...

リスク管理の緊急性の高まりとチャンス到来の兆し【日本語版】

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

リスク管理の緊急性の高まりとチャンス到来の兆し【日本語版】
リスク管理の
緊急性の高まりと
チャンス到来の兆し
保険業界のチーフ・リスク・オフィサー
への調査
概 要
保険業界のチーフ・リスク・オフィサー
(以下、
CRO)に対するアーンスト・アンド・ヤ
ングの年次調査を通じて、
業務全般にわたるリスクをどう捉え、
管理し、
対応してい
るかに加え、
現在の保険業界に抜本的な変化をもたらすいくつかの
「メガトレンド」
による影響が明らかになりました。2007 年から 2008 年にかけての経済危機から
派生した影響や、
新しい規制要件や厳しいマクロ経済情勢といった、
リスク管理に
影響を与える新たな要因の多くはよく知られるところですが、
この調査結果では、
こ
れらの要因がいかに CRO の役割を変えつつあるかが明らかになり、
結果として全
体を通じ 4 つのテーマが浮かび上がりました。
高まる CRO の存在感
CRO にその真価を発揮する機会を与えたのは、厳しい経済環境と継続的な規制の
変化でした。
CRO は事業部門のリーダーと直接関わり合うことが増え、かつてない
ほど企業全体にわたって機能するようになっています。
例えば一部の保険会社の
CRO は、それまでほとんど関わり合うことがなかった(新商品開発や情報システム
を含む)
オペレーション機能との連携を進めています。
また、
銀行の CRO の専門領
域であった
(IT リスク、
風評リスクおよびエマージング・リスクなどの)
新しいリスク
領域までカバーするようになった CRO もいます。
この傾向が今後の調査結果でも
継続して現れることは間違いありません。
深みがあり幅の広いリスク管理能力が保
険会社全体にわたって求められており、
それを推し進めることのできる経験と知識
詳しくは 4 ページをご覧く
とツールを備えているのが CRO だと考えられています。
ださい。
CROとリスク管理の高度化への「道のり」
ほとんどすべての保険会社が、
自社が直面する多様なリスクを把握している一方
で、
現在のリスク・プロファイルに対処するための取組みの成熟度や効率性につい
てはかなりのばらつきがあります。
個々の保険会社は、
リスク管理の高度化に向け
た道のりにおいて、
それぞれ異なった段階にあることを自覚しています。
そして、
リス
ク管理上の優先課題と同様に、CRO の役割、
権限内容や認知度は、
各社の規模や
国際的な事業展開の程度、
商品ポートフォリオ、
戦略的な取組みや組織体制などに
応じてかなり異なっています。
詳しくは 5 ページをご覧ください。
規制上の課題とコンプライアンス上の優先事項
進展のスピードが異なる理由の一つは、
金融機関の種類によって新しい規制が及
ぼす影響に差があるためです。
大手企業の一部は、
ドッド=フランク法の結果とし
て、
保険会社に対する連邦準備制度
(Federal Reserve: 以下、
Fed)による監督が
強化されたことの影響に加え、
ソルベンシー II
(以下、
ソルベンシーⅡ)
の対応に注
力しています。
他の保険会社は、
全米保険監督官協会
(以下、
NAIC)が新たに打ち
出した
「リスクとソルベンシーの自己評価
(以下、
ORSA)」への対応に注力していま
す。
詳しくは 5 ページをご覧ください。
必須となったリスクの計量化
計量化の重要性は高まる一方であり、
多くの会社が、
経済資本の活用や資本の最適
化への対応に加え、
市場リスク、
信用リスクやオペレーショナル・リスクの測定にリ
ソースを追加投入しています。
金融商品の収益性をより詳しく把握する必要性、
成長
機会を特定し評価する必要性、
そして金利動向や経済環境の変動が激しく先行きの
見通しも不透明な中で将来の売上を予測する必要性などが、
リスクの計量化を一
段と進める要因となっています。
結果として、
保険会社はリスク計量化のプロセスと
ツールの高度化を図りつつあります。
詳しくは 7 ページをご覧ください。
要するに、保険会社は、増加する規制要件に対応しながら、全社を対象とする入念
なリスク管理方針をもって明確にビジネスの正当化をはからなければならないと
いう、
リスク管理の新しい時代に突入したということです。
CRO が注目を浴びている
という事実は、抜本的な変化の原因でもあり結果でもあるという事が、今年度の調
査結果のさまざまな点で見てとれます。
1 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 2
アーンスト・アンド・ヤングの
CRO 調査について
2012 年秋に、
アーンスト・アンド・ヤングの保険リスク担当アナリスト
は、北米とバミューダ諸島の保険会社 19 社の CRO やリスク管理担当
役員にインタビューを行いました。
この 19 社は、損害保険、生命保険、
企業保険など保険業界の主要セクターすべてで、相当規模の事業を展
開しています。調査にご協力いただいた企業名と調査の質問項目につ
いては付属資料をご覧ください。各質問に対するインタビュー結果は
以下の各セクションで紹介しています。
3 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
セクション 1: 主要なテーマとその分析
テーマ 1:
高まる CRO の存在感
重要ポイント :
• 昨年度中にリスク部門・オフィスの規模を拡大した企業は、回答者
の 50% にのぼります。
• 回答者の 50% は、今後 3 年から 5 年のうちに、関連する経営機関と
の間で直接的な関与が増えるものと見込んでいます。
• CRO の 45% は、最高財務責任者(CFO)の直下にあり、それ以外の
25% は最高経営責任者(CEO)の直下に位置づけられています。
リ
スク管理に関する緊急性や CRO の果たす役割が高まったことは、
複数の保険会社に共通しています。
CRO の役割はより積極的かつ
顕著なものとなるべきであるという点で、おおむね意見は一致して
います。同様に、
どのようにして CRO が取締役会レベルの監視や意
思決定に関与するべきなのかという点についても、広い範囲でお
おまかな合意が得られています。ただし、
その方向への移行を実現
化するためのロード・マップはありません。会社が異なればリスク
管理手法の進展の度合いが異なるため(テーマ 2 をご参照くださ
い。)、
CRO が抱える優先課題も異なります。
より多くの業務に関
保険業界全体を見渡すと、CRO が新しい役割を担い、
与することは至極当然のことであるように思われます。長引く低金利、収益
率の低下や株式市場の低迷により、保険会社は、上昇基調で高い利鞘を享
受できた時代には気にも留めていなかったリスクでさえも、
もはや、看過で
きない状況になっているからです。いくつかの場面で、保険会社は難しい問
題を突きつけられています。例えば、はほとんど資産価値の上昇が見込め
ない中で、
どうすれば年金商品を販売し、利益を得ることができるのか、
ま
た、
どうすればこれまで認識、把握されていなかったリスクを織り込んで商
品の価格設定ができるかといった点が挙げられます。
広範囲をカバーする販売システムにつきものの高コスト体質に対しても、
かつてないほど厳しい目が向けられています。将来を見据えた保険会社
は、
リスクを考慮した役員報酬システムを取り入れようとしています。
ソー
シャル・メディアの普及や消費者の地位向上を背景に、誤った対応がメディ
アに注目されることで潜在的なコストが発生する状況下において、マーケ
ティングやブランディングへの取組みさえも以前より高いリスクを伴うもの
