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論文内容の要旨
Akita University 氏 名(本籍) 村上 龍希(秋田県) 専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 工博甲第221号 学位授与の日付 平成 27 年 3 月 22 日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 研究科・専攻 工学資源学研究科(電気電子情報システム工学) 学位論文題名 感性情報を考慮した人物画像処理の開発に関する研究 論 文 審 査 委 員 (主査)教授 景山 陽一 (副査)教授 西田 眞 (副査)教授 五十嵐 隆治 (副査)教授 水戸部 一孝 論文内容の要旨 近年,ディジタルカメラやカメラ付き携帯電話などのカメラ機能を持つ電子端末の普及 に伴い,私たちは手軽にディジタル写真や動画を撮影することが可能となり,個人の所有 する写真・動画は増加傾向にある.特に,重要な被写体である「人物」の撮像された写真 (人物写真)や動画は,ソーシャルネットワーキングサービス,動画共有サイト,並びに ビデオチャットなどを介して多くの人に利用・共有されている.上記のような情報通信技 術の発展によって人物写真や動画などのコンテンツが日常的に利用可能となった結果,① 膨大な量の写真や動画を対象とし,ユーザの要求に適したコンテンツを抽出する「コンテ ンツ検索」や,②ユーザの要求を満足するようにコンテンツ自体の品質を向上させる「コ ンテンツ高品質化」のように,ユーザの要求に合わせてコンテンツ利活用を可能にする機 能(コンテンツ利活用機能)の開発が求められるようになった.このため,コンテンツ利 活用機能の実現を目的とし,①膨大な写真の中から品質の高い写真を検索するために,画 像処理を用いて写真に含まれる感性情報を評価する方法や,②写真・動画の高品質化を目 的として,そのコンテンツ自体に画像処理を施し高品質化を図る方法など,感性情報を考 慮した人物画像処理の開発が行われている.しかしながら,ユーザの感性的な評価は定性 的な評価を含むことが多く,感性情報を考慮した人物画像処理の開発および評価を行うた めには,定性的な評価指標の定量化やユーザテストによる手法の評価などのアプローチが 必要となる.本論文は,感性情報を考慮した人物画像処理の開発に関する上記課題につい て研究を行い,工学上の進歩に寄与することを目的とする.すなわち,人物写真や動画を 対象として,①人物写真のもつ感性情報を評価する手法,並びに②感性情報を考慮し写真・ Akita University 動画を高品質化する手法を提案することで,感性情報を考慮した人物画像処理を開発する ためのアプローチを示し,工学上の進歩に寄与することを目的とする.本論文は全 4 章に より構成されている. 第 1 章を緒論とし,本論文の主題である感性情報を考慮した人物画像処理の開発につい て,人物写真および動画に関する利活用の現状とその関連研究,並びに今日までの研究状 況を概観し,本研究の目的および本研究に対する筆者の立場を述べるとともに,本論文の 内容について述べている. 第 2 章では,人物画像を構成する「人物領域」に着目し,人物写真の品質劣化要因とな りうる「白飛び」の準定量評価について検討を加えている.具体的には,証明写真やプロ フィール写真などに利用する人物写真の選定支援を目的として,顔画像における白飛びの 準定量評価手法を提案した.11 名の評価者による主観評価と白飛びの準定量評価結果を比 較したところ,提案手法は,顔画像の白飛びに対する準定量評価を可能にすることが明ら かとなった. 第 3 章では,人物画像を構成する「背景領域」を別の画像に差し替える背景差し替え法 に着目している.具体的には,背景差し替えにおける前景(人物領域)と新しい背景(風 景画像)の光源色の違いに起因して生じる背景差し替え映像の違和感を軽減する手法を提 案した.14 名による評価実験の結果,提案手法は色被りした風景画像を用いた背景差し替 え映像に対する違和感軽減を可能にすることを明らかにした. 