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ファンコニー貧血に自然発生する特異的染色体切断点の 悪性腫瘍発生

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ファンコニー貧血に自然発生する特異的染色体切断点の 悪性腫瘍発生
岡 山 医 誌(1991)
103,
235∼246
フ ァ ンコニ ー貧 血 に 自然 発 生 す る特 異 的染 色 体 切 断 点の
悪 性腫 瘍 発 生 にお け る意義
岡 山 大 学 医 学 部 小 児 科 学 教 室(指
辻
導:清
一
城
(平 成2年12月11日
Key
words:
Fanconi
anemia
acute
緒
野 佳 紀 教 授)
受 稿)
chromosome
non-lymphocytic
breakage
leukemia
tumorigenesis
fragile
site
発 生 す る染 色 体 切 断 点 を分 析 し,さ
言
ら に,こ
れ
ら の切 断 点 を血 液 系 の 悪 性 腫 瘍 に み られ る染 色
フ ァ ン コ ニ ー 貧 血(FA)は,汎
血 球 減 少,低
身長 お よび 種 々 の先 天 奇 形(腎
の低形 成や その
他 の奇 形,皮 膚 の 色 素 沈 着,橈
骨 や母 指の 骨の
体 再 編 成 の 切 断 部 位 と比 較 検 討 し た.
対 象
低 形 成 あ る い は 無 形 成 な ど)を 主 要 症 状 とす る
1.
疾 患 で,通 常 小 児 期 に 発 症 し,そ の 遺 伝 様 式 は
常 染 色 体 劣 性 で あ る1).ま た, FAは
症 候 群 の 一 つ で,ギ
ャ ッ プ,切
象
1985年1月
染 色体切 断
断,放
対
射 状 配列
と 方 法
か ら1989年4月
までに 岡山大学 医
学 部 附 属 病 院 小 児 科 でFAと
診 断 し た4例
象 と した. FAの
形 成 骨 髄 に起 因 す
診 断 は,低
を対
な ど の染 色 体 異 常 が 高 頻 度 に 自然 発 生 す る こ と
る 汎 血 球 減 少 症,低
が 特 徴 で あ る2). FAと
血 リ ンパ 球 の 染 色 体 に お い て 高 頻 度 に 出現 す る
同 様 に,染 色体 脆 弱 性 を
特 徴 とす る染 色 体 切 断 症 候 群 に は,毛
張 性 失 調 症(AT),
Bloom症
細 血管拡
候 群(BS)が
身 長,多
染 色体 異 常 に 基 づ い た.
含
1に 示 す.診
発奇 形お よび末梢
4症 例 の 臨 床 症 状 を表
断 時 の 年 齢 は,
3歳3カ
まれ,こ れ らの 疾 患 で は 悪 性 腫 瘍 が 高 率 に 発 生
歳10カ 月 で,本 研 究 を行 っ た年 齢 は,
す る3).合併 す る悪 性 腫 瘍 の 種 類 に は,疾 患 に よ
月 か ら10歳11カ 月 で あ つ た.
る特 異 性 が あ り, FAで
は,骨
少 に加 え,低 身 長 を認 め た 。2症
癌 が ほ とん ど を 占め,リ
ン パ 性 白血 病 は 合 併 し
な い の に 対 し, ATで
は,リ
髄 性 白血 病 と肝
8歳6カ
4症 例 に 汎 血 球 減
例 の み に先 天
ンパ性 白血病 あ る
い は リン パ 腫 の み が 認 め ら れ,骨
表1 髄 性 白血 病 の
合 併 は知 られ て い な い3).一 方, BSで
性 白血 病,リ
月 か ら9
フ ァ ン コ ニ ー 貧 血4症
例 の臨 床 症状
は,骨 髄
ン パ 性 白血 病 の い ず れ もの 合 併 が
認 め られ る3).な ぜ, FAに
お い て,特 定 の 悪 性
腫 瘍 が 高 率 に 合 併 す るか そ の 理 由 は 究 明 さ れ て
い な い .最 近,種
々 の 悪 性 腫 瘍 に お い て,特 定
の染 色 体 の 特 定 の 切 断 点 にお け る染 色 体 異 常 が,
腫 瘍 発 生 に 重 要 で あ る こ とが 知 られ て い る4)5).
