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変化パターンからみる近現代漢語の品詞用法

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変化パターンからみる近現代漢語の品詞用法
「東 京 大 学 言 語 学 論 集 」30(2010.9)115-168
変 化パ ター ンか らみ る近現代 漢語 の品詞用 法
永澤
キ ー ワ ー ド:漢
済
語 、 品 詞 、 変 化 、 近 代 、 現 代 、 日本 語
要旨
日本 語 にお け る漢 語 の 中 には 、近 代 か ら現 代 に か け て 、品 詞 用 法 に 変 化 が み られ る
語 が多 くあ る(例:「
帝 王 の暴 虐 が 、頭腦 に深刻せ られ 」)。現 象 自体 は これ ま で に も
指 摘 され て き たが 、個 別 の 事 例 を指 摘す る に と どま り、変 化 の 実 態 が 十 分 に 明 らか に
な っ て い る と は い え な い。多数 の語 が 、短 期 間 に 文 法 的機 能 を変 化 させ た こ とは 、個 々
の語 を超 え 、大 局 的 に捉 え るべ き現 象 だ とい え る。 本稿 で は 、そ の た め の 基 礎 デ ー タ
と して 、漢 語700語
につ い て 、近 代 に、 名詞 ・形 容 詞 ・副 詞 ・動 詞 の4種 の うちい ず
れ の用 法 を と り得 た の か を コー パ ス調 査 し、現 代 と比 較 した 。 そ して 、近 代 か ら現 代
に 至 る 変化 の 実態 を 、 「
理 論 上」 可能 な変 化 パ タ ー ン225通 り と、 「実際 」 に現 れ る変
化 パ タ ー ン との 対比 に よ り示 した 。
は じめに
1.
日本 語 で 、 近 代 と現 代 の 漢 語 を 比 べ た と き 、 顕 著 な 相 違 点 と して 、 品 詞 の 問 題 が 挙 げ ら
れ る 。 近 代 日本 語 の 漢 語 の 中 に は 、 次 の(1)一(14)よ
うに 、現 代 に は み られ な い 品 詞 用
法 を もつ 語 が 多 い。
(D時
に 悪 霊 余 に 告 て 曰 く、「汝 祈 祷 の 謹
を以 て 不 治 の 病 者 を救 ひ し例 を 知 ら ざ る か 、
汝 の 祈 祷 の 聴 か れ ざ り しは 汝 の蟄 心 足 ら ざ り しが 故 な り」 と 、
〔
内 村 鑑 三 『基 督 信 徒 の 慰 』/1893年
(2)殊
に其設備 の盤
〕
と、精 錬 規 模 の雄 太 と、採 鑛 額 の亘 丞 とに 有 て 恐 ら く東 洋 無 比 た
る 小 坂 鑛 山 が あ る。
〔
浅 田 江 村 「秋 田 大 観 」(『太 陽 』)/1909年
(3)然
〕
る に 之 に 封 す る 政 府 當 局 の 意 見 な り と云 ふ を聞 く に 、將 來 郵 便 貯 金 を 公 債 に投 入
せ ず 、全 部 日本 銀 行 に依 托 して 、運 鱒 せ しめ ば 曹 に 民 間 の 資 本 を 奪 は ざ る の み な ら
ず 、 却 て 豊 宜 の 資 金 を財 界 に 寄 與 す る効 あ りと稻 す 。
〔
小松 崎筑嶺
一ll5一
「
経 済 時 評 」(『太 陽 』)/1901年
〕
永澤
済
(4)斯
うい ふ 様 な 課 で 國 運 の 隆 盛 な ら ざ る所 に は偉 太 の 人 物 が 出 る 事 が 甚 だ 困 難 で あ
りま す 、
〔井 上 哲 次 郎 「
戦 争 後 の 学 術 」(『太 陽 』)/1895年
(5)殊
〕
に 私 は 長 い 間 美 術 家 の 溜 つ て 居 る と こ ろ に も住 つ て 居 た の で 、有 名 な あ ば れ 者 と
言 は れ るそ れ 等 美 術 家 の 、杢 宜 な性 質 と、 外 に現 は れ た 墨 動 を知 る こ とが 出 來 た 。
〔
黒 田清 輝(談)「
(6)只
さへ 魎
仏 国 に 於 け る 寄 宿 舎 生 活 」(『太 陽 』)/1909年
な 男 は 益 不 愛 想 に なつ て 、 始 終 怒 つ てs'も ゐ る か の や うで あ る 。
〔小 栗 風 葉 「一 腹 一 生 」(『太 陽 』)/1901年
(7)愈
〕
〕
伊 太 利 が ア ル バ ニ ア を 占領 し、之 に鐵 道 を 敷 設 す る に 於 て は 、巴爾 幹 諸 邦 の 産 物
は アルバ ニ アに 向ひ 、藪 に伊太利 巴爾 幹貿 易の幽
大 襲 達 を 見 る こ と、 昭 々
瞭 々 、 一 鮎 の 疑 惑 を 挾 む を 得 無 い の で あ る。
〔
米 田実 「
伊太利のアルバニア政策(希 職 の近状 に及 ぶ)」(『太陽』)/1917年 〕
(8)斯
くて は 何 時 解 決 を 見 る べ き や 知 る 可 か ら ざ るが 故 に 、日本 政 府 は 此 威 に瞳幽
決 意 を な し、 小 村 外 相 は命 を 伊 集 院 駐 清 公 使 に 傳 ふ る 虚 あ り しが 、
〔*「 彙 報 」(『太 陽 』)/1909年
(9)所
が 、法 學 の 観 念 の 無 い 人 の 中 に は 、動 もす る と 自分 の 財 産 を眺
〕
虚分 す るの だ
か ら、そ れ は め い ∼ ∼ の 勝 手 の 談 で 、損 を 仕 様 が徳 を仕 様 が か ま つ て 貰 ふ に 及 ば ぬ 、
な ど と云 ふ 者 が あ る か ら 、 こ 》で 慮 分 椹 の 観 念 を一 言 した い と思 ふ 。
〔岡 田 三 面 子 「法 律 時 評 」(『太 陽 』)/1901年
(10)氏
〕
最 も 雪 舟 雪 村 を愛 す 嘗 て 曰 く彼 れ 形 躰 を外 に し榮 辱 の 念 な く越 」
意 之 を絹 素 の上
に 置 くの み 是 を 以 て 神 至 り筆 從 が ふ 構 思 苦 慮 して 後 ち成 る も の 、比 に あ ら ざ る な
りと
〔
岡倉 天心 「
橋 本 雅 邦 」(『太 陽 』)/1895年
(11)事
の 實 際 に 於 て 此 種 の 監 督 者 が垣 窒1三 越 意 匹 、 能 く其 職 責 を 果 しつsあ
〕
るや は予
輩 の 頗 る疑 迷 とす る所 な り
〔
佐 野 善 作 ・祖 山鍾 三 「商 業 世 界 」(『太 陽 』)/1901年
(12)若
し もそ の 目的 を 知 らず して 唯議 論 に の み 畝 心 し、恰 も議 論 を 目的 と して 議 論 す る
{こ と}あ
らば 、 そ の 議 論 は唯 喧 嘩 の 種 た るべ き の み 。
〔
福 澤 諭 吉 『通 俗 国 権 論
(13)そ
〕
二 編 』/1879年
〕
れ で 高 柳 は 今 とな っ て 自分 が 生 活 に 困 難 』て い る も の だ か ら 、後 悔 して 、さぞ 先
生 も 追 い 出 され た 為 め に 難 義 を した ろ う、 逢 っ た ら謝 罪 す る っ て 云 っ て ま した よ
〔
夏 目漱 石 『野 分 』/1907年
(14)殊
に專 制 國 の 帝 王 の 暴 虐 が 、頭 眠 に鯉
〕
られ て 居 る の で 、極 端 な 共 和 主 義 者 で あ
る。
〔
西 湖 漁 郎 「支 那 政 界 の 中 心 人 物(下)」(『 太 陽 』)/1917年
一ll6一
〕
変 化 パ ター ンか らみ る 近 現 代 漢 語 の 品 詞 用法
(1)一(4)の
一(14)の
名 詞 用 法 、(4)一(8)の
形 容 詞 用 法 、(9)一(11)の
動 詞 用 法 は 、 い ず れ も現 代 に は 失 わ れ て い る(各
副 詞 用 法 、(12)
品 詞 の 定 義 は 後 述1)。
この よ うに 、 近 代 か ら現 代 に か け て 漢 語 の 品 詞 用 法 に 変 化 が み られ る こ と 自体 は 、 これ
ま で に も度 々 指 摘 され て き た。
池 上 禎 造(1953,1954)は
、 「今 日の 用 法 と異 な る も の 」 と して 、 「残 念 し」 「
確 定 な る」
「適 当 しな い 」 「複 雑 して 」 等 が 近 代 に 見 られ た こ とを 指 摘 す る 。 鈴 木 丹 士 郎(1998)は
、
「
今 日 と異 な る 品 詞 性 」 と して 、近 代(明 治 期)に 、 「
思 想 し」 「
損 害す る」「
附 近 す る」 「
習
慣 して 」 「貴 重 す 」 「特 有 す る 」 「悲 痛 し」 等 の 例 が あ る こ と を示 し、 「明 治 期 に は 今 日 よ り
も 漢 語 が 多 品 詞 に わ た っ て 用 い られ る こ とが 多 い よ うに 思 わ れ る 」とす る。鈴 木 英 夫(2005:
182-183)は
、明治期 に は語法 の面 で 「
今 日 と異 な る 用 法 」 が あ る と し、 例 と して 「
熱 心す
る 」 「写 真 す る」 「自信 す る」 「
矛 盾 な(人
間)」 「消 極 な(哲
学)」 を 挙 げ る。 こ う した 指 摘
は 、 各 種 文 献 か ら得 た 実 例 に基 づ く もの で 、 重 要 な 事 実 を 示 す 。
しか し、 い ず れ も 目 立 っ た 変 化 が 例 示 され る に と ど ま り、 近 代 か ら現 代 に か け て 多 く の
漢 語 に 並 行 して 起 こ っ た 品 詞 用 法 の 変 化 の 実 態 が 十 分 に 明 らか に な っ て い る と は 言 え な い。
本 稿 で は 、 多 数 の 語 が 短 期 間 に 品 詞 用 法 を 変 化 させ た こ と は 、 個 々 の 語 を超 え 、 大 局 的 に
捉 え るべ き 現 象 だ と考 え る。 そ の た め の 基 礎 的 デ ー タ と して 、 以 下 、 漢 語 の 品 詞 用 法 の 変
化 の 実 態 を 、 「理 論 上 可 能 な 変 化 パ ター ン 」 と、 「実 際 に 現 れ る変 化 パ ター ン」 との 対 比 に
よ り整 理 した 結 果 を提 示 す る。
2.
変 化 パ ター ン
ま ず 、 「変 化 パ ター ン」 と は 何 か 、 とい うこ とか ら述 べ る。 た とえ ば 「
熱 心 」は、近代 に
次 の よ うに 、 名 詞 、 形 容 詞 、 副 詞 、 動 詞 と して の 用 法 を もつ 。
(15)「
a.時
熱心 」
に 悪 霊 余 に 告 て 曰 く、「汝 祈 祷 の蟄 心 を 以 て 不 治 の 病 者 を 救 ひ し例 を 知 ら ざ る か 、
汝 の 祈 祷 の 聴 か れ ざ り しは 汝 の蟄 心 足 ら ざ り しが 故 な り」 と、
〔内 村 鑑 三 『基 督 信 徒 の 慰 』/1893年
b.如
何 して/\
〕
我 輩 程 塾 心 な 同 権 論者 は恐 ら く は 有 る ま い と思 ふ 。
〔二葉 亭 四 逮 『浮 雲 』/1887-1889年
且
〕
本稿 では
、文 中で の 機 能 に基 づ き、 品 詞 を 判 定す る。 た と えば 、 「
塾 心 な 人 」 の 「熱 心 な 」
と、 「
継
勉 強 す る」 の 「熱 心 に 」 は 、 一般 に、 「熱心 だ」 とい う形 容 動 詞 の活 用 形 の 一 と
され る こ とが 多 い が 、 本稿 で は 、 それ ぞ れ を異 な る品 詞(「 熱 心 な 」 は 形 容 詞 、 「熱 心 に 」 は
副 詞)と み なす こ と とす る。
一117一
永澤
済
c.余
輩 は 勿 論 世 間 の 學 者 も西 洋 の 事 情 を 明 に し て我 國 に 盆 す る{こ
蟄 心 勉 強 す る{こ
と}な
と}あ
らん と て
らん
〔福 澤 諭 吉 『通 俗 国 権 論 』/1878年
d.私
〕
は 翌 日早 速 錦 町 の 某 私 立 法 律 学 校 へ 入 学 の 手続 を済 ま せ て 、 其 処 の 生 徒 に な っ
て 、 珍 ら しい 中 は 熱 心 に 勉 強 も した が 、 そ の 中 に 段 々 怠 り勝 に な っ た 。
〔二 葉 亭 四 迷 『平 凡 』/1907年
e.若
し も そ の 目的 を知 らず して 唯 議 論 に の み継
る{こ
〕
、恰 も議 論 を 目的 と して 議 論 す
と}あ らば 、 そ の 議 論 は 唯 喧 嘩 の 種 た る べ き の み 。
〔福 澤 諭 吉 『通 俗 国 権 論
(15a)は 名 詞 、(15b)は
形 容 詞 、(15c)(15d)は
二 編 』/1879年
副 詞 、(15e)は
〕[=(12)]
動 詞 と して機 能 して い
る。 こ の うち 、 現 代 に 残 るの は 形 容 詞 と副 詞 の 用 法 の み で 、 名 詞 と 動 詞 の 用 法 は 失 わ れ て
い る2。 つ ま り、 「熱 心 」 は 、 近 代 の名 詞 ・形 容 詞 ・副 詞 ・動 詞 の4用
法 の うち 、 名 詞 と 動
詞 の 用 法 を失 うと い う変 化 パ タ ー ン を示 す 語 で あ る。
次 の 「乾 燥 」 は 、 「
熱 心 」 と は 異 な る変 化 パ ター ン を 示 す 。
(16)「
乾燥 」
a.火
室 と姻 突 を相 接 績 す る 界 の 虚 に 、 水 を 盛 りた る器 を 載 せ 、 これ よ り水 蒸 氣 を 獲
散 せ しめ て 、 室 内 空 氣 の魍 墓を 防 ぐ檬 に して あ る事 等 が 特 徴 で あ りま す 、
〔
石 原 笠 軒 「媛 室 法 の 種 類 」 『太 陽 』/1901年
b.極
め て幽
〕
暖 地 に も能 く 生 育 す 。 特 に ア ラ ビ ヤ に て も生 育 甚 だ 佳 良 に し て 、
埃 及 及 ア ル ゼ リー に も能 く産 す 。 故 に 大 変 は 熱 樽 よ り寒 帯 に 亘 りて 其 栽 培 匿 域 を
有 す る も の な り。
〔上 野 英 三 郎 「
農 業 世 界 」 『太 陽 』/1901年
c.渠
〕
は 美 な る花 と特 色 な る 葉 を 見 て 容 易 に 其 機 那 樹 た る を判 断 し、 直 に 之 を伐 イトし
て 樹 皮 の 剥 離 に 着 手 す 、 皮 は皆 暫 時 日光 に晒 露 し、 四 方 形 に 蔵 りた る を 幾 枚 と な
く 重 ね て 、至艶
に 至 る迄 、 重 歴 を加 へ 置 くな り、
〔市 村 塘 「
機 那 樹 の 培 養 」 『太 陽 』/1895年
(16a)は 名 詞 、(16b)は
形 容 詞 、(16c)は
〕
動 詞 と して機 能 して い る。 こ の うち 、 現 代 に
残 る の は 、 名 詞 と動 詞 の 用 法 の み で 、形 容 詞 の 用 法 は 失 わ れ て い る。 つ ま り、 「乾 燥 」 は 、
近 代 に も っ て い た 名 詞 ・形 容 詞 ・動 詞 の3用
2た
c)の
法 の うち 、 形 容 詞 の 用 法 を失 う とい う変 化 パ
だ し副 詞 用 法 に つ い て は
よ うな
「一 φ」 形(本
、 現 代 に 残 る の は(15)d)の
よ う な 「一に 」 形 の み で 、(15)
稿 で 、 「一φ 」 は 、 ゼ ロ接 辞 ・ゼ ロ 形 態 素 を 表 す)の 副 詞 用 法 は
消 失 して い る。
一ll8一
変 化 バ ター ンか ら み る 近現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
ター ン を 示 す 語 で あ る。
さ らに 別 の 変 化 パ タ ー ン を 示 す 語 を挙 げ よ う。
(17)「
利 益」
a.勿
論 民 間 で も随 分 無 謀 な こ と を しな か つ た とは 云 へ ぬ け れ ど も 、 民 間 の 事 業 は 劃
益 が な くな れ ば 、勢 ひ 一 時 中 止 若 くは 全 く止 め な け れ ば な らぬ と云 ふ 傾 き が あ る 。
〔園 田孝 吉 「
政 府 の 新 事 業 整 理 問 題 」(『太 陽 』)/1901年
b.速
〕
記 録 を 見 る と随 分 切 り込 ん で 居 るや うだ が 、 新 聞 紙 に は 政 府 の到 益 な 製iを詳 は
し く書 い て 本 煎 の利 益 な鮎 を省 き、 そ こで 一蹴 さ る と あ るの だ 。
〔
鬼谷庵
c.預
「
政 界 鬼 語1(『 太 陽 』)/1925年
〕
金 を爲 す に 於 て は 、 一 時 の 風 聲 に 驚 か され て 、 漫 りに 取 付 を 爲 す こ とな く、 資
金 の 増 殖 を 計 り、 以 て 自 己並 に 一 般 社 會 を礎
こ と を努 め ざ る べ か らず 。
〔小 松 崎 吉 雄 「金 融 界 の 動 乱 に 就 て 」(『太 陽 』)/1901年
(17a)は 名 詞 、(17b)は
形 容 詞 、(17c)は
〕
動 詞 と して 機 能 して い る。 こ の うち 、 現 代 に
残 る の は 、名 詞 用 法 の み で 、 形 容 詞 と動 詞 の 用 法 は 失 わ れ て い る。 つ ま り、 「利 益 」 は 、 近
代 に も っ て い た名 詞 ・形 容 詞 ・動 詞 の3用
法 の うち 、 形 容 詞 と動 詞 の 用 法 を 失 う とい う変
化 パ タ ー ン を示 す 語 で あ る。
(18)「
自信 」
a.「
だ か ら此 の 際 旅 行 は 至 極 好 い で せ うよ。 さ う云 ふ 訳 な ら一 つ 勧 め て 見 ま せ う。
然 し うん と云 つ て す ぐ承 知 す る か ね 。 中 々 動 か な い 人 だ か ら 、 こ と に よ る と 六 つ
か しい ね 」Hさ
ん の 言 葉 に は旦 債 が な か っ た。
〔
夏 目漱 石 『行 人 』/1912-1913年
b.昨
〕
夕 東 京 を 立 っ て か ら、 ま だ 人 間 に 口 を利 い た 事 が な い。 人 か ら言 葉 を掛 け られ
よ うな ど と は 夢 に も予 期 して い な か っ た。 言 葉 を掛 け られ る 資 格 な ど は ま る で 無