となっています。つまり、保険会社はそのオペレーションに潜むリスクの存
在を受け入れつつ、
それを適切に管理するための正しい戦略と手法を明確
化すべく模索している状態なのです。
CEO は CRO に、
さまざまな部門、
プロダクトラインやオペレーションにわ
たる問題へ対応させています。
CRO には、他のどの役員にもまして、個々の
リスクだけでなく、保険会社が現在直面する相互に関連した複雑なリスク
の組み合わせ全体を明らかにできるような、数多くのツールや分析力や全
社的な視野が備わっています。非常に厳しい経済情勢と規制要件の増大に
より、
その取り組み方はさまざまであれ、効果的なリスク管理と CRO が、最
終的な事業の成否には不可欠であることを意味しています。
CRO 調査の回答者の多くが「ビジネスへの直接的な関与」に言及するのは
なぜか、
これらのすべての要因が物語っています。今まで以上にオペレー
ショナル・リスク、保険引受リスクやプライシングへ注意を向ける CRO もい
れば、代理店やブローカーなども含めた現場のスタッフと直接関わり合う
CRO もいます。ビジネスへの関与とは、保険会社の種類が異なれば、その
内容も異なってくるのです。
保険会社の CRO と銀行業界の CRO とを比較した場合の結果は明確です。
銀行の CRO がかなり前から監視対象としていた IT リスクやエマージング・
リスク、新商品開発や風評リスクが保険会社の CRO の課題として浮上して
きたのは、多くの場合ごく最近のことです。
その差は縮まりつつあるものの、
組織内での存在感という点では、保険会社の CRO が銀行の CRO の後塵を
拝していることは明らかです。調査回答者は、新商品のプライシング、新興
市場のリスク、信用リスクやバランスシートリスクなど、優先度がより高いリ
スクへの関与が深まり、
その関与が明確化していると報告しています。今後
の CRO 調査では、
これらの分野への関与がさらに高まり、
銀行と保険会社
の CRO の果たす役割が近づいていく様子が明らかになると思われます。
取締役会と直接的なやりとりを行う CRO が増える一方で、CRO が CEO の
直接的な指揮命令系統下に入るという動きは、昨年度の CRO 調査で回答
者が予想したよりも鈍いものになっているようです。現状、
CRO の 45% は
CFO の直属であり、CEO の直属である CRO は 25% に過ぎません。ただし
回答者の 65% は、統合リスク管理(ERM)、監査委員会やリスク委員会を通
じて、
「自由に」、
または直接の関与を通じて、取締役会とのパイプを確保し
ています。つまり、現在の組織体制は CRO の重要性の高まりを完全に反映
したものになっていないものの、我々は今後の調査で CRO が CEO の指揮
命令直下となり、CFO とは組織上一線を画して離れる動きが見られるもの
と見込んでいます。
CRO の発言から :
• 「我々のゴールは、規制当局者を満足させることではなく、企業の価
値を高められるような包括的なリスク管理能力を備え、浸透させる
ことにある。」
• 「最大の成果は、
リスク委員会への役員の関与、CEO の積極的な参
加である。当社の ERM プログラムへの当局の反応が良かったのは、
その結果と考えている。」
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 4
テーマ 2:
CRO とリスク管理の高度化への「道のり」
重要ポイント :
• 2013 年には回答者の 25% が経済資本の活用に重点的に取り組ん
でおり、
ORSA への対応に力を入れているのは全体の 20% でした。
• 優先課題、
これまでの成果、責任範囲のどれについても回答者の回
答はかなり多岐にわたっていました。
調査結果では、
リスク管理全般と CRO の役割という点に関して、各保険会
社が異なる状況にあることが明らかになりました。大規模で複数の保険種
目を手がけるグローバルな保険会社の ERM の取組みは、米国主体の中規
模の保険会社よりもはるかに進んでいることは確かです。
そして、
その差を生んでいる要因は、組織の複雑度やリスク管理態勢の成
熟度や頑健性、各保険会社にとっての主たる規制です。差異はあらゆる面
にわたりますが、代表的なものとして、
以下のようなものが挙げられます。
• CRO の指揮命令系統
CRO の発言から :
• 「保険会社が 20 社あって CRO が 20 人いれば、同じだけの違った
職務内容であって当然だ。」
• 「インフラが整えば、CRO の役割はもっと戦略的、分析的で、事業計
画への関与を深めるものになっていく。」
調査結果からは、
あらゆる種類のリスクの識別および管理の方法が変化し
ているのと同時に、CRO の役割も変わりつつある現在の保険業界の姿が
明らかになっています。
とはいえ、
リスク管理の高度化を進めるに当たって
保険会社がお手本にすべきわかりやすいロード・マップも、明確なベンチ
マークもベストプラクティスもないのが現実です。ただし、CRO は、
リー
ダーかつ先駆者として、報告や規制対応を機械的に行う段階から、次第に
業績向上と直結した戦略的な業務へと移りつつある状態であることは事実
でしょう。つまり、
CRO が、今後の道案内役を務める立場になる可能性が高
いということです。
• CRO の役割と責任
• リスクの計量化
• 連邦保険局(Federal Insurance Office: 以下、FIO)
と ORSA に対する
対応
テーマ 3:
規制上の課題とコンプライアンス上の
優先事項
• 一般的な優先課題 ̶ 規制遵守から ERM まで
CRO は原則として
「自社が直面するすべてのリスク」に責任を持つ立場で
す。実際のところ、
この広い範囲をカバーするこの定義には、資産負債管理
(ALM)のミスマッチ・リスク、保険引受リスク、信用リスク、
オペレーショナ
ル・リスク、
ブランド・風評リスク、IT リスクから内部監査に至るまでのすべ
てが含まれています。ただし、
リスク管理への対応が進んでいる大手企業の
中には、
エマージング・リスクの洗出しやモニタリングや軽減など、明らか
にさらに戦略的な業務へとシフトしている動きもみられます。同様に、
リス
ク管理の専門家の一部は、CRO が(通常は、
リスク関連の委員会やリスク関
連以外の委員会を通じて)
どのように事業部門や経営陣上層部と相互作用
すべきかを明確化しています。
重要ポイント :
• 回答者の 30% は ORSA が規制導入上の最大の課題になっている
と回答しています。
それに対して、
ソルベンシーⅡが課題となってい
ると回答したのは 15% でした。
• また回答者の 15% は、業界が直面している最大のリスクに関する
課題として、規制および「会計面の問題」
を指摘していました。
• 75% の回答者は、ORSA の要件を満たすための計画を整備してい
ると回答しています。
総じて規制の変化が保険業界に対してもたらす影響は、強調してもしすぎ
ることはありません。ただし調査への回答者は、業績向上につながるような
方法で規制に対応して行く必要があることを理解しています。CRO は、時と
して矛盾する要請への対応を促す、独特の立場にあるといえます。
米国の保険会社が重点的に取り組んでいるのは ORSA と州レベルの規制
への対応です。具体的には、各社は新たなもしくは修正された報告義務を
満たすよう確実を期す必要があります。
その結果、各社が FIO の役割につ
いて、
あらゆる可能性の影響を考慮しているものの、国レベルの保険業界
に対する監視の導入の可能性よりも、
NAIC の役割の方に関心が向いてい
ます。
5 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
規制の要因から、