本 研 究 で は, FAに
お け る特 異 的 悪 性 腫 瘍 の 発
生 の 機 序 を 明 らか に す る た め, FA
4症 例 の 体
細 胞 に つ い て, DNA鎖
間 架 橋 薬 剤 で あ るマ イ ト
マ イ シ ンC(MMC)に
対 す る 感 受 性 お よ び 自然
ICH:頭
235
蓋 内出血 AML:急
性 骨髄性 白血病
236 辻
奇 形(症
例1:皮
症 例3:腎
診 断 後4年1カ
2,
が 死 亡 し た.症
れ ぞ れ,診
断1年
後,
後 に 急 性 骨 髄 性 白 血 病(FAB分
れ ぞ れ,発
し た.
2症
末 梢 血 よ り フ ィ コー ル ・コ ン レ イ に て分 離 し た
月,
1)を
6カ
そ の 後, 10%胎
月
glutamine,抗
発
て37℃,炭
月後 に死亡
例 の 白 血 病 細 胞 の 染 色 体 分 析 で は,
1番 染 色 体 の 傍 着 糸 点 部 位 に 切 断 点 を 有 す る 転
座 が 認 め ら れ た.染
症 例4で,そ
(q 12),
色 体 核 型 は,症
れ ぞ れ,
+del(Y)
(q 12),
7) (p 11 or q 11-q 13;
(図1
a),
(q 11
or
or
46,
p 11;
2.
tri(3)
47,
p11
XY,
p 11
(q 25-q
X, -Y,
-7,
or
q 11),
(q 21)
t(1:14)
tri(3)
b)で
t(1;
del(3)
+der(14),
29)(図1
よび
+de1(Y)
der(7),
or q 11),
-14,
例2お
(q 21-q
25)
あ っ た.
は,死
亡 直 後 に 採 取 した 皮 膚 切 片 よ
mlのL-glutamine,抗
MEM培
下 に 培 養 し た.細
た 後,ト
な わ ち,採
児牛 血 清, 300μg/
生 物 質 を含 むEagleの
地 に て37℃,炭
酸 ガ ス5%,酸
素10%
胞 の コ ロニ ー が 充 分 形 成 され
リプ シ ン処 理 に よ り細 胞 を剥 離 し継 代
し た.症 例2,
3お よ び4で
1640培 地 に
素10%下
にサ イ クロ
添 加 せ ず に培 養 した.持
続的 な細
胞 増 殖 が 認 め られ る ま で,培 養 液 の半 量 を1週
間 に2回
交 換 し た.染 色 体 標 本 作 成 の た め の 細
胞 収 穫 を,皮
膚 線 維 芽 細 胞 で は 継 代 培 養 の48時
間後 に, EBウ
イ ル ス樹 立 リンパ 芽 球 様 細 胞 では,
培 地 交 換 の48時 間 後 に 行 な っ た 。 収 穫2時
間前
に コ ル セ ミ ド(皮膚 線 維 芽 細 胞: 0.1μg/ml培 地,
リン パ 芽 球 様 細 胞: 0.05μg/ml培 地)を 添 加 し,
分 裂 像 を収 集 し た.染 色 体 標 本 作 成 は,通 常 の
リプ シ ン・ ギ ムザ に よ る分
染 法6)を施 行 し染 色 体 異 常 を同 定 した.以 下 に示
り,皮 膚 線 維 芽 細 胞 を樹 立 し た.す
取 し た 皮 膚 を細 切 し, 15%胎
間 暴 露 し,
生 物 質 を含 むRPMI
酸 ガ ス5%,酸
ス ポ リンAを
な わ ち,
児 牛 血 清, 300μg/mlのL-
方 法 に て 行 な い,ト
組 織 培 養 お よ び染 色 体 分 析
症 例1で
イ ル ス 浮 遊 液 に1時
例
2年1カ
類M
病4カ
.単核 球 をEBウ
例1は,
月 で 頭 蓋 内 出 血 で 死 亡 し,症
4は,そ
症 し,そ
よ り リンパ 芽 球 様 細 胞 を樹 立 し た,す
認 め ら れ た.
指 の 低 形 成)が
4症 例 の 経 過 観 察 中3例
城
指 の 低 形 成,
膚 の 色 素 沈 着,母
奇 形,母
一
は, EBウ
イル スに
す 実 験 は す べ て 細 胞 株 樹 立 後6週
間 以 内 に行 な
っ た.
3.
