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富山大学麻酔科卒試 予想問題(2016年度版) 医学生・あっちゃん「わあ

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富山大学麻酔科卒試 予想問題(2016年度版) 医学生・あっちゃん「わあ
1
富山大学麻酔科卒試 予想問題(2016年度版)
医学生・あっちゃん「わあ、もり子センパイ、探してたんですぅ!」
研修医・杉谷野 森子「あら、ニュートリノでノーベル賞とった梶田先生の出身校…
のトナリの女子校出身のあっちゃん。」
あっちゃん「…って、その回りくどい前フリ、意味あります?」
もり子「別に…。ところで用って何?」
あっちゃん「あ、そうそう。実は来週、麻酔科の卒試なんですよ。」
もり子「まあ、うっとうしいわね。」
あっちゃん「センパイ、麻酔科研修中じゃないですか。いろいろ教えて欲しいんです。」
もり子「そうね。よく出る問題といえば、これかな。」
問題:麻酔管理で用いられる医療ガスについて正しいものはどれか。
A. 麻酔器の医療ガス配管の色は、酸素が緑、笑気が青と国際規格(カラーインデック
ス)で統一されている。
B. ピン方式により、医療ガスの誤った配管を防止している。
C. 笑気安全装置により、麻酔器の酸素の供給が止まると笑気が自動的に停止する。
D. 国内の全ての麻酔器には、笑気誤投与防止のための安全装置が備えられている。
E. 世界中の酸素ボンベの色は緑に統一されている。
あっちゃん「これは毎年出てるから知ってまーす。答はABCです。」
もり子「酸素の『医療配管』は緑で世界中統一されているけど、酸素『ボンベ』の色は日
本では黒というところがポイントね。」
あっちゃん「そして二酸化炭素『ボンベ』の色が緑!」
もり子「紛らわしいわよね。こないだの院内インシデント事例検討会でも注意を喚起して
いたわ。ウチでは起こってないけど、全国的には酸素取違え事例は結構あるらしいわよ。
生半可な知識があると、かえって勘違いしちゃうのよね。」
あっちゃん「センパイ、医者みたいですぅ!」
もり子「医者なんですけど、いちおう・・・」
問題:症例は70歳男性。既往歴に特記すべきことなし。血圧126/74 mmHg、
Exercise tolerance制限なし。他に異常を認めない。ASAのphysical statusは?
あっちゃん「異常所見がないのならPS1では?」
もり子「それが違うんだなあ。65歳以上はリスクファクターなの。でも、このリスクは
日常生活にほとんど影響しないから、PS2ね。」
あっちゃん「元気そうに見えても、高齢者は呼吸や循環器系の予備能力が低下してるって
ことですね。」
もり子「ちなみに例えば、この患者さんが肺気腫を合併していて、日常生活が制限されて
いたらPS3になるわけ。」
2
あっちゃん「フムフム・・・」
もり子「さらに弁膜症があって起坐呼吸だったらPS4。」
あっちゃん「そのおじいちゃんに腹部大動脈瘤があって、それが破裂したら・・・」
もり子「すぐにオペしないと助からないからPS5E!・・・麻酔あたりたくなーい!」
問題:気管チューブのカフの目的は?