い も の と旦 信 ⊥二
切 っ て い た。
優 目漱 石 『抗 夫』/1908年
(18a)は 名 詞 、(18b)は
〕
動 詞 と して 機 能 して い る。 この うち 、現 代 に 残 る の は 、名 詞 用
法 の み で 、動 詞 の 用 法 は 失 わ れ て い る。 っ ま り、 「自信 」は 、近 代 に も っ て い た 名 詞 と動 詞
の2用
法 の うち 、 動 詞 の 用 法 を失 うと い う変 化 パ ター ン を示 す 語 で あ る。
以 上4語
に つ い て 、 変 化 パ タ ー ン を 次 の よ うに 記 述 す る こ とが で き る(名
詞 をadj、 副 詞 をadv、 動 詞 をvと お き 、 変 化 の 方 向 を記 号〉で 表 す)。
一ll9一
詞 をn、 形 容
永澤
済
(19)近
代
〉
現 代
「熱 心 」=n,adj,adv,v>adj,adv
「乾 燥 」:n,adj,V>n,v
「利 益 」:n,adj
,V>n
「自 信 」:n,v>n
「熱 心 」 の よ うに 、4つ の 品 詞 用 法 の うち2つ
よ うに 、3つ の 品 詞 用 法 の うち1っ
の 品 詞 用 法 の う ち1つ
ま た は2っ
を 失 う変 化 も あ れ ば 、 「乾 燥 」 「
利 益 」の
を失 う場 合 も あ り、 「自信 」 の よ うに 、2つ
を失 う場 合 もあ る。 この よ うに 、 近 代 か ら現 代 に か け て の 漢 語 の 品
詞 用 法 の 変 化 に は 、種 々 の 変 化 パ タ ー ンが 存 在 す る3。
こ こ で 、 理 論 上 の 計 算 を して み る と、 名 詞 ・形 容 詞 ・副 詞 ・動 詞 の い ず れ か1つ
品 詞 を 含 む(た
だ し 、 同 じ 品 詞 が 重 複 しな い)組
(4Cr+4C2+4C3+4C4)あ
以 上の
み 合 わ せ は 、 下 記 の 通 り、15通
り
り得 る。
(20)
品 詞1つ
の 組 み 合 わ せ(4CImoo):回,【adj],[adv】,[v】
品 詞2つ
の 組 み 合 わ せ(4C2通
品 詞3つ
の 組 み 合 わ せ(4C3taD):[n,adj,adv】,[n,adj,v】,【n,adv,v】,[adj,adv,v】
品 詞4つ
の 組 み 合 わ せ(4C4勘):{n,adj,adv,v】
り):【n,adj],ln,adv】,【n,v],[adj,adv】,【adj
近 代 に お い て も 現 代 に お い て も、 こ の15通
近 代 か ら現 代 へ の4品
な る(変 化 しな い15通
,v】,【adv,v】
りの 組 み 合 わせ が そ れ ぞれ 成 立 し得 るの で 、
詞 の 変 化 パ ター ン は 、15の2乗
、す な わ ち225通
りあ り得 る こ と に
りを含 む)4。
この こ と を 、次 頁 表1の
よ うな225マ
ス の 表 に 表 して み よ う。縦 軸 に 、近 代 の15通
組 み 合 わ せ を 取 り、同 じ く横 軸 に 、現 代 の15通
りの
りの 組 み 合 わせ を取 る。縦 軸 の 各 マ ス を横
に た ど る と、 近 代 か ら現 代 に 至 る4品 詞 の 変 化 の 、理 論 上 の 全 パ ター ンが 得 られ る(上 述
「
熱 心 」 「乾 燥 」 「
利 益 」 「自信 」 の4語
を 、表 中 の 、そ れ ぞれ の 変 化 パ ター ン を表 す マ ス に
記 入 して あ る)。 表 中 、 対 角 線 上 に並 ぶ 網 掛 け部 分 は 、 変 化 しな い15通
本 稿 で は 、700の
理 論 上 の225通
りを 表 す 。
漢 語 に つ い て 、 この 表 の どの マ ス に あ て は ま る語 で あ る の か を 示 し、
りの うち 、実 際 に は い か な る変 化 パ ター ン が み られ る の か を 明 らか にす る。
3各
品 詞 用 法 の 範 囲 内 で起 きた 変 化 もあ るが
、今 回 はそ の よ うな 変 化 に は 注 目 しな い。 た と
え ば 動 詞 の場 合 、 自他 両 用 動 詞 が 、 自動 詞 あ る い は他 動 詞 と して の用 法 を失 う とい う変 化 が
み られ る が 、そ の よ うな 、「動詞 」 とい う品 詞 内部 で起 きた 変 化 に つ い て は本 稿 で は捨 象 す る
(漢 語 動詞 の 自他 体 系 の 変 化 に つ いて 、 詳 し くは永 澤 済2007を 参 照 され た い)。
4た
だし
、 「225通 り」 とは 、近 代 を 点 と考 え、 現代 を点 と考 え 、 そ の 間 の変 化 は]回 以 下だ
と仮 定 した場 合 の数 。
一120一
変 化 バ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
表1
近現 代期 品詞用 法の理論 上 の変化パ ター ン
一121一
永澤
済
3.調
査方法
3.1調
査語の選定
選定方法
変 化 パ ター ン の 分 布 を調 査 す る前 に 、 調 査 対 象 とす る 漢 語 の 選 定 を 行 っ た 。 選 定 に あ た
り、 国 立 国 語 研 究 所(2004)『
分類 語彙表
増 補 改 訂 版 』(以 下 、『分 類 語 彙 表 』 とす る)を
用 い た5。 本 薔 は 、語 彙 調 査 に 基 づ き 、現 代 の 日常 社 会 で 用 い られ る 日本 語 の 語 及 び 表 現 を
集 め 、 そ の 使 用 され る分 野 ご と(「 生 産 物 お よび 用 具 」 「自然 物 お よび 自然 現 象 」 等)に
分
類 した もの で あ る。
第 一 段 階 と して 、 『分 類 語 彙 表 』 の 索 引 で 一 覧 され る97,022語(複
て い る 語 も 各1語
数 の 分 野 に 掲 載 され
と数 え て い るた め 重 複 を含 む)か ら、全 て の 漢 語 を 抽 出 した6。全 数32,722
語(重 複 を含 ま な い)で
あ る。 こ こ か ら、 一 字 及 び 三 字 以 上 の 漢 語 を除 き 、 二 字 漢 語 の み
を 抽 出 した 。 全 数23,512語
で あ る。
第 二 段 階 と して 、 抽 出 した23,512語
の 各 漢 語 に っ い て 、 国 立 国 語 研 究 所(編)『 太 陽 コ
ー パ ス』(月 刊 誌 『太 陽 』 の1895年
、1901年 、1909年 、1917年 、1925年 の 各 巻 を 電 子 テ
キ ス ト化 した もの)7内 の 出 現 数 を 調 べ た 。 出現 数 の カ ウ ン トは 、本 調 査 の た め に 渡 邊 績 央
氏 に よ っ て 作 成 され た 電 算 機 プ ロ グ ラ ム に よ る。 出 現 数 は 、新 字 に加 え 、 旧字 ・異 体 字 、
及 び 異 表 記(「 状 況/情
況 」、 「差 異/差
違 」 の よ うな 関 係 に あ る も の)で の 出現 数 を カ ウ ン
ト し、 合 計 した 数 で あ る。8
s野
村 雅 昭 ・山 下 喜 代(1993)
6『
分 類 語 彙 表 』 は
、 野 村(1999)が
、 『分 類 語 彙 表 』 に 基 づ く 「現 代 漢 語 デ ー タ
ベ ー ス 」 作 成 の 試 み 、 及 び 基 本 漢 語 の 抽 出 方 法 に っ い て 述 べ て お り 、 参 照 し た(同 デ ー タ ベ
ー ス は2010年6
.月現 在 未 公 開 か)。
、 「安 心 す る 」 の よ う に 、 漢 語 語 幹 に 和 語 形 態 素 が 結 合 し た
「派 生 形 」 を
多 く 採 録 す る 。 派 生 形 は 抽 出 対 象 か ら 除 い た 。 具 体 的 に は 、 次 の 形 の 語 を 除 く 。 「 一 じ 」(1
語)、
「一 し た 」(28語)、
語)、
「一す る 」(7038語)、
語)、
「一 と し て 」(7語)、
語)、
「一の 」(4語)、
7『
「一 し て 」(4語)、
「一 な 」(1語)、
こで の
「・す 」(6
「 一で 」(2語)、
「一に 」(36語)、f一
「一 と 」(4
に し て 」(1
「一 も 」(1語)。
に 博 文 館 よ り刊 行)は 広 範 な ジ ャ ン ル と 多 彩 な 執 筆 者 を 特 徴 と す る
『太 陽 コ ー パ ス』 の 総 文 字 数 は 約1450万
8こ
「一 じ る 」(50語)、
「一 た る 」(5語)、
「 一な る 」(2語)、
「一は 」(1語)、
太 陽 』(1895∼1928年
「一 じ て 」(3語)、
「一ず る 」(52語)、
字 、 記 事 数 は 約3400本
、 著 者 数 は 約1000人
。
。
「
新字 」とは
、 『分 類 語 彙 表 』 で の 表 記 の こ と とす る 。 一 般 に 、 「旧 字 」 及 び 「
異体
字 」の 範 囲(外 延)は 必 ず し も 一 定 で は な い 。本 研 究 で はhttp:〃www.hyuki.com!aozoTa/replace.cgi
で 公 開 さ れ て い る 字 体 変 換 プ ロ グ ラ ム 『校 閲 君 』(バ ー ジ ョ ン1.1.0)で
変 換 され る範 囲 で 、
1日字 体 ・異 体 字 で の 検 索 を 行 っ た 。
な お 、『太 陽 コ ー パ ス 』に も 、字 体 変 換 辞 書(『 太 陽 』に 用 い られ て い る 漢 字 の う ち 、JISXO208
1997に 異 体 字 が 存 在 す る も の 全 て に つ い て の 、 「
指 定 字 体(見 出 し と な る 字 体)」 「
等価字 体
(『太 陽 コ ー パ ス 』 内 で 指 定 字 体 と等 価 の 関 係 に あ る 異 体 字)」 「
参 考 字 体(同
一122一
、等 価 で な い
変化 パ ター ンか らみ る近現代漢語 の品詞用法
こ の デ ー タ を も と に 、出 現 数 が80例
れ る700語
の 中 か ら、現 代 に も 日常 的 に 使 わ
を 選 定 し、調 査 の 対 象 語 と した9。 た だ し選 定 に あ た り、 「出 現 数 」 か ら 、 「分 析
の 対 象 外 とす べ き 文 字 列(次
た 数 が40未
以 上 の 語3,536語
節3.2の
面
〈
そ の 他 〉 に 分 類 され る 文 字 列)の
合 計」 をひ い
満 の語 は除 いた。
二 字 漢語 に 絞 る理 由
こ こで 、 調 査 対 象 を 二 字 漢 語 に 絞 る理 由 を 述 べ て お き た い 。 第 一 に 、 日本 語 の 漢 語 の 中
で 、二 字 漢 語 は 、種 類 と使 用 頻 度 に お い て 中 心 的 な位 置 を 占 め る こ とに よ る 。そ の こ と は 、
『分 類 語 彙 表 』 に 採 録 され た 二 字 漢 語 の 合 計 数(23,512語)が
の 合 計 数(9,210語)を
、一 字及 び三 字以 上の漢 語
大 き く上 回 っ て い る こ とか ら も うか が わ れ る。
第 二 に 、 一 字 漢 語 は 、 二 宇 漢 語 と は ふ る ま い を 異 に す る 面 が あ り、 そ の こ とが 、 品 詞 の
問 題 を 考 察 す る に あ た り、 看 過 出 来 な い か らで あ る。 た と え ば 、 二 字 漢 語 を 語 幹 とす る 漢
語 動 詞 は 、 多 くの 場 合 、 次 の よ うな名 詞 化 が で き る。
(21)
魚を迦泌
違反者を処罰胚
勝敗を迭艇
→ 魚の迦愁
→ 違反者の処罰
→ 勝敗の迭定
異 体 字)」 の3種 の 情 報 が 収 め られ て い る)が 付 属 して い るが 、 本研 究 で は 、 技 術 的 な 理 由
に よ り、『校 閲 君 』 の 方 を用 い た 。 『校 閲 君 』 で 変 換 され る字 体 は 、 大部 分 が 、『太 陽 コー パ
ス』 付 属 の 字 体 変換 辞 書 に お け る 「
指 定 字 体/等 価 字 体」 に重 な る とみ られ る が 、 両者 の 間
に 、主 と して 次 の よ うな 差 違 が あ る。
◆ 『校 閲 君 』 で変 換 す る が 、『太 陽 コー パ ス』 の 字 体 変換 辞 書 で は 変換 され な い 字
(本研 究 で は 、 各字 体 を 互 い に等 価 とみ る。)
「尭/尭 」 「穣/穣 」 「余/除 」
◆ 『校 閲 君』 で 変換 され な い が 、『太 陽 コー パ ス』 の 字 体 変 換 辞 書 で は 変 換 す る字
(本 研 究 で は 、(A)に つ い て は 各字 体 を互 い に等 価 とみ るが 、(B)に つ い て は 各 字 体 を 互
い に 非 等 価 とみ な し、 そ れ ぞれ を異 な る文 字 と して 区別 す る。)
(A)「 荘/荘 」 「富/冨 」 「峰/峯 」 「
器/器 」 「
窓/窩 」 「氷/泳 」 「
回/回 」 「予/豫 」 「萢
/瓶 」 「
鉄/鋏/鐵/鐵
」 「鋳/鋳 」 「腸/膓 」 「場/場 」
(B)「 杯/盃 」 「
島/嶋 」 「
駆/駈 」 「
翻/翻 」 「帰/坂 」 「著/着 」 「
園/薗 」 「野/埜 」 「模
/摸/模
」「
涙/泪 」 「淫/婬 」 「曖/暖 」 「
昧/昧 」 「
跡/蹟/迩
」
ま た 、 「異 表 記 」 とは 、 『分類 語 彙 表 』 の 索 引 に 、 「状 況 ・情 況 」 の よ うに 併 記 され て い る
場 合 の2番 目以 降 の 表 記(及 び そ の 旧字 体 ・異 体字 表 記 も含 む)を 指 す 。 加 えて 、 筆 者 の 判
断 で 「異 表 記 」 と して検 索 対 象 に含 め た 語(「 予 」 を 「
豫 」、 「
付 」 を 「附 」、 「究 」 を 「窮 」、
「瞭 」 を 「瞭 」 と表 記 す る 等)を 含 む。
9調
査 の 対 象 を、 「
『太 陽 コー パ ス』 に お け る出 現 数 が80例 以 上 の 語 」 の 中 か ら選 ん だ の は 、
調 べ た い品 詞 の用 法 が 、 当時 、実 際 には 存 在 しな が らも偶 然 に コー パ ス内 に現 れ な か っ た と
い う確 率 を 、 可能 な限 り下 げ る た めで あ る。 た だ し、 「80例」 とい う数 の 妥 当性 は な お 検 討
の 余地 が あ る と思 われ る。
一123一
永澤
済
一 方 、 同 様 の 意 味 を も つ 語 で あ っ て も 、 一 字 漢 語 を 語 幹 とす る 場 合 に は 、 同 様 の 名 詞 化
が で き な い。
(22)
魚 を継
→
魚 の*塾
違反者 を脳
勝敗 を雌
→
→
違反 者 の*罰
勝敗 の*迭
これ は 、 「
熱 す る」 「
罰 す る 」 「決 す る 」 が 、 それ ぞ れ 「
熱」「
罰」「
決 」 だ け を 切 り離 す こ
とが 難 しい 、 融 合 度 の 高 い 動 詞 で あ る こ との 表 れ とみ る こ と が で き る。
ま た 、 一 字 漢 語 を 語 幹 とす る 動 詞 に 「
感 ず る」 「
信 ず る」 「
動 ず る」 「
命 ず る 」 等 が あ る。
これ らは 、 「一す る」 で は な く、 そ の 音 韻 変 化 形 とみ られ る 「一ず る 」 と い う形 態 素 を 伴 っ
て い る。 ま た 、 「
感 じる 」 「信 じ る」 「
動 じる」 「
命 じる」 の よ うに 、 「一 じる」 を伴 う形 式 も
あ る。「す る 」は 、そ れ 単 独 で 動 詞 に な る が 、「一ず る」「一じる 」は 単独 で は 使 用 され な い。
こ の こ とは 、漢 語 語 幹 と 「一ず る 」 「一じ る」 との 融 合 度 の 高 さを 示 して い る とみ る こ とが
で き る。 この よ うな 現 象 は 、 二 字 漢 語 に は み られ な い 。
よって 、 「
熱 」 「罰 」 「決 」 「感 」 「
信 」 「動 」 「
命 」 とい っ た 一 字 漢 語 に つ い て 品 詞 用 法 の 広
が りを 調 べ る こ と と、二 字 漢 語 に つ い て そ れ を行 うこ と と は 、並 行 で は な い と考 え られ る。
第 三 に 、 三 字 以 上 の 漢 語 は 、 二 字 漢 語(及
び 一 字 の 接 辞)を
べ 一 ス に した 複 合 語 が 多 く
(た と え ば 、 「違 法 駐 車 」 「強 制 処 分 」 「不 完 全 燃 焼 」 「
圧倒 的」 「
共 通 性 」 等)、 そ れ らの 分
析 に 先 ん じて 、 そ の 要 素 とな る 、 よ り基 本 的 な 、 二 字 の 漢 語 に 絞 っ て 分 析 を 行 う こ とが 適
切 と考 え られ る か らで あ る。10
な お 、 以 上 の よ うな 一 宇 及 び 三 字 以 上 の漢 語 の 特 殊 性 を 考 慮 した う え で 、 そ の 品 詞 用 法
の 調 査 を行 うこ とは 有 効 で あ り、稿 を 改 め て 行 うべ き も の と考 え る。
3.2『
太 陽 コー パ ス』 に お ける用 例 調査
選 定 した700語
が 、 近 代 に 、 名 詞 ・形 容 詞 ・副 詞 ・動 詞 の4品
詞 の うち 、 どの 用 法 を も
っ て い た か を 判 定 す る た め 、『太 陽 コー パ ス』 に現 れ た 全 用 例 を 次 の い ず れ か に 分 類 し、分
類 ご との 用 例 数 を 数 え た11。
10た
だ
11用
例 の 検 索及 び 分 類 に あ た り
、三 宇 以 上 の漢 語 の 中 には 、 「
不 思 議 」(「不 可思 議 」 の略 と され る)の よ うに 、複 合