マ イ ト マ イ シ ンC
FA患
(MMC)処
理
者 の 体 細 胞 のDNA鎖
るMMCに
間架橋 薬剤 であ
た.継
対 す る 感 受 性 を 以 下 の ご と く検 討 し
代 後48時
間 の 培 養 で,皮
膚 線維芽細 胞お
よ び リ ン パ 芽 球 様 細 胞 を,そ れ ぞ れ,
ml培 地,
0-50ng/ml培
0-20ng/
地 のMMCで
処 理 し,
コ ル セ ミ ド添 加 に よ り 染 色 体 を 収 穫 し た.そ
ぞ れ の 培 養 に お い て,少
て,染
色 体 の 切 断[染
断(chromosomal
造 異 常[欠
some),二
some)な
な く と も40核 板 に つ い
色体 あ るいは染色分 体切
or
chromatid
失(deletion),相
translocation),環
break)],構
互 転 座(reciprocal
状 染 色 体(ring
chromo
動 原 体 性 染 色 体(dicentric
ど]を
定 し た.本
実 験 で は 切 断 数 を1細
し た.染
色 体 断 片(fragment),欠
の 他 の 再 編 成[転
二 動 原 体 性 染 色 体(dicentric
chromosome)]で
断数 を算
胞 あ た りの染
break/cell)で
で は2,そ
定 し た.染
chromo
顕 微 鏡 下 に 観 察 し,切
色 分 体 切 断 数(chromatid
状 染 色 体(ring
れ
表 現
失(deletion)
座(translocation),
chromosome),環
は4と
して 算
色 分 体 お よ び 染 色体 ギ ャ ッ プ は 算 定
し な か っ た.染 色 体 切 断 の 定 義 は, ISCN(1985)7)
図1 症 例2
(a)お
よび症 例4
胞 の 染 色体 部分 核 型
(b)の
白血病 細
に よ っ た.ま
exchange
た,染
色 体 の 放 射 状 配 列(radial
configuration)は
別 に 評 価 し た.健
フ ァ ン コ ニ ー 貧 血 の 特 異 的 染 色 体 切 断 点 常 者 か ら得 た 皮 膚 線 維 芽 細 胞3例,リ
様 細 胞3例
4.
ンパ芽球
を正 常 対 照 と した.
うか, Chagantiら
237
の 方 法8)を 用 い て 評 価 し た.
す な わ ち, 21番 染 色 体 長 腕 の2分
自然 発 生 す る染 色 体 切 断 点 の 分 布 お よ び 染
色体構 造異 常
の1の
長さを
1単 位 と し, 22本 の 常 染 色 体 お よ び2本
の性染
色 体 を1ゲ ノム あ た り長 さ の 等 し い194の 単 位 に
それ ぞ れ の 症 例 に つ い て,自
然 発 生 す る染 色
分 体 切 断 お よ び 放 射 状 配 列 を含 む 染 色 体 の 構 造
分 割 した,切
断 点の分布 が それ ぞれの単位 に平
等 に起 こ る と仮 定 し,そ の 期 待 値 と実 測 値 と の
異 常 を,少 な く と も400個 の 核 板 に つ い て 分 析 し
間 のX2値
た.染 色 分 体 切 断 に おけ る切 断 点 を, ISCN(1985)
均 値 の検 定 に は, Studentのt検
か ら有 意 差 を求 め た.な お,頻 度 の 平
定 を用 い た.
の 模 式 図 に プ ロ ッ トし,特 定 の 分 布 が 存 在 す る
か ど うか 統 計 学 的 に 検 討 し た.染
につ い て は,別
5.
に 評 価 し た.
1.
MMCに
MMCに
統 計学的 評価
特 定 の バ ン ド領 域 で,自
切 断 の 頻 度 が,偶
結
色体 の再 編成
然 発 生 す る染 色 分 体
然 の 確 率 よ り高率 で あ る か ど
果
対 す る反応
対 す る染 色分体 切断 お よび染 色体放
射状配列 の発 生頻度 の変化 を図2に 示 す.自 然
発 生 す る染 色 分 体 切 断 の 頻 度 は, FA症
図2 FA症 例 の 体 細胞 のMMCに
対 す る感 受性
左 図:皮 膚 線維 芽 細 胞,右 図:リ ンパ芽 球様 細 胞
●:症 例1 ▲:症 例2 ★:症 例3 ■:症 例4 □:正 常対 照
例
238 辻
(0.52±0.04
chromatid
常 対 照(0.11±0.01
に 対 し4-5倍
MMCの
よび3は
上, 10ng/ml以
分 裂 が 認 め ら れ なか つ た.一
方,症
城
2.