CRO の進化のスピード、役割について、保険会社間でば
らつきが生じていることは確かです。世界各地で事業展開を行っている、複
雑な組織体制を有する大手保険会社には、
ソルベンシーⅡで培った経験を
生かし、広い視野を持っています。彼らは資本規制要件を研究し、全般的に
ERM の手法の見直しを行い、監視体制が新しくなるに当たっての対応方針
を形成しつつあります。
またこのような保険会社は、入念に今後の成り行き
を見守りつつ、州、FIO や Fed の将来的な役割に影響を及ぼすことに努め
ています。銀行や貯蓄組合を傘下に置き、
システム上重要な金融機関
(Systemically Important Financial Institution: 以 下、
SIFI)に 指 定 さ
れる可能性がある保険会社の間では、Fed の監視の今後の動向も大きな
課題となっています。
CRO の発言から :
• 「リスク管理に関する単一の基準を義務付けてしまえば、システミック
リスクが増大することは避けられない。」
• 「共通の一貫性のある定義がない状況下で、
どのように資本を規制
できるのか我々には理解できない。」
現在の州レベルでの報告要件は、
洗練されたものではないものの、
多数の
保険会社はどうすればそれを遵守できるか理解しています。
報告要件の合
理化に対して、
Fed と FIO がどのような役割を果たすことになるのか、CRO
は注目しているようです。
また一部の回答者は、
グローバル・レベルの規制
の遵守につながるような、
国レベルの基準の設定の利点を認識しています。
規制面の問題についていえば、調査結果からは、各保険会社とその CRO が
何を望んでいるかに相違があり、
その相違が各社の規模や事業展開の範
囲に深く結び付くことが明らかになっています。保険業界の意見は、一つに
まとまっているわけではなく、保険ビジネス界における複雑さを反映してい
ます。
2012 年の CRO 調査の結果は、
アーン
スト・アンド・ヤングと国 際 金 融 協 会
(Institute of International Finance)
が実施した第三回の年次リスク管理調
査の結果との共通点があります。
この調
査には 38 カ国の銀行 69 行と保険会社
6 社のリスク管理担当役員へのオンラ
イン調査と電話によるインタビューの結
果が含まれています。
その調査で取り上げたテーマの中に
は、
2012 年の CRO 調査と重なるもの
があります。
• 調査回答者の約 75% が、
グローバル
と各国の双方で現在進行中の規制
改革の対象範囲、導入のタイミング
や潜在的な影響が最大の課題であ
ると指摘しています。
• 「リスク管理をビジネスに定着させ
ること」は依然として課題となってお
り、
日々のビジネス上の意思決定とリ
スク管理が連携しているとした回答
者は全体の 37% に過ぎません。
• 今 日、金 融 業 界 で は 8 割 を 超 える
CRO が、CEO に報告を行うか、
もしく
は CEO と取締役会のリスク委員会
の双方に報告を行う体制となってい
ます。
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 6
テーマ 4:
必須となったリスクの計量化
重要ポイント :
• 銀行ではほぼ 100% の回答者が経済資本を客観的なリスク尺度と
して利用しているのに対し、回答者では全体の 60% に過ぎません。
• 30% の企業が経済資本プログラムを 2012 年度の重要な達成事
項として挙げており、25% は 2013 年の重点課題であると考えてい
ます。
リスクをビジネスに定着させることへの認識が高まるにともなって、保険会
社によるリスクの計量化もますます重要なものとなっています。規制当局
は、正確で検証可能なリスク評価態勢の構築を要請しています。
さらに重
要なことは、
リスクの評価が、
保険会社が重要な事業上の意思決定を行い、
限りある経営資源を配分する際の重要な手段であるということです。回答
者は、高品質なリスク・データが、信頼性のあるより適切な意思決定とどの
ように結びつくのかを理解しています。
言い換えれば、
リスクの計量化とは、単に
「守りの姿勢に入る」
ことや「規制
ことではなく、
さま
対応ができているかどうかチェック・リストで確認する」
ざまな市場シナリオや金利シナリオや経済シナリオに従って、
より明確に商
品の収益性を把握し、
より体系的に成長機会を評価し、
より正確に将来の
収益を予測することです。
その意味では、
リスク管理は、業績管理や、総合
的な事業管理と同義語となっています。
CRO の発言から :
• 「リスクに関する数値を信用できなければ、資本バッファーを余分に
確保しなければならなくなる。」
• 「行動に即した、明確なリスクテイクの方針とリンクさせつつ、定性的
な尺度の利用も広がりつつある。」
調査の回答者は、
リスクの計量化こそが、保険会社が銀行や他の金融業界
の競合他社に追いつかなければならない分野であると考えています。
その
結果各社は、経済資本や自己資本の最適化、市場リスク、信用リスク、
オペ
レーショナル・リスクの計測といった分野にこれまで以上にリソースを投入
しつつあります。従って、保険会社が、ALM、確率論的シミュレーション、
スト
レス・テストに始まり、巨大災害のモデリング、
ロングテイルの見積り、
リス
ク・リターン分析に至るまで、
その商品ポートフォリオや組織構造に合った
さまざまな手法やメソドロジーを利用していることは、驚くに足りません。
ただし回答者によれば、資本の配賦やオペレーショナル・リスクに関する正
式に承認された施策が存在しているのは、依然として例外的な状況だとい
うことです。
保険業界における、
大量のデータの取扱いや分析力の進化を背景に、
リス
今や、
将
クの計量化に向けた動きがある程度加速していることは事実です。
来を見据えた企業は、
その大量のデータ資産を、
自社の顧客、
競合相手や
市場に関する貴重な情報源であると考えています。
契約更新されない可能
性が最も高い保険契約者を特定し、
特別な施策を行うために利用するパワ
フルなツールと高度化したプロセスは、
事業部門別、
プロダクトライン別、
全社レベルなどそれぞれの単位でリスクを計測することにも利用できます。
回答者である CRO の多くが、
自社がデータ・セットを統合し同期化させよう
と試みた際にリスクが明らかになったことを認めています。
リスクの計量
化、商品の販売推進、引受基準のいずれであっても、一貫性があり最新かつ
網羅的で正確なデータに基づいて経営陣が意思決定を行えるのであれ
ば、他社よりも優位な立場に立てることは間違いありません。
7 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
セクション 2: 調査の質問とそれに対する回答
Q1. 過去一年間の中で達成できた、
最も重要な成果は何ですか。
経済資本 30%
25%
30%
規制対応 20%
ERM 15%
10%
15%
20%
経営の関与の
強化 10%
その他 25%
回答者が重要な成果として挙げたものは、ほぼ 30 の異なる領域にわたり、
そのうちの代表的なものは上記の通りです。規制要件(ソルベンシーⅡな
ど)
を満たすために行われたリスク管理への取組みが、結果としてビジネス
上のメリットにつながったケースもあります。ERM が数多く挙げられたこと
は驚くべきことでした。ただしそれは、多数の CRO の存在感が高まったこと
や、
リスクに関するセクション横断的、事業部門横断的な見方が広がったこ
とを反映しているとみられます。
また ORSA の導入に備えて、
自社の S&P
の ERM 格付を引き上げ、ERM プログラムを高度化しようとする保険会社