A. 気管チューブが抜けないようにするため。
B. 気管を拡張させるため。
C. レントゲン写真に写りやすくするため。
D. 陽圧換気をするため。
E. 誤嚥を防ぐため。
あっちゃん「カフって気管チューブの先端についてる風船みたいなヤツですよね。答えは
Aじゃないんですか?」
もり子「そうゆう、ウツケものは結構多い。」
あっちゃん「ウ、ウツケって・・・」
もり子「だって、どこにカフが引っかかるの? 気管の解剖を思い出してみて。」
あっちゃん「たぶん声門あたりにカフがガッチリ食い込んで・・・。でも待てよ、解剖実
習で見た声帯は、ヒラヒラで脆弱そうな組織だったぞ。」
もり子「そう。カフで声帯を損傷しちゃうわ。」
あっちゃん「じゃあ、Bです。」
もり子「それは誤解答の第2位。PTCA(経皮的冠動脈形成術)じゃないんだから、気管
を拡張してどうしようってゆうのよ!」
あっちゃん「じじじじじじゃあ、C・・・!?」
もり子「Radio-paqaue(放射線不透過のマーク)が入ってるのは気管チューブ本体。カ
フはむしろレントゲンにうつりにくい。」
あっちゃん「うわあ、このままではウツケ街道まっしぐら!」
もり子「気管挿管が必要な患者さんの状態を考えて。」
あっちゃん「えっと、気管挿管するのは、全身麻酔や蘇生で人工呼吸の必要な患者さんで
す。つまり自発呼吸が止まってる・・・そっか、陽圧換気?」
もり子「気管チューブと気管の間にスキマがあったら、リークして陽圧換気できないでし
ょ。カフを膨らませて、そのスキマをふさぐのよ。」
あっちゃん「それに、スキマが無ければ誤嚥も起こりにくい!」
もり子「Good Job! 正解はDE。」
問題:次の麻酔薬の中で、心・循環系に対して抑制作用を有するものはどれか。
A. デスフルラン
B. プロポフォール
C. ロクロニウム
D. レミフェンタニル
3
E.
フェンタニル
あっちゃん「うーん、この手の問題は苦手だなあ。よーするに、投与すると血圧が下がる
薬はどれかってことですよね。」
もり子「デスフルランとプロポフォールには心循環抑制作用があるわね。」
あっちゃん「筋弛緩薬のロクロニウムは、血圧下がらないのでは?」
もり子「ピンポーン。心筋や平滑筋には作用しないから。」
あっちゃん「問題は麻薬のレミフェンタニルとフェンタニル。たしか血圧が上がった時、
麻酔科の先生はレミフェンタニルの濃度上げてたよなあ。」
もり子「スルドイじゃない。レミフェンタニルは血圧と心拍数を下げるの。」
あっちゃん「じゃあ、フェンタニルも同じでしょ?・・・名前似てるし」
もり子「ブー!・・・てゆーか、麻薬は一般的に心循環抑制作用が無いの。」
あっちゃん「ブスブス・・・。」
もり子「なんか焦げてるわよ。ダイジョブ?」
あっちゃん「そか。思い出した。心臓麻酔で大量フェンタニル麻酔しますもんね。」
もり子「レミフェンタニルは、麻薬では例外的に心循環抑制作用があるのよ。答は
ABD。」
問題:次の薬剤の中で呼吸抑制作用を有するものはどれか。
A. ロクロニウム
B. 硫酸アトロピン
C. アドレナリン
D. フェンタニル
E. ミダゾラム
あっちゃん「循環の次は呼吸ですか。筋弛緩薬のロクロニウムは呼吸止めちゃいます。」
もり子「肋間筋や横隔膜などの呼吸筋が麻痺するからね。」
あっちゃん「それから・・・あ、わかった。硫酸アトロピンはベラドンナアルカロイド、
『美人になるクスリ』だから呼吸抑制はなさそう。」
もり子「副交感神経を遮断して交感神経優位になるのよ。呼吸抑制はないわね。」
あっちゃん「アドレナリンは、アナフィラキシーショックや重症喘息の治療にも使うし、
呼吸は抑制しないはず。」
もり子「そうね。じゃあ、麻薬のフェンタニルは?」
