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第2章 「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め及び
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
第 2章 「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め及び環境関連法
規」に関する情報収集
2.1 調 査 目 的
本 事 業 の 最 終 成 果 物 の 一 つ で あ る「 ガ イ ド ラ イ ン 」に つ い て は 、在 沖 米 軍 基 地 内
に お け る 環 境 問 題 に 対 す る 対 処 法 等 を 明 記 す る た め 、海 外 ・ 国 内 を 問 わ ず 米 軍 基 地
内 で 発 生 し た 環 境 問 題 に 対 す る 対 処 事 例 や 、基 地 に 関 す る 各 種 環 境 法 規 等 は 参 考 と
な る 。し か し な が ら 、そ れ ら の 情 報 の 取 り 扱 い に 際 し て は 、米 軍 駐 留 国 と 米 国 側 の
政 府 間 の 取 り 決 め 、そ れ ぞ れ の 国 家 に お け る 環 境 法 規 と い っ た バ ッ ク グ ラ ウ ン ド の
違 い に よ り 、同 じ 米 軍 基 地 内 の 環 境 問 題 で あ っ て も 、そ の 対 応 が 国 に よ っ て 異 な る
可 能 性 が あ る 点 に 留 意 す る 必 要 が あ る 。 そ の た め 、 本 章 で は 、 表 2-1 に 示 す 調 査
項 目 を バ ッ ク グ ラ ウ ン ド 情 報 と し て 、政 府 間 の 主 な 取 り 決 め 、合 意 及 び 環 境 法 規 に
ついて整理を行った。
表 2-1
本章における調査項目及びその目的
調査項目
調査目的(詳細)
米軍駐留国と米国間の米軍基地に
米軍駐留国と米国における主な取り決めや合意について、
係る主な政府間の主な取り決め
日本を中心に収集・整理し、日本及びその他米軍駐留国に
おける米軍基地内の環境問題対応の相違のバックグラウ
ンドを把握することを目的とする。
米軍駐留国における主な環境法規
米軍基地に関連する環境法規について、日本と米国を中心
に収集・整理し、米軍基地の環境問題に対する環境規制・
対応について把握すること目的とする。
2.1.1 米 軍 基 地 に 関 連 す る 米 軍 駐 留 国 と 米 国 間 の 政 府 間 の 主 な 取 り 決 め 等
ガ イ ド ラ イ ン 及 び カ ル テ 作 成 に 向 け 、日 本 及 び 米 国 政 府 間 、韓 国 と 米 国 政 府 間 並
び に ド イ ツ と NATO( 北 大 西 洋 条 約 機 構 )間 の 主 な 取 り 決 め や 合 意 に つ い て 情 報 収 集
を行った。
な お 、 情 報 収 集 に お い て は 、 同 じ 種 類 の 環 境 問 題 で も 、 政 治 的 取 り 決 め 、基 地 に
関 連 す る 環 境 法 規 が 異 な る と 、環 境 問 題 へ の 対 応 が 異 な る と 推 察 さ れ る 。こ の 差 を
踏 ま え 環 境 情 報 を 解 析 し 、在 沖 米 軍 基 地 に お け る 適 切 な 環 境 問 題 へ の 対 応( ガ イ ド
ライン、カルテの作成)ができるように留意した。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
環境問題の種類
バックグラウンド
環境問題への対応
在日米軍基地
日本―米国政府間
在日米軍基地
物質 A による環境問
政治的取り決め、環境法規
対応 A1
異なる対応
同じ環境問題
米国本国内米軍基地
米国本国
米国本国内米軍基地
物質 A による環境問
基地に関する環境法規
対応 A2
同じ環境問題
異なる対応
域外米軍基地
その他域外―米国政府間
域外米軍基地
物質 A による環境問
政治的取り決め、環境法規
対応 A3
注)「域外米軍基地」;ここでは、日本を除く米国本国以外の米軍基地を指す。
図 2-1
表 2-2
本章での整理内容の必要性
収集資料(米軍駐留国と米国間の米軍基地に係る政府間の主な取り決め)
米軍駐留国名 - 米国政府等
政府間の主な取り決め
日本-米国政府間
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に
基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する
協定(日米地位協定)
(1960 年(昭和 34 年)1 月 19 日)
1973 年日米合同委員会合意「環境に関する協力について」
日米合同委員会合意「合衆国の施設及び区域への立入許可手
続」
(1996 年 12 月)
沖 縄 に 関 す る 特 別 行 動 委 員 会 ( SACO ; Special Action
Committee on Okinawa)最終報告(1996 年(平成 8 年)12 月
2 日)
環境原則に関する共同発表
(2000 年 9 月 11 日)
共同文書「再編実施のための日米のロードマップ」の合意
