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名桜大学他・「本土復帰 40 周年記念講座」(第1回)

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名桜大学他・「本土復帰 40 周年記念講座」(第1回)
名桜大学他・「本土復帰 40 周年記念講座」(第1回)
講演録
講演テーマ:万国津梁~沖縄振興策における取組~
内閣府沖縄総合事務局長
槌谷 裕司
【はじめに】
ことしは本土復帰40年の節目を迎え、昨年8月に沖縄総合事務局長として着任し、エキサイティン
グな毎日を過ごさせていただいております。
昨年の世界のウチナーンチュ大会、そして、三度目の沖縄開催となった島サミットなどにも参加させ
ていただいて、
「万国津梁の地」沖縄の底力を目の当たりにしました。
本日は、沖縄・やんばるは、地域の振興にとって「条件不利地」か?ということと、新しい沖縄振興
策でこれから何が起こるか?についてお話をしたいと思っております。
先日、アームストロング船長が亡くなったというニュースが世界を駆け巡りましたが、アポロ11号
が月面に着陸したのは、1969.7.20。彼が名を残したのは、月に降り立ったとき、全世界に向けて「一
人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとって大きな一歩だ」と言った言葉です。米ソ冷戦下にも
かかわらず、 「アメリカにとって大きな一歩」ではなく「人類」としました。
実は、これに匹敵する世界観は、5百年以上も前に首里城の釣り鐘に刻まれています。
ご存じのとおり、1458 年に尚泰久(しょうたいきゅう)王は臣下に命じて釣り鐘を鋳造させ、
「万国津
梁」の文字を刻ませ、首里城正殿にこれを掛けました。アジア各国への交通手段が、船しかない世の中
で、5百年以上も前に古琉球の人々が既に「万国」のことを思いを馳せる世界観を持っていたことは驚
異です。
「万国津梁」の世界観は、アポロの月面着陸に匹敵するものです。
今般改正された沖縄振興特別措置。これに基づき、去る5月に定められました「沖縄振興基本方針」
(平
成24年5月11日、内閣総理大臣決定)においても、実は、
「沖縄の優位性を生かした民間主導の自立
型経済の発展」に加え、
「アジア・太平洋地域の発展に寄与する21世紀の『万国津梁』の形成」といっ
た沖縄振興の新たな方向が示されました。
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「不惑」を迎えた総事局
私ども沖縄総合事務局は、本土復帰の年の5月
15日に、当時の琉球政府の機能を分割し、国の
立場で沖縄の振興に深くかかわる行政サービス
をワンストップで提供する機関として設立され
ました。人間で言えば40歳。
「不惑」の歳であ
ります。
沖縄総合事務局は、地方財務局を始め、国土交
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通、農水、経産などの出先機能を合わせ持ち、東日本震災の復興庁・復興局のモデルともなりましたが、
復興局は、調整機能が中心であり、依然として、他に例を見ないユニークさを持っていると自負してお
ります。
先人の努力もあり、有り難いことに沖縄では「総事局」と親しみをもって呼ばれ、地域に根差した機
関として今日に至っているところです。
国会は「ねじれ」と言われて久しいですが、この度の新しい沖縄振興法制は、幸いにも全会一致で成
立したところであります。この新制度を最大限活用していただくとともに、総合事務局の各部が持つ多
様な政策手段と専門性をもってお役に立てるよう取組んでいるところです。
ことしは、新しい法制度の「周知期間」、「お試し期間」ということで、那覇の方では、有識者等を招
いて40周年記念「リレー講演会」を開催し、やんばるでは、名桜大学、名護市と連携して、この連続
講座を行っているところです。
今後とも、総合事務局として、
「総合力」を発揮しつつ、沖縄の人々や地域にどうしたらお役に立てる
か、本土との良きパイプ役をどうしたら果たせるかを考えながら、日々取り組んでいきたいと思ってお
ります。
職員にも、「自分の仕事でない」と言うなかれ、
「いつもさわやか、ワンストップ・サービス」と言っ
ているところです。
沖縄総合事務局において、いま力を入れていることは、次の4つの柱です。
①
観光と物流。ヒト、モノの流れを支える社会資本整備。
②「地域資源」を活用した産業化の支援、
「バイオ」や「ウェルネス」などの新産業の創出と雇用の
場の開発
③
基地跡地の有効利用を視野に置いた特色ある街づくりへの支援
④
住民の安全・安心と事業継続を確かなものとする「災害に強い地域づくり」=防災対策
いずれも「競争力を高め、富を生み出す」取組であります。地域の施策と融合させてシナジー効果が
発揮されるよう「惑わず」
、一生懸命取組んでおります。
本日は、①と②の柱を中心にお話ししたいと思っております。