あっちゃん「麻薬の副作用は呼吸抑制では?」
もり子「そうね。ロクロニウムは神経筋接合部を遮断して末梢性に作用するけど、麻薬は
オピオイド受容体に作用して中枢性に呼吸を抑制するの。」
あっちゃん「痛みと呼吸って直接関係ないような気がするけど、不思議ですね。」
もり子「そうなの。麻薬の鎮痛作用と呼吸抑制を切り離せたらノーベル賞。」
あっちゃん「副作用のない麻薬ができたら、患者さんのQOL上がりそう。」
もり子「じゃあ、最後のミダゾラムは?・・・麻酔の前投薬にも使う鎮静剤よ。」
4
あっちゃん「病棟で投与するくらいだから安全そう。」
もり子「あまーい!・・・ミダゾラムは中枢性の筋弛緩作用があって舌根が落ちやすい
の。米国では、ミダゾラムの麻酔前投薬で呼吸停止した事例があったわ。」
あっちゃん「鎮静剤って怖いんですね。単純にリラックスする薬かと思ってた。」
もり子「過量投与は御法度。鎮静剤を打って患者さんが大人しくなったと思って安心して
たら、呼吸が止まってた・・・なんていうのは、研修医がよくハマるミスね。とゆーこと
で答はADE。」
問題:点滴用の18ゲージカテーテルの内径(直径)は20ゲージカテーテルの約1.2倍で
ある。18ゲージを用いて輸血したとき、その流速は20ゲージを用いたときの何倍速い
か。
A. 約1.2倍
B. 約1.4倍
C. 約2倍
D. 約10倍
E. 約100倍
あっちゃん「これはカンタン。私、こう見えても高校の時は理系女子だったんです。断面
積は内径の二乗に比例するんだから、1.2 1.2=1.44で、答えはB!」
もり子「ところが血液は粘性のある液体だから、流速はPoiseuilleの流体力学の法則に従
うのよ。」
あっちゃん「ポアジュジュ・・・何ですか、その呪文みたいな・・・」
もり子「ポアズイユの法則。・・・『なんちゃって理系』だったみたいね。」
あっちゃん「あ・・・う・・・」
もり子「ポアズイユによると、流速は内径の4乗に比例するので答えはCなの。」
あっちゃん「そうか。だから麻酔科の先生たちは、よく『出血しそうだから18ゲージ入
れとけ』とか言ってたのか。見かけ20ゲージと変わんないのに・・・って不思議だった
んです。」
もり子「輸血のスピードが2倍速かったら大きいわよ。安全な循環管理のために、麻酔科
医は少しでも太いラインを確保したいの。」
問題:症例は40歳女性。158cm、50kg(BMI=20)。レミフェンタニルを0.3ガンマ
で投与したい時、ポンプ流量(mL/時)をいくつに設定すればよいか。ただしレミフェン
タニルは、5mgを生理食塩水50mLに希釈してシリンジポンプにセットしてある。
A. 0.15 mL/時
B. 0.3 mL/時
C. 6 mL/時
D. 9 mL/時
E. 15 mL/時
5
あっちゃん「そーそー、よく麻酔科の先生が『イノブタさん、ガンバ!』って・・・」
もり子「『イノドブ=3ガンマ』ね・・・。イノドブは、イノバン(ドパミン)+ドブタ
ミンのギョーカイ用語。」
あっちゃん「がーん、応援じゃなかったのか!」
もり子「ガンマはµg/kg/minのこと。」
あっちゃん「ナルホド、持続投与の速度(流速)の話だったんですね。じゃあ、0.3ガン
マは、体重あたり0.3µgとして、0.3 50=15µg。レミフェンタニルは0.1mg/mL(100
µg/mL)に希釈してあるわけだから・・・答えはAの0.15mL!」
もり子「 ブー! ガンマは『毎分』で輸液ポンプは『毎時』、そこにチューモク!」
あっちゃん「な、なんとトリッキーな。気を取り直して、もう一度・・・。0.3ガンマ
は、0.3µg 50kg 60min=0.9mg/時だから・・・ 答えはDの9mL/時です!」
もり子「そーゆーこと!」