(2006 年(平成 18 年)5 月 1 日)
沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画の公表
(2013 年(平成 25 年)4 月 5 日)
日米安全保障条約協議委員会共同発表「より力強い同盟と大きな責任の
共有に向けて」
(2013 年 10 月 3 日)
在日米軍施設・区域における環境の管理に係る枠組みに関する共同発表
(2013 年(平成 25 年)12 月 25 日)
日米地位協定に関わる環境管理の分野における協力についての日米共
同発表
(2014 年 10 月 20 日)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
米軍駐留国名 - 米国政府等
政府間の主な取り決め
韓国-米国政府間
アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4 条に基づく施設及
び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定(韓米地
位協定)
(1966 年 7 月 9 日署名、1967 年 2 月 9 日発効、2001 年 1 月 18 日改正)
アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4 条に基づく施設及
び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定の合意
議事録
(1966 年 7 月 9 日署名、2001 年 1 月 18 日改正)
アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4 条に基づく施設及
び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定の合意
議録に関する了解事項
(2001 年 1 月 18 日改正)
環境保護に関する特別了解覚書
(2001 年 1 月 18 日署名)
ドイツ-北大西洋
条約当事国(NATO)間
フィリピン-米国政府間
ドイツ連邦共和国に駐留する外国軍隊に関して北大西洋条約当事国の
地位に関する協定を補足する協定(ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定:
通称ボン補足協定)
(1959 年 8 月 3 日締結、1981 年 5 月 18 日改定、1993 年 3 月
18 日改定)
米比防衛相互強化協定
(2014 年 4 月 28 日)
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2.1.2 米 軍 駐 留 国 に お け る 主 な 環 境 関 連 法 規
各 国 に お け る 環 境 問 題 に 対 す る 考 え 方 を 整 理 す る た め に 、環 境 関 連 法 規 に つ い て
概 要 を 整 理 し 、 表 2-3 に 記 す 。
表 2-3
在米軍基地国名
日本
収集資料(米軍駐留国における主な環境関連法規)
適用
環境関連法規
米軍基地
沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用
の推進に関する特別措置法(2012)
米国
○
公衆衛生事業法(1944)
Public Health Service Act
○
○
○
水質汚染防止法(1972)
Clean Water Act
○
○
○
安全飲料水法(1974)
Safe Drinking Water Act
○
○
○
有害物質規制法(1976)
Toxic Substances Control Act
○
○
○
資源保護回復法(1976)
Resource Conservation and Recovery Act
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
改正・大気汚染防止法(1990)
Clean Air Act
1990年軍事基地整理縮小・閉鎖法(1990)
Defence Base Closure and Realignment Act of 1990
ドイツ
韓国
一般環境
○
日本環境管理基準(2012)※1
Japan Environmental Governing Standards
包括的環境対処補償責任法(1980)
Comprehensive Environmental Response, Compensation,
and Liability Act
スーパー・ファンド法修正・再授権法(1986)
Superfund Amendments and Reauthorization Act of 1986
域外
(米国本国以外)
米軍基地跡地
国防省指示書4715.07 国防環境修復計画(2013)※2
Department of Defence Instruction 4715.07 Defense
Environmental Restoration Program (DERP)
大統領令12114
環境に重大な影響を与える主要な活動(1979)
Exective Order 12114 Environmental effects abroad of
major federal actions