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沖縄を世界へ・・・二つのトンネルのお話
本土の方では、人口減少社会に突入し、デフレ経
済にあえぎ、リーマンショック、欧州の債務危機や
東日本の大震災による電力制限などもあり、三重苦、
四重苦にあえいでおります。しかし、沖縄に限って
言えば、実は日本広しといえども、ブロック単位で
見て、唯一生産年齢人口が増えている地域です。沖
縄は、本土の高度成長期に乗り遅れた訳であります
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が、時は巡り、沖縄は今が「開花期」と言えます。
「世界を沖縄へ」というプロジェクトが恩納村の OIST のプロジェクトですが、いよいよ今度は、
「沖
縄を世界へ」というプロジェクトが着々と進んでいます。
〈モノの流れを変える〉
ちょうど開通して1年を迎えました「うみそ
らトンネル」。工事期間14年。陸上部分も含
めて費用1600億円余をかけたトンネルで
すが、これがヒトだけでなく、モノの流れを確
実に変えています。
「うみそらトンネル」により、明治橋付近の
渋滞の解消し、空港と観光地のアクセスが便利
になったのは知られていますが、那覇新港と空
港間の貨物輸送の効率も格段に上がりました。
この一年で相当な経済効果をもたらしています。
また、近年、那覇空港で始められた国際航空物
流基地でありますが、最近急速に業績を伸ばし、
日本で成田、関空に次いで第三位の貨物取扱量を
記録しました。ANA が保有する貨物機9機のう
ち、8機を投入して、短期間に月間1万4千トン。
国内では、成田、関空に次ぐ第三位の貨物取扱い
量を誇っております。
世界のドアツードアの物流事業は、四大インテ
グレーター(米フェデックス、独 DHL・・・)と呼
ばれる企業で占められています。
この四大インテグレーターとは違ったこと、すなわち「アジア to アジア」という新しいビジネスモデ
ルを提案し、実践したことが成功の秘訣だと言われています。これは、コロンブスの卵であります。こ
の「ひと味違った」取組、これがイノベーションです。
こうした中で、この度の新しい沖縄振興法では、
「国
際物流特区」が設けられました。そして、うれしいこ
とに、早速、新しいプレイヤーが名乗りを上げており
ます。ヤマト運輸であります。
この会社は、国際宅配便と法人向けの小口輸送サー
ビスを取り扱い、当面、上海と香港、台湾、シンガポ
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ール、マレーシアのアジア5地域に向けて、那覇
空港の国際航空物流基地のハブ機能を活用する
ということが決まっております。
成長するアジアに近い沖縄、24時間運行可能
な沖縄を拠点とすることで、通関や仕分けなどの
作業がスムーズに行え、アジア域内で、これまで、
配送に4日かかっていたものが、翌日配送が実現
するといっております。
国際間の「クール宅急便」も来年3月までに実
施されます。これもひとつの「イノベーション」
です。
こうした、
「物流新時代」の中で、沖縄・やん
ばるのモノづくりが進むべき道はどちらなのか。
物流の対象品目という目で見て、重量1㎏当た
りの価格を比較してみますと、日本の輸出品を
代表する自動車は、沖縄産のオクラ1㎏当たり
1700円に及ばず、1000円に過ぎません。
マンゴーに至っては、自動車の5倍の高付加価
値です。こうしてみると、沖縄・やんばるに適
したモノづくりは何かということが、自ずと理
解されるのではないでしょうか。
さらに、新しい沖縄振興法では、
「産業イノベ
ーション地域」と呼ばれる特区もあります。今回、この地域の投資税額控除の対象業種には、商品検査
業や計量証明業、研究開発支援検査分析業(効能証明)が追加されました。
こうした企業の集積に努めれば、沖縄で生産したモノも本土や海外の拠点で生産したモノも、沖縄で
太鼓判を押す、すなわち、中国の CCC 規格、EU の EN 規格などをクリアして、世界に売り込むといっ
た「ニュー・ビジネス」が生まれる可能性があります。
言わばハブ機能の高度化です。
そうすると、次なる課題は、那覇新港の物流機能、船の低コスト大量輸送、飛行機の小口・迅速性を
組み合わせた「シ―&エアー」への支援などが視野に入ってきます。
「うみそらトンネル」は公募により選ばれた名前でありますが、このトンネルの戦略的意義と可能性
を見事に表現している実に良い名前です。
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〈ヒトの流れを変える〉
ヒトの流れも変えつつあります。
24年度の沖縄観光は、震災の振替需要や中国向けの数字ビザの発給なども影響して、全国に比較し
て、まずまずの状況であったと言って良いでしょう。
他方、那覇港の旅客船バースや臨港道路の整備
など、インフラ整備を重点化、効率化して着々と
行って来た効果がようやく目に見えるようになり、
24年度の大型クルーズ船の寄港は、対前年で1.