あっちゃん「でもセンパイ、ガンマ計算ってややこしーです。『毎分』設定のポンプとか
あればガンマ計算がもっと楽なのに。」
もり子「いいアイデアだけど、もし『毎分』設定のポンプを『毎時』設定のポンプとまち
がえて使っちゃうと・・・」
あっちゃん「あ、そか。0.15mLと9mLの違い!」
もり子「そう、桁違いの投与量になってしまうのよ。世界中のポンプは基本『毎時』設定
だから、流速単位の違うポンプが共存すると、かえって混乱するんじゃないかしら。」
あっちゃん「あきらめて、ガンマ計算に習熟しろってことですね…。」
問題:麻酔科関連の薬理学で正しいものはどれか。
A. フェンタニルの呼吸抑制はナロキソンで拮抗される。
B. ミダゾラムの鎮静作用はフルマゼニルで拮抗される。
C. ロクロニウムの筋弛緩作用はスガマデックスで拮抗される。
D. ヘパリンの抗凝固作用はビタミンKで拮抗される。
E. ワーファリンの抗凝固作用はプロタミンで拮抗される。
あっちゃん「こーゆーの、ホントやめて欲しいです。麻酔科の先生って薬理好きなんだか
ら!」
もり子「あれ、理系女子だったんじゃないの?」
あっちゃん「(無視)・・・たしか薬物中毒の講義で、麻薬の解毒剤はナロキソンって聞
いた気がするからAは○。」
もり子「そう、ナロキソンはオピオイドレセプタのµ受容体に選択制を示す競合性拮抗
薬。ナロキソンは麻酔科でもお世話になってまーす。」
あっちゃん「さては、何かやらかしたな?・・・センパイ!」
もり子「(ギクッ!)おじいちゃんが術後、痛がるからフェンタニル盛ったら、息が止ま
っちゃって・・・」
あっちゃん「ナロキソンで切り抜けたんですね?・・・老人は麻薬の呼吸抑制が出やすい
んだから気をつけないと!」
6
もり子「(ヤバイ、形勢が逆転してるじゃないのっ)コホン・・・フルマゼニルは、
GABAレセプタのベンゾジアゼピン受容体に特異的な拮抗薬なので、Bも正解。」
あっちゃん「Cのスガマ何とかっていうのは、聞いたことないです。」
もり子「スガマデックスは、ロクロニウムと複合体を形成して筋弛緩作用を拮抗しちゃう
のよ。」
あっちゃん「えっ・・・それって化学反応?」
もり子「Good Point!・・・スガマデックスはロクロニウムを包接する画期的な薬剤な
んだけど、生体内化学反応ということで米国FDAでは認可されてないの。日本やヨーロッ
パでは使えるけど。」
あっちゃん「DのビタミンKとEのプロタミンはアベコベでは?」
もり子「てゆーか、ビタミンKの凝固作用をワーファリンが拮抗するのよね。まあ実際に
は、ワーファリンを過剰投与した時にビタミンKでリバースすることも多いけど。」
あっちゃん「ふうーん。臨床に即した解説、とっても勉強になります。」
もり子「あと、知ってる?・・・プロタミンって、魚の精巣からとったタンパク質なの
よ。それが豚の腸からとれたヘパリンの作用を打ち消すなんて不思議じゃない?」
あっちゃん「ブタ君とオトトの意外なカンケーってわけですね!」
問題:症例は82歳男性。糖尿病性腎症のため透析中(週3回)である。
K+=5.8 mEq/L。この症例の全身麻酔管理に際し、最も適切は輸液剤はどれか。
輸液剤
商品名
浸透
圧比
Na+
K+
ClmEq/L
A
5%ブドウ糖液
1
0
0
B
C
D
ソリタT1
ソリタT3
生理的食塩水
1
1
1
90
35
154
E
注射用蒸留水
0
0
乳酸
ブドウ糖
%
0
0
5
0
20
0
70
35
154
20
20
0
2.6
4.3
0
0
0
0
0
あっちゃん「じぇじぇじぇ∼! もっとも恐れていた問題。」
もり子「最近は、こーゆーのが国試にでるみたい。」