国防省通達4715.05-G海外環境基本指針文書(2007)
Department of Defence4715.05-GOVERSEAS
ENVIRONMENTAL BASELINE GUIDANCE
DOCUMENT(OEBGD)
国防総省指示書4715.08※3 域外の環境汚染修復(2013)
Department of Defence Instruction 4715.08
Remediation of Environmental Contamination Outside
the United States
国防総省指示書4715.05※4 域外施設の環境遵守(2013)
Department of Defence Instruction4715.05Environmental
Compliance at Installations Outside the United States
連邦土壌保全法(1998)
Gesetz zum Schutz vor schädlichen Bodenveränderungen
und zur Sanierung von Altlasten
ドイツ最終管理基準
Final governing standaeds Germany(GFGS)
韓国環境管理基準
Envionmental governing standards
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※1 日本環境管理基準(2012)から地方自治体の上乗せ排水基準が反映されている。
※2 国防総省指示書4715.7 環境修復計画(1996)「Environmental Restoration Program」を更新
※3 国防総省指示書4715.8 国防総省の域外活動に関する環境修復(1998)「Environmental Remediation for DoD
※4 国防総省指示書4715.5 域外施設における環境遵守管理(1996)「Management of Environmental Compliance
at Overseas Installations 」を更新
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○
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2.2 米 軍 基 地 に 関 連 す る 米 軍 駐 留 国 と 米 国 間 の 主 な 政 府 間 の 取 り 決 め 等
政 府 間 の 主 な 取 り 決 め に つ い て は 、 ガ イ ド ラ イ ン 作 成 に 資 す る よ う 、 図 2-2 に
示す観点から整理を行った。
【政府間の取り決めに係る整理の観点】
【平成26 年度成果物】
【ガイドラインに求められる要素】
・正式名称、背景及び目的等
米軍駐留国ごとに
イ.返還予定地及び返還跡地で発覚し
・環境問題に対する対応・手続き
異なる基地環境問
た環境問題への対処法について
・環境問題に対する各主体の責務・役割
題への対処の背景
ウ.米軍活動から派生する環境問題へ
の対処法について
・立入に関する規定
エ.返還予定及び返還跡地における環
境調査について
注)ガイドラインに求められる要素については、第 7 章に示す。
図 2-2
政府間の取り決めに係る整理の観点とガイドラインとの関係
2.2.1 日 本 -米 国 政 府 間
主なものについて以下に示す。
(1) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び
区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定
① 概要
本 協 定 は 、 通 称 「 日 米 地 位 協 定 」 と い い 1960 年 に 承 認 さ れ た 国 会 承 認 条 約 で
ある。日米両政府により在日米軍の法律上の立場と、基地の設置や使用に関す
る 原 則 を 定 め た も の で あ る 。 本 協 定 は 、 全 28 条 か ら な っ て い る 。
② 背景及び目的
本 協 定 は 、 表 2-4 に 示 す 1950 年 に 調 印 さ れ た 旧 日 米 安 全 保 障 条 約 の 第 三 条 、
及 び 在 日 米 軍 に よ る 施 設 ・ 区 域 の 使 用 を 認 め た 1960 年 に 調 印 さ れ た 日 米 安 全 保
障条約の第六条をうけて定められたものである。
本協定は米安全保障条約の目的達成のために日本国に駐留する米軍との円滑
な行動の確保、日米軍による日本国における施設・区域の使用と日本国におけ
る米軍の地位の規定を目的としたもので、日米安全保障体制にとって極めて重
要なものとされている。
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第2章
表 2-4
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
旧日米安全保障条約第三条及び日米安全保障条約第六条条文
旧日米安全保障条約
日米安全保障条約
第三条
第六条
締約国は、個別的に及び相互に協力し
日本国の安全に寄与し、並びに極東に
て、継続的かつ効果的な自助及び相互援
おける国際の平和及び安全の維持に寄与
