幹をなしており、林業は樹齢 70~80 年生の長伐
期大径木による林業が営まれ「金山杉」と呼ばれる上質の木材は町の特産品となっている。
今後の地域の森林資源の有効活用や適切な森林管理を進めるため、平成 17 年度に制定さ
れた『金山町地域新エネルギービジョン』では、基本方針として『森に暖められるまちづ
くり』を目指し、町内で発生する木質バイオマス資源を活用したエネルギー利用が、重点
プロジェクトとしてあげられている。
本調査では『金山町地域新エネルギービジョン』賦存量調査の結果を踏まえて、本事業
で検討されている町内の施設へ木質バイオマスボイラーの燃料として利用される木質バイ
オマス資源に焦点をあてて詳細な調査を実施した。
1.1 金山町の森林資源
1.1.1 金山町の森林面積、蓄積量、生長量
町内で発生する森林及び木材利用における木質バイオマス賦存量について調査し、各
種資料より、町内の民有林における人工林・天然林・針葉樹・広葉樹の種別毎の森林の
年間生長量を把握し、潜在的に町内で利用できる木質バイオマス資源量を算出した。
図表 1-1
金山町の森林面積・蓄積量・生長量
蓄積量(千 m3)
面積(ha)
国有林
民有林
計
国有林
民有林
計
針葉樹
1,708
3,403
5,111
284
1,082
1,366
広葉樹
35
8
43
8
1
9
針葉樹
199
31
230
21
10
31
広葉樹
4,843
2,143
6,986
489
307
797
182
150
332
0
0
0
6,966
5,737
12,703
802
1,401
2,203
人工林
天然林
その他
総計
生長量(m3)
国有林
人工林
天然林
計
針葉樹
6,987
27,167
34,154
広葉樹
153
19
172
針葉樹
277
143
420
広葉樹
6,428
4,074
10,502
―
―
―
13,845
31,402
45,248
その他
総計
民有林
※面積、蓄積量:山形県林業統計平成 16 年度、生長量:平成 16 年度山形県調査森林資源構成表より参照
※単位四捨五入のため、各数の計と合計は一致しない場合がある。
1
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
山形県林業統計(平成 16 年度)によると、金山町の森林面積は国有林が 6,966ha、民
有林が 5,737ha となっており、総森林面積は 12,703ha となる。また、森林面積の割合は
国有林が 55%、民有林が 45%を占める。
森林蓄積量は国有林が 802 千 m3、民有林が 1,401 千 m3 となり総蓄積は 2,203 千 m3 と
なる。生長量は国有林が 13,845m3、民有林が 31,402m3 となり総生長量は 45,248m3 とな
る。
図表 1-2
人工林
(ha)
齢級
民有林における齢級別面積
天然林
(ha)
計
(ha)
人工林
(ha)
齢級
天然林
(ha)
計
(ha)
1 齢級
(1~5 年生)
4
156
152
12 齢級
(56~60 年生)
346
447
2 齢級
(6~10 年生)
11
146
135
13 齢級
(61~65 年生)
269
364
94
3 齢級
(11~15 年生)
3
185
182
14 齢級
(66~70 年生)
190
324
135
4 齢級
(16~20 年生)
22
199
178
15 齢級
(71~75 年生)
290
394
104
5 齢級
(21~25 年生)
13
260
247
16 齢級
(76~80 年生)
66
238
172
6 齢級
(26~30 年生)
27
261
233
17 齢級
(81~85 年生)
28
185
157
7 齢級
(31~35 年生)
36
261
225
18 齢級
(86~90 年生)
74
236
161
8 齢級
(36~40 年生)
170
434
264
19 齢級
(91~95 年生)
49
127
78
9 齢級
(41~45 年生)
149
429
280
20 齢級
(96~100 年生)
0
15
15
10 齢級
(46~50 年生)
177
459
282
21 齢級
(100 年生~)
16
45
29
11 齢級
※
※
(51~55 年生)
合計
244
423
179
3,403
2,184
5,587
民有林の内訳として、スギ 59.5%、広葉樹 38.6%、その他 1.9%。人工林の内、スギが占める割合は 97.7%となる。
平成 16 年度山形県調査 森林資源構成表より参照しているため、図表 1-1(山形県林業統計平成 16 年度)の
合計と若干異なる。
400
101
ha
350
人工林
300
天然林
250
200
150
100
50
齢級
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
図表 1-3
1
0
1
1
1
2
1
3
1
4
1
5
1
6
1
7
1
8
1
9
2
0
2
1
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
齢
級
民有林における齢級別面積
2
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
【木の含水率ついて】
木の含水率には、木材の基準により乾量基準含水率(ドライベース:DB)と湿量基準含水
率(ウェットベース:WB)が存在する。それぞれの基準別の含水率について示す。
●乾量基準含水率(ドライベース:DB)
乾量基準含水率○%は、木材に含まれる水分の重量(kg)対全乾状態(水分無し)での木
の重量(kg)の割合ことである。
乾量基準含水率○%
(ドライベース:DB)
木材に含まれる水分の重量(kg)× 100
=
木材の乾燥重量(kg)
●湿量基準含水率(ウェットベース:WB)
湿量基準含水率○%は、木材に含まれる水分の重量(kg)対 生木(湿った木)の重量(kg)
の割合ことである。
湿量基準含水率○%
=
(ウェットベース:WB)
木材に含まれる水分の重量(kg)× 100
生木の重量(kg)
【木材の発熱量について】
木質バイオマスをエネルギー利用する場合、ほぼ均一の規格(熱量)をもった化石燃料(低
位発熱量 A 重油 37.1MJ/L、灯油 34.9MJ/L)とは異なり、木質資源は木材に含まれてい
る水分量(含水率)により、その木材の持つ発熱量が大きく異なる。以下に木質バイオマ
スの含水率と低位発熱量の関係を示す。
木材の発熱量(MJ/kg)
25
建築廃材
20
15
林地残材等
森林未利用材
10
製材端材
5
0
0
10
20
30
40
50
木材含水率%(ウェットベース:WB)
60
図表 1-4 木質バイオマスの含水率と低位発熱量の関係(目安)
林地残材や間伐材といった生木に近いものは含水率が高く発熱量は小さく、建材のよう
に加工(人工乾燥)されたものは、含水率が低く発熱量は高くなる。
したがって、燃料コストの重量単価が同じであっても、材の含水率の低いほうが、熱量
単価が低くなるため、エネルギー利用には有利である。
3
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1.1.2 金山町の森林エネルギー賦存量
森林生長量とは 1 年に森林が生長する量であり、生長量分を伐採しても森林への影響
を及ぼさないものと考えられ、これは 1 年間で利用可能な森林バイオマス資源潜在賦存
量といえる。
森林バイオマス資源潜在賦存量は、以下の考え方により算出する。
・年間森林生長量 = 1 年間で利用可能な森林資源潜在賦存量
・森林資源潜在賦存量 = 針葉樹(年生長量×発熱量)+広葉樹(年生長量×発熱量)
図表 1-5
金山町の森林年間生長量におけるエネルギー賦存量
生長量(t)
国有林
人工林
天然林
エネルギー賦存量(GJ/年)
計
民有林
国有林
民有林
計
針葉樹
4,891
19,017
23,908
38,901
151,248
190,149
広葉樹
96
12
108
888
108
995
針葉樹
194
100
294
1,541
796
2,337
広葉樹
4,500
2,852
7,352
35,788
22,684
58,472
9,681
21,980
31,661
77,118
174,836
251,953
総計
※1 比重:針葉樹(スギ)0.7 、広葉樹(ブナ)0.83
※2 針葉樹発熱量:8MJ/kg=1,900kcal/kg(スギ:含水率 50%ウェットベース)
※3 広葉樹発熱量:9.2MJ/kg=2,200kcal/kg(ブナ:含水率 50%ウェットベース)
金山町の木質バイオマス資源として活用が期待される民有林(針葉樹)の森林資源賦存量
(生長量)は、年間で 21,980tとなり、エネルギー換算すると 174,836GJ 相当のエネルギ
ー賦存量があるとわかる。
4
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1.2 木質バイオマス燃料の供給可能性調査
1.2.1 木質バイオマス種類毎の現状と利用可能性
本調査では、町内で発生する製材所廃材、木工・工務店より発生する廃材、山林に残さ
れる林地残材や切捨て間伐材など木質バイオマス資源について発生形態、現在の用途、利
用可能性等について資源別に整理する。また、
各資源の利用可能性について考察している。
(1) 製材所廃材
町内に有する製材所 4 箇所(A 社、B 社、C 社、D 社)から発生する廃材(オガ粉、
樹皮(バーク)、背板、端材等)について調査を行なった。
本調査では、各製材所で発生する廃材についてそれぞれの発生形態、現在の利用用途、
処理方法、利用可能性についてまとめている。また、木質バイオマス資源として利用で
きる木質廃材の発生量を把握している。
木質資源発生量は各製材所のヒアリング結果から、各木質資源にかさ密度で算出した
ものである。
図表 1-6
単位
かさ密度
製材所廃材ごとのかさ密度
オガ粉
樹皮
チップ
端材
背板
(t/m3)
(t/ m3)
(t/ m3)
(t/ m3)
(t/ m3)
0.2
0.3
0.3
0.3
0.4
5
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
① 製材所廃材:オガ粉
図表 1-7
製材所廃材(オガ粉)について
オガ粉
・製材の過程で発生し、いずれの製材工場でも製材機の周りに吸引装置が備
え付けられ貯蔵されている。
・オガ粉の中には基本的に不純物は含まれない。
発生形態
現在の利用用途
・主として周辺地域の畜産用の敷材として販売している。また、一部はきの
こ培養土の原料としても販売されている。
処理方法
・現時点では大半が有価物として活用(販売)されており、未利用なものが
見受けられないので、エネルギー源として使う可能性は低いといえる。
・木質バイオマスボイラー燃料の原料としては、ブリケット等に加工する必
要がある。
利用可能性
写真:オガ粉貯留状況(A 社) 写真:オガ粉貯留所外観(B 社)
図表 1-8
単位
製材所からのオガ粉発生状況(平成 17 年度実績)
A社
製材所
利用分
写真:オガ粉貯留所内状況(C 社)
B社
未利用分
利用分
C社
未利用分
利用分
D社
未利用分
利用分
未利用分
(m3)
6,800
0
1,540
0
270
0
89
0
(t)
1,360
0
308
0
54
0
48
0
6
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
② 製材所廃材:樹皮
図表 1-9
製材所廃材
樹皮(バーク)について
樹皮
・A 社ではバーカーを通し、はく離したバークを粉砕して保管している。
・B 社、C 社、D 社では、樹皮単独の処理費用やはく離機の導入費用の方が
高くつくため、樹皮付きのままで製材しており、本格的なバーカー(樹皮
はく離装置)を備えていないため、製材の過程で丸太から自然はく離した
ものが若干発生する程度である。
・化学物質等の不純物混入はない。
・露天で野積されて土石が含まれるケースが見られる。
発生形態
現在の利用用途
処理方法
・A 社:自社の木材乾燥用ボイラーの燃料として全て利用。
・B 社:産廃業者に引き取り処理を委託。
・C 社:工場内に設置されている暖房用薪ストーブ燃料として活用。
・町内の製材所で発生するバークは杉がほとんどであり、広葉樹樹皮と比べ
て堆肥化しにくい性質のため、各製材所とも処理に困っている。また、発
生した形態のままでは形状に均一性がなく、含水率が高いことから、木質
燃料として利用する場合は、選別・乾燥・加工が必要になってくる。
・現在、町内の製材所にて、自社の製材所で発生するバークを利用したブリ
ケットを生産する生産設備の導入を決定しており、主に家畜の敷料として
ブリケットの販売が検討されている。これは木質燃料としても利用できる
可能性がある。
利用可能性
写真
コンテナに保管される樹皮(B 社)
図表 1-10
利用分
野積みされた樹皮(D 社)
製材所からの樹皮(バーク)発生状況(平成 17 年度実績)
A社
製材所
単位
写真
B社
未利用分
利用分
C社
未利用分
利用分
D社
未利用分
利用分
未利用分
(m3)
4,050
0
0
200
75
0
0
17
(t)
1,215
0
0
60
23
0
0
5
7
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
③ 製材所廃材:端材(短材)
図表 1-11
製材所廃材
端材(短材)について
端材(短材)
・製材過程で材の長さや幅を規格に合せて切断する際に発生する。
・原木(丸太)から製材しているので、基本的には不純物は含まれない。
・形状は様々であるが、主に長さ 30~40cm 以下、幅や厚さは数 cm~数
十 cm 程度。
※C 社の端材に関しては、一部背板が端材として混入。
発生形態
・B 社ではバーク処理と同様にコンテナに保管後、産廃業者に処理を委託
している。
・C 社では薪ストーブの燃料として利用している。また、近隣住民に暖房・
風呂用の燃料として無償で提供している。
現在の利用用途
処理方法
・端材の形状は様々であるが、長さ 30~40cm 以下、幅や厚さは数 cm~
数十 cm のものが発生しており、燃料(チップ)として利用する場合は、
端材をチップ加工できる特殊なチッパーが必要となる。
・本事業で導入が検討されている木質チップボイラーに利用するには十分
な量を確保することが重要である。
・現在、バークとともに産業廃棄物として処理を行っている工場もあるこ
とから木質バイオマス資源として有効活用することが期待できる。
利用可能性
写真:廃材ストックコンテナによる保管(B 社)
図表 1-12
単位
製材所からの端材(短材)発生状況(平成 17 年度実績)
A社
製材所
利用分
写真:端材(背板)発生状況 (C 社)
B社
未利用分
利用分
C社
未利用分
利用分
D社
未利用分
利用分
未利用分
(m3)
1,500
0
0
200
250
225
0
0
(t)
450
0
0
60
75
68
0
0
※C 社の端材発生量に関しては、一部背板も発生量に含まれている。
8
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
④ 製材所廃材:背板
図表 1-13
製材所廃材
背板について(平成 17 年度実績)
背板
・丸太等の製材過程で発生しており、形状は長さ 3~4m、幅 10~20cm、厚
さ数 cm 程度で、数本の背板を直径 1~1.5m 程度の束にしてロープ等で縛
って屋外に保管されている。一束あたりの容積は約 2~5m3 程度である。
・防腐剤や化学塗料などの不純物は含まれていない。
・バーカー(樹皮はく離装置)所有していない工場では、樹皮を剥いだ場合
のメリットよりも樹皮単独の処理費用やはく離機の導入費用の方が高くつ
くため、樹皮付きの背板が発生している。
発生形態
現在の利用用途
処理方法
利用可能性
・製材過程で発生する背板は、チッパーを保有する製材工場は製材ライン中
にチッパーが組み込まれており、製紙用チップとして業者に販売している。
・チッパーを保有していない工場では、直径 1~1.5m 程度の束にしてロープ
等で縛って屋外に保管し、町外のチップ工場へ販売している。
・広葉樹の背板の一部は、家庭での薪用途として販売している。
・端材と同様に不純物が含まれない上に、一定の形状で発生するため、チッ
プ等に燃料化することが比較的容易であり、木質燃料の原料として有望。
ただし、含水率が高いため、事前の乾燥工程または、生チップ対応のボイ
ラーが必要となる。
・現在はチッパーを保有する工場は製材過程でチップ化し、製紙用チップと
して販売しているため、価格次第で木質チップボイラーの燃料に利用でき
る可能性が高い。
・チッパーを保有していない工場では、一定量の背板をロープやバングルで
とめて町外のチップ工場へ販売していることから、これを町内でチップ化
し燃料利用することが期待できる。
写真:背板保管状況(B 社)
写真:背板保管状況(C 社)
図表 1-14
単位
利用分
(D 社)
製材所からの背板発生状況(平成 17 年度実績)
A社
製材所
写真:背板保管状況
B社
未利用分
利用分
C社
未利用分
利用分
D社
未利用分
利用分
未利用分
(m3)
0
0
0
0
0
0
30
0
(t)
0
0
0
0
0
0
12
0
※C 社の背板発生量に関しては、一部端材として発生量に含まれている。
9
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
⑤ 製材所廃材発生量についてのまとめ
金山町で発生する製材所廃材ごとの利用量と未利用量をまとめた。
図表 1-15
町内製材所
製材所における各木質廃材の発生量
利用量
単位
オガ粉
1
A社
2
B社
3
C社
4
D社
合計
町内製材所
樹皮
A社
2
B社
3
C社
4
D社
合計
端材
背板
6,800
4,050
9,500
1,500
0
(t/年)
1,360
1,215
2,850
450
0
m3/年
1,540
0
5,800
0
0
(t/年)
308
0
1,740
0
0
m3/年
270
75
0
250
0
(t/年)
54
23
0
75
0
m3/年
89
0
0
0
30
(t/年)
48
0
0
0
12
m3/年
8,699
4,125
15,300
1,750
30
(t/年)
1,770
1,238
4,590
525
12
未利用量
単位
オガ粉
1
チップ
m3/年
樹皮
チップ
端材
背板
m3/年
0
0
0
0
0
(t/年)
0
0
0
0
0
m3/年
0
200
0
200
0
(t/年)
0
60
0
60
0
m3/年
0
0
0
225
0
(t/年)
0
0
0
68
0
m3/年
0
17
0
0
0
(t/年)
0
5
0
0
0
m3/年
0
217
0
425
0
(t/年)
0
65
0
128
0
※木質廃材量は、各資源のかさ密度により算出
金山町から発生する製材所廃材は、各製材所で多段階(カスケード)活用しており、
未利用な廃材としては樹皮と端材があげられる。発生量は樹皮が年間で 217m3(65t)、
端材が 425 m3(128t)となっている。オガ粉や背板に関しては、すでに有価取引して
いるため、未利用資源としての発生量はほとんど見受けられない。
10
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
(2) 木工・工務店廃材
町内で生産される木材は『金山杉』として全国的に有名であり、町を挙げて金山杉を
使った『金山型住宅』といわれる独自の住宅スタイルを提唱している。そのなかで木工・
工務店など住宅建築関係者が多く、それらの事業所からオガ粉・かんな屑、端材などの
資源発生が見込まれる。本調査では、町内にある主な建設・工務店 11 社にアンケート
調査をおこない、種類別に残材の発生量と形態、利用状況等について残材発生量を試算
している。なお、残材発生量はアンケートの回答を得られた 6 社についてまとめている。
① 木工・工務店廃材:オガ粉・かんな屑
図表 1-16
木工・工務店廃材
オガ粉・かんな屑について
オガ粉・かんな屑
発生形態
・木材を加工する際に発生する。
・通常は電動ノコやプレーナ(電動鉋)の周囲に吸引装置が備え付けられ空気輸送で
貯蔵される。
・いずれの工務店でも多少なりともベニヤや集成材を扱っているので、現状はそれ
らに薬品が含まれている可能性が高い。
現在の利用用途
処理方法
産業廃棄物処理業者にて処理。
利用可能性
・現状では、ベニヤや集成材起源のものも混じっている可能性が高いので木質チッ
プボイラーの燃料として使うには問題がある。
・ピュアなものを分別収集できればよいが、コストや労力的に見て現状での利用は
困難である。
② 木工・工務店廃材:端材
図表 1-17
木工・工務店廃材
端材について
端材
発生形態
・工務店にて、材を加工する際に発生する。
・自社内に保管されているケースが多い。
・薬品処理や加工木材のものが混入しているケースも考えられる。
現在の利用用途
処理方法
・発生量が少ない工務店では、自家や近隣の民家で風呂やストーブ用の燃料として利
用しているケースがみられる。
・発生量が多い木工所では、近隣住民への無料提供だけでは捌ききれないため、産業
廃棄物取扱業者に処理費用を支払って処理。
利用可能性
・大部分が産業廃棄物として処分されているなか、木質バイオマス燃料として利用す
る場合は薬品を使っていないものから発生したピュアな材と集成材、ベニヤ板など
薬品の使っている材から発生したものと分別が可能ならば利用することが可能。し
かし、分別作業が業者にとって大きな負担となりえる。
・廃材の発生時期や量の確保が困難であるため、現状では利用できる可能性は低い。
将来的にこれらの廃材を分別・保管・収集といったシステムを構築することにより
利用することは可能である。
11
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
③ 木工・工務店における木質廃材のまとめ
木工・工務店(6 社分)における木質廃材であるオガ粉・かんな屑、端材の発生量に
ついて以下にまとめた。アンケートへの回答のあった 6 社の廃材発生量としたが、町
内の木工所や建設・工務店の中で廃材発生量を正確に把握している事業者はほとんど
なく、いずれも経験的な推定値であると推測できる。なお、工務店廃材の発生量はあ
くまで参考値として捉えるのが妥当である。
図表 1-18
工務店
1
a社
2
b社
3
c社
4
d社
5
e社
6
f社
合計
単位
木工・工務店における各木質廃材の発生量
オガ粉
(かんな屑)
m3/年
(t/年)
0
(0)
m3/年
(t/年)
m3/年
(t/年)
端材
その他
3
(0.6)
小計
0
(0)
―
(0.6)
0
10
0
―
(0)
(2.0)
(0)
(2.0)
1
6
0
―
(0.1)
(1.2)
(0)
(1.3)
m3/年
20
50
0
―
(t/年)
(4)
(10)
(0)
(14)
m3/年
(t/年)
80
30
3
―
(16)
(6)
(0.3)
(22.3)
m3/年
0
20
30
―
(t/年)
(0)
(4)
(3)
(7)
m3/年
101
119
33
―
(t/年)
(20)
(24)
(3)
(47)
※木工所及び工務店から発生する材を(WB12%)と想定し杉丸太絶乾密度及び空隙率を考慮して、
かさ密度:オガ粉・かんな屑・その他:0.1t/m3、端材:0.2t/m3 で算出。
オガ粉やかんな屑に関しては、薬品を使っていないピュアな材と集成材やベニヤ板
など薬品を使用している材の分別が可能ならば利用できるが、現状ではベニヤ板や集
成材起源のものも混入している可能性が高く、分別もされていないので、木質チップ
ボイラーの燃料として使うには問題がある。また、分別収集には労力やコストが発生
するので、現状ですぐに利用することは困難である。
端材に関しては、大部分が産業廃棄物として処分されている。オガ粉やかんな屑と
同様、木質バイオマス燃料として利用する場合は分別が必要となり、分別作業が業者
にとって大きな負担となりえる。また、廃材の発生時期や量の確保が困難であるため、
現状では利用できる可能性は低い。
しかし、将来的にこれらの廃材を分別・保管・収集といった一連のシステムを構築
することにより、木質バイオマス燃料として利用することは可能である。
12
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
(3) 林地残材
本調査では、主伐時に発生する林地残材について、町内の素材生産業者 2 社に対して
アンケート及びヒアリング調査を行った。
図表 1-19
林地残材の概要
林地残材
発生形態
・林地におけるバイオマス資源として、素材生産時に丸太部分を切り出した後に残
される枝状部や、未木といわれる幹の先端や根元部分が挙げられ通常は林地内に
残されている。
・残材は全木の内で 10%となり、枝状部約 5%と根元部分の約 5%となる。
現在の利用用途
処理方法
・現在は利用用途がなく、ほとんどが山林に放置されている。
・一部の業者では伐根部を搬出し用材として販売している。
利用可能性
・残材の収集・搬出は経済的に考えると当面の利用は困難であるが、木質バイオマ
スとして利用価値は高く、将来的に低コストな収集方法を確立することで利用が
可能となる。
・基本的にはエネルギー(燃料)としてだけではなく、建材や土木資材としてマテ
リアル利用が資源の有効利用の観点からも望ましい。
写真 林地に放置される残材(左:枝状部、右:根元部)
図表 1-20
年度
伐採材積(m3)
主伐時の林地残材発生量
搬出量※1(m3)
林地残材※2(枝状部+未木材)
(m3)
(t)
H15
8,026
7,223
803
562
H16
9,127
8,214
913
639
H17
9,782
8,804
978
685
H18
9,567
8,610
957
670
※1 主伐材の用材部割合 90%
※2 林地残材率:枝条部は伐採量に対して 5%程度、末木は伐採量の 5%程度。
主伐材搬出量を見ると各年でおよそ 8,000m3 ということがわかる。そこで、主伐時の
林地残材発生量を試算すると、平成 17 年度(実績)で年間 976m3(685t)が見込まれ
ることがわかった。
13
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
(4) 切捨て間伐材
本調査では、間伐実施時の切捨て間伐材について町内の間伐請負業者に対してヒアリ
ング・アンケート調査を行った。
図表 1-21
切捨て間伐材について
切捨て間伐材
発生形態
現在の利用用途
処理方法
・近年、間伐体制の強化に努めており、間伐実施率は 20%~30%である。
・長伐期施業が行われるなかで間伐対象となるのは、樹齢約 15~60 年であ
り、基本的に 40~50 年以上のものが用材として利用され、林齢 40 年生
未満の中で用材として需要がないものは切捨てとなっている。
・樹齢 15~40 年生のものは、全木の内 60~70%が林地に放置され、残り
の 30~40%の部分を用材として利用している。
・利用間伐時(林齢 40~60 年生)で、間伐材は利用されるのは、全木のう
ち幹の部分の約 70%で残り 30%が林地に切捨てされる。
・間伐請負業者へのヒアリングによる各山林作業費用
◆葉枯らし作業が約 1,000~1,100 円/m3
◆主伐(皆伐)作業は、3,500~4,500 円/m3
◆間伐材の伐採・搬出費用は、およそ 10,000~18,000 円/m3(現場の難
易度等の条件によって異なる)
※これは伐採・搬出費用に関しては伐採・集材・搬出輸送までが該当し、
索道を必要としないケースであり木材の本体価格は含まない。
<チップ化利用コスト試算>
・間伐材の伐採・搬出費用を 10,000~18,000 円/m3 とすると、土場にて移
動式チッパーを利用(チップ化コストを 2,700~3,300 円/m3)した場合、
チップ材積あたり、5,500~9,300 円/ m3(含水率 WB50~60%)となる。
利用可能性
・経済性を考えると当面の利用は困難であるが、ピュアな木質バイオマス
としては最も発生量が多く、間伐促進や森林整備のための補助金政策と
上手く組み合わせ、将来的に低コストな収集・運搬システムの構築によ
る利用コストの低減化がなされれば利用が可能となる。
・林地残材と同様に、エネルギー(燃料)だけではなく、建材や土木資材
といった付加価値の高い材として利用することが価格的にも、資源の有
効利用の観点からも望ましい。
写真 林地に放置される切捨て間伐材
14
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
図表 1-22
金山町の間伐実施状況(間伐補助対象:平成 12~17 年度実績)
年度
H12
H13
H14
H15
H16
H17
間伐実施面積
195 ha
151.1ha
150.5 ha
126.8 ha
103.5 ha
149.2 ha
図表 1-23
施行別の切捨て間伐材発生量
(平成 17 年度実績)
《 利用間伐 》
項目
値
備考
間伐実施面積
27.4ha
ha 当りの材積
247 m3/ha
対象林齢:15~35 年生
平成 17 年度実績
対象林齢:15~35 年生の材積値平均
※金山町森林整備計画策定年度 16「裏東北・北陸地方ス
ギ林分密度管理図(林野庁監修)」より算出
蓄積量
6,768m3
=(間伐実施面積)×(ha 当りの材積)
間伐材量
2,030m3
=(蓄積量)×(間伐材実施率 30%)
切捨て間伐材発生量
609m3
(426t)
=(間伐材量)×(未利用率 30%)
※材積換算:杉の生材を(含水率:WB50%)真比重 0.7
《 除伐・間伐 》
項目
除伐・間伐実施面積
ha 当りの材積
値
34.1 ha
127 m3/ ha
備考
対象林齢:除伐 11~15 年生
間伐 16~25 年生
対象林齢:11~25 年生の材積値平均
※金山町森林整備計画策定年度 16「裏東北・北陸地方ス
ギ林分密度管理図(林野庁監修)」より算出
蓄積量
4,327m3
=(間伐実施面積)×(ha 当りの材積)
切捨て除伐・間伐材量
1,298m3
(909t)
=(蓄積量)×(間伐実施率 30%)
※材積換算:杉の生材を(含水率:WB50%)真比重 0.7
《 補助対象間伐 》
項目
値
備考
間伐実施面積
121.8ha
ha 当りの材積
353m3/ha
蓄積量
42,995m3
=(間伐実施面積)×(ha 当りの材積)
間伐材量
12,899m3
=(森林蓄積量)×(間伐実施率 30%)
切捨て間伐材発生量
9,029m3
(6,320t)
対象林齢:16~50 年生
平成 17 年度実績
対象林齢:16~50 年生の材積値平均
※金山町森林整備計画策定年度 16「裏東北・北陸地方ス
ギ林分密度管理図(林野庁監修)」より算出
=(間伐材量)×(未利用率 70%)
※材積換算:杉の生材を(含水率:WB50%)真比重 0.7
15
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
図表 1-24
切捨て間伐材発生量まとめ
対象面積
(平成 17 年度実績)
切捨て間伐材発生量※
利用間伐
27.4 ha
1,421m3(995t)
除伐・間伐
34.1 ha
1,298m3(909t)
補助対象間伐
121.8 ha
9,029m3(6,320t)
合計
183.3 ha
10,936m3(7,655t)
※材積換算:杉の生材を(含水率:WB50%)真比重 0.7
3
図表 1-24 より、利用間伐時の切捨て間伐材発生量は 1,421 m(995t)
となっている。
除伐・間伐時の切捨て間伐材発生量は 1,298m3(909t)となっている。補助対象間伐時
は、切捨て間伐材発生量 9,029m3(6,320t)となっている。
したがって、利用間伐、除伐・間伐、補助対象間伐における合計の間伐実施面積は
183.3ha/年となり、切捨て間伐材発生量は 10,936m3(7,655t)と見込まれる。
16
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1.2.2 木質バイオマス資源発生量のまとめ
町内の製材所、工務店、森林より発生する木質バイオマス資源の期待可採量(各発生
源で発生する木質バイオマス資源総量)と未利用量(期待可採量の内、有価取引などさ
れていない未利用の木質資源)についてまとめた。また、木質バイオマス資源ごとに、
短期(現状で利用可能)及び長期(現状では経済的・法的な条件制限がクリアされた場
合)の視点に基づいて評価を行った。
図表 1-25
金山町で発生する木質バイオマス資源の利用可能性について
期待可採量
未利用量
(t/年)
(t/年)
利用可能性について
木質資源
製
材
所
※
条件等
長期
オガ粉
1,770
―
△
○
・現時点では大半が家畜の敷料として販売
・原料の確保が必要。
・燃料化(ブリケット化)が必要。
・低コスト収集・運搬システムの構築が必要
樹皮
1,303
65
△
○
・原料の確保必要。
・含水率を落として燃料化
・低コスト収集・運搬システムの構築が必要
チップ
4,590
―
○
○
・現時点では製紙用チップとして有価物(販売)。
・取引価格次第で燃料利用は可能。
653
128
○
○
・原料の確保が必要。
・燃料化(チップ化)が必要
・低コスト収集・運搬システムの構築が必要
端材
工
務
店
短期
背板
12
―
○
○
・現時点では製紙用チップ原料として販売。
・原料の確保が必要。
・燃料化(チップ化)が必要
・低コスト収集・運搬システムの構築が必要
オガ粉
かんな屑
20
20
×
△
・薬品の含む材とピュアな材を分別が必要。
・オガ粉については分別が困難。
端材
24
24
△
○
・薬品の含む材とピュアな材の分別が必要。
・燃料化(チップ化)が必要
・原料の低コスト収集・運搬システムの構築が必要
○
・林地残材の搬出・加工するためにコスト負担により
現時点で利用は困難。
・原料の低コスト収集・運搬システムの構築が必要
・燃料化システム(チップ化)が必要
○
・間伐材の搬出・加工するためにコスト負担により
現時点で利用は困難。
・原料の低コスト収集・運搬システムの構築が必要
・燃料化システム(チップ化)が必要
林地
残材
685
685
△
森
林
切捨て
間伐材
計
7,655
7,655
16,712
8,577
△
※1 評価凡例:○ 利用可能、△ 条件次第で利用可能、× 利用が困難
※2 工務店廃材発生量は町内業者 6 社分の廃材量
各種資源発生量は平成 17 年度実績値より算出
17
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
木質バイオマス資源発生量については、平成 17 年度の実績値を用いているが、各木
質資源の発生場所の状況により、年間の資源発生量は変化することが考えられる。
各資源発生源別に今後の利用展開についてまとめた。
(1) 製材所:製材所廃材
製材所廃材は、町内の製材所における製材量により廃材の発生量が変化するが、近
年の製材状況から資源発生量は大きな変動はないものと推測される。しかし、各製材
所で既に多段階的に利用(カスケード利用)されているため、木質バイオマス燃料と
して利用できる未利用木質資源は一部の樹皮や端材に限られる。
(2) 工務店:木工・建築廃材
木質資源の発生量を見ると燃料として利用するには資源発生量が少なく、工務店で
取扱う集成材やベニヤ板由来の端材は、化学薬品の含まれている可能性があり、安全
性から木質チップボイラーの燃料として利用は困難である。
木工・建築廃材に関して利用する場合は、薬品が使われている廃材とピュアな木材
との分別が必要であり、さらにチップ原料(有価物)として取引するようなシステム
構築を行い、
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」をクリアすることで利用が可能と
なる。
(3) 森林:林地残材、切捨て間伐材
森林からの発生する林地残材や切捨て間伐材は、主伐時や除間伐時に発生するので、
年間の森林施業状況により発生量が変化するものと考えられる。
主伐時の林地残材は、地元事業者による計画的な森林管理下で、長伐期大径木生産
を行っており、発生する林地残材も隔年の安定的な量が見込まれる。
切捨て間伐材に関しては、間伐請負業者によるヒアリングによると、今後、間伐体
制を整備していく方向であり、それに伴い、切捨て間伐材の発生量は増えることが予
想され、安定的な資源発生量が見込まれる。