FA症
FA
例 に 自然 発 生 し た染 色 体 異 常
4症 例 に お い て,合
計2,935の
常 の 種 類 お よ び 頻 度 を 表2に
度
核 板 の う ち1,099(37.4%)で,
上 で は,
例2お
よび
常 対 照 と同 様 の 反 応 を示 しMMC無
感
示 す.合
1個
体 切 断 あ る い は 異 常 が 認 め ら れ た.す
染 色 分 体
切 断(chromatid
1,278(0.44/cell),放
configuration)が16,染
頻 度 に お い て も 同様 の 結 果 が認 め られ た, MMC
break)が4,染
高 感 愛 性 は 多発 奇 形 を示 す2症
染 色 体 の 構 造 異 常 の 大 多 数 は,欠
例 に認 め られた
性 骨 髄 性 白 血 病(AML)を
例 は,い
ず れ もMMC無
発 症 した2症
感 受 性 を示 し た.
ctb:
chromatid
rec:
radial
break•@
csb:
chromosome
del:
deletion•@
rcp:
reciprocal
exchange
configuration•@
break•@
dic:
dicentric
rin:
ring
ins:
insertional
inv:
inversion
以 上 の染 色
な わ ち,
exchange
色 体 切 断(chromosome
色 体 構 造 異 常 が54,認
translocation),二
性 染 色 体(dicentric
chremosome)で
chromosome
chromosome
translocation
translocation
表3 フ ァン コニー 貧 血 に 自然 発生 した染 色体 の構造 異常
め ら れ た.
失(deletion),
相 互 転 座(reciprocal
表2 フ ァ ン コニー 貧 血症 例 に 自然 発 生 した染色 体 切 断お よび染 色体 構 造 異常
*
計2,935の
break)が,
射 状 配 列(radial
受 性 と考 え ら れ た.染 色 体 の放 射 状 配 列 の 発 生
が,急
染 色体 核 板
で 自然 発 生 した 染 色体 切 断 お よび 染 色 体 構 造 異
濃 度 変 化 に 対 し,
高 感 受 性 を示 し, MMC濃
が そ れ ぞ れ5ng/ml以
4は,正
は正
break/cell)
高 率 で あ っ た(t値=22.38,
df=8p<0.001).
症 例1お
break/cell)で
chromatid
一
動原体
あ り,少
フ ァ ン コ ニ ー 貧 血 の 特 異 的 染 色 体 切 断 点 239
図3 FA症 例 に 認め られ た代 表的 染 色分 体切 断(矢 印 は切 断 点 を示 す)
数 に 環 状 染 色 体(ring
(insertion)あ
られ た.FA症
chromosome),挿
入
る い は 逆 位(inversion)が
認め
例 で 認 め られ た,二 動 原 体 性 染
色 体 を除 い た 染 色体 構 造 異 常 を 表3に
れ らの構 造 異 常 は,
11番,
1番,
3番,
6番,
示 す .こ
7番,
12番 お よ び16番 染 色 体 に 集 中 す る傾 向 が
認 め ら れ た.と
に転 座,欠
くに,1番
染 色体傍 着糸 点部位
失 の 切 断 点 が 高 頻 度 に発 生 した ,代
表的 な染 色分体切 断 お よび染色体 再編 成 の部分
核 型 をそ れ ぞ れ 図3,図4に
3.
FA
示 す.