助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれ
するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、
の能力を、憲法上の規定に従うことを条
空軍及び海軍が日本国において施設及び
件として維持し発展させる。
区域を使用することを許される。
前記の施設及び区域の使用並びに日本
国における合衆国軍隊の地位は、千九百
五十二年二月二十八日に東京で署名され
た日本国とアメリカ合衆国との間の安全
保障条約第三条に基く行政協定(改正を
含む。)に代わる別個の協定及び合意され
る他の取極により規律される。
③ 環境問題に対する対応・手続き
本協定の条文には、環境に係る条項は一切含まれていない。従って、直接、
環境問題に対する対応・手続きを読み取ることはできない。しかし、日米地位
協定の第4条には「現状回復」に関する条文があり、汚染浄化も「現状回復」
の一要素と見なすことは可能と思われる。第4条では、米国が日本に対して残
余価値の支払い義務を免除することと交換に、米国に対する不動産への原状回
復義務を免除する規定を結んでいる。このため、本協定では米軍基地内で発覚
した汚染に対して、米国側の具体的な対応については明記されていない。
日米地位協定(施設・区域の返還時の原状回復・補償)
第四条
合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当た
って、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回
復の代りに日本国に補償する義務を負わない。
2
日本国は、この協定の終了の際又はその前における施設及び区域の返還の際、当該施設及
び区域に加えられている改良又はそこに残される建物もしくはその他の工作物について、合
衆国にいかなる補償をする義務も負わない。
3
前記の規定は、合衆国政府が日本国政府との特別取極に基づいて行なう建設には適用しな
い。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
④ 各主体の責務・役割
本協定は、基本的に在日米軍の日本国内での法律上の立場及び、基地の設置
や使用に関する原則を定めている。特に、在日米軍に対し第十六条では、日本
国法令尊重の義務が明記されている。
日米地位協定(日本国法令の尊重)
第十六条
日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に
政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。
⑤ 立入に関する規定
本協定では、①米軍の施設内において米国は運営・協議・管理に「必要なす
べ て の 措 置 」 を 執 る こ と が で き る ( 排 他 的 使 用 権 )、 ② 日 本 は 施 設 ・ 区 域 へ の 米
軍の出入りの便を図るため、施設・区域の近傍の土地や領水において必要な措
置 を と る 、 ③ 施 設 ・ 区 域 で 米 軍 が 作 業 を 行 う 際 は 、「 公 共 の 安 全 に 妥 当 な 考 慮 」
を払う、ということを規定している。この第三条第一項に示された権利は「三
条管理権」または「排他的使用権」などと呼ばれており、施設・区域内におけ
る米軍の活動は日本の法令の規制を受けない。したがって、基地内の日本人の
立ち入りには米軍の許可が必要となる。
日米地位協定(施設・区域に関する措置)
第三条
合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要
なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理の
ための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があったとき
は、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれら
の近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。
合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を
執ることができる。
2
合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、
通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によっては執らないことに同意する。合衆国
が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての
問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本国政府は、合衆国軍隊
が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理
的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする.
3
合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払っ