林地残材、切捨て間伐材の双方ともに、現状では収集、搬出にコストがかかり、用
材としての需要がないため利用することは困難である。しかし、将来的には、山林保
全や林業の振興や地域内の木質資源のエネルギー利用等で、間伐材や林地残材の利用
が求められ、これらの材を安価で安定的に供給できるシステムを構築することが必要
となってくる。
18
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1.2.3 木質バイオマス燃料の利用(供給)について
木質バイオマスエネルギーを利用する場合の燃料供給体制を、短期から長期的な視点
で考察した。
(1) 【短期】木質バイオマスの利用可能資源と燃料供給対象
短期的に見ると対象となる木質バイオマス燃料は、コストや供給の安定性等総合的
に考えると製材所で生産される製紙用チップが最も有力である。燃料供給先としては、
まずは個別の熱需要が大きい施設へ単体での木質チップボイラーの導入とともに燃料
供給システムの整備を推進していく。
図表 1-26
木質バイオマス資源賦存量【短期】
発生源
木質資源
①
製紙用チップ
製材所
②
樹皮
③
端材
④
背板
【短期】木質バイオマス資源量
資源発生量
4,590t
65t
128t
12t
4,795t
需要側
供給側
チップ
(ブリケット)
製材所
個別施設
【暖房・給湯】
木質バイオマス
ボイラー
製紙用チップ
樹皮
4,590t
65t
背板
端材
12t
128t
宿泊施設
燃料化
4,795t
温泉施設
学校
他施設
図表 1-27
木質バイオマス資源フロー【短期】
19
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
(2) 【長期】木質バイオマスの利用可能資源と燃料供給対象
長期的には燃料の供給対象を個別施設への供給と一般住宅を含めた地域熱供給を想
定していく。木工・工務店から発生する端材はピュアな材のみを分別し、「廃棄物の処
理及び清掃に関する法律」をクリアすることで利用が可能となる。また、森林から発生
する林地残材や切捨て間伐材は、短期的には収集・運搬・燃料化などのコストが見合わ
ず経済的に利用が困難であるが、長期的に木質バイオマス燃料の需要の拡大とともに木
質燃料供給体制を整備し、規模を拡大していくことが望まれる。
図表 1-28
木質バイオマス資源賦存量【長期的】
発生源
製材所
木質資源
①
製紙用チップ
②
樹皮
③
端材
④
背板
木工・工務店
⑤
端材
森林
⑥
林地残材
⑦
切捨て間伐材
【長期的】木質バイオマス資源量
資源発生量
4,590t
65t
128t
12t
24t
685t
7,655t
13,147t
需要側
供給側
チップ
(ブリケット)
製材所
製紙用チップ
樹皮
4,590t
65t
背板
端材
12t
128t
個別施設
【暖房・給湯】
木質バイオマス
ボイラー
4,795t
燃料
宿泊施設
温泉施設
学校
工務店
法的
クリア
端材
分別
燃料化
他施設
24t
24t
地域熱供給
【暖房・給湯】
森林
一般住宅
林地残材
切捨て間伐
685t
7,655t
図表 1-29
収集
運搬
燃料化
8,340t
木質バイオマス資源フロー【長期】
20
施設
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
(3) 金山町における木質バイオマス燃料供給システムの構築
近年、金山町を含めた最上地域では、木質バイオマス資源(木質チップ)をエネルギ
ー利用する施設の整備・計画が推進されてきており、地域内で燃料となる木質チップの
需要が高まることが予想される。金山町においても、町内外のチップ需要の高まりに対
して、町内で発生する製材所廃材(端材・背板)や工務店から発生する端材、森林管理
のもと発生する林地残材や切捨て間伐材等の木質資源をエネルギー利用施設へ燃料を
供給するといった一連のシステムの構築が求められている。
現在、町内の素材生産業者、製材所、工務店などの森林に関係する事業者が、地域内
の木質資源を活用し、地域内外の木質バイオマスエネルギー利用施設に対して木質燃料
の供給を目的とした組織の設立を検討している。
図表 1-30 金山町における木質バイオマス燃料供給システムのイメージ
21
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1.3 燃料特性調査
現在、金山町で取得可能な木質燃料として、製材所で生産されるチップ、樹皮ブリケッ
ト、樹皮の 3 つが上げられる。以上の 3 つの木質燃料について特性をまとめた。
1.3.1 チップ燃料
チップはチッパー形式によって生産されるチップ形状に特徴がある。チップの形状を
大別すると「破砕機」による細長い繊維状のチップ(主に堆肥用・マルチング用)もの
と「チッパー」による薄い方形状のチップ(主に製紙パルプ用)ものの 2 タイプに分け
られる。(図表 1-31)
町内で生産される木質チップは、製材所で生産される製紙用の切削チップとなる。こ
れら製紙用の切削チップは木質バイオマスボイラー(チップボイラー)に利用すること
が可能である。
図表 1-31
破砕チップと切削チップの比較
破砕チップ
切削チップ
製造
方法
【ハンマーミル方式】
ハンマーの打撃による衝撃力で破砕。
【カッターミル方式】
受刃と切断刃によるせん断力で破砕。
カッターナイフまたはカッターディスクで
削り取っていく。
機械
耐久性
カッターによる破砕は、石などの異物によ
りカッターが破損するため、木材の選別が
必要となる。石などの異物混入の可能性あ
る木材はハンマーミル方式が望ましい。
カッターによる破砕は、石などの異物により
カッターが破損するため、木材の選別が必要
となる。
主な用途
堆肥原料
製紙パルプ用原料
燃焼機器
の利用性
燃料供給装置(スクリュー方式)でチップ
がブリッジを形成しやすく、燃料供給がス
トップするトラブルが発生する可能性があ
る。
燃料供給装置(スクリュー方式)でブリッジ
を形成しにくいため、燃料供給トラブルの可
能性が比較的低い。
細長い繊維状
薄い方形状
マルチング材
吹きつけ材
形態
22
第1章
木質バイオマス利用可能量調査
1.3.2 ブリケット燃料
ブリケットとはチップやプレーナー屑などの木質廃材を加圧し円筒形に押し固めたも
ので直径約 50mm 程度の固形燃料である。燃料の含水率が一定化されているため、貯蔵・
輸送の面において優れた燃料である。現在、町内の製材所で自社から発生する樹皮を原
料としてブリケット製造をおこなっている。これは主に家畜の敷料としての販売が検討
されているが、木質バイオマスボイラーにてエネルギー利用も可能であり、将来的に地
域内の農業ハウスにおける燃料として販売も検討されている。
図表 1-32
ブリケットの特徴
特徴
・製材所から発生するオガ粉、プレーナー屑、樹皮等を加圧して固形
化したもの。
・海外ではやや大型のスティック状のものが主流で、一般家庭では薪
の代用品として暖炉などで利用されている。また、施設等の大型な
どではブリケットを燃料とする専用の木質バイオマスボイラーで
使用されている。
形状
直径 50mm の円筒形 ※長さは調節可能
含水率
町内で生産予定であるバークブリケットは含水率 18%程
発熱量
約 16.7MJ/kg (4,000kcal/kg)
実物
写真
(左:バーク仕様、右:オガ粉仕様)
1.3.3
樹皮(バーク)燃料
現在、製材所から発生する樹皮を町内の費用をかけて処理している箇所もあり木質燃
料として利用が期待される。しかし、製材過程で発生し性状が統一化されていないため、
エネルギー利用には、燃焼機器の制限を受けることがある。国内で先進的にチップボイ
ラーの導入を図った岩手県の林業技術センターによると、樹皮 100%で燃焼試験した結果、
灰発生量が多く機器メンテナンス上、利用が困難であるという報告がある。
一方で、平成 18 年度より町内の製材所において、乾燥させたバークを燃料にチップボ
イラーで木材乾燥が行なわれており、積極的な樹皮の利用が進んでいる。
23
第2章
熱需要調査
第2章
熱需要調査
2. 熱需要調査
本章では、木質バイオマスエネルギーの導入検討のための基礎調査として、町内の主要施
設における熱需要調査を行った。また、主要施設の中でも熱需要が高く、木質バイオマスエ
ネルギーの導入の可能性が高いと思われる特徴的な施設について詳細な施設調査を行った。
第 6 章の地域熱供給の可能性の検討をおこなう為、町内の熱需要の高いエリアを抽出し、
そのエリアの熱需要について算出を行なった。
熱量計算について
熱量には高位(総)発熱量と低位(真)発熱量がある。高位発熱量は一般的な熱量計に
よって測定された値で水蒸気の蒸発熱を含んだ発熱量を示す。一方、高位発熱量から水蒸
気分の蒸発熱を減じた発熱量を低位発熱量といい、水蒸気となって排気される発熱量は回
収システムを取り入れなければ利用できない。したがって、本事業における燃料の発熱量
は低位発熱量を用いるものとする。
図表 2-1
燃料種ごとの低位発熱量と二酸化炭素排出係数
二酸化炭素
排出係数※2
低位発熱量※1
燃料
電気
860
kcal/kWh
3.6
MJ/ kWh
─
0.429
kg-CO2/ kWh
灯油
8,329
kcal/L
34.9
MJ/L
9.7
kWh/L
0.068
kg-CO2/MJ
A 重油
8,874
kcal/L
37.1
MJ/L
10.3
kWh/L
0.069
kg-CO2/MJ
LPG
11,093
kcal/kg
46.4
MJ/kg
25.3
kWh /m3
0.060
kg-CO2/MJ
備考
CO2 排出係数は東北電力値
2.0747kg/m3
※1 低位発熱量:高位発熱量に 0.95(灯油・A 重油)、0.925(LPG)を乗じ算出『総合エネルギー統計』参照
※2 二酸化炭素排出係数:『地球温暖化対策地域推進計画策定ガイドライン』参照
24
第2章
熱需要調査
2.1 金山町における熱利用施設調査
本調査では、施設への木質バイオマスエネルギーの導入を検討するため、町内の主要施設
におけるエネルギー源別の燃料消費量(平成 17 年度実績)と既存設備の概要についてアン
ケート調査を行ない、各施設のエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を求めた。
図表 2-2
主要施設における年間のエネルギー消費量と二酸化炭素排出量(平成 17 年度)
二酸化炭素排出量(t-CO2/年)
エネルギー消費量(GJ/年)
施設
1
2
3
4
5
役場庁舎
中央公民館
金山町保育園
金山小学校
金山中学校
6
緑地等活用総合管理センター
7
8
9
10
11
12
1,133
269
38
267
566
965
568
-
-
1,076
16
25
310
586
-
28
6
9
7
4
2,142
868
357
860
1,646
135
32
4
32
67
67
39
-
-
74
1
2
21
40
-
1.6
0.3
0.5
0.4
0.3
204
73
26
72
141
303
―
117
2
422
36
-
8
0.1
44
726
430
―
4,252
―
184
―
―
726
4,866
87
51
-
293
-
13
-
-
87
357
274
-
584
373
1,230
33
-
40
22
94
879
1,483
126
-
3,348
1,261
789
-
-
1,992
-
28
3,660
4,832
1,415
105
177
15
-
231
87
54
-
-
120
-
1.6
278
408
104
6,493
11,470
2,611
2,449
23,022
774
791
178
147
1,890
ホットハウスカムロ
森林交流センター
(レストランフォレスト)
町立病院
学校給食共同調理場
合計
灯油
電気
0
1,000
重油
2,000
小計
灯油
3,000
電気
重油
LPG
重油
(森林学習館含む)
神室スキー場
シェーネスハイム金山
LPG
電気
灯油
LPG
GJ/年
4,000
5,000
役場庁舎
中央公民館
金山町保育園
金山小学校
金山中学校
緑地等活用総合管理センター
(森林学習館含む)
神室スキー場
(照明・リフト)
ホットハウスカムロ
森林交流センター
(レストランフォレスト)
シューネスハイム金山
町立病院
学校給食共同処理場
図表 2-3
主要施設におけるエネルギー消費量状況(平成 17 年度)
25
小計
6,000
第2章
熱需要調査
金山町内の主要施設のエネルギー消費状況を見ると、町内の主要施設全体で年間エネル
ギー消費量が電気 6,493GJ、重油 11,470GJ、灯油 2,611 GJ、LP ガス 2,449 GJ となって
いる。また、使用されるエネルギー割合では、電気 27%、重油 50%、灯油 12%、LP ガス
11%となっており、化石燃料の占める割合が多くなっている。
個別施設ごとのエネルギー消費状況を見てみると、最もエネルギー消費量の高い施設は、
ホットハウスカムロ(温浴施設)となっており、施設内で使用する重油によるエネルギー
の消費の割合が多く年間 4,866GJ となっている。次いでエネルギー消費量の多い施設は町
立病院で、重油と電気の消費量が多くエネルギー消費量が年間で 4,832GJ となっている。
特徴的な施設として、シェーネスハイム金山(宿泊施設)は LG ガスの消費量が多くみられ、
年間 3,660 GJ のエネルギー消費量がみられる。
2.2 個別施設の熱需要調査
木質バイオマスボイラーの導入を図る上では、導入対象施設ごとの施設における目的や
性格、需要形態、立地条件、周辺環境などに特徴を把握し、既存設備に適合する木質バイ
オマスエネルギー利用システムを導入する必要がある。そこで、木質バイオマスエネルギ
ー利用の導入可能性の高いと思われる以下の 5 施設について調査を行った。
図表 2-4
木質バイオマスボイラー導入可能性の高い主要施設
地域
対象主要施設
施設用途
グリーンバレー神室
①ホットハウスカムロ
温泉施設
②シェーネスハイム金山
宿泊施設
③森林交流センター
(レストランフォレスト)
レストラン
④金山中学校
教育施設
⑤学校給食共同調理場
調理施設
金山地域
ホットハウスカムロ
(温泉施設)
シェーネスハイム金山
(宿泊施設)
金山中学校
(教育施設)
学校給食共同調理場
26
森林交流センター
(レストラン)
第2章
熱需要調査
①ホットハウスカムロ(温浴施設)
・本施設は、グリーンバレー神室内にある温浴施設で、重油ボイラー(60 万 kcal/h)によって温泉加温
(循環)と館内の暖房、給湯(カラン)の 3 系統をまかなっている。
・町内で最も多くのエネルギーを消費している施設で年間 114,600L の重油を消費している。
・既存の重油ボイラーは、設立当時から約 14 年経過しており設備更新が検討されている。
・温浴施設の特性として年間を通じて一定の熱需要がある。
設備仕様・運転状況
ホットハウスの設備概要と運転状況(H17 年度)
機器
使用燃
料
使用用途
出力
(kW/台)
出力
(kcal/h・台)
定格燃料
消費量
設置
年間使用日数
年間燃料使用量
温水ボイラー
A 重油
給湯・暖房
温泉加温
698
600,000
75L/h
H4
365 日
114,600 ㍑/年
写真:機械設備室
写真:重油ボイラー
ホットハウスの月別燃料使用量(H17 年度)
6月
7月
8月
9月
12月
1月
電気(kWh)
11,625
4月
7,980
10,158
10,224
10,276
11,189
7,602
9,608
11,365
10,364
8,976
10,050
119,417
重油(ℓ)
11,100
10,300
7,000
7,000
6,200
6,100
8,200
9,500
11,800
13,200
12,000
12,200
114,600
灯油(ℓ)
825
245
138
0
0
0
180
817
854
199
1,126
1,017
5,401
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
3
LPG(m )
5月
MJ/月
電気
10月
重油
灯油
11月
2月
LPG
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
ホットハウスカムロの月別エネルギー使用量(H17 年度)
27
3月
合計
第2章
熱需要調査
②シェーネスハイム金山(宿泊施設)
・本施設は、グリーンバレー神室内にある宿泊施設である。
・灯油ボイラー(22 万 kcal/h)で客室の給湯(風呂・シャワー等)と一部の床暖房を行っている。また、
ガスヒートポンプエアコンにて各部屋の冷暖房をおこなっているため LP ガスの消費量が多い。
設備仕様・運転状況
シェーネスハイム金山の設備概要と運転状況(H17 年度)
種類
使用
燃料
使用用途
出力
(kW)
出力
(kcal/h・台)
定格燃料
消費量
設置
年間使用日数
年間燃料使用量
温水ボイラー
灯油
給湯
床暖房
258
222200
(給湯 205,300)
(暖房 16,500)
―
H8
365 日
23,184 ㍑/年
暖房
67
53
H8
56
45
365 日
20,680 ㎥ N/年
冷房
ガスヒートポンプ
エアコン(6 台)
LPG
2.24m3N/h
1.83 m3N/h
―
2.26 m3N/h
1.85 m3N/h
写真:灯油ボイラー
写真:ガスヒートポンプエアコン
シェーネスハイム金山の月別燃料使用量(H17 年度)
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
22,614
19,574
17,551
19,052
20,024
23,990
18,182
17,919
21,297
22,277
22,216
19,348
244,044
重油(ℓ)
灯油(ℓ)
-
2,243
-
1,060
-
2,603
-
1,614
-
1,015
-
1,835
-
1,890
-
2,144
-
1,925
-
2,410
-
2,154
-
2,291
-
23,184
3
1,134
600
436
1,770
2,634
3,044
1,075
675
2,157
2,588
2,731
1,836
20,680
電気(kWh)
LPG(m )
MJ/月
電気
重油
灯油
LPG
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
シェーネスハイム金山の月別エネルギー使用量(H17 年度)
28
合計
第2章
熱需要調査
③森林交流センター(レストランフォレスト)
・本施設はグリーンバレー神室内にあるレストランである。
・冬季間には常設の FF 式灯油ストーブと個別に灯油ストーブを設置している。また、シェーネスハイ
ム金山の灯油ボイラーによる温熱供給により一部床暖房も行っている。
・夏場は雪冷房システムが導入されており冬季間に溜め込んでいた雪室により雪冷房をおこなっている。
設備仕様・運転状況
森林交流センター(レストランフォレスト)の設備概要と運転状況(H17 年度)
機器
使用燃料
使用用途
出力
(kW/台)
設置
年間使用
日数
年間燃料使用量
FF 式暖房機
灯油
暖房
―
H16
180 日
17,129 ㍑/年
雪冷房システム
雪
冷房
―
H13
75 日
300t/年
写真:FF 式暖房機
写真:雪冷房システム
森林交流センター(レストランフォレスト)の月別燃料使用量(H17 年度)
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
合計
7,737
3,941
5,962
6,247
6,627
9,169
4,271
5,589
5,990
7,944
6,137
6,469
重油(ℓ)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
灯油(ℓ)
2,213
751
325
0
0
0
382
2,142
2,189
3,038
3,129
2,960
17,129
3
341
287
268
263
275
313
231
385
314
420
441
333
3,871
電気(kWh)
LPG(m )
電気
重油
灯油
LPG
MJ/月
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
森林交流センター(レストランフォレスト)の月別エネルギー使用量(H17 年度)
29
76,083
第2章
熱需要調査
④金山中学校
・本施設は、町の中心地に位置する生徒数 231 人(H17 年度)を抱える町内唯一の中学校である。
・重油ボイラー(80 万 kcal/h)が導入されており、冬季間(11~4 月)の暖房に利用されている。
・重油ボイラーは設置後 14 年経過しており設備更新が検討されている。
設備仕様・運転状況
金山中学校の設備概要と運転状況(H17 年度)
種類
使用
燃料
使用用途
出力
(kW/台)
(kcal/h・台)
定格燃料
消費量
設置
真空式温水発生機
A 重油
暖房
930
800,000
100L/h
H3
写真:重油ボイラー
出力
写真:校舎内廊下温風設備
年間使用日数
約 130 日
(11 月~4 月中旬)
年間燃料使用量
29,000 ㍑/年
写真:教室内温風設備
金山中学校の月別燃料使用量(H17 年度)
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
合計
電気(kWh)
7,737
3,941
5,962
6,247
6,627
9,169
4,271
5,589
5,990
7,944
6,137
6,469
76,083
重油(ℓ)
灯油(ℓ)
-
2,213
-
751
-
325
-
0
-
0
-
0
-
382
-
2,142
-
2,189
-
3,038
-
3,129
-
2,960
-
17,129
3
341
287
268
263
275
313
231
385
314
420
441
333
3,871
灯油
LPG
LPG(m )
MJ/月
電気
重油
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
金山中学校の月別エネルギー使用量(H17 年度)
30
第2章
熱需要調査
⑤学校給食共同調理場
・町内の小学校4校と中学校 1 校の給食 805 食分の給食を調理している。設備は重油焚きの蒸気ボ
イラー(1.5t/h)にて給湯、調理用加温、食器洗浄、食器消毒、暖房に利用されている。
・年間を通じて安定した熱重要がある。
・開設(S47)から 33 年経過しており施設の老朽化が進んでいるため、新設が検討されている。
設備仕様・運転状況
学校給食共同調理場の設備概要と運転状況(H17 年度)
種類
使用
燃料
使用用途
貫流蒸気ボイラー
A 重油
食器洗浄、
暖房、給湯
写真:蒸気ボイラー
出力
出力
(kg/h/台)
(kcal/h・台)
1,500
805,000
設置
年間使用
日数
年間燃料
使用量
年間維持
管理費
H14
約 240 日
34,000 ㍑/年
26 万円
写真:調理器具
写真:食器洗浄機
学校給食共同調理場の月別燃料使用量(H17 年度)
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
合計
電気(kWh)
2,119
3,034
2,988
3,244
3,256
3,081
3,278
2,960
2,788
2,682
2,603
2,859
34,892
重油(ℓ)
灯油(ℓ)
4,000
2,000
2,000
2,000
2,000
2,000
2,000
2,000
4,000
4,000
2,000
6,000
34,000
-
12
-
21
-
23
-
22
-
26
-
20
-
41
-
14
-
28
-
23
-
27
-
29
-
286
LPG(m3)
MJ/月
電気
重油
灯油
LPG
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
学校給食共同調理場の月別エネルギー使用量(H17 年度)
31
第2章
熱需要調査
2.3 地域熱需要調査
前項の熱利用施設調査で主要施設の熱需要の実態を明らかにした。町内で地域別にみると
熱需要の高い施設が集合しているエリアが 2 箇所確認できる。そこで、2 つのエリアで将来
的に地域熱供給を検討するための基礎調査として、各エリア内の熱需要調査を行い地域の熱
需要を明らかにした。また、熱供給対象はとして主要施設と一般家庭を想定しており、一般
家庭の熱需要については 1 世帯あたりのエネルギー消費量を用いて算出している。
1. 温浴施設、宿泊施設、レストラン等の施設が集合したグリーンバレー神室エリア
2. 金山中学校、役場庁舎といった複数の公共施設が集合している金山地域エリア
図表 2-4
図表 2-5
金山町内の熱需要の高いエリア
一世帯当たりの家庭におけるエネルギー消費量
単位:(GJ/世帯・年)
電気
LP ガス
灯油
合計
(GJ/年)
(GJ/年)
(GJ/年)
(GJ/年)
44.6
19.4
31.2
95.1
※家庭調査年報より算出
32
第2章
熱需要調査
2.3.1 グリーンバレー神室エリアの熱需要調査
グリーンバレー神室エリアには、温泉施設であるホットハウスカムロ、宿泊施設である
シェーネスハイム金山やレストラン等の熱利用施設が集合しており、周辺には住宅 7 戸が
確認できる。エリア内の施設特徴として、グリ-ンバレー神室内のホットハウスカムロ(温
浴施設)では温泉加温、暖房、給湯によって使用する重油の消費量が多く見られる。また、
シェーネスハイム金山施設内の冷暖房やレストランフォレストの給湯や調理に使用してい
る LP ガスの熱需要が特に多いことがうかがえる。
図表 2-6
グリーンバレー神室エリア内のエネルギー消費量
既存設備の燃料消費量(GJ/年)
対象施設
電気
重油
灯油
LPG
ホットハウスカムロ
430
4,252
184
―
シェーネスハイム金山
879
―
789
1,992
森林交流センター
(レストランフォレスト)
303
―
117
2
緑地等活用総合管理センター
(森林学習館含む)
274
―
584
373
312
―
218
136
2,198
4,252
1,892
2,503
周辺住宅
(
7 )戸
合
計
図表 2-7
グリーンバレー神室地域エリア
33
第2章
熱需要調査
2.3.2 金山地域エリアの熱需要調査
金山町の中心市街地である金山地域エリアは、役場庁舎、中央公民館、金山小学校、金
山中学校といった熱需要の高い施設がエリア内に点在している。また、特徴として当エリ
ア内は住宅が集中していることから高い熱需要が期待できる。ここでは地域内の熱需要を
把握するために赤、緑、青の 3 つのエリアに区分けしている。(図表 2-9 参照)
図表 2-8
金山地域エリアの熱需要量
対象
エリア
赤
施設
重油
LPG
灯油
566
1,076
―
4
町立病院
1,483
3,348
―
―
周辺住宅 ( 84 )戸
3,742
―
1,631
2,619
5,791
4,424
1,631
2,623
学校給食共同調理場
126
1,261
―
28
中央公民館
269
568
25
6
4,098
―
1,786
2,868
4,493
1,829
1,811
2,902
1,133
965
16
28
38
―
310
9
267
―
586
7
12,563
―
5,475
8,793
計
周辺住宅 ( 92 )戸
小
青
電気
金山中学校
小
緑
既存設備の燃料消費量(GJ/年)
計
役場庁舎
金山町保育園
金山小学校
周辺住宅 ( 282 )戸
小
計
14,001
965
6,387
8,837
合
計
24,285
7,218
9,829
14,362
3 つに区分けしたエリア別に見ると、赤エリア内では、主要施設として金山中学校と町立
病院があり、一般住宅は 84 戸が確認できる。金山中学校や町立病院では暖房のエネルギー
源として重油を使用しているため高い熱需要が見込まれる。
緑エリア内では、主要施設として学校給食共同調理場、中央公民館があげられ、住宅は
92 戸が確認できる。学校給食共同調理場では、調理用の給湯や暖房、食器洗浄などのエネ
ルギー源として重油が利用されている。
青エリア内では、主要施設として役場庁舎、金山保育園、金山小学校があげられ、住宅
は 282 戸が確認できる。役場庁舎では、館内の暖房のエネルギー源として重油の消費が高
い。住宅に関しては町内で最も集中している箇所であるため高い熱需要が確認できる。
34
第2章
熱需要調査
図表 2-9
金山地域におけるエリア分図
35
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
3. 木質バイオマスボイラー利用技術調査
近年、環境意識の高まりにより、木質バイオマス資源を燃料とする海外製木質バイオマス
ボイラーの輸入販売や国内メーカーによる熱利用機器開発が進んできている。その中でも、
代表的な木質バイオマスボイラーとして、木質チップを燃料とするチップボイラーと木質ブ
リケットを燃料とするブリケットボイラーがあげられる。
本調査では、町内で生産される木質燃料に対応可能な熱利用機器として、現在、国内で取
扱われているチップボイラーとブリケットボイラーについて調査した。
3.1 チップボイラー利用技術調査
木質チップ対応の温水ボイラー、蒸気ボイラーについて国内で取扱っているメーカーを
図表 3-1 に示す。
図表 3-1
国内のチップボイラー取扱メーカー
熱利用
形態
メーカー名
国
内
製
海
外
製
取扱会社
オヤマダエンジニアリング株式会社
温水
株式会社タカハシキカン
温水
蒸気
シュミット(スイス)
温水
株式会社巴商会
ポリテクニク(オーストリア)
温水
蒸気
住友商事株式会社
株式会社協和エクシオ
株式会社カナック
ビンダー(オーストリア)
温水
宇部テクノエンジ株式会社
KOB(オーストリア)
温水
株式会社ヒラカワガイダム
タルボッツ(イギリス)
温水
マルマテクニカ株式会社
現在、国内で利用可能なチップボイラーは、含水率 WB50%以上といった高含水率(い
わゆる「生チップ」)に対応しているものが多い。蒸気仕様のチップボイラーに関しては、
国内のメーカーではタカハシキカン(国内製)やポリテクニク(オーストリア製)が取扱
っているが、蒸気仕様チップボイラーは、規模によっては労働安全衛生法(ボイラー及び
圧力容器安全規則)に抵触し、運転にはボイラー管理の有資格者を要する必要がある。
次項より各種温水、蒸気ボイラーについてまとめる。なお、ボイラーの価格については、
本体価格(実際に運転するためには機械室、チップサイロの土木・建築工事や電気・配管・
煙突工事、その他据付工事費用が必要)のみであり、また各社によって含まれている機器
の範囲が異なるため、単純に比較することはできない。
36
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
会社
オヤマダエンジニアリング株式会社
特徴
岩手県と共同開発され、いわて型チップボイラーとして 2005 年より販売が開始された。自社開発の
ため、機器の改造やトラブル時において対応が早い。現状では 100kW と 200kW のラインナップの
みである。
独自の燃焼構造により含水率 55%(WB)の生チップにも対応可能である。また、他社の同規模ボイ
ラーと比較してコンパクトであるため省スペースの設置が可能である。
灯油バーナー(8L/h)を搭載し自動着火を可能にしている。また、緊急時のバックアップ運転も可能
である。安全装置として逆火防止センサー、耐震センサー、各種温度制御などがあり安全な運転が可
能である。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
(温水)
燃料供給:スクリュー搬送方式により、チップを定量供給。
燃料プレッシャー:燃焼出力、含水率に応じた動作間隔で燃料層の厚さを均一に保ち同時に灰を排出。
1 次燃焼室:高含水率チップを乾燥させながら燃焼。
2 次燃焼室:一次燃焼室で燃え残った未燃分を燃焼。
熱交換部:高温の燃焼ガスから、暖房に必要な温水を発生させる。
煙突
灰トレー:燃焼により発生した灰を収納。燃焼中も開閉し灰を捨てることができる。
灯油バーナー:含水率に応じた着火設定により、安定した自動着火を行なう。
無圧式温水発生器:缶体は大気圧で運転される無圧式のため、「ボイラーおよび圧力容器安全規則」による届
出や取扱者の資格免許を必要としない。
花巻市の保育園へ第 1 号機が納入され 2006 年の冬から床暖房用として稼動している。また、県立の
温水プールで利用している(100kW×1 機+200kW×2 機)。
(資料:メーカーカタログ)
外観
(資料:メーカーカタログ)
機器
型式
単位
WB100
WB200
使用
定格出力
kW
100
200
ボイラー効率
参考価格
高さ
寸法
長さ
巾
%
万円
mm
mm
mm
m
m2
900
2,325
1,600
900
―
8.6
必要ボイラー室寸法
伝熱面積
80
1,450
2,600
2,060
1,250
―
19.0
着火・消火方式
灯油ガンタイプバーナーによる自動着火、消火は OFF 選
択による自動消火。
自動運転の可否
可能
灰除去方法
灰トレーに収納。灰トレーは燃焼中も開閉可能。
届出・資格者
労働安全衛生法上は不要。
※本体、燃料搬送装置、煙道・煙突(サイクロン、エグゼクター排風機)
37
第3章
会社
木質バイオマスボイラー利用技術調査
株式会社タカハシキカン
(温水・蒸気)
特徴 ・会社のボイラー製造の歴史が古く導入箇所に合ったオーダーメードのボイラーにも対応がで
きる。
・温水(KT-OR型)・蒸気(KT-S型)対応型がある。ただし、生チップなど高含水率燃料の利
用は困難で含水率は38%(WB)までとなっている。
・2段燃焼方式の燃焼炉に貫流式蒸気ボイラーを組み込んだ設計となっている。
・ボイラーへ自動投入装置をつけることで海外製のボイラー同様24 時間運転も可能となってい
る。
・国内の製材所を中心に木屑焚きボイラー導入実績が多い。
外観
KT-OR 型チップボイラー
KT-S 型チップ蒸気ボイラー
資料:タカハシキカン社製品カタログ
機器
仕様
KT-OR 型(温水ボイラー)
型式※1
出力
ボイラー効率
参考価格
寸法
高さ
長さ
巾
必要ボイラー室寸法
単位
kW
%
万円
mm
mm
mm
m
KT-OR30
850
-
1,900
1,700
1,000
―
KT-OR50
1,000
75
-
2,000
1,900
1,200
―
KT-OR100
1,100
KT-S 30
300
75
1,230
1,800
2,120
1,200
―
KT-S 40
400
-
2,,200
2,100
1,200
―
KT-S 型(蒸気ボイラー)
型式
最大蒸発量
ボイラー効率
参考価格※3
寸法
高さ
長さ
巾
必要ボイラー室寸法
単位
kg-h
%
万円
mm
mm
mm
m
KT-S 20※2
200
1,170
1,700
1,895
1,000
―
着火・消火方式
手作業もしくは着火バーナー(オプション)による。
自動運転の可否
可能
1,330
2,000
2,420
1,310
―
灰除去方法
基本は手作業(オプションとして自動灰出し)燃焼室、集塵器の灰だし
扉より手作業にて除去
届出・資格者
温水の場合は、無圧式のため労働安全衛生法上は不要だが、蒸気の場合
は労働基準監督署への届出、規模により落成検査及び性能検査が必要。
ボイラーの取扱は、規模によりボイラー技士資格者が必要となる。
※1 KT-OR10~200 有、OR-300 以上は特注。
※2 KT-S-20 は特注。 ※3 本体価格のみ(サイロ、建屋、配管等工事費別)
38
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
会社
シュミット(スイス)(取り扱い:株式会社巴商会)
(温水)
特徴
海外製チップボイラーでは、最近導入実績のもっとも多いメーカーである。
国内での販売は、㈱巴商会が行なっている。チップ含水率は最高 WB60%まで対応できる(推奨は 55%まで)。
<生チップを燃やす燃焼技術>
独特な移動式ストーカーによって燃焼炉を二段階構造にして、燃焼炉の下段で燃焼ガスの熱で燃料の水分を蒸発さ
せ、中段で完全にガス化燃焼させる。これにより生チップを乾燥させながら燃焼させている。
<最適な燃焼状態を保つ制御技術>
缶水温度、燃焼炉温度、排ガス酸素濃度、炉内圧、燃焼室の湿気などを測定して燃料チップの送り、速度、燃焼炉