の数も増えています。
「その他」の回答には、
以下のものが含まれます。
• 信用リスク計算能力の向上
• 金利リスクと市場リスクの評価
• リスク・ガバナンスの整備
• バランスシートからの「リスク削減」
CRO の発言から :
• 「信用リスク管理の枠組みの高度化により、将来のニーズや役割が
明確化できた。当社は信用リスクが増加する方向に進んでおり、必
要とする与信を銀行から得られるかどうかわからない。」
• 「ソルベンシーⅡは、内部資本モデルの構築の後押しとなり、規制が
無い状況で取り組んだ場合よりも速やかに内部資本モデルを構築
することができた。広範にわたる文書化が必要であったが、当社は
以前よりも強く、盤石になった。」
• ストレス・テスト実施態勢の整備
• 変額年金をはじめとした、商品設計の向上
保険会社がポートフォリオのリスク低減と成長機会を見つけ出すことに苦
慮する中で、
リスク・リターンのバランスの確保に新しい視点を導入するた
め、経済資本の活用を強化しています。
その結果、
リソースと資本配賦に関
する意思決定が向上しつつあります。
昨年度の調査結果との違いははっきりしています。
2011 年の調査では、
リ
スク報告やリスクメジャー、
リスク管理部門にわたる具体的な役割と責任
の明確化などが、CRO の重点対応箇所でした。今年度の結果では、CRO は
さらに前進し、戦略上の課題も幅広く把握するようになっています。
また
CRO は、
リスク管理は単独では対応できず、
「トップダウン」型の方法を取り
入れる必要があることに気づいています。
それを実現するためには、
CRO
は事業部門のマネジメントと積極的に関わり、事業部門レベルまで届くリ
スク管理の取組みを整備し実施するための協力体制を築いていく必要が
あると考えられます。
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 8
9 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
Q2. 過去一年間と比べ、今後一年間で、
あなたがより注目するのはどの分野ですか。
経済資本 25%
ORSA 20%
5%
5%
25%
15%
オペレーショナル・
リスク 15%
またこれは、CRO の役割が拡大していることの何よりの証でもあります。
CRO にはそれに相応しいツールとメソドロジーと必要なスキルがあること
から、
エマージング・リスクの洗出しやオペレーショナル・リスクへの対応プ
ログラムの整備において主導的な役割を果たすことが求められているの
です。
Q3. 保険業界が直面している最大の
リスクや課題は何だと思いますか。
リスク選好 /
ガバナンス 15%
15%
20%
15%
経営業務への
浸透 15%
ERM 5%
低金利 / 経済情勢 45%
10%
10%
ビジネスにおける
リスクの浸透 20%
45%
15%
エマージング・
リスク 5%
規制 / 会計 15%
エマージング・
リスク 10%
20%
その他 10%
CRO の発言から :
• 「イノベーションの速度や広がりを考慮すれば、エマージング・リスク
に対応するメリットは明らかである。
リスクの中には、測定が非常に
難しいものもある。
中でも、
リスクの発生頻度に応じて、
リスク計測の
対象の線引きをどこで行うかが重要な問題だと考えている。」
• 「注目しているのは、
リスクを、
インフラを含めたビジネス・プロセスに
さらに浸透させることである。」
• 「欧州のソルベンシーⅡの枠組みを、米国企業に最適に適用するため
金利とマクロ経済情勢が業界の最大の懸案事項であるとの共通理解は、当
然のことといえます。ただし、
その懸案事項に対する反応にはかなりの差が
あります。回答者が不安視している事項には、
以下の様なものがあります。
• 低金利が続く中での利益率目標の達成
• 変額年金のブロックの管理
の方法を検討し模索している。
これにより、
ソルベンシーⅡの最良
• 資産価値の上昇がないかほとんど見込めない状況での商品設計
かつ最も有益な要素を活用できるようになる。」
また、歴史的な低金利がどれほど長く続くのかという点や、金利上昇局面に
なった場合の変動について不確実性要素があります。
それに加え、将来の
規制や会計の変更がどうなるかについても疑問が消えないままの状況が
続いています。
この質問への回答は、昨年度の調査と同じでした。
2012 年と同様に、CRO
は金利に関する懸念や ALM、
ガバナンス上の問題、
オペレーショナル・リス
クや保険リスクの問題などが 2013 年の課題となることを予想しています。
ORSA に代表される規制対応も、CRO の「宿題」
として引き続き優先度が
高くなるものと見込まれています。
最も多く挙げられた課題は経済資本であり、
これは 2013 年以降も CRO か
ら注目されることでしょう。多数の回答者も、今後数年間にわたって経済資
本が主要課題になると予想しています。多数の回答者が、経営活動との連
携や統合の観点から、経済資本に言及していたことは注目に値します。
CRO は、経済資本と結び付けられたリスク管理プログラムが有効に機能す
れば、事業部門の管理への主体的な参加と全面的な支援につながること
を理解しているのです。
ERM フレームワークの完成、
リミットおよび許容度の設定を通じた経済資
本プログラムの実行のいずれにおいても、
リスク選好は重要な役割を果た
します。
したがって、
この質問に対する答えにリスク選好があがってくること
は、不思議なことではありません。
昨年度の調査以降、経営実務にリスクを浸透させることが、規制や会計の
変化よりも CRO の主な懸案事項として上位にあがってきているのは特筆
すべき傾向です。
それ以外でリスク管理上の課題として回答者が挙げたものとして、保険商
品のリスク・プロファイルの変化や新しい販売チャネルなどがあります。
過去には、CRO が保険業務のコア・プロセスの支援を求められることはほ
とんどありませんでしたが、現在では、保険会社の本質的な業務に内在す
るリスクを識別し、
その軽減を図ることに貢献し、急速に変化する保険ビジ
ネスの全般をカバーする着眼点と方法論を持つ存在が CRO であるとの認
識に至りました。
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 10
ソーシャル・メディアへの対応をはじめとした風評リスクも、CRO を悩ませ
る新たな問題の一つとして浮上しています。
ソーシャル・メディアはそれ自
体がリスクではないとしても、
「悪いニュース」が広まるまでの時間が早く
なったり、
そのリスクの影響が増幅したりする可能性があります。顧客サー
ビスにマイナスの影響を及ぼすようなオペレーション上の機能停止がフェ
イス・ブックやツイッターを通じて広まれば、
その顛末は深刻なものとなり、
影響が広範囲に及ぶ可能性があるのはその一例です。
CRO の発言から :
• 「低金利が長引いていることで、年金や生命保険市場における利率
保証型のビジネスに対するマイナスの影響が大きくなっている。」
• 「多数の保険会社が利率保証型の商品から、従来型の保障を提供
する一般的な保険商品へ移行しており、
この流れへの対応の遅れや
新たな経営上の課題が発生してくるだろう。」
• 「会計基準と規制の枠組みとの整合性がなく、規制当局間での協調
が不十分である。」
Q4. 目下検討中のものも含め、具体的に
どの規制が実施上最も大きな課題となる
と考えますか。
ORSA 30%
規制上と会計の
整合性 20%
6%
14%
30%
ソルベンシーII 15%
その他 15%
15%
15%
20%
ドッド=フランク法 14%
FIO 6%
ORSA、規制および会計の整合性は、規制に関して CRO が第一に懸念する