て行なわなければならない。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(2) 1973 年日米合同委員会合意「環境に関する協力について」
① 概要
この合意文書は長く非公開とされていたが、自民党の河野太郎衆院議員が公表を要求
し、外務省が米側と調整した結果、30 年を経て 2003 年 1 月 23 日に公表された。非公開
となった経緯については不明。
文書は、在日米軍施設内で環境汚染が発生した場合の調査や立入りの手続きについて
規定している。
② 背景及び目的
文書では、環境問題に対する意識が高まりつつある中、日米政府の共同責任の認識、
提供施設・区域の汚染への適切な注意と解決が両政府の利益となることが謳われている。
③ 環境問題に対する対応・手続き
同合意では、米軍基地から派生する環境汚染に対して、県、市町村が米軍現地司令官
に対して調査を要請することができるとしている。
1973 年日米合同委員会合意「環境に関する協力について」
(a)-(1)
米軍施設・区域に源を発する水、油、化学物質乃至その他の汚染が発生し、
よって地域社会の福祉に影響を与えていると信ずる合理的理由のある場合、県又は市
町村若しくはその双方は、地元の防衛施設局との協力の下、米軍現地司令官に対して
調査を要請することができる。調査の結果は、可能な限り速やかに県又は市町村若し
くはその双方に通知されることとする。
④ 各主体の責務・役割
県市町村が合意に基づいて環境調査を要望する場合において、米軍における環境基準
が日本の国内法による基準と異なる場合があり得るため、環境調査を実施しその結果を
作成する際に適用する環境基準の内容を、米国当局と調整の上決めることを定めている。
また、在日米軍の役割についても明文化している。
1973 年日米合同委員会合意「環境に関する協力について」
(c)
県、市町村乃至日本国政府が、(a)-(2)及び(b)に定められた直接の視察を行うこ
とを要望する場合には、適切な米国当局と会合し、視察を実行し結果を決定するに際
して適用可能で、かつ、利用される環境基準について見直しを行うこととする。
(d)
在日米軍は、(a)-(1)に述べられた調査との関連で、または(a)-(2)乃至(b)に述べられ
た視察との関連で在日米軍が必要と考えるすべての措置をとり、日本 国政府に対してとら
れた措置について通報する。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
⑤ 立入に関する規定
県、市町村及び国の職員が基地内に立入、土壌等を採取する場合の申請の経路、手続
きが定められている。
1973 年日米合同委員会合意「環境に関する協力について」
(a)-(2) 県又は市町村若しくはその双方が、地元の防衛施設局との協力の下、問題と
なった場所を直接視察し、または、水又は土壌若しくはその双方、あるいは煤煙、
煙、常設施設・設備の燃料のサンプルを当該場所より入手することが必要と考える
場合には、米軍現地司令官がコンタクト・ポイントとなり、当該司令官はそのよう
な視察やサンプリング入手を許可することができる。
(b) 日本国政府が、問題となった汚染場所を直接視察し、または、水又は土壌若しく
はその双方、あるいは煤煙、煙、常設施設・設備の燃料のサンプルを当該場所から
入手することが必要と考える場合には、そのような視察及びサンプル入手の実行の
方法及び手続きについては、日米合同委員会の経路を通じて両政府の適切な当局で
取り扱われる。県又は市町村若しくはその双方は、合同委員会の同意があれば、こ
のような視察に参加することができる。
(3) 日米合同委員会合意「合衆国の施設及び区域への立入許可手続」
① 概要
1996 年 12 月の日米合同委員会合意によって、米軍施設区域への公的な立入の許可申
請のための経路及び手続きを具体的に定めたもの。この手続きにおいて「公的な立入」
とは、日本の公的機関構成員の視察、合衆国軍隊の構成員との協議、公務執行を目的と
する立入をいう。また、米軍の招待や別段の承認がある場合はこの手続きは不要として
いる。
日米合同委員会合意「合衆国の施設及び区域への立入許可手続」
二(a)
以下においては、合衆国の施設及び区域への公的な立入の許可申請のため
の経路及び手続きを定める。
(b)
この手続きにおいて「公的な立入」とは、合衆国の施設及び区域の案内を
伴う視察、合衆国軍隊の構成員との協議、及び公務遂行を目的とする日本国の公的
機関の構成員による合衆国の施設及び区域への立入を含む。
(c)
この手続きは、合衆国軍隊の招待により、又は別段の相互の承認により行
われる立入には適用しない。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
② 背景及び目的
同手続を定めた文書の冒頭に目的が記載されている。まず、日米地位協定の第三条(施
設・区域内の合衆国の管理権)で規定される措置の範囲内において、米軍の活動を妨げ
ない限りにおいて立入を許可するとされている。
日米合同委員会合意「合衆国の施設及び区域への立入許可手続」
一目的
(a)
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づき、
合衆国は、その陸軍、空軍および海軍が日本国において施設及び区域を使用するこ