5倍に増え、82回。今後も増加が見込まれてい
ます。
この夏、1回で3600人の乗客を運ぶ大型
船・ボイジャーの寄港が初めて実現しました。ボ
イジャーの大きさは、県庁並。若狭のバースに、
しばしば「県庁」が出現し、県庁職員ではなく、
富裕層の乗客を吐き出す姿を想像してほしい。
その舞台裏では、上陸した観光客を捌くために、百台近い観光バスが必要となりますが、実は、
「うみ
そらトンネル」が空港の駐車場をつないで、そのスムーズな配車に一役買っています。まさに縁の下の
力持ちです。
大型クルーズ船の乗客(大半は中国人客)がどのくらいの買い物をしているかご存じですか。一人あ
たり3.8万円、中には百万円以上という人もいます。一回の寄港で1.37億円のカネが沖縄に落ち
ています。クルーズ船の「乗客」は文字通り「上客」です。
〈トンネルを抜けると、そこは・・・〉
ことし3月、名護東道路が一部開通しました。トンネルを抜けると、そこは、もう一息で許田のイン
ターです。長さ約2㎞で県内最長の「名護大北」と「幸地又」
、二つのトンネルで結ぶ名護東道路は、名
護以北で初めての高規格道路、自動車専用道路
であります。
これにより、やんばる全域へのアクセスが劇
的に改善し、今帰仁、本部、大宜味、国頭など
北部圏域内の周遊がより便利になりました。こ
れからは、より多くの観光客に訪れていただけ
るよう、やんばるの魅力を上手に伝える情報発
信が課題となります。
名護東道路は、将来、全線供用されますと、
JA の北部営農センターからは、輸送時間が更
に11分短縮され、また、沖縄自動車道のミッ
シングリンクが解消されれば、最終的には、那覇空港までトータルで1時間と12分という輸送時間が
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名桜大学他・「本土復帰 40 周年記念講座」(第1回)
実現します。
那覇の特区地域では、国の補助事業で、この
秋に冷蔵施設を完備した物流センターが出来ま
す。二階部分には、IT を活用したコールセンタ
ーとの連携やプロモーションサイトの製作まで
行えるスペースを用意しているといいます。
今後の展開いかんでは、やんばるで冬に穫れ
たスイカ、陸上養殖のミーバイや人気の健康食
品を、ミス・やんばるがウェブサイトで紹介し、
ネット・オークションで高値がついた商品を、
上海などに翌日配送するというビジネスも夢で
はありません。
みなさん、通販サイトの「やんばるネット」
でも立ち上げてはいかがでしょうか。
こうして見ますと、那覇自貿地域の開設から
四半世紀。やっと蕾(つぼみ)が開いてきた観
があります。
本土の各生産地と比べてみましても、産業の
立地条件としては、やんばるに決して遜色はあ
りません。このトンネルから「やんばるの風」
を沖縄全島、アジアにまで吹かせようというこ
とで、国としても出来る限りの支援しているところです。
3
1+2+3=∞
では、どうしたら、「やんばるの風」をアジアに吹かせることができるでしょうか。
皆さんもご存じの通り、やんばるには、郷土の偉人がいらっしゃいます。
東北は石巻で有名な牡蠣の養殖は、海外にも伝えられて、フランスやカナダでも盛んに行われるよう
になりましたが、これを始めたのは、実は、大宜味村・根路銘出身の宮城新昌さん(あの料理記者歴4
0年の岸朝子さんのお父さん)であります。
「白ワインの友」の生ガキは、フランスが本場と思われがちですが、
「世界の牡蠣王」と呼ばれる宮城
新昌さんの功績なくしては語れません。
この「世界の牡蠣王」を出したのが、他ならぬ沖縄・やんばるであります。
考えてみれば、沖縄は空手のメッカ、プロ野球キャンプのメッカ、沖縄はいろんなメッカであります。
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そして沖縄は、言うまでもなく天然資源の宝庫、チャンプルー文化の源流です。これに「一手間加え