自然発生 す る染 色体 切 断点 の分布
4症 例 そ れ ぞ れ に つ い て,自
然 発 生 した
染 色 体 切 断 点 の 分 布 を 図5に 示 す.い
ずれの症
図4 FA症
例 に 自 然 発 生 した1番
染色 体 動 原体付
近 に 切 断 点 を 有 す る 染 色 体 転 座, a,
症 例1 b:症
例2 e:症
c,
d:
例3
例 で も切 断 点 は,不 均 等 な 分 布 を示 し, G分 染
法 で淡 染 す るバ ン ドあ る い は 動 原 体 付 近 に 集 中
た め にChagantiら
し,し か も,
行 っ た結 果,
8番,
11番,お
1番,
2番,
3番,
5番,
7番,
よ び12番 染 色 体 上 に 集 中 す る傾
向 が 認 め られ た.切
断 点 の 非 偶 然 性 を特 定 す る
の 用 い た 方 法8)でX2検 定 を
4症 例 の う ち2例 以 上 で有 意 に高
率 な 切 断 点 の 集 中 を 認 め た染 色 体 上 の 位 置 が16
箇 所 認 め られ た(表4).こ
れ らの 切 断 点 の う ち,
240 辻
一
城
A
B
C
D
図5 FA症
例 に 自然発 生 した染 色体 切 断点 の分 布, A:症
例1 B:症
例2 C:症
例3 D:症
例4
(縦軸 は 染 色分 体 切 断数)
と くに, 1P11 or q11,
11q13で は4症
た.ま
た,こ
1q21,
3q21, 7P11 or q11,
例 す べ て で,高 い 有 意 差 が 得 られ
れ ら16箇 所 の 染 色 体 切 断 点 を血 液
学 的 悪 性 疾 患 で従 来 報 告 さ れ て い る染 色 体 再 編
成 の 切 断 点9)と 比 較 した と こ ろ,そ の 大 多 数 が,
多 くは 非 リンパ 性 白血 病 に特 異 的 に 認 め られ る
染 色 体 の 再 編 成 の切 断 点 に 一 致 して お り, FAに
お け る染 色 体 切 断 点 の 特 異 性 が 特 定 の 悪 性 腫 瘍
の 発 生 と関 連 す る も の と考 え られ た.
FAの
診 断 は 汎 血 球 減 少 症,低
身 長,先
天奇
非 リン パ 性 白血 病 に み ら れ る染 色 体 切 断 点 と一
形 の3大 徴 候 が 存 在 す れ ば 容 易 で あ るが,奇
致 し て い た.さ
あ るい は汎 血 球 減 少 が 認 め られ な い 症 例 で は 染
らに,
意 差 を 示 した5つ
4症 例 の す べ て で 高 い 有
の 切 断 点 は,す
べ て急性骨 髄
形
色 体 の 脆 弱 性 を証 明 す る こ とが 診 断 に 必 要 で あ
る1)2).本 研 究 で示 し た よ う に.奇 形 の 認 め られ
性 白血 病 と関 連 し て い た.
な い 症 例 も奇 形 の 認 め られ る症 例 と同 様 に,正
考
本 研 究 は, FAの
察
体 細 胞 で 自然 発 生 す る染 色
常 対 照 に 比 し て4-5倍
高 率 に 染 色体 切 断 が 認
め られ た こ と は,染 色 体 検 査 がFAの
診断に不
体 切 断 の 頻 度 は正 常 対 照 に 比 して 顕 著 に 高 率 で
可 欠 の 検 査 技 術 で あ る こ と を示 唆 して い る,ま
あ り,し か も 自然 発 生 す る染 色 体 切 断 点 は 非 偶
た, FAの
然 的 に分 布 し,少 数 の特 定 の バ ン ドに集 中す る
架 橋 薬 剤 に 対 し高 感 受 性 で あ り,染 色 体 異 常 が
こ と を示 し た.ま
顕 著 に 誘 発 され る10)11).しか し なが ら, MMCに
た,こ
れ らの 特 定 の バ ン ドの
体 細 胞 は, MMCな
どのDNA鎖
間
フ ァ ン コ ニ ー 貧 血 の 特 異 的 染 色 体 切 断 点 表4 FA症
# p<0.05
S:
skin
AML:
##
p<0.01
fibroblast•@
acute
ALL:
acute
CML:
chronic
CMML:
###
L:
myeloid
lymphoblastic
cells
transformed
by
(FAB
classication
M
leukemia•@
myelocytic
chronic
例 にお い て高 率 に 自然 発 生 す る切 断点
p<0.001
lymphoid
leukemia
MDS:
leukemia•@
myelomonocytic
241
EBV
1 through
myelodysplastic
MPD:
M
7)
syndrome
myeloprolifertive
disorder
leukemia
表5 フ ァ ンコニ ー 貧血 に合 併 した前 白血病 あ る いは 白血病 の染 色体 異常
AML:
EL:
acute
AMMOL:
pre:
myelocytic
erythroblastic
acute
preleukemia
leukemia•@
ANLL:
leukemia•@
myelomonocytic
leukemia•@
acute
non-lymphocytic
MDS:
myelodysplastic
Megl:
megaloblastic
syodrome
leukemia
leukemia
242 辻
一
城
対 す る感 受 性 の み を 診 断 の 根 拠 とす る こ とは 危
EBウ
険 で あ り,偽 陽 性 あ るい は偽 陰 性 の 誤 診 を招 き
皮 膚 線 維 芽 細 胞 を用 い た の に 対 し,彼 らは, PHA
か ね な い12).最 近 で は, diepoxybutaneに
で刺 激 した 末 梢 血 リ ンパ 球 の 染 色 体 分 析 を行 な
る感 受 性 がFAに
対す
特 異 的 と さ れ て お り,臨 床 診
イ ル ス で樹 立 した リ ンパ 芽 球 様 細 胞 お よび
っ て お り,分 析 し た 細 胞 系 に 相 違 が 認 め られ る.