語 と捉 え に くい もの も含 ま れ るが 、 そ う した語 も分 析 対 象 か ら外 れ る こ とに な る。 「
換骨 奪
胎 」 の よ うに 、複 合 語 で は あ りなが ら要 素 間の 結 び つ き が強 い 語 につ い て も同 様 で あ る。
、国 立国 語 研 究所 作 成 の 全 文検 索 シ ス テ ム 『ひ ま わ り』 を利
用 した。『ひ ま わ り』に よ る検 索結 果 は 、KW1C形 式 で表 示 され 、検 索 語 の 前 後 の 文字 列 に よ
る ソー トが で き る た め 、品 詞 判 定 が効 率 的 に 行 え る。
一124一
変化 パ ター ンか らみ る 近 現 代 漢 語 の 品詞 用 法
(i)名
詞 一a
(ii)形
容 詞
(iii)扇[」
言
司
(iv)動
詞
(v)名
詞 一b(連
体 修飾
(vi)名
詞 一c(「
一 さ 」 形)
(vii)除
外
(viii、
その他
そ れ ぞ れ の 詳 しい 定 義(分
「一の 」 形:
類 基 準)は
以 下 の 通 りで あ る。 い ず れ も 、 調 査 対 象700語
に
つ い て 、 コー パ ス上 の 全 用 例 を 分 類 す るた め に 立 て た 、帰 納 的 な 定 義 で あ る。
(i)名
飼 。a
一般 的 な名詞 の定 義 に準ず る
。 「が 」 「を 」 「に 」 「と」 「の 」 等 の 格 助 詞 、 「は 」 「も」 「さ
え」 「の み 」等 の係 助 詞 ま た は 副 助 詞 が 後接 し、文 中 で 主 語 ・目的 語 ・補 語 等 と して 機 能 す
る場 合 を 、 〈名 詞 一a>と す る。 無 助 詞 で も 、 格 助 詞 を 伴 うの と同 様 に 機 能 す る場 合 も 、 こ
こ に 分 類 す る。 名 詞 化 接 辞 「一さ」 を伴 う もの は 、 後 述 〈
名 詞 一c>と し、 こ こ に は 含 め な
い。
〔〈名 詞 一a>の 例 〕
(23)そ
れ に 前 述 の や うな 原 因 に よ る小 作 人 の 思 想 動 揺 が 衝 突 して 固 題 が 起 るや うに な
った ので ある。
〔矢 野 恒 太 『時 潮 漫 語 』(『太 陽 』)/1925年
(24)今
〕
や 日清 雨 國 の 職 孚 は 將 に 其鎧 垣 を 告 げ ん と し、苑 に 第 四 回 内 國 勧 業 博 覧 會 を 開 設
して 全 國 の 物 産 を 一 堂 の 中 に 陳 列 し、農 工 商 の 當 業 者 は 勿 論 普 く國 民 を して 之 を 縦
覧 せ し め以 て 我 邦 の 富 源 は 如 何 な る も の な るか を 熟 知 せ しめ た り、
〔
金 子 堅 太 郎 『博 覧 会 の 沿 革 及 其 効 能 』(『太 陽 』)/1895年
(25)筍
〕
く も 自 己 の 主 張 に 關 し又 た 他 人 の 名 得 に 關 す る こ とを 記 す る に 當 りて は 先 づ 其
の 記 事 の 確 置 を 保 謹 す る に 足 る事 實 を暴 げ な け れ ば な ら ぬ 。
〔浮 田 和 民 『早 稲 田大 学 紛 擾 の 真 相 及 其 の 根 本 問 題 』(『太 陽 』)/1917年
(26)政
務 の罐
〕
に 伴 ふ て 自然 産 馬 業 に 封 す る 奨 働 の 紀 綱 を 弛 め 、夫 よ り漸 次 事 業 は 衰 頽
に 赴 き た る も 、政 府 は 敢 て 顧 慮 せ ざ る もの 》如 く 、民 業 に 放 任 した る 姿 なれ ば 斯 業
の 衰 微 は殆 ん ど名 状 す べ か ら ざ る 有 様 とな れ り、
〔*「 農 業 」(『太 陽 』)/1895年
一125一
〕
永澤
済
(ii)形
容 詞
「一な 」 「・な る 」 「一た る 」 「一 と し た 」 の 接 尾 辞 を 伴 っ て 名 詞 に 前 接 し 、 そ の 名 詞 を 修
飾 す る場 合 を 、 〈
形 容 詞 〉 とす る。
一般 に
、 形 容 詞 は 、 名 詞 に 前 接 す る 「限 定 形 容 詞(attributiveadjective)」(た
竺 花 」)と 、 述 語 の 位 置 に 立 っ
蝕
「叙 述 形 容 詞(predicativea(ljective)」(た
とえ ば 、 「
亘
と え ば 、 「こ の 花 は
」)の 二 種 が あ る と さ れ る 。 本 稿 で は 、 限 定 形 容 詞 の み を 〈形 容 詞 〉 と す る(叙
詞 は こ こに 含 め ず 、 後 述 の
述 形容
〈除 外 〉 と し て 扱 う)。
〔〈形 容 詞 〉 の 例 〕
(27)慶
一 とい ふ 存 在 は 、善 吉 に とつ て 我 子 で もな く、博 士 の 世 嗣 で も な く 、蛇 毒 研 究 の
童 重塗材 料 、生 きた實験 記録で あるにす ぎないの であつ た。
〔三 上 於 菟 吉 「(長篇 小 説)蛇
(28)こ
人 」(『太 陽 』)/1925年
〕
れ は 雨 極 端 の 例 で あ る が 、で は萱 通 な 人 は どれ 位 の 分 量 が 適 當 で あ るか と い へ ば 、
四 デ シ ネ ム か ら七 デ シネ ム の 間 で あ る。
〔三 浦 政 太 郎 「
最 近 栄 養 学 上 の 進 歩J(『 太 陽 』)/1925年
(29)此
の 如 く寒 帯 地 方 に 適 す る の み な らず 。 極 め て皇幽
〕
暖 地 に も能 く生 育 す 。
〔上 野 英 三 郎 「
農 業 世 界 』(『太 陽 』/1901年)
(30)要
す る に 翻 刻 規 則 の 改 正 と第 三 回 の 許 可 は 、精 思 熟 慮 の結 果 瞳遮
庭分 に 出て し
な り。
〔文 部 省
(3D進
化 とい ふ湛 継
「
国 定 教 科 書 の 翻 刻 発 行 に 就 き て 」(『太 陽 』)/1909年
〕
観 念 を 、初 め て 組 織 立 つ て 髄 表 した の は 、千 八 百 四 十 四 年 に
ロバ ー ト、 チ ェ ムバ ー ス が 匿 名 で 出 した 「
博 物 生 起 論 」 で あ る。
〔中 島 孤 島 「ダ ー ウ ィ ン と ウォ レー ス 」(『太 陽 』)/1909年
(iii)副
〕
詞
「一 と 」 「一に 」 「一 と し て 」 「一に し て 」 の い ず れ か の 接 辞 が 後 接 す る か 、 「一 φ」 形 を
と り、 動 詞 、 形 容 詞 、 ま た は 文 の 述 語 を 修 飾 す る 場 合 を
式 を と り、 文 全 体 を修 飾 す る場 合 も
〈副 詞 〉 と す る 。 ま た 、 同 様 の 形
〈
副 詞 〉 とす る。
原 則 と して 、 「一 と 」 「一に 」 「・ と し て 」 「一に し て 」 「一 φ 」 以 外 の 形 式 は 、 〈副 詞 〉 に
分 類 し な い 。 た と え ば 次 の 下 線 部 は 文 中 で 副 詞 的 に 機 能 す る が 、 「〈
名 詞 一a>+格
助 詞 」 と
み る 。 巳2
塵2本
稿 の定 義 で は
に」 形 の
(i)a.お)・
、 「一で 」 形 、 「。に て 」 形 は 〈
副 詞 〉 に は 含 ま れ な い が 、 次 の よ うに 、 「一
〈
副 詞 〉 と非 常 に類 似 の 機 能 を もつ 場 合 が あ る。
・!ど う か 、 あ な た 様 の お 力 で 、 あ の 人 が 無 塞ヱ 蹄 つ て 下 さ い ま す 機 に!
〔
加 能 作 次郎 「
漁 村 賦 」(『太 陽 』)/0917年
一126一
〕
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
(32)之
を解 決 せ ん こ と は 政 府 の勧
ヱ は 出 來 な い 、又 た 各 政 蕪 の 競 孚 に よつ て 出 來 る こ
とで な い 。
〔
浮 田 和 民 「挙 国 一 致 の 外 政 策 」(『太 陽 』)/1917年
(33)私
〕
は 君 を説 い て 見 た が 、君 は 何 か のEe憤Egiそ れ を 辞 し、代 り に 白河 鯉 洋 君 を推 薦 し
た。
〔
巌 谷小 波 「
桂 月 と 私 」(『太 陽 』)/1925年
(34)其
〕
の他 各大學 若 くは倶樂 部等 に於 て擬 國會 の 如 きを設 け時 事 問題 に就 き秩序 規律
整 然 た る討 論 會 を 催 し'ノー、よ り訓 練 を積 む も亦 可 な らむ 〔
ママコ
。
〔添 田寿 一 「憲 政 の 危 機 と対 策 」(『太 陽 』)/1925年
ま た 、 次 の よ うに 、助 詞 「は 」 が 後 接 す る場 合 、 お よび 、 連 体 修 飾 語 句(あ
〕
る い は 節)
が 前 接 す る場 合 も 、 〈
名 詞 一a>と し、 〈副 詞 〉 に は 分 類 しな い 。
b.敷 本 を 倒 し 、わ つ か に 胸 中 不 平 の 嘉 塊 に 樫 き 、辞 ひ し ま ぎ れ に は 、散 歩 と 出 か け て 、
ど こ を ど う歩 る き し に や 、 吾 な が ら 知 らず 、 十 時 す ぎ し こ ろ 先 は 無 塑 に=⊆か へ りつ
き ぬ。
c.雨
〔久 保 天 随 「
鎮 西 遊 記 」(『太 陽 』)/1901年
〕
さ へ 降 ら ね ば 、 少 し位 風 が 強 く 浪 が 高 く と も 、 大 抵 は 無 皇 に 帰 れ る だ ら う と 、 今
迄 の 経 験 に て ら して 、 不 安 の 中 に も 籍 か に 安 ん ず る と こ ろ が あ つ た が 、
〔
加 能 作 次郎
(li)a.何
「
漁 村 賦 」(『太 陽 』)/1917年
〕
故 圓 浦 に 政 友 會 大 臣 を 辞 職 さ して 、 憲 政 會 に 里 塗
や らせ て 見 な い の か ね 。
〔鬼 谷 庵 「
政 界 鬼 語 」(『太 陽 』)/1925年
b.何 れ の 國 と も 提 携 せ ず 里 陛
c.而
して 其 等 が幽
〕
⊆濁 立 濁 歩 の 外 交 を 行 ふ た の で あ る が 、
〔
林 毅 陸 「東 西 外 交 家 の 手 腕 比 較 」(『太 陽 』)〕/1925年
〕
に 事 業 を 爲す よ り も、互 に聯 絡 を 取 つ て 爲 す 方 が 利 益 で あ る事 は
言 ふ 迄 も な か ら う。
〔記 者(文
責)・ 早 川 千 吉 郎
「日英 の 経 済 的 関 係 改 善 論 」(『太 陽 』)/1917年
〕
こ の よ うな 類 似 性 か ら 、 「一で 」 「一に て 」 形 を 〈副 詞 〉 と す る こ と も 、選 択 肢 と し て あ る。
しか し、 こ の
「で 」 「に て 」 は 、 一 般 に 格 助 詞 と され(益
岡 隆 志 ・田 窪 行 則1992:97の
態 を 表 す デ 格 」 に 相 当)、 前 接 す る の は 名 詞 と され る 。 仮 に 、 「一で 」 「一に て 」 形 を
「
様
〈
副詞〉
と した 場 合 、 益 岡 ・田 窪1992:78-79に
示 さ れ る よ うな 多 様 な 「一で 」 形 、 あ る い は 「一に て 」
形 の う ち 、 一 部 を 「〈名 詞 一a>+格 助 詞 」、 一 部 を 〈
副 詞 〉 とす る こ と に な る。 つ ま り同 一 形
式 を と る も の の う ち 、 い ず れ か を 「〈
名 詞 一a>+格
助 詞 」、 い ず れ か を
〈副 詞 〉 と す る こ と に
な る が 、そ の客 観 的 な基 準 を定 め難 い 。
ま た 、 一 般 に 、 次 の よ うに
「一で 」 「一に て 」 形 を と れ て も 、 同 じ 文 脈 で
る こ と が で き な い 語 が 多 い 。 よ っ て 、 「一で 」 「一に て 」 形 に 前 接 す る 場 合 と
「一に 」 形 を と
「一に 」 形 に 前
接 す る 場 合 と で は 、 語 の 性 質 が 異 な る と考 え ら れ る。
a.今 日 の 學 生 諸 君 に 定 期 乗 車 券 を 持 た な い 者 は 殆 ど な い 位 で あ る が 、 昔 は 富 豪 の 息 子
で も徒 歩 ヱ 通 學 した も の で あ る 。
b.除
〔
土方久徴 「
私 の学 生時 代 二 八 会 を 中 心 と した懐 しい 思 出 」(『太 陽』)〕/1925年 〕
り遠 き は 往 い て 下 宿 し、 三 四 里 以 内 の も の は 、 徒 歩 虹
往 復 し て 講義 を 聞 く 。
〔
大 町 桂 月 「教 育 時 評 」(『太 陽 』)/1901年
c.昔 は 富 豪 の 息 子 で も*徒 歩 に 通 学 した も の で あ る 。
〕
以 上 の こ と か ら 、 本 研 究 で は 、 形 式 を 重 視 し た 分 類 基 準 を と る こ と と し、 「一 と 」 「一に 」
「一 と し て 」 「一に し て 」 「一 φ」 形 の み を 〈副 詞 〉 と す る 。
一127一
永澤
済
(35)故
に憲 法 政 治 が 果 して 有 り難 き もの で あ る か 否 は 別 問 題 と して 、人 民 に 於 て 之 を熱
望 す る場 合 に 在 て 強 て 之 を 拒 み 此 大 勢 に 抗 せ ん とす る と き は徒 に 國 内 の擾 齪 を來
た し遂 に鎧 昼 は 大 勢 に 從 ひ 之 を 實 施 す る の 外 な き に 立 ち到 る べ き は 明 白 の 事 な れ
ば、
〔木場貞長 「
政党内閣の特性及其得失長短を論す」(『太陽』)/1901年 〕
(36)尤
も偶 然 に 冶 金 法 に 適 して 利 益 を 占 め て 居 る人 もあ りま す か ら、鑛 山 事 業 は 危 瞼 を
胃 して や る 一 捜 萬 金 と云 ふ 様 な 事 業 と して 、此 業 に 從 事 す る もの を 危 瞼 者 乃 ち 山 師
な ど と構 して そ の魍
鑛 山事 業 を 輕 蔑 す る襟 に な つ た で あ りま せ うが 、
〔神 藤i才一 「
外 交 政 略 」(『太 陽 』)/1895年
(37)此
の 覚 悟 に 入 る 修 行 が 克 己 で 、その麩1は
〕
、
、自分 の 中 に 天 地 の 大 道 と同 一 物 で あ る
良 智 良 能 を 髄 見 して 、 道 菰 に あ りと いふ 自覧 に 入 る。
〔
姉 崎 嘲 風 「社 会 の 変遷 と信 仰 問 題 」(『太 陽 』)/1909年
(38)今
日壷i轡に 於 て は 眞 正 の 意 味 に 於 け る 貨 幣 な る もの な く、幽
〕
ま銀 塊 取 引 多 数 を 占
め居 れ り。
〔添 田寿 一 「台 湾 の 経 営 」(『太 陽 』)/1901年
(39)然
か も今 日英 國 は 、 口に こそ 尚 非 軍 國 主 義 を 高 唱 しつsも
、甚 の盤
〕
は益 々軍 國主
義 の 縦 跡 を うて 居 る で は な い か 。
〔
某 将軍 「
欧 州 戦 争 を 中 心 と して 」(『太 陽 』)/1917年
(40)殆
〕
ん ど押 しつ め られ た る有 襟 に て 河 を 登 る に廿 三 日間 を 要 せ り、豊 通 は 十 二 三 日位
な り と 云ふ 、
〔*「 世 界 紀 聞 」(『太 陽 』)/1901年
(4Dか
〕
つ て 私 凌ミ三 荘 銀 行 の 太 阪 支 店 鼠 と.して 太 阪 にあ つ た賞 壁1、
大阪 に は書盤 の愛好者
も 可成 あ つ た 。
〔高 橋 義 雄 「我 楽 多 雑 記 」(『太 陽 』)/1925年
〕
ま た 、 次 の よ うに 、 主 に副 詞 と して使 わ れ る 語 が 、連 体 修 飾 「一の 」 形 、 あ る い は 述 語
の 一 部 を成 す 場 合 が あ る。 本 稿 で は 、 これ を 一 種 の名 詞 用 法 とみ な し、 〈
名 詞 一a>に 分 類
し、 〈
副 詞 〉 とは しな い 。
(42)火
力 電 氣 が 水 力 電 氣 に 比 して 高慣 な る は盤
の こ とで あ る が 、
〔安 倍 磯 雄 「東 京 市 の 電 灯 事 業 」(『太 陽 』)/1909年
(43)艦
〕
内 で も大 宴 會 を 開 い て 、填 國 の 官 民 を 饗 磨 して 、卓 上 に 飾 つ た 小 國 旗 を 、來 賓 の
好 む 儘 に 持 ち 蹄 らせ た の で 、ホ テ ル で は 其 れ を 保 存 し、呈 速 の 氣 轄 で 、今 日余 等 の
漱 迎 に 利 用 した も の と知 れ た 。
〔
坪 谷 水 哉 「洋 行 中 の 年 末 年 始 」(『太 陽 』)/1909年
一128一
〕
変 化 パ ター ンか らみ る 近現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
(44)も
しこれ を歴 迫 す れ ば 、 産 業 の 秩 序 も 、 社 會 の 秩 序 も害 は れ る こ と は纒 盒で あ る 。
〔
長 谷 川 如 是 閑 「労 働 組 合 法 と圧 迫 的 法 律 」(『太 陽 』)/1925年
(45)や
〕
、 何 、 然 うは して 居 られ ん。 呈 速 だ が ね 、 私 が 許 の 此 の 貸 家 だ 、
〔泉 鏡 花 「
貸 家 一 覧 」(『太 陽 』)/1909年
〕
〔〈副 詞 〉 の 例 〕
(46)選
暴 策 、政 治 教 育 の 必 要 を 感 じた 彼 は 、協 調 會 理 事 の 職 さへ も 拠 つ て ゐ た 時 な の で 、
改 め て 再 び 激 職 に携 は る こ とを 欲 しな か つ た 。 一 度 は継
と刎 付 け た ら しい 。
〔
鉄 火 鞭 「官 場 の 新 人 を 評 す 」(『太 陽 』)/1925年
(47)是
〕
故 に 未 開 の 國 に於 て は 治 外 法 権 の 制 あ り、文 明 の 國 に 於 て は 其 國 法 の 保 護 あ りて 、
人 類 は 執 れ の 地 敦 れ の 所 に 行 く も 、」
自直 に 且 つ 安 全 に 其 生 活 を 螢 み 、安 寧 幸 福 を 享
受 す る こ と を 得 べ し。
