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京都観光と「源氏物語千年紀」
■ 地域 第21回 シンクタンク便り ■ 株式会社 京都総合経済研究所 〒600-8416 京都市下京区烏丸通松原上る薬師前町700 京都銀行本店西館1階 TEL. 075-361-2377 FAX. 075-361-7590 URL. http://www.kyotobank.co.jp/houjin/kpa/souken.html 京都観光と「源氏物語千年紀」 株式会社 京都総合経済研究所 常務取締役調査部長 自治体チャンネル+ 平成 26 年 月号 20 7 中野 勝仁 21世紀は「交流の世紀」といわれる。我が国 このように、京都はその恵まれた観光資源を においても“観光立国論”が唱えられ、観光振興 常に広く情報発信すると同時に、新たなイベン への取組みが盛んであるが、観光は京都にとっ トを企画、工夫し、京都の魅力の再発掘に努めて ても経済活性化の重要な視点である。 きたのである。 ●「京都ブーム」とその背景 ●今年のテーマは「源氏物語千年紀」 京都は、我が国を代表する「国際文化観光都 なお、今年は紫式部の『源氏物語』が執筆され 市」として、 国内外から多くの観光客を受け入れ てから、ちょうど千年目に当たる。そこで、今年 てきた。もっとも、いつも順風満帆であったわ を「源氏物語千年紀」と命名し、源氏物語を軸に けではない。バブル経済崩壊後しばらく低調な 伝統文化を再評価する機運を盛り上げ、京都観 時期があったが、2001年の米国多発テロを契機 光の目玉にしようと、さまざまな事業を展開し に、京都観光が見直され価値が再認識されるこ ているところである。 ととなる。こうした時期と相前後して、 「京都 ブーム」が盛り上がりをみせ始めるのである。 いくつか具体例をあげると、各種のシンポジ ウムや「源氏物語千年紀展」などの美術展が賑わ しかし、 今日の京都ブームは、 自然発生的に起 いをみせており、今後、国際フォーラム、記念式 こったものではない点に留意すべきだろう。現 典なども予定されている。あるいは、 「源氏物語 に、旅行会社や交通機関等とのタイアップのほ を歩く∼ 10コース」の提案、デジタル音声観光 か、雑誌編集者らを京都に招き観光スポットを ガイドの実施、さらに嵐山「宮廷鵜飼」 、観光バ 直かに体験し、京料理を食し、その神髄を理解し ス特別コース「教科書にみる京都再発見」等々、 てもらう、といった取組みが長年なされてきた。 一年を通じ実に多彩な企画・イベントが用意さ こうした行政をはじめ観光関係者の地道な努力 れ、人々の関心も高まりをみせている。 が、結実した結果といえる。 ところで、京都を訪れる観光客は、このところ さらに、 新たな事業を次々と企画し、 観光客誘 毎年、過去最高を更新しており、年間観光客はす 致に成果をあげてきた。例えば、有名寺社等の でに4,839万人に達している(2006年) 。京都市 夜間のライトアップや特別拝観、端境期対策と では、2010年までに「入洛観光客5,000万人」を して趣向を凝らした「夏の旅」 「冬の旅」 、京都東 展望している(この場合の京都市域にもたらさ 山や嵐山一帯の散策路を灯りと花で演出する れる経済波及効果は 1 兆2,600 億円、雇用効果 「花灯路」事業も成功している。 「京都観光文化 は10万1,000人と試算されている) 。 検定」なども全国的に話題を提供している。ま 昨今の好調さから判断すれば、その実現はす た、NHK大河ドラマの『新選組』や『義経』など でに射程に入りつつあり、前倒しで目標達成さ の放映効果も、巧みに活用してきた。 れる公算が大きいと思われる。