あっちゃん「えと、透析週3回ってことは、腎機能が廃絶しているわけだから・・・」
もり子「高くなると一番キケンなイオンは?」
あっちゃん「カリウムイオンです。だからCの3号液は論外!」
もり子「そうね。でも、高カリウム血症になると何がイケナイの?」
あっちゃん「あ・・・う・・・たしか、ヤバ∼い不整脈が出て● △■※#・・・」
もり子「静止時に細胞膜透過性があるのはカリウムイオンだけ。だから細胞外液のカリウ
ム濃度が上がると、細胞膜が脱分極して・・・」
あっちゃん「あ、ねるとんの式ですね! 心臓たかぶるぅ!」
もり子「ネルンストの式ね。合コン?・・・で結局、適切な輸液剤はどれ?」
あっちゃん「カリウムが入ってない輸液だから、Eの蒸留水!・・・はダメですよね?」
7
もり子「蒸留水の点滴は禁忌よ。溶血するから。」
あっちゃん「やばいやばい。地震、雷、火事、禁忌!」
もり子「まさに『オヤジ』ギャグ。」
あっちゃん「Dの生理的食塩水は浸透圧比1でカリウムが入ってません。」
もり子「でもナトリウムだって、上がり過ぎると体内に水分が貯留しちゃうわよ。」
あっちゃん「たしかに腎不全のおじいちゃんに塩分取らせ過ぎは・・・。じゃあAの5%
ブドウ糖液は? 浸透圧比1でカリウムもナトリウムも入ってません。」
もり子「悪くないわね。でも、この患者さんがなぜ腎不全になったかというと・・・」
あっちゃん「あ、糖尿病か!・・・う∼ん、アチラを立てればコチラが立たず。」
もり子「だから、生理食塩水と5%ブドウ糖液を足して2で割ればいいのよ。」
あっちゃん「ナルホド。それがBの1号液なんですね!」
もり子「ピンポーン!」
問題:輸血パックの中の血液が凝固しないのはなぜか。
A. ヘパリンが入っているから。
B. ワーファリンが入っているから。
C. EDTAが入っているから
D. 冷却してあるから。
E. 上記のいずれでもない。
あっちゃん「答えはズバリ、Eでしょう!」
もり子「あら、正解・・・だけど、よくわかったわね。」
あっちゃん「その輸血とはアルブミナー(アルブミン製剤)でした・・・なんちゃっ
て。」
もり子「濃厚赤血球とかの輸血パックの話に決まってるでしょ。一休さんじゃないんだか
ら!」
あっちゃん「えへ・・・でも、ヘパリンじゃないんだ?」
もり子「ヘパリンやワーファリンを入れておけば輸血パックの血液は凝固しないけど、そ
の輸血をした患者さんの出血が止まらなくなるでしょ。」
あっちゃん「そっか。じゃあ、輸血パック内の凝固因子を除去しておくというのは?」
もり子「いいセンいってるかな。除去するのにお手軽な凝固因子と言えば?」
あっちゃん「うーん、凝固因子って、あんまりオテガル感ないよなあ・・・あ、カルシウ
ムも凝固因子・・・?」
もり子「そうそう。クエン酸でカルシウムイオンをキレートするのよ。」
あっちゃん「でも待てよ、クエン酸が体に入ったら、やっぱり血が止まらなくナラナクナ
イ???」
もり子「ポカリスエットにもクエン酸が入ってるけど『健康のため飲み過ぎに注意しま
しょう』とか書いてないでしょう?」
あっちゃん「そか。クエン酸は体内で代謝されちゃってカルシウムは元通りに・・・セン
パイ、あったまいい!」
8
もり子「別に私が考えたわけじゃないんだけど。」
問題:50歳の男性。胃癌に対する開腹手術のためプロポフォール、セボフルラン及びロ
クロニウムで全身麻酔中である。皮膚切開を契機として、血圧が上がり脈拍数が増加した。
膀胱温36.5 ℃。SpO2 99%。追加すべきなのはどれか。
A. フェンタニル
B. ダントロレン
C. ニトログリセリン
D. スキサメトニウム
E. プロプラノロール
(第107回 医師国家試験問題)
あっちゃん「ついに国試問題キター!」