〔
板 垣 退 助 「立 国 の 通 義 」(『太 陽 』)/1909年
(48)船
〕
は漉 塾 三掃 か れ 、漁 具 、船 具 、食 糧 、薪 水 等 を 完 載 し、艦 の 方 に は 竿 頭 高 く 日章
旗 さへ 翻 へ れ り。
〔
安 東 不 二 雄 ・松 川 実 「漁 舟 遠 航 記 」(『太 陽 』)/1895年
(49)然
か も其 進 歩 や 突 然 と」∠ ⊆來 る に あ らず して 、漸 を 以 て 來 る 、
〔
上 野英 三郎 「
農 業 世 界 」(『太 陽 』)/1901年
(50)人
〕
民 が 新 開 拓 地 に 移 住 す るや 、往 皿
〕
エ 急 速 の 進 歩 鰻 達 を遂 ぐ る に適 當 な る 事 情
に 遭 遇 す る こ と あ り、
〔
佐 藤 伝 蔵 「人 類 と 自然 」(『太 陽 』)/1901年
(51)科
學一
即 ち 理 化 學 の 振 興 に 須 た ず して 灘
〕
殖 産 興業 の 號達 を望む も畢寛 紙 上 の
遊 戯 に過 ぎ ざ る は 此 一 例 を 以 て す る も甚 だ 明 白で あ る。
〔青柳栄司 「
強国 と成 る可 き根本大策(工 業教 育の振興)」(『太陽』)1917年 〕
(52)苑
に 於 て か 現 在 の 非 常 な る 入 超 状 態 か ら輸 出 入 平 衡 の 彼 岸 に 景 氣 恢 復 の 光 明 を 求
め ん と欲 す る な ら ば 、猛 昼 第 二 の 方 法 即 ち輸 入 を減 少 して 以 て 入 超 の 減 退 を 圖 る の
外 は ない。
〔井 上 準 之 助
(53)誌
「挙 国 一 致 して 輸 入 の 減 少 を 図 れ 」(『太 陽 』)/1925年
語 の つ も りで 言 つ た こ とは 眞 實 に成 っ て 來 た 。 童 隆 、 菜 の 花 が 咲 い て 居 た。
〔島崎 藤 村
(54)け
〕
「
旅 」(『太 陽 』)/1909年
〕
れ ど も 木 の 葉 蝶 は 、 日本 の 内 地 に は棲 ま な い で 、主 と し て 南 方 の 琉 球 か 、若 く は
豪 溝 に 限 つ て 居 て 、 而 も彼 の 地 に於 て も、 決 して 豊 通 何 庭 に で も 居 る の で は な い 。
〔
名 和 靖 「木 の 葉 蝶 の 研 究 」(『太 陽 』)/1909年
(55)私
〕
も當 壁 、 留 學 生 と して 、 伯 林 に 滞 在 して 居 つ た の で 、 互 に 頻 繁 に 往 來 した 。
〔井 上 哲 次 郎 「浜 尾 子 を 追 懐 す 」(『太 陽 』)/1925年
一129一
〕
永澤
済
(56)從
塞 外 國 に 輸 出す る本 邦 製 茶 に 、 着 色 茶 及 無 色 茶 の 二 種 あ り、
〔*「 海 内 彙 報 」(『太 陽 』)/1895年
(iv)動
詞
補助 動詞
及び
〕
「一す 」 ま た は
「一す る 」 を 伴 っ て 使 わ れ る 場 合 を 、 〈
動 詞 〉 と す る 。 「一す 」
「一す る 」 の 活 用 形 、 「一せ/一
一 し/一
す る/一
す れ/一
せ よ/一
し/一
す/一
す る/一
し ろ」 を含 め る
す れ/一
せ よ 」 「一 さ/一
せ/
。 「一で き る 」 「一致 す 」 「
奉 る 」 「一仕
る 」 「一遊 ば す 」 「一 く だ さ る 」 「一な さ る 」 「一申 す 」 等 の 可 能 形 や 敬 語 形 を と る 場 合 は 含
めない。 また 、 「
皮 肉 る 」 の よ う に 、 「一す 」 ま た は
「・す る 」 以 外 を 伴 っ て 動 詞 が 形 成 さ
れ る 場 合 も含 め な い 。
〔〈動 詞 〉 の 例 〕
(57)毫
も之 れ に 眞 摯 な る 注 意 を 加 へ ざ る に 於 て は 究 極 如 何 な る結 果 に到 達 猛
であ ら
うか 。
〔
佐伯 矩 「
保 健 上 の 栄 養 問 題 」(『太 陽 』)/1917年
(58)グ
〕
リ ンデ ル ・マ シ ユ ー ス に 依 れ ば 、戦 孚 は 間 接 に の み 國 民 的 膨 脹 や 、侵 掠 や 、羨 望
の 精 神 か ら鎧 塁 竺 られ る の で 、 直 接 に は 人 口過 剰 と いふ 事 が原 因 で あ る 。
〔
記者 「戦争予防法 と して見た る産児制限」(『太陽』)/1925年 〕
(59)日
本 と露 、濁 、佛 三 國 との 間 に 於 て 、此 の 條 件 を 内 定 し、 同 時 に 三 國 は 永 久 遼 東 半
島 に 手 を 下 さ ゴる{こ
と}、 日本 は 壁 溝 を他 に 割 譲 せ ざ る{こ
り、 故 に清 國 と の 談 判 は 圓 滑 に齪
と}の 保 障 を爲 した
べ し
〔*「 時 事 」(『太 陽 』)/1895年
(60)以
〕
上 記 す る所 は 米 英 二 國 の 實 例 に 過 ぎ ず 其 他 の 代 議 政 國 も十 九 世 紀 の 中 半 以 來 概
ね 中 央 集 椹 の 主 義 に鯉
るの事實あ るを認む
〔
加藤政 之助 「立法行政 の調和(附 現制度 の改正)(承 前)」(『太陽』)/1901年 〕
(61)然
る に 今 日に 於 て は 、全 く之 に反 し、金 の あ る 學 校 は 設 備 も完 全 ⊥:、講 師 も精 選 し
て 智 識 の あ る 人 を聰 用 して あ る と云 ふ 有 様 な る を 以 て 、天 下 の 青 年 は 皆 之 に集 合 す
る と 云 ふ 工合 に な り、亦 徳 性 と云 ふ も を顧 み ざ る の み な らず 、之 を 眼 中 に 置 か ざ る
に 至 り、 教 育 も結 局 金 銭 の 目的 物 とな る こ とLな つ た 。
〔島 田 三 郎 「
社 会 の 腐 敗 救 治 意 見 」(『太 陽 』)/1901年
(v)名
詞 一b(連 体 修 飾 「。の 」 形)
近 代 に 多 用 され 、 現 代 に は 失 わ れ た連 体 修 飾 「一の 」 形 の 用 法 が あ る。 「
惣
「
麹
〕
尊 信者 」
態度 」「
完 全 の屋根 」「
貴 重 の 金 銭 」 と い っ た も の で あ る。 現 代 に は 、 「一な 」 形 の
形 容 詞 が これ に 換 わ る。こ の タ イ プ を い か な る 品 詞 とす べ き か 、一 筋 縄 で は 決 め られ な い 。
一130一
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
一般 に 、 「
塾2知
識 」の よ うな 「一の 」形 の 連 体 修 飾 語 は名 詞 と され る。 同 様 の 論 理 で
い え ば 、 「一の 」 形 を と る 「
熱 心 」 「寛 容 」 「完 全 」 「貴 重 」 は名 詞 で あ る 。 しか し、 失 わ れ
た 連 体 修 飾 「一の 」 が 、 現 代 に は 、 形 容 詞 「一な 」 に 引 き継 が れ て い る こ とは 、 両 者 の 連
続性 を示す。
よ っ て 、近 代 に 、形 容 詞 「一な 」 「一な る」 「一た る 」 「一と した 」 の い ず れ か の 用 法 を も
つ 語 が 、 「一の 」形 の 連 体 修 飾 用 法 を も もつ 場 合 に 、そ れ を 仮 に名 詞 とみ な した うえ で 、一
般 の名 詞 用 法 〈
名 詞 一a>と は 区 別 し 〈名 詞 一b>と す る。13
〔〈名 詞 一b>の 例 〕
(62)高
山 右 近 、 小 西 行 長 の 如 きは 、 熱 心 の 尊 信 者 で あ りま した
〔
森 大 狂(記)・
(63)従
久 保 田 米偲(談)「
っ て 、 彼 は 彼 等 に 対 して も 、 終 始 胞
甲 冑 の 話 」(『太 陽 』)/1925年
態 度 を改 め な か っ た 。
〔芥 川 龍 之 介 「
或 日 の 大 石 内蔵 助 」(『太 陽 』)/1917年
(64)山
〕
〕
中 で 露 螢 す る と き は 、木 の 枝 に て 小 舎 を組 み た て こ の 蕗 の 葉 を屋 根 に 載 す る と忽
ち完 全 の 屋 根 が 葺 け る。
〔
丸 山 晩 霞 「樺 太 の 感 想 」(『太 陽 』)/1925年
(65)此
〕
の 場 合 に 得 た る金 圓 は 果 して 如 何 な る 支 途 に 向 け ら るべ きや 、蓋 し更 に 一 層 贅 澤
三 昧 を 爲 す に過 ぎ ざ るべ く、或 は 美 酒 に 或 は 珍 味 に所 謂 悪 銭 身 に 付 か ず の 讐 へ の 通
り、 下 らぬ 事 に貴 重 の 金 銭 を 浪 費 し了 らん の み 。
〔
祖 山 鍾 三 ・佐 野 善 作 「商 業 世 界 」(『太 陽 』)/1901年
〕
13「Xのn」(Xは
漢 語)と い う形 式 を とる名 詞 句 に は様 々 な タイ プが あ る。 そ の うち(v)
に分 類 す るの は 、nの 様 態 や性 質 をXが 意 味 的 に形 容 す る、 限 定 修 飾 の 場 合 の み とす る。 主
と して 、 「nはXで あ る」 と言 い 換 え得 る(「2kS{11SZ}品
物 」 → 「(この)品 物 は 大 切 で あ る 」)
場 合 で あ る。 ただ し、 そ の よ うな 言 い換 えが で きな く と も、 次 の よ うに 、nが 感 情 を表 す 名
詞 で 、Xが そ の 内 容 を表 して い る場 合 もこれ に 含 め る。
乱 我 輩 は 八 ヶ 月程 イ スパ ニヤ に居 つ て 、殆 ん ど全國 を旅 行 した けれ ど嘗 つ て 一 物 を 取
られ た 事 もな けれ ば 又少 し も危険 璽 思 を した事 も ない
〔村 上 直 次 郎(談)『 名 士の 西 班 牙観 イ ス パ ニ ア 雑 談 』/1909年 〕
b.猫 り誤 解 が 伴 ふ の み な らず 、 學 問の 債 値 を會 得 す る こ とが 出 來 ず して 、 學 問 に 封 し
て遡
感 を 抱 き、 學 問 そ の物 を尊 敬 せ ぬ傾 を 生ず る。
〔
兆 水 漁 史 『教 育 時 言 』/1917年 〕
以 上 の 原 則 か ら外 れ る次 の よ うな ケー スは 、(v)で
は な く(i)の
〈
名 詞 一a>と す る。
・ 「
里 血璽 回 復 」 の よ うに 、nが 動 作 を表 す 名 詞 、Xが そ の補 語 、 とい う意 味 関係 に あ
・
・
る場 合 。
「
我 國 に於 け る困塾2-」
の よ うに 、nがXの 割 合 を示 す 場 合 。
「國 民的 交際 娯 樂 機 關 の 必IIIIQ上 よ り」の よ うに 、位 置や 場 所 を 表 す 名 詞n(「 上 」「内 」
「
外(ほ か)」 等)が 、 具 体物 で な い漢 語Xと
結 合 し、抽 象 的 な 意 味 で 用 い られ る場
合。
・ そ の他 、 「
私 の熱 心 の賜 で あ っ た」 「
困 難 の 萌 芽」 「其 進 退 は利 益 の 多 少 に 因 る 」 「
重悪
Q程 度 を加 へ 」の よ うに 、nの 様 態 や性 質 をXが 意 味 的 に 形 容 す る関 係 に は ない 場 合 。
一131一
永澤
済
(vi)名
詞 一c(「 一さ」 形)
漢 語 が 名 詞 と して機 能 す る とき 、 名 詞 化 接 辞 「一さ」 を 伴 う場 合 が あ る。 漢 語 「一さ」
形 が 一 般 化 す るの は 比 較 的 新 し く、 近 代 後 半 か ら現 代 に か け て とみ られ る。 そ れ 以 前 は 、
次 の よ うに 、 「
・φ」 形 が 多 用 され た。
(66)畢
寛 描 窩 の巧 妙 と、考 讃 の盤
とは 幕 府 時 代 の 史 家 と錐 も 、之 に 達 せ ん と骨 折 りた
る こ とに て 此 段 は 西 洋 の 史 家 と大 差 な き こ と な り。
〔山路 愛 山 「日本 現 代 の 史 学 及 び 史 家 」(『太 陽 』)/1909年
(67)民
〕
族 の違 太 は 此 の 如 き場 合 に現 は れ る の で 、目前 腿 尺 の 問 題 に の み 醒 齪 と して 較 や
と も す る と刀 を揮 廻 す を武 士 道 の 精 華 とす る 島 國 人 に は 連 も此 學 術 的 敬 度 と此 文
明 的 襟 度 とを 想 像 出 來 な い で あ ら う。
〔内 田魯 庵 「学 術 的 汎 亜 細 亜 主 義 」(『太 陽 』)/1917年
(68)第
〕
六 に 法 人 所 得 税 は 趨 整 を避 く るた め配 當 所 得 税 、 留 保 所 得 税 等 の 種 類 を 腹 止 し 、
利 益 金 全 髄 を 一 括 して 、そ の 中 か ら資 本 金 に 封 す る年 五 歩 に 相 當 す る推 定 標 準 配 當
金 を控 除 し、 そ の 残 額 た る超 過 利 益 だ け に 封 して約 一 割 の 高 率 を賦 課 す る こ と、
〔小 林 丑 三 郎 「
税 制 改 革 の 研 究 」(『太 陽 』)/1925年
一方 で
(69)矢
〕
、 近 代 に は 、 次 の よ うな 、 現 代 に は 一 般 的 で な い 「・さ」 形 の 用 例 が み られ る。
島 は 野 村 の貧 乏杢 が 想 像 以 上 な の で 、一 寸 氣 の 毒 に も感 じた が 、其 思 ひ よ り心 の
晴 々す る方 が 多 か っ た 。
〔
柳 川春 葉 「
誇 」(『太 陽 』)董909年 〕
(70)こ
の必盤
と堂 溢 さ と を最 も人 間 ら し く生 か した もの が か き た い 、其 庭 に あ らは れ
た 實 感 を な る べ く 高 債 な もの に した い 、 そ れ が 自 分 達 の仕 事 だ 。
〔
加 能作 次郎 「
一 月 の 文 壇 」(『太 陽 』)/1917年
(7D第
〕14
三 室 の 柿 内 青 葉 女 史 の 「十 六 の春 」 は 、乙 女 盛 りの 十 六 の 春 を描 き 、乙 女 の 姿 態
も 着 物 の 着 色 も、手 に 入 つ て 、謹 塞査 を 見 せ て ゐ る が 、背 景 の 桃 木 や ヒヤ シ ン ス等
は 、 花 鳥 家 で な い 女 史 で あ る か ら 、些 か 見 劣 りが す る。
〔梅 沢 和 軒 「帝 展 の 日本 画 」(『太 陽 』)/1925年
以 上 の 事 情 を 考 慮 し、 「一 さ 」 形 の 名 詞 を(i)の
〈名 詞 一a>と
区別 し、 〈
名 詞 一c>と
〕
して 分 類 す る。
14こ
の箇所は
、筆 者 、加 能 作 次 郎 に よる表 現 で は な く武 者 小 路 実 篤 の 発 言 の 引 用 で あ る。
一132一
変 化 バ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
〔〈名 詞 一c>の 例 〕
(72)圓
舞 の 足 拍 子 のや うな醗
で 、或 る期 待 が 踊 つ て ゐ た 。
〔中 谷 徳 太 郎
(73)さ
「
打 つ 勿 れ 」(『太 陽 』)/1911年
〕
て 此 南 大 門 の 雨 側 に 嚴 然 と して 直 立 勇 躍 せ る は 、運 慶 湛 慶 作 と稔 す る仁 王 で あ る 。
其 高 さ二 丈 六 尺 五 寸 、 以 て 其偉 太 さ を知 る べ き で あ る 。
〔
鈴 木 禎 二 「旧都 の 春 を 訪 ね て 」(『太 陽 』)/1917年
(74)た
だ そ れ は 低 損 失 とい ふ 鮎 か ら の み 述 べ た こ とで 、調 整 の 不 饗 、又 は 接 燭 の確 墨
〕
、
或 ひ[マ マ〕は 制 御 の 垣囲 盛 等 の 鮎 に就 て は 、 コ ンデ ン サ ー 購 入 の 際 に 、 損 失 率 と同
檬 、 是 非 心 得 て ゐ な け れ ば な ら な い の で あ る。
〔近 藤 生 「ラ ヂ オ 漫 談 」(『太 陽 』)/1925年
(viD除
〕
外
(i)∼(vi)を
基 本 的 な 分 類 枠 とす るが 、 そ こ に 分 類 す る こ と が 困 難 で 、 か つ 近 現 代
期 の 品 詞 用 法 の 変 化 を 捉 え る 目的 にお い て 、 当面 、 分 析 の 対 象 外 と して よ い と考 え られ る
次 の よ うな ケ ー ス を 、 〈除 外 〉 と して 扱 う。
【除 外 一① 】
〈形 容 詞 〉 の 定 義 で 述 べ た よ うに 、 叙 述 形 容 詞 を 分 析 対 象 か ら除 外 す る。 これ は 、 叙 述
形 容 詞 文 と 、「
彼 は堂 生 だ 」型 の 名 詞 述 語 文 と を 明 確 に 区 別 し難iいか らで あ る。 た と え ば 次
の(75)一(78)に
お い て 、aは 名 詞 用 法 、bは 限 定 形 容 詞 用 法 で あ る が 、cの タ イ プ を名
詞 とみ る か 叙 述 形 容 詞 の 一 部 とみ る か 、 区 別 す る こ とが 難 しい 。
(75)「
無駄 」
乱
日本 人 が 職 後 の 世 界 的 競 孚 に 雄 を 示 さ う とす る な ら、 出 來 る だ け 何 事 に も錘
麸 を 省 略 して 、輕 快 鮮 明 に 活 動 の 出 來 る手 段 を 大 謄 に採 用 せ ね ば な り ませ ん 。
〔与 謝 野 晶 子 「心 頭 雑 草 」(『太 陽 』)/1917年
b.從
〕
つ て 能 率 の 好 い職 工 程 塞監 な 動 作 が な い 。
〔
安井正太郎 「作業時周短縮 による能 率の研 究」(『太 陽』)/1925年 〕
c.會
計 の 機 關 す ら も 礁 に 備 は っ て 居 な い 日本 の 政 蕪 の 現 状 で は 、到 底 此 注 文 は
遮 駄 で あ る。
〔浅 田 江 村 「
政 治 、 外 交 」(『太 陽 』)/1909年
(76)「
〕
破格」
a.用
語 、 語 調 等 に 於 け る 古 典 文 学 の 中庸 主 義 は 破 られ て 、 激 越 な 語 句 、 詩 法 上
の壁
が 自由 に 許 され た 。
〔平 林 初 之 輔 「文 学 方 法 論 」(『太 陽 』)/1926年