への送風量、煙道での吸引風量を制御し様々な燃焼条件でもボイラーを最適な燃焼状態を常に維持する。
<公害対策>
欧州でも公害問題に最も厳しい水準を持つ規格のもとに、最適燃焼制御システム、煙道での燃焼灰や排ガスの煤じ
んを除去する装置(サイクロン)、燃焼炉内の NOx 低減室などを設け排気ガス中の煤じんや CO、NOx などの有
毒物質の発生量を極力抑える。
<灰などの処理>
ボイラー煙管部には自動掃除装置が取り付けられ、面倒なボイラー掃除は不要で、常にボイラー効率を維持できる。
また燃焼炉下段で発生する燃焼灰、煙道部分のサイクロンで集められた排ガス中の灰や煤塵については、それぞれ
灰処理ボックスに送られ、定期的に廃棄すればよい。
<ボイラー検査や資格・免許が不要>
輸入されたボイラーは、圧力容器の適用の受けない無圧缶水式に改造できるので、ボイラー使用検査や労働基準監
督所への届出および取扱者の資格は不要。
<簡単な設置及び配管、コンテナ搭載>
屋外タイプでは、温水ボイラー用コンテナとサイロ用コンテナにシステムが組込まれ、納入現場の基礎コンクリー
トの上に設置し、負荷側への配管をすればよい。
外観
機器
仕様
型式※1
単位
UTSR
-100
UTSR
-180
UTSR
-240
UTSR
-300
UTSR
-360
UTSR
-450
UTSR
-550
100
180
240
300
360
450
550
2,200
2,550
2,750
1,150
4.05
×5.98
×3.65
80
2,500
2,600
2,950
1,250
4.10
×6.44
×3.75
2,700
2,900
2,950
1,250
4.10
×6.52
×3.75
3,030
2,900
3,450
1,440
4.38
×7.52
×4.34
3,750
2,900
3,450
1,440
4.38
×7.52
×4.34
定格出力
kW
ボイラー効率
参考価格※2
高さ
寸
長さ
法
巾
%
万円
mm
mm
mm
必要ボイラー
室寸法
m
1,390
2,550
2,530
950
4.20
×5.28
×3.45
1,700
2,550
2,550
1,150
4.05
×5.78
×3.65
着火・消火方式
手動着火。消火は OFF 選択による自動消火。
自動運転の可否
可能
灰除去方法
届出・資格者
※1 1,000kW 以上の型式も有
火格子と煙管部を一定時間ごとに掃除する自動クリーニング装置で灰を
着脱可能コンテナ型バケットに収納。
労働安全衛生法上は不要。
※2 本体価格のみ
39
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
会社
ポリテクニク(取扱会社:株式会社協和エクシオ、株式会社カナック)
(温水・蒸気)
特徴
国内では㈱協和エクシオ及び㈱カナックが取り扱っている。以下に特徴について説明する。
・ 高含水率のチップ・バークの燃焼が可能である(WB60%)。
・ 各種センサーにより、最適な燃焼状態を保つ。
・ 燃料供給から灰の排出まですべて自動運転。
・ 燃焼炉は耐火レンガにより 20 年以上の長寿命。
・ マルチサイクロン式により排気ガスがクリーンである。
・ 圧縮空気により煙管を自動清掃する装置により、人力による手間を省き、ボイラー効率を維持。タ
イマー制御により清掃間隔の設定が可能。
・ バックファイア防止等安全対策を確保。
・ 燃焼室自動監視システムにより、燃焼室酸素量、燃焼室温度及び圧力、缶水温度等を自動的に調整
することで、燃焼室内の最適な C-N 比の維持が可能。
・ 自動監視システムは、現場でのモニター管理のみならず、通信システムを利用したメーカー及びメ
ンテナンス会社等による遠隔監視も可能。
・ ボイラー運転データを可視化処理し監視画面上表示機能や、システム効率やグラフ等の様々な様式
の統計データとして保存するデータ処理システムは、要望により提供することが可能。
・ 温水(~95 度)、熱水(~120 度)、蒸気(~440 度)等の取り出しが可能(温度はお客様の要求
仕様により決定)。
現在、徳島県上勝町の温泉宿泊施設や高知県の木材加工所への導入実績がある。
外観
(資料:メーカーカタログ)
機器
定格出力※1
kW
仕様
ボイラー効率
%
参考価格
高さ
寸法
長さ
巾
万円
mm
mm
mm
m
m2
必要ボイラー室寸法
伝熱面積
着火・消火方式
250
500
1,500
87.2
4,000
5,000
3,400
4,150
2,500
2,980
1,250
1,400
-
-
24.0
44.0
手動着火。消火は OFF 選択による自動消火。
6,800
5,450
4,270
2,000
-
128.0
自動運転の可否
自動運転可能
灰除去方法
燃焼灰は、自動でアッシュコンテナに排出される
届出・資格者
・温水の場合は不要(無圧式としている)
・熱水・蒸気の場合は要する
※1 出力範囲は 200kw~20,000kw までのラインナップ有。
40
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
会社
タルボッツ(イギリス)
取扱会社:マルマテクニカ㈱
(温水)
特徴
z 簡便な操作性
コントロールパネルはユーザーが簡単に扱え、適切な調整ができるよう、すべてのモー
タに対してインバーター・コントロールを行っている。
z 広範囲な熱出力
小規模な 50kW クラスから大規模な 4,000kW までのラインナップがある。
(温風、給湯、蒸気:3,500kW 以上は給湯のみ)燃料含水率は WB40%まで対応。
z 高効率なシステム
英国においては補助金対象となりうる基準を満たしたシステムである。
燃焼装置は 80%以上の高効率である。また、英国内の排気ガス規制に対応している。
z 多様な燃料
木くず以外にも間伐材、ペレット、廃材、ボード、藁など多様な燃料に対応している。
また、高水分の燃料対応可能である。
z 高い耐久性
燃焼室内はセラミックレンガで構成され耐熱性が非常に高く高温燃焼に対応、800 度以
上の燃焼に耐えボイラーの寿命が長い。
タルボッツ社製チップボイラー仕組みより
外観
マルマテクニカカタログより
機器
型式
単位
BIO-C-1
BIO-C-2
BIO-C-3
BIO-C-4
BIO-C-5
仕様
定格出力
kW
50
100
150
300
600
ボイラー効率
%
参考価格※
高さ
寸法
長さ
巾
万円
mm
mm
mm
1,700
2,530
2,000
1,500
2,300
2,670
3,000
1,500
80
1,200
2,050
1,000
1,000
1,300
2,170
1,250
1,000
1,500
2,355
1,500
1,250
着火・消火方式
手動着火。消火は OFF 選択による自動消火。
自動運転の可否
タイマー式で自動運転可能
灰除去方法
火格子と煙管部を一定時間ごとに掃除する自動クリーニング
装置で灰をバケットに収納。
届出・資格者
労働安全衛生法上は不要。
※本体価格のみ。実際に燃焼するためにはチップバンカーや配管または運送費、据付工事費用が必要。
41
第3章
会社
特徴
木質バイオマスボイラー利用技術調査
ビンダー(オーストリア)
(取り扱い:宇部テクノエンジ 株式会社)
(温水)
・燃料となる木質バイオマス燃料の含水率に合わせて、レトルト型火格子燃焼タイプや
ストーカー型火格子燃焼タイプなど取り揃えている。
・コンピュータ制御により、電気ヒーター式熱風による自動着火から定常運転に至るま
で全自動運転を行なう。光学的な燃焼監視機能による異常燃焼検知システムがある。
非常時に備え、バックアップのオイルバーナーを取り付けることも可能である。
・1,000℃を超える燃焼温度に対応する堅牢な構造を持っており、負荷変動率 25%~100%
の範囲に対応しているため、連続運転が行ないやすい。
・無圧式のため、
「ボイラー及び圧力容器安全規則」による届け出及び取扱者の資格免許
は不要である。
・国内でのチップボイラーの導入実績は現在のところない。
・燃料含水率は WB55%まで対応している。
外観
資料:宇部テクノエンジ株式会社製品カタログ
機器
単位
RR
80-175
RRK
130-250
RRK
200-350
RRK
400-600
RRK
640-850
定格出力
kW
149
230
250
350
650
ボイラー効率
%
型式※
仕様
参考価格
万円
-
-
-
-
-
寸法
高さ
mm
1,510
1,720
1,730
2,340
2,320
(燃料サイ
ロを除く)
長さ
mm
1,355
1,650
2,120
2,460
2,950
巾
mm
1,740
1,860
2,100
2,100
2,440
m
-
-
-
-
-
必要ボイラー室寸法
※
90(最大)
着火・消火方式
電熱ヒーターを用いた熱風着火。
自動運転の可否
可能
灰除去方法
炉内発生燃焼灰は自動的に炉外へ排出されコンテナに貯
留。燃焼ガスに同伴された燃焼灰はサイクロンで捕集され
下部コンテナに貯留される。コンテナを切り離し搬出可能。
届出・資格者
労働安全衛生法上は不要。
記述以外の型番も有
42
第3章
会社
特徴
木質バイオマスボイラー利用技術調査
KOB(オーストリア)(取り扱い:株式会社 ヒラカワガイダム)
(温水)
・稼動中ボイラーの熱交換部を圧縮空気により断続的にクリーニングするので、伝熱効
果を長期にわたり維持できる。
・対応チップ含水率は WB35-40%となっているが、オプションの予備乾燥機を設置する
ことにより 60%まで対応が可能となる。
・チップ形状目安としては 10mmW×60mmL×5mm 以下。
・燃焼に関しては、ガスと同レベルの燃焼効率が得られ、完全燃焼により CO、NOX の
排出を低く抑えている。
・導入の実績はないが自社工場での実証用として 2004 年 5 月頃より使用されている。
(約 2 年が経過)
外観
資料:(株)ヒラカワガイダムホームページより
機器
単位
PYROT
100
PYROT
150
PYROT
220
PYROT
300
PYROT
400
PYROT
540
定格出力
kW
80-100
120-150
180-220
250-300
340-400
460-540
ボイラー効率
%
型式
仕様
万円
2,200
2,300
2,630
2,800
3,300
3,630
高さ
mm
1,765
1,765
2,013
2,013
2,270
2,340
長さ
mm
2,194
2,444
2,444
2,794
2,850
3,080
巾
mm
1,050
1,050
1,330
1,330
1,590
1,590
高さ
mm
3,000
3,000
3,500
3,500
4,000
4,000
長さ
mm
4,000
4,000
4,500
4,500
5,000
5,000
巾
mm
4,000
4,000
4,500
4,500
5,000
5,000
参考価格
寸法
必要
ボイラー
室寸法
85~89%※
着火・消火方式
電熱式の点火ブロワの熱風により着火。
自動運転の可否
可能
灰除去方法
届出・資格者
・炉内から灰溜めボックスへ移し、冷えた灰をスクリューコンベア
により大型コンテナへ移動させる方式。
・コンテナに溜まった灰を撤去する。
労働安全衛生法上は不要。
※ボイラー効率は木質資源によって異なる。
43
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
3.2
ブリケットボイラー利用技術調査
国内で取扱っている木質ブリケット燃料を利用したブリケットボイラーについて調査し
た。
会社
UNICONFOT(イタリア) 取扱会社:有限会社ノルドファブリカ
特徴
・イタリア製のボイラーでブリケット温水ボイラー以外にも破砕機やブリケット製造機も
取り扱っている。
・ボイラーは 8 万 kcal/h(93kW)~300 万 kcal/h(3,488kW)まで幅広いラインナップが
ある。燃料となるブリケットは φ75mm、長さ 100mm 以下まで対応可能である。
・チップボイラーと同様に自動運転が可能で、サイロのブリケットはそのままボイラーへ
供給されるのではなく、ボイラー投入直前で破砕処理がなされ、スクリューにて供給さ
れる。ボイラーへ重油バーナーをバックアップとして付属できるタイプもある。
・北海道美唄市のマンションに暖房用として 15 万 kcal/h のボイラーが導入されている。
(温水)
外観
(資料:有限会社ノルドファブリカ HP)
GLOBAL-F シリーズ※1
型式
定格出力
寸法
(mm)
参考価格※2
型式
定格出力
器機
仕様
寸法
(mm)
型式
定格出力
寸法
(mm)
単位
kW
高
長
巾
万円
単位
kW
高
長
巾
単位
kW
高
長
巾
ボイラー効率
着火・消火方式
灰除去方法
※1:記述以外の型番も有
BIOTEC-20
BIOTEC-30
BIOTEC-40
BIOTEC-60
232
―
―
―
1,100
348
4,000
5,500
1,500
1,300
464
―
―
―
1,500
696
4,500
6,300
1,700
―
BIOTEC-90
BIOTEC-120
BIOTEC-150
BIOTEC-180
1044
4,850
6,800
1,850
1369
5,250
7,300
1,850
1740
5,500
7,300
2,050
2088
5,950
7,800
2,050
BIOTEC-240
BIOTEC-300
BIOTEC-400
BIOTEC-500
2784
6,130
8,300
2,120
3480
6,580
8,800
2,120
4640
7,270
9,450
2,300
6786
7,690
10,450
2,300
80
%
手動着火、自動消火
炉内にたまった灰を人力で掃除する。
※2:ユーロや鋼材価格の変動、設置条件等で変わるため概算価格。
44
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
3.3 木質バイオマス利用技術の選定
木質バイオマスエネルギーを導入する際に、木質燃料の種類によっては利用機器を選定
しなくてはならない。ここでは、金山町で生産される木質燃料を考慮し、利用可能な木質
バイオマスボイラーについて検討した。また、木質バイオマス燃料と燃料供給システムの
適合性についてまとめている。
図表 3-2
木質燃料
燃
料
供
給
方
式
チップ(針葉樹)
ブリケット(樹皮)
樹皮
製材所廃材(端材、背板)
製材所廃材(樹皮)
間伐材
林地残材
製材所廃材(樹皮)
チップ
ボイラー
利用可能。
※製材所で生産される製
紙用チップも利用可能
条件次第で利用可能
※利用する場合の運転試験
が必要
利用可能
灰分が多いため利用機器
が制限
ブリケッ
トボイラ
ー
原料形状が利用システム
に対応していない。高含水
率には対応していない。
灰分が多く運転可能か適正
試験が必要
原料形状が利用システム
に対応していない
スクリュ
ー方式
利用可能
切削型チップが望ましい
※製材所で生産される製
紙用チップ利用可能
利用可能
※破砕可能な燃料強度が必
要
利用不可能
※原料の含水率が高いと
燃料供給の際に供給す
るスクリュー部分に付
着し、燃料供給がストッ
プする恐れがある
プッシャ
ー方式
全ての燃料で対応可能。
対応できるメーカーに限りがあり、オーダーメードのコスト負担が発生。
木質原材料
利
用
機
器
特
性
木質バイオマス燃料と利用技術面の適合性
3.3.1
チップボイラーの導入の可能性
チップボイラーは導入利用事例が増加し、利用技術における安全・安定性とメンテナン
ス等のバックアップ体制が確立しつつある事から、導入に対するリスクが低くなってきて
いる。チップボイラーで対応可能な木質燃料は町内で生産される製紙用チップ、ブリケッ
ト(樹皮)、樹皮のいずれの燃料も条件次第で利用が可能である。そこで条件としてあが
るのは木質燃料供給システムの選定であり、多くのチップボイラー取扱メーカーでは燃料
サイロからボイラー本体への燃料供給システムにスクリュー方式を採用している。
町内で生産される木質資源別にみると、製紙用チップは形状の均一性があり、スクリュ
ー方式で利用可能である。ブリケット(樹皮)はスクリュー方式では燃料供給の際、円滑
な燃料供給のためには破砕可能な燃料強度であることが求められる。樹皮の場合は発生条
件にもよるが燃料形状に均一性がなく、原料の含水率が高いと既製のスクリュー方式では、
45
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
スクリュー部分に樹皮が付着して燃料供給がストップする恐れがある。したがって、木質
燃料の種類に関係なく安定した燃料供給を行うためにはスクリュー方式からプッシャー
方式を選定する必要がある。しかし、スクリュー方式からプッシャー方式への変更に対応
できるメーカーには限りがある。また、変更が可能でもオーダーメードの場合は、新たに
コスト負担を伴うことになる。
3.3.2
ブリケットボイラーの導入の可能性
ブリケットボイラーに関しては、国内での導入事例が少なく、トラブル発生時の十分な
メンテナンス等のバックアップ体制を取れるか課題が残っており、十分に考慮する必要が
ある。ブリケットボイラーでは利用可能な木質燃料はブリケットのみを想定しているため、
町内で生産される製紙用チップと樹皮は燃料形状が適さない。そこで、町内で生産される
樹皮ブリケットの利用が期待されるが、国内において、樹皮 100%のブリケットを利用し
たボイラーの運転経験がないため、適正に運転できるか試験が必要となる。
3.3.3
金山町における利用可能な木質バイオマスボイラーの検討
現在、金山町を含めた最上地域圏内では、いくつかの木質バイオマス利用に関する計画
が検討されており、これらの計画が実現すると、地域内において将来的に燃料となる木質
チップ需要が高まることが予想される。そこで、チップ需要の高まりによる燃料確保の負
担を軽減するためにチップとブリケット(バーク)のどちらも利用できるシステムが望ま
れる。国内のチップボイラー取扱メーカーによると、チップボイラーではブリケットの形
状と含水率が一定であれば利用可能である。(チップボイラーの特性上、木質燃料の性質
が一定でないと適正な燃焼が行えないため、利用する時期や燃料価格などを考慮し、適宜
どちらか一方の燃料を選択して利用した方が得策だといえる。)
したがって、金山町で導入する木質バイオマスボイラーは町内で生産される木質燃料
(製紙用チップ、ブリケット、樹皮)に対応することが可能なチップボイラーの導入が望
ましい。その際、燃料供給システムは、現状では製材所より生産される製紙用チップが有
力な木質燃料なため、スクリュー方式による燃料供給システムでも十分対応可能だが、将
来的に利用が期待される樹皮や林地残材、切捨て間伐材からつくられた木質燃料に対応す
るため、プッシャー方式の燃料供給システムが望ましい。
46
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
3.4 チップボイラーの運転と管理について
3.4.1 チップボイラーと化石燃料ボイラーの比較
チップボイラーと化石燃料ボイラーの通常の運転・管理に関して大きな違いは、ボイラ
ーの着火やボイラーの掃除、燃焼灰の掃除がある。機器特性上、チップボイラーは急な熱
需要変動に対して対応ができないため、一度着火したら 24 時間火を絶やさない連続運転
が望ましい。
(1) チップボイラーの着火作業
ボイラーの着火に関しては、化石燃料ボイラーには着火バーナーが付いていて着火は
ボタン一つで行なうことができる。一方、チップボイラーにも化石燃料の補助バーナー
が付属しているものも存在するが、着火時に化石燃料を用いることは、木質燃料を使う
といったメリットを相殺してしまうという考えから、手動で着火するタイプが多く見ら
れる。手動着火の場合、予め乾燥しているチップや紙くずをボイラーの燃焼炉に投入し、
自動運転に切り替わるまで、炉内温度を上昇させることが必要となる。
(岩手県林業技術
センターの例では着火から安定運転まで 3~4 時間程度が必要となる)
。なお、停電や意
図せずに急に電源が落ちた場合、チップボイラー本体は停止するが、燃焼炉内のチップ
は、しばらく燃焼を継続する。そのため停止した搬送スクリューを伝って逆火する恐れ
があるが、この対策として搬送スクリューの途中の温度センサーによる逆火警報や消火
給水装置が備わっている。また、燃料搬送スクリューが途中で縁を切っている等、未然
に火事を防止する対策として安全システムを搭載している。
(2) 運転の際に発生する燃焼灰について
燃焼灰については、チップの品質(樹種、樹皮混入割合)や運転パターンなどで排出
量の差が出るが、針葉樹チップであれば灰の排出量はチップ使用量の 0.5%未満である。
無圧型のチップ温水ボイラーならば運
チップ
残量確認
点
火
(手動・自動)
転員は特別な技術や資格を要さない
通常運転(自動運転)
灰の掃除
消
スイッチ OFF によるボイラー停止
火
図表 3-3 チップボイラーの日常運転
47
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
3.4.2 日常の保守管理体制と定期メンテナンス
(1)
運転体制
現在、販売されているチップボイラーの多くは化石燃料ボイラー同様に自動運転が可
能であり、一度着火させれば消火しない限り、無人運転が可能である。日常の管理とし
てはチップサイロのチップ残量確認と受入れ、ボイラーの燃焼灰の掃除(燃焼炉、ボイ
ラー内煙管部)程度である。全国のチップボイラー導入先の例をみると、ほとんどが他
業務と兼務でチップボイラーを管理している。ただし、金山町は降雪量が多いという事
情があるため、チップのサイロ搬入時には車両通行のためにサイロ周辺の除雪を行う必
要が生じる。この点で、除雪用機器の整備や除雪作業員の確保といったことが必要とな
る。また、チップボイラーの設置されている施設が離れている場合、監視や緊急時の対
応のため近くに人員を配置することが望まれる。
(2)
灰の掃除
灰の掃除は、燃焼炉内から自動的に灰受けタンクに集められる構造になっている機種
が多く、灰受けタンクを空にするだけでよい。なお、灰をそのまま廃棄する場合、処理
費用が必要となるため、第 6 章で検討するような有効利用が望まれる。
(3)
煙管部の掃除
煙管部の掃除については、メーカー別の機種によって、コンプレッサーで落とす方式
と手作業で煙管に付着した灰をブラシ等で落とす方法がある。ただし、煙管部はチップ
ボイラーが完全燃焼していれば、それほど灰は発生しないため、年に数回程度の作業に
なる。また、ボイラー内部の煙管掃除については、通常、完全燃焼で運転できていれば、
半年に 1 回程度で良いという報告もされている。しかし、チップの含水率が極端に高く
不完全燃焼の場合には、数週間に 1 回の煙管掃除を要する場合もある。
(4) 定期的な機器のメンテナンス
定期的な機器のメンテナンスについては、化石燃料ボイラーの場合、メンテナンスの
かなりの部分がバーナー部に関わるもの(点火部、送風機・モータ部、配管部品、電気
品等)であることに対し、チップボイラー手動着火方式のため点検部分が少なく、その
分メンテナンスの回数が少ないと言える。しかし、チップボイラーには化石燃料ボイラ
ーにはない油圧機構(燃料積出し・搬送装置駆動部等)及び排ガス・灰処理関係の設備
を設けている機種が多く、これらのメンテナンスが必要になってくる。使用状況により
定期メンテナンスの回数が異なるが、最低でも年 1 回はメンテナンスが必要で、実際は
1~4 回/年の定期点検契約を締結する場合が多く見られる。また、点検とは別に大気汚
染防止法により、伝熱面積 10m 以上のチップボイラーに対して化石燃料ボイラー同様、
ばい煙の測定が義務づけられている。日常管理と定期的な保守・点検など、チップボイ
ラーの運転維持のために必要な作業を図表 3-5 に示す。
48
第3章
木質バイオマスボイラー利用技術調査
図表 3-4
チップボイラーの定期点検目安
点検・清掃項目
頻
度
内
容
燃焼装置
年1回
点検・清掃
煙管
3 ヶ月に 1 回
清掃
炉本体
年1回
清掃・点検
安全装置・各種センサー
4 ヶ月に 1 回
確認
燃料供給スクリュー類
年1回
グリースアップ
各部消耗品
年1回
磨耗点検・交換
図表 3-5 チップボイラーの維持管理
項目
頻度
運転監視
適宜
灰掃除(受けタンク交換)
4 日に 1 回程度
チップ残量確認・チップ燃料受入
適宜
チップ搬入時除雪作業費
2 日に 1 回程度
メーカー定期保守点検費
1~2 回・基/年
ばい煙測定費
2 回・基/年
チップボイラー関連消耗部品費
適宜
49
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4. 木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
本章では第 2 章で行なった熱需要調査の結果を用いて、バイオマスエネルギーの導入シス
テムについて詳細に分析し検討を行った。
(以下、第 3 章の 3.3.3 金山町における利用可能な木質バイオマスボイラーの検討の結果よ
り、木質バイオマスボイラーをチップボイラーとする。)
4.1 チップボイラーの導入方針
チップボイラー導入にあたって、全ての施設において共通であるが、正常に稼動すること
のできる既存の化石燃料ボイラーを廃棄し、すべての熱需要を木質チップボイラーに転換す
ることは必ずしも得策ではない。既存の化石燃料ボイラーを活用し、これをピーク負荷需要
対応及び木質チップボイラーに障害が発生した場合のバックアップ用として利用し、既存ボ
イラーと木質チップボイラーの相互補完システムとすることが合理的であると考えられる。
そこで、各施設の熱利用システムの設置スペースの制約、技術的合理性、運転管理の容易性、
エネルギー効率、設備稼働率、経済的に有利な条件を探索し、総合的な観点からシステムを
構築することが必要と考えられる。
木質チップボイラーは化石燃料ボイラーに比べて…
◎ 依然として高価であるため、既存システムと同規模のものを導入
した場合は、高額な導入設備費が必要。
◎ 瞬間的な需要量の変動に対するレスポンスが遅い。
✓ ベース需要を木質チップボイラーでまかなう。
✓ ピーク需要は化石燃料ボイラーとの併用によってまかなう。
コストパフォーマンスの高いシステム
図 4-1
化石燃料と木質バイオマスによるハイブリッド型熱供給イメージ
50
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.2 木質バイオマス利用システムの最適規模の検討
前項で設定した導入方針により、木質チップボイラーの導入が期待される施設について、
導入効果の最も高い整備の最適規模を検討した。導入対象となる候補施設を図表 4-1 に示
す。
図表 4-1 チップボイラー導入候補施設
チップボイラー導入施設候補
導入機器
熱利用方法
CASE 1
ホットハウスカムロ
チップ温水ボイラー
・暖房
・給湯
・温泉加温
CASE 2
ホットハウスカムロ
シェーネスハイム金山
チップ温水ボイラー
(レストランフォレストを含む)
・暖房
・給湯
・温泉加温
・床暖房
CASE 3
金山中学校
学校給食共同調理場
・暖房
・給湯
・食器洗浄
チップ温水ボイラー
4.2.1 木質燃料条件
チップボイラー導入の検討を行なうに当って、燃料となるチップ発熱量の条件を図表
4-2 に示す。
図表 4-2
条件
低位
発熱量
チップ
kcal/kg
1,900
kWh/kg
2.2
MJ/kg
8.0
見掛け比重
チップ燃料条件
0.3
備考
生チップの含水率を WB50%(=DB100%)
※木材:水の重さが 1:1 の状態
岩手林業技術センター研究報告書
金山町で有望なチップは含水率が高くなることが予想されるため、ウエットベース
(WB)50%と想定している。
51
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.2.2 チップボイラー運転条件による導入設備規模別の経済性試算
チップボイラーを導入する際に、ボイラー本体をはじめ、機械室や燃料サイロなど初期
コストが発生するとともに、既存の設備よりも管理費等のランニングコストの増加も考え
られる。そこで、チップボイラー導入により新たに発生する経済性を試算し、経済的にみ
て導入効果が最も高く有利なチップボイラー規模を選定していく。
導入ケースによっては、既存の化石燃料ボイラーを利用した場合とチップボイラーを導
入する場合とで比較して、経済的効果がチップボイラー導入による経費の削減効果を下回
ることが考えられる。経済的にデメリットが生じる場合には、チップボイラー導入規模選
定において、単純な経済性で比較を行わず、既存の化石燃料ボイラーからチップボイラー
への変更によるエネルギー代替で得られる二酸化炭素削減効果で比較を行う。その際、チ
ップボイラー導入によって新たに発生する費用に、チップボイラーを導入すること削減で
きる二酸化炭素排出量を割った二酸化炭素(CO2)排出削減コストという概念を用いて、
導入するチップボイラーの規模選定を行なう。
二酸化炭素(CO2)排出削減コストとは・・
1t 当り二酸化炭素(CO2)排出削減に要する費用と定義し、二酸化炭素(CO2)排出削
減コストの値が小さいほどチップボイラー導入による費用対効果が高いと考えられる。
CO2 排出削減コスト(千円/年)=
チップボイラーを導入することにより新たに発生するコスト(千円/年)
チップボイラーを導入すること削減できる二酸化炭素排出量(t‐CO2/年)
52
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
図表 4-3 チップボイラー導入コストの前提条件
<運転関連>
実稼働時間
ボイラー年間運転時間
稼働率
稼働時間中ボイラーが定格出力で運転している割合
チップボイラーによる熱供給量 ÷(チップボイラー定格出力×年間稼働時間)
木質燃料年間必要量
ボイラー出力×稼動時間×稼働率÷木質燃料熱量÷チップボイラー効率 80%
化石燃料削減量
ボイラー出力×稼動時間×稼働率÷化石燃料熱量÷化石燃料ボイラー効率
<費用関連>
チップ温水ボイラー
価格(千円)= 711.5×【ボイラー出力(kW)】^0.62
設置工事費
費用(千円) = 8.1×【ボイラー出力(kW)】+ 11,390
ボイラー組立・据付、煙突工事、1 次配管・2 次側電気設備工事、熱管理システ
ム、試運転を含む(既設ボイラーへの配管繋ぎ込み・保温工事は含まず。)
機械室・サイロ土木建築費※
費用(千円)= 7.3×【ボイラー出力(kW)】 + 15,900
設備補助率
50%(NEDO、農林水産省、環境省などの 1/2 補助を想定)
減価償却費
導入費計×設備補助率×(1-残存価額 10%)÷減価償却年数(定額法)
・償却年数 15 年(設備の法定耐用年数)
支払金利
(借入金残高×借入金利の 15 回返済計)÷15 年、元金均等
借入金 = 導入費計×設備補助率
元金返済額 = 借入金÷15 年、借入金利 3%
人件費
灰掃除、チップ残量確認・チップ受入、冬期のサイロ前除雪など既存ボイラー
担当職員が兼務できれば追加費用は発生しないものと考え、人件費増分を 0 円
と設定。
チップ燃料費
2 千円/m3(町内の製紙用チップ取引価格より設定)
熱量=2,400MJ/m3
保守・管理費
300~500 千円(ボイラー規模により変化)
消耗品費
200 千円/年(15 年使用した場合の平均値)
ばい煙測定費
250 千円/年(ばいじん発生施設に該当する規模のみ)
<収入関連>
重油削減費
熱利用量÷重油熱量×重油単価
重油単価=65 千円/kL(平成 18 年購入実績より設定)
重油熱量 37.1MJ/L=10.3kWh/L
灯油削減費
熱利用量÷灯油熱量×灯油単価
灯油単価=72 千円/kL(平成 18 年購入実績より設定)
灯油熱量 34.9MJ/L=9.7kWh/L
<その他>
CO2 削減量
重油削減量×重油燃料の CO2 排出係数(重油 2.71kg-CO2/L)
灯油削減量×灯油燃料の CO2 排出係数(重油 2.52kg-CO2/L)
CO2 排出削減コスト
経済的効果÷CO2 削減量
※ ボイラー導入規模における費用はメーカー見積りにて算出(想定機種:国内で導入実績が多いシュミット
社の生チップ対応 UTSR 型)
※ 燃料サイロについてはチップ燃料搬入の手間を考え、ダンプアップで搬入する地下式サイロとして想定
53
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.3 チップボイラー導入の検討【CASE1:ホットハウスカムロ】
4.3.1 チップボイラーの導入システムの検討【CASE1】
ホットハウスカムロの主熱源は重油ボイラーであり、暖房、温泉加温、給湯を行なって
いる。チップボイラーを導入する場合、新たにチップボイラーから既存の配管へ接続する
ことが必要となる。また、既存のボイラー機械室は地下に設けられており、新たにチップ
ボイラーを設置できるスペースの確保が困難なため、外部に木質チップボイラーを設置す
る機械室と燃料サイロを設ける必要がある。
図表 4-4 ホットハウスカムロの既存設備概要
設備
温水ボイラー
燃料
重油
設備能力
698kW (600,000kcal/h)
用途
温泉加温、給湯、床暖房
ボイラー効率
90%
貯湯槽
2,000L
年間稼動時間
7,300h/年 (365 日)
年間重油消費量
114,600L/年(H17 年度実績)
設備稼働率
21%
写真:ホットハウスカムロ地下機械室内部
54
写真:重油温水ボイラー(698kW)
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
図表 4-5 ホットハウスカムロ
平面図
図表 4-6 ホットハウスカムロ機械室配管系統図
55
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.3.2 チップボイラー導入最適規模の検討【CASE1】
(1) ホットハウスカムロの熱利用パターン【CASE1】
ホットハウスカムロへのヒアリング調査及びアンケート調査結果より、熱利用パター
ンを明らかにした。5~10 月までの熱利用パターンを図表 4-7、11~4 月までの熱利用
パターンを図表 4-8 に示す。
kW
700
点線部:週 1 回の清掃時の負荷
630
560
490
420
350
280
210
140
70
0
1
2
3
4
5
6
図表 4-7
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19
20 21 22 23 24時
ホットハウスカムロの 5-10 月の熱利用パターン想定
kW
700
630
点線部:週 1 回の清掃時の負荷
560
490
420
350
280
210
140
70
0
1
2
3
4
5
図表 4-8
6
7
8
9
10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
ホットハウスカムロの 11-4 月の熱利用パターン想定
56
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
(2) チップボイラー導入規模別の設備稼働率【CASE1】
熱需要パターンをもとにチップボイラーの導入規模と稼動率の関係を示したグラフを
図表 4-9 に示す。
100
98
90
79
80
稼働率(%)
70
年間稼動時間 7,300h
59
60
47
50
39
40
33
30
29
26
23
21
560
630
700
20
10
0
70
140
210
280
350
420
490
チップボイラー導入規模(kW)
図表 4-9
ホットハウスカムロにおけるチップボイラー導入規模とボイラー稼働率
既存のボイラー(698kW)に対して、小規模なチップボイラー程稼働率は高く、効率
的な運転が可能になるといえる。逆に、大規模なチップボイラーでは稼働率は低く効率
的な運転とはいえないが、エネルギー供給量(既存ボイラーからのエネルギー代替量)
は大きくなる。
57
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
(3) チップボイラー導入最適規模の検討【CASE1】
CASE1 において、導入が想定される 100kW、300kW、450kW、700kW のチップボ
イラー規模を導入した場合の経済性を試算し、最適規模を求めた。
図表 4-10
チップボイラー規模別の経済性シミュレーション【CASE1】
チップボイラー導入規模
kW
年間稼働時間
h/年
稼働率
%
100
300
360
