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5年 導入の活動例:1秒ふりこと衝突ゲーム
物の動きの規則性 違いの原因を見つけよう! 5年 もっと調べてみたいのは,どちらかな 導入の活動例:1秒ふりこと衝突ゲーム 「ふりこ」又は「衝突」の活動のうち,子どもがいずれか一つを選 んで学習する単元です。子どもの主体的な選択を促すために,学習内 容や活動に関する情報を事前に提供するための活動を紹介します。 ○単元の構成例 【導入の活動】例: 「1秒ふりこ」と「衝突ゲーム」 【実験】ふりこ 選択 【実験】衝 突 全体での話し合いや発表,ものづくり,発展など ○ここで紹介する活動の工夫点 .. ... (1)それぞれ,「1秒」「ゴール」と,めざす方向(数値目標)を明確に設定しました。 ・例えば「衝突」でゴールの手前で止まってしまった場合,次に子どもがどうするか(高さを変 える,おもりを変えるなど)によって,子どものもつ見通しを読みとることが可能になります。 (2)選択後の実験で使用する器具を導入の活動に使用しました。 ・この活動では,再現性が欠かせません。条件を変えなければ, 「ふりこ」では1往復する時間, 「衝突」ではおもりが滑る距離がある程度同じであることが必要です。 ・活動を通して器具に慣れているため,新たな器具を使うよりスムーズに本実験に移行できます。 (3)仲間と楽しくゲームをしながら学習できるよう考えました。 1 1往復1秒のふりこをつくろう! ふりこが往復する時間を1秒に合わせる作業を通して,子どもたちが,大まかなふりこのきまりを つかむでしょう。「本当に長さだけ?」「重さは…」「振れ幅は…」と,選択のための動機付けと実験 の見通しをもつことをねらいにしています。 ○準備 ・メトロノーム(1台) ・ふりこ(1人1セット) ここで使用するもの は,本実験で使用する 「ふりこ」の実験器具 がよいでしょう。 ○活動の方法(例) (1)「1秒で振れるだろうなふりこ」を一人ひとり予想して作ります。 ※ おもりの数はある程度自由に変えられるよう余分に準備します。 ※ 例えばグループごとに,おもりの個数を決めるとよいでしょう。 (2)メトロノームなどを用いて,1秒と自分のふりこが1往復する時間を確認します。 (3)ふりこをどう変えたら,1往復1秒になるか考え,ふりこを変えて合わせます。 (4)【1分ゲーム】 60往復したところで手をあげます。 ※ 活動の中で,1往復する時間を測定するよりも,数多く往復する時間を計った方が,1往復する時間 を正確に求められることにも気付かせるようにしましょう。 - 154 - 2 衝突ゲーム:「きまりをみつけて,めざせ高得点!」 この活動は,坂道を転がる球を物(フィルムケースなど)に衝突させ,設定したゴール地点まで動かすゲ ームをしながら,動いている球(おもり)の働きの大きさを決める要因(高さと重さ)について,一 人ひとりの子供に気づかせることをねらいにしています。 ○使用する器具の例 フィルムケース レール ゲームに使用するもの は、本実験で使用する 「衝突」の実験器具が よいでしょう。 ゴール (砂や水などを入れる) (竹ひごに旗をつ けたものなど) 球 静止 スタンド 静止 衝突 ○活動の方法 ・準備物①「レール」 … 配線用モール1号(2m) ホームセンター等で市販されています。 ・準備物②「おもり球」 … 重さの違うものを3種類程度(最低2種類)用意しましょう。 ・ゲームはグループ対抗でおこないます。 ・Aチームがゴール(旗の位置)を設定し,自分たちのフィルムケース(重すぎるのは反則)をスター ト地点に置きます。 ・次に,Bチームがゴール地点でフィルムケースが止まるように,球を選択し,高さを決め,球 を転がして衝突させます。 ・ゴールに到達する距離によって得点を設定し,合計点で勝敗を決めます。 ○得点について ※次のものを参考にして,各グループで決めましょう。 【ゴール!】2点 OK! 残念 惜しい フィルムケースと棒が(横から見 て)重なったとき 【ニアピン賞】1点 Good! フィルムケースの端からゴールま 5cm 0点 5cm 5cm 5cm で5cm以内のとき ・2人で1チーム。1回につき1チーム2球ころがし,2球の計をその回の得点とします。 ※始めにころがしたチームメイトの結果をよくみて,2球目のころがし方を決めることが大切です。 ・両チーム3回ずつの合計得点で競います。 ・最後まで集中させるため,3回目の得点を2倍にしてみました。 ・ゴールの位置は,近(10,20,30cm) ・中(40,50,60cm) ・遠(70,80,90cm)の3つを必ず各1回 設定します。( )内の3ヶ所はどこもよいですが,1回の中でゴールの位置は変えません。 (同じゴールにそれぞれ2球ずつころがします。) ○スコア表の例 1 チーム 2 3(×2) 合計 チーム 自分たちの作戦 1 チーム 2 チーム 3(×2) 合計 - 155 - 勝因(敗因): 物の動きの規則性 「ふりこ」の実験をするときのポイントとコツを集めてみました 5年 ふりこの動きのきまりを調べる実験 小学校5年生で扱う「ふりこ」の規則性は, 糸につるしたおもりが1往復する時間は, おもりの重さなどによっては変わらないが, 糸の長さによって変わること。 です。実験を行って予想を確かめます 。「変わる量」は確かめやすいので すが, 「変わらないこと」を確かめるためには,ふりこの周期,実験器具, 測定方法などについて理解しておくことが必要です。 1 学習の展開例 【導入の活動】 例:「1秒ふりこ」 予想 ふりこが1往復する時間は,何によって変わるでしょうか。 → A:ふりこの長さ によって違うと思う。 B:おもりの重さ によって違うと思う。 C:左右に振れる幅 D:○○… によって違うと思う。 計画と実験 基準 基準 長さだけ変える 基準 重さだけ変える 基準 振れ幅だけ変える ○○だけ… → 短い 見 大きい 長い 直 し 重い 小さい 軽い 結果 変わった 変わらない 変わらない 変わらない まとめ おもりの重さなどによっては変わらないが,糸の長さによって変わる 再実験や予想の見直しを大切に 「自分の予想と違った」「思い通りの結果が得られなかった」などのとき,失敗で 終わらせるのではなく,実験のやり方や予想を見直したりして,必要があれば再実験を行ないま しょう。そのための時間がとれるような授業展開を計画しましょう。 - 156 - 2 「ふりこ」とは? ∼ふりこに用いる材料と工夫∼ (軽くて伸びない)糸の先端に(小さい)おもりをつけ,他端を固定してつるし, おもりを鉛直面内で左右に振らせたふりこを「単ふりこ」といいます。 ・できるだけこの条件に合ったふりこを用いると,よい結果が得られます。 m A 小さく振らせた単ふりこが1往復する時間 (単ふりこの微小振動の周期) ふりこが1往復する時間を「周期」といいます。周期T[秒]は, T = 2π l:単ふりこの長さ[m] g:重力加速度(≒ 9.8[m/s2]) l g と表され,周期T[秒]は単ふりこの長さだけに関係し,おもりの質量m[kg]や振幅A[m]は,式 の中に出でこないので関係ありません。これは,「ふりこの等時性」とよばれます。 〔参考〕長さ1m(1.000m)の単ふりこの周期 T = 2×3.1416× 1.000 ≒ 2.007 秒 9.797 2 ※ 浜松と静岡の重力加速度(理科年表より少数第3位まで)g=9.797 [m/s ]で計算。 ・10往復する時間をストップウォッチで計ると 20.07秒 になります。 ○ふりこに使う材料と工夫 主に小学校理科の教科書に掲載されているものを集めてみましたので参考にしてください。 (1) おもり … 重さ(数)が変えやすい,小さくて重いもの ・力学用おもり ・球 ・フィルムケース ・大きなワッシャー ヒートン 輪をつくる セロハンテープ 個数で変える (2) 糸 例:ビー玉と鉄球 例:小麦粉と砂 穴を通して向こう側へ 個数で変える … 軽くて伸びない,柔軟でおもりの振動に影響しないもの ・細い「たこ糸」がよく使われている。 さげふり ※おすすめ品は,「下 振用糸(細)」(建築現場で垂直を調べるときに逆三角錐のおもりをつけて使用)で,軽くて 伸びず,おもりを下げたとき回転しません。また,何本か合わせてもからみにくいので保管に便利です。 (3) 支 点 … しっかり固定,振動のじゃまをしない,糸の長さを変えやすい工夫 片側をスタンドのは さみで固定する。 糸 - 157 - つまようじ わりばしの間 に糸を通して 巻き付ける。 角材 (10mm角) 糸 φ2mm の穴 3−A ふりこの長さと1往復する時間の関係 2.50 例えば,25cmから2倍の50cmにしても1往復する時間は2 2.00 倍にはなりません。