とを許される。これらの施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地
位は、地位協定という略称で知られる別個の協定により規律される。地位協定第三
条に基づき、合衆国は、日本国政府により提供された施設及び区域への出入りを管
理するために必要なすべての措置をとることができる。
(b)
日本国における合衆国軍隊(以下「在日合衆国軍隊」という。)は、地域社会
との友好関係を維持する必要性を認識し、立入が、軍の運用を妨げることなく、部
隊防護を危うくすることなく、かつ合衆国の施設及び区域の運営を妨げることなく
行われる限りにおいて、立入申請に対してすべての妥当な考慮を払う。
③ 立入に関する規定
県市町村の立入は、原則として県市町村が現地米軍司令官宛に直接立入申請を立入日
の十四日前までに行うこととされているが、合同委員会事務局又は地方防衛局が適当と
判断する場合は、合同委員会事務局又は地方防衛局を通じて申請することができる。ま
た、地方公共団体の職員等が即時の立入を必要とする場合等、例外規定が設けられてお
り、短期間の事前通知が認められている。
日米合同委員会合意「合衆国の施設及び区域への立入許可手続」
三
手続
(a)
合衆国の施設及び区域への公的な立入を希望する日本国の国民(団体の場合
は、二十名以下に限定する。)は、申請した立入日の遅くとも十四日前に、この手続
きに付属する申請様式を用いて(b)から(d)までに定める経路のうち適当なも
のを通じて許可を申請する。その構成員が二以上の分類に該当する団体による立入
の許可申請は、(b)から(d)までに定める分類であって当該団体の構成員に適用
があるもののうちその番号(ⅰからⅲ)の最も小さいものに係る手続に従って行う。
(b)
分類ⅰの立入のための申請は、合同委員会事務局を通じて行う。この分類には
以下の者が該当する。
(1)国会議員
(2)日本国政府の中央機関の職員(自衛官を除く。)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
日米合同委員会合意「合衆国の施設及び区域への立入許可手続」
三
手続(続き)
(c) 分類ⅱの立入のための申請は、防衛施設庁を通じて在日合衆国軍隊指令部に対
して行う。この分類には以下の者が該当する。
(1)立入を予定する施設及び区域が所在する都道府県以外にある地方議会の議員
(2)立入を予定する施設及び区域が所在する都道府県以外にある地方公共団体の職員
(d) 分類ⅲの立入のための申請は、立入を予定する施設及び区域を管理する合衆国
の軍人に対して直接行う。この分類には、(b)及び(c)に掲げる以外の者が該当
し、以下の者を含む。
(1)自衛官
(2)立入を予定する施設及び区域が所在する都道府県内にある地方議会の議員及び地
方公共団体の職員
四 例外
(a) 申請を遅くとも十四日前に通知すること又は団体の規模を二十名以下に限定す
ることについての例外は、合同委員会の日本国側代表又は防衛施設庁に所属する合同
委員会の構成員が合同委員会の合衆国側代表に対し、例外的取扱いの要請を行う場合
に限り認める。
(b) 分類ⅲの立入のための申請は、合同委員会の日本国側事務局若しくは防衛施設
庁が適当と判断する場合、又は合同委員会の合衆国側事務局が合同委員会の日本国側
事務局に対して例外的取扱の要請を行う場合には、分類ⅰ又は分類ⅱの経路を通じて
行うことができる。
(c)
国会議員、日本国政府の職員、地方議会の議員又は地方公共団体の職員が、公
務遂行のため合衆国の施設及び区域への事前通知により行う場合、在日合衆国軍 隊
は、立入が軍の運用を妨げることなく、部隊防護を危うくすることなく、かつ合衆国
の施設及び区域の運営を妨げることなく行われる限りにおいて、当該申請に対してす
べての妥当な考慮を払う。
五 申請に対する回答
在日合衆国軍隊は、四に基づき例外的取扱いがなされる場合を除き、立入日の遅くと
も三日前に、すべての申請に対する回答(許可又は不許可)を通知する。
六
立入者 に同行しよ うとする報 道関係者に 係る申請
立入者に同行しようとする報
道関係者に係る申請は、別途、ニュー・サンノー米軍センター内の在日合衆国軍隊報
道部(電話及びFAXの番号は、いずれも〇三-三四四〇-六〇一〇)に直接行う。
七
その他の事項
この手続の実施に係る事項は、防衛施設庁と在日合衆国軍隊司令部
との間、又は合同委員会事務局の間で協議する。以上に定める手続の変更又は修正は、
承認のため合同委員会に提出する。
-14-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(4) 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告
① 概要
平 成 8 年 12 月 2 日 に 発 表 さ れ た 本 最 終 報 告 は 、 土 地 の 返 還 、 訓 練 の 改 善 、 騒
音 の 軽 減 及 び 地 位 協 定 の 運 用 改 善 か ら な っ て い る 。平 成 24 年 3 月 1 日 現 在 の SACO
最 終 報 告 の 進 捗 状 況 に つ い て 表 2-5 に 示 す 。 土 地 の 返 還 に つ い て は 、 安 波 訓 練
場、ギンバル訓練場、楚辺通信所、読谷補助飛行場、瀬名波通信施設の返還が
実現、残る事案についても地元の了解が得られるなど進捗しており、土地の返