450
700
32
21
7,300
90
45
38
チップ必要量
m3/年
1,244
1,866
1,891
1,991
2,032
重油削減量
L/年
70,874
106,311
107,728
113,398
114,600
千円
41,194
56,344
60,192
65,637
79,388
チップボイラー導入費
補助率
※1
50
%
<費用>
減価償却費
千円
1,236
1,690
1,806
1,969
2,382
支払金利
千円
329
450
481
525
635
人件費
千円
0
0
0
0
0
チップ燃料費
千円
2,489
3,733
3,783
3,982
4,065
保守管理費
千円
300
300
300
300
500
消耗品費
千円
200
200
200
200
200
ばい煙測定費
千円
0
250
250
250
250
費用計
千円
4,553
6,623
6,819
7,226
8,031
重油削減費
千円
4,607
6,910
7,002
7,371
7,449
収入計
千円
4,607
6,910
7,002
7,371
7,449
経済効果※2
千円
53
287
183
145
-582
t-CO2/年
192
288
292
307
311
<収入>
CO2 排出削減量
※1 チップボイラー導入費は各規模の選定のためものであり、全ての費用を含んでいる訳ではない。
※2 経済効果(収入計-費用計)は、チップボイラー導入による全体の事業収支を表したものではない。
チップボイラー導入全体の事業収支については適正規模決定後、第 7 章に掲載する。
試算の年間追加コストをみると、チップボイラー100~450kW 規模を導入した場合では、
既存の重油ボイラーに比べて、経済効果は黒字になるという結果になった。また、経済的
効果は 300kW 規模で最大となり、それ以上の規模になると次第に黒字額が低下していく。
これは、チップボイラー規模の拡大をしても拡大に伴う費用増分に対してボイラーの稼
動率が上がらないため、その費用に合った効果(重油削減)が得られていないと考えられ
る。
58
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.4 チップボイラー導入の検討【CASE2:ホットハウスカムロ+シェーネスハイム金山】
4.4.1 チップボイラーの導入システムの検討【CASE2】
前述したとおり、ホットハウスカムロではチップボイラーによる給湯・暖房・温泉加温
が期待できる。一方でシェーネスハイム金山は灯油ボイラーで 1 階の床暖房(レストラン
フォレストを含む)及び各客室の給湯を行なっている。また、各部屋の冷暖房をガスヒー
トポンプで行っており、これらの熱源をチップボイラーによる熱供給に代替することが考
えられる。シェーネスハイム金山では機械室が地下に設けられており、チップボイラーを
設置することは困難なため、外部にチップボイラー関連設備を設ける必要がある。
実際にチップボイラーの導入を想定すると、既存の灯油ボイラーの配管へ繋ぎ込むこと
で、1 階床暖房及び各客室の給湯をまかなう事が可能であるが、各部屋の冷暖房は既存の
設備(ガスヒートポンプエアコン)が温水対応の熱利用システムではないため、各部屋の
冷暖房を行う場合は、配管からシステムの全てを温水利用の設備変更を行なわなければな
らない。また、温水を用いて冷房を行なうためには吸収式冷凍機を設置する必要があるた
め、新たに設備コストの負担が予想される。そのため、経済性を考慮すると現状ではチッ
プボイラーによる各部屋への冷暖房を行うことは困難である。したがって、シェーネスハ
イム金山への熱供給は、第一に灯油ボイラーの代替するシステムを考え、各部屋への冷暖
房はヒートポンプや冷暖房配管の更新など大改修に合わせて熱供給を考える必要がある。
図表 4-11 シェーネスハイム金山の設備概要
設備
温水ボイラー
ガスヒートポンプ×6 台
用途
給湯
設備能力
258 kW
燃料
灯油
LPG
効率(COP)
85%
暖房:118%
貯湯槽
3,500 L
─
年間稼動時間
8,760 h/年
8,760 h/年(365 日)
年間燃料消費量
23,184L/年
20,680m3/年
設備稼働率
8%
17%
床暖房
59
暖房
冷房
67 kW×5
53 kW×1
56 kW×5
45 kW×1
冷房:98%
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
図表 4-12
シェーネスハイム金山のガスヒートポンプ冷暖房配管系統図
灯油ボイラー機械室
図表 4-13 シェーネスハイム金山 1 階
60
平面図
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.4.2 チップボイラー導入最適規模の検討【CASE2】
(1) ホットハウスカムロとーネスハイム金山の熱利用パターン【CASE2】
ホットハウスカムロ同様に、シェーネスハイム金山の熱利用パターンを想定した。
5 月~10 月の熱利用パターンを図表 4-14 に、11 月~4 月の熱利用パターンを図表 4-15
に示す。
kW
260
234
208
182
156
130
104
78
52
26
0
1
2
3
4
5
6
7
8
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24時
9
図表 4-14 シェーネスハイム金山(レストラン含)の熱利用パターン想定(5-10 月)
kW
260
234
208
182
156
130
104
78
52
26
0
1
2
図表 4-15
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24時
シェーネスハイム金山(レストラン含)の熱利用パターン想定(11-4 月)
61
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
(2) チップボイラー導入規模別の設備稼働率【CASE2】
ホットハウスカムロ及びシェーネスハイム金山(レストランフォレスト含)を同時に
行なった場合のチップボイラー規模と稼働率の関係を示す。
100
90
80
83
67
70
稼働率(%)
年間稼動時間 8,760h
53
60
44
50
40
37
32
30
27
25
22
20
560
630
700
20
10
0
70
140
210
280
350
420
490
チップボイラー導入規模(kW)
図表 4-16
ホットハウスカムロ及びシェーネスハイムへ熱供給した場合のボイラー規模と稼働率
62
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
(3) チップボイラー導入最適規模の検討【CASE2】
CASE2 においてチップボイラー各規模における経済性を試算し、チップボイラー最適
規模を検討した。
図表 4-17
チップボイラー規模別の経済性シミュレーション【CASE2】
チップボイラー導入規模
kW
年間実稼働時間
h/年
稼働率
%
100
300
360
450
700
30
20
8,760
76
41
36
m3/年
1,253
2,041
2,150
2,240
2,323
重油削減量
L/年
70,874
106,311
107,728
113,398
115,761
灯油削減量
L/年
531
11,156
16,574
15,937
18,593
チップボイラー導入費
千円
41,194
56,344
60,192
65,637
79,388
チップ必要量
補助率
50
%
<費用>
減価償却費
千円
1,236
1,690
1,806
1,969
2,382
支払金利
千円
329
450
481
525
635
人件費
千円
0
0
0
0
0
チップ燃料費
千円
2,505
4,081
4,300
4,480
4,645
保守管理費
千円
300
300
300
300
500
消耗品費
千円
200
200
200
200
200
ばい煙測定費
千円
0
250
250
250
250
費用計
千円
4,570
6,972
7,337
7,724
8,612
重油削減費
千円
4,607
6,910
7,002
7,371
7,524
灯油削減費
千円
38
803
1,193
1,147
1,339
収入計
千円
4,645
7,713
8,196
8,518
8,863
経済効果※2
千円
75
742
859
795
251
t-CO2/年
193
316
334
347
361
<収入>
CO2 排出削減量
※1 チップボイラー導入費は各規模の選定のためものであり、全ての費用を含んでいる訳ではない。
※2 経済効果(収入計-費用計)は、チップボイラー導入による全体の事業収支を表したものではない。
チップボイラー導入全体の事業収支については適正規模決定後、第 7 章に掲載する。
ホットハウスカムロとシェーネスハイム金山を同時に熱供給することにより、高負荷が
かかる時間帯が増えているため、チップボイラーの稼働率が上昇し、各規模においての経
済効果(既存ボイラーに比べ経済的なメリット)も上昇している。
ホットハウスカムロ単体への熱供給では 300kW が最も有利な設備規模であったが、本
ケースでは 360kW 規模のボイラーが最も有利になるという結果になった。
63
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.5 チップボイラー導入の検討【CASE3:金山中学校+学校給食共同調理場】
4.5.1 チップボイラーの導入システムの検討【CASE3】
現在、金山中学校では重油温水ボイラーによって冬期間における暖房をおこなっている。
そのため、熱需要が冬季のみに集中しており、チップボイラーによる熱供給には年間を通
しての需要の確保が課題となる。そこで、町内で通年の熱需要のある施設を金山中学校に
併設して熱需要を確保することが考えられる。そこで、本ケースでは通年の熱需要が確認
でき、老朽化により新設が検討されている学校給食共同調理場を金山中学校の敷地内に移
設した場合を想定し、チップボイラーによる 2 施設への熱供給を検討した。
現在、学校給食共同調理場は重油蒸気ボイラーを使用しているが、この重油蒸気ボイラ
ーをチップ蒸気ボイラーに変更した場合は、急激な熱需要に対して熱供給が対応できない
ことが予想される。そのため、学校給食共同調理場においては暖房や給湯、食器の洗浄(洗
浄器)を蒸気ではなく温水使用でも代替できるため、チップ温水ボイラーにて熱供給を行
なうことを検討する。本施設へのチップボイラーの導入方法としては、チップボイラーに
よって金山中学校の暖房と学校給食共同調理場の暖房、給湯(食器洗浄器用を含む)の熱
需要をまかない、調理用に必要な蒸気は既存の化石燃料ボイラーで対応するものとして検
討する。また、金山中学校の機械室は地下に設けられており、チップボイラーを設置する
ことは困難なため、外部にチップボイラー関連設備を設ける必要がある。
図表 4-18
金山中学校
既存設備概要
設備
用途
設備能力
燃料
効率
年間稼動時間
年間燃料消費量
設備稼働率
温水ボイラー
暖房
930 kW
重油
85%
1,430 h/年
(130 日)
29,000 L/年
20%
※ 平成 17 年度については重油価格上昇ため暖房の利用を極力控えている。
現地ヒアリング調査により平成 16 度重油消費量 46,000L を大きく下回っている。
図表 4-19
学校給食共同調理場
既存設備概要
設備
用途
設備能力
燃料
効率
年間稼動時間
年間燃料消費量
設備稼働率
蒸気ボイラー
暖房
給湯
調理
1,500 kg/h
重油
85%
2,040 h/年
(240 日)
34,000 L/年
16.5%
図表 4-20
蒸気利用調理関連設備
回転釜
洗浄器
保管庫
※他に電気式 1 機あり
蒸気利用機器 使用状況
蒸気消費量
台数
使用時間帯
稼働時間
51 kg/h
4
1
1
1
1
2
8 時~11 時 30 分
3.5
2.0
2.0
1.5
1.5
1.5
60 kg/h
40 kg/h
48 kg/h
41 kg/h
40 kg/h
64
14 時~16 時
15 時~16 時 30 分
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
図表 4-21
金山中学校重油ボイラー配管系統図
4.5.2 チップボイラー導入最適規模の検討【CASE3】
(1) 金山中学校+学校給食共同調理場の熱利用パターン【CASE3】
金山中学校へチップボイラーを導入した場合の稼働率を把握するため、ヒアリングよ
り、金山中学校の既存重油ボイラーの運転パターンについて、図表 4-22(平成 16 年
度の燃料消費実績)に示す。また、併設が検討される学校給食共同調理場の熱利用パタ
ーンを図表 4-23 に示す。
kW
930
837
744
651
558
465
372
279
186
93
0
7
図表 4-22
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
時
金山中学校の暖房需要パターン想定(温水ボイラー)
65
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
kg/h
kg/h
1,500
1,500
1,350
1,350
5~10 月
1,200
1,050
1,050
900
900
750
750
600
600
450
450
300
300
150
150
8
9
10
11
12
図表 4-23
13
14
15
16
0
17時
8
9
10
11
12
13
14
15
16
学校給食センターの熱需要パターン想定(蒸気ボイラー)
(2) チップボイラー導入規模別の設備稼働率【CASE3】
熱利用パターンより、チップボイラー導入規模と稼働率の関係を以下に示す。
100
90
稼働率(%)
0
11~4 月
1,200
80
70
60
年間稼働時間 2,640h
63
60
55
47
50
40
38
33
30
20
29
26
24
22
10
0
93
186
279
372
465
558
651
744
837
930
ボイラー導入規模(kW)
図表 4-24
金山中学校及び学校給食共同調理場へ熱供給した場合のボイラー規模と稼働率
66
17時
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
(3) チップボイラー導入最適規模の検討【CASE3】
CASE3 において各規模別に経済性の試算を行い、チップボイラー導入最適規模を検討
した。
図表 4-25
チップボイラー規模別の経済性シミュレーション【CASE3】
チップボイラー導入規模
kW
年間実稼働時間
h/年
稼働率
%
m3/年
チップ必要量
重油削減量
※
チップボイラー導入費
補助率
180
300
360
450
700
39
27
2,640(240 日)
60
52
48
540
780
864
878
945
L/年
30,757
44,427
49,212
49,981
53,825
千円
47,863
60,192
65,637
79,388
56,344
50
%
<費用>
減価償却費
千円
1,436
1,690
1,806
1,969
2,382
支払金利
千円
382
450
481
525
635
人件費
千円
0
0
0
0
0
チップ燃料費
千円
1,080
1,560
1,728
1,755
1,890
保守管理費
千円
300
300
300
300
500
消耗品費
千円
200
200
200
200
200
ばい煙測定費
千円
250
250
250
250
250
費用計
千円
3,648
4,450
4,765
4,999
5,857
重油削減費
千円
1,999
2,888
3,199
3,249
3,499
収入計
千円
1,999
2,888
3,199
3,249
3,499
経済効果※2
千円
-1,649
-1,563
-1,566
-1,750
-2,358
83
120
133
135
146
19.8
13.0
11.7
12.9
16.2
<収入>
CO2 排出削減量
CO2 排出削減コスト
t-CO2/年
千円/t-CO2
※1 チップボイラー導入費は各規模の選定のためものであり、全ての費用を含んでいる訳ではない。
※2 経済効果(収入計-費用計)は、チップボイラー導入による全体の事業収支を表したものではない。チ
ップボイラー導入全体の事業収支については適正規模決定後、第 7 章において掲載する。
CASE3 は、どの規模のチップボイラーにおいても、経済効果が赤字(既存のボイラーに
比べて経済的に不利)になっている。これは先の CASE1 と CASE2 は異なり、熱需要が小
さいために、重油からチップ代替するメリットが小さいことが影響している。
経済効果のみで比較すると 300kW 規模が一番有利とされるが、二酸化炭素削減コストか
ら見ると 360kW が最も導入効果が高く、チップボイラー導入適正規模だと考えられる。
67
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
4.6 チップボイラー導入最適規模のまとめ
各ケースでのチップボイラー導入最適規模を検討した結果をまとめた。
図表 4-26
チップボイラー
熱供給施設
チップボイラー熱利用形式
チップボイラー導入最適規模のまとめ
CASE 1
CASE 2
CASE 3
ホットハウスカムロ
ホットハウスカムロ
シェーネスハイム金山
(レストランフォレスト)
金山中学校
学校給食共同調理場
温水
温水
温水
300 kW
360 kW
360 kW
7,300 h/年
8,760 h/年
2,640 h/年
45%
36%
48%
1,866m3
2,150m3
864m3
重油(灯油)削減量
106,311 L/年
107,728 L/年
(11,156 L/年)
44,427 L/年
チップボイラー導入費
56,344 千円
60,192 千円
60,192 千円
チップボイラー導入費
補助利用(50%)
28,172 千円
30,096 千円
30,096 千円
1,690 千円
1,806 千円
1,806 千円
450 千円
481 千円
481 千円
0 千円
0 千円
0 千円
3,733 千円
4,730 千円
1,728 千円
保守管理費
300 千円
300 千円
300 千円
消耗品費
200 千円
200 千円
200 千円
ばい煙測定費
250 千円
250 千円
250 千円
6,623 千円
7,767 千円
4,765 千円
化石燃料削減費
6,910 千円
8,196 千円
3,199 千円
収入計
6,910 千円
8,196 千円
3,199 千円
287 千円
429 千円
-1,566 千円
288t-CO2
334t-CO2
133t-CO2
─
─
11.7 千円/t-CO2
CO2 排出削減コスト最低規模
年間稼働時間
チップボイラー稼働率
チップ必要量
<費用>
減価償却費
支払金利
人件費
チップ燃料費
費用計
<収入>
経済効果※
CO2 排出削減量
CO2 排出削減コスト
※チップボイラー導入費は各規模の選定のためものであり、全ての費用を含んでいる訳ではない。
※チップボイラー導入効果(収入計-費用計)は、チップボイラー導入による全体の事業収支を表したもの
ではない。チップボイラー導入全体の事業収支については適正規模決定後、第 7 章において掲載する。
68
第4章
木質バイオマスエネルギー導入システムの検討
CASE1 において、年間を通して熱需要の高いホットハウスカムロへのチップボイラー
導入による熱供給は、各規模における試算を行なった結果、300kW のチップボイラーを導
入することが経済的に最も有利であることがわかった。
CASE2 では、ホットハウスカムロとシェーネスハイム金山へのチップボイラー導入に
いたっては、チップボイラー最適規模は 360kW のチップボイラーの導入が適当であると
わかった。また、チップボイラー導入効果では【CASE1】のホットハウス単体のチップボ
イラー導入よりも有利になっている。
CASE3 では、金山中学校は熱需要が冬期限定ということと、学校給食共同調理場は年
間を通して熱需要があるものの、その需要量が小さいためチップボイラーを導入する場合
には、既存のボイラーシステムと比較して、チップボイラーを導入すると新たに年間追加
コストが発生することがわかった。
本章では CASE1~3 において、チップボイラーの導入最適規模を検討し、各規模におけ
るチップボイラー導入に関する直接的な費用で比較を行った。
第 7 章の木質バイオマスボイラー導入の事業性の検討において、CASE1 ホットハウス
カムロ、CASE2 シェーネスハイム金山+ホットハウスカムロ、CASE3 金山中学校+学校
給食共同調理場の各施設について、具体的なチップボイラーの設置場所を設定し、最適規
模のチップボイラーを導入した場合と既存の重油ボイラーを更新した導入した場合の事業
性について検討を行なう。
69
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5. 地域熱供給の導入可能性の検討
5.1 地域熱供給について概要
近年、社会構造の変化に伴って、地域環境、居住環境の一層の向上が求められるように
なってきており、地域熱供給システムの導入の機運が高まってきている。技術の進展と相
まって、今後の動きが一層活発になっていくものと考えられる。地域熱供給システムを導
入する際には、当該地域において以下の 3 つの条件を最低限クリアしないと熱供給シス
テムがうまく機能しないため、十分に考慮しなくてはならない。
①熱需要密度が平均して高いこと
②熱需要者の加入予定が明確であること
③熱の供給箇所、導管ルートなどの確保が可能(容易)であること
5.1.1 地域熱供給のメリットとデメリット
地域熱供給を行う上でメリットとデメリットを以下に示す。
図表 5-1
地域熱供給のメリット・デメリット
・複数の施設への同時に熱供給を行うので各建物の最大熱需要の合計より
も小規模設備で全体の熱需要をまかなえる。
メリット
・プラント大型化と集中管理による制御の適正化による運転効率の向上
・大規模集中管理による制御の向上と燃料使用量の削減、省エネルギー化
の促進(木質バイオマスエネルギー利用の場合は化石燃料利用の削減)
。
・地域導管敷設工事費用など初期投資の負担が大きくなる。
デメリット
・既存の住宅や施設へ熱供給を行なう場合、これら熱需要側で地域熱供給
システムに対応した設備(熱交換器・内部配管)を整える必要がある。
・導管経路によっては、敷設までに煩雑な手続き・時間を要する。
地域熱供給を行う場合のメリットとして大型プラントの集中管理により、複数の施設
への熱利用システムへ同時に熱供給を行うので、各建物の最大熱需要の合計よりも小規
模の設備で全体の熱需要をまかなうことができる。また、制御の適正化による運転効率
の向上により、燃料使用量の削減(木質バイオマスエネルギー利用の場合は化石燃料利
用量の削減)
、省エネルギー化の促進などがあげられる。デメリットとしては、地域導管
敷設などインフラ整備の初期投資が高額になることがあげられ、実施に当たっては、導
管敷設の計画を詳細に検討する必要となる。
70
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5.1.2 地域熱供給で需要側の必要設備
地域熱供給を行う際に、供給対象が温水の熱利用システムに対応していない場合は、
熱需要施設側において温水熱利用に適合した熱利用システムへの変更が必須となる。同
様に、一般住宅では、住宅内の暖房・給湯を行う際に温水を利用した熱利用システム(室
内配管やパネルヒーターやファンコイルユニットなど)の導入や変更が必要となる。ま
た、各住宅に熱供給を利用するための熱交換器と貯湯槽が必要となる。
図表 5-2
住宅用熱交換器(オーストリア事例)
5.1.3 地域熱供給の導管敷設コスト
地域熱供給配管の敷設コストについて、山形県内の土木建築業者へのヒアリング調査
によると、敷設距離やルート、路面、導管材料、保温材の厚さなど様々な条件により価
格の変動があるが、およそ50,000~100,000円/mとなっている。
地域熱導管を敷設する際は、電線や水道管の敷設といったインフラ整備時に、同時に
行うことで発生するコストを抑えることができるため、事前に計画的な導管敷設の検討
をする必要がある。
図表 5-3 熱供給システム検討における導管敷設の設定条件
導管
単価
往復100A
50,000~
(2管式)
100,000円/m
概要
土木建築業者のヒアリングより設定
※堀方・敷設・埋戻し・舗装込み価格(設置場所による)
※ボイラーへの導管接続工事費・接続部品代など含まれない
※敷設箇所条件により価格に変動有
以上の地域熱供給の概要から、金山町における木質バイオマスエネルギーによる地域
熱供給の可能性を検討した。第 2 章の熱需要調査で明らかになった熱需要の高い 2 つの
エリアにおいて、エリアごとに熱供給導管を敷設し、主要施設と住宅への熱供給を行う
方法を検討した。
71
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5.2 グリーンバレー神室エリアにおける熱供給の可能性の検討
第 2 章の熱需要調査で高い熱需要が明らかになったグリーンバレー神室エリアは、ホ
ットハウスカムロ(温泉施設)、シェーネスハイム金山(宿泊施設)といった施設と周辺
の一般住宅 7 戸が確認できる。そこで、当該エリアにおいて地域熱供給の可能性の検討
を行った。なお、地域熱供給を行う場合は新たに専用の熱供給プラントが必要となる。こ
こでは、熱供給施設の設置箇所は冬季間の積雪時の交通路の確保やチップボイラー利用時
にサイロへの燃料供給作業を考慮してホットハウスカムロ脇の空地を想定している。グリ
ーンバレー神室エリアにおける地域熱供給のイメージを図表 5-5 に示す。
図表 5-4
グリーンバレー神室エリアの主要施設の概要
対象施設
ホットハウスカムロ
シェーネスハイム金山
既存熱源設備
温水ボイラー
重油
温水ボイラー※1
灯油
ガスヒートポンプエアコン
LPG
森林交流センター
FF 型暖房機
(レストランフォレスト)
(温水ボイラー)※1
緑地等活用総合管理センター
(森林学習館含む)
周辺住宅 ( 7
)戸
燃料種別
灯油
FF 型暖房機
灯油
家庭用ガス給湯器
LPG
家庭用灯油ボイラー
灯油
※1 森林交流センターの床暖房はシェーネスハイム金山の温水ボイラーを使用
72
熱需要形態
温泉加温
暖房、給湯
暖房、給湯
暖房
(床暖房)
暖房
暖房、給湯
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
図表 5-5
グリーンバレー神室エリア地域熱供給のイメージ
5.2.1 グリーンバレー神室エリアの現状と熱供給の課題
(1) 熱供給導管の敷設
グリーンバレー神室エリア内において、各施設と同時に周辺地域の住宅への熱供給を
行う場合、地域内に導管を敷設しなくてはならない。グリーンバレー神室にはホットハ
ウスカムロやシェーネスハイム金山といった熱需要の高い施設が集合しているため、想
定している熱供給プラントから各施設への熱供給導管は短くて済み、効率的な熱供給を
行える可能性が高い。
しかし、熱供給の対象として一般住宅も含めると、周辺地域の住宅まで敷設する導管
距離が長くなることから、ハード面の整備に対するコストが高額になり負担が重くなる
ことが予想される。また、導管距離が長くなることで熱損失が予想されるため、導入効
果に見合う熱供給を行うことが困難であると思われる。
73
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(2) 熱利用形態の変更
各対象施設へ熱供給を行う場合には、各施設の熱利用形態を考慮しなくてはならない。
グリーンバレー神室内の「シェーネスハイム金山」では、本館内の冷暖房を LP ガスに
よるガスヒートポンプエアコンを利用しているため、熱利用する場合は館内の熱利用シ
ステムを温水利用のシステムに変更が必要となる。
一般住宅では、住宅の熱利用形態も温水を利用したファンコイルユニットやパネルヒ
ーター等の熱利用システムへの変更や導入が必要となり、ほかにも温水による熱供給を
受けるため、新たに熱交換器や貯湯槽といった設備を設ける必要がある。
5.2.2 熱供給導管距離と敷設コストの試算(グリーンバレー神室エリア)
グリーンバレー神室地域エリアにおける地域熱供給の行った場合に想定される導管距
離から当該地域における導管敷設コストを試算した。(導管敷設単価は図表 5-3 参照)
図表 5-6
グリーンバレー神室エリアにおける必要導管距離と導管敷設コストの試算
住宅用主要熱供給導管
※
トータル敷設距離
導管コスト(千円)
400m
20,000~40,000 千円
図表 5-5 のグリーンバレー神室エリア導管敷設イメージを想定した場合
ホットハウス脇の空地に熱供給プラントを想定した場所から、周辺住宅へ熱供給を想
定した場合に主要熱供給導管距離は約 400m となる。導管敷設コストは、敷設箇所の条
件にもよるが 20,000~40,000 千円という結果になった。
5.2.3 地域熱供給プラントの必要熱源設備規模の検討(グリーンバレー神室エリア)
地域内の各施設に導入されている熱源機器の規模及び住宅における負荷想定より、地
域熱供給の際に必要となる熱源設備規模を想定した。
(図表 5-7)なお、地域熱供給のよ
うに複数の施設への対象とする場合、各施設ごとの最大負荷発生の時刻が異なり、熱供
給プラントに必要となる熱供給能力は各施設の最大負荷熱需要の合計より少ない値にな
ると考えられる。したがって、熱供給プラントの装置容量を設定する際は、各施設の最
大熱需要の合計に低減率(以下、同時負荷率とする。)を乗じた値を用いることになる。
ここでは同時負荷率を 80%と設定している。
74
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
図表 5-7
グリーンバレー神室地域の施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
項目
既存熱源設備規模
対象燃料
熱利用用途
熱需要量
(暖房・給湯)
ホットハウスカムロ
温水ボイラー
698kW(60 万 kcal/h)
重油
暖房(重油)
4,252 GJ/年
シェーネスハイム金山
温水ボイラー
258kW(22 万 kcal/h)
ガスヒートポンプ
464kW ※1
灯油
LPG
床暖房(灯油)
給湯(灯油)
2,781 GJ/年
↑シェーネスハイム金山の温水ボ
イラー設備に含む
灯油
暖房(灯油)
117 GJ/年
10kW ※2
灯油
暖房
584 GJ/年
71kW ※3
LPG・灯油
暖房・給湯
354 GJ/年
森林交流センター
(レストランフォレスト)
森林学習館
緑地等活用総合管理センター
7戸
周辺住宅
合
1,492kW
計
同時負荷率
-
-
8,088 GJ/年
80%
※4
必要熱源設備規模
1,194kW
時間当たりの最大熱供給能力:4.3GJ/h
熱源設備稼働率
21.5%
8,088 GJ/年÷(4.3GJ/h×365 日×24 時間)
※1 既存ガスヒートポンプ能力は暖房 388kW、冷房 325kW であるが、チップボイラーによる冷房には温水から冷
水をつくる単効用吸収式冷凍機が必要となる。
単吸収式冷凍機の効率は 0.7 程度と考えられるため、必要能力は 464kW(325kW÷0.7)となる。
※2 暖房システムは FF 式暖房機だが、温水熱利用した場合の想定値
※3 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)
→給湯負荷については、貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と設定。
※4 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
グリーンバレー神室地域で熱供給を行う場合の必要設備は全体で 1,194kW 規模のボ
イラーが必要となる。実際に 1,194kW のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 21.5%
となる。ただし、4 章の各個別施設の熱需要パターンで見たように、それぞれの施設に
おいて最大負荷運転時間は短いものと考えられるため、必要熱源設備規模相当分を木質
ボイラーと化石燃料バックアップボイラー(ピーク負荷用)で分割することも考えられ
る。
5.2.4 チップ燃料必要量の試算(グリーンバレー神室エリア)
グリーンバレー神室施設内で地域熱供給を行った場合、各施設の熱供給に対応する暖
房と給湯エネルギーの合計は 8,088GJ/年となり、これをチップ量に換算すると約 1,011t/
年(3,370m3/年)となる。
図表 5-8
グリーンバレー神室エリアにおける熱供給の際のチップ必要量
熱需要量(暖房・給湯)
チップ必要量
8,088 GJ/年
約 1,011t/年(3,370m3)
※チップ:発熱量 8.0GJ/t、かさ密度 0.30t/m3
75
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5.3 金山地域エリアにおける熱供給の可能性の検討
第 2 章の図表 2-8 より明らかになった、高い熱需要が見込まれる金山地域エリアにお
いて、主要施設の既存のエネルギー利用システムを把握し、木質バイオマスエネルギーに
よる地域熱供給の可能性を検討した。なお、地域熱供給を行う際には、新たな熱供給プラ
ントが必要となる。熱供給施設の設置想定箇所は冬季間における積雪時の交通路の確保や、
チップボイラー利用時に燃料サイロへの供給作業を考慮して、金山中学校内ランチルーム
脇の空地に熱供給プラントを想定している。図表 5-9 に金山地域エリアにある主要施設
の概要と、図表 5-10 に金山地域絵エリアにおいて地域熱供給を行った場合のイメージ図
を示す。
図表 5-9
エリア
赤
緑
青
金山地域の主要施設の概要
施設名
既存熱源設備
燃料種別
熱需要形態
金山中学校(+体育館)
温水ボイラー
重油
暖房
町立病院
温水ボイラー
重油
給湯
一般住宅※(84 戸)
家庭用ガス給湯器
家庭用灯油ボイラー
LPG
灯油
暖房・給湯
学校給食共同調理場
蒸気ボイラー
重油
調理・暖房・給湯
中央公民館
温風暖房機
重油
暖房
一般住宅※(92 戸)
家庭用ガス給湯器
家庭用灯油ボイラー
LPG
灯油
暖房・給湯
金山町役場庁舎
温水ボイラー
重油
暖房
金山保育園
温水ボイラー
灯油
暖房
金山小学校
FF 型暖房機
灯油
暖房
一般住宅※(282 戸)
家庭用ガス給湯器
家庭用灯油ボイラー
LPG
灯油
暖房・給湯
※一般住宅数:金山住宅地図により抽出
76
暖房
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
図表 5-10
金山地域熱供給のイメージ
77
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5.3.1 金山地域エリアにおける現状と熱供給の課題
(1) 熱供給導管の敷設条件
地域内で熱供給を行う場合に、想定している熱供給プラント設置箇所から、熱需要の
見込める施設「学校給食共同調理場」、
「中央公民館」、
「金山小学校」
、
「役場庁舎」へ最
短距離で熱供給導管を敷設したとすると金山地域内を 2 分する国道 13 号線を跨ぐ必要
がある。この場合、導管を敷設するためには国道を介する必要があり、道路管理主体が
国になるため、導管敷設に煩雑な手続きと期間を要することが予想される。そこで、金
山中学校内にある国道 13 号線地下通路を利用して導管の敷設できる可能性がある。し
かし、その場合に各施設への導管敷設を迂回しなくてはならないため、敷設距離が長く
なり、コスト負担が大きくなることが予想される。
(2) 熱利用形態の変更
当該地域で熱供給を行う際は、利用する施設の熱需要形態を考慮し、各施設において
熱利用形態の変更の必要がある。「金山小学校」では、既存の熱利用形態が FF 式暖房
機による暖房であり、新たに温水を利用した熱利用システムに変更しなくてはならない。
「学校給食調理場」では既存の熱利用システムとして蒸気ボイラーを利用しているため、
既存の蒸気配管設備を残しつつ、新たに温水利用設備を追加する必要がある。「中央公