ところとなっています。実施は二年先からとはいえ、
ORSA は大きな注目を
集めています。多数の回答者は、報告書の作成そのものは大きな問題では
ないと考えているようです。
ソルベンシーⅡに対応している企業や盤石な
ERM の枠組みを持つ企業の CRO は、要件を満たすことは容易だと踏んで
います。
11 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
ただし、大多数の回答者は、
NAIC の ORSA 基準ではかなりの柔軟性が認
められているものの、十分な指針の提供がないことに懸念を表明しました。
この懸念は、
NAIC、格付機関および各州の監督機関が多数の ORSA レ
ポートのサンプルをレビューした結果、徐々にではありますが、
さらに包括
的な報告内容が求められ、細かな基準の整備の方向に進むのではないか
というものです。NAIC の ORSA に対して異を唱える CRO はほとんどいま
せんが、
報告書の作成や準拠基準の設定に関して方向性や指針をより明ら
かにしてほしいと考えている回答者は多くいます。
また大手企業の一部は、米国の規制当局と海外の規制当局との間の整合
性がないことに懸念を表明しています。彼らは、規制と会計の共通の枠組
みに対する支持を表明しましたが、最終的にどうなるかについては懸念を
明らかにしています。共通の枠組みがなければ、資本管理は困難となってし
まいます。
回答にばらつきがあるのは、各社が目下従うべき、州、国、国際レベルの基
準が多数存在している状況を反映しています。数は多くないものの、
ドッド
Fed による監視、生命保険契約に関する規制および外国口
=フランク法、
座税務コンプライアンス法(FATCA)
を挙げた企業も中にはありました。
CRO の発言から :
• 「多数ある規制当局の間で会計基準のコンバージェンスが行われな
いことは、真に不安の種である。」
• 「Fed の監視は我々の一番の懸念材料である。
というのも、保険業界
における統一的なリスク管理基準が導入されても、
それで Fed の監
視に対応できるのか不明なためである。」
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 12
13 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
Q5. NAIC の ORSA の要件を満たせる
よう、目下整備している具体的な計画は
ありますか。
計画内容にはかなりばらつきがあるものの、調査への回答者の 75% 以上
が、NAIC の ORSA の要件を満たすための具体的な計画があると回答して
います。
ソルベンシー II に対応し、盤石な資本計画がある企業は、要件を満
たすために必要な大半をすでに準備しているといえます。
それ以外の企業
では、
データ要件の洗出しを行い、初期の作業計画を整備中ですが、いず
れもかなり難しい課題であるとみられています。ORSA が初めての組織に
とっては、複数年にわたる資本の予測も難しい課題の一つとなっているよ
うです。
CRO が頭を抱える他の問題としては、ORSA の規制を管理し、その方向性
を決めるために必要な技術、
知識および権限を整備する能力を州が有して
いるかということです。
ORSA の計画を作成し提出する際に、州が保険会社
の必要とする指示を出せるのかとの問に対して、一部の回答者は、連邦の
保険監督当局を任意で選択できるとすることへの支持を表明しています。
CRO の発言から :
• 「ソルベンシー II 向けの ORSA の導入後に、NAIC の ORSA の要件
を満たすよう見直しを行った。」
• 「ORSA 導入のための計画を整備することが今年の目標である。ハ
イレベルな分析は終わり、多くの項目については対応可能な状況
であるが、
組織のすみずみからすべての必要な情報を引き出すこと
は依然として難しい作業である。」
Q6. 保険業界が採択するべきだと
あなたが考えている規制はありますか。
州ではなく国レベルでの規制を任意で利用できるようにする必要性がある
という回答者と、
これ以上の規制は必要ないとした回答者が同数となりまし
た。
ある意味で、
この両方の回答は、
現状における、
曖昧さの残る流動的な
状態が継続している規制環境をもっと明確なものとし、
複雑さを解消してほ
しいという業界の要望を反映したものであるといえます。
保険業界は、
依然
として規制が強い業種であるうえに、
各国レベルおよびグローバル・レベル
での業務展開、
管理および規制が増えつつあることは間違いありません。
Q7. FIO の役割はどうあるべきだと
思いますか。
規制に対する CRO の姿勢が分かれる点については、
この質問への回答で
も明らかになっています。約 20% の回答者は、
FIO の役割は限定的ものと
すべきか、役割を与えるべきではないと考えています。回答者の過半数は、
その責任範囲は、国レベルでのリスクに係る問題に関するデータと調査結
果の提供や、税務のような国レベルの問題に関する州との協働に限定すべ
きであると考えています。彼らは、慎重に言葉を選びつつも、州の監督者、
NAIC および Fed の貯蓄貸付持株会社に対するそれぞれの監視が重複す
べきではないと述べています。一方で回答者の約 25% は、FIO がもっと主
体的に目立った役割を果たすべきであると考えています。
これらの回答者
は、
FIO が下記に挙げた業務を担うことを望んでいます。
• 「Fed の活動を制御する」
こと
• 特に、
保険監督者国際機構
(the International Association of Insurance
Supervisors)などの国際的な保険関係の会議で、米国の立場を代弁す
ること
• 共通の規制の枠組みを構築すること
• 任意に選択できる国レベルでの規制の枠組みを整備すること
• Fed と連携し、保険を深く理解したうえでの資本監督の基準を整備する
こと
FIO は「何よりも害を成すなかれ」
というヒポクラテスの誓いに従うべきで
ある、
という意見が広がりつつあります。規制当局がさらに増えたり、整合性
のない、
わかりにくい報告要件がさらに課されたりすることを望んでいる
CRO はいません。調査対象者は、国際的な場において保険業界の立場を
支援し、国内の規制の枠組みを簡素化することこそが、FIO の役割であると
みているようです。
CRO の発言から :
• 「健全性の監視全般に関して FIO の役割が強力になれば、国際的な
場において、米国の立場が明確に表明され、本国の規制も簡素化
できるようになるだろう。」
• 「FIO はソルベンシー、税務、および国際的な所有構造に集中し、
料率、報告様式および市場慣行については州に委ねるべきである。」
• 「FIO については、銀行を傘下に置く保険持株会社をシステミックに
守る立場として、保険会社を対象とした適切な枠組みを作れるよう
な存在になってもらいたいと考えている。」
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 14
Q8. あなたが報告を行う相手先は誰ですか。
CFO 45%
10%
CEO 25%
10%
45%
10%
COO 10%
取締役会 10%
25%
その他 10%
2010 年の CRO 調査では、回答者は今後 3 年から 5 年のうちに、CRO の地
位は CFO と肩を並べるものになると予想していました。2 年経った今、
その
歩みは予想に比べて遅いようにみえます。
2012 年の回答者のほぼ半数
は、
CRO は CFO に報告を行っており、4 人に 1 人が CEO に報告を行ってい
るという回答が寄せられています。