(4倍の1mでちょうど2倍です。) 《DATA》小さく振らせた単ふりこの周期 ・長さ25cmの場合 1.00秒(10往復では,10.1秒) ・長さ50cmの場合 1.42秒(10往復では,14.2秒) ・長さ 1m の場合 2.01秒(10往復では,20.1秒) 周 期 [秒] ふりこを長くすると,1往復する時間も長くなります。 1.50 1.00 0.50 0.00 25 50 100 ふりこの長さ [cm] 3−B おもりの重さと1往復する時間の関係 ・おもりの重さを変えても1往復する時間は変わりません。糸につるしたおもりが1往復する時間 は,おもりの重さに関係があるという見方や考え方をもつ子どもが多いので留意しましょう。 ○実験のコツ ・おもりを増やすとき,縦につなげる(A)とふりこが長くなり1往復する時間が変わるので,お もりを並べて糸につける(B)とよいでしょう。長いふりこ(1m)で行うと影響が少ない。 ふりこの長さは,支点から重心までの距離。 A 棒に重さがあるふりこ B 長さ 1m の単ふりこ ふりこの長さ ふりこの長さ 棒 重心 周 期 (秒) 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 10 おもり 3−C 20 30 おもりの質量 (g) 左右の振れ幅と1往復する時間の関係 ふりこのふれ幅を大きくすると,「ふりこの等時性」が成り立たなくなります。 「ふりこのふれ幅が変わっても1往復する時間は変わらない」ためには,「振れ幅 30 ° をあまり大きくしないことです。 ○実験のコツ ・ふりこが振れる角度は,片側30°以内の範囲で測定する。 .. ・「てこ実験器のうで」などの目盛りで振れ幅を決めるとよい。 0 1 2 3 ふれ幅が大きいふりこの周期 単ふりこは,振れ幅が大きくなると周期も増えます。 ・周期Tの公式: l g 1+ 16 +… ※ θはふれ角(片側)で単位はラジアン 《DATA》長さ1mの単ふりこの周期 ・小さい角度の場合 2.01秒(10往復では,20.1秒) ・ふれ角30°の場合 2.04秒(10往復では,20.4秒) ・ふれ角60°の場合 2.14秒(10往復では,21.4秒) - 158 - 周 期(秒) T=2π 2.40 θ2 2.30 2.20 2.10 2.00 1.90 1.80 0 30 60 振れ幅(角度:°) 90 物の動きの規則性 「衝突」の実験をするときのヒントを集めてみました 5年 運動しているおもりのはたらきを調べる実験 小学校5年生で扱う「衝突」の規則性は, おもりが他の物を動かす働きは, おもりの重さや動く速さによって変わること。 です。実験を行って予想を確かめます。「おもりの重さが大きく速いほど大きな働きをする」という ことは日常的に意識はしてないことが多いですが,子どももそのとおりの予想をするでしょう。 1 使用する材料と実験方法の工夫 主に小学校理科の教科書に掲載されているものを集めてみましたので参考にしてください。 レール(電気配線用モールやカーテンレール)で斜面を用いて球を転がし,他の物体に衝突さ せるのは共通でしたが,衝突させておもりの働きを調べる方法には,いくつかの種類があります。 衝突させて,他の物を動かし,移動した距離で 「物を動かす働き」を調べる。 高さを変えて, おもりの速さを変える 速い 移動した距離 方法① 遅い 衝突 静止 レール 衝突 高さ 方法② スタンド 水平に飛んだ距離 重い 木片 方法③ おもりの重さは, 球の材質や大きさで変える。 衝突 軽い 工作用紙で 作ったレール 移動した距離 方法④ ビー球 鉄球(小) 衝突 鉄球(大) フィルムケース(砂入り) 移動した距離 2 実験の留意点 ○ 「高さ」と「速さ」の関係 ・実験では「高さ」と「移動距離」を調べますが,ここで扱う内容は,おもりの働きが「速さ」に よって変わることです。「高い所から転がすほど速くなる。」ことを実験前に確認を。 ・実験の前に,おもりの速さを(他の物体に衝突させないで)確かめておくことが必要です。速く なると,遠くへ飛び(方法②),レールの端まで短い時間で到着します(方法③)。 ○「球の速さ」と「斜面の傾き」の関係 傾きを大きく ・「 斜面の傾き」を大きくすると,高さが同じでも 球が速くなると思う子どもが多いでしょう。 ・レールをスタンドに固定しないで行う場合に特に 注意が必要です。 - 159 - 高さは同じ 速さは同じ