断や 出 生 前 診 断 に応 用 され て い る12)13).本研 究 で
EBウ
検 討 した4症
例 の う ち 多発 奇 形 を呈 し た2症 例
Bリ
は, MMC高
感 受 性 で あ っ た が,奇
る末 梢 血 リンパ 球 はTリ
AMLを
発 症 し た他 の2症
形 を認め ず
例 で はMMCに
無 感 受 性 で あ っ た.こ の こ と は, MMCに
ン パ 球 で あ る とい わ れ
対す
組 織 差 に よ る可 能 性 も考 え ら れ る.
が 報 告 し た よ う に14),多 発 奇
去 に 多数 の 報 告 例 が あ る15)にも関 わ
らず, FAの
増殖す
て お り, 2つ の研 究 に お け る切 断 点 の 相 違 は,
形 の 合 併 と関 連 す る こ とを示 す もの と思 われ る.
FAは,過
い し6週 を経 た細 胞 は
対 し
る 感 受 性 は 必 ず し も好 発 癌 性 と関 係 す る もの で
は な く, Sasakiら
イ ル ス で樹 立 後4な
ンパ 球 で あ る17)のに 対 し, PHAで
体 細 胞 に 自然 発 生 す る染 色 体 切 断
しか しな が ら, 4箇 所 の 切 断 点 が 本 研 究 お よ
びvon
Koskullら
の 研 究 と もに 共 通 し,ま た,
本 研 究 で示 され た16箇 所 の 切 断 点 の うち, EBウ
イ ル ス に よ り樹 立 した リン パ 芽 球 様 細 胞 の み で
認 め ら れ た 有 意 な 切 断 点 は, 9q13, 11q23, 12q13
点 の分 布 に 関 し て は, von Koskullら(1973)
の3箇
の 報 告16)が存 在 す る の み で あ る.彼 ら も本 研 究 と
の 体 細 胞 で 染 色 体 切 断 が 好 発 す る部 位 は 組 織 特
同 様 に, FA症
異 的 な も の で は な く,む
例 に 自然 発 生 す る染 色 体 切 断 点
が 明 らか に 非 偶 然 的 に分 布 し,し か もGバ
ン ド
所 の み で あ っ た.こ
の 事 実 は, FA症
例
し ろ遺 伝 的 に規 定 され
た もの で あ る こ と を示 唆 す る.本 研 究 で 示 され
法 で 淡 染 す る 部 位 に 集 中 す る こ と を報 告 し た.
た16箇 所 の 切 断 点 の 大 多数 が 葉 酸 依 存 性 脆 弱 部
し か し な が ら,彼
位, aphidicolin感
ら は,本 研 究 の 結 果 とは 異 な
受 性 脆 弱 部 位, distamycin感
り,傍 動 原 体 部 位 に は切 断 点 が 有 意 に 低 率 で,
受 性 脆 弱 部 位 あ る い はbromodeoxy-uridine感
逆 にA群
受 性 脆 弱 部 位18)に一 致 す るこ とは この仮 説 を支 持
染 色 体 長 腕 の遠 位 末 端 部 に 切 断 点 が 有
意 に 集 積 して い た と して い る.彼
らは,切
断点
の 出 現 頻 度 が と くに 高 率 で あ っ た染 色 体 部 位 と
し て,
1p3,
2p2,
1p1+2,
1q1,
1q3+4,
3q2,
6q2,
2q3,
13q2+3,
6p1+2,
指 摘 し て い る.本 研 究 に お い て は,
す る もの で あ ろ う.