一133一
〕
永澤
済
b.僧
正 は 、 ク ラ 、に 他 所 な が ら の告 別 を與 へ る た め に この毯 笹 な慮 置 を した の
だ と氣 が 付 く と、 ク ラ 、は 又 更 らに 涙 の わ き返 へ る の を と ∫め得 な か つ た。
〔有 島 武 郎 「ク ラ 、の 出家 」(『太 陽 』)/1917年
c.外
交 調 査 委 員 會 の 新 設 は 全 く破 天 荒 に属 し、 其 の 制 度 は壁 盗 で あ る 。
〔
浅 田江 村 「時 局 の 印 象 」(『太 陽 』)/1917年
(77)「
〕
〕
評 判1
a.一
時 あれ 位 の詫 剋を 生 み 、 淺 草 名 物 の 一 つ と して 敷 へ られ て ゐ た 闇 の 町 が 、
全 然 根 絶 され て しま つ た の だ 。
〔
記 者 「浅 草 放 浪 記 」(『太 陽 』)/1925年
し
琶惣
〕
美 し さ とい う程 で もな い が 、 眉 の 処 に 人 に 好 か れ る よ うな 艶 な 処 が あ
っ て 、 豊 か な 肉 づ きが 頬 に も腕 に も露 わ に 見 え た 。
〔田 山花 袋 「田 舎 教 師 」(『太 陽 』)/1909年
¢
噂 に 聞 い た ど こ ろ で は な か つ た。 そ れ は 非 常 な劃
であつ た。
〔田 山花 袋 「あ る僧 の 奇 蹟 」(『太 陽 』)/1917年
(78)「
〕
〕
最 高」
a.爾
後 温 度 急 に 昇 り、 夏 季 の 量 直 は 華 氏 九 十 度 以 上 に 達 し、 能 く植 物 を 生 育 せ
しめ 、 而 か も 朝 夕 は冷 涼 に して 、 人 身 爽 快 な り。
〔
上 野 英 三 郎 「農 業 世 界 」(『太 陽 』)/1901年
b.學
問 の 目的 は 出 來 る だ け量 直 な 所 ま で 推 し上 さ な い と淺 薄 に な る と思 ひ ま す 。
〔
与 謝 野 晶 子 「心 頭 雑 草 」(『太 陽 』)/1917年
c.お
〕
〕
あ い さん は 自分 が 目的 とす る藝 術 の 上 で 、 い ち ば ん 量 直 だ と信 じる 思 想 に
つ い て 英 さ ん に 話 した り した。
〔田 村 俊 子 「第 一 印 象 」(『太 陽 』)/1917年
〕
叙 述 形 容 詞 は 、 具 体 的 に は 、 次 の よ う な 形 式 で 現 れ る。 「一だ 」 「一だ っ た 」 「一だ か ら 」
「一で あ る 」 「一で す 」 「一で 」 「一な の で 」 「一な が ら」 「一た り 」 「一な り 」 「一に(思
感 じ る/見
え る/等)Is」
「(…が)一
な こ と16」 等 。 ま た 、 引 用 を 表 す 助 詞
う/
「一 と 」 が 後 続
IS「
残 念 に思 う」 「
快 適 に感 じる 」 「
立 派 に 見 え る」 な ど
、 話 者 の 知 覚 を表 す 動 詞 と共 起 し、
「一で あ る と(思 う/感 じる/見 え る)」 と言 い 換 え られ る場 合 を、本 稿 で は 、述語 と同等 の
性 質 を もつ と見 て 、 こ こ に分 類 す る。
16次
の2タ イ プ は類 似 の形 式 を とるが 区別 され るべ き もの で あ る
。
a.自
己の 心 理 をい か に他 に髄 見 し、又 他 の 心理 をい か に 自 己に 獲 見す るか とい ふ こ
とは藝 術 の 標 準 を 上 げ る 上 に於 て 、最 も必 要 な こ とで あ る。
〔田 山花 袋 『最 近 に 読 ん だ 小 説』/1917年
〕
b.高 聲 器 で團 腔 的 に聴 取 す る に は、翼 空 球検 波 器 や 増 幅 器 が必 要 な こ とは 云 ふ ま で
一134一
変化 パ ター ンか らみ る 近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
す る場 合(一
とす る/一
と思 う/一 と言 う/一 と感 じる/一
と知 る/等)や
、疑 問 を表す
助 詞 「。か 」 が 後 続 す る場 合 も こ れ に 含 め る。 同 じ く、 助 動 詞 「一だ ろ う[だ
ら しい 」 「一そ うだ[さ
ら う]」 「一
うだ]」 「一か も しれ な い 」 等 が 後 続 す る 場 合 も こ れ に含 め る 。
〔〈除 外 一① 〉 の 例 〕
(79)併
しな が ら吾 人 は 、實 際 の 生 活 を 考 慮 して 見 れ ば 、外 的 生 活 に 於 い て こそ 、團 集 的
で あ る が 、 自 己の 生 存 は 、 全 く孤 置 で あ る と言 は ね ば な らぬ 。
〔
長 谷川 天渓 「(文芸時評)孤 独 と忍従の生活」(『太陽』)/1909年 〕
(80)彼
れ の 体 格 は盤
に して 、そ の 門 下 の 人 は 、當 時 幕 下 十 雨 の 債 値 あ るや うに も思 ひ
し と言 へ り。
〔
横 山健 堂 「
藤 田 東 湖 の 半 面 」(『太 陽 』)/1901年
(81)而
〕
して 未 だ 全 然 隠 れ て居 る けれ ど も、漠 蓬 な が ら將 來 の 開 髄 を期 待 し得 る 富 も 、甚
だ 少 くな い。
〔浅 田江 村
(82)又
「
秋 田 大 観 」(『太 陽 』)/1909年
該 江 沿 岸 に は 場 所 を 撰 び 渡 船 を 設 け双 方 人 民 の 往 來 は 旦 坦 た るべ し
〔*「 彙 報 」(『太 陽 』)/1909年
(83)之
〕
〕
だ け 高 い 所 に 置 け ば 、日本 に 澤 山 あ る 大 抵 の まつ い 銅 像 で も 少 しは 立 派 に 見 え る
だ ら う と濁 り感 服 す る。
〔
厨 川 白村 「老 女 優 サ ラ ・ベ ル ナ ア ル 」(『太 陽 』)/1917年
(84)併
〕
し益 々 風 雨 は 募 り、全 く シ ケ の 光 景 と な り、漕 い で も短 駄 と知 つ た 時 、紫 錦 は 舟
底 へ 身 を 横 イトへ た。
〔
国枝史郎 「(長
篇小説)馳 つかひ(第 一回)」(『太陽』)/1925年 〕
(85)方
今 最 新 式 の 職 術 を 磨 用 す る戦 孚 に は 、ど う して 輕 氣 球 が必 要 か と云 ふ と、職 術 が
進 歩 す る に 随 つ て 益 ま す 高 所 か ら敵 情 を 見 下 す 必 要 が あ る 。
〔冶 雷 町 人 「軍 用 軽 気 球 」(『太 陽 』)/1901年
(86)唯
〕
だ 不 信 任 の 理 想 に 就 て 憲 政 會 と一 致 す る こ とが 困 難 だ ら うか ら 、其 れ が 爲 め に 何
ん な 璽 化 が 起 る か 知 れ な い と云 ふ 事 も豫 想 され る の ちや 。
〔無 名 隠 士 「
政 界の 表裏
(87)そ
三 党 の 三 思 案 」(『太 陽 』)/1917年
〕
の 盈 苗 ら しい 言 葉 の す ぐ後 に 本 田 が 穏 か な 調 子 で 云 つ た
〔豊 島 与 志 雄
「
本 田の 死 」(『太 陽 』)/1917年
も な く、 其 の 取 扱 も此 種 の 高級 の もの に な る と多 少 の 知 識 を 要 す る。
〔安藤 博 『放 送 無 線 電 話 の 発 達 とそ の 聴 き方 』/1925年
〕
〕
aに お け る 「こ と」 は 「(最も)必 要 な 」 を受 けて お り、 これ は 限 定形 容 詞 用 法 で あ る。 一
方 、bに お け る 「こ と」 は 「高聲 器 で囲 胆 的 に聴 取す る に は 、眞 空 球 検 波 器 や 増 幅 器 が 必 要 」
とい う文 全 体 を受 けて い る。 す な わ ち この場 合 の 「必 要 」 は 、 文 の 述 語 で あ る。 よっ て 、a
の タイ プ は(li)(形
容 詞 〉、bの タ イ プ は(述)〈 除 外 〉 に分 類 す る。
一135一
永澤
済
(88)ひ
ど くお 前 は麺
さ うだ な。
〔
国 枝 史 郎 「(長篇 小 説)髄
っ か ひ(第
五 回)」(『 太 陽 』)/1925年
〕
【除 外 一② 】
漠 語 に 、形 式 名 詞 「
様[や
ま り](に)」
「為[た
う/よ
め](に)」
う](だ)」 「
筈[は ず](だ)」
「う ち(に)」
「所(と
「訳[わ
け](だ)」
「絵[あ
こ ろ)」 等 が 後 続 す る と き 、 い か な る
品 詞 に 分 類 す べ き か 、 判 断 が 難 しい 場 合 が あ る。 た と え ば 、 次 の よ うな 場 合 で あ る。
(89)そ
こ で 日本 の 急 務 は 、鐵 と石 炭 と を十 分 な ら しめ 軍 需 品 を濁 立 せ しむ る 制 度 と経 濟
組 織 とを 完 成 せ しむ る に在 る。技 師 な どは何 程 で も出 來 さ うだ が 、鐵 や 石 炭 の 濁 立
は 甚 だ 困 難 の や うで あ る。
〔
千賀鶴太郎 「日本の欧州 戦乱に対す る地位」(『太陽』)/1917年 〕
(90)凡
そ 何 れ の 國 民 で あ る を 問 はず 、 或 る 國 民 に厩 す る者 が 他 の 國 民 を 了 解 す る事 は 、
最 も困 難 な こ とで あ るが 、殊 に能 く似 たや うに見 え て 而 か も 其 の 差 の 大 な る 雨 國 民
が 互 に 正 當 に 了 解 す る と云 ふ 事 は 、全 く外 形 よ り して 異 つ た 爾 國 民 が 互 に 了解 し合
ふ よ り も一 層 困 離 な や うで あ る。
〔記 者(文
責)・ 日置 益 「
最 近 支 那 政 局 の解 剖 」(『太 陽 』)/1917年
〕
漢 語 「困 難 」は 、後 続 の(形 式)名 詞 「
や う」へ の接 続 形 と して 、 「一の 」 ま た は 「一な 」
形 を と っ て い る。 形 式 か ら判 断 す れ ば 、 「一の 」形 の場 合 を(v)〈
場 合 を(の
名 詞 。b>、 「一な 」 形 の
〈
形 容 詞 〉 とみ な し得 る。 そ うす る と、 「困 難 」 は 、名 詞 ま た は 形 容 詞 と して 、
「
や う」 を 限 定 修 飾 して い る こ とに な る。 そ の場 合 の 統 語 構 造 は(91a)の
よ うに 書 け る 。
しか し、意 味 の 面 か ら考 え る と、 「や う」 は 、形 式 名 詞 とい う名 の 通 り、名 詞 と して の 実
質 的 な 意 義 は 希 薄 で あ り、 統 語 上 は 、 「困 難 」 との 結 び っ き よ りも 、 「で あ る」 との 結 び つ
きの 方 が 強 い とみ られ る。 そ の 構 造 は(91b)の
「
困 難Jは
よ うに捉 え る べ き もの で あ る 。 そ の 場 合 、
、 「や うで あ る 」 を伴 い 、 述 語 と して機 能 して い る こ とに な る17。
17そ
の場合の 「
や うで あ る」 は
、助 動 詞 「ら しい 」等 と同 様 の機 能 を は た して い る と考 え ら
れ る(た だ し、 「ら しい 」 の場 合 、前 接 す る語 の 接 続 形式 は 「一φ」 形 と な る)。
a.第 二 の問 題 に就 て も多 年 教 育 に経 験 あ る岡 田 文相 が 局 に當 つ て居 る か ら甚 だ適 富 の
様 で あ るが 岡 田文相 從 來 の保 守 的 保 守 的精 神 で は教 育 上 大 改 革 の英 断 を 望 む こ とは
出 來 ぬ。
〔浮 田 和 民 『総 選 挙 の意 義 附 議 会 再 解 散 説 の 可否 』/1917年
〕
じ 私 見 た い な もの は 、奉 公 で もい た して 一 生 暮 ら した方 が盤
ら し う御 座 い ます か ら。
〔田村 俊 子 『第 一 印象 』/1917年
〕
一136一
変 化 バ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
(91)
翫[[困
難{の/な}や
う]で あ る]
b.[[困
難{の/な}]や
うで あ る]
そ して 、「困 難 」を 述 語 とみ な した場 合 、上 述 、〈除 外 一① 〉 と 同様 の 問 題 に い き あ た る。
す な わ ち 、「困 難 」を 叙 述 形 容 詞 の 一 部 とみ るか 、名 詞 述 語 とみ るか 区 別 す る こ とが 難 しい。
よ っ て 、 以 下 の よ うに 、 漢 語 が 形 式 名 詞 に 前 接 し、 そ れ が 述 語 の 機 能 を 果 た して い る場 合
を、 〈
除 外 一② 〉 とす る 昌8。
〔〈除 外 一② 〉 の 例 〕
(92)聯
合 諸 國 は 抑 も何 の 爲 め に 職 ひ つsあ
る か 、職 孚 の 目的 精 神 は 固 よ り夙 に盟直 の 筈
で あ るが、 實は未 だ に荘漠 で職孚 の縫績 に伴 ひ益 々明瞭 を訣 くこ とになつ た、
〔浅 田江 村
(93)無
「
講 和 乎 恒 久 戦 乎 」(『太 陽 』)/1917年
〕
論 給 査 は 寓 眞 で な い か ら實 物 ら しい も の を描 い たs"け で は い け な い 、更 に そ れ が
藝 術 的 の 債 値 を有 た な く て は な らぬ が 、然 し、本 當 の 瀧 に さへ 見 え な い もの で 、藝
術 的 に立 匠 な 筈 は な い。
〔田 中 頼 璋 「桂 漫 四 致 」(『 太 陽 』)/1917年
(94)故
に 初 め に 蹄 りま して 青 年 の 任 務 の 重 も い 事 を 知 れ ば 青 年 は 羨 む べ き が 如 くに し
て 決 して 羨 む 事 は 出 來 な い 、 誠 に 一 方 か ら 見れ ば ドウモ 御 岨
の 課 で あ りま す
〔
和 田 垣 謙 三 「青 年 」(『太 陽 』)/1895年
(95)益
〕
〕
以 て 國 民 の 負 櫓 は 容 易 な らず して 前 途 は 愈 困 難 な 課 で あ る 、
〔
木場 貞長 「
政党 内閣の特性及 其得 失長短 を論す」(『太陽』)/1901年 〕
(96)是
等 の 周 旋 奔 走 の 爲 め 翁 は 資 財 を蕩 盤 す る に 至 り且 っ 塾 心 の 餓 他 派 の 感 情 を 傷 け
て 其 説 の 容 れ られ ざ る よ り倶 に 談 ず る に 足 ら ざ る を 畳 り其 居 を 名 古 屋 に移 し 同 地
の 後 進 者 を 薫 陶 して 京 都 と相 封 峙 せ し め ん 事 を欲 し其 移 住 の 準備 を な す
〔*「 美 術 」(『 太 陽 』)/1895年
〕
18漢
語 が 形 式 名 詞 に前 接 す る場 合 で あ っ て も、そ れ が 述 語 と して機 能 して い な い次 の よ うな
ケースは、 〈
除 外 〉 とは しな い。 以 下の もの は 全 て 、(i)の
〈名 詞 一a>と み る。
a彼
女 の謹
の除 り、絡 よ りぬ け 出 て ラバ を止 め た 際 、指 を僥 い た と僧 は考 へ て居 る 、
〔
谷 津 直 秀(講 演)『 ベ ス ー ビヲ 大 噴 火 実 見 談 』/1909年
〕
b.成 程 現 今 資 産 の 大 部 分 を株 券 に注 入 し、 之 を 抵 當 と して 銀 行 よ り巨額 の負 債 を 爲 せ
る 人 々 は 、株 券 市債 の 日に 日に 下落 し而 か も利 息 は漸 や く騰 貴 し、 將 來 或 は破 産 を
免 か れ ざ らん とす る 爲 に 、 其 の萱 癒 の除 り種 々 の運 動 を試 み 、 何 とか して株 便 を 引
上 げ 、其 機 に乗 じ費 りて遁 げん とす る虫 の 好 き 量 見 を抱 持 す る 者 少 な か ら ざ るべ し。
〔坪 谷 水 哉 『経 済 時 評 』/1901年
〕
c.殊 に 貧 民 は 洗 濯 物 を乾 か す 困 難 の 爲 め 、 減 多 に 洗濯 もせ ぬ か ら 、不 潔 不 衛 生 は 甚 だ
しく 、盛 に病 人 が 出來 る。
〔*『 外 人 の 日本 観
日本 人 の 家 屋 』/1909年
〕
一137一
永澤
済
(97)そ
の 人 達 は 職 務 に墨 寛 な あ ま り、博 士 を煩 勢 の 結 果 死 な して しま つ て も 、一 刻 も早
く廣 く 人 々 に 知 らせ る とい ふ こ とが 、自分 た ち の 責 任 で あ り、重 大 な 使 命 で あ るや
うに 振 舞 っ た。
〔三 上 於 蒐 吉 「(長 篇 小 説)蛇
(98)で
人(第
九 回)」(『
太 陽 』)/1925年
〕
、私 の お そ れ た の は 私 の 頭 が ま だ 盟 膣 な うち に 、ど うか して 後 事 を 貴 方 に 申 上 げ
て お き た い と思 つ た の で す が ・
〔三 上 於 菟 吉 「(長 篇 小 説)蛇
(99)思
人(第
五 回)」(『 太 陽 』)/1925年
〕
ふ に 俸 給 生 活 者 は 所 得 の 認 定 が餐 易 な 爲 め 、兎 角 同 一 所 得 の職 工 よ り も多 くの 公
課 を か け られ 易 い 爲 で あ ら う。
〔
記者 「
職 工及俸給 生活者 の生計状態一本邦最大 の生計調査成 る一 」(『太陽』)/1925年 〕
(100)終
尾 の 二 日に は 、 枕 木 の 不 足 を告 げ た 爲 に 、 鐵 軌 一 本 の 長 に 枕 木 十 三 本 を 置 い て
ゆ く の が 當 然 の と こ ろ 、そ れ が 出 來 な くつ て 、一 本 抜 に 半 敷 づ 」並 て往 つ て 、寄 居
か ら復 とつ て 還 して や つ た 事 。
〔中 島 竹 窩 「鉄 道 大 隊(上
武 線 の 作 業)」(『 太 陽 』)/1901年
〕
【除 外 一③ 】
形 態 素 間 の 結 合 度 が 比 較 的 強 く 、他 の 形 態 素 と併 せ て 一 つ の 「語 」的 性 格 を もつ た め に 、
上 述 の 品 詞 に 分 類 す る こ とが 難 しい場 合 を 〈除 外 一③ 〉 とす る 。「一にす る 」(「大 切 に す る」