民館」では、暖房に重油焚きの温風ボイラーを用いているため、温水を利用した暖房シ
ステムへ変更しなくてはならない。住宅への熱供給を行なう場合、新たに熱交換設備や
室内配管、貯湯槽といった設備を設ける必要がある。
5.3.2 熱供給導管距離と敷設コストの試算(金山地域エリア)
金山地域内における地域熱供給を行った場合に想定される導管距離から、当該地域に
おける導管敷設コストを試算した。
(導管敷設単価は図表 5-3 参照)
図表 5-11
施設への主要熱供給導管
(住宅用主要熱供給導管兼務)
導管敷設距離
赤エリア
650m
32,500~65,000 千円
緑エリア
480m
24,000~48,000 千円
青エリア
610m
30,500~61,000 千円
1,740m
87,000~174,000 千円
合
※
金山地域における必要導管距離と導管敷設コストの試算
計
導管敷設コスト
図表 5-10 の導管敷設イメージを想定した場合
金山地域エリアにおいて、熱供給プラントの設置場所として想定した場所から各施設
への地域熱供給をした場合、熱供給導管の距離は合計で約 1,740m なり、敷設コストは
87,000~174,000 千円という試算結果になった。
78
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5.3.3 地域熱供給プラントの必要熱源設備規模の検討(金山地域エリア)
当該地域では、第 2 章の赤、緑、青とエリアを設定し、各施設に導入されている熱源
機器の規模及び住宅における熱負荷想定より、熱供給プラントの規模を想定した。
また、図表 5-12 の各エリア(単体、複数、金山地域エリア)について熱供給施設プ
ラントの必要熱源設備規模を求めている。なお、5.2.3 グリーンバレー神室エリアの必要
熱源設備規模の検討と同様に、必要熱源設備規模を試算する際の複数施設の熱需要同時
負荷率を 80%と設定した。
図表 5-12 金山地域エリア内の地域熱供給導入想定パターン
導入想定パターン
対象エリア
(1)
赤エリア
(2)
緑エリア
(3)
青エリア
(4)
赤+緑エリア
(5)
赤+青エリア
(6)
緑+青エリア
(7)
赤+緑+青エリア
単体
複数
金山地域エリア
(1) 赤エリア(単体)
図表 5-13 赤エリアの施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
エリア
赤
施設
金山中学校
町立病院
住宅(84 戸)
合 計
既存熱源規模
熱利用用途
930kW(80 万 kcal/h) 暖房(重油)
1,198kW(103kcal/h) 暖房・給湯(重油)
848kW※1
暖房・給湯(灯油・LPG)
2,976kW
熱需要
(暖房・給湯)
1,076 GJ/年
3,348 GJ/年
4,250 GJ/年
8,674 GJ/年
同時負荷率※2
80%
設定値
必要熱源設備能力
2,374kW
時間当たりの最大熱供給能力:8.5GJ/h
熱源設備稼働率
11.6%
8,674GJ/年÷(8.5GJ/h×365 日×24 時間)
※1 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。→給湯負荷
については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※2 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
赤エリア単体への熱供給を想定すると、各施設や住宅の既存熱源規模の合計は
2,976kW となるが、同時負荷率 80%を乗じると必要熱源設備規模は 2,374kW となる。
実際に 2,374kW 規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 11.6%となる。
79
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(2) 緑エリア(単体)
図表 5-14 緑エリアの施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
エリア
施設
学校給食共同調理場
中央公民館
住宅(92 戸)
合 計
緑
既存熱源規模
熱利用用途
100kW※1
暖房・給湯(重油)
291kW(25 万 kcal/h) 暖房(重油)
929kW※2
暖房・給湯(灯油・LPG)
1,320kW
熱需要
(暖房・給湯)
420 GJ/年
568 GJ/年
4,655 GJ/年
5,644 GJ/年
同時負荷率※3
80%
設定値
必要熱源設備能力
1,056kW
時間当たりの最大熱供給能力:3.8GJ/h
熱源設備稼働率
16.9%
5,644GJ/年÷(3.8GJ/h×365 日×24 時間)
※1 既存設備は蒸気ボイラー(1,500kg/h)だが、温水で代替可能な最大暖房・給湯負荷 100kW と見込む。
※2 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。
→給湯負荷については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※3 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
緑エリア単体への熱供給を想定すると、各施設や住宅の既存熱源規模の合計は
1,320kW となるが、同時負荷率 80%を乗じると必要熱源設備規模は 1,056kW となる。
実際に 1,056kW 規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 16.9%となる。
(3) 青エリア(単体)
図表 5-15 青エリアの施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
エリア
施設
既存熱源規模
熱利用用途
熱需要
(暖房・給湯)
523kW(45 万 kcal/h)
93kW(8 万 kcal/h)
800kW※1
2,848kW※2
4,264kW
暖房(重油)
暖房(灯油)
暖房(灯油)
暖房・給湯(灯油・LPG)
同時負荷率※3
80%
設定値
必要熱源能力
3,411kW
時間当たりの最大熱供給能力:12.3 GJ/h
熱源設備稼働率
15.0%
16,130GJ/年÷(12.3GJ/h×365 日×24 時間)
青
役場庁舎
金山町保育園
金山小学校
住宅(282 戸)
合 計
965 GJ/年
310 GJ/年
586 GJ/年
14,269 GJ/年
16,130 GJ/年
※1 暖房システムは FF 式暖房機だが、温水熱利用した場合の想定値
※2 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。
→給湯負荷については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※3 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
青エリア単体への熱供給を想定すると、各施設や住宅の熱源規模の合計は 4,264kW と
なるが、同時負荷率 80%を乗じると必要設備規模は 3,411kW となる。実際に 3,411kW
規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 15.0%となる。
80
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(4) 赤+緑エリア(複数)
図表 5-16 赤+緑エリアの施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
エリア
赤
緑
施設
既存熱源規模
熱利用用途
熱需要
(暖房・給湯)
金山中学校
930kW(80 万 kcal/h)
暖房(重油)
1,076 GJ/年
町立病院
1,198kW(103kcal/h)
暖房・給湯(重油)
3,348 GJ/年
住宅(84 戸)
848kW※1
暖房・給湯(灯油・LPG)
4,250 GJ/年
小
2,976 kW
計
8,674 GJ/年
学校給食共同調理場
100kW※2
暖房・給湯(重油)
420 GJ/年
中央公民館
291kW(25 万 kcal/h)
暖房(重油)
568 GJ/年
住宅(92 戸)
929kW※1
暖房・給湯(灯油・LPG)
小
1,320 kW
5,644 GJ/年
4296 kW
14,318 GJ/年
合
計
計
4,655 GJ/年
同時負荷率※3
80%
設定値
必要熱源能力
3,437 kW
時間当たりの最大熱供給能力:12.4GJ/h
熱源設備稼働率
13.2%
14,318GJ/年÷(12.4GJ/h×365 日×24 時間)
※1 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。
→給湯負荷については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※2 既存設備は蒸気ボイラー(1,500kg/h)だが、温水で代替可能な最大暖房・給湯負荷 100kW と見込む。
※3 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
赤+緑エリアへの熱供給を想定すると、各施設や住宅の熱源規模の合計は 4,296kW
となるが、同時負荷率 80%を乗じると必要設備規模は 3,437kW と想定できる。実際に
3,437kW 規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 13.2%となる。
81
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(5) 赤+青エリア(複数)
図表 5-17 赤+青エリアの施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
エリア
赤
青
施設
既存熱源規模
熱利用用途
熱需要
(暖房・給湯)
金山中学校
930kW(80 万 kcal/h)
暖房(重油)
1,076 GJ/年
町立病院
1,198kW(103kcal/h)
暖房・給湯(重油)
3,348 GJ/年
住宅(84 戸)
848kW※1
暖房・給湯(灯油・LPG)
4,250 GJ/年
小
2976 kW
計
8,674 GJ/年
役場庁舎
523kW(45 万 kcal/h)
暖房(重油)
965 GJ/年
金山町保育園
93kW(8 万 kcal/h)
暖房(灯油)
310 GJ/年
金山小学校
800kW※3
暖房(灯油)
586 GJ/年
住宅(282 戸)
2848 kW
暖房・給湯(灯油・LPG)
小
計
4,264 kW
16,130 GJ/年
合
計
7,240 kW
24,804 GJ/年
14,269 GJ/年
同時負荷率※4
80%
設定値
必要熱源能力
5,792 kW
時間当たりの最大熱供給能力:20.9GJ/h
熱源設備稼働率
13.6%
24,804GJ/年÷(20.9GJ/h×365 日×24 時間)
※1 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。
→給湯負荷については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※2 既存設備は蒸気ボイラー(1,500kg/h)だが、温水で代替可能な最大暖房・給湯負荷 100kW と見込む。
※3 暖房システムは FF 式暖房機だが、温水熱利用した場合の想定値
※4 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
赤+青エリアへの熱供給を想定すると、各施設や住宅の熱源規模の合計は 7,240kW
となるが、同時負荷率 80%を乗じると必要設備規模は 5,792kW となる。
実際に 5,792kW
規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 13.6%となる。
82
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(6) 緑+青エリア(複数)
図表 5-18 青エリアの施設ごとの最大負荷と必要熱源設備規模の想定
エリア
緑
青
施設
熱利用用途
熱需要
(暖房・給湯)
暖房・給湯(重油)
420 GJ/年
既存熱源規模
学校給食共同調理場
100kW※1
中央公民館
291kW(25 万 kcal/h) 暖房(重油)
住宅(92 戸)
929kW※2
小
1,320 kW
計
暖房・給湯(灯油・LPG)
568 GJ/年
4,655 GJ/年
5,644 GJ/年
役場庁舎
523kW(45 万 kcal/h) 暖房(重油)
965 GJ/年
金山町保育園
93kW(8 万 kcal/h)
暖房(灯油)
310 GJ/年
金山小学校
800kW※3
暖房(灯油)
586 GJ/年
住宅(282 戸)
2848
暖房・給湯(灯油・LPG)
小
4,264 kW
16,130 GJ/年
5,584 kW
21,774 GJ/年
計
合
計
14,269 GJ/年
同時負荷率※4
80%
設定値
必要熱源能力
4,467 kW
時間当たりの最大熱供給能力:16.1GJ/h
熱源設備稼働率
15.5%
21,774GJ/年÷(16.1GJ/h×365 日×24 時間)
※1 既存設備は蒸気ボイラー(1,500kg/h)だが、温水で代替可能な最大暖房・給湯負荷 100kW と見込む。
※2 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。
→給湯負荷については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※3 暖房システムは FF 式暖房機だが、温水熱利用した場合の想定値
※4 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
緑+青エリアへの熱供給を想定すると、各施設や住宅の熱源規模の合計は 5,584kW
となるが、同時負荷率 80%を乗じると必要設備規模は 4,467kW となる。
実際に 4,467kW
規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 15.5%となる。
83
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(7) 赤+緑+青エリア(金山地域エリア)
図表 5-19 金山地域の施設ごとの最大負荷と必要熱源能力の想定
エリア
赤
緑
青
施設
既存熱源規模
熱利用用途
熱需要
(暖房・給湯)
金山中学校
930kW(80 万 kcal/h) 暖房(重油)
1,076 GJ/年
町立病院
1,198kW(103kcal/h) 暖房・給湯(重油)
3,348 GJ/年
住宅(84 戸)
848kW※1
4,250 GJ/年
小
2,976kW
計
暖房・給湯(灯油・LPG)
8,674 GJ/年
学校給食共同調理場
100kW※2
中央公民館
291kW(25 万 kcal/h) 暖房(重油)
住宅(92 戸)
929kW
小
1,320kW
計
暖房・給湯(重油)
※1
暖房・給湯(灯油・LPG)
420 GJ/年
568 GJ/年
4,655 GJ/年
5,644 GJ/年
役場庁舎
523kW(45 万 kcal/h) 暖房(重油)
965 GJ/年
金山町保育園
93kW(8 万 kcal/h)
暖房(灯油)
310 GJ/年
金山小学校
800kW※3
暖房(灯油)
586 GJ/年
住宅(282 戸)
2,848kW
暖房・給湯(灯油・LPG)
小
4,264kW
16,130 GJ/年
8,561kW
30,448 GJ/年
合
計
計
※1
14,269 GJ/年
同時負荷率※4
80%
設定値
必要熱源能力
6,849kW
時間当たりの最大熱供給能力:24.7 GJ/h
熱源設備稼働率
14.1%
30,448GJ/年÷(24.7GJ/h×365 日×24 時間)
※1 住宅の最大熱需要は暖房と給湯の合計値として 10.1kW/戸を用いる。
→1 戸当りの暖房最大負荷を 8kW(暖房面積 100m2、最大暖房負荷原単位 0.08kW/m2)として想定。
→給湯負荷については貯湯槽(280L/戸、70 度)を設けるものとして 2.1kW/戸と想定。
※2 既存設備は蒸気ボイラー(1,500kg/h)だが、温水で代替可能な最大暖房・給湯負荷 100kW と見込む。
※3 暖房システムは FF 式暖房機だが、温水熱利用した場合の想定値
※4 参考文献「地域冷暖房システム」を参照
赤+緑+青エリア(金山地域エリア)への熱供給を想定すると、各施設や住宅の熱源
規模の合計は 8,561kW となるが、同時負荷率 80%を乗じると必要設備規模は 6,849kW
となる。実際に 6,849kW 規模のボイラーを導入した場合で年間稼働率が 14.1%となる。
84
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
(8) 金山地域エリアにおける必要熱源設備能力と熱源設備稼働率のまとめ
金山地域エリア内の対象エリアにおいて導入想定パターン別に必要熱源設備能力と
熱源設備稼働率についてまとめた。
(図表 5-20)
図表 5-20 導入想定パターン別の必要熱源設備と熱源設備稼働率
対象エリア
必要熱源設備能力
設備稼働率
(1)
赤(単体エリア)
2,976 kW
11.6%
(2)
緑(単体エリア)
1,320 kW
16.9%
(3)
青(単体エリア)
4,264 kW
15.0%
(4)
赤+緑(複数エリア)
3,437 kW
13.2%
(5)
赤+青(複数エリア)
5,792 kW
13.6%
(6)
緑+青(複数エリア)
4,467 kW
15.5%
(7)
赤+緑+青(金山地域エリア)
6,849 kW
14.1%
金山地域エリアにおける導入想定パターン別に必要熱源設備能力と熱源設備稼働率に
ついて試算した結果、どのパターンにおいても熱源設備能力の高いものが必要となって
くる。ここで仮に、初期段階から必要熱源設備能力相当の熱源設備を導入することは、
各施設において一斉に熱供給の受け入れ体制の整備を行わない限り、対応する熱需要が
見込めないため、熱源設備の稼働率が著しく低下する。
(木質バイオマスボイラーは、そ
の設備定格出力に対して、およそ 25~100%の出力で運転が可能であるが熱需要がこの
範囲外の小さな負荷しかない場合には、対応できないという可能性がある。)また、想定
している熱源設備規模が大きく導入コストが高額になることが予想され、経済的に負担
が大きく現実的に熱供給は困難である。
したがって、効率的かつ経済的な熱供給を実現するには、各エリアの中でさらに熱供
給の導入箇所を限定し、熱需要に見合った設備規模を段階的に導入する方法が考えられ
る。
85
第5章
5.3.4
地域熱供給の導入可能性の検討
チップ燃料必要量の試算(金山地域エリア)
なお、5.2.3 グリーンバレー神室エリアの必要熱源設備規模の検討と同様に、必要熱
源設備規模を試算する際の複数施設の熱需要同時負荷率を 80%と設定した。
図表 5-12 で設定した各エリアにおいてチップ燃料必要量を試算した。
図表 5-21
金山地域エリアにおける熱供給の際のチップ必要量
該当エリア
熱需要量
(暖房・給湯)
チップ必要量
赤
8,674 GJ/年
1,084 t/年(3,613m3)
緑
5,644 GJ/年
705 t/年(2,350m3)
青
16,130 GJ/年
2,016 t/年(6,720 m3)
赤+緑
14,318 GJ/年
1,790 t/年(5,967 m3)
赤+青
24,804 GJ/年
3,101 t/年(10,337 m3)
緑+青
21,774 GJ/年
2,722 t/年(9,073 m3)
赤+緑+青
30,448 GJ/年
3,806 t/年(12,687m3)
※木質チップ:発熱量 8.0GJ/t、かさ密度 0.3t/m3
最終的に金山地域エリアで地域熱供給を行った場合に、各施設の暖房・給湯における
熱需要は 30,448GJ/年となっている。金山地域エリアで熱供給した際のチップ必要量は
約 3,806t/年(12,687m3/年)と想定できる。
86
第5章
地域熱供給の導入可能性の検討
5.4 金山町における地域熱供給の可能性について
金山町において、高い熱需要が確認できるいずれの地域においても、想定している熱
供給プラントから熱供給の対象となる施設の間には距離があるため、熱供給導管の整備
に対してかなりの経済的負担が強いられることが予想される。そこで実際に熱供給導管
を敷設する場合は、電線や水道管の整備など他のインフラ整備と並行しておこなうこと
で、敷設に発生するコストを抑えることが可能であり、熱供給導管の整備拡大に繋がる
といえる。また同時に、バイオマス導入補助制度と併せて活用することで、初期設備コ
ストを低減化することが重要である。
熱供給をうける利用側の熱利用システムの整備には、熱供給を利用するための関連設
備の変更や導入に経済的負担や時間がかかるため、地域熱供給に向けて事前に入念な導
入計画をたてる必要がある。初期の段階では、熱供給による導入効果の高い施設に対し
て熱利用システムの変更や導入を優先的に推進していく必要があり、熱需要密度と導管
距離の関係を考慮しつつ、段階的に住宅を含めた熱供給になるよう拡大していくことが
効果的である。このように多段階的にベースとなる熱需要の確保を図っていくことで熱
供給を行う際の土台となるシステムの構築を進めることができる。
金山町においては、ハード面の整備の際に発生する経済的負担に見合うものとして、
数軒~数十件規模の小規模の熱供給システムを導入する方が、導入効果が高いと考えら
れる。また、一般住宅においては熱供給に適合した住宅の熱利用システムの変更や導入
を進めると同時に、住民の熱供給システムの導入に対する合意形成が必要となる。その
ため、事前に地域熱供給に関する情報を提供する場として、ワークショップや勉強会な
どを開催し、住民の理解を深めていくことが重要となってくる。
87
第6章
灰の利用方法の検討
第6章
灰の利用方法の検討
6. 灰の利用方法の検討
6.1 チップボイラー運転による灰の発生量
チップボイラーでは、木質資源を燃料とすることから、ボイラーの運転によって必ず木
灰が発生する。前章までの試算結果より、各個別施設への最適規模のチップボイラーを導
入した場合と地域熱供給行った際のチップ必要量から灰の発生量を想定した。なお、灰の
発生割合をチップ重量の 0.5%(岩手県林業技術センターでは重量の 0.2%の発生率)と
想定し、それぞれのケースごとに灰の発生量を試算している。
図表 6-1 チップボイラー導入時の灰の年間発生量(CASE 別)
導入施設
チップボイラー
導入規模
チップ
必要量
灰発生量※
CASE1
ホットハウスカムロ
300kW
1,866m3/年
(560t/年)
2.8t/年
CASE2
ホットハウスカムロ
シェーネスハイム金山
(レストランフォレスト)
360kW
2,150m3/年
(645t/年)
3.3t/年
CASE3
金山中学校
学校給食共同調理場
360kW
864m3/年
(259t/年)
1.3t/年
※灰の発生量:チップ重量の 0.5%と設定
図表 6-2 チップボイラー導入時の灰の年間発生量(地域熱供給)
導入エリア
チップ必要量
灰発生量※
グリーンバレー神室地域エリア
約 3,370m3/年
(約 1,011t/年)
約 5t/年
金山地域エリア
(赤+緑+青エリア)
約 12,687m3/年
(約 3,806t/年)
約 19t/年
88
第6章
灰の利用方法の検討
6.2 灰の活用事例調査
灰を利用する場合に全国各地で様々な利用方法があげられる。灰の利用事例の中でも
ゆうやく
ばいせんざい
一般的に土壌改良材として畑などに散布したり、焼物の釉薬や媒染剤として販売されて
広く利用されている事例が見受けられる。また、他には灰を雪上に散布することで太陽
熱の吸収を促し、融雪促進剤として活用することも期待できる。
図表 6-3
利用方法
灰の利用方法事例
利用団体
利
用
例
土壌改良剤
肥料
農業関係者
木灰は化学肥料では補充することが困難な微量元素を含んでいるため、
堆肥と混ぜて使用することによって地力を維持する効果も得られる。
融雪促進剤
農業関係者
降雪地帯で農地に灰や炭などの黒色の粉状物を雪上に散布することで、
太陽熱を集めて雪を溶かす方法が一般に用いられている。
大規模な農地への散布としては、肥料、土壌改良資材と組合せることに
よる散布が効率的である。
山菜の灰汁抜き
山菜加工業者
一般家庭
チップ原料となる木材が化学物質の含まれていない 100%ピュアのもの
であれば、チップボイラーから発生する灰は安全なものといえる。その
ため山菜の灰汁抜きなどの山菜加工に利用することも可能である。外材
や建設廃材等が入ると品質保証ができないため利用できない。
静岡県工業技術センター
静岡県蒟蒻協同組合
静岡県食品産業協会、
株式会社アド二カ
鰹節を製造する際に燻す為に利用する桜、くぬぎ、ならの木などの焼却
灰を、蒟蒻の凝固剤として有効利用している。
具体的には、水酸化カルシウムだけを凝固剤として利用するため、強い
石灰臭があった。しかし、木灰を水あるいは湯につけて抽出した木灰抽
出液はカリウム、ナトリウムを多く含んでいるため、凝固剤として利用
すると、石灰臭が軽減され、良質な製品ができる。
山菜の灰汁抜きと同様に、外材や建設廃材等が入ると品質保証ができな
いため利用できない。
古庄藍染工場
(徳島県)
藍染めの工法として、現代の藍建法である天然藍(薬品建て)と合成藍
の割立てではなく、薬品を全く使用せずに天然藍(すくも)100%+灰汁+
石灰+ふすま+加温により絹の藍染めを行っている。
灰汁の元である木灰については、地元水産会社や雑節等の燻製をこしら
えている企業の木灰を送ってもらい利用している。木灰は本物に拘り藍
建している全国の他の藍染工場でも利用されている。
こんにゃく
蒟蒻の凝固剤
藍染め
しゃじゅくざい
しゃじゅくざい
和紙の煮熟剤
─
和紙の煮熟剤 として木灰やソーダ灰を用い煮る方法がある。
保存性の高い和紙はアルカリとして木灰やソーダ灰を用いた場合に得ら
しゃじゅく
れ、アルカリで煮熟(蒸解)すれば繊維の損傷が少ないものが得られる。
金山町は町の基幹産業として農業があげられ、地域において有機農業に取り組んでい
る農家も多く、木灰の土壌改良剤や堆肥等に活用できる潜在需要は高いと考えられる。
また、発生した木灰を販売する場合には流通経路の整備と製品の質の保証が必要となる
が、土壌改良材の場合は農協などに協力してもらうことで既存流通網が利用できる。ま
た、木灰の品質については成分分析を行い明示することが望ましい。
89
第7章
木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7. 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
第 4 章の木質バイオマスエネルギー導入システムの検討においては、各施設へのチップボ
イラーの導入最適規模の検討を行なった。
本章においては、それぞれの施設へ検討した導入最適規模のチップボイラーの具体的な設
置場所を設定し、チップボイラーを導入した場合(既存の設備を更新しバックアップボイラ
ーとして運用)とチップボイラーを導入せずに既存設備の更新のみを行なった場合について
比較し、事業性の検討を行った。
図表 4-1
チップボイラー導入候補施設
再掲
導入候補施設
導入機器
(既存ボイラー)
CASE1
ホットハウスカムロ
300kW チップ温水ボイラー
(698kW 重油ボイラー)
・暖房
・給湯
・温泉加温
CASE2
ホットハウスカムロ
360kW チップ温水ボイラー
シェーネスハイム金山
(698kW 重油ボイラー)
(レストランフォレストを含む) (258kW 灯油ボイラー)
・暖房
・給湯
・温泉加温
・床暖房
CASE3
金山中学校
学校給食共同調理場
360kW チップ温水ボイラー
(930kW 重油ボイラー)
・暖房
・給湯
・食器洗浄
図表 4-2
条件
低位
発熱量
チップ
kcal/kg
1,900
kWh/kg
2.2
MJ/kg
8.0
見掛け比重
チップ燃料条件
0.3
熱利用方法
再掲
備考
生チップの含水率を WB50%(=DB100%)
※木材:水の重さが 1:1 の状態
岩手林業技術センター研究報告書
90
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
図表 7-1
チップボイラー導入における経済性検討の前提条件
<運転関連>
実稼働時間
ボイラー年間運転時間
稼働率
稼働時間中ボイラーが定格出力で運転している割合、4 章より設定
年間木質燃料必要量
ボイラー出力×稼動時間×稼働率÷木質燃料熱量÷チップボイラー効率 80%
化石燃料削減量
ボイラー出力×稼動時間×稼働率÷化石燃料熱量÷化石燃料ボイラー効率
<費用関連>
既存設備更新費
メーカー見積り・ヒアリングより設定。
既存ボイラーの更新費用内訳:既存ボイラー撤去・搬出・廃棄、新設ボイラー搬
入・設置・試運転
チップボイラー導入費※
メーカー見積り・ヒアリングより設定。
チップボイラー導入費内訳:チップボイラー、機械室・サイロ建屋、既設機械室
への配管繋込、バックアップ制御
設備補助率
化石燃料ボイラー更新費 0%
チップボイラー導入費 50% ←NEDO、農林水産省、環境省などの補助を想定
減価償却費
導入費計×設備補助率×(1-残存価額 10%)÷減価償却年数(定額法)
・償却年数 15 年(ボイラー設備の法定耐用年数)
支払金利
(借入金残高×借入金利の 15 回返済計)/15 年、元金均等方式
・借入金=チップボイラー導入費×設備補助率+既設設備更新費
・元金返済額=借入金/15 年、借入金利 3%
人件費
既存職員がボイラー管理を兼務するものとして 0 円と設定。
バイオマス燃料費
(チップ)
2.0 千円/m3(町内の製紙用チップ取引価格より設定)
バイオマス熱量 8MJ/kg=2.2kWh/kg、かさ密度 0.3=2,400MJ/m3
バイオマス熱量単価=0.84 円/MJ
保守・管理費
1 基:300 千円/年、2 基:500 千円/年、3 基 700 千円/年
消耗品費
200 千円・基/年(15 年使用した場合の平均値)
ばい煙測定費
250 千円・基/年(伝熱面積 10m2 以上のボイラーが対象)
<収入関連>
重油削減費
熱利用量÷重油熱量×重油単価
・重油熱量 37.1MJ/L=10.3kWh/L
・重油単価=65 千円/kL(平成 18 年購入実績より設定)
・重油熱量単価=1.75 円/MJ
灯油削減費
熱利用量÷灯油熱量×灯油単価
・灯油熱量 34.9MJ/L=9.7kWh/L
・灯油単価=72 千円/kL(平成 18 年購入実績より設定)
・灯油熱量単価=2.06 円/MJ
<その他>
CO2 削減量
・重油削減量×重油燃料の CO2 排出係数(重油 2.71kg-CO2/L)
・灯油削減量×灯油燃料の CO2 排出係数(重油 2.52kg-CO2/L)
CO2 排出削減コスト
年間収支÷CO2 削減量
※一次側電気工事は除く、
※燃料供給システムはスクリュー方式(プッシャー方式の場合プラス 1,000 千円程度が別途必要となる)
91
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.1 ホットハウスカムロにおける事業性の検討
第 4 章で設定した CASE1(ホットハウスカムロへ 300kW のチップボイラーを導入)を
想定し、チップボイラー関連設備を設置(同時に既存のボイラーも更新)した場合と既存の
重油ボイラーを更新する場合の事業性について比較検討を行った。
7.1.1 チップボイラー設備設置箇所について【CASE1】
ホットハウスカムロにチップボイラーを導入する際、既存のボイラー機械室は地下に設
けられており、新たにチップボイラーを設置できるスペースの確保が困難なため、外部に
チップボイラーを設置する機械室と燃料サイロを設ける必要がある。そこで、冬季間の除
雪が行われ、チップ供給作業が可能な場所としてホットハウスカムロ脇の空地を熱供給プ
ラントに設定した。なお、熱供給施設から既設の機械室までの繋ぎ込み配管距離は 40m と
なる。
図表 7-2 ホットハウスカムロにおける熱供給プラント配置図
92
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
既存システムとチップボイラー導入時の事業性比較結果【CASE1】
7.1.2
チップボイラーを導入(同時に既存のボイラーも更新)した場合と重油ボイラーを更新
した場合の事業性についての比較検討を行った。
図表 7-3
チップボイラー導入時と既存ボイラー更新時の年間費用比較
項目
単位
チップボイラー300kW
+バックアップ 698kW
重油ボイラー698kW
(更新)
千円
26,000
-
機器搬入・据付
千円
2,000
-
機械室配管・煙突
千円
4,000
-
貯湯タンク
千円
0
-
二次側電気
千円
2,000
-
保温工事
千円
1,500
-
既設配管繋ぎ込み
千円
6,000
-
試運転
千円
500
-
バックアップ制御
千円
500
-
諸経費
千円
7,000
-
機械室・サイロ建築費
千円
20,000
-
千円
69,500
-
チップボイラー導入費(補助活用 50%)
千円
34,750
-
化石燃料ボイラー導入費
千円
9,000
9,000
初期負担費
千円
43,750
9,000
減価償却費(15 年)
千円
2,625
540
支払金利
千円
700
144
重油購入費
千円
539
7,449
バイオマス燃料費(※2)
千円
3,783
0
保守管理費
千円
500
300
人件費
千円
0
0
ばい煙測定費
千円
250
0
消耗部品費
千円
400
200
年間費用合計
千円
8,797
8,633
チップボイラー導入効果
千円
-164
─
CO2 年間排出削減量
t-CO2
288
─
チップボイラー導入費(※ )
1
チップボイラー本体
〈費用〉
※1 チップボイラーの燃料供給装置をプッシャー方式にした場合、別途 1,000 千円程度の負担が必要となる。
※2 重油 65 千円/kL(1.75 円/MJ)、チップ 2.0 千円/m3(0.84 円/MJ)
93
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
比較の結果、初期事業費では補助金を利用しても初期負担額はチップボイラーを導入し
た場合の方が高くなっている。しかし、チップボイラーを導入する場合、チップ燃料を使
用することで重油燃料使用分の費用削減効果が大きく、年間収支は既存ボイラーの更新す
る場合と比較して赤字となるものの、その差は 17 万円弱と小さくなっている。そのため、
今後の燃料価格の変動次第ではチップボイラーの導入が有利になることも考えられる。
(1) チップ価格変動が年間費用に及ぼす影響【CASE1】
ここでは、チップ価格が変動することを想定し、年間費用に与える影響を試算した。
図表 7-4 チップ価格と年間費用の関係【CASE1】
(チップボイラー設備減価償却 15 年時)
チップ価格
(熱量単価)
チップボイラー導入
年間負担コスト
既存ボイラー
更新時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
1.8 千円/m3
(0.75 円/MJ)
8,418 千円
215 千円
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
8,797 千円
-164 千円
8,633 千円
2.2 千円/m3
(0.92 円/MJ)
9,175 千円
-542 千円
2.4 千円/m3
(1.00 円/MJ)
9,553 千円
-920 千円
チップの採算
分岐価格※
1.9 千円/m3
(0.79 円/MJ)
※重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)で既設ボイラー更新時の年間費用とチップボイラー導入時の年間費用が等
価になるチップ価格
重油価格が平成 18 年の購入実績価格である 65 円/L として考えた場合、チップ価格は
1.9 千円/m3(0.79 円/MJ)以下で調達可能であれば、二酸化炭素(CO2)削減効果を得る
ことができ、経済的にもメリットが得られるという結果になっている(図表 7-4)。