FAの
体 細胞 には特 異的染 色体切 断点 が認め
られ るば か りで は な く これ らの 切 断 点 を含 む 染
12q2を
4症 例 の う
ち2症 例 以 上 で 有 意 に切 断 点 が 集 中 し た染 色 体
色 体 再 編 成 が 多数 存 在 し た こ と は,同 様 に染 色
体 切 断症 候 群 で あ る毛 細 血 管 拡 張 性 失 調 症
(AT)お
よびBloom症
部 位 が 合 計16箇 所 認 め られ た が,こ れ ら の う ち,
れ る. ATで
1p11
示 す が,
or q11, 1q32,
3q21,
12q24の4箇
所 は彼
本 研 究 とvon Koskullら
に,本
下 の2点
の 研 究 結 果 との 相 違
に 由 来 す る と考 え られ る.第 一
研 究 で は, FA
候 群(BS)と
対比さ
の 体 細 胞 は 放 射 線 感 愛性 を
7番 あ る い は14番 染 色 体 の 特 定 の部 位
に 染 色 体 切 断 が 高 率 に 自然 発 生 し19),時に これ ら
ら の 結 果 と一 致 した.
は,以
は,そ
4症 例 そ れ ぞ れ に つ い て
の 切 断 点 に染 色 体 の 再 編 成 を 有 す る細 胞 の ク ロ
ー ナ ル な増 殖 が 認 め ら れ る20). ATはFAと
異 な り,多
くはT細
は
胞 系 由 来 の リン パ 性 白血 病
切 断 点 の位 置 特 異 性 を充 分 な切 断 点 数 よ り検 討
あ る い は 悪 性 リン パ 腫 を好 発 す る3).ATに
し,
的 な染 色 体 切 断 点 に は, T細 胞 リセ プ ター や 免
2症 例 以 上 で集 積 が 有 意 と考 え ら れ る切 断
点 を 求 め た の に 対 し,彼
ら の研 究 で は, FA
5
特異
疫 グ ロ ブ リ ンの 遺 伝 子 が 局 在 す る こ とが 知 られ
症 例 に 認 め ら れ た423個 の 切 断 点 を総 合 して 有 意
て い る21)22).一 方, BSに
差 を検 討 して い る に 過 ぎ ず,あ
切 断 点 に は傍 動 原 体 部 位 を 除 い て特 異 性 が 報 告
は い わ ゆ るcancelling
る染 色 体 部 位 で
effectが 生 じ有 意 差 が 消
失 して い る可 能 性 が 否 定 で き な い.第
二 に,本
研 究 で は 汎 血 球 減 少 症 が 既 に認 め ら れ るFA症
例 に お い て 分 析 に 充 分 な分 裂 像 を得 る ため に,
され て お らず,同
は 自然 発 生 す る染 色体
一 の 染 色 体 同 士 に み られ る放
射 状 配 列 が 高 頻 度 にみ られ るこ とが 特 徴 であ る23).
本 研 究 で示 し たFAに
の 多 くは,非
特 異 的 な染 色 体 切 断 点
リン パ 性 白血 病 に 認 め ら れ る染 色
フ ァ ン コニ ー 貧 血 の 特 異 的染 色 体 切 断 点 243
体 異 常 の 切 断 点 と一 致 した.と くに, 1p11 or q11,
与 す る との 報 告 も み られ る37)38).FAに
1q21,
発 生 す る染 色 体 切 断 の 近 傍 に は, N-ras,
3q21,
11q13の4切
断点 はす べ て 急性 骨
髄 性 白血 病 の 切 断 点 と合 致 し て い た.さ
ら に,
特 異的 に
Skiあ
る い はErbBな
どの発癌 遺伝 子が存 在 してお
表5に 示 す よ うに,前.白 血 病 あ る い は 非 リン パ
り39),今 後, FAの
白血 病 の 細 胞 で こ れ らの 発 癌
性 白血 病 を合 併 し たFA報
遺 伝 子 の 再 編 成 あ る い は 活 性 化 の 有 無 を分 子 遺
告 例24)-32)の多 くで,
腫 瘍 細 胞 に 認 め られ た 染 色 体 異 常 の 切 断 点 は 本
伝 学 的 に 検 討 す る こ とが, FAに
研 究 で 示 したFAに
性 の 機 構 究 明 に 必 要 で あ ろ う.
特 異 的 に 発 生 す る切 断 点 と
同 一 で あ っ た.こ
れ ら の 事 実 はFAに
み られ る
結
特 定 の 悪 性 腫 瘍 の 発 生 に は 自然 発 生 す る染 色 体
切 断 点 の 特 異 性 が 重 要 な 役 割 を果 た して い る こ
FA症
と を強 く示 唆 す る.