た」モノやサービス。これが、私が言う「やんばるの風」であります。
沖縄は、全国的に見ましても、食品加工の分
野で強みがあります。私は、農業を中心に製造
(二次)と、販路開拓(三次)で相互参入が盛
んになり、沖縄発の「農業ビッグバン」のよう
なものが起これば良いと思っています。
やんばるですでに宝物を掘り当てた地域があ
ります。名護の勝山地区です。いまでこそ、勝
山と言えばシークワサ―、シークワサ―と言え
ば勝山と言われるほどになりましたが、まだま
だ、ここ数年の話です。勝山は、起伏の激しい地形に住居が点在する地域であり、過去には、蘭の切り
花など色々やってみましたが、どうも上手くいきませんでした。
ところが、いまや勝山で生産・加工・販売するシークワサ―の100%ジュースは、ベルギーの国際
コンクールで三つ星を受賞し、世界のシェフやソムリエに認められた味覚の仲間入りをしております。
なでしこジャパンが、オリンピックで銀メダルを獲り、名実共に世界の「なでしこ」になりましたが、
勝山のシークワサ―も正真正銘、世界のシークワサ―であります。
勝山は、さらに昨年、むらづくり部門で農林水産大臣賞を受賞しました。今年、六次産業化の事業認
定も受けております。
今帰仁の方では、やはり六次産業化の認定を受けました「あいあいファーム」が、廃校になった小中
学校を再生し、手作りパン屋さんやカフェ、有機野菜の直売所などを造っております。村に「にぎわい」
を取り戻し、農業が元気になり、そして、からだにおいしいものを食べてみんなが笑顔になります。ま
さに一石三鳥です。
これからは、沖縄に眠っている宝物を、地域の人たちが主役となってどんどん掘り起こし、街のにぎ
わいをつくり、次の世代につなげる。六次産業化などの制度を活用して、亜熱帯の特色ある地域資源の
付加価値を高める取組みは、これからの沖縄の発展の切り札だと思っています。
地域資源の活用は、言うまでもなく、農業の分野に限ったものではありません。あいあいファームの
ように、外食産業からのアプローチもありますが、サービス業や製造業からのアプローチも当然ありだ
と思います。
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この四月から新たなステージに入った沖縄振
興策では、観光の分野で、
「観光地形成促進地域」
の指定を県知事ができるようになりました。地域
限定通訳ガイドの規制緩和の他に、外国人を対象
とした健康管理増進施設(フィットネス、ヘルス
パなど)が税制優遇を受けられるようになります。
「外国人を対象とした」と言うとハードルが高そ
うですが、要は外国語で施設の案内をできる人が
一人でもいれば良いのです。
ご承知の通り、沖縄は、日本でも有数の研修医
と理学療法士が多い地域です。名桜大学は、留学
生枠があり、看護学科もあります。さらに、島懇
事業で整備された宜野座村の「かんなタラソ」。
それに名護市のスポーツリハビリセンター、金武
町のギンバル訓練場の跡地利用計画も健康増進
がコンセプトです。
こうした好条件を有機的に連携させ、
「癒しの
島」沖縄で、ウエルネス産業をどう花開かせるか
が、今後の重要な課題だと思っています。
さらに、
「産業イノベーション地域」という新制度
も使えます。大宜味村の塩屋では、大保ダム建設の残
土を有効利用して造成された村の発展の拠点「結(ゆ
い)の浜」が整備されてきましたが、早くも、この制
度を適用して、水ビジネスと、野菜工場で「産業イノ
ベーション地域」の計画認定を準備中であると聞いて
おります。
「イノベーション」と言うと何やら難しいことのよ
うに聞こえますが、
「結いの浜」の例でもわかります
ように、山から涌き出す天然水をペットボトルに詰め
て売るという「一手間加える」ことと考えてもらえば良いのです。
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「異産至宝」の眠る「蓬莱の島」
沖縄が目指すべき将来ビジョンは「21世紀の万国津梁」です。要は、ヒトやモノが集まり行き交う