94
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
(2) 重油価格の変動が年間費用に及ぼす影響【CASE1】
チップ価格を 2 千円/m3 時に重油価格が変化した場合のチップの採算分岐価格について
図表 7-5 に示す。
図表 7-5
重油とチップの採算分岐価格の推移【CASE1】(チップボイラー設備減価償却 15 年時)
重油価格
(重油熱量単価)
チップボイラー導入時
年間負担コスト
既存ボイラー更新
時年間コスト
55 円/L(1.48 円/MJ)
8,192 千円/年
7,487 千円/年
-1,227 千円/年
60 円/L(1.62 円/MJ)
8,755 千円/年
8,060 千円/年
-695 千円/年
65 円/L(1.75 円/MJ)
8,797 千円/年
8,633 千円/年
-164 千円/年
70 円/L(1.89 円/MJ)
8,838 千円/年
9,206 千円/年
368 千円/年
80 円/L(2.16 円/MJ)
8,921 千円/年
10,352 千円/年
1,431 千円/年
90 円/L(2.43 円/MJ)
9,004 千円/年
11,498 千円/年
2,494 千円/年
100 円/L
(2.70 円/MJ)
9,087 千円/年
12,644 千円/年
3,557 千円/年
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算分岐価格
(採算分岐熱量単価)
1.35 千円/m3
(0.56 円/MJ)
1.60 千円/m3
(0.67 円/MJ)
1.90 千円/m3
(0.79 円/MJ)
2.15 千円/m3
(0.90 円/MJ)
2.70 千円/m3
(1.13 円/MJ)
3.30 千円/m3
(1.38 円/MJ)
3.85 千円/m3
(1.60 円/MJ)
※チップ熱量 2,400MJ/m3 の場合
チップの採算分岐熱量単価(円/MJ)
1.80
4.00
1.60
3.50
1.40
3.00
1.20
2.50
1.00
2.00
0.80
1.50
0.60
1.00
0.40
0.50
0.20
-
チップの採算分岐熱量単価(円/MJ)
チップ採算分岐価格(千円/m3)
チップの採算分岐価格(千円/m3)
4.50
-
55円/L
60円/L
65円/L
70円/L
80円/L
90円/L
100円/L
重油価格(円/リットル)
現状の重油価格 65 円ではチップの採算分岐価格は 1.9 千円/m3 であるが、今後さらに
重油価格が 70 円/L(重油熱量単価 1.89 円/MJ)まで上昇した場合、チップの採算分岐価
格は 2.15 千円/m3 となる。また、このときのチップ熱量単価は 1m3 当りのチップ含水率
が WB50%、熱量 2,400MJ/m3 とすると 0.9 円/MJ となる。重油価格が上昇するほどチッ
プの採算分岐価格も上昇するため、林地残材などの調達コストのかかる燃料が使える可能
性が増加する。逆に、重油価格が 60 円/L(1.62 円/MJ)と現状より下落した場合、チッ
プの価格は 1.6 千円/m3(熱量単価 0.67 円/MJ)まで下がらないと経済的なメリットを得
ることはできない。
95
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
(3) チップボイラー設備の償却年数を 20 年とした場合【CASE1】
チップボイラーは海外では 20~30 年以上使用されているものもみられ、化石燃料ボイ
ラーより長寿命であるといわれている。これは化石燃料に含まれる硫黄分が木質燃料には
殆んど含まれないため、機器への悪影響が少ないことやチップボイラーは瞬間的な着火が
不可能で、燃焼室内の急激な温度変化がないために炉内を傷めにくいためである。
そこでチップボイラーの設備耐用年数を 20 年[減価償却年数 20 年(化石燃料ボイラー
は 15 年)]と考え、既存ボイラー更新と比較した場合の試算結果を示す(図表 7-6、図表
7-7)。減価償却費が低減することにより、チップの採算分岐価格は 2.1 千円/m3 と、減価
償却年数 15 年時より有利になっている。
図表 7-6 チップ価格と年間費用の関係【CASE1】
(チップボイラー設備減価償却 20 年時)
チップ価格
(熱量単価)
チップボイラー
導入時年間コスト
既存ボイラー
更新時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算
分岐価格※
1.8 千円/m3
(0.75 円/MJ)
7,897 千円
736 千円
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
8,275 千円
358 千円
8,633 千円
2.2 千円/m3
(0.92 円/MJ)
8,654 千円
-21 千円
2.4 千円/m3
(1.00 円/MJ)
9,032 千円
-399 千円
2.15 千円/m3
(0.90 円/MJ)
※重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)で既設ボイラー更新時の年間費用とチップボイラー導入時の年間費用が等
価になるチップ価格
図表 7-7 重油とチップの採算分岐価格の推移【CASE1】(チップボイラー設備減価償却 20 年時)
重油価格
(重油熱量単価)
チップボイラー導入
時年間負担コスト
55 円/L(1.48 円/MJ)
8,192 千円/年
7,487 千円/年
-705 千円/年
60 円/L(1.62 円/MJ)
8,234 千円/年
8,060 千円/年
-174 千円/年
65 円/L(1.75 円/MJ)
8,275 千円/年
8,633 千円/年
358 千円/年
70 円/L(1.89 円/MJ)
8,317 千円/年
9,206 千円/年
889 千円/年
80 円/L(2.16 円/MJ)
8,400 千円/年
10,352 千円/年
1,952 千円/年
90 円/L(2.43 円/MJ)
8,483 千円/年
11,498 千円/年
3,015 千円/年
100 円/L(2.70 円/MJ)
8,565 千円/年
12,644 千円/年
4,079 千円/年
既存ボイラー更新
時年間コスト
96
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算分岐価格
(採算分岐熱量単価)
1.60 千円/m3
(0.67 円/MJ)
1.90 千円/m3
(0.79 円/MJ)
2.15 千円/m3
(0.90 円/MJ)
2.45 千円/m3
(1.02 円/MJ)
3.00 千円/m3
(1.25 円/MJ)
3.55 千円/m3
(1.48 円/MJ)
4.15 千円/m3
(1.73 円/MJ)
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.2
ホットハウスカムロ+シェーネスハイム金山における事業性の検討
CASE2(ホットハウスカムロに加えてシェーネスハイム金山への熱供給)を想定し、チ
ップボイラーを導入(同時に既存のボイラーも更新)した場合と既存の重油ボイラーを更新
する場合の事業性の比較検討を行った。
7.2.1 チップボイラー設備設置箇所について【CASE2】
チップボイラーの設置場所は、ホットハウスカムロ単体へ熱供給と同様、シェーネスハ
イム金山の既存ボイラー機械室が地下にあるため、新たにチップボイラーを設置すること
が困難であり、外部に木質チップボイラーを設置する機械室と燃料サイロを設ける必要が
ある。設置場所としては【CASE1】と同様に、冬季間の除雪が行われ、チップ供給作業が
可能な場所としてホットハウスカムロ脇の空地を熱供給プラントに設定した。
なお、チップボイラーによる熱供給施設からホットハウスカムロ及びシェーネスハイム
金山の機械室までの繋ぎ込み総配管距離は 100m となる。
図表 7-8
ホットハウスカムロ+シェーネスハイム金山における熱供給プラント配置図
97
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.2.2 既存システムとチップボイラー導入時の事業性比較【CASE2】
CASE2 においてチップボイラーを導入した場合と既存の化石燃料ボイラーを更新した
場合の事業性について比較検討を行なった。
図表 7-9
チップボイラー導入時と既存ボイラー更新時の年間費用比較
項目
単位
チップボイラー360kW
+バックアップ計 956kW
重油ボイラー698kW
灯油ボイラー258kW(更新)
千円
28,000
-
機器搬入・据付
千円
2,000
-
機械室配管・煙突
千円
6,000
-
貯湯タンク
千円
0
-
二次側電気
千円
2,000
-
保温工事
千円
2,000
-
既設配管繋ぎ込み
千円
15,000
-
試運転
千円
500
-
バックアップ制御
千円
500
-
諸経費
千円
9,000
-
機械室・サイロ建築費
千円
20,000
-
千円
85,000
-
チップボイラー導入費(補助活用 50%)
千円
42,500
-
化石燃料ボイラー導入費
千円
14,895
14,895
初期負担費
千円
57,395
14,895
減価償却費(15 年)
千円
3,444
894
支払金利
千円
918
238
重油購入費
千円
447
7,449
灯油購入費
千円
477
1,670
バイオマス燃料費(※2)
千円
4,300
0
保守管理費
千円
700
500
人件費
千円
0
0
ばい煙測定費
千円
250
0
消耗部品費
千円
600
400
年間費用合計
千円
11,136
11,151
チップボイラー導入効果
千円
15
─
CO2 年間排出削減量
t-CO2
334
─
チップボイラー導入費(※ )
1
チップボイラー本体
〈費用〉
※1 チップボイラーの燃料供給装置をプッシャー方式にした場合、別途 1,000 千円程度の負担が必要となる。
※2 重油 65 千円/kL(1.75 円/MJ)
、チップ 2.0 千円/m3(0.84 円/MJ)
98
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
【CASE2】では、
【CASE1】よりも熱供給の対象を増やしたため、チップボイラー規模
及び配管距離が増加している。また、【CASE1】に比べてチップボイラーの初期導入費用
も増加している。しかし、チップボイラーの導入と既存のボイラー更新と比較すると、年
間費用はほぼ同等という結果になった。これは、【CASE1】と比べて経済的に有利な結果
となっている。
(1) チップ価格の変動が年間費用に及ぼす影響【CASE2】
ここではチップ価格が変化することを想定し年間費用に与える影響を試算した。
図表 7-10
チップ価格と年間費用の関係【CASE2】
(チップボイラー設備減価償却 15 年時)
チップ価格
(熱量単価)
チップボイラー導入
年間負担コスト
既存ボイラー
更新時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
1.8 千円/m3
(0.75 円/MJ)
10,706 千円
445 千円
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
11,136 千円
15 千円
11,151 千円
2.2 千円/m3
(0.92 円/MJ)
11,566 千円
-415 千円
2.4 千円/m3
(1.00 円/MJ)
11,996 千円
-845 千円
チップの採算
分岐価格※
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
※重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)で既設ボイラー更新時の年間費用とチップボイラー導入時の年間費用が等
価になるチップ価格
重油価格が平成 18 年の購入実績価格である 65 円/L として考えた場合、チップ価格は
2.0 千円/m3(0.84 円/MJ)以下で調達可能であれば、二酸化炭素(CO2)削減効果を得
ることができて、経済的にもメリットが得られるという結果になっている。
【CASE1】で、重油価格が 65 円/L 時のチップの採算分岐価格は 1.9 千円/m3 であっ
たのが、
【CASE2】ではチップの採算分岐価格は 2.0 千円/m3 と増加している。これは、
燃料価格変動の許容度が少しであるが大きくなることを意味している。
99
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
(2) 重油価格の変動が年間費用に及ぼす影響【CASE2】
重油価格が変動した場合のチップの採算分岐価格について図表 7-11 に示す。
図表 7-11
重油とチップの採算分岐価格の推移【CASE2】(チップボイラー設備減価償却 15 年時)
重油価格
(重油熱量単価)
チップボイラー導入
時年間負担コスト
55 円/L(1.48 円/MJ)
11,067 千円/年
10,005 千円/年
-1,062 千円/年
60 円/L(1.62 円/MJ)
11,101 千円/年
10,578 千円/年
-523 千円/年
65 円/L(1.75 円/MJ)
11,136 千円/年
11,151 千円/年
15 千円/年
70 円/L(1.89 円/MJ)
11,170 千円/年
11,724 千円/年
554 千円/年
80 円/L(2.16 円/MJ)
11,239 千円/年
12,870 千円/年
1,631 千円/年
90 円/L(2.43 円/MJ)
11,308 千円/年
14,016 千円/年
2,709 千円/年
100 円/L(2.70 円/MJ)
11,376 千円/年
15,162 千円/年
3,786 千円/年
既存ボイラー更新
時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算分岐価格
(採算分岐熱量単価)
1.50 千円/m3
(0.63 円/MJ)
1.75 千円/m3
(0.73 円/MJ)
2.00 千円/m3
(0.83 円/MJ)
2.25 千円/m3
(0.94 円/MJ)
2.75 千円/m3
(1.15 円/MJ)
3.25 千円/m3
(1.35 円/MJ)
3.75 千円/m3
(1.56 円/MJ)
※チップ熱量 2,400MJ/m3 の場合
採算分岐チップ熱量単価(円/MJ)
4.50
1.80
4.00
1.60
3.50
1.40
3.00
1.20
2.50
1.00
2.00
0.80
1.50
0.60
1.00
0.40
0.50
0.20
-
チップの採算分岐熱量単価(円/MJ)
チップ採算分岐価格(千円/m3)
採算分岐チップ単価(千円/m3)
55円/L
60円/L
65円/L
70円/L
80円/L
90円/L
100円/L
重油価格(円/リットル)
現状の重油価格 65 円では、チップの採算分岐価格は 2.0 千円/m3 であるが、重油価格
が上昇し 70 円/L(重油熱量単価 1.89 円/MJ)になった場合、チップの採算分岐価格は
2.25 千円/m3 となる。このときのチップ熱量単価は 1m3 当りのチップ含水率が WB50%、
熱量 2,400MJ/m3 とすると 0.94 円/MJ となる。
100
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
(3) チップボイラー設備の償却年数を 20 年とした場合【CASE2】
チップボイラー設備の耐用年数を法定年数ではなく、実耐用年数の 20 年で考えた場合
の試算結果を示す。重油の価格が現状の 65 円/L のケースでは、チップ価格が 2.3 千円/m3
以下であれば、既存のボイラー更新時に比べて経済的なメリットが得られ、減価償却年数
が 15 年時より 0.3 千円/m3 上昇している(図表 7-12)。また、重油価格が変動した場合
の採算分岐となるチップ価格も同様に上昇している(図表 7-13)。
図表 7-12 チップ価格と年間費用の関係【CASE2】
(チップボイラー設備減価償却 20 年時)
チップ価格
(熱量単価)
チップボイラー
導入時年間コスト
既存ボイラー
更新時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算
分岐価格※
1.8 千円/m3
(0.75 円/MJ)
10,068 千円
1,083 千円
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
10,498 千円
653 千円
11,151 千円
2.2 千円/m3
(0.92 円/MJ)
10,928 千円
223 千円
2.4 千円/m3
(1.00 円/MJ)
11,358 千円
-207 千円
2.3 千円/m3
(0.96 円/MJ)
※重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)で既設ボイラー更新時の年間費用とチップボイラー導入時の年間費用が等
価になるチップ価格
図表 7-13 重油とチップの採算分岐価格の推移【CASE2】(チップボイラー設備減価償却 20 年時)
重油価格
(重油熱量単価)
チップボイラー導入
時年間負担コスト
既存ボイラー更新
時年間コスト
55 円/L(1.48 円/MJ)
10,430 千円/年
10,005 千円/年
-424 千円/年
60 円/L(1.62 円/MJ)
10,464 千円/年
10,578 千円/年
114 千円/年
65 円/L(1.75 円/MJ)
10,498 千円/年
11,151 千円/年
653 千円/年
70 円/L(1.89 円/MJ)
10,533 千円/年
11,724 千円/年
1,191 千円/年
80 円/L(2.16 円/MJ)
10,601 千円/年
12,870 千円/年
2,269 千円/年
90 円/L(2.43 円/MJ)
10,670 千円/年
14,016 千円/年
3,346 千円/年
100 円/L(2.70 円/MJ)
10,739 千円/年
15,162 千円/年
4,423 千円/年
101
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算分岐価格
(採算分岐熱量単価)
1.80 千円/m3
(0.75 円/MJ)
2.05 千円/m3
(0.85 円/MJ)
2.30 千円/m3
(0.96 円/MJ)
2.55 千円/m3
(1.06 円/MJ)
3.05 千円/m3
(1.27 円/MJ)
3.55 千円/m3
(1.48 円/MJ)
4.05 千円/m3
(1.69 円/MJ)
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.3 金山中学校+学校給食共同調理場における事業性の検討
CASE3(金山中学校+学校給食共同調理場への熱供給)を行うことを想定し、チップボ
イラー関連設備を設置した場合と既存の重油ボイラーを更新する場合について比較検討を
行った。
7.3.1 チップボイラー設備設置箇所について【CASE3】
チップボイラー設備設置場所の条件として、燃料供給のアクセスが良いことや金山中学
校機械室から離れていないことがあげられる。そこで、学校給食共同調理場の移設の可能
性も考慮して金山中学校内ランチルーム脇の空地を想定した。なお、熱供給施設より既存
機械室への繋ぎ込み配管距離は 25m と想定している。
図表 7-14 金山中学校+学校給食共同調理場における熱供給プラント配置図
102
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.3.2 既存システムとチップボイラー導入時の事業性比較【CASE3】
CASE3 については 360kW のチップボイラーを導入する場合と金山中学校の重油ボイラ
ーを更新する場合の比較を行った。
図表 7-15 チップボイラー導入時と既存ボイラー更新時の年間費用比較
単位
チップボイラー360kW
+バックアップ 930kW
重油ボイラー930kW
(更新)
チップボイラー本体
千円
28,000
-
機器搬入・据付
千円
2,000
-
機械室配管・煙突
千円
4,000
-
貯湯タンク(2m3)
千円
1,500
-
二次側電気
千円
2,000
-
保温工事
千円
1,500
-
既設配管繋ぎ込み
千円
4,000
-
試運転
千円
500
-
バックアップ制御
千円
500
-
諸経費
千円
7,500
-
機械室・サイロ建築費
千円
20,000
-
千円
71,500
-
チップボイラー導入費(補助活用 50%)
千円
35,750
-
化石燃料ボイラー導入費
千円
10,930
10,930
初期負担費
千円
46,680
10,930
減価償却費(15 年)
千円
2,801
656
支払金利
千円
746
174
重油購入費※2
千円
1,676
4,875
バイオマス燃料費
千円
1,728
0
保守管理費
千円
300
300
人件費
千円
0
0
ばい煙測定費
千円
500
250
消耗部品費
千円
400
200
年間費用合計
千円
8,351
6,455
チップボイラー導入効果※3
千円
-1,896※3
─
CO2 年間排出削減量
t-CO2
334
─
項目
チップボイラー導入費
※
1
〈費用〉
※1
※2
※3
チップボイラーの燃料供給装置をプッシャー方式にした場合、別途 1,000 千円程度の負担が必要となる。
給食調理場が移設され暖房・給湯の熱需要もチップボイラーで対応させた場合を想定
導入効果がマイナスは重油ボイラーの更新の方が経済的に有利なことを意味している。
103
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
既存のボイラー更新のみの場合と比べて、チップボイラーの導入した場合は年間費用が
189 万円近く増加することになる。これは【CASE1】や【CASE2】とは異なり、施設の
用途上、高い熱需要は見込むことは困難であり、チップボイラーの稼働率を確保できない
ことが影響している。
(1) チップ価格の変動が年間費用に及ぼす影響【CASE3】
ここではチップ価格が変化することを想定し年間費用に与える影響を試算した。
図表 7-16
チップ価格と年間費用の関係【CASE3】
(チップボイラー設備減価償却 15 年時)
チップ価格
(熱量単価)
チップボイラー導入
年間負担コスト
既存ボイラー
更新時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
1.8 千円/m3
(0.75 円/MJ)
8,178 千円
-1,723 千円
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
8,351 千円
-1,896 千円
6,455 千円
-0.2 千円/m3
2.2
(0.92 円/MJ)
8,524 千円
-2,069 千円
2.4 千円/m3
(1.00 円/MJ)
8,697 千円
-2,242 千円
千円/m3
チップの採算
分岐価格※
※重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)で既設ボイラー更新時の年間費用とチップボイラー導入時の年間費用が等
価になるチップ価格。マイナスの場合は逆有償(産廃処理業のように処理料をとる状態)が必要
重油価格が平成 18 年の購入実績価格である 65 円/L として考えた場合、経済的にメリ
ットを得るためには、チップ価格が-0.2 千円/m3 以下となり、チップ燃料を逆有償で入
手しなければならない。
これは、産業廃棄物処理業(ボイラーは廃棄物焼却炉扱い)を営むことを意味している
ため、現実的に経済性を求めることは非常に困難であると考えられる。
104
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
(2) 重油価格の変動が年間費用に及ぼす影響【CASE3】
重油価格の変動が与えるチップ採算分岐価格への影響を図表 7-17 に示す。
図表 7-17
重油とチップの採算分岐価格の推移【CASE3】
(チップボイラー設備減価償却 15 年時)
重油価格
(重油熱量単価)
チップボイラー導入
時年間負担コスト
55 円/L(1.48 円/MJ)
8,093 千円/年
5,705 千円/年
-2,388 千円/年
60 円/L(1.62 円/MJ)
8,222 千円/年
6,080 千円/年
-2,142 千円/年
65 円/L(1.75 円/MJ)
8,351 千円/年
6,455 千円/年
-1,896 千円/年
70 円/L(1.89 円/MJ)
8,480 千円/年
6,830 千円/年
-1,650 千円/年
80 円/L(2.16 円/MJ)
8,738 千円/年
7,580 千円/年
-1,158 千円/年
90 円/L(2.43 円/MJ)
8,996 千円/年
8,330 千円/年
-666 千円/年
100 円/L(2.70 円/MJ)
9,080 千円/年
9254 千円/年
-174 千円/年
既存ボイラー更新
時年間コスト
チップの採算分岐価格
(採算分岐熱量単価)
チップボイラー
導入経済効果
-0.80 千円/m3
(-0.33 円/MJ)
-0.50 千円/m3
(-0.21 円/MJ)
-0.20 千円/m3
(0.08 円/MJ)
0.05 千円/m3
(0.02 円/MJ)
0.65 千円/m3
(0.27 円/MJ)
1.20 千円/m3
(0.50 円/MJ)
1.75 千円/m3
(0.73 円/MJ)
※チップ熱量 2,400MJ/m3 の場合
チップの採算分岐熱量単価(円/MJ)
0.80
1.50
0.60
1.00
0.40
0.50
0.20
-
-0.20
-0.50
-0.40
-1.00
55円/L
60円/L
65円/L
70円/L
80円/L
90円/L
チップの採算分岐熱量単価(円/MJ)
チップ採算分岐価格(千円/m3)
チップの採算分岐価格(千円/m3)
2.00
100円/L
重油価格(円/リットル)
現状の重油価格 65 円では、チップの採算分岐価格は-0.2 千円/m3 と非常に厳しい状況
である。たとえ、重油価格が 70 円/L(重油熱量単価 1.89 円/MJ)に上昇した場合でも、
チップの採算分岐価格は 0.05 千円/m3 と経済的な効果得るためには、ほぼ無償で燃料を
手入することが求められる。重油価格が 80 円/L になれば、チップの採算分岐価格も 0.65
円/m3(チップ熱量単価 0.27 円/MJ)とチップを購入しても経済的にメリットがでるよ
うになるが、現状では実際にこの価格で燃料をを入手することは困難であると考えられ
る。
105
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
(3) チップボイラー設備の償却年数を 20 年とした場合【CASE3】
チップボイラー設備の耐用年数を法定年数ではなく、実耐用年数の 20 年で考えた場合
の試算結果を示す。重油の価格が現状の 65 円/L のケースでは、チップ価格が 0.4 千円/m3
以下であれば、既存のボイラー更新時に比べて経済的なメリットが得られ、減価償却年数
が 15 年時より 0.6 千円/m3 上昇している(図表 7-18)。
また、重油価格が変動した場合の、採算分岐となるチップ価格も同様に上昇している(図
表 7-19)。
図表 7-18 チップ価格と年間費用の関係【CASE3】
(チップボイラー設備減価償却 20 年時)
チップ価格
(熱量単価)
チップボイラー
導入時年間コスト
既存ボイラー
更新時年間コスト
チップボイラー
導入経済効果
1.8 千円/m3
(0.75 円/MJ)
7,642 千円
-1,187 千円
2.0 千円/m3
(0.84 円/MJ)
7,815 千円
-1,360 千円
6,455 千円
2.2 千円/m3
(0.92 円/MJ)
7,988 千円
-1,533 千円
2.4 千円/m3
(1.00 円/MJ)
8,160 千円
-1,706 千円
チップの採算
分岐価格※
0.4 千円/m3
(0.17 円/MJ)
※重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)で既設ボイラー更新時の年間費用とチップボイラー導入時の年間費用が等
価になるチップ価格
図表 7-19 重油とチップの採算分岐価格の推移【CASE3】(チップボイラー設備減価償却 20 年時)
重油価格
(重油熱量単価)
チップボイラー導入
時年間負担コスト
既存ボイラー更新
時年間コスト
55 円/L(1.48 円/MJ)
7,557 千円/年
5,705 千円/年
-1,852 千円/年
60 円/L(1.62 円/MJ)
7,686 千円/年
6,080 千円/年
-1,606 千円/年
65 円/L(1.75 円/MJ)
7,815 千円/年
6,455 千円/年
-1,360 千円/年
70 円/L(1.89 円/MJ)
7,944 千円/年
6,830 千円/年
-1,114 千円/年
80 円/L(2.16 円/MJ)
8,202 千円/年
7,580 千円/年
-622 千円/年
90 円/L(2.43 円/MJ)
8,460 千円/年
8,330 千円/年
-130 千円/年
100 円/L(2.70 円/MJ)
8,717 千円/年
9,080 千円/年
362 千円/年
※チップ熱量 2,400MJ/m3 の場合
106
チップボイラー
導入経済効果
チップの採算分岐価格
(採算分岐熱量単価)
-0.15 千円/m3
(-0.06 円/MJ)
0.10 千円/m3
(0.04 円/MJ)
0.40 千円/m3
(0.17 円/MJ)
0.70 千円/m3
(0.29 円/MJ)
1.25 千円/m3
(0.52 円/MJ)
1.80 千円/m3
(0.75 円/MJ)
2.40 千円/m3
(1.00 円/MJ)
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.4 木質バイオマスボイラー導入の事業性のまとめ
それぞれのケースのチップボイラー導入による事業性の検討のまとめを図表 7-20 に示す。
図表 7-20 チップボイラー導入における事業性のまとめ
【CASE1】
【CASE2】
【CASE3】
ホットハウスカムロ
ホットハウスカムロ
シェーネスハイム金山
(レストランフォレスト)
金山中学校
学校給食共同調理場
チップボイラー導入対象
チップボイラー導入規模
チップボイラー稼働率
チップボイラー及び
バックアップボイラー導入費
(補助無時)
チップ必要量
重油削減量(灯油削減量)
既存ボイラー更新との比較時※
チップボイラー導入のメリット
重油価格 65 円/L 時
チップ採算分岐価格
二酸化炭素排出削減量
※
※
300kW
360 kW
360 kW
45%
36%
48%
78,500 千円
99,895 千円
82,430 千円
2,150m3
(645t)
864m3
(259t)
1,866m3
(560t)
106,311 L/年
-164 千円(15 年)
358 千円(20 年)
1.9 千円/m3(15 年)
2.15 千円/m3(20 年)
288 t-CO2
107,728 L/年
(11,156 L/年)
44,427 L/年
15 千円(15 年)
653 千円(20 年)
-1,896 千円(15 年)
-1,360 千円(20 年)
2.0 千円/m3(15 年)
2.3 千円/m3(20 年)
-0.2 千円/m3(15 年)
0.4 千円/m3(20 年)
334 t-CO2
133 t-CO2
重油価格 65 円/L(1.75 円/MJ)時、マイナスは既存ボイラーを更新した方が有利を意味する。
チップボイラーの燃料供給装置をプッシャー方式にした場合、プラス 1,000 千円程度負担が必要となる。
【CASE1】と【CASE2】では、燃料価格を重油 65 円/L、チップ 2 千円/m3 と設定した場
合、経済的には既存のボイラーを更新するだけのケースと年間費用はほぼ同等になるとい
3
う試算結果になった。このときに必要な木質チップの量は 1,866m3~2,150m(560t~645t)
程度となる。これは製材所で生産される現状の製紙用チップ供給量からみると十分にまか
なえる量であり、課題となるのは燃料コストであると考えられる。
今後の化石燃料価格が高騰により、バイオマスの採算分岐点が上昇することも考えられ
るが、【CASE1】と【CASE2】のチップ採算分岐価格は減価償却年数を 15 年とみた場合、
1.9 千円~2.0 千円/m3(0.79~0.84 円/MJ)であり、現状で有望と考えられる製紙用チップ
のみの利用で必要となるチップ量・コストとも条件をクリアできるものと考えられる。ま
た、減価償却年数を 20 年で考えると、条件はさらに有利になっている。
107
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
また、
【CASE3】については、既存のボイラー更新とチップボイラー導入を比較して、チ
ップボイラー設備の減価償却年数を 20 年としても、経済的なメリットを求めることは非常
に困難であり、経済性のみの観点でみると【CASE1】と【CASE2】の 2 つのケースに比べ
導入の優先順位は低いといえる。ただし、金山中学校へのチップボイラーを導入すること
は経済的なメリットとは別に、二酸化炭素削減効果とともに、学校に導入することで木質
バイオマスを利用が実際に目に見え体験できるといった環境学習効果も得られるため、経
済的な観点からのみではなく他の視点からも評価されることが期待される。
なお、本試算では、燃料供給システムを一般的なスクリュータイプを想定したが、多形
状燃料に対応できるプッシャータイプでは導入費がプラス 1,000 千円程度必要になり、初
期費用は増加するものと考えられる。ただし、ランニングコストから見ると、樹皮などバ
イオマス単価の低い燃料を混ぜることにより、バイオマス燃料単価が下げることが可能で
ある。
108
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.5 木質バイオマスエネルギー導入の課題
金山町における木質バイオマスエネルギーの導入に関する個別施設へのチップボイラー
の導入から、周辺地域を含めた地域熱供給に至るまでにいくつかの課題が挙げられる。
7.5.1 個別施設への木質バイオマスエネルギー導入の課題
個別施設への木質バイオマスボイラーを導入するための課題を図表 7-21 に示す。
図表 7-21
個別施設への木質バイオマスエネルギー導入の課題
課題項目
内容・対応
チップ燃料を利用したボイラーは、国内においても運転実績がたまりつつ
利用可能な木質燃 ある。町内ではチップの他にバークやブリケットの利用可能性も考えられ
料とボイラー機種 るが、これらの木質燃料はボイラー機種によって対応の有無、使用条件が
の精査
異なってくる。したがって、これらの条件に合ったボイラー機種を選定(実
際の燃焼試験)する必要がある。
木質バイオマス燃料候補として、最も現実的なものは製材所で生産される
製紙用チップと考えられる。しかし、製紙用チップは、既に燃料利用以外
の需要があり、今後需要過多によるチップの争奪戦となる可能性がありう
る(チップ価格次第で利用は可能)
。一方で林地残材や建築廃材は未利用の
燃料供給体制の確 まま林地に残されているため、これらの木質資源を燃料として活用するシ
立
ステムの構築が望まれる。これらの未利用材の活用システムを構築するに
は、素材生産者、森林組合、製材業者、木材加工事業者、工務店が各個に
行動するのではなく、各事業者が総括的に動く必要がある。例えば、協同
組合や有限責任事業組合(LLP)を立上げ、1 つの事業体として木質バイオ
マス燃料の効率的な供給を行うことなど考えられる。
本事業で木質バイオマスボイラーの導入を検討したホットハウスカムロや
シェーネスハイム金山などは、町の観光施設であり、安定した設備の稼動
ボイラーの管理の が求められる。また、ボイラーの燃料受け入れや灰の掃除などの日常管理
軽減化の検討
が手間となって本業に支障をきたすことがあってはならない。したがって、
燃料サイロの容量や灰受けタンクを大きくするなどボイラー管理に対する
負担を軽減させることが必要となる。
バイオマスエネルギーの導入に際し、初期の設備費が高額なものとなり、
