Comments
Description
Transcript
手術前後の注意点
腹腔鏡下手術を受ける方へ:術前術後の注意点について 当科で入院手術を受ける場合の術前術後に注意していただきたい点について説明しますので、十 分理解し、納得した上で手術を受けるようにして下さい。 ①術前:2011 年 5 月より手術の前日の入院となります。入院前より、低残渣食(外来で説明)を 摂っていただきます。この食事を摂る目的は、腸管損傷の危険性を低くするために、なるべく腸 の中にガスが貯まらないようにすることです。従って、入院後は病院の食事以外は摂らないよう にして下さい。 ②術中術後:手術は終了すれば、そこで完結するわけではありません。術中術後には、手術合併 症に注意しながら慎重に経過観察を行う必要があります。手術合併症は、大きく、出血、近接臓 器(膀胱、腎臓、尿管、腸管等)の損傷および術後感染に分類されます。また、喫煙歴のある方 の場合は、禁煙した後であっても、非喫煙者に比べて、全身麻酔合併症(呼吸器系や血栓症等) 発症のリスクが上がります。 ●バルーンカテーテル留置:手術が終了し、麻酔から醒めると、膀胱の違和感を訴える方が多い ですが、これは、膀胱内に留置したバルーンカテーテルという管の為ですので、心配は要りませ ん。 ●術中膀胱鏡と尿管ステント留置:子宮全摘術の方は基本的に全員、他の手術でも癒着がひどい 場合等で膀胱や尿管損傷の危険性があると判断した場合には、術中膀胱鏡を行うとともに尿管ス テントというカテーテルを尿管内に留置します(通常は手術の翌日に抜去します)。インジゴカ ルミンという青い色素を静脈内注射し、色素が尿とともに流れてくることを確認します。術後に 尿が青い場合があるのは、このためです。尿流出に異常がある場合には、泌尿器科医師に依頼し た上で開腹手術となることがあります。また、術中に異常が無くても、その後に尿管狭窄や膀胱 腟瘻(膣よりの尿流出)が起こって、再手術となることもあります。 ●ドレーン留置について:手術の進行状況により、手術終了時点でドレーンと呼ばれる細い管を おなかの中に入れることがあります。主な目的は術後出血の監視と腸管損傷の有無の確認です。 異常がないと判断した時点で抜去します。 ●術後出血:手術当日の夜は、術後出血の可能性がありますので、血圧、脈拍数、腹部膨満、尿 流出(50ml/時間以上)等に注意しながら管理します。血液を採って貧血の有無を調べることもあ ります。一晩経って異常が無ければ、通常は出血の危険性は低くなります。ドレーンが入ってい る時は、ドレーンからの出血が 100ml/時間を超え、術後出血の可能性が高いと判断すれば、再手 術となることがあります。 ●術後癒着:腹腔鏡下手術においては、開腹手術に比べてお腹の中の癒着が起こりにくいと言わ れています。その理由のひとつは、早期の離床によると考えられています。つまり、体を早く動 かすことにより、癒着を起こりにくくしているという考え方です。従って、術後2−3時間経過 して異常がなければ、定期的に横を向いて体位を変換されることを勧めます。 ●腸管損傷:術後の排ガス、排便があれば、腸管損傷の可能性は低いと考えます。通常、排ガス は術後 1-2 日目に、排便は術後 2-3 日目にあります。ドレーンより腸液や便の排出があり、腸管 損傷の可能性があると判断すれば外科に依頼し、直ちに再手術となります。この場合、人工肛門 の造設が必要となることがあります。 ●術後感染:通常は、術後 2-3 日で熱は下降しますので、抗生剤の点滴は 2-3 日で終了し、内服 へ切り替わります。癒着がひどい場合や術前に感染症があった場合には、熱が下がらなかった り、血液検査でも異常が出ますので、その場合には、長めに抗生剤の点滴を行ったり、抗生剤の 種類を変える必要が生じます。感染の原因や程度によっては、再手術が必要となることがありま す。術後感染は、退院後2−3週関しても発症する可能性がありますので、発熱等の異常を感じ たら、自分で解熱剤(熱が下がると感染の有無が分からなくなるため)を使うのではなく、すぐ、 病院へ連絡してください。 2011 年 5 月 岐阜県立多治見病院産婦人科