「リゾート」=うちなーぐちでは、
「あじまー」です。
沖縄は、これまで、観光のリゾートというビジネスモデルで成功してきたところですが、IT のリゾー
トの芽も出てきました。バイオ・ベンチャーのリゾート、ウエルネスのリゾート、そして何よりも物流
のリゾートにもなり得ます。
ところで、伊江ラムサンタマリアというお酒ご存知でしょうか。昨年の夏、伊江島を訪問しました際、
地元特産のきびを原料にしたラム酒の工場を見学しました。
そこで、震災後に初めての樽詰めが行われたというラム酒を試飲させてもらいました。これが芳醇な、
どこかなつかしい香りがしました。
ふと、ラム酒を貯蔵しているがっしりとしたオーク樽に魅かれて、樽の産地を聞いてみると、何と、
我が故郷・北海道は余市のニッカウヰスキーの工場から運んできたものだということです。伊江島から
2182㎞、目を南西に転ずると、ベトナムはハノイとほぼ等距離です。ベトナムと同じくらいの遠隔
の地が北海道は余市であります。
「君知るや、名酒泡盛」は、タイの米を使ってあの素晴らしい香りを得ましたが、伊江ラムの芳醇さ
は、
「日本のウイスキー王」竹鶴政孝が会得した本場のスコッチの製法を受け継いで、北の国から、樽を
わざわざ取り寄せ、熟成させることにこだわりました。この「こだわり」もひとつのイノベーションで
ありますし、また、チャンプルー文化の神髄でもあります。
先日、羽田空港のラウンジに立ち寄りましたときに、サントリーの「山崎」
(注)の隣にこの伊江ラム
サンタマリアが置かれており、このお酒もいよいよ日本を代表するラム酒のブランドの仲間入りをして
きたなと感慨深く眺めた次第であります。
(注)竹鶴は、現在のサントリーの山崎蒸留所の初代工場長を経験。
私は、沖縄・やんばるの地には、優れた点が三点あると思います。
第一は、
【多様性】亜熱帯地域で他には見られない
特色ある産物が豊富にあります。シークワサ―だけ
でなく、パイン、クヮンソウ、カンダバー、アグー・・・
沖縄の農山漁村には、まだまだ無限に宝物が眠って
います。
そして、先程紹介しましたとおり、何よりも、文
化の基盤がチャンプルーであるということが優れて
いるところです。
第二は、
【知恵】製造業に占める食品加工業の割合
が全国でも高い有数の地域であり、最近では沖縄高
専や沖縄科学技術大学院大学を始めイノベーションを起す拠点が幾つもあるところです。
第三は、
【交流】発展するアジアに近く、多くの観光客が訪れ、国際物流ハブを通じた販路開拓にも限
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名桜大学他・「本土復帰 40 周年記念講座」(第1回)
りないポテンシャルがあるところです。
このように、沖縄・やんばるは、実は、
「多様性」
(diversity)、
「知恵」
(talent)、
「交流」
(plaza)=
DTP と三拍子揃っており、これが地域資源を活用した産業創出のむしろ「条件有利地」となってきつつ
あるというのが私の持論です。
むすび
沖縄は、その昔、尚泰久(しょうたいきゅう)王が宣明したとおり、いまこそ「異産至宝」の眠る「蓬莱
の島」と言えます。
沖縄振興法上の各種特区などの優遇策は、
「期間限定」、
「沖縄限定」で認められたものであります。ま
た、六次産業化などの既存の国の支援策も、もちろん、理屈さえつけば、重複して受けることができま
す。
沖縄は、
「チャンスの島」です。せっかくある制度は、減るものではありませんので、是非とも使い倒
していただきたい。
結びに、沖縄総合事務局の職員は、いつもさわやかワンストップ・サービス!相談を受けて、
「自分の
仕事ではない」と言う職員は一人もいないと思います。是非とも普段着でお気軽に出入りしていただき
たい。
ご清聴ありがとうございました。
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