導入実施への足かせとなっている。現在、バイオマス関連施設の導入には
初期導入費の負担
各省庁からの補助制度が存在しているため、導入条件にあった最も有利な
制度を利用して、初期導入費の負担を減らすことで木質バイオマスエネル
ギーの導入を図っていくことが望まれる。
109
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.5.2
地域熱供給の実現に向けての課題
木質バイオマスエネルギーの導入方法としては、いきなり大規模な地域熱供給を行なう
ことは、技術的・経済的にも現実的ではない。したがって、個別施設への導入課題をクリ
アした上、綿密な計画に基づき徐々に拡大していくことが望ましい。
図表 7-22
地域熱供給の実現に向けての課題
課題項目
内容・対応
地域熱供給を行なう場合には海外と異なり、熱供給導管などのインフラ
整備を一から行う必要があるため、そのコストが大きな負担となる。化
熱供給対象
範囲の決定
石燃料を用いた国内の地域熱供給事例では、オフィスビルの一角や駅
舎、集合住宅といった熱需要密度の高いエリア限定で行われている。金
山町においても、熱需要の高い地域に限定し、効率的な熱供給を行なう
ことで地域熱供給が可能となる。したがって、初期段階での計画が非常
に重要となる。
地域単位での熱供給は範囲によっては、多量のバイオマス燃料が毎年必
要となる。そのため、ボイラーの導入規模(バイオマス必要量)と安定
木質燃料の
的なバイオマス燃料の供給可能量が均衡していなければならない。この
安定的確保
ため、地域熱供給の計画段階から燃料供給事業者に参画してもらい、長
期的な期間での燃料供給の供給可能量、オペレーションなどの精査を行
う必要がある。
地域熱供給を見
越した施設設計
地域熱供給によって、既存の住宅や小規模施設の熱利用形態を変更する
ことは短期的には非常に困難である。そこで、予め熱供給を行なうこと
を想定した(温冷水を利用できる)設計を行うことが必要となる。
地域熱供給プラント建設コスト以外に、熱供給導管の敷設コストの負担
インフラの整備
が予想される。導管敷設時は、他の電線地中化や水道管交換などの工事
と一緒に行なうことで、コスト低減化を図りつつ整備を行うことが望ま
れる。
110
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.6 金山町での木質バイオマスボイラーの導入方策
金山町における木質バイオマスボイラーの導入について、短期的→中期的→長期的な視点
をもとに導入方策を検討した。ここでは、木質バイオマスボイラーの個別施設への導入から
地域熱供給までの拡大を想定している。
7.6.1 グリーンバレー神室エリアでの木質バイオマスボイラーの導入方策
(1) 短期(初期導入:~5 年)
木質バイオマスボイラーの導入効果と現状を鑑みた結果、短期的にみてホットハウスカ
ムロは重油ボイラー設備の更新が間近であり、それに合わせて木質バイオマスボイラーの
導入を図ることが適当と考えられる。さらに、ホットハウスカムロにシェーネスハイム金
山を含めた熱供給【CASE2】が考えられる。この場合、経済的メリットは【CASE1】に
比べて【CASE2】の方が若干有利であるが、木質バイオマスボイラーの稼働率が低くな
るというデメリットがある。また、シェーネスハイム金山は客室の既存の冷暖房熱源設備
(ガスヒートポンプエアコン)の老朽化のための設備更新、または設備変更の可能性もあ
るため、中・長期的な視点で考えるとシェーネスハイム金山を含めた熱供給は、中期以降
に拡大を図ったほうが効果的である。したがって、経済的効果と木質バイオマスボイラー
による効率的な熱供給を考えると、初期の木質バイオマスボイラーの導入方法としては、
ホットハウスカムロ単体【CASE1】が考えられる。
図表 7-23
短期
木質バイオマスボイラー初期導入方策(グリーンバレー神室エリア)
ホットハウスカムロ
暖房
給湯
温泉加温
チップボイラー300kW
(2) 中期(第一次拡大方策:~15 年)
ホットハウスカムロへの初期導入の次の段階として、シェーネスハイム金山と森林学
習館、緑地等活用管理センターへの熱供給が考えられる。シェーネスハイム金山では、
館内の冷暖房を行っている冷暖房熱源設備(ガスヒートポンプエアコン)を温水利用の
熱利用システムに変更して、木質バイオマスボイラーによる熱供給を行うことが考えら
れる。また、森林学習館、緑地等活用管理センターにおいても、同様に温水利用の熱利
用システムを導入していくことで、グリーンバレー神室全体を木質バイオマスボイラー
によって熱供給を行うことが可能になる。これにより、グリーンバレー神室を金山町の
木質バイオマス利用における拠点と位置づけられ、二酸化炭素排出削減や環境学習はも
とより多面的な導入効果が期待できる。
111
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
図表 7-24
中期
木質バイオマスボイラー導入方策(グリーンバレー神室エリア)
ホットハウスカムロ
暖房
給湯
温泉加温
チップボイラー300kW
拡大
シェーネスハイム金山
レストランフォレスト
冷暖房
客室給湯
床暖房
森林学習館
緑地等活用総合管理センター
冷暖房
給湯
(3) 長期
チップボイラー
【第一次拡大用】
地域熱供給(第二次拡大方策:第一次拡大以降)
短期・中期に続いて、最終的には周辺の一般住宅や新規の熱需要(地域内消雪・主要
施設)を含めた地域熱供給が考えられる。地域内のなかでも熱需要密度の高いエリアを
抽出し、同時に新規の熱需要の開拓を進め、計画的な熱供給導管の敷設等インフラ整備
と並行して、一般住宅や周辺の主要施設において熱供給に対応した熱利用システムの導
入を推進していくことが地域熱供給の実現へ向けて必要となる。
図表 7-25
長期
木質バイオマスボイラー導入方策(グリーンバレー神室エリア)
ホットハウスカムロ
暖房
給湯
温泉加温
チップボイラー
300kW
シェーネスハイム金山
(レストランフォレスト)
冷暖房
客室給湯
床暖房
森林学習館
緑地等活用総合管理センター
冷暖房
給湯
チップボイラー
【第一次拡大用】
拡大
一般住宅
冷暖房
給湯
チップボイラー
【第二次拡大用】
主要施設
冷暖房
給湯
地域内消雪
112
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.6.2 金山地域エリアにおける木質バイオマスボイラーの導入
(1) 初期導入方策
先の事業性の検討【CASE3】で、経済的に木質バイオマスボイラーの導入が困難と判
断されたが、一方で、学校に木質バイオマスボイラーを導入することは、経済的な観点
のみではなく、木質バイオマスの利用を実際に目で見て体験できるといった環境学習効
果や住民への普及啓発効果といった多方面で評価が期待できる。また、
【CASE3】で想定
した金山中学校+学校給食共同調理場の他に、周辺地域の消雪や熱需要施設を新たに設
置することで、経済的にも木質バイオマスボイラーの導入の可能性が広がっていく。
したがって、金山地域エリアにおける初期の木質バイオマスボイラーの導入方策とし
て、金山中学校と学校給食共同調理場や新規の熱需要施設の併設、周辺地域の消雪を想
定した木質バイオマスボイラー導入が考えられる。
(ただし、他に熱需要密度が高い箇所
や周辺に適地がある場合はこの限りではなく、その規模や導管敷設経路に応じて判断す
る。)また、今後の拡大を想定すると最終的に地域熱供給が考えられるため、初期の木質
バイオマスボイラー導入時には、中・長期的な視点の下で熱供給プラント設置場所、燃
料供給の利便性、地域内の主要施設への距離等を考慮しておく必要がある。
図表 7-26
木質バイオマスボイラー初期導入方策(金山地域エリア)
金山中学校
暖房
給湯
学校給食共同調理場
(金山中学校併設の場合)
暖房
給湯
食器洗浄
施設【新規開拓】
暖房
給湯
チップボイラー
地域内消雪
(2) 拡大方策
初期導入には金山中学校を中心とした木質バイオマスボイラーの導入を想定されるが、
次の段階として、周辺の一般住宅や主要施設、新規の熱需要(地域内消雪・主要施設)
を含めた金山地域エリアにおける地域熱供給が考えられる。
そこで、金山地域エリアへの木質バイオマスエネルギーの導入は、地域内のなかでも
熱需要密度の高いエリアを抽出や新規の熱需要の開拓(町営集合住宅建設時や施設移設
時に地域熱供給を想定した設計にする等)を進め、計画的な熱供給導管の敷設等インフ
ラ整備と並行し、一般住宅や周辺の主要施設において熱供給に対応した熱利用システム
の導入を推進していくことが地域熱供給の実現へ向けて必要となる。
113
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
金山中学校
暖房
給湯
学校給食共同調理場
(金山中学校併設の場合)
暖房
給湯
食器洗浄
施設【新規開拓】
暖房
給湯
チップボイラー
地域内消雪
拡大
一般住宅
主要施設
【新規開拓】
図表 7-27
7.6.3
冷暖房
給湯
チップボイラー
冷暖房
給湯
地域内消雪
【拡大用】
木質バイオマスボイラー導入拡大方策(金山地域エリア)
金山町における木質バイオマスボイラーの導入について
金山町で木質バイオマスボイラーの導入を図る場合、個別施設への熱需要に見合った規
模の木質バイオマスボイラーの導入が望ましい。そこで、初期に導入したケースをベース
に、適宜熱需要の高い施設を抽出して、段階的に木質バイオマスボイラーによる熱供給を
拡大(ボイラーを増設)していくことで、最終的に周辺地域の住宅を含めた地域熱供給へ
とつながる方策が考えられる。これは、初期導入時に熱供給拡大を見越した大規模な木質
バイオマスボイラーを導入した場合、木質バイオマスボイラーの特性として低負荷運転に
適さないため、設備がほとんど稼動しない事態が生じるか、必要以上の熱負荷をかけ続け
る(不要に熱を捨てる)ことに繋がり、効率的な熱供給できない恐れがあるためである。
熱供給プラントに関しては熱供給の拡大を前提に、当初の計画で設置場所や各施設への
配管接続が安易で、かつ拡大用木質バイオマスボイラーの設置スペースを見込んで設計を
行なうことが理想的である。なお、利用する木質燃料については製紙用チップ以外の乾燥
バークやブリケット、将来的に利用が期待できる林地残材や間伐材からできた木質燃料な
どにも対応できる木質バイオマスボイラー機種の導入することが望まれる。
114
第 7 章 木質バイオマスボイラー導入による事業性の検討
7.6.4 木質バイオマスエネルギーの導入スケジュール
現状では、最初の木質バイオマスエネルギーの導入は町内のホットハウスカムロのよう
な熱需要が高く、設備更新が差し迫っているなど導入条件の良い施設を対象として、徐々
にバイオマスのエネルギー利用を広げていくことが適当と考えられる。住宅や複数施設へ
の地域熱供給については、実際に導入するまでの課題が多いため、熱需要密度の高く木質
バイオマスエネルギー導入効果が高いエリアを抽出して、長期的な視点のもとに具体的な
導入の計画を立てていくこととする。また、木質バイオマスエネルギーの導入と並行して、
木質燃料の供給体制の整備が必要となってくる。現状において木質バイオマス燃料で最も
有望になるものは、町内の製材所で生産されている製紙用チップが考えられるが、その生
産量には限りがあり、今後の木質バイオマス利用を推進するためには、別に木質燃料の確
保を模索していかなくてはならない。本事業で利用可能性が明らかになった町内の木工・
工務店より発生する端材や、森林整備の際に発生する林地残材や切捨て間伐材などは、木
材としての需要が乏しく、材の収集・運搬で発生するコストに見合わないため未利用な木
質資源となっており、これらを有効利用する方法の 1 つとしてエネルギー利用がある。そ
こで、未利用木質資源を安価で安定的に燃料として供給するためには、素材生産者、森林
組合、製材所、木材加工所、工務店といった関係事業者の協力のもとに原料を低コストで
収集・運搬・燃料化できる方法や研究を重ねて、木質燃料の供給体制の構築を図り、金山
町の木質バイオマスエネルギー利用の促進を図っていく。一方で、木質バイオマスエネル
ギーの利用方法は、ボイラーといった大型熱利用機器の導入以外にも、薪ストーブといっ
た住宅にも比較的導入のしやすい小規模の熱利用機器もあるため、これらの情報(木質バ
イオマスエネルギーを導入の意義、メリット・デメリット、利用機器の導入方法、価格等)
を住民へ発信し、これにより共通意識を醸成することで、町全体でバイオマスの利用を推
進するという意識の向上を目指していく。
【初期導入】勉強会 ワークショップの開催
【拡大】
新規熱需要の開拓
熱需要エリアの抽出
個別施設
拡大
熱利用システムの整備
【地域熱供給】
新規熱需要
【施設・消雪】
地域熱供給
新規熱需要の開拓
住宅
拡大
+
個別施設
住民の合意形成
熱利用システムの整備
施設
新規熱需要
【施設・消雪】
製紙用チップ
端材、背板チップ
製材所
製紙用チップ
端材、背板
端材チップ
林地残材・切捨て間伐材チップ
廃掃法クリア
樹皮
工務店
端材
森林
低コスト収集・運搬・燃料化方法の検討
木質燃料の安定供給システムの構築
林地残材
切捨て間伐材
115
第8章
木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討
第8章
木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討
8. 木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討
8.1 木質バイオマスエネルギーを活用した地域振興策
8.1.1 金山町の新エネルギー導入拠点となる施設の整備と観光産業の連繋
町内の有屋地区に位置する複合型観光施設であるグリーンバレー神室は、ホットハウス
カムロ(温浴施設)やシェーネスハイム金山(宿泊施設)スキー場といった施設を構えて
おり、自然に囲まれた美しい景観と金山の四季を感じることができる非常に恵まれた場所
である。現在、グリーンバレー神室施設では太陽光発電や雪冷房システムなど、施設内で
自然エネルギー利用がされ環境に考慮した施設づくりがなされており、こうした中で、本
事業で導入を検討した木質バイオマスエネルギーを含め、太陽光発電、雪氷熱利用など複
数の新エネルギー設備を見学できる全国でも珍しい特徴のある施設として打ち出していく
事ができる。また、特に近年ではグリーンツーリズムが注目されており、金山町において
も地域の自然・文化を最大限に活用し、地域に訪れる人々や地元住民、関連事業者を巻き
込んだグリーンツーリズムの作成が望まれている。そこで、グリーンバレー神室を拠点と
して観光で金山に足を運んだ人々や地域住民へ、木材の伐採や燃料生産・加工現場から設
備で利用する一連の流れを体系的に視察・学習できるツアーの企画など、金山町独自のグ
リーンツーリズムの構築が考えられる。また、訪れた観光客や、地元住民に対して目に見
える形での新エネルギー利用や導入を図り、町をあげて循環社会の形成や環境対策に取り
組む姿勢を打ち出すことで普及啓発効果が期待される。
8.1.2 バイオマスエネルギーを取り入れた金山型住宅の推進
金山町では、昭和 61 年に「金山町街並み景観条例」が制定され、「街並み(景観)づく
り 100 年運動」が展開されている。金山大工によって創造された切妻屋根・白壁・下見板
張りといった金山型住宅が増加し、着実に自然と調和した町づくりが進められている。し
かし、住宅内のエネルギー利用方法については、他地域の一般的な住宅と変わらないため、
今後の木質バイオマスエネルギー導入の推進にともない、これからの地球温暖化防止のた
めには一般住宅のエネルギー利用も見直すことが望まれる。そこで一般住宅への環境調和
型エネルギー利用の有効な方法の一つとして、木質バイオマスエネルギーによる熱供給が
あげられる。住宅レベルでエネルギー利用方法の改善することに加えて、二酸化炭素を削
減する手法として効果的だといえる。また、農山村の豪雪地帯における快適な暮らし環境
を実現するため、地域熱供給を実践することにより、周辺における公共施設以外の一般住
宅への地元の森林資源を用いて生産された木質チップやブリケットなどを利用することで、
住民が森とともに生きていることを再認識し、環境意識向上につなげることができる。さ
らに、木質バイオマスエネルギー利用の関心の高まりにともなって、住宅建築の相談や引
き合いがあった際に、地元材利用と合せて木質バイオマスエネルギー導入を提案できる建
設・工務店を育成することが望ましい。このような住宅のエネルギー利用方法の転換には、
116
第8章
木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討
木質バイオマスエネルギーの利用側、供給側に、様々な知識(機能、価格、燃料・利用方
法等)や施工方法の修得が必要とされる。行政の役割としては、木質バイオマス利用の推
進体制を整備し、木質バイオマスエネルギーに関する知識や施工ノウハウの習得を目的と
する講習会やワークショップの開催などを通じて、こうした流れをサポートしていくこと
が考えられる。
8.1.3 木質バイオマス利用サイクルの構築
木質バイオマスのエネルギー利用を推進していくには、その地域の森林整備と木材の伐
採・搬出・加工に関っている素材生産業者、製材業者の間の協力関係が欠かせない。木質
バイオマスエネルギーとして利用が期待されるピュアな木質バイオマス資源の大部分が地
元製材所や森林伐採の現場で発生しており、これらの有効活用が求められている。木質バ
イオマス資源をエネルギー利用する場合、木材の付加価値の高いものから多段階的に利用
し、最後に残った木材を燃料化しエネルギーとして利用することが理想である。しかし、
現状では森林より発生する林地残材や切捨て間伐材は、付加価値の高い製品としての利用
が難しく、これらの材を直接燃料としての利用は、材の収集・運搬・燃料化などの工程を
はさむため燃料単価が高くなることが課題となっている。また、建築廃材など利用後の残
材にあっては、燃料の原材料となるピュア材の選別・収集をする過程でコストを要しエネ
ルギー単価が高くなる可能性がある。そこで、素材収集・運搬時にこれまで放置していた
伐根材など林地残材も一緒に収集し燃料化する実験的試みや、各工務店間の効率的な端材
収集システムの構築によるバイオマス燃料コストの低減が求められる。それには、各事業
者単独で行うのではなく、自治体、森林組合、伐採(素材生産)業者、製材業者、木材加
工業者、建築業者など、各関係事業者が集まった 1 つの事業体としての動きが必要であり、
流通過程において徹底したコスト削減と一連の未利用木質バイオマス資源を活用した安定
的燃料供給体制の確立を進めていく必要がある。バイオマス燃料の利用側については、経
済的に有利なものを選択することが通常であるが、林地残材や放置間伐材利用による森林
保全、端材等未利用材の有効活用という共通認識のもと、全必要量の数%でも利用しても
らうことで利用の促進をはかることができる。また、農業が盛んな金山町において木質バ
イオマスエネルギーを導入により発生した木灰を農業用の肥料や酸性土の土壌改良材とし
て活用することができる可能性が高く、地域内で一連の循環サイクルを構築することが期
待できる。全国においても、製材所廃材、林地残材や切捨て間伐材、工務店廃材などの利
用は課題となっており、これらの未利用資源を活用するサイクルを構築することは、これ
までなかったバイオマス利用スタイルとしてアピールできる。
117
第8章
木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討
8.1.4 環境教育の推進
現在、金山町内には金山中学校に太陽熱を利用した熱利用システム、グリーンバレー神
室の森林交流センター(レストランフォレスト)には雪氷熱を利用した冷房と太陽光発電
が導入されて地元住民に対しての環境学習の面において貢献しており、新エネルギーの導
入は普及啓発活動に高い効果が期待できる。そこで、今後の環境教育・人材育成の充実を
図るために、自らが自主的に体験できる仕組みをつくることが重要となる。これは、本事
業で検討した木質バイオマスエネルギー利用施設を整備するだけではなく、森林・林業に
関連する事業者と協力し、森林管理を含めて原料となる木の育成や伐採・加工の工程を一
連のつながりとして体感できるプログラムや、多種多様な業種との接点を持ち合わせた環
境教育プログラムの形成を図っていくことが重要となってくる。また、地元の木を建材や
土木材として利用する方法や、未利用材を活用した多段階的な利用などを体験できる実践
的な環境教育カリキュラムを取り入れていくことが望まれる。
8.1.5 他の新エネルギーと連繋した二酸化炭素排出ゼロのまちづくり
本事業においては、木質バイオマスエネルギー利用のみを検討したが、既に町内では太
陽熱、BDF、雪氷熱といった新エネルギーの利用がなされている。木質バイオマスに限ら
ず、他の新エネルギーには、技術的条件や環境条件、そして物理的条件により一長一短が
存在する。しかし、これらの条件下において、それぞれの新エネルギーを組み合せること
で、デメリットを補完することが可能である。そのエネルギー源は多いほど有利であり、
二酸化炭素排出ゼロを目指す金山町として、潜在的利用可能量の多い木質バイオマスエネ
ルギーの活用は非常に有効な手段となる。環境(気候)に左右されることのない木質バイ
オマスエネルギーをベースとし、木質バイオマスでは対応できない部分を、太陽熱・太陽
光・BDF・雪氷熱・風力といった新エネルギーと連繋し、新エネルギーによるエネルギー
供給 100%に近づけることが可能となる。その結果、現在、未利用の木質バイオマスを無
駄なく利用でき、循環した社会が形成できる。さらに、総合的な新エネルギーの活用によ
り、化石燃料・電力の削減を達成し、二酸化炭素排出ゼロの実現が可能となる。
これは、町全体が自然と共存する豊かなまちになることであり、誰もが住み続けたくな
るまちへと繋げることができる。
118
第8章
木質バイオマスエネルギー利用における地域振興策の検討
8.2 今後の木質バイオマスエネルギー導入の推進
木質バイオマス利用を本格的に普及させるためには、地域内の関連セクターが協力関係を
結び、総合的なシステムを構築することが重要である。林業・林産業関係者の枠組みを越え
て、建設・土木、農業など直接的なつながりの深い分野から、観光、教育、福祉などソフト
事業での連携が求められる分野まで、相乗効果をもつような形での仕組みづくりや事業展開
が求められる。
8.2.1 今後の木質バイオマス事業推進について
今後、行政の役割として木質バイオマス利用の推進体制を整備し、木質バイオマスエネ
ルギーに関する知識やノウハウの習得を目的とする講習会やワークショップの開催などを
通じてサポートしていくことが挙げられる。また、町内の様々な事業者が集まり、新エネ
ルギーに関する講演やワークショップなど普及・啓発活動を活発に行なっている「かねや
ま新エネルギー実践研究会」や、他の様々な事業者と連繋・協力して進めていくことが重
要であり、森林・木質バイオマス利用を観光、教育など多分野に対して広く地域づくりに
活かしていくためには、町、事業者、行政が一体となって推進していく必要がある。
• 地域内外の森林・木質バイオマス関連団体との交流および協力プロジェクト推進
• 地域内の異業種団体との交流および協力プロジェクト推進
• 木質バイオマス関連情報の提供および普及啓発事業の実施
• 木質バイオマス利用をテーマとする会議やイベントの開催
• 地域内の木質バイオマス利用事業に関する調査・立案
• 国や県の森林・木質バイオマス関連の助成事業の受入れ窓口
8.2.2 バイオマス補助制度の活用
研修会やワークショップ、実際のハード導入などの事業をおこなうための財源は、国や
県の関連補助事業などを活用するのが得策である。森林・木質バイオマス利用の分野で地
域連携の推進や協議会活動などのソフトに活用できる補助金等支援制度を利用することで、
バイオマス活用の普及が行ないやすくなる。
• グリーンツーリズム・地域連携システム整備事業(農水省・元気な地域づくり交付金)
• バイオマスタウン形成促進支援調査事業(農水省)
• バイオマス利活用推進事業(農水省・バイオマスの環づくり交付金)
• 地域協議会対策促進事業(環境省)
• 森林づくり交付金(林野庁)
119
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令調査
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
9. バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
チップボイラー導入に際に法律・条令その他の規制が関わってくるため、該当する場合
に許可の取得または届出を行い、規制を遵守する必要がある。
チップボイラー導入に関わる主要関連法規は以下の通りである。
図表 9-1
No
法規の名称
チップ及びチップボイラー導入に係る主要関連法規
施設の種類
許可/届出
許可届出の必要な規模
1
廃棄物の処理及び
清掃に関する法律
小型焼却炉※
許可
焼却能力 200kg/h 以上、または火格子面積
2m2 以上
2
ダイオキシン類対策
特別措置法
小型焼却炉※
届出
焼却能力 50kg/h 以上または、火格子面積
0.5m2 以上
ダイオキシン類排出基準の適用
3
大気汚染防止法
ばい煙発生施設
(ボイラー)
届出
伝熱面積 10 m2 以上、またはバーナー燃焼能
力重油換算 50L/h 以上
4
騒音規制法
(山形県生活環境の
保全等に関する条例)
送風機
届出
原動機の定格出力 7.5kW以上
(2.2kW 以上 7.5kW 未満)
5
消防法
火気使用設備
貯留倉庫
届出
ボイラーの設置、チップ(指定可燃物)貯留
10m3 以上
6
労働安全衛生法
小型ボイラー
届出
貫流ボイラー伝熱面積 5m2 超え 10m2 以下
7
熱供給事業法
熱供給設備
許可
21GJ/h 以上
(=5,834kW=502 万 kcal/h 以上)
※廃棄物処理施設扱いとなった場合に適用
120
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
(1) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)
本事業においてチップボイラーの原料となるチップが廃棄物扱いとなった場合、廃掃法
上ボイラーは焼却炉扱いになる。廃掃法では、廃棄物を「自ら利用※1し、又は他人に有償
売却できないため不要となった物」としている。ただし、占有者の意思、その他性状等を
総合的に勘案し、判断することになる※2。
※1「自ら利用」とは、他人に有償売却できる性状の物を占有者が利用することをいう。他人に有償売却
できないものを排出者が使用することは、「自ら利用」に該当しない。
※2 有償で引き取れば廃棄物ではない。但し、無償持ち込みの場合、輸送費を排出事業者が払っている
ことから逆有償と同様に解釈される。さらに有償の場合でも「買い取り金額-持ち込み業者が支払
う輸送費」がプラスになっていない場合においても廃棄物とみなされる。
つまり法律上、廃棄物燃焼炉としてではなく、ボイラーとして認められるには燃料とな
る木質バイオマスに有価性(商品性)があることが必要となる。木質バイオマスを利用す
るボイラーが本法の廃棄物焼却炉に該当した場合、その設備に関して構造基準や維持管理
基準を遵守する必要が生じる。この場合、構造基準を満たすためボイラーに補助バーナー
や高度な集塵機などの追加設備が必要となる。さらに、維持管理基準では燃焼ガス温度を、
常時 800℃以上に保つ必要があり、基準を遵守するためには非現実的な運転を行なわなけ
れば困難となる。
なお、本町で有望な木質バイオマス燃料は木質チップであり、当面は製材所からの購入
になることが予想されため、導入するチップボイラーは本法の廃棄物焼却炉には当らず適
用外となる。しかし、木工所や工務店からの端材を利用する場合には、他の廃棄物と差別
化をはかり、商品として流通させるシステムが必要となる。
(2) ダイオキシン類対策特別措置法
ダイオキシン類対策特別措置法では、廃棄物焼却炉(焼却能力 50kg/h 未満のものは除
く)に対して、ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾフラン・ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジ
オキシン・コプラナーポリ塩化ビフェニル)の排出規制、基準量の遵守及び定期的な測定
を義務づけている。
法の焼却炉の解釈は廃掃法と同様に定義される。したがって、廃掃法上で廃棄物焼却炉
に該当しない本計画では適用外となる。
図表 9-2
項目
廃棄物焼却炉
ダイオキシン類の排出基準(焼却炉となった場合)
焼却能力
排出基準
4,000kg/h 以上
2,000kg/h 以上 4,000kg/h 未満
50kg/h 以上 2,000kg/h 未満
121
0.1ng/m3
1ng/m3
5ng/m3
備考
年 1 回以上測定
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
(3) 大気汚染防止法
木質チップボイラーを導入する際に、大気汚染防止法上の「ばい煙発生施設」に該当す
れば規制対象となる。ばい煙発生施設の該当基準を図表 9-3 に示す。
図表 9-3
番号
1
大気汚染防止法施行令におけるばい煙発生施設の該当基準(別表第1)
種
類
規
模
ボイラー(熱風発生炉を含み、熱
総理府令の定めるところにより算定した伝熱面積(以下、単
源として電気又は廃熱のみを使
に「伝熱面積」という)が 10m2 以上※であるか、又はバーナ
用するものを除く)
ーの燃料の燃焼能力が重油換算 50L/h 以上であること。
※ボイラー規模が、およそ 180kW で該当
ばい煙発生施設に該当する場合には、必要書類をそろえて県知事への届け出を行なう。
その際に該当するとされた規制対象物質については、規模に応じて年間に定められた回数
でばい煙の測定を行い、規制基準を遵守する必要がある。
木質チップボイラー設置時に該当するばいじんの規制基準を図表 9-4 に、窒素酸化物の
規制基準を図表 9-5 に示す。なお、硫黄酸化物については木質チップの原料に不純物を含
まない限り問題はない。また、ばい煙の測定回数を図表 9-6 に示す。
図表 9-4
施
大気汚染防止法施行規則におけるばいじん排出基準
設 名
規
固体燃焼ボイラー
図表 9-5
施
模
排出基準
0.3g/m3N(O2 6%換算)
すべての規模
大気汚染防止法施行規則における窒素酸化物排出基準
設 名
固体燃焼ボイラー
規
模
(最大定格排出量)
排出基準
40,000m3 未満
350ppm(O2 6%換算)
図表 9-6 ばい煙測定回数
項目
施設
規
模
(最大定格排出量)
測定回数
ばいじん
チップボイラー
40,000m3/h 未満
年 2 回以上
窒素酸化物
ばい煙発生施設
40,000m3/h 未満
年 2 回以上
硫黄酸化物
ばい煙発生施設
10m3/h 以上
年 2 回以上※
※ピュアな木質燃料には硫黄酸化物は殆ど含まれないが、測定を行なう必要がある。
122
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
(4) 騒音規制法(山形県生活環境の保全などに係る条例)
ボイラー施設において、送風ファンの能力(原動出力 7.5kW 以上)により騒音規制法の対
象となる可能性がある。この場合、地域により定められた騒音基準を遵守する必要がある。
山形県生活環境の保全等に関する条例では、騒音規制法より小さい原動機出力 2.2~
7.5kW 未満のものに対しても規制を設けている。該当する場合には、図表 9-7 に示す規制
基準遵守が求められる。
図表 9-7 山形県生活環境の保全等に関する条例における騒音規制値
朝
(午前 6 時~
午前 8 時まで)
昼間
(午前 8 時~
午後 7 時まで)
夕
(午後 7 時~
午後 10 時まで)
夜間
(午後 10 時~
翌日午前 6 時まで)
第一種区域
45 デシベル
50 デシベル
45 デシベル
40 デシベル
第二種区域
50 デシベル
55 デシベル
50 デシベル
45 デシベル
第三種区域
60 デシベル
65 デシベル
60 デシベル
50 デシベル
第四種区域
65 デシベル
70 デシベル
65 デシベル
60 デシベル
時間区分
区域区分
(5) 消防法
ボイラーを設置する場合、そのボイラーの能力に関わらず消防署への設置届けが必要と
なる。また、燃料チップは指定可燃物(木くず)とされ、10m3 以上のチップを保管する
場合には届出が必要となる。さらに、この燃料には保管と取扱基準が定められている。
(6) 労働安全衛生法(ボイラー及び圧力容器安全規則)
労働安全衛生法では、ボイラーの種類や規模により必要な手続きが異なる。貫流ボイラ
ーであって簡易ボイラー(伝熱面積 5m2 以下)を設置する場合には、特別な手続きは必要
としないが、小型ボイラー(伝熱面積 5m2 超え 10m2 以下)を設置しようとする場合は、
設置届を労働基準監督署長に提出することが必要である。
伝熱面積 10m2 を超えるボイラーに関しては設置届を労働基準監督署長に提出し、さら
に落成検査を受けることが必要である。また、その運転に関しては有資格者(伝熱面積
10m2 超え 30m2 未満の場合はボイラー取扱技能講習修了者)を要する。ただし、無圧式の
ボイラーであれば労働安全衛生法のボイラーに当らないため手続きは不要である。
本事業で検討しているチップ温水ボイラーは、すべて無圧式となっているため本法適用
外となるが、蒸気ボイラーでは該当する可能性がある。
123
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
図表 9-8 法適用ボイラーと手続き内容
ボイラー形式
貫流蒸気
分類
伝熱面積
内容
簡易ボイラー
5m2 以下
なし
小型ボイラー
5m2 超え 10m2 以下
ボイラー
10m2 超え
労働基準監督署長へ
設置の届出
ボイラー
労働基準監督署長へ
設置の届出及び落成検査
【a. 蒸気ボイラーの場合】
最高
使用
圧力
(MPa)
胴の
内径
(mm)
ボイラー
(小規模ボイラー※)
ボイラ
ー
0.1
簡易
ボイラ
ー
0
300
小型
ボイラ
ー
0.5
ボイラー
750
ボイラー
(小規模ボイラー※)
ボイラー
小型ボイラー
200
1.0
簡易ボイラー
0
伝熱面積
3.0
400
(m2)
小型ボイラー
600
胴長さ
(mm)
1,300
開放管又はゲージ圧力 0.05MPa
以下の U 形立管を蒸気部に取り
付けたものに適用
ボイラー
伝熱面積
(m2)
3.5
2.0
簡易
ボイラー
【c. 温水ボイラーの場合】
【b. 貫流ボイラーの場合】
ボイラ
ー
1.0
簡易
ボイラ
ー
0
水頭圧(MPa)
最高使用圧力(MPa)
0.2
ボイラー
(小規模ボイラー)※
小型
ボイラ
ー
5
10
30
伝熱
面積
(m2)
ボイラー
(小規模ボイラー※)
小型
ボイラ
ー
ボイラ
0.1
0
2
ー
小型
ボイラ
ー
簡易
ボイラー
4
8
14
※ 法規上は「ボイラー」だが、取扱う資格者などの関係から、整理上、通称として「小規模ボイラー」
と呼ばれている。
図表 9-9
労働安全衛生法におけるボイラーの分類
124
伝熱
面積
(m2)
第9章
バイオマスエネルギー利用に係る関連法令
(7) 熱供給事業法
地域熱供給を行なう場合、熱供給事業法が適用される可能性がある。熱供給対象・設備
規模などの要件をすべて満たす場合、本法の適用を受けることとなり、定められた基準を
満たした上で「熱供給事業者」としての許可を得て事業を行なう必要がある。
図表 9-10
要件
熱供給事業法の対象となる事業
熱供給事業法の適用を受ける場合
(↓以下の要件を全て満たす場合)
需要
一般の需要
規模
加熱能力 21GJ/h(5Gcal/h)以上
供給数
複数の建物
事業者
需要家と資本関係のない第三者または、自家使用にな
らない事業者
熱供給事業者として許可を得るための基準は、以下のとおりである。
1.
その熱供給事業の開始が一般の需要に適合すること。
2.
その熱供給事業の熱供給施設の能力がその供給区域における熱供給に対する需要に
応ずることができるものであること。
3.
その熱供給事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力があること。
4.
その熱供給事業の計画が確実かつ合理的であること。
5.