保険業界での現在の CRO のレポーティング・ラインは、大半が取締役会か
CEO のどちらかの直属となっている銀行とは対照的です。
まだ内容は最終
決定されていないものの、Fed が資産規模 500 億米ドル超の銀行持株会
社に向けて提案している健全性規制強化基準では、
そのような直接的な指
揮命令系統の整備を求める方向です。
Fed の措置は CRO を、客観的で慎
重なリスク管理を行うための第二のディフェンス・ラインとして位置づける
ものです。保険会社の CRO はメソドロジー、対応能力、組織体制を整備す
るにともなって、独立した、第二のディフェンス・ラインとして進化することに
なるでしょう。
現在の報告体制をどのように改善すべきか尋ねたところ、40% の回答者は
現状の報告体制に満足しており、
20% の回答者は直接 CEO に報告するこ
とを望んでいるという結果になりました。
将来的にはもっと多くの CRO が CEO の直属となる可能性が高い一方で、
すでにグローバル・レベルや米国内の取締役会へのアクセスを確保してい
るものとみられます。回答者の 65% は取締役会か委員会(ERM 委員会、監
査委員会またはリスク委員会)に少なくとも四半期ごとには報告を行って
いると回答しています。他の回答者は、
そのようなコミュニケーションには
制約がないと回答しています。
この調査結果から、現在の CRO の報告体制に関する流れは、二つの異な
る方向性から生まれてきていることが推察されます。
• 監査部門や保険数理部門から社内で昇格した CRO は、CFO の直属と
なっている場合が多く、監視対象とするリスクも限定されている場合(典
型的には、保険リスク、巨大災害リスク、SOX 法の対象となるリスク、
オペ
レーショナル・リスクなど)が多いようです。
このような場合、
CRO は通常
は運用リスクや規制リスクや信用リスクについて責任を負いません。
• 銀行や証券会社出身の CRO は、主要リスクすべてに責任を負い(信用リ
スク、市場リスク、保険リスク、戦略リスク、新商品リスク、
エマージング・リ
スク、規制リスク、
オペレーショナル・リスクなど)、CEO や取締役会の直
属となるケースが多いようです。
さらに、
このような CRO は、経営陣から
なる委員会の一員として、経済資本やリスクの計量化に関して主体的な
役割を果たしているようです。
15 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
Q9. 責任を負っているリスク・カテゴリー
にはどのようなものがありますか。
この質問への回答は、調査の中でも最もばらつきが多く、業界全体に見ら
れる CRO の多様な役割と責任という背景を反映しています。CRO の役割
が大幅に変化しつつあることは明らかですが、
その職務内容が明確に定
まっておらず、今後の方向性についても明確な道筋があるわけではありま
せん。
CRO が「自社が直面するすべてのリスク」に対する責任があることではお
おむね意見が一致していますが、
「すべてのリスク」が何を意味するか、
そ
の解釈に関しては意見が分かれています。損害保険リスク、生命保険リス
ク、市場リスク、ALM リスク、引受リスクや信用リスクはよく挙げられるリス
クです。
それ以外にオペレーショナル・リスク、巨大災害リスク、風評リスク、
IT リスクやエマージング・リスクという回答もありました。
従来からのリスク報告体制による影響も、調査結果に色濃く反映されてい
ます。回答者からは、
ERM や経済資本といった当然の回答がなされる一方
で、内部監査、
コンプライアンス、再保険、変額年金ヘッジや巨大災害も挙
げられていました。多くの場合、
このような以前からの割当が見直されるこ
とはないようです。
ただし、
CRO の役割と責任が早いペースで、大きく進化していることは明ら
かです。
CRO は、不透明で荒れ狂う状況の中で真価を発揮し続けており、
新たな脅威をモニターし軽減する責任までをも負うようになりました。従来
からの責任に、新たな責任が課されたことで、一部の CRO の業務負担は過
大になってしまいました。事業部門と本社 CRO との間の責任の所在の不明
瞭な点や CRO が多数のリスク関連およびリスク関連以外の委員会を担当
することから、状況はさらに複雑になりました。
また大量かつ多様な責任が課され、業界の標準型がないこともあいまっ
て、
その役割を正確に定義づけることが難しくなっています。一部の企業で
は、
CRO の主な役割は、事業部門や経営陣上層部を効果的に牽制する点
にあるように見受けられます。ただし、
このような新しい責任の多くはまだ
発生したばかりであるため、
まだ網羅的で最終的な職務内容として組み込
まれていません。
CRO の発言から :
• 「CRO は、すべてのリスク・カテゴリーに一定の権限を持って関わっ
ているが、
巨大災害リスク、
資本モデリング
(モデルの構築と管理)
や
保険カバレッジの調達などを担当しているのは ERM 部門である。」
の購入」
• 「我々は、引受、オペレーションや運用などに関して、他のグループや
リスク担当者との間の連携を深めている。」
• 「リスク管理に関する意思決定は、主として専門が異なる多数のリス
ク委員会が行っている。
そして、指定されたリスク担当者と協力して、
リスクの相関性に対する意識を高めることが現在の重点課題とな
っている。」
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 16
Q10. どのようにしてリスクを計量化して
いますか。
Q11. リスクの計量化の効果は
どのようなものでしたか。
役割と責任が多様化は、
リスクの計量化に明確に表れています。保険業界
の大半の CRO は、他の金融業界の CRO と同様に、定性的な尺度と定量的
な尺度を組み合わせて利用しています。ただし銀行ではほぼ 100% の
CRO が経済資本を利用していると答えているのに対し、
この調査では 60%
強に過ぎません。場合によっては、経済資本では財務リスクしか捕捉してい
ないケースもあります。
またオペレーショナル・リスクは比較的新しく、ほと
んど、
リスクの計量化の対象とされていません。
これと並行して、多数の企
業では正式な形での資本配賦も行っていません。
この質問に対する答えは多様であり、経済資本およびリスクの計量化の水
準が業界全体を通じて一様ではないことを反映しています。先進的な対応
プログラムを有する企業は、経済資本の結果を、事業部門の業績指標や
キー・リスク・インディケータに明示的に組み込んでいます。
そのような対応
プログラムのない企業では全般的に、事業部門のトップに対し、
このような
アプローチやリスク計量化による効果をなかなか説得できないでいるよう
です。
リスクの計量化については、事業部門レベルよりは、企業トップレベ
ルでより受け入れられているというのが実情です。
また一部の回答者は、種類の異なるリスクの測定およびモニタリングに、複
数の手法を利用しているとしており、
その成熟度や厳密さのレベルもまち
まちです。最も一般的な手法は以下の通りです。
リスクの計測と計量化の結果は、
さまざまな領域で使用されており、事業の
遂行でのさまざまな活動にも反映されています。回答者が指摘したものと
しては、
以下のものがありました。
• 資産負債管理(ALM)
• 事業部門および商品ごとのリスク調整後の利益率
• 確率論的シミュレーション
• 再保険に係る意思決定
• 保険引受リスクのシナリオ分析
• リスク選好から導かれる許容度とリミットの決定
• ストレステスト
• 州単位、
また事業部門ごとの資本配賦
• カタストロフィー・モデリング
• 商品設計とプライシング
• プライシングモデル
• リスク調整後の資本利益率
• ポートフォリオ配分