還以外の案件についても、そのほとんどが実現している。
具体的に取りまとめられた、4 事案の概要について以下に示す。
【土地の返還】
普 天 間 飛 行 場 等 11 施 設・区 域 5,000ha の 返 還 に つ い て 最 終 報 告 が な さ れ た 。
返 還 施 設 に つ い て は 図 2-3 に 示 す 。
【訓練の改善】
県 道 104 号 線 越 え 実 弾 砲 兵 射 撃 訓 練 、 パ ラ シ ュ ー ト 降 下 訓 練 、 公 道 に お け る
行軍について改善の指示が出された。
【騒音の軽減】
嘉手納飛行場及び普天間飛行場において航空騒音の規制措置について最終報
告がなされた。
【地位協定の運用改善】
任意自動車保険への加入、損害賠償請求手続の改善などの要求。
表 2-5
(1)SACO 最 終 報 告 の 進 捗 状 況 ( 平 成 24 年 3 月 1 日 現 在 )
施設名(事案名)
安波(あは)訓練場
ギンバル訓練場
返還済みの施設 楚辺(そべ)通信所
読谷(よみたん)補助飛行場
土
瀬名波(せなは)通信施設
地
の
返
還
引き続き返還の
実現に取り組ん 北部訓練場
でいる施設
返還面積
全面
全面
全面
全面
大部分
過半数
普天間飛行場
米軍再編事案と キャンプ桑江
して返還される
こととされた施 牧港(まきみなと)補給地区
那覇港湾施設
設
住宅統合キャンプ瑞慶覧(ずけらん)
-15-
全面→全面
大部分→全面
部分→全面
全面→全面
部分→全面
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
表 2-5
(2)SACO 最終報告の進捗状況(平成 24 年 3 月 1 日現在)
事項
パラシュート降下訓練
実施済みのもの
騒音軽減
イニシア
ティブの
実施
進捗状況
県道104号線越え実弾砲兵射撃訓練
訓練及び
運用の方
法の調整
引き続き騒音軽
減ための措置と
して取り組んで
いるもの
米軍再編事案と
して取り組んで
いいるもの
平成9年度、本土の5演習場に移転
平成12年7月以降、伊江島補助飛行場において移転訓練を実施
嘉手納(かでな)飛行場における遮音壁の設置 平成12年7月、提供
平成20年9月、洗機施設提供
平成21年2月、海軍駐機場の移転について日米合同委員会合意
嘉手納飛行場における海軍駐機場の移転 平成22年10月、
敷地造成、駐機場・誘導路等の建設の実施について日米合同委員会合意
平成23年4月、
駐車場及びユーティリティの建設の実施について日米合同委員会合意
平成18年5月、「再編の実施のための日米ロードマップ」において、KC130飛行隊は、司令部、整備支援施設及び家族支援施設とともに、岩国
KC-130航空機の移駐
飛行場を拠点とし、航空機は、訓練及び運用のため、海上自衛隊鹿屋基
地及びグアムに定期的にローテーションで展開と記載
出典)駐留軍用地跡地の利用、内閣府 HP
図 2-3
SACO 最終報告等における返還合意等された米軍施設
-16-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
② 背景及び目的
沖 縄 に は 、平 成 23 年 1 月 現 在 、33 施 設 、約 229km²の 在 日 米 軍 専 用 施 設 が 所 在
し て い る 。 こ れ は 面 積 に し て 、 全 国 の 米 軍 専 用 施 設 ・ 区 域 面 積 の 約 74% に 相 当
し 、 県 土 面 積 の 約 10% 、 沖 縄 本 島 の 約 18% を 占 め る 状 況 と な っ て い る 。
平成 7 年に起きた不幸な事件や、沖縄県知事の駐留軍用地特措法に基づく署
名・押印の拒否などを契機として、全国的に沖縄に関する諸問題に対して世論
の関心が高まった。そこで政府は、沖縄県民の負担を可能な限り軽減し、国民
全体で分かち合うべきであるとの考えの下、沖縄県の将来発展のため、在日米
軍施設・区域の整理・統合・縮小に向けて一層の努力を払うとともに、振興策
についても全力で取り組むこととし、沖縄県に所在する在日米軍施設・区域に
関わる諸課題を協議する目的で、同年、国と沖縄県との間に「沖縄米軍基地問
題 協 議 会 」 を 、 ま た 、 日 米 間 に 「 沖 縄 に 関 す る 特 別 行 動 委 員 会 」( SACO) を 設
置した。
そ の 後 、 約 1 年 を か け て 集 中 的 な 検 討 が 行 わ れ 、 平 成 8 年 、 い わ ゆ る SACO
最終報告が取りまとめられた。
出典)防衛省・自衛隊 HP
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/okinawa/saco_final/keii.html
図 2-4
沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数及び面積の推移
-17-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
③ 各主体の責務・役割
日米両政府が、沖縄県民の負担軽減の責務をもっている。
④ 立入に関する規定
地 位 協 定 の 運 用 の 改 善 と し て 、「 米 軍 の 施 設 及 び 区 域 へ の 立 入 」に 関 す る 項 目