もり子「ポイントは、呼吸や体温は正常だけど、血圧と脈拍が上がってるってことね」
あっちゃん「ニトログリセリンは血管拡張作用があります。あとプロプラノロールはβ遮
断薬だから、心拍数を下げる・・・ってことはCとE???」
もり子「大マチガイじゃないけど、なぜ血圧と脈拍が上がったか考えて」
あっちゃん「そか。手術が始まってイタイからだ。つまり痛みをブロックすればいいんだ
から・・・答えはAのフェンタニルです!」
もり子「そうね。モニターばかりに気を取られていると、バイタルサインの変化に対して
対症的になりがちだけど、大事なことは、患者さんが何を訴えてるか。」
あっちゃん「麻酔科のセンセって、手術中眠ってる患者さんの声も聞いてるんですね!」
問題:術後呼吸不全に対して気管挿管を行った。加圧によって胸郭は動くが、聴診で呼吸
音が弱いと感じられた。気管チューブが気管内に挿入されているのを確認するのに最も適
切な指標はどれか。
A. 血圧
B. 脈拍数
C. 気道内圧
D. 中心静脈圧
E. 呼気終末二酸化炭素濃度(ETCO2)
(第107回 医師国家試験問題)
とにかく明るい あっちゃん「安心してください、はいってますよ!」
もり子「ボケかましてる場合かっ!」
あっちゃん「えへ。だって、聴診で呼吸音が聞こえるのに・・・」
もり子「聴診による誤挿管(食道挿管)の鑑別率は90%程度。だから聴診以外の客観的
な指標で確認するのが原則」
あっちゃん「なら、Eかな?」
もり子「アタリ。でも、どうして?」
9
あっちゃん「胃や食道から炭酸ガスは出てこないから、呼気ガス測定でCO2が検出されれ
ば確実に気管挿管と言えるのでは?」
もり子「そうね。この問題の設定なら。」
あっちゃん「え? ETCO2が役立たない設定って?」
もり子「例えば、これがドクターヘリの中で、患者さんが雪山で倒れていたCPA(心肺停
止)だったとしたら?」
あっちゃん「う・・・確かに、代謝が下がってるから、CO2出てこないかも。」
もり子「そーゆー時は、じゃーん! 食道挿管検知器(EDD)!」
あっちゃん「あのドラちゃんみたいな!」
もり子「どこが?・・・って思うけど、なぜかドラえもんで通じちゃうのよね。」
あっちゃん「聴診、ETCO2、EDDが気管挿管確認の三種の神器ってわけですね!」
問題:再生可能なエネルギー源はどれか。 3 つ選べ。
A. 風 力
B. 火 力
C. 地 熱
D. 原子力
E. バイオマス
(第108回 医師国家試験問題)
あっちゃん「これって、『医師』国家試験問題ですよね?」
もり子「医師たるもの、医学的専門知識に偏らず一般常識にも精通しなさい、という警鐘
じゃない?」
あっちゃん「ぐさっ…」
もり子「スマホは見ても、新聞は読まない学生さん、多いわよね。」
あっちゃん「ぐさぐさっ…」
もり子「例えばBの火力は再生可能?」
あっちゃん「火力は、化石燃料をCO2に変えちゃうから、再生できません。原子力も、放
射性廃棄物が社会問題になっているくらいだから、再生不能。とゆーことは、風力、地熱、
バイオ何とか…かな?」
もり子「消去法で来たな。バイオマスは、以前は廃棄されていたような廃材や未使用の有
機物を燃やしてエネルギーを得ること。」
あっちゃん「燃やしちゃうのに再生可能エネルギーなんだ?」
もり子「バイオマス燃料の炭素は、もともと大気中にあったCO2に由来するから、化石燃
料を燃やすよりはいいという理屈(カーボンニュートラル)。いろいろ問題もあるみたい
だけど…。答えはACE。」
10
問題:医学用語の読み方で正しいものはどれか。
A. 脆弱→きじゃく
B. 口腔→こうこう
C. 増悪→ぞうお
D. Tuohy針→たーふぃーはり
E. Saline→サリン
云々→でんでん
F.