• リスク予算
• ロングテイル予測
• リスクの分散
• バリュー・アット・リスク
• バランスシート上のリスクの軽減
• 再保険(出再)
• 役員報酬
• リスク・リターン分析
CRO がリスク計量化の手法やメソドロジーを全社にわたって取り入れるよ
う、陣頭指揮を取っているのは明らかです。
その結果、管理者はリスクによ
る調整を考慮した意思決定が行えるようになり、投資家や利害関係者に対
してリスクの透明性が向上しています。
さらに、回答者は、強固なリスク計量
化プログラムが整備されたことで、
リスクテイクに対する信頼感も高まって
います。
ここでも、
ソルベンシー II へ対応している企業に一日の長があるのは明ら
かで、広い範囲にわたって掘り下げられた、先進的なリスク計量化が行わ
れています。
その手法と能力にかなりばらつきがあることは事実だとして
も、計測値の重要性に関するコンセンサスは高まっているように見受けら
れます。裏付けとなるリスクに関する数字への信頼性が高まれば、信頼性
をともなう意思決定につながり、取るべきリスクへの理解も高まるというこ
とが業界で認識されつつあると指摘する CRO の数は増えています。
CRO の発言から :
• 「運用リスク、巨大災害リスク、ALM リスク、死亡率や罹病率(引受
リスク)などのリスクを、経済資本モデルを通じて計量化している。
これらの計量化されたリスクの計測値を用いることに、全幅の信頼
を置いている。」
• 「非財務リスクは計量化の対象ではないが、対象範囲の広いリスク
管理原則に従い、定期的に検討および追跡を行っている。」
17 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
CRO の発言から :
• 「資本は、
リスクベースの資本の算定結果に基づいて事業部門に配
賦されている。我々は相関によるメリットも考慮に入れている。」
• 「資本の配賦は、プライシングの尺度のよりどころとするために利用
されている。」
• 「結果を生かせるかどうかは、アウトプットへの信頼性とそれを活用
する能力にかかっている。」
Q12. 一年前と比べて、あなたの部門の
規模は拡大しましたか。
一年前と比べて、優秀な人材の確保や
引き留めは難しくなったと思いますか。
10%
拡大した 50%
50%
変わらない 40%
40%
縮小した 10%
CRO が管轄もしくは関連する部署の人員は、回答者の組織の 50% で増加
しており、
これは、米国の金融業界全体で継続してみられる傾向です。他の
40% は、変わらないと回答しています。
これらの結果は、保険業界でのリス
ク管理の必要性について認識が高まったことや、新しい分野で CRO やリス
ク管理におけるリーダーの関与が深まったことを反映しています。
また、実
務的には、
より広範なリスクの計量化と規制対応への取組みの必要性が高
まった結果、
このような人員の拡大が生じているものと考えられます。
リス
ク報告の分野でも作業が増えることにより、保険会社ではその役割を担う
ための人材がさらに必要になります。
業務量が膨らみ責任が増せば、有能な人材がもっと必要になるとともに、
人材不足に陥る可能性があります。
リスク管理についていえば、保険会社が
人材確保に走っていることは明らかです。保険数理、信用リスク、
リスクの計
量化、
オペレーショナル・リスクといった分野のスキルの需要は高く、国内
の各地で、
CRO は規制対応(例えば、ORSA)やリスクの計量化などの分野
で必要な人材を確保することが難しいと指摘しています。
CRO の発言から :
• 「当社の本社リスク部門は人員面でも予算面でも大幅に拡大してい
る。来年も 25 ∼ 30% の増加が見込まれている。」
• 「需要が高く売り手市場なので、有能なプロフェッショナルを見出す
ことは難しくなっている。ただし、見つかりさえすれば比較的容易に
雇うことが可能である。」
• 「多数の市場リスクの専門家は、第二のディフェンス・ラインに相当
する部門ではなく、取引を遂行する環境にいることを望んでいる
ようである。」
Q13. 今後 3 年∼ 5 年先を考えた場合、
CRO の役割として、
現在と比べて、
何が最も大きく変化すると思いますか。
現在の保険会社の CRO が果たす役割も責任も組織内でのレポーティン
グ・ラインの体系もさまざまに異なる中で、大多数の回答者は、CRO の役
割が、近い将来、地位と重要性の観点で拡大するものと見込んでいます。
CRO の進化の要因は、回答者によれば、規制要件や報告要件の拡大、経
済や政治面での先行きが見えない不透明感、
リスク計量化ツールや手法
の高度化、
それにともなうリスク計量化への理解の高まりといった点にあ
ります。
また、下記のような点において、CRO の進化の兆候が表れています。
• 支援機能および牽制機能としての、
さらに直接的かつ頻繁なビジネスと
の相互連携。
CRO は、事業計画に内在するリスクを評価し対応するた
め、事業部門と緊密に連携し、
リターンの質を向上させ、業績評価へのリ
スク指標の導入を促進させる役割を担うようになるでしょう。
• 取締役会や経営上層部への直接的な関与。CRO は経営層との連携を強
化し、長期的な経営戦略の策定において、
さらに積極的な役割を担うよ
うになるでしょう。
• 将来を見据えた(フォワード・ルッキングな)活動への注力。
ストレス・テ
ストと ORSA が、CRO が取り組むべき重要課題となります。
• 機能の独立性の強化。
リスクの計量化やリスク選好、経済資本の活用、報
告やリスク/リターンのレビューに関して保険会社が必要としているリ
スク管理インフラを CRO が構築することで、CRO の機能はますます強く
なり、企業全体の利害関係者に対する独立したアドバイザーとしての役
割が高まります。
結果として保険会社の CRO は、ビジネスにより頻繁にかつ直接に関わる
ようになるとともに、組織のあらゆる階層におけるリスクの重要な語り手と
なるでしょう。換言すれば、CRO はもう、ビジネスと距離を置いた存在では
なく、業務のあらゆる面に関与する存在としてみられるようになっている
のです。
CRO の発言から :
• 「将来的には、CRO はもっと分析的な役割を果たすようになり、ポート
フォリオ・レベルでリスクを考慮することを促す存在になるだろう。」
• 「CRO は、外部に位置する監査人としてではなく、ますます、戦略的
パートナーの役割を担うようになるだろう。」
• 「いつどこでビジネスのアクセルを踏むかの意思決定を支援し、ビジ
ネス上のニーズに焦点を合わせるなど、CRO の役割はもっと戦略
的なものとなるだろう。」
• 「コンプライアンス部門に吸収されてしまわないかという点で不安は
あるが、
CRO はこの業界で最高の仕事だと思っている。」
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 18
結論: 今後の対応
責任が拡大し多様化する中で保険会社の CRO が前進するには、
まずその職務に優
先順位を付けることが欠かせません。
また、
ビジネスにとって最も重要なリスクが何
かを明らかにするとともに、いかなる業務を CRO の職務に含め、何を含めないか
を決めるためには、取締役会や CEO との連携がますます必要になってくることは間
違いありません。
それぞれの CRO のロード・マップを整備することが、何にも増して
必要なのです。
職務の明確化が求められているとはいえ、柔軟性を備えることも必要であることが
否定されるわけではありません。規制、経済、競争に関する状況もめまぐるしく変化
しているため、近い将来、CRO が、定期的な案件や緊急性のない課題にまで完璧に
対応することができなくなることが予想されます。
また、依然不明瞭な FIO からの報