「邪 魔 に す る 」「
親 切 に す る 」「
快 活 に す る 」「不 安 にす る」「明 確 に す る 」)、「一に な る 」(「得
意 に な る 」 「邪 魔 に な る 」 「自由 に な る 」 「心 配 に な る」 「
不 安 に な る」 「明 確 に な る 」)、「一
が る」(「得 意 が る 」)、「一とす る[一 と して い る]」(「 然 とす る 」 「堂 々 と し て い る」)、「一
とな る」(「 然 と な る」)等 で あ る19。
〔〈除 外 一③ 〉 の 例 〕
(101)凡
て 他 人 と共 同 で 働 く時 は 、 私 は い つ も快 活 にす る。 不 快 活 は 、働 手 全 膿 の 氣 を
沈 ま せ 、 仕 事 の 全 髄 を害 す る。
〔
福 井 菊 三 郎 「米 国 の 児 童 道 徳 の 話 」(『太 陽 』)/1925年
〕
19「
一にす る」 「一に な る 」 につ いて は
、慣 用 的 な 表 現 と して 固 定 化 され た もの が 多 い。 そ
の 中 で 、 比 較 的 生 産 的 な タ イ プ と して 、 「XをYに す る」 の形 式 で 「XをYの 状 態 に 変 化 さ
せ る」 の 意 を 表 す もの(例:「 問題 を阻 確幽
」「
恐 怖 が 彼 を 安 匹 た 」)、同 じく 「Xが
Yに な る 」 の形 式 で 「XがYの 状 態 に 変 化す る」 の 意 を 表 す もの(例:「 問 題 が囲 遮
」
「
彼 は 不 安 に な っ たJ)を 挙 げ る こ とが で き る。なお 、表 面 的 に は 同形 式 を とっ て い て も、「す
る」 が 「行 う」の 意 で用 い られ て い る 次 の よ うな 場 合 は 、 「
慎 重 に 」 と 「す る」 とは 、各 々 独
立 した 「
修飾語」 「
被 修 飾 語 」 の 関係 に あ り、下 線 部 を 〈
副 詞 〉 とみ る。
a.然
る に第 三 回 に在 て は一 は從 來 の 経 験 に 徴 し、 一 は 今 回 は 長 期 に渉 り許 可す るが
故 に 、最 も人 選 を遺 重 にす るの 要 あ るを 以 て 文 部 大 臣 は 十 分 の 責 任 を負 ひ 之 を許
否 せ しな り。
〔
文 部 省 『国定 教 科 書 の 翻 刻発 行 に就 きて 』/1909年 〕
一138一
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
(102)就
中 今 後 妥 協 を困 魍
至 事 項 は 、農 地 分 配 、 社 會 改 革 等 の 大 問 題 が 、 前 途 に 横
つて居 るこ とであ る、
〔
露 西 亜 の 政 局 「米 国 の 児 童 道 徳 の 話 」(『太 陽 』)/1917年
(103)本
組合 は不正茶 の取 締 を一層髄
〕
爲 め 本 縣 知 事 へ 請 願 の 上 自今 巡 査 若 干 名
を 特 置 し常 に 市 中 を巡 視 す る事
〔*「 海 内 彙 報 」(『太 陽 』)/1895年
(104)私
は 詰 ら な い こ とが 心 己にt。
〕
私 は 驚 き易 く、 惑 ひ 易 く 、憤 り易 く、 落 胸 し易
い。
〔与 謝 野 晶 子 「
心 頭 雑 草 」(『太 陽 』)/1917年
(105)さ
ア 出てお 呉れ 、邪魔 魍
ぢや な い か。
〔田 口掬 汀 「
喜劇
(106)金
さへ あ れ ば 、何 で も旦 由幽
嘘 の 世 界 」(『太 陽 』)/1909年
は 入 ら ぬ … … … 子 が 欲 しい ・・
…・
… と 云 ふ 方 な れ ば謎
〔
饗 庭篁村
(108)元
〕
て 下 さるに相 違 ない
「
従 軍 人 夫 」(『太 陽 』)/1895年
〕
來 武 断 派 と い ふ 言 葉 か ら して 漠 然 と して 居 る。
〔
浅 田 江 村 「政 治 、 外 交 」(『太 陽 』)/1909年
(109)金
〕
と考 へ て ゐ る 心 底 が 見 え す い て ゐ る。
〔
無 腸 公 子 「新 長 者 議 員 の 顔 触 」(『太 陽 』)/1925年
(107)金
〕
吾[se.tt,人 刎 雌
〕
。
〔田 口掬 汀 「喜 劇
嘘 の 世 界 」(『太 陽 』)/1909年
〕
【除 外 一④ 】
〈
動 詞 〉 に 準ず る 形 式 と して 、 補 助 動 詞 「一す 」 「一す る」 に 代 わ り、 「一で き る 」 「一致
す 」 「奉 る 」 「一仕 る 」 「一遊 ばす 」 「一くだ さ る 」 「一な さ る」 「一申す 」 の よ うな 可 能 形 や
敬 語 形 を と る場 合 を 〈
除 外 。④ 〉 とす る。 ま た 、 補 助 動 詞 「一す 」 ま た は 「一す る 」 以 外
を伴 っ て 動 詞 が 形 成 され る場 合(調
査範 囲内 では 「
皮 肉 る 」 の み)も
こ こに 含 め る 。
〔〈除 外 一④ 〉 の 例 〕
(110)で
も 僕 は そ の 言 葉 を 直 接 に 聞 か な い 中 は漉 星 出 塞 な い 。
〔
真 山 青果 「壁 の 花 」(『太 陽 』)/1909年
(川)土
産神 は申す に 出ばず 、一切の神 佛豊 幽
べ く候。
〔
豹子頭 「
明治初年外交物3g(そ の五)邪 教 退治の腹芸」(『太陽』)/1925年
(112)い
つ れ 精 進 落 し に は 、ど こ ぞ へ 髄
〕
て 、お 美 い も の を 召 食 る で せ うか ら。
〔徳 田 秋 声 「蜘(『
(113)陛
〕
太 陽 』)/1917年
〕
〔*「 海 外 彙 報 」(『太 陽 』)/1895年
〕
下 に 於 て も 非 常 に 御 感 動 あ らせ られ た り と 云 へ り
一139一
永澤
済
(114)大
人 は 手 前 だ と何 で も幽
が 、 揮 りす ぐつ て 珍 奇 の 品 が 二 十 幾 鮎 、 手 前 が
所 藏 品 は 詰 ら な い も の で ご あ す が 、他 は 皆 元 緑 專 門 家 の 秘 藏 物 で ご は す か ら… …
〔内 田魯 庵
(115)ま
「
古 物 家 」(『太 陽 』)/1901年
〕
さ か 十 徳 姿 で あ らず と も俳 人 ら しい特 殊 な 好 み で も あ る こ と か と思 つ て 居 た 私
を魎
如 く現 れ た そ の 人 は 、リウ と した 洋 服 で きれ い に あ て られ た 刷 毛 刀 の 痕 テ
カ ∼ ∼ と した 顔 に 、 末 路 蒲 條 た る頭 髪 が 丁 寧 に 並 べ られ て あ つ た。
〔
橋 本 関 雪 「蕪 村 寺 」(『太 陽 』)/1925年
(viii)そ
〕
の他
用例 の採集 は 、電算機 で の検索 に よるため、そ の中 には、検 索対象 の文 字列 が 出現す る
全 て の 場 合 が 含 ま れ る 。 よ っ て 、複 合 語 の 一 要 素 で あ る ケ ー ス 、 形 態 素 の 切 れ 目 で な い位
置 で 区 切 られ た ケ ー ス 、 和 訓 の ル ビが ふ られ た ケ ー ス 、漢 文 や 漢 詩 と して 書 か れ た(日 本
語 と して 書 か れ て い な い)ケ
ー ス 、 固 有 名 詞 等 、本 来 、 カ ウ ン トされ る べ き で な い も の が
混 入 す る こ と が あ る。 そ の よ うな 場 合 を 、 〈
そ の 他 〉 と し、 分 析 の 対 象 か ら外 す 。 ま た 、上
述 の カ テ ゴ リー の い ず れ に 分 類 す べ き か 判 断 で き な い特 殊 な用 例(本 の タ イ トル 等)も
〈
そ
の 他 〉 とす る。
〔〈そ の 他 〉 の 例 〕
(116)是
れ 皆 國 民 の 氣 風 精 神 が 、竪 固確 童 を 貴 ぶ よ り來 る もの とい は な け れ ば な らぬ 。
〔園 田孝 吉(談)「
(117)で
名 士 の 英 吉 利 観 」(『太 陽 』)/1909年
〕
あ るか ら 、小 細 工 を 弄 す る こ とは 、 現 時 の 不 安 定 な 分 野 を 益 益 紛 糾 せ しめ る所
以 で あ る。
〔
床 次 竹 二郎 「現 政 局 に 対 す る感 想 」(『太 陽 』)/1925年
(118)決
〕
して 粗 豪 放 脆 な る痛 快 に は 非 らず 。 鹸正 確 實 な る痛 快 也 。
〔国府 犀 東 「政 治 時 評 」(『太 陽 』)/1901年
(119)あ
の 跡 か 、 い や 鑓Lい
〕
手 の 迅 疾 い 奴 で の ウ 、 我 輩 の 足 を 斯 う持 よ ツ て 、
倒 され た か と 思 ふ と直 ぐ馬 跨 で … … … 。
〔
塚原 渋柿 園 「
他 流 試 合 」(『太 陽 』)/1895年
3.3品
〕
詞判定
以 上 の 分 類 に 基 づ き 、 各 語 が 、 近 代 に 、 名 詞 ・形 容 詞 ・副 詞 ・動 詞 の4品
の 機 能 を も っ て い た か を判 定 した。 判 定 に は 、分 類 枠(i)∼(噛)の
を用 い た。 〈(i)名
詞 の うち 、 ど
う ち 、(i)∼(V)
詞 一a>、 ま た は 〈(v)名 詞 一b>(連 体 修 飾 「一の 」 形)の
用 例 を もつ
場合 を 「
名 詞 機 能 あ り」、 〈(li)形 容 詞 〉 の 用 例 を もつ 場 合 を 「形 容 詞 機 能 あ り」、 〈(iii)
一140一
変化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
副 詞 〉 の 用 例 を もつ 場 合 を 「副 詞 機 能 あ り」、 〈(iv)動 詞 〉 の 用 例 を もつ 場 合 を 「動 詞 機 能
あ り」 と判 定 した 。 〈(vi)名 詞 一C>(「 一さ 」 形)は
、 品詞判 定 には用 い なか った。
同 様 の 判 定 を 、 現 代 に つ い て も行 っ た 。 判 定 は 、 筆 者(日
本 語 母 語 話 者)の
内省 、及 び
新 聞 社 サ イ ト(朝 日新 聞 『asahi,com』、 毎 日新 聞 『毎 日jp』)内 の 用 例 に基 づ く。
調査結果
4.
4.1用
例 調 査 と品 詞 判 定 の 結 果
以 上 、 調 査 対 象700語
につ い て の 、3.2節 の 用 例 調 査 と 、3.3節 の 品 詞 判 定 の 結 果 は 、 本
稿 末 【付 表 】 に 示 す 通 りで あ る。 品 詞 判 定 の 結 果 は 、 次 の よ うな 番 号 で 示 した 。
上 述(第2節)の
よ うに 、4品 詞 の 理 論 上 の 組 み 合 わせ は15通
次 の よ う に1∼15の
番 号 を 付 した(番
りあ る。 この15通
号 の 付 し方 は 、 前 掲 表1の1∼15と
りに、
同 一)。
(120)
1[名
2【
詞】
容 詞,動
詞】
10[扇11言 司,動 言司】
形容 詞】
3[扇il言
4【
9[形
司】
11[名
12【
動詞 】
詞,形
容 詞,副
詞 】
名 詞,形
容 詞,動
詞 】
5[名
詞,形
容詞 】
13[名
6[名
詞,副
詞1
14【 形 容 詞,副
7[名
言司,動 言司1,
8[形
容 詞,副
15[名
詞,副
詞,形
詞,動
詞】
詞,動
詞 】
容 詞,副
詞,動
詞]
詞】
これ に よ り、 た とえ ば 「熱 心 」 は 、 近 代 に 「15」
、 現 代 に 「8」と い う品 詞 用 法 を もつ 、
と表 せ る(以
下 、 品 詞 用 法 の 変 化 パ ター ン を[15>8]の
な お 、 よ り詳 細 に 実 態 を 示 す た め 、 【付 表 】 の1∼!5の
よ うに 表 記 す る)。
番 号 の 前 に 「#」「&」 「#&」 「ホ」
の 記 号 を付 した 。 記 号 の 意 味 を次 に 示 す 。
「#」:当該 の 語 は名 詞 用 法 を も つ が 、そ れ が 、連 体 修 飾 「一の 」形 に 限 られ る こ と を表 す 。
た と え ば 、「有 名 」 は 、近 代 に 「有 名 の 」 と い う連 体 修 飾 形 を と る が 、他 の 形 式(「 有
名 は 」 「有 名 を 」 等)は
出 現 しな い。 これ を 「#5」と表 す 。20
20名
詞 用 法 の 中 で連 体修 飾 「一の 」 形 のみ 別 扱 い す るの は 、 「一の」 形 は とれ て も他 の 名 詞
用 法 は も た な い名 詞 が 、近 代 に も現 代 に も多 く(現 代 の方 が よ り多 い)、 そ れ が 一 般 の 名 詞 用
法 と性 格 を 異 にす る と考 え られ る か らで あ る。 そ の 点 に つ い て 、 次 の よ うな 先 行 研 究(現 代
一141一
永澤
済
「&」:当 該 の 語 は名 詞 用 法 を もっ が 、そ れ が 、 次 の よ うに 、述 語 の 一 部 を成 す 場 合 に 限 ら
れ る こ と を 表 す21。
(12D「
参 院 選 で は(通 行 人 が)た
く さん 手 を振 って くれ た が 、 全 然 だ 」 と表 情 を 曇 ら
せ た。
〔asahi.com/2008年
〕
「#&」:当 該 の 語 は 名 詞 用 法 を も つ が 、 そ れ が 、 連 体 修 飾 「一の 」 形 と 、 述 語 の 一 部 を成
す 用 法 とに 限 られ る こ とを 表 す 。 す な わ ち 、 上 の 「#」と 「&」 を 併 せ た ケ ー ス で あ
る。 た と え ば 、 「突 然 」 は 、現 代 に 「突 然 の 」 と い う連 体 修 飾 用 法 を も ち 、か つ 、 「彼
の訪 問は鐡
だ っ た 」 の よ うに 述 語 の 一 部 を成 す 用 法 を もつ の で 、 「#&6」 と な る。
「*」=当該 の 語 が 、品 詞 判 定 を難 し くす る特 殊 な 用 例 を も つ 、 あ る い は 、(特 に 現 代 の 用
例 に 関 して)あ
る 品 詞 用 法 を もつ か ど うか の 判 定 に個 人 差 が あ り得 る 、 等 の 理 由 で 、 品 詞
判 定 に 特 に 注 意 を 要 した こ とを 表 す 。(そ れ ら に っ い て は 、1∼15の
中 か ら最 も妥 当 と考 え
られ る 番 号 を 付 した 。)
日本 語 につ い て の もの。 対 象 は 漢語 に限 らな い)と 同様 の 立 場 を と る。
村 田美 穂 子(2005)は
、 「「
① どん な助 詞 で も添 え る こ とが で き る 」 「② 助 動 詞 が 添 え られ
て 述 語 に な る」 とい う2点 を完 全 に満 たす 名 詞 が 、 名 詞 ら しい名 詞 で あ る 」 と し、 「「
在 来」
「
無 人 」 「良性 」 な どは 、 名 詞 に は違 い な い の だ が 、 「
名 詞+の+名
詞 」 の 形 以 外 で は用 い ら
れ に く い点 で 、 ① か らは 外れ て い る」 とす る。
村 木 新 次 郎(2000)は 、「
名 詞 は 文 中 で補 語 に な る こ とが も っ と も重 要 な は た ら きで あ り、
そ の機 能 をは た す た め に 、 「一が/一 を/一 に」 とい っ た格 助 辞 を した が え る とい う形 態 的
特 徴 をそ な えて い る。(中 略)あ る単語 が名 詞 で あ る た め の条 件 は 、 な に よ りも この 格 の 体
系 を もつ こ とで あ る」 と し、 「
深 紅(の バ ラ)」 「だ ん とっ(の 一 位)」 「
極 上(の 酒)」 「とび
き り(の 品)」等 の 語 に つ い て 、「こ こ に あげ た 単語 は 、辞 書 で名 詞 あつ か い され て は い る が 、
補 語 と して の 用 法 、 す な わ ち 、 「一が 」や 「一 を」 を した が えて 主 語 や 目的 語 にな る こ とは
普 通 な い もの とお もわ れ る。 も しそ うだ と した ら、 これ らは名 詞 の主 要 な機 能 で あ る補 語 に
な る資 格 を欠 い て い るの で 、名 詞 とはみ とめ られ な い こ とに な る。 こ の よ うな単 語 が 名 詞 と
して あつ か わ れ て きた の は 、 「一の 」 を したが え る とい う形 態 上 の 特 徴 に よ った もの と考 え
られ る。 しか し、[一 の]を したが えて連 体 機 能 をは たす とい うこ とは 、名 詞 に とって 本 質
的 な 特 徴 で は な く、 名 詞 が 規 定 語 と して は た ら く二 次的 副 次 的機 能 の 特 徴 で あ る 」 とす る。
21(12Dの
よ うな 用 法 は 一般 に 「
副 詞 」 の周 縁 的 な 用 法 とみ な され る こ とが 多 いが
、副 詞
用 法 を もつ 語 の 中 に は 、 た とえ ばrx到 底 だ っ た」 「×二血 だ った 」 「×俄 然 だ っ た」 の よ う
に 、述 語(の 一 部)に は な れ な い語 も多 くあ る こ とか ら、 本稿 で は 、(121)の よ うな用 法 を
一 種 の 名 詞 用 法 とみ な す こ と と した。
一142一
変 化 バ ター ンか らみ る 近現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
4,2変
化 パ タ ー ン とその 語 数
本 稿 末 の 【付 表1に1∼15の
番 号 で 示 した 品 詞 判 定 の 結 果 か ら 、次 頁 表2を
作 成 した(【付
表 】 に 付 した 「#」「&」 「#&」 「申」 の 付 加 記 号 は 捨 象 した)。 同 表 は 、 理 論 上 の 変 化 パ ター
ン225通
りに つ い て 、 近 代 か ら現 代 に か け て 、 実 際 に そ の パ タ ー ン の 変 化 を した 語 が700
語 中何 語 あ るか を 示 して い る。