その他その熱供給事業の開始がその供給区域における日常生活又は事業活動上の利
便の増進のため必要であり、かつ、適切であること。
これらの技術基準、需要家への安定供給義務を満たすことにより、設備コストが増大す
ることが考えられる。また、本法の適用を受ける場合、熱供給料金が許可制となるため自
由な料金設定ができなくなる。
125
第 10 章
利用可能な助成制度
第 10 章 利用可能な助成制度
10. 利用可能な助成制度
木質バイオマスのエネルギー利用による熱併給システムを導入する場合に利用できる助成
制度についてまとめた。
図表 10-1
バイオマス関連補助制度一覧
【NEDO:新エネルギー産業技術総合開発機構】
名
称
地域新エネルギー導入促進事業
関連機関
NEDO
補助率等
①1/2 以内又は 1/3 以内 ②定額(限度額 2 千万円)
概要
「新エネルギー設備導入事業」(①)および「新エネルギー導入促進普及啓発事
業」(②)について、新エネルギー導入の加速的促進を図る。
(地方公共団体は①と②を合わせて実施。非営利民間団体は①のみ。)
【規模要件:熱利用の場合】
・バイオマス依存率:60%以上
・バイオマスから得られ利用される熱量:1.26GJ/h(350kW)以上
名
バイオマスエネルギー地域システム化実験事業
称
新エネルギー対策推進部
(平成 17~21 年度 5 ヵ年)
関連機関
NEDO
補助率等
契約額を限度に当該経費全額
概要
バイオマス資源の収集運搬からエネルギー最終利用まで地産地消・地域循環型シ
ステムが成立することを実証し、社会システムの技術上の課題の抽出と対応を行
ない、他の地域への導入普及を先導するためのモデル事業。
名
バイオマス等未活用エネルギー実証試験事業
称
新エネルギー技術開発部
関連機関
NEDO
補助率等
1/2 補助
概
バイオマスエネルギー、雪氷熱の利用に係る実証試験設備を設置した上で運転デ
ータを収集する事業を、公募により決定した事業者との共同研究として実施。
【対象エネルギー】
(1)バイオマスエネルギー
・溶融ガス化等熱化学的変換技術による燃料化システム
・メタン発酵等生物化学的変換技術による燃料化システム
・その他新規性のある燃料化システム
・上記燃料化システムによる燃料を利用した熱利用システム(コージェネレー
ションシステム)又は発電システム(燃料電池を含む)
・直接燃焼による熱利用システム
(2)雪氷熱エネルギー
・公共施設等の冷房システム ・その他新規性のある冷熱利用システム
要
新エネルギー技術開発部 バイオマス実証事業担当
126
第 10 章 利用可能な助成制度
名
称
地域バイオマス熱利用フィールドテスト事業
関連機関
NEDO
補助率等
1/2 補助
補助対象
定格バイオマス原料 40t/日以下、エネルギー効率 70%以上の中小規模ボイラー
概
NEDO との共同研究として、実証価値のあるバイオマスエネルギー利用システム
を各地域において熱需要先に適した利用形態・規模で設置し、バイオマスの運搬・
収集、エネルギー変換、エネルギー利用に係わるデータを収集、蓄積、分析、評
価しその情報を広く公表する。実証運転は設置後 2 年間行なう。
【ユーザー系熱利用モデルフィールドテスト枠】
①「木質系バイオマス中小規模直接燃焼システム」
②「木質系バイオマスコジェネ型システム」
③「鶏糞燃焼システム」 ④「食品系バイオマスエネルギー化システム」
⑤「燃料化システム(木質・食廃・畜糞・汚泥)」
【新規エネルギー利用技術フィールドテスト枠】
⑥「新規技術導入システム/従来に比べて高効率・低コスト化を期待できるバ
イオマスエネルギー利用システム」がある。
【目標】
平均含水率 40%以下の木質バイオマス供給。
年間稼動日数 180 日以上、平均負荷率 70%以上。
要
新エネルギー技術開発部
【経済産業省:地方経済産業局】
名
称
バイオマス等未活用エネルギー事業調査事業
関連機関
各経済産業局エネルギー対策課
補助率等
定額 (但し、概ね 1 千万円を上限)
概
地域に賦存するバイオマス等のエネルギー利活用事業について、事業化に際し
必要なデータの収集・分析等を行う FS 事業に対しての補助を行なう。
要
【環境省】
名
称
二酸化炭素排出抑制対策事業補助金
関連機関
環境省 地球環境局 地球温暖化対策課
補助率等
大臣が相当と認めた額
概
対策技術率先導入事業:地方公共団体が、その事務および事業に関する実行計画
に基づき、代エネ・省エネ施設または設備を整備する。
【採択要件】バイオマス熱利用
バイオマス利用率が 80%以上(低位発熱量基準)で、かつ省エネルギー率が 15%
以上であるもの。
要
127
第 10 章 利用可能な助成制度
【農林水産省】
名
称
バイオマスの環づくり交付金
関連機関
農林水産省 大臣官房環境政策課
補助率等
定額(1/2 以内)
対象
市町村、農協等
概
要
地域におけるバイオマス利活用に関する計画策定、実用化に関する調査・実証、
システム構築等をバイオマスの種類に応じて総合的に実施し、バイオマスの有効
利用を促進する取り組みと併せて、新技術等によるバイオマスの利活用施設をモ
デル的に整備することにより、循環型社会の構築を図る。
【補助対象事業】
(1)バイオマス利活用に係る調査・検討
(2)バイオマス利活用施設の整備
【採択要件】
バイオマスタウン構想またはバイオマス利活用の中期的方針が策定されてい
るか、策定されることが確実と見込まれること。
名
称
森林づくり交付金
※施設整備が民間 1/3、それ以外 1/2
事業実施期間 平成 17~21 年度(5 年間)
関連機関
農林水産省 林野庁
補助率等
定額(1/2、4/10 等)
概
【対象事業】
《ハード面》
・森林づくりの推進
山林の作業道の整備や高性能林業機械の導入による効率的な間伐作業システ
ムの整備
・森林の多様な利用・緑化の推進
森林体験活動を通じた森林環境教育の推進の場、市民参加や林業後継者育成に
資する
林業体験学習の場等の森林・施設の整備を実施
・森林地域環境の整備
山村に有する森林や自然環境を活かした交流基盤の整備、自然との共生のため
の基盤整備等を地域ニーズに応じて総合的に推進
※森林地域環境の整備では対象地域が定められており、特定市町村(当該市町村
の区域内の民有林面積が 2,000ha 以上等)であって、振興山村、過疎地域、
特定の山村地域(林野率及び人工林率が高い地域に限定)のいずれかに該当す
る地域となっている。
《ソフト面》
・山地災害情報伝達の総合的な整備の推進
・病害虫などによる森林被害の防止の推進
・森林保全管理や林野火災予防にかかる対策
【事業実施主体】都道府県、市町村、森林組合等
要
128
第 10 章 利用可能な助成制度
名
称
地域バイオマス利活用交付金
関連機関
農林水産省
補助率等
補助率:定額 1/2
対象
ソフト支援
市町村、農林漁業者の組織する団体、第3セクター、消費生活共同組合、事業
協同組合、NPO 法人、食品事業者、食品廃棄物のリサイクルを実施する事業者、
バイオマスタウン構想書を策定した市町村が必要と認める法人
ハード支援
都道府県、市町村、農林漁業者の組織する団体、PFI 事業者、共同事業体、第
3セクター、消費生活共同組合、民間事業者等
概
要
バイオマスタウン構想の策定、バイオマスの変換・利用施設等の一体的な整備等、
バイオマスタウンの実現に向けた地域の創意工夫を凝らした主体的な取組を支援
する。
ソフト支援
1.バイオマスタウン構想の策定
2.バイオマスタウン構想実現のための総合的な利活用システムの構築
ハード支援
1.地域における効果的なバイオマス利活用を図るために必要なバイオマス変換施
設及びバイオマス供給施設・利用施設等の一体的な整備
2.新技術等を活用したバイオマス変換施設のモデル的な整備
3.家畜排せつ物等有機性資源の利活用に必要なたい肥化施設等の共同利用施設
等の整備
名
称
強い林業・木材産業づくり交付金
関連機関
林野庁 経営課
補助率等
定額(1/2 以内)
概
要
木質バイオマスエネルギー利用促進整備(ハード):地域の未利用木質資源のエ
ネルギー利用を促進するため、林地残材等の効率的な収集・運搬に資する機材や
木質バイオマスエネルギー利用施設等のモデル的な整備を実施する。
名
称
新山村振興等農林漁業特別対策事業
関連機関
農林水産省
補助率等
(1)補助方法:間接補助 (2)補助率:1/2 以内
対象
市町村、農協、森林組合、漁協、農林漁業者等の組織する団体、
地方公共団体が出資法人等
概
山村等の中山間地域の振興を一層促進するため、地域の特性を活かした農林漁業
をはじめとする多様な産業の振興、山村地域と都市との交流促進とこれを支援す
る豊かな自然環境の保全及び地域の担い手の確保に必要な生産基盤や機械・施設
等の整備を総合的に実施する。
【補助対象施設】
地域資源循環活用施設(地域に存在する未利用資源等を活用し、営農等に必要
な資材化、エネルギー化などを行う場合に必要な施設)
要
129
《 資料編 》
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
①
岩手県
陸前高田市学校給食センター
本施設では学校給食センター180kW のチップ温水ボイラーを導入している。
【名称】
陸前高田市立学校給食センター
【事業者】
陸前高田市
チップ温水ボイラー 180kW(スイス シュミット社製)
設備機器
温水バックアップボイラー 349kW
蒸気ボイラー 1t/h×2 基
【設備】
チップサイロ
30m3 (半地下)
温水利用途
洗浄用給湯(60~70 度)
蒸気利用途
調理用(回転釜など)
事業費
77,246 万円(給食センター新築)
ボイラー価格
2,268 万円(チップボイラー)5,914 万円(蒸気ボイラー)
ランニング
コスト
年間稼働日数
228 日 24 時間(実稼動 8 時~16 時)
(夜間・長期休暇がない場合、土日も種火モード)
使用燃料
木質チップ(形状:製紙用、一部樹皮つき)
燃料消費量
【燃料】
【運送】
【灰】
820 万円/年(管理委託料)
・ばい煙測定費 27.8 万円
・年 3 回ボイラー保守点検費:
チップボイラー57 万円 蒸気 38.2 万円
・消耗品 50 万円・チップ燃料費 80 万円
チップ 245m3/年
灯油
69,770L/年
燃料規格
含水率:55%(ウエットベース)以内
チップ供給元
気仙木材加工協同組合連合会(素材生産業者が主)
燃料購入価格
生チップの状態で
輸送車両
4t 車(5m3 積載)ダンプ車
搬送頻度
1 回/週 程度
灰処理
掃除頻度 1 回/月(5kg)市清掃センターにて焼却処分
写真:給食センター外観
3,000 円/m3(輸送費込み)
写真:給食センター内観
資1
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
写真:機械設備室
写真:チップボイラー(180kw)
・ボイラー稼働日数は年間 228 日であり、1 日あたり実稼動が 8 時~16 時の 8 時間の通常運転
と、夜間や土・日・休日はボイラーの種火モードになり 24 時間常時運転している。
・チップボイラーの温水(60~70 度)は、食器やコンテナ類の洗浄に用いられ、バックアップ
用として 349kW の灯油温水ボイラーが設けられている。また、回転釜など高温が必要な調
理器具は、1t・基/h の灯油焚きの蒸気ボイラー2 基で対応している。
・チップボイラーの稼働率については 5m3 の貯湯槽を設けることで熱負荷を平準化している。
・年間のチップ消費量は 245m3(約 80t)となっている。
・ばい煙に関しては、周辺には民家がなく、煙突からの煙や臭いなどの心配はない。
写真:燃料サイロ(30m3)
写真:4tダンプトラック(積載約 5m3)
・チップ燃料に関しては、地元にある素材生産業者を中心に構成された気仙木材加工協同組合
連合会がチップの生産と運送を請け負っている。
・チップ原料は、連合会にて製材・集成材製造を行っているため、同工場から発生する端材を
チップ化している。主原料は杉で、樹皮つきも約 1 割程(目視)程混入している。
・輸送距離は給食センターから 10 分程度の距離にあり、連合会所有の 4tダンプ車(5m3/回)
にて運賃込価格 3,000 円/m3 で納入している。チップの品質管理、納入時にチップ含水率等
を計測しているわけではなく、
『○m3/車で○円』という形で信頼ベースの取引を行っている。
・納入頻度は、週 1 回程度で地下式のサイロ(30m3)へ納めており、サイロへの補給作業時間
資2
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
は約 10 分程度で完了する。
・サイロに関しては岩手県内でも積雪地域ではないため、サイロには屋根がなく手動開閉式の
蓋が取り付けられているのみである。
・灰処理に関しては、チップボイラー設備に付帯している灰処理コンテナの交換を週に 1 回程
度行っている。また、灰に関しては、市の清掃センターにて焼却処分している。
写真:灰処理コンテナ
写真:燃焼灰
本施設は、学校給食調理という特徴から、年間を通じて施設が稼動しており、燃料として
チップの安定した需要がある。また、チップボイラーに関して、木質ボイラーの運転特性を
活かした非常に適した利用されている事例といえる。
資3
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
②
岩手県
岩手県大迫総合支所
岩手県の旧大迫町(現在:花巻市)で、日本発のチップボイラーを利用した庁舎内冷暖房を
行っている。
【名称】
花巻市大迫総合支所
【事業者】
花巻市
チップ温水ボイラー 200kW
(スウェーデン ヤンフォルセン社製) 設備規模設定方法
設備機器
・暖房最大負荷 114kcal/m2
・冷房負荷 121kcal/m2
重油焚き温水バックアップボイラー
吸収式冷凍機 387kW
【設備】
38.4m3 (半地下)
温水利用途
庁舎内暖房(温水 80 度) 冷房(温水 85 度)
設備価格
6,825 万円
(チップボイラー、重油ボイラー、吸収式冷凍機、冷却塔、機
会室内配管)
※環境省 二酸化炭素排出抑制事業 1/2 補助
建築費
2,849 万円(機械室)
【灰】
委託費 67.2 万円/年
(ばい煙測定費、保守点検費、年 2 回清掃点検)
年間稼働日数
224 日 24 時間(H17 年度)
【暖房】 11 月 1 日~4 月 20 日 (計 171 日)
実稼働時間 2 時~3 時 7 時 30 分~18 時
【冷房】 7 月 10 日~8 月 31 日 (計 53 日)
実稼働時間 7 時 30 分~18 時
記述以外の時間は種火モード)
使用燃料
木質チップ (スギ・アカマツ)
燃料消費量
規格
【運送】
冷却塔 1,045kW
チップサイロ
ランニングコスト
【燃料】
400kW
チップ 525m3/年
A 重油
1,388L/年
2cm×3cm×0.5cm 含水率:44%(ウエットベース)以内
※実際は含水率 55%(ウエットベース)もあり
供給元
大迫町森林組合
購入価格
生チップの状態で
輸送車両
ダンプトラック 4t 車(7m3 積載)
搬送頻度
2 台/5 日
灰処理
2 回/年、4 ヶ月で 30kg、土壌改良材として周辺農家へ配布
【ボイラー運転・管理】
職員で対応
資4
3,150 円/m3(輸送費込み)
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
写真:大迫総合支所
外観
写真:チップボイラー(200kW)
写真:大迫総合支所
写真:吸収式冷凍機(387 kW)
内観
写真:バックアップボイラー
・平成 17 年度実績で冬季間暖房時(11 月 1 日~4 月 20 日)は合計 171 日稼動し、ボイラー
実稼働時間は、ボイラー炉の急激温度変化防ぐために夜間の 2 時~3 時の 1 時間ほど稼動す
るように設定しており、通常運転は 7 時 30 分~18 時となり、約 10 時間ほど運転している。
夏季間暖房時(7 月 10 日~8 月 31 日)は合計 53 日間稼動し、ボイラー実稼働時間は、7 時
30 分~18 時の 10 時間ほど運転している。また、冬季間と夏季間の通常運転以外の時間は種
火モードで 24 時間稼動させている。
・チップボイラーの着火には薪を用いており、定格出力で安定燃焼(炉内温度が 400 度まで昇
温されたら自動運転)を行うまで 4 時間程度要するため館内の冷暖房を行う際に考慮しなく
てはならない。
・チップの年間消費量(平成 17 年度実績)は 525m3(173t)となっており、重油焚きボイラ
ーがバックアップとして稼動しており、年間重油消費量は 1,388L となっている。煙突は機
械室に併設されているため、シングル煙突となっている。
写真:機械室(燃料サイロ兼用)
写真:燃料サイロ(38.4m3 半地下)
資5
写真:排煙設備
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
・チップ生産は、大迫町森林組合が請け負っている。しかし、近年の製材量減少に伴い、原材
料である端材の量が確保できないためチップ供給能力が低下している。また、近くの市立保
育園にも岩手型チップボイラー(100kW)が導入され、町内にチップボイラーの導入施設が
保育園と庁舎の 2 箇所となるのでチップ供給能力を懸念している。
・チップ輸送は大迫町森林組合が、産業開発公社にダンプトラック車(7m3 積載)にて運送を
委託している。ボイラー稼動時のサイロへの燃料補給は、週に職員が立会い、補給時間は 5
分程度で完了する。チップサイロは、供給されるチップ含水率が高いので、サイロ室内にボ
イラー室内に後付設備として換気扇を設置し、ボイラー室内の排熱をサイロへ回しチップを
乾燥させており一定の効果を挙げている。
・ボイラーのメンテナンスは年に 2 回ほど行っており、灰に関しては、4 ヶ月で 30kg が発生
しており、処理方法として周辺農家が土壌改良材として利用するため配布している。
写真:燃焼灰
写真:灰処理コンテナ
本施設では、スウェーデン製(ヤンフォルセン製)のボイラー導入施設の先駆けであり、ボ
イラーの運転に関して試行錯誤しており、導入当初から現在までチップボイラーの運転に伴う
トラブルとして以下のことがあげられた。納入されるチップの含水率が高く、チップボイラー
が不完全燃焼になり、庁舎周辺に煙がたちこめた経験がある。チップボイラー導入当初に、チ
ップ燃料のサイロからボイラー本体へ送る供給スクリューの調整の不具合で炎が燃料サイロ
へ逆火した。現在(2006 年 9 月時点)は改善されている。サイクロンが目詰まりを起こし炉
内圧異常により停止した経験あり
チップボイラーの導入効果としては、燃料費を化石燃料に比べてチップ燃料にすることで、
37 万円/年低減できたことや、重油焚きボイラーによる冷房・暖房比べて、気分が快適だと感
じられることがあげられる。また、国内でチップボイラーによる冷暖房を行っている初の事例
であり学ぶべき点が多い。
資6
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
③
岩手県
林業技術センター
国内において、はじめてチップボイラーが導入された施設で、館内の暖房に利用されている。
本施設では、チップボイラーの利用に関わる総括的な試験を行っている。
【名称】
岩手県林業技術センター
【事業者】
岩手県
設備機器
【設備】
450kW
(スイス
シュミット社製)
※規模設定方法としてチップボイラー導入前の重油ボイラー規模より設定
50m3 (地上)
温水利用途
暖房
ボイラー設備価格
4,788 万円
建築費
2,137 万円(機械室・サイロ等)
ランニングコスト
67.2 万円/年(ばい煙測定費)
年間稼働日数
11 月~4 月 180 日間
使用燃料
木質チップ (形状:製紙用、樹皮なし、スギ)
【燃料】
(木造平屋建 1,219m2、RC2 階建 1,443m2)
(24 時間運転)
チップ 728m3/年
(242t/年)
MAX 50m3/週
MIN 20m3/週
2cm×3cm×0.5cm
規格
【灰】
+
チップサイロ
燃料消費量
【運送】
チップ温水ボイラー240kW
含水率:60%(ウエットベース)以内
供給元
花巻市内のチップ工場
購入価格
生チップの状態で
輸送車両
10t 車(40m3 積載)
搬送頻度
1-2 回/週
灰処理
1 回/週、重量比 0.2%発生、施設内農地で利用
3,500 円/m3(輸送費込み、税抜)
写真:本館外観
写真:設備機械室と燃料サイロ(50m3)
資7
資料編 木質バイオマスボイラー導入施設の先進地調査
写真:チップボイラー
写真:館内への導管状況
(左:240kW、右:450kW)
・導入しているチップボイラーは、240kW が 1 基と 450kW が 1 基の合計出力が約 700kW あ
るが、実際には林業試験センター内で必要な暖房能力は 150kW でまかなえることがわかっ
た。したがって、現在は通常時 240kW チップボイラー1 機で行なっている。当初は、岩手
県とスウェーデンで交流があることから、スウェーデン製チップボイラーを導入予定であっ
たが、予算等の関係上、スイス製のシュミット社のチップボイラーになった。
・チップボイラーの設置時は、チップボイラーに設置に対する情報が乏しく、煙突高さが足り
ず不完全燃焼状態であった(灰の発生量が多く、煙管の清掃頻度が 2 週に 1 回行なう必要で
あった)。また、シングル管で断熱が不十分であったため、煙突内で排煙に含まれる水分が結
露し、煙道を塞ぎ煙突火災を引き起こした。これらの状況から対策として煙突の高さを引き
上げ、二重煙突にしている。これによりボイラーは完全燃焼により灰の発生が激減し、煙管
の掃除は 6 ヶ月に 1 回程度になった。
・試験的にボイラー運転を重ねることによって寒冷地のチップボイラーの二重煙突は必須であ
ることがわかっている。
・チップボイラーは重油ボイラーのように瞬間的に着火・消火ができないため、常時負荷がか
かって(燃えて)いることが望ましい。着火については、乾燥チップを別途用意して着火を
行うが定格出力になるまで 4~5 時間要する。これは着火に約 2 時間がかかり、安定運転に
いたるまでに 2 時間程を費やしている。
・一般のメンテナンスである清掃・グリス補給等は職員が行なっているため維持管理費は消耗
品と排ガス測定費のみである。
資8
参考資料 国内の熱供給事業事例
④
滋賀県
高島市
熱供給施設
本施設では、チップボイラーによる複数施設への熱供給を行っている。
【名称】
高島市 熱供給施設
【事業者】
滋賀県高島市
木質資源利用ボイラー523kW(国内 タカハシキカン製)
設備機器
バックアップボイラーA
581kW
バックアップボイラーB 465kW
チップサイロ
35m3
温水温度
80~85 度
・高島市健康づくりセンター「いきいき元気館」
温水供給施設
(暖房・給湯・歩行用温水プール加温)
・特養老人ホーム(民間:24h)
「ニューサンライズ」
(暖房・給湯)
【設備】
導管
総事業費
本管(50A:200m、100A:400m)
埋設導管(埋め戻し方式、山砂充てん、舗装なし)
2 億 1700 万円
(木質バイオマスエネルギー利用促進事業 1/2 補助)
ボイラー価格
6,000 万円(チップボイラー関連費)
導管敷設費
2,000 万円
ランニングコスト
1,200 万円/年(起債の償還が一番の負担となっている)
※ボイラーは無人運転
年間稼働日数
365 日(年に 1~2 日、メンテナンスを行う)
燃料
木質チップ(形状:ピンチップ、廃棄物系は一切なし)
消費量
生チップの状態で
300t/年(実績)
サイズ:2cm×3cm×7.5cm 以内
【燃料】
規格
※冬場に含水率 47%(ウエットベース)程度までは燃焼できた。
供給元
【運送】
熱販売価格
含水率:30%(ウエットベース)以内
周辺の製材所から発生する端材由来が 1~2 割、伐開業者の支障木に
由来するものが 8~9 割の見込み
3.5 円/kg(輸送費込み)
購入価格
生チップの状態で
輸送車両
10t 車(積載 25 m3、積載 29m3 の 2 車種)
搬送頻度
夏 1~2 回/月、冬 2~3 回/月
基本料金 12 万円/月(税抜)
従量料金 8.3 円/kWh(税抜)
資9
参考資料 国内の熱供給事業事例
<熱供給プラントの運営状況>
写真:チップボイラー 523kW
(国内 タカハシキカン製)
写真:熱供給施設
建設事業主体及び施設管理・運営者は新旭町(現在は高島市)である。計画当初は第 3 セ
クターによる運営も想定していたが、責任者が曖昧になる恐れがあるため、運営については
しばらく町が担当している。平成 15 年 9 月に定められた条例により、市の一般会計とは独
立させた特別会計として採算性をはっきりさている。
現在の収支状況は厳しく最も大きな要因は高額な初期コストである。ボイラーの購入費等
を含めたプラントの建設費は 2 億 1700 万円にのぼるが、補助金は林野庁からの 1/2 のみで、
残る 1/2 の 25%にあたる 2700 万円が新旭町(当時)からの拠出、75%にあたる 8100 万円
が新旭町からの借金(現在は高島市から借りている形)である。この 8,100 万円の借金は 15
年で償還する予定であるが、その財源の一部は高島市の一般会計であり、最終的な債務償却
は 20 年後になる予定である。各施設の減価償却は、建築が 38 年、機械が 17 年、車両が 5
年と算定している。熱供給の単価は基本料金が 12 万円/月(税抜き)であり、従量料金が 8.3
円/kWh(税抜)である。この料金は前述の減価償却費と熱生産コスト(12 円/kWh と見積
もられている)等から算定されたものであり、灯油による暖房のコストには及ばないものの
電気による暖房のコストとは競争可能なレベルとなっている。年間収入は 1,200 万円と見込
み、支出とほぼ均衡することを想定していたが、それには及ばず非常に厳しい運営状況とな
っている。
チップボイラーは無圧式であるため、特別な有資格者は必要ない。また、自燃可能なチッ
プは含水率 36%(ウェットベース)以下であり、欧州製のものと比べて、やや対応含水率が
低い。ボイラーは運転終了のタイマーセットや 1 日 1 回程度の燃料補給以外は基本的に無人
運転であり、市役所のパソコンに映し出された炉内温度や燃料の消費状況などを表示する監
視盤を介して運転を行う。役場のパソコンには電話回線でつながっており警報の場合は、市
役所、担当職員、メーカー担当者に電話がかかるように設定されている。なお、運転の遠隔
操作はできない。その理由として、火と固体燃料を使用しているので現場を見ずに操作する
ことは危険なこと。電気系統が複雑になること。小規模なのでコストをかける必要もないこ
資 10
参考資料 国内の熱供給事業事例
とが挙げられる。導管により送られた熱は各施設内で熱交換され、暖房・給湯・加温に利用
されている。熱の販売量は温水流量と各施設の温水入出温度差により毎日計算される。設計
時当初は、最も熱需要が大きいと予想されるのは冬のピーク時(午前 7 時~10 時、「いきい
き元気館」のプールに温水を張る時間)であり、2 施設を合わせて 1,100kW 程度の出力が、
平均熱需要は 400kW 程度との推定でされた。これに対し、夏季の熱需要はピーク時でも
300kW 程度、平均で 100kW 程度と大きな差があった。そこで冬季のピーク熱需要の約半分
にあたる出力 523kW の木質バイオマス用ボイラーを導入した。不足部分は随時補助の灯油
ボイラーを稼動させるて補うこととした。実際の稼動状況は熱需要が予想よりはるかに下回
る結果であり、チップボイラーのみでピーク時も対応できている。補助の灯油ボイラーは、
チップボイラーのスイッチが入るまでの早朝の1時間程度しか稼動しなかった。ただし、導
入初年度は機器不慮のトラブルから灯油ボイラーの稼動時間が長かった。平成 18 年度の直
近の実績は順調に稼動しており、灯油使用量は 14,000L 以下に抑えられるという予測がある。
写真:チップサイロ(30m3)
写真:使用されているチップ
現在、運営を行う上で問題となっている点が 2 つ存在している。
第一に、運営者が行政であるために運営における融通がききにくいという点である。
・設計の段階で想定したボイラーの規模が大きすぎたことが判明したため、それより小さな
規模のボイラーを導入しようとしたところ、書類の提出や各所との折衝で 1 ヶ月以上もの
時間を費やしてしまった。条例で熱供給単価を制定しているため、料金の改定には市議会
の審議が必要とされている。そのため、需要の変化や石油価格の変動等により熱供給単価
の改定が必要とされる場合にも、直ちに熱供給単価に反映させて収支を合わせることがで
きない。この問題は、民間で熱供給事業を行う場合には起こらない問題であり、PFI(プラ
イベート・ファイナンス・イニシアティブ)による熱供給事業の有効性に大きな示唆を与えるものである。
第二に、ボイラーに投入する木質チップの質のばらつきの問題である。
・プラントでは生チップの形で燃料を受け入れることにしている。現在、想定しているチッ
プの規格は、2cm×3cm×7.5cm 以下の大きさ、含水率 30%(ウエットベース)以内である。
この規格に納まるようなチップをチップ業者から 3.5 円/kg(ウエットベース)で購入する
ことになっているものの、試験的に収集を行っている段階では含水率が 30%以下までなか
なか下がらず苦慮している。晴天の日にチップを日干しするなどして含水率を下げている
が、チップの含水率を下げる有効な方法は現在も模索中である。
資 11
参考資料 国内の熱供給事業事例
<木質バイオマスの供給体制>
木質バイオマスの確保については、滋賀県木材協会高島支部が収集し、市内のチップ製造業
者がチップ化を行った上で搬入することになっている。
「ダイオキシン類対策特別処置法」によ
りこれらの製材残材の焼却に対する規制が厳しくなった近年、有効な利用方法を開拓すること
が求められているという現状から、製材残材の有効活用先として木質バイオマスによる熱供給
プラントに期待が寄せられた。しかし、収集されたチップのうち製材工場由来のものは 1~2
割にすぎない。残りの 8~9 割は全て伐開業者の支障木由来のものが、チップ化されてプラン
トに運び込まれている。なお、建築廃材は燃料の対象としていない。有害物質を含まないクリ
ーンな建築系廃材も存在するもののクリーンなものとダーティなものと判別が難しいことが地
域住民や議会の理解が得にくいことがその主な要因である。収集された木材は、チップ化工場
(民間のチップ加工業者)に集められてチップ化される。このチップ化工場へ製材残材を運び
込む製材業者は、チップ化工場から車で 5 分~10 分程度に位置する業者に限られており、当初
の想定よりずっと狭い範囲である。チップ化工場でプラント向けに加工し、含水率も 30%以下
に落とされ規格に適合したチップは 10tトラック(25 m3 積みと 29 m3 積みの二種類)に積載
され、チップ化工場から 10km 程度離れたプラントに運ばれる。この 10tトラック 1 台のチ
ップは容積重で 300kg/ m3 程度であり、満載の場合は冬場で 5 日分、夏場で 14 日分の消費量
に相当する量である。プラントでは納入の都度、含水計によってチップの水分量を計測する等
のチェックを行った後、チップを保管するストックヤード(35 m3)に投入される。そして、
サイロの隣にあるチップ供給装置(8 m3)からボイラーに投入され燃焼される。
資 12
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)策定委員会
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定委員会設置要綱
(設置)
第1条
金山町の特性に応じた木質バイオマスの導入に係る詳細ビジョンを策定するために、
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(所掌事務)
第 2 条
委員会は、金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに
係る詳細ビジョン)の策定に係る内容に関し、全般的な検討及び協議を行い、金山町に対
して助言を行うものとする。
(構成)
第3条
委員会は、次の各号に掲げる者で構成する。
(1) 住民代表
(2) 地場産業関係者
(3) 学識経験者
(4) 新エネルギー実践者
(5) 行政機関
(6) その他必要と認める者
(委員長)
第4条
委員会に、委員長を置く。
2 委員長は委員会を総括し、委員会を代表する。
3 委員長に事故があるときは、予め委員長が指定した者がその職務を代理する。
(会議)
第5条
委員会は委員長が招集し、委員長がその議長となる。
2 委員長が必要と認めるときは委員以外の者を会議に出席させることができる。
(処務)
第6条
附
委員会の処務は総務課において処理するものとする。
則
この要綱は公布の日から施行する。
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)策定委員会
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定委員会委員名簿
(敬称略、順不同)
分
野
住民の代表者
地場産業
関係者
学識経験者
新エネルギー
実践・関係者
行
政
氏
名
所
属
備
考
伊藤 一夫
柿崎 昭一※
松本 利雄
井上 亘
柿崎 正樹
丹 スワ子
岸 三郎兵衞※
白倉 周二※
星川 敏広※
三浦 秀一
金山町議会(産業建設常任委員長)
金山町区長・公民館長連絡協議会長
株式会社金山木材(代表取締役)
めばえ幼稚園(園長)・教育委員
金山町青年団体連絡協議会
団体推薦
金山町女性団体連絡協議会
団体推薦
金山町森林組合長
金山町商工会長
新庄最上建設総合組合金山支部長
東北芸術工科大学環境デザイン学科(助教授) 委員長
庄司
和敏
ウッドトラス金山(代表取締役)
野崎
沼澤
皆川
大隅
忠雄※
道也※
秀司※
尚行※
シェーネスハイム金山(総支配人)
かねやま新エネルギー実践研究会(会長)
最上総合支庁保険福祉環境部環境課長
最上総合支庁産業経済部森林整備課長
※は代理出席を可とする
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定委員会 オブザーバー
東北経済産業局
オブザーバー
新エネルギー・産業技術総合開発機構
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定委員会 事務局
事務局
鈴木
洋
総務課
政策主幹
伊東
宏純
総務課
課長補佐
宮林
聡志
総務課総合政策係
係
長
川崎
勉
総務課総合政策係
主
任
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定委員会 調査機関
調査機関
大場
龍夫
株式会社 森のエネルギー研究所
代表取締役
豊嶋
善基
株式会社 森のエネルギー研究所
チーフサポーター
山田
幸司
株式会社 森のエネルギー研究所
リサーチャー
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)策定庁内検討委員会
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定庁内検討委員会設置要綱
(設置)
第1条
金山町の特性に応じた木質バイオマスの導入に係る詳細ビジョンを策定するために、
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
(以下「詳細ビジョン」という。)策定庁内検討委員会(以下「庁内委員会」という。)を
設置する。
(所掌事務)
第2条
庁内委員会は、次の各号に掲げる事務を所掌するものとする。
(1) 詳細ビジョン計画案並びに策定方針に関すること。
(2) 詳細ビジョン策定の調整に関すること。
(3) その他詳細ビジョン策定のための必要事項に関すること。
(構成)
第3条
庁内委員会は、次の各号に掲げる者(以下「庁内委員」という。)で構成する。
(1) 総務課長
(2) 政策主幹
(3) 総務課課長補佐(財政担当)
(4) 環境整備課課長補佐(環境担当)
(5) 産業課課長補佐(林政担当)
(6) 教育委員会・学校給食共同調理場所長
(7) 教学課課長補佐(学校教育担当)
(庁内委員長)
第4条
庁内委員会の委員長(以下「庁内委員長」という。)は総務課長をもって充てる。
(会議)
第5条
2
庁内委員会は庁内委員長が招集し、庁内委員長がその議長となる。
庁内委員長が必要と認めるときは庁内委員以外の者を会議に出席させることができる。
(処務)
第6条
庁内委員会の処務は総務課において処理するものとする。
附 則
この要綱は公布の日から施行する。
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)策定庁内検討委員会
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定庁内検討委員会 委員名簿
(敬称略、順不同)
所
属
職
総
務 課
総務課長
阿
部
進
庁内委員長
総
務 課
政策主幹
鈴
木
洋
庁内委員
職務代理者
総
務 課
課長補佐
岸
忠 男
庁内委員
財政担当
環境整備課
課長補佐
柴
田 慶 一
庁内委員
環境担当
産
課長補佐
高
橋 忠 雄
庁内委員
林政担当
所
長
柿
崎 文 夫
庁内委員
学校給食担当
課長補佐
小
野 勇 一
庁内委員
学校教育担当
業 課
学校給食共同調理場
教
学 課
名
氏
名
委員会の職名
備
考
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定庁内検討委員会 事務局
所
属
職 名
氏
名
備
総
務 課
課長補佐
伊
東 宏 純
事務局
総
務 課
係
長
宮
林 聡 志
事務局
総
務 課
主
任
川
崎
事務局
勉
考
金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
策定庁内検討委員会 調査機関
所
属
職
名
氏
名
備
株式会社森のエネルギー研究所
代表取締役
大
場 龍 夫
調査機関
株式会社森のエネルギー研究所
チーフサポーター
豊
嶋 善 基
調査機関
株式会社森のエネルギー研究所
リサーチャー
山
田 幸 司
調査機関
考
金山町地域新エネルギービジョン
(木質バイオマス導入プロジェクトに係る詳細ビジョン)
発行:平成 19 年 2 月
製作:金山町地域新エネルギービジョン(木質バイオマス導入プロジ
ェクトに係る詳細ビジョン)策定委員会
〒999-5402 山形県最上郡金山町大字金山 324-1
TEL.0233-52-2111(代)
金山町 町の木シンボルマーク
(平成14年6月2日制定)
左から ぶな、金山杉、やまぼうし
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