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第1章
第 1章 手軽にインターネットと電子工作を結びつける XPort とは何? 本書では,XPort というデバイスを利用しますが,単体で購入してすぐに利用できるというものでは ありません.そのため,本章では手軽に使用できる XPort の評価キットがどのようなものであるかを 説明し,第 2 章から第 4 章で,添付されているツールや標準機能を利用して遠隔制御の実際を体験しま す.これらの機能だけを使っても実現できることはたくさんあります.評価キットに付属するサンプル 例を少し改造するだけで対応できることもあります.最初はそういうやり方で,機器の扱いになれるこ とが重要でしょう.第 5 章以降では,実現したいことをまったくのオリジナル・プログラムを作ること で実現する方法を説明します. 1-1 どのようなネットワークで使うことを前提としているか 対象とするネットワークは,図 1-1 に示すようなハブとケーブルだけで構成されている最もシンプル な形です.パソコンが 2 台以上ある家庭では一般的なネットワークの構成といえます.ルータなどにつ いているハブの差し込み口が足りない場合は,4 ポートから 8 ポートのハブを購入し,接続できる機器 を増やし,これから製作する機器を接続できるようにします.10/100 Mbps 対応という安価なハブでか ルータ パソコン 接続口が四つあるハブ インターネット XPort ADSL,光,ケーブル・ テレビなどと契約し,プ ロバイダ経由でインター ネットと接続している ハブ P I CN I Cなど 温度センサ LED 複数のパソコンをネット ワークでつなぎ,ルータ を通して,インターネッ トを利用している スイッチ リレー ノート・パソコン 図 1-1 今回想定しているネットワーク 1-1 どのようなネットワークで使うことを前提としているか 11 この先にコントロール するものをつなぐ P I CN I C シリアル・ポート,USBなどは, ハードウェアのインターフェース と接続される.周辺機器は1対1 イーサネット上の機器 との通信は I Pアドレス を指定して通信する XPort ハブ イーサネット LANには多数の機器が接続 されているので,個々の機 器に I Pアドレスというアド レスがふられている そのため,周辺機器の制御は, USB1,COM1などと接続され ているインターフェース名を 指定して制御する パソコン USB1 USB2 COM1 この先にコントロール するものをつなぐ COM2 図 1-2 ネットワーク上の機器はアドレスを指定して通信する Column 1-1 PICNIC の概要 本書で取り上げていませんが,同じような用途 できる安価で優れたワンチップ・マイコンです. 向けに PICNIC(ピクニック)という製品がありま このボードでは,PIC マイコンでは対応できない す.写真 1-A に外観を示します.PICNIC は PIC ネットワークの部分を,ワンチップ・イーサネッ Network Interface Card の略です.その名のとお ト・コントローラ IC(RTL8019AS)を用い,ネッ り PIC と呼ばれるマイコンとネットワーク・コン トワーク経由で各種の機器の制御を行うことがで トローラを使用したボード・コンピュータの形を きるようになっています. しています.PIC マイコンは,ワンチップで小規 模なシステムの制御が行え,1 個数百円から入手 ハブへつなぐ イーサネット・ポート 入力:4 点,出力:4 点,0 ∼ 100 ℃の温度入力 をもち,キットは執筆時点で 7,300 円でした. パソコンへつなぐ シリアル・ポート イーサネット・ コントローラ I C P I Cマイコン 写真 1-A PICNIC 12 第 1 章 XPort とは何? まいません.もちろん,ギガ・ビット対応と書かれたハブでも利用できます. このネットワークの中に,スイッチの ON/OFF などのコントロールを行う小さなデバイスを用意し, 手元のパソコンの画面から,離れた場所にある電源スイッチの ON/OFF などを行います.このような 用途に使えるデバイスはたくさんありますが,低価格で使いやすいものが本書で扱う XPort です. このデバイスはネットワークに接続され,スイッチの状態や,接続された機器からのデータなどを ネットワーク経由で送受信するためにネットワークを制御しなければなりません.これらネットワーク の制御の多くを XPort に内蔵されているソフトウェア(=ファームウェアと呼ばれる)が分担するので, パソコンと同様,通信に関する深い知識がなくても,相手先の IP アドレスを指定して定型的な処理を 記述するだけで容易にネットワーク経由でのやり取りが実現できます (図 1-2). 1-2 本書で利用する XPort を選んだ理由 米国の LANTRONIX 社のデバイス・サーバと呼ばれる XPort は,写真 1-1 に示すように小型ですが, インターネットの処理に必要なことが詰まっています. パソコンに温度センサをつないだりして,Web サーバ・ソフトを使ってデータを送信するようなこ とは可能ですが,いつでも温度を測りたいがためにそのパソコンを 24 時間動かしているというのは得 策ではありません.通称 Linux ボックスと呼ばれる,インターネットの通信ができる小型の装置も市販 されていますが,数万円と高価なうえ,使いこなすには Linux の知識が必須です. そういう装置を利用すべき用途もたくさんありますが,1 万円前後の費用で,離れた場所の信号を 3ビットのON/OFF出力または入力となる. ハブへ ネットワーク シリアル通信 写真 1-1 XPort の大きさ LAN ケーブルのモジュラ・ソケット (ジャック) を少し大きくしたサイズの中に,イー サネット・ネットワーク−シリアル通信の変換,3 ビットのディジタル I/O と,そのほ かにも有効な機能が盛り込まれている. 1-2 本書で利用する XPort を選んだ理由 13