G. 赤口→せきぐち
あっちゃん「ゼイジャク、コウクウ、ゾウアク、チューヒシン、セーライン、ウンヌン。
シャッコウ・・・」
もり子「さすが、ノーベル賞の…」
あっちゃん「その前フリ、いらないです! てゆーか、後の方は医学用語じゃないし。」
もり子「ちなみに、salineは生理的食塩水で、毒ガスsarinではありません。よい子のみ
んなは間違えないでね。」
あっちゃん「なんじゃそれ・・・」
もり子「カンファとかで妙な読み方すると恥ずかしいもんね。」
あっちゃん「そう言うセンパイだって『センセにツゲグチしてやる!』と言おうとし
て・・・」
もり子「わあっ、それは言うなー!」
あっちゃん「『センセにクチヅケしてやる!』と言い放ったとか?」
もり子「だってー・・・ツゲグチとクチヅケってわかりにくくない?」
あっちゃん「ないでしょ、フツー。」
問題:日本赤軍「よど号」ハイジャック事件が起こった時、「機内に麻酔ガスを流して犯
人・乗客・乗務員ともども眠らせてしまう」という作戦が真剣に検討されたが、実行に移
されることはなかった。なぜか。
麻酔ガスは高価なのでコストがかかりすぎるから。
A.
法律で、麻酔ガスは病院でしか使えないことになっているから。
B.
犯人が逆行性健忘をきたして犯行を忘れてしまう可能性があるから。
C.
全員眠ってしまったら誰が犯人か判別できなくなるから。
D.
上記のいずれでもない。
E.
あっちゃん「・・・この問題、マジっすか?」
もり子「実際、当局が麻酔科に相談に来たのよ。」
あっちゃん「全身麻酔は生理的睡眠とは違うはず・・・」
もり子「そう。呼吸・循環・反射などの生命維持機能が失われるから、こんなことをした
ら、乗客・乗務員の命は全く保証できないわ。答はE。」
あっちゃん「これが可能だったら『この飛行機にはハイジャック防止のため麻酔ガスが装
備されています』なんて表示があってもよさそうだけど、見たことないもんなあ。」
11
問題:キリン(Giraffe)の全身麻酔管理で注意すべきことを考察しなさい。
あっちゃん「(しばし絶句)・・・あ、ありえないっつーの!」
もり子「 キリンの頚だったら、気管挿管が困難であろうとか、脳血流を維持するための
調節メカニズムあるはずだから、それを破綻させない全身管理が必要・・・というような
ことを考察すればいいわけよ。」
あっちゃん「でも人騒がせな問題。ここは獣医学科じゃなーい!」
もり子「けど、あっちゃんの実家は、動物のお医者さんじゃなかったっけ?」
あっちゃん「あ、そうだった。今度帰った時、ゾウの経鼻挿管とかハリネズミの点滴とか
聞いてみよっと。」
問題:無重力状態での麻酔管理で注意することを挙げなさい。
あっちゃん「えっ・・・息ができない・・・?」
もり子「それって宇宙空間と混同してる、ゼッタイ。酸素濃度21%、760 Torr の環境で
無重力という意味。」
あっちゃん「宇宙ステーションの中とかですね。なら、あまり問題ないのでは?」
もり子「そうかな? 無重力だと、点滴落ちないでしょ。」
あっちゃん「あ、ナルホド。」
もり子「それから、呼気弁・吸気弁がうまく作動しないので呼吸回路が機能不全になる、
セボフルランの気化器が不正確になる、局所麻酔薬の比重を利用した脊椎麻酔の調節がで
きない・・・」
あっちゃん「あと、褥瘡ができにくい!」
もり子「それは利点だけど、確かにそうね。」
問題:下記の都市伝説でエビデンスがあるのはどれか。
A. 13日の金曜日はホントに身体に悪い。
B. デブは染る。
C. バカにつける薬がある。
D. 夢を映像化できる。
E. 記憶を書き換えることができる。
あっちゃん「ほとんどSFですね…。」
もり子「実は、全部○なの。」
あっちゃん「まじっスか!…Cの薬とか、卒試の前に飲みたいですっ。」
もり子「国試や入試でドーピング検査が行われる日も近いかもね。」
あっちゃん「ひえ∼っ。」