第 4 章は結論で,本研究で得られた主な成果と本論文の工学的意義および今後に残され た課題について述べている. 論文審査結果の要旨 近年,ディジタルカメラやカメラ付き携帯電話などのカメラ機能を持つ電子端末の普及 に伴い,私たちは手軽にディジタル写真や動画を撮影することが可能となり,個人の所有 する写真・動画は増加傾向にある.特に,重要な被写体である「人物」の撮像された写真 (人物写真)や動画は,ソーシャルネットワーキングサービス,動画共有サイト,並びに ビデオチャットなどを介して多くの人に利用・共有されている.上記のような情報通信技 術の発展によって人物写真や動画などのコンテンツが日常的に利用可能となった結果,① 膨大な量の写真や動画を対象とし,ユーザの要求に適したコンテンツを抽出する「コンテ ンツ検索」や,②ユーザの要求を満足するようにコンテンツ自体の品質を向上させる「コ ンテンツ高品質化」のように,ユーザの要求に合わせてコンテンツ利活用を可能にする機 能(コンテンツ利活用機能)の開発が求められるようになった.このため,コンテンツ利 活用機能の実現を目的とし,①膨大な写真の中から品質の高い写真を検索するために,画 像処理を用いて写真に含まれる感性情報を評価する方法や,②写真・動画の高品質化を目 的として,そのコンテンツ自体に画像処理を施し高品質化を図る方法など,感性情報を考 Akita University 慮した人物画像処理の開発が行われている.しかしながら,ユーザの感性的な評価は定性 的な評価を含むことが多く,感性情報を考慮した人物画像処理の開発および評価を行うた めには,定性的な評価指標の定量化やユーザテストによる手法の評価などのアプローチが 必要となる.本論文は,感性情報を考慮した人物画像処理の開発に関する上記課題につい て研究を行い,工学上の進歩に寄与することを目的とする.すなわち,人物写真や動画を 対象として,①人物写真のもつ感性情報を評価する手法,並びに②感性情報を考慮し写真・ 動画を高品質化する手法を提案することで,感性情報を考慮した人物画像処理を開発する ためのアプローチを示し,工学上の進歩に寄与することを目的とする.本論文は全 4 章に より構成されている. 第 1 章を緒論とし,本論文の主題である感性情報を考慮した人物画像処理の開発につい て,人物写真および動画に関する利活用の現状とその関連研究,並びに今日までの研究状 況を概観し,本研究の目的および本研究に対する筆者の立場を述べるとともに,本論文の 内容について述べている. 第 2 章では,人物画像を構成する「人物領域」に着目し,人物写真の品質劣化要因とな り得る「白飛び」の準定量評価について検討を加えている.具体的には,証明写真やプロ フィール写真などに利用する人物写真の選定支援を目的として,顔画像における白飛びの 準定量評価手法を提案した.11 名の評価者による主観評価と白飛びの準定量評価結果を比 較したところ,提案手法は,顔画像の白飛びに対する準定量評価を可能にすることが明ら かとなった. 第 3 章では,人物画像を構成する「背景領域」を別の画像に差し替える背景差し替え法 に着目している.具体的には,背景差し替えにおける前景(人物領域)と新しい背景(風 景画像)の光源色の違いに起因して生じる背景差し替え映像の違和感を軽減する手法を提 案した.14 名による評価実験の結果,提案手法は色被りした風景画像を用いた背景差し替 え映像に対する違和感軽減を可能にすることを明らかにした. 第 4 章は結論で,本研究で得られた主な成果と本論文の工学的意義および今後に残され た課題について述べている. 以上のように本論文で得られた成果は,人物写真に含まれる感性情報を画像処理技術に より評価する手法と,感性情報を考慮して人物画像自体を高品質化させる手法の研究に重 要な指針を与えるもので,工学的に寄与するところが大きい.よって,博士(工学)の学 位論文として十分価値あるものと認められる.