表 中 、 対 角 線 上 の 網 掛 け 部 分 は 、 品 詞 用 法 に 変 化 が み られ な い パ タ ー ン を 示 す 。 ま た 、
近 代 の 「2」「9」「10」「14」の 行 、現 代 の 「4」「9」「10」「14」の 列 に 施 した 斜 線 網 掛 け は 、
当 該 の 行 ま た は 列 に属 す る 語 が1語
4.3変
表2で
化 パ ター ン とそ の 所属 語
一 覧 さ れ る[5>1][11>8]と
す る の か を 、 表3に
表3で
[4>7]…
もな い こ と を示 す 。
い っ た 各 変 化 パ ター ン に 、 具 体 的 に い か な る 語 が 属
示す。
の 各 変 化 パ タ ー ン の 配 列 順 序 は 、[x>y]のxの
の 順)。
昇 順 で あ る([1>1][1>7][3>3]
こ れ は 近 代 を 基 準 と し た 配 列 で あ る 。 そ れ を 並 べ 替 え 、yの
し た も の([1>1][5>1][6>1][7>1][11>1][15>1][5>2][11>2]…
す 。 これ は 現 代 を基 準 と した 配 列 で あ る。
一143一
の 順)を
昇順 に配 列
表4に
示
永澤
済
表2近
現 代 期 品 詞 用 法 の 変 化 パ ター ン とそ の語 数(単 位:語)
一144一
変 化 バ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
表3各
・
・
変化パ ター ンに属す る語(近 佳 を基準 に配列)
見 出 しの網 掛 け は 、 変 化 しな い パ ター ン を 示す 。
【
付 表 】の 付 加 記 号 「#」「&」「#&」 「
零」 を以 下に も付 した 。 語 の 左 に 付 した 記 号 は近 代 、語 の 右 に 付
した記 号 は現 代 に つ い て の もの で あ る(記 号 の 意 味 は4.1節 を 参 照 され た い)。
◆ 龍 濫激澗1・(名
愛情
衛生
技巧
距離
権勢
事件
重量
真意
代金
伝記
文学
理論
圧力
階級
記事
近所
効果
時刻
主義
真価
体重
動機
抱負
論理
◆[1>7](名
機能
安寧
外交
犠牲
筋肉
効能
資産
主力
真相
端緒
得策
面積
威厳
外国
基礎
敬意
財産
実業
償金
信念
団体
特徴
目的
詞 〉 名 詞,動
'(形
一向
詞 〉 名詞〕
極力
漸次
◆[5>1](名
詞,形
不平
未 開鞭
◆[5>7](名
謬著 名
薄弱
厄介
有害
容 詞 〉 名 詞,形 容 詞)
可能*危
険
無効
無能
詞,形
最大
主要
隆盛
詞,形
最高
運命
期限
興味
嫌疑
資金
住宅
資力
素養
抵当
負債
理屈
容 詞 〉 名 詞)
◆ 玩晦 選5薯(名
◆[5>6](名
運河
危機
境遇
欠陥
事業
秀才
所得
世界
通路
標本
輿論
詞)
詞,形 容 詞 〉 形 容 詞)
緊要
残念
重要
下等却
不明
陰謀
慣習
給料
経路
産物
習慣
食品
精力
通貨
表情
用事
詞)
◆[5>2](名
肝要
狭隆
μ
有名
劣等
暗黒
不満
威力
貨物
疑問
経費
作品
社会
商品
勢力
調子
被害
勇気
到底
詞 〉 名 詞,動
最上腋
遺物
活気
基本
刑罰
材料
事務
商店
生命
兆候
範囲
問題
容 詞 〉 形 容 詞)
◆[4>刀(動
圧倒
充満
虚偽
意向
快楽
規模
競馬
最終
嫉妬
証拠
製品
知識
内容
模範
苦痛
名誉
容 詞 〉 名 詞,副
現金
面倒
高等謬
上等"不
貧弱
優秀
安
不振*
詞)
躍
最 良腋
詞,形
容 詞 〉 名 詞,動
詞)
冒険
◆[5>8](名
温和
強大
詞,形 容 詞 〉 形 容 詞,副
巨大
善良
聡明
詞)
一145一
微弱
雄大
幼稚
永澤
済
◆[5>11](名
孤独
悲惨
詞,形
不潔
◆[6>1](名
自分
人工
詞,副 詞 〉 名 詞)
誠意
天性
(名 詞,副
◆[6>5】
*夢 中 零
◆灘 舞 鱗(名
一応
一切
随意
平常
極度
全般
(名 詞,副
(名 詞,動
意志
規約
経歴
作戦
収益
装置
得失
予備
◆ §!団i凝
蓼癒 ら(名
圧迫
遺伝
改革
改善
関係
居住
結婚
行動
混乱
充実
処置
制定
増加
尊重
中止
淘汰
破壊
疲労
変化
融通
詞 〉 名 詞,形
容 詞)
多分潔
単独
詞 〉 名 詞,形
事実
実際
同時
当分
恩恵
恐怖
現象
思想
障害
待遇
服装
価値
教養
行為
実用
信号
探偵
報酬
移住
運輸
解散
改良
完備
継承
減少
固定
実行
衝突
衰弱
設置
測量
断絶
適応
忍耐*
発達
憤慨
歩行
流通
位置
影響
開始
革新
緩和
計上
建設
孤立
死亡
消費
生活
絶望
組織
断定
徹底
熱中
発展
分解
保持
恋愛
当時
容 詞,副
実地
腋突然鞭
従来
不意
感慨
規律
構造
慈悲
政治
秩序
保険
感覚
疑惑
交通
辞表
責任
著作
迷信
観念
傾向
娯楽
写真
設備
伝統
遊戯
一致
一変
延長
改正
拡張
規定
継続
現存
顧慮
自慢
消滅
成功
設立
尊敬
鍛練
展開
廃止
破裂
分裂
保証
練習
応接ゆ
解説
確定
吸収
軽蔑
言明
混合
収穫
勝利
生産
選挙 象
存在
蓄積
統一
配置
反射
平均
滅亡
労働
移転
往復
開設
活動
教育
決行
広告*
混同
集合
除外
製造
戦争
存続
注意
同情
敗北
販売
閉鎖
網羅
論説
詞)
正式
◆[7>1]
意義
企業
形式
根拠
周囲
総計
電報
予箪
表面
詞,副 詞 〉名詞,副 詞)
一層蔵
一体
一般零 鰻早速瓶
全体
搬無 論 蔵
◆[6>11]
容 詞 〉 名 詞,形 容 詞,副 詞)
不便
不利
無礼
野蛮
安定
移動
会議孝
改造
感激
拒絶
決定
合同
産出
終了
助長
整理
増減
体操
超過
到達
爆発
封鎖
変更
用意
詞 〉 名 詞)
維新
搬
原因
自信
主観
損害
犯罪
意思
恐慌
結果
参考
収入
騒動
特許
理想
罰,動
案内
意味
解決
開通
完成
緊張
欠乏
誤解
散歩
収賄*
進化
成立
捜索
堕落
陳列
動揺
発育
普及
変動
溶解
詞
印象
行政
見解
施設
需要
損失
費用
〉名詞 。動 飼】
維持
印刷
会 合零
回転
感動
警戒
研究
呼吸
刺激
出現
進歩
接近
増進
団結
締結
道 楽*
発射
復活
包含
用心
怠識
運動
開催
回復
監督
経験
検査
故障
実現
準備
信用
設計
増大
短縮
停止
努力
発生
腐敗
膨張
予宗
一146一
変化 パ ター ンか らみ る 近現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
◆[8>3コ(形
依然
容 詞,副
◆肇 理懸 整(形
純然
詞 〉 副 詞)
俄然
容 詞,副 詞 〉形 容詞,副 詞)
漠然
漫然
◆[11>1](名
真実
必然
詞,形
便宜
容 詞,副
詞 〉 名 詞)
◆[11>2】(名
偉大
高価
詞,形
容 詞,副
詞 〉 形 容 詞)
◆[11>31(名
だ案 外
潔断 然
詞,形
適宜
容 詞,副
詞 〉 副 飼)
◆[11>5](名
僅グ
絶大謬
詞,形
不良
容 詞,副 詞 〉 名詞,形
平 気*有
望謬
◆[11>6](名
永 遠*間
接
無限
鐸無 数 絶
詞,形
偶然
容 詞,副
最近
詞 〉 名 詞,副 詞)
謬
全 然&大
体
(名 詞,形
容 詞,副
詞 〉 形 容 詞,副
快活
強力
姑息
盛大
美麗
"容易
過大
激烈
滑稽
浅薄
頻繁
謬
立派
◆[11>8]
意外
急速
高尚
神聖
適切
優美
異様
強硬
広大
謬
随分
莫大
有力
単 純*
不幸
無 用謬
丁 寧*
無事
有 効*
結構
残忍
大切
僻
平然
良好
詞,形 容 詞.副
H満
円滑零
健康
元気
公 平*
巧 妙*
精 確*
得 意鐸
不正
優勢
清 潔*
特 殊*
不当
平易
謬有 利 零
有 用β
平凡
冷 静*
容 詞,動
詞 〉 名 詞)
◆[12>5](名
詞,形
容 詞,動
詞 〉 名 詞,形
◆[12>刀(名
拡大
乾燥
優越
優勝
要
詞,形
縮小
評 判*不
容 詞,動
熟練
冤大
厳粛
周到
大変
明確
露骨
緩慢
健全
十分
忠実
猛烈
詞 〉 名 詞,形 容 詞 ∵ 副 騨)
"憎 別
臆ヲ
丙▼
碓 果▼
堅 実*
厳 重零
厳 正寧
自由
自然
質 素*
正 当拶
精 巧寧
誠 実*
皮肉
特別謬
非 常#
詞,形
特 有"*必
当然鞭
秘密
本当
奇1匝
謬顕 著
急激
賢明
上手
痛切
勇敢
詞)
頑固
堅固
重大
大胆
豊富
冷淡
◆[12>1](名
親善
利益
困難
天 然零
純粋
痛快
謬
有益
だ
◆遡 郵嬉 鍵 璽 ・(名
安価
異常
極 端*
厳 格*
謬
公 然謬
幸福
正 確*
迅 速*
"可憐
容 飼)
間 ・勿
#厳 密*
間 甲,
平和
詳細
精 密*
平等
便 利*
幸運
正直 ホ
大事
風流
無益
発明
繁栄
不足
ヒL賓
貝
公正
親切
多 大β
不快
無謀
容 詞)
審
詞 〉 名 詞,動 詞)
調和
沈黙
一147一
矛盾
永澤
済
◆[12>8](名
旺盛
詞,形
◆[12>11](名
固有
容 詞,動
詞 〉 形 容 詞,副 詞)
詞,形
容 詞,動
詞 〉 名 詞,形
容 詞,副
詞)
詞,形
容 詞,動
詞 〉 名 詞,形
容 詞,動
詞)
容 詞,動
詞 〉 名 詞,形
容 詞,副
詞,動
中立
◆緬 鑑 纈
墜1(名
邪魔
心配
迷惑
◆[12>15](名
感心
失礼
詞,形
貧乏
◆[13>3](名
一躍
畢寛
詞,副
詞,動
◆[13>6](名
結局
現在
詞,副
絶対
詞,動 詞 〉 名 詞,副
是非
通常
詞)
◆[13>刀(名
由来
詞,副
詞,動
詞)
◆ 夷醸 麟 載 題1睾(名
一緒
一転
◆[15>2](名
貴重
詞 〉 名 詞,動
詞,動
詞 〉 名 詞,副 詞,動
詞,動
詞)
詞,形
容 詞,副
飼 〉 形 容 詞)
詞,形
容 詞,副 詞,動
詞 〉 副 詞)
詞,形
容 詞,副 詞,動
詞 〉 名 詞,副 詞)
μ至 極
◆[15>6](名
永 久搬
現実
◆[15>刀(名
謹慎
◆[15>8](名
深刻
詞 〉 副 詞)
尋常
◆[15>3](名
鋭意
詞,副
詞)
親密
◆[15>11](名
安全
完全
◆[15>12](名
謬直 接
普通
詞,形
容 詞,副
詞,動
詞 〉 名 詞,動 詞)
詞,形
容 詞,副
詞,動
詞 〉 形 容 詞,副
熱心
明白
明瞭
詞)
愉快
詞,形
勤勉
容 詞,副
慎重
詞,動 詞 〉 名 詞,形
適当
複雑
容 詞,副
詞)
詞,形
容 詞,副
詞,動 詞 〉 名 詞,形
容 詞,動
詞)
安心
◆ξ面鐙 薯灘 嚢(名
詞,形 容 詞,副
一 定*共
通 謬*苦 労*贅
沢
詞,動 詞 〉 名 詞,形 容 詞,副
相当
独 立ホ
反 対*満
乱暴
一148一
詞,動
足
詞)
密接
無理
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
表4各
・
・
・
変 化パ ター ンに属す る語(翌 代を 基 準 に配 列)
以 下 は、 表3を 、 「
現 代 」 を 基 準 に 配 列 し直 した もの で あ る。
見 出 しの 網 掛 け は
、 変化 しな い パ タ ー ン を示 す 。
【付 表 】 の 付加 記 号 「#」「&」 「#&J「ホ」 を 以 下 に も付 した
。 語 の左 に 付 した 記 号 は近 代 、語 の右 に 付
した 記 号 は 現 代 につ い て の もの で あ る(記 号 の 意 味 は4.1節 を参 照 され た い)。
◆擁 聡恐動
薬(名
愛情
圧力
衛生
階級
技巧
記事
距離
近所
権勢
効果
事件
時刻
重量
主義
真意
真価
代金
体重
伝記
動機
文学
抱負
理論
論理
詞 く名詞 〕
安寧
威厳
外交
外国
犠牲
基礎
筋肉
敬意
効能
財産
資産
実業
主力
償金
真相
信念
端緒
団体
得策
特徴
面積
目的
◆[1く5](名
虚偽
最 上級
詞,形 容 詞 く 名 詞)
不平
未 開腋
隆盛
◆[1〈6](名
詞 く 名 詞,副
自分
人工
◆[1<7](名
詞
意義
企業
形式
根拠
周囲
総計
電報
予算
意志
規約
経歴
作戦
収益
装置
得失
予備
◆[1〈11](名
真実
必然
◆[1く12](名
親善
利益
◆[2〈5](形
肝要
#右 名
遺物
活気
基本
刑罰
材料
事務
商店
生命
兆候
範囲
問題
威力
貨物
疑問
経費
作品
社会
商品
勢力
調子
被害
勇気
陰謀
慣習
給料
経路
産物
習慣
食品
精力
通貨
表情
用事
運河
危機
境遇
欠陥
事業
秀才
所得
世界
通路
標本
輿論
運命
期限
興味
嫌疑
資金
住宅
資力
素養
抵当
負債
理屈
恩恵
恐怖
現象
思想
障害
待遇
服装
価値
教養
行為
実用
信号
探偵
報酬
感慨
規律
構造
慈悲
政治
秩序
保険
感覚
疑惑
交通
辞表
責任
著作
迷信
観念
傾向
娯楽
写真
設備
伝統
遊戯
主要
謬
著名
薄弱
厄介
有害
詞)
天性
く 名 詞,動
表面
詞)
意思
恐慌
結果
参考
収入
騒動
特許
理想
維新
教授
原因
自信
主観
損害
犯罪
印象
行政
見解
施設
需要
損失
費用
詞,形
容 詞,副
詞 く 名 詞)
容 詞,動
詞 く 名 詞)
便宜
詞,形
容 詞 く 名 詞,形
狭隆
劣ξ
阜
◆[2〈11](形
偉大
誠意
意向
快楽
規模
競馬
最終
嫉妬
証拠
製品
知識
内容
模範
緊要
残念
容 詞 く 名 詞,形
容 詞)
重要
容 詞,副
詞)
高価
一149一
永澤
済
◆[2<15](形
世重
尋常
容 詞 く 名 詞,形
◆鰯 睡(副
詞 く副詞)
◆[3〈8](副
飼 く 形 容 詞,副
一向
極力
依然
漸次
容 詞,副 詞,動
到底
詞)
俄然
◆[3〈11](副
謬案 外
存断然
詞 く 名 詞,形
適宜
容 詞,副 詞)
◆[3〈13】(副
一躍
畢寛
詞 く 名 詞,副
詞,動 詞)
◆[3〈15](副
鋭意
継至 極
詞 く 名 詞,形
容 詞,副
◆灘(名
暗黒
不満
下等謬
不明
◆[5〈6](名
零夢 中*
絶大謬
◆[5〈12](名
困難
特 有"*必
◆[6〈5](名
◆麟
一応
随意
平常
懸(名
一切
全体
絶無 論 腋
永 遠*間
接
無限
謬無 数 紬
◆[6〈13](名
現在
◆[6く15](名
永 久鞭 現 実
く 名 飼,副
平 気*有
詞,形
上等#不
安
不振*
容 詞,副
事実
実際
実地
従来
同時
当分
峨突然 腋
不意
秘密
本当
詞)
望謬
容 詞 く 名 詞,形
要
高等躍
詞)
容 詞 く 名 詞,形
不良
詞,副
最大
◆[6〈11](名
結局
容 詞
詞,形
僅少 鐸
詞,動 詞)
詞,形 容 詞 く名飼,形 容詞)
可能*危
険
苦痛
現金
無効
無能
名誉
面倒
詞,形
◆[5<11](名
最高
詞)
評 判*不
容 詞,副
詞)
審
詞 く 名 詞,形
容 詞)
謬
最 良級
飼,副 詞 く 名詞,副 詞)
一層瓶
一体
一般ホ 眼早速腋
全般
詞,副
偶然
詞,副
絶対
詞,副
値 接
多分灘
単独
詞 く 名 詞,形
最 近"全
容 詞,副
然&大
詞 く 名 詞,副
是非
当時
詞)
体
天 然*当
詞,動 詞)
通常
詞 く 名 詞,形
普通
容 詞,副
一150一
詞,動
詞)
然絶
変化パ ター ンか らみる近現代漢語の品詞用法
◆[7く1](名
機能
◆[7〈4](名
圧倒
飼,動
詞 く 名 詞)
詞,動
詞 く 動 詞)
飼,動
詞 く 名 詞,形
充満
◆[7<5](名
容 詞)
冒険
◆懸
灘 蟻(名
圧迫
安定
遺伝
移動
改革
会議*
改造
改善
関係
感激
居住
拒絶
決定
結婚
行動
合同
産出
混乱
充実
終了
処置
助長
制定
整理
増加
増減
尊重
体操
超過
中止
淘汰
到達
破壊
爆発
封鎖
疲労
変化
変更
融通
用意
詞,動 詞
案内
意味
解決
開通
完成
緊張
欠乏
誤解
散歩
収賄 孝
進化
成立
捜索
堕落
陳列
動揺
発育
普及
変動
溶解
く 名詞,動 詞)
維持
意識
印刷
運動
会合*
開催
回転
回復
感動
監督
警戒
経験
研究
検査
呼吸
故障
刺激
実現
出現
準備
進歩
信用
設計
接近
増進
増大
団結
短縮
締結
停止
道楽*
努力
発射
発生
復活
腐敗
包含
膨張
用心
予定
移住
運輸
解散
改良
完備
継承
減少
固定
実行
衝突
衰弱
設置
測量
断絶
適応
忍 耐寧
発達
憤慨
歩行
流通
◆[7〈12](名
拡大
乾燥
僚越
優勝
詞,動
縮小
詞 く 名 詞,形 容 詞,副 飼)
熟練
調和
沈黙
◆[7<13](名
詞,動
詞
く 名 詞,副
詞,動
詞,動
詞
く 名 詞,形
容 詞,副
位置
影響
開始
革新
緩和
計上
建設
孤立
死亡
消費
生活
絶望
組織
断定
徹底
熱中
発展
分解
保持
恋愛
発明
一致
一変
延長
改正
拡張
規定
継続
現存
顧慮
自慢
消滅
成功
設立
尊敬
鍛練
展開
廃止
破裂
分裂
保証
練習
応 接*
解説
確定
吸収
軽蔑
言明
混合
収穫
勝利
生産
選 挙零
存在
蓄積
統一
配置
反射
平均
滅亡
労働
移転
往復
開設
活動
教育
決行
広 告*
混同
集合
除外
製造
戦争
存続
注意
同情
敗北
販売
閉鎖
網羅
論説
繁栄
不足
矛盾
優秀
雄大
幼稚
詞)
由来
◆[7く15](名
詞,動
詞)
謹慎
◆[8〈5](形
温和
強大
容 詞,副
巨大
◆穰
醗
純然
容詞,副 詞 く 形容詞,副 飼)
漫然
難 嚢(形
漠然
詞 く 名 詞,形 容 飼)
善良
聡明
微弱
一151一
貧弱
永澤
済
(形 容 詞,副
◆[8〈11]
意外
急速
高尚
神聖
適切
優美
異様
強硬
広大
拶
随分
莫大
有力
詞 く 名 詞,形
容 詞,副
#可憐
過大
激烈
滑稽
浅薄
頻繁
β
立派
快活
強力
姑息
盛大
美麗
潔
容易
詞)
頑固
堅固
重大
大胆
豊富
冷淡
結構
残忍
大切
潔
平然
良好
◆[8<12](形
旺庸
容 詞,副
詞 く 名 詞,形
◆[8<15](形
深刻
親密
容 詞,副
熱心
詞 く 名 詞,形 容 詞,副 詞,動
明白
明瞭
愉快
◆[11<5](名
孤独
悲惨
詞,形
不潔
◆[11<6](名
極度
詞,形
極 端*
β
公然 鐸
迅 速*
単 純*
不幸
無用謬
飼,形
異常
厳 格*
幸福
正 確*
円滑 ‡
元気
公 平*
精 確*
得意だ
丁 寧*
無事
有 効*
不正
優勢
◆[11〈12](名
固有
完全
純粋
痛快
都
有益
急激
賢明
上手
痛切