告が今後どうなるかによっては、すべての優先課題が覆される可能性もあることは
念頭に置く必要があるでしょう。つまり、保険会社の CRO が力を発揮するには、柔軟
性は欠かせない要素といえるでしょう。
最後に、CRO は、全体的なリスク管理のありかたに関わる存在であり、
自社のニー
ズに合わせて業務をカスタマイズする必要に迫られています。営業展開や、事業目
的やリスク管理文化が異なれば、
CRO に課される役割や責任も異なるのは当然の
ことです。肝心なことは、新たにやってくる変化が大きければ大きいほど、業界全体
を通じて、
CRO のチャンスが増えることは間違いないということです。
19 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 20
付属資料
調査に協力頂いた企業
本調査に当たっては、
下記の 19 社の企業に協力を頂きました。
すべてのインタビューは、
2012 年 11 月から 12 月にかけて電話により実施されました。
• AAA NCNU Insurance
Exchange
• Aflac
• Allstate
• Aviva
• CNA
• Fireman s Fund
• Great-West Life
• ING
• Manulife
• Munich Re
• Mutual of Omaha
• Nationwide
• Pacific Life
• RGA
• State Farm
• Transamerica
• Westfield Insurance
• XL Group
• Zurich
本調査を公表するにあたり、
私どもアーンスト・アンド・ヤングは、
ご協力頂きました
各社の方々に心より御礼申し上げます。
21 | 保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査
付属資料
今回の調査で行った質問は下記の通りです。
1. 全般
A. 過去一年間の中で達成できた、最も重要な成果は何ですか。
B. 過去一年間と比べ、今後一年間で、あなたがより注目するのはど
の分野ですか。
C. 保険業界が直面している最大のリスクや課題は何だと思いますか。
2. 規制関係
A. 目下検討中のものも含め、具体的にどの規制が実施上最も大き
な課題となると考えますか。
B. NAIC の ORSA の要件を満たせるよう、目下整備している具体的
な計画はありますか。
C. 保険業界が採択するべきだとあなたが考えている規制はありま
すか。
D. FIO の役割はどうあるべきだと思いますか。
3. 組織体制
A.
B.
C.
D.
あなたが報告を行う相手先は誰ですか。
責任を負るリスク・カテゴリーにはどのようなものがありますか。
あなたは取締役会とどのようにして接触をとっていますか。
組織体制を改善するためにはどうすればよいと思いますか。
4. リスクの計量化
A. どのようにしてリスクを計量化していますか。
B. 全社レベルで、経済資本を活用していますか。経済資本で捕捉さ
れているのはどのような種類のリスクですか(市場リスク、カウ
ンターパーティリスク、オペレーショナル・リスクなど)。
C. リスクの計量化の効果はどのようなものでしたか。
5. 見通し
A. 一年前と比べて、あなたの部門の規模は拡大しましたか。一年前
と比べて、優秀な人材の確保や引き留めは難しくなったと思い
ますか。
B. 今後 3 年∼ 5 年先を考えた場合、現在と比べて、CRO の役割とし
て、何が最も大きく変化すると思いますか。
保険業界のチーフ・リスク・オフィサーへの調査 | 22
Ernst & Young ShinNihon LLC
アーンスト・アンド・ヤングについて
お問い合わせ先
新日本有限責任監査法人|金融部|エグゼクティブ・ディレクター
出塚 亨一(Koichi Dezuka)
[email protected]
新日本有限責任監査法人|金融部|マネージャー
浅田 昌司(Shoji Asada)
[email protected]
〒100-0011
東京都千代田区内幸町2丁目2番3号
日比谷国際ビル
Tel: 03 3503 1088
アーンスト・アンド・ヤングは、アシュアランス、
税務、トランザクションおよびアドバイザリー
サービスの分野における世界的なリーダーで
す。全世界の 16 万 7 千人の構成員は、共通のバ
リュー(価値観)に基づいて、品質において徹底
した責任を果します。私どもは、クライアント、
構成員、そして社会の可能性の実現に向けて、プ
ラスの変化をもたらすよう支援します。
「アーンスト・アンド・ヤング」とは、アーンスト・
アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのメン
バーファームで構成されるグローバル・ネット
ワークを指し、各メンバーファームは法的に独
立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グ
ローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会
社であり、顧客サービスは提供していません。詳
www.ey.com にて紹介しています。
しくは、
アーンスト・アンド・ヤング ジャパンについて
アーンスト・アンド・ヤングジャパンは、新日本
有限責任監査法人、新日本アーンスト アンド ヤ
ング税理士法人、アーンストアンドヤングトラ
ンザクションサービス株式会社およびアーンス
ト・アンド・ヤング・アドバイサリー株式会社な
ど、日本におけるアーンスト・アンド・ヤングの
9 つのメンバーファームで構成されています。
各法人は法的に独立した組織です。
アーンスト・アンド・ヤング FSO(日本エリア)
について
アーンスト・アンド・ヤング フィナンシャル・
サービス・オフィス(FSO)は、競争激化と規制強
化の流れの中で様々な要望に応えることが求め
られている銀行業、証券業、保険業、アセットマ
ネジメントなどの金融サービス業に特化するた
め、それぞれの業務に精通した約 3 万 5 千人の
職業的専門家をグローバルに有しています。ま
た、各業界の規制動向を予測し、潜在的な課題に
業種別にグローバ
対する見解を提示するため、
ル・ナレッジ・センターを設け、規制動向の収集
や業界分析を行っています。アーンスト・アン
(日 本 エ リ ア)は、グ ロ ー バ ル・
ド・ヤ ン グ FSO
ネ ッ ト ワ ー ク と 連 携 し て、約 1300 人 の 金 融
サービス業に精通した職業的専門家が一貫して
高品質なサービスを提供しています。
© 2013 Ernst & Young ShinNihon LLC.
All Rights Reserved.
本資料は EYG No. CK0625 の翻訳版です。
ED 0114
本書又は本書に含まれる資料は、一定の編集を経た要約形
式の情報を掲載するものです。したがって、本書又は本書に
含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に限られ
るものとし、特定の目的を前提とした利用、詳細な調査への
代用、専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでく
ださい。本書又は本書に含まれる資料について、新日本有限
責任監査法人を含むアーンスト・アンド・ヤングの他のいか
なるグローバル・ネットワークのメンバーも、その内容の正
確性、完全性、目的適合性その他いかなる点についてもこれ
を保証するものではなく、本書又は本書に含まれる資料に
基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかな
る損害についても一切の責任を負いません。
Fly UP