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参考 3 超低周波磁界と小児白血病の関連に関する主な疫学研究の結果 海外の研究 1979 年にウェルトハイマー (Wertheimer)他が超低周波磁界と小児白血病の関連性を指摘し て以降、多くの疫学研究が行われています。下表に、WHO 環境クライテリア No.2381)に記載さ れた「IARC(2002)モノグラフにおいて検討された重要な研究」のうち、症例対照研究の結果 を抜粋して示します。研究の進展と共に、ばく露評価がワイアコード法、磁界計算法、測定法と工 夫され、研究が陶太されてきました。最終的には、ここに挙げた研究の一部を含むアールボムの プール分析[▶Ⅱ(6)]において、一定の結論に達しています。 ばく露区分※ オッズ比 (95%信頼区間) 研究者(年) LCC HCC 算出不可能 Wertheimer & Leeper (1979) VHCC ≧ 0.268 μ T (24 時間寝室測定) 2.2(1.1−4.3) 1.5(0.66−3.3) London 等(1991) スウェーデン 39 症例− 558 対照 ≧ 0.2 μ T (磁界計算値) 2.7(1.0−6.3) Feychting & Ahlbom (1993) デンマーク 833 症例− 1666 対照 ≧ 0.25 μ T (磁界計算値) 1.5(0.3−6.7) Olsen, Nielsen & Schulgen(1993) ノルウェー 148 症例− 579 対照 ≧ 0.14 μ T (磁界計算値) 0.3(0.0−2.1) Tynes & Haldorsen (1997) ≧ 0.2 μ T (24 時間寝室測定) 2.3(0.8−6.7) Michaelis 等 (1999) 調査国・地域、対象者 米国:デンバー 155 死亡症例− 155 対照 米国:ロサンゼルス郡 211 症例− 205 対照 164 症例− 144 対照 ドイツ:ニーダーザクセン・ベルリン 176 症例− 414 対照 カナダ:5 州 351 症例− 362 対照 293 症例− 339 対照 VHCC 1.2(0.58−2.3) ≧ 0.27 μ T 0.68(0.37−1.3) (48時間個人ばく露測定) McBride(1999) 英国:ウェールズ・スコットランド 1073 症例− 1073 対照 ≧ 0.4 μ T (1.5~48 時間測定) 1.7(0.4−7.1) UKCCSI(1999) 西ドイツ 514 症例− 1301 対照 ≧ 0.4 μ T (24 時間寝室測定) 5.8(0.78−43) Schuz(2001) VHCC ≧ 0.2 μ T (24 時間寝室測定他) 0.88(0.48−1.6) 1.2(0.86−1.8) Linet(1997) 米国:中西部・中部大西洋沿岸 408 症例− 408 対照 638 症例− 620 対照 ※ 個別研究は、ばく露カテゴリーごとのオッズ比を報告していますが、ここでは高ばく露カテゴリーの結果のみを抜粋して います。詳しくは各論文をご確認ください。 ※ ワイアコードの区分(LCC:低い、HCC:高い、VHCC:非常に高い) 日本の研究 日本の疫学研究には、1999 年~2001 年に科学技術振興調整費(文部科学省)により実施され た「生活環境中電磁界の小児の健康リスク評価に関する研究」があります。 こ の 研 究 は 国 立 環 境 研 究 所 の 兜 氏 を 中 心 に 行 わ れ、2006 年 に が ん の 専 門 誌 で あ る 「International Journal of Cancer」に掲載されました 2)。研究の概要は以下のとおりです。 症例および対照の同定は、北関東、南関東、関西・中部、中国・四国、九州の 5 つのブロック内 で行われました。調査地区は 18 都府県で構成されており、0~15 歳の小児総数約 2000 万人のう 82 参考 3/超低周波磁界と小児白血病の関連に関する主な疫学研究の結果 Ⅰ ち、1070 万人(53.5%)が含まれました。 症例は、調査地区内に居住し、1999~2001 年に「急性リンパ性白血病(ALL)」または「急性 Ⅱ 骨髄性白血病(AML)」と診断された 312 名、対照は、症例と性別、年齢、居住地域をマッチング Ⅲ した。ある症例の 1 週間連続測定記録例を下図に示します。この図から、「一日のなかでの時間変 Ⅵ 化」や「平日と週末」で磁界強度に違いがあることが示されています。 以上のオッズ比は、ALL+AML 群で 2.56(95%信頼区間:0.76-8.58)、ALL 群で 4.7(1.15- 19.0)となりました。全体的結果を下表に示します。 ばく露カテゴリー <0.1 μ T 0.1~0.2 μ T 0.2~0.4 μ T > 0.4 μ T 全白血病 (ALL+AML) 1 0.91 (0.5−1.63) 1.12 (0.53−2.36) 2.56 (0.76−8.58) 急性リンパ性白血病 (ALL) 1 0.87 (0.45−1.69) 1.03 (0.43−2.5) 4.67 (1.15−19.0) ※寝室の磁界レベル:小児寝室において 1 週間連続測定した磁界強度の時間加重平均値。 島氏他による電磁界への職業ば く露と成人の白血病に関する疫学研究があります。結果として、両者に関連性は認められなかった と報告されています。 [参考資料] 1) 「WHO 環境保健クライテリア No.238 超低周波電磁界」“Environmental Health Criteria Monograph No.238, Extremely lowfrequency”WHO(世界保健機関)(2007) http://www.who.int/peh-emf/publications/elf_ehc/en/index.html http://www.env.go.jp/chemi/electric/material/ehc238_j.pdf(環境省:和文) 2)Kabuto et al.“Childhood leukemia and magnetic fields in Japan: A case-control study of childhood leukemia and residentialpower-frequencymagneticfieldsinJapan.”InternationalJournalofCancer,119(3),pp.643-650(2006) http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.21374/full 83 Ⅶ 健康影響に関する研究―超低周波磁界と小児白血病の関連に関する主な疫学研究の結果 結果として、寝室の磁界レベルが 0.1 マイクロテスラ未満を参照群として、0.4 マイクロテスラ その他の研究としては、小児白血病の研究ではありませんが、 Ⅴ れました。電気使用量の季節変動を考慮して、症例と対照のセットについて測定を同時期に行いま Ⅳ させた 603 名です。また、磁界ばく露レベルには、小児の寝室での 1 週間連続測定結果が用いら