勇敢
詞)
詞)
詞 く 名 詞,形 容 詞)
不利
無礼
野蛮
詞 く 名 詞,副
飼)
容 詞,副
円満
健康
巧 妙*
清 潔*
詞 く 名 詞,形
臆 病*
堅 実*
自然
特殊 ホ
不当
有用β
容 詞,副
確実ホ
厳 重*
質 素*
誠 実*
非常謬
平凡
冷 静*
精 巧*
特 別#
平易
謬右利*
詞)
噛 別#
厳 正*
自由
正 当躍
皮肉
平和
詞,形
容 詞,副
詞 く 名 詞,形 容 詞,副
詞)
詞,形
容 詞,副
詞 く 名 詞,形
詞,動
勤勉
◆1懸 舞警鞠姻 峯(名
邪魔
奇怪
謬
顕著
簡 易謬
#厳 密*
詳細
精 密*
平等
便 利*
簡 単*
幸運
正直串
大事
風流
無益
巨額#
公正
親切
多大謬
不快
無謀
中立
◆[11<15](名
安全
容 詞,副
緩慢
健全
十分
忠実
猛烈
正式
◆ 騨 藩 細 麹 糞(名
安価
容 詞,副
不便
容 詞,副
寛大
厳粛
周到
大変
明確
露骨
詞,形
心配
慎重
適当
容 詞,副
詞)
複雑
容 詞,副
詞 く 名 詞,形
容 詞,副 詞 〕
詞,形
容 詞,副
詞
容 詞,副
詞,副
詞,動
迷惑
)[12<15](名
く 名 詞,形
詞,動
詞)
安心
◆ 壌醜 嫁 醜嚢嚢(名
一緒
◆[15<12](名
感心
失礼
詞,動
詞)
詞,形
貧乏
容 詞,副
詞,動
詞 く 名 詞,形
詞.形
容 詞.副
詞.動
罰
◆ 鋸1!5鰻 謝窃欝(名
一 定*共
飼 く 名 詞,副
一転
通 β*苦
労*贅
沢
相当
乱暴
一152一
く 名 罰.形
独 立ホ
容 詞,副
詞)
容 調.副
調.動
反 対*満
足
詞1
密接
無理
変化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
まとめ
5.
以 上 、近 代 か ら現 代 に か け て の 漢 語 の 品 詞 用 法 の 変 化 の 実 態 を 、 「
変 化 パ タ ー ン 」 とい う
観 点 か ら整 理 した 。 本 稿 に 示 した 基 礎 的 な デ ー タ に 基 づ く 、 変 化 傾 向 の 分 析 の 詳 細 は 、 永
澤(2010)の
第3章
1.限
を 参 照 され た い。 こ こ に 、 そ の 分 析 結 果 の 要 点 の み を 示 す 。
られ た 調 査 範 囲 の 中 で200超
の 語(261語)に
品詞 用法 の 変化 が起 きて い る こ
と が 確 か め られ た 。 こ の 時 期 を 、 日本 語 に お け る 漢 語 の 転 換 期 の 一 とみ る こ とが
で き る。
2.品
詞 用 法 が 変 化 した 語 の う ち圧 倒 的 多 数(87.4%)が
、用 法 を 消失 す る方 向 に変
化 して い る 。1語 の 担 う品 詞 用 法 は 、 限 定 化 の 方 向 に あ っ た と い え る。
3.多
くの 場 合 、 特 定 の 品 詞 用 法 の 勢 力(出
現 頻 度)が
伸 張 し 、 そ れ との 間 に 意 味 的
乖 離 の あ る 品 詞 用 法 が 両 立 で き ず に 衰 退 した と推 定 され る 。 た と え ば 、 名 詞 用 法
を 消 失 した 「適 宜 」 「一 躍 」 「
鋭 意 」、形 容 詞 用 法 を 消 失 した 「優 勝 」 「冒 険 」 「秘 密 」
「断 然 」 「俄 然 」、 動 詞 用 法 を 消 失 した 「評 判 」 「深 刻 」 「自信 」 「困 難 」 「
利 益 」等
が 挙 げ られ る。 現 代 に 残 る 品 詞 用 法 は 、 消 失 した 用 法 に 比 して 、 漢 字 字 義 通 りの
意(漢
字 一 文 字 一 文 字 の 意 味 の 組 み 合 わ せ か ら表 出 され る 意 味 。 い わ ゆ る 文 字 通
りの 意 味)か
4.名
ら離 れ る 傾 向 に あ る22。
詞 用 法 を 消 失 し た 語 の 大 半(調 査 範 囲 中約9留1)が
、近代 に 〈
名 詞 一a>、 〈名 詞
一b>、 〈
形 容 詞 〉 の 用 法 を併 せ も ち 、そ の うち 〈
名 詞 一a>と
〈名 詞 一b>の 用 法 を
揃 っ て 失 っ た 。 現 代 に は 、 「一な 」 形 の 〈
形 容 詞 〉 用 法 が 残 る 。 そ の よ うな 、名 詞
用 法 の 大 量 消 失 と い う現 象 は 、 漢 語 が 、 品 詞 を 明 示 す る マ ー カ ー を 伴 わ ず に 日本
語 に 取 り込 まれ た 段 階 を脱 し、 和 語 の 接 辞 を 伴 い 、 日本 語 の 形 容 詞 と して 定 着 し
た こ とを 意 味 す る と い え る。 そ れ は 、 一 般 に借 用 語 に み られ る現 象 と類 似 す る。
5.4品
詞 の 理 論 上 の 組 み 合 わ せ1∼15の
うち 、 近 代 は 「2」「9」「10」「14」
、現 代 は
「4」「9」「10」「14」の 語 が 、 実 際 に は 存 在 しな い 。 近 代 と現 代 とで 共 通 す る の は
「9」「10」「14」の 語 が 存 在 しな い こ と で あ る 。 そ の こ と は 、 近 代 と 現 代 と を 問 わ
ず 、 動 詞 用 注 を もっ 溝 語 が 、 併 せ て名 詞 用 法 も も っ と い う傾 向 を 示 す 。
22た とえ ば
、 近 代 の 「深 刻 」 は 、 〈深 く刻 む〉 の意 で使 われ(「 帝 王 の 暴 虐 が 、頭 磯 に鯉
ら
れ 」 「道 徳 は人 の頭 拶 に 極 め て1麹
印 象 を與 へ て」)、漢 字 の 意 に 沿 っ て い る が 、 現 代 の
「
還刻 な 事 態 に 陥 る」の よ うな 用 法 に お い て は 、そ の よ うな 意 味 は表 れ な い(現 代 の 「深 刻 」
は 〈事 態 が 重 大 で 切 実 な様 子〉 を表 す)。 ま た近 代 の 「
優勝 」 は 〈
優 れ 勝 る〉 の意 で 使 わ れ
(「同 運 河 の 開 通 に よ り南 米 各 国 の 地 位 は如 何 に変 ず べ きか は 注 意 す べ き問 題 で あ るが 、 大
体 に 於 て倒 麹 ≧地 位 に進 む べ きは 南 米 中の 北 方 に位 す る 諸 国 で 」)、漢 字 の 意 に 沿 って い る が 、
現 代 の 「優 勝 」 は 、 そ の よ うな 意 を離 れ 、 「レー ス で優 勝Lた 」 の よ うに 、 〈
勝 負 事 で 最 上位
に な る こ と〉 を表 す 。
一153一
永澤
済
6.近
代 に は 、 形 容 詞 用 法 を もつ 語 は 名 詞 用 法 も併 せ て もつ(た
の 語 は そ の 限 りで な い)が
だ し、 「一然 」 の 形 態
、 現 代 に は そ の 傾 向 は 失 わ れ て い る。 そ れ に よ り、4
品 詞 の 理 論 上 の組 み 合 わ せ1∼15の
うち 、 形 容 詞 用 法 を 単 独 で も つ 「2」の 語 が 、
現 代 に 存 在 し 、 近 代 に は 存 在 し な い こ と が 説 明 され る 。 ま た 、 同 じ く1∼15の
ち 、特 に 「8」の 語(形
容 詞 は もっ が 名 詞 は もた な い)の 合 計 数 が 、近 代 か ら現 代
へ 至 っ て 飛 躍 的 に増 加 して い る(15 .4倍)こ
7.「
う
と も説 明 され る 。
理 論 上 は 存 在 す る が 、 実 際 に は 語 例 が み られ な い 変 化 パ ター ン 」 の 圧 倒 的 大 部
分 は 、 品 詞 用 法 を 「獲 得 」 す る変 化 パ ター ン で あ る。
8.品
詞 用 法 の 変 化 は 、 一 見 多 様 な変 化 パ タ ー ン を 示 す が 、 そ の 内 実 は 、 そ れ ほ ど複
雑 で は な い。 「動 詞 用 法 の 消 失 」 や 「
名 詞用 法の 消失 」とい った各 品詞 用 法の 消失
の 問 題 と して 、 そ れ ぞ れ 一 定 の 傾 向 を 見 出 せ る も の で あ る。
9.以
上 の こ と は 、 近 代 か ら現 代 に か け て 、 漢 語 が 、 品 詞 を め ぐ り形 態 ・意 味 の 両 面
で 変 化 した こ と を 示 して い る。 変 化 は 一 見 多 様 で あ る が 、 同 品 詞 あ る い は 同 形 態
を と る 語 の 内 部 で 、 共 通 の 傾 向 を 認 め る こ とが で き る。 す な わ ち 、 変 化 の 大 部 分
は 、 各 語 に お い て 個 々独 立 に 、 偶 発 的 に 起 き た の で は な く、 一 定 の 方 向 性 の も と
で 起 き た もの とみ る こ とが で き る。
参 考 文献
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上 禎 造1984『 漢 語 研 究 の 構 想 』pp.69-87に 再 録).
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一154一
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変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
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電 子 化 資料
朝 日 新 聞 社 サ イ ト 『asahi.com』(http:〃www.asahi.comノ).
国 立 国 語 研 究 所(編)『
太 陽 コ ー パ ス 』(博 文 館 新 社).
慶 応 義 塾 図 書 館 デ ジ タ ル ギ ャ ラ リ ー 『デ ジ タ ル で 読 む 福 澤 諭 吉 』
(http:〃project.lib.keio.ac.jp!dg」kul!fUkuzawa_tbl,php).
毎 日新 聞 社 サ イ ト 『毎 日jp』(httpY/mainichi.jp!).
一155一
永澤
済
Changes in Sino-Japanese
Word Class
from the Early Modern Period to the Present
NAGASAWA
Key Words: Sino-Japanese,
Itsuki
word class, change, Japanese
Sino-Japanese word classes have changed greatly from the Early Modern Period to
the Present.The phenomenonis well known,but there is little data available showing details
about the changes. This paper gives the data of 700 Sino-Japanese words and identifies
patterns in the changes. The author examined Sino-Japanese words based on which
combinationsof four word class usages (noun, adjective,adverb,and verb) were allowablein
the Early Modern Period, comparedto presentusages.The results are as follows:
I. Over 200 Sino-Japanesewords (even in the limited survey) have changed their word
classes.
2. Losses of certain word class usages (as noun/adjective/adverb/ verb) of words greatly
outnumbergains: the range of word classes of a word tends to decrease over time.
3. In many cases, the frequencyof a certain word class usage became high, and then other
word class usages diminishedbecause of a gap between their meanings.As a result, the
present meanings of Sino-Japanese words tend to be more distant from the literal
meaningof the Chinese characters,comparedto the meaningswhich they have lost.
4. 90 % of the words that have lost noun usages could be used in the form of zero-suffix,
its modifying form —no,and adjective form —na,but they have lost both the zero-suffix
and its modifying form —nousages.At present, only the adjective form —naremains. It
means that Sino-Japanesewords which were at first taken into Japanese as nouns with
no markers of word class have fixed into Japanese as adjectives with a Japanese suffix.
This phenomenonis similarto that of loan words.
5. The logically-possiblecombinations[adjective, verb], [adverb, verb], and [adjective,
adverb, verb] have never occurred on either the Early Modern Period or present: it
showsthe tendency that words having usageas verbs are also used as nouns.
6. The tendency in the Early Modern Period for words that can be used as adjectives to
also be usable as nouns has been lost in the present. Words in the [adjective,
adverb]-only group show a significantjump fromjust 5 examples in the Early Modern
Periodto 77 in the present; 15.4 times the Early ModernPeriod total.
7. Many of the combinationswhich were theoreticallypossiblebut did not often occur in
the Early Modern Period have come about due to words "gaining" usages, such as
[noun,adjective]-onlygroup pickingup a verbal usage andjoining the [noun,adjective,
verb]-onlygroup.
8. The above indicates that the word classes of Sino-Japanesewords have changed both
morphologicallyand semantically from the Early Modern Period to the present. The
changes seem to be diverse, but words which have the same word class usages or the
same forms show the same tendencies in common. That is, many of the changes
occurredneither independentlynor accidentally,but withgeneral tendencies.
(な が さわ ・い つ き 日本 学 術 振 興 会 特 別研 究員)
-156
-
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用法
【付 表 】 『太 陽 コー パ ス』に お ける用例 の 調 査 結 果 と品詞 判 定
※ 「『分 類語 彙袈』内番号 」とは、『分類籍 彙表』索引掲 載の全97.022語に付 した通 し番 号 を示す 。
一157一
永澤
済
一158一
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
一159一
永澤
済
一160一
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
一161一
永澤
済
一162一
変 化 バ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
一163一
永澤
済
一164一
変 化 パ ター ンか らみ る近 現 代 漢 語 の 品詞 用法
一165一
永澤
済
一166一
変 化 パ ター ンか らみ る 近現 代 漢 語 の 品 詞 用 法
一167一
永澤
済
一168一
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