12
A. Scanlon TJ, et al. Is Friday the 13th bad for your health? BMJ 1993;
307:1584-6 英国において、13日の金曜日には交通事故が増加していた。
B. Christakis NA, et al. The spread of obesity in a large social network over 32
years. N Engl J Med 2007; 357:370-9 肥満は社会的なネットワークを通じて
広まる。
C. A critical role for IGF-II in memory consolidation and enhancement. Nature
2011; 469:491-7 インスリン様成長因子(IGF-II)をラットに投与した所、記憶
力が飛躍的に向上した。アルジャーノン?
D. Horikawa T, et al. Neural decoding of visual imagery during sleep. Science
2013; 340:639-42 MRIを用いて脳活動を解析し、夢の映像化に成功。
E. Tonegawa S, et al. Bidirectional switch of the valence associated with a
hippocampal contextual memory engram. Nature 2014; 513:426-30 記憶
を書き換えて、嫌な出来事を楽しい出来事に。
あっちゃん「そう言えば読みましたよ、麻酔をめぐるミステリー。センパイにもあんなオ
チャメな時代があったんですね、モ・リ・リ・ン せんぱい!」
もり子「ほっとけ。」
あっちゃん「本のラストで、新たなミステリーを探す旅に出たモリリンは、その後どう
なったんですか?」
もり子「それは、麻酔科に入ればわかるかも…♪」
問題:麻酔科BSTオリエンテーションの時、廣田先生は「臨床実習に際し心がけて欲し
い」という3つのチェックポイントを示しました。その中には下記のどれが含まれていた
でしょうか。
聞くは一時の恥、知らざるは一生の恥
A.
雄弁は銀、沈黙は金
B.
君子危うきに近寄らず
C.
士は以て弘毅ならざるべからず
D.
一宿一飯の恩義は犬でも忘れない
E.
あっちゃん「よく覚えてないけど、答えはAでしょ、たぶん。」
もり子「臨床麻酔の手引って、実は30年以上も続くロングセラーなのよ。」
あっちゃん「へぇ∼ 、由緒正しいマニュアルだったんですね。てっきり、廣田先生が趣味
で作ってるヤンチャなハウツー本かと。・・・ところで、Dの弘毅って?」
もり子「廣田先生の名前。論語の一節と思われます。」
あっちゃん「Eに至っては意味不明です。」
もり子「こないだ某麻酔科の飲み会で、ヘベレケになってたお嬢さんがいたけどね。」
あっちゃん「何をおっしゃってるのか、私にはサッパリ・・・。」
もり子「あら、今だって『ハラ減ったー。何か食わせろー!』って顔してるわよ。」
13
あっちゃん「だって∼『モリリン予想』のおかげで私の海馬くん、フル稼働でしたか
ら。」
もり子「脳のエネルギー源はブドウ糖だけだもんね。」
あっちゃん「実は私、血糖値が顔に出る女なんです。」
もり子「じゃあ今夜あたり、桜木むら界隈へ繰り出して・・・」
あっちゃん「やたー! 今度は視床下部くん、フル稼働!」
もり子(おいおい、卒試はいいのか・・・?)
※登場する人物は架空のもので、実在のヒトとは一切関係ありません?
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C h a m pa g n e
Koki
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