近 年,白
例 の 染 色体 に 自然 発 生 す る 切 断 点 は 非
来報 告 さ
れ て い る骨 髄 性 白血 病 に お け る染 色 体 再 編 成 の
くの 悪 性 腫 瘍 に は特 定 の 染 色体
異常 が 認 め ら れ,こ
論
偶 然 的 に 分 布 し,そ れ らの 多 くは,従
血 病 を 中 心 と し た 悪 性 腫 瘍 の 染 色体
研 究 が 進 み,多
お け る好 発 癌
切 断 点 と一 致 し た.さ
れ らの切 断点 には発 癌遺伝
で は,こ
ら に, FA症
例 の体細 胞
れ ら の 切 断 点 で染 色 体 再 編 成 が 高 率 に
子 が 存 在 す る こ とが 明 ら か に され た4)5).ま た,
い くつ か の 悪 性 腫 瘍 で は,染 色 体 再 編 成 に 基 づ
認 め られ, FAに
くキ メ ラ遺 伝 子 の 発 現,癌
し て い る と考 え られ た.
み られ る特 定 の 悪 性 腫 瘍 の 発
生 に は 自然 発 生 す る切 断 点 の 特 異 性 が 深 く関 与
抑制 遺伝 子の 欠失 あ
る いは 発 癌 遺 伝 子 の 活 性 化 な ど が 発 癌 機 構 と し
て 分 子 レベ ル で解 明 さ れ た33)-36).さ ら に,骨 髄
稿 を終 え るに あた り,御 指 導,御 校 閲 の労 を賜 っ
異 形 成 症 候 群 を含 む 前 白血 病 か らの 非 リン パ 性
た清 野佳 紀教 授,本 研 究 を直接 御指 導 い た だい た楢
白血病 の 進 展 に は, N-ras遺
原 幸二 講 師 に深 謝 い た し ます.
伝 子 の活性 化 が関
参
考 文
献
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Leroux
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JR
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Rotzak
Frocrain
R,
Kaplinsky
une
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Nowell
in
67,
P,
chromosomally
A,
Leconiat
preleukemic
J,
compliquant
29)
Bernheim
and
M,
Fanconi's
C
and
aplasie
Desmaret
de
N,
Fanconi's
Fanconi
Chaki
Vecchione
anemia
MC:
(FA).
R,
anemia
Blei
D
patients.
Anomalies
Nouv
F,
Rev
Berkowitz
transforming
and
Hum
Schanson
Genet
du
chromosome
Fr
Hematol
M,
Gondman
into
erythroleukemia
and
Emanuel
G:
Chromosomal
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B and
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an
studies
of
59-62.
dans
3
cas
22,
XC ‡V.
Frankl O:
adult.
de
leucemie
Giant
Acta
maker
Haematol
214-216.
Bergman
abnormal
G,
Besa
E,
Wilmoth
D
clone
in
a kindred
with
the
B:
Estren-Dameshek
Progressive
variant
preleukemia
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Fanconi's
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246 辻
Importance
一
of nonrandomly
breakpoints
occurring
in tumorigenesis
Kazushiro
Department
Okayama
城
(Director:
of Fanconi
chromosome
anemia
TSUJI
of Pediatrics,
Univrsity
Okayama
spontaneous
Medical School,
700, Japan
Prof.
Y. Seino)
Individuals with Fanconi anemia (FA) are susceptible to acute non-lymphocytic
leukemia
(ANLL) or hepatocellular carcinoma. To clarify why FA is associated with a specific type of
neoplasia, we performed cytogenetic studies on somatic cells established from 4 FA patients,
two of whom developed acute myelocytic leukemia (AML). A hypersensitive response to
mitomycin C (MMC)was obtained in two patients but non-sensitivity in two patients with
AML. Analysis of spontaneous break-points
patients
showed that the frequency of breakage in the FA
was 4 to 5 times higher than in normal controls. Significantly
more breakpoints
gathered on lp11 or q11, 1q21, 1q32, 2p11 or q11,, 3p14, 3q21, 5q15, 7p11 or q11, 8q22, 9q11-12,
9q13, 11q13, 11q23, 12q13, 12q24 and 17q21 bands. Furthermore, many chromosome rearrange
ments involving these breakpoints
were observed. Most of the breakpoints
coincided with those seen in the rearrangements
suggest that the nonrandomness
tumorigenesis
of FA.
specific to FA
of ANLL reported so far. These findings
of spontaneous breakpoints
plays an important
role in the
Fly UP