が あ り 、平 成 8 年 12 月 2 日 に 日 米 合 同 委 員 会 に よ り 発 表 さ れ た 米 軍 の 施 設 及 び
区域への立入に関する新しい手続を実施することとなっている。
(5) 環境原則に関する共同発表
① 概要
平成 12 年 9 月に日米安全保障協議委員会において発出された、「環境原則に関する共
同発表」は、在日米軍施設・区域に関する環境問題についての情報交換や施設・区域へ
の適切なアクセスの提供等を謳っている。環境保護及び安全のための在日米軍による取
り組みは、日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成
される JEGS に従って行われる旨が確認されている。
② 背景及び目的
日本国政府及び米国政府は、環境保護の重要性が高まっていることを認識する。この
認識には、日米安保条約及びその関連取極に基づき合衆国軍隊が使用を許される施設及
び区域(以下「施設及び区域」)並びに施設及び区域に隣接する地域社会における汚染の
防止が含まれる。日米両政府の共通の目的は、施設及び区域に隣接する地域住民並びに
在日米軍関係者及びその家族の健康及び安全を確保することである。
③ 環境問題に対する対応・手続き
管理基準
環境保護及び安全のための在日米軍による取り組みは、日米の関連法令のうちより厳
しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成される日本環境管理基準(以下「JEGS」)
に従って行われる。その結果、在日米軍の環境基準は、一般的に、日本の関連法令上の
基準を満たし又は上回るものとなる。日本国政府及び米国政府は、JEGS を見直し、2 年
ごとに更新するための協力を強化する。米国政府は、関連法令に適合して、日本におけ
る環境を保護するよう常に努力を継続する。
-18-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
環境汚染への対応
日本国政府と米国政府は、施設及び区域並びに施設及び区域に隣接する地域社会にお
ける環境汚染によるあらゆる危険について協議する。米国政府は、在日米軍を原因とし、
人の健康への影響が明らかになっている、さし迫った、実質的脅威となる汚染について
は、いかなるものでも浄化に直ちに取り組むとの政策を再確認する。日本国政府は、関
連法令に従い、施設及び区域の外側にある発生源による重大な汚染に適切に対処するた
め可能なすべての措置をとる。
環境に関する協議
合同委員会の環境分科委員会その他の関連分科委員会は、日本における施設及び区域
に関連した環境問題並びに施設及び区域に隣接する地域社会に関連した環境問題につい
て協議するために定期的に開催される。特定の環境問題を協議するため、必要に応じ作
業部会が設置される。
④ 立入に関する手続き
情報交換及び立入
日本国政府及び米国政府は、合同委員会の枠組みを通じ、日本国民並びに在日米軍関
係者及びその家族の健康に影響を与え得る事項に関する適切な情報の提供のために十分
に協力する。さらに日本国政府及び米国政府は、合同委員会で定められた手続に従い、
施設及び区域への適切なアクセスを提供する。これは、共同環境調査及びモニタリング
を目的とするアクセスを含む。
-19-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(6) 共同文書「再編実施のための日米のロードマップ」の合意
① 概要
本 ロ ー ド マ ッ プ は 、 2006( 平 成 18) 年 5 月 1 日 、 在 日 米 軍 と 自 衛 隊 の 再 編 計
画のため日米両国政府により公表された。
本 ロ ー ド マ ッ プ の 特 徴 は 、在 日 米 軍 だ け で な く 自 衛 隊 の 基 地 ・ 部 隊 も 再 編 し 、
自衛隊と米軍の連携の強化が試みられている点である。
本 ロ ー ド マ ッ プ の 概 要 を 図 2-5 に 示 す 。具 体 的 な 再 編 計 画 と し て 、
「抑止力の
維持」が再編の基本方針とされたこともあり、米軍戦闘部隊の国外移転は選択
肢から除外されたものの、それに代わる負担軽減策として、海兵隊司令部や兵
站 部 隊 約 8,000 人 の グ ア ム 移 転 や 、 沖 縄 県 で は 嘉 手 納 飛 行 場 以 南 の 基 地 の 大 半
が、神奈川県では相模補給廠とキャンプ座間の一部が返還されることとなって
いる。
資料)
「在日米軍と自衛隊の再編計画―「再編実施のための日米のロードマップ」の概要と論点―」
(外
交防衛課 福田毅、平成 18 年 5 月 29 日)
出典)「防衛施設庁史」(防衛庁、平成 19 年)
図 2-5
米軍再編の概要
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
② 背景及び目的
米国は、冷戦終了後の安全保障環境の変化に適切に対処するためにグローバ
ル な 軍 事 態 勢 の 見 直 し を 進 め て い た こ と を 背 景 と し て 、2002( 平 成 14)年 12 月
の 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 ( 以 下 「 2+ 2」) の 共 同 発 表 に お い て 、 新 た な 安 全 保
障環境における日米両国の防衛態勢を見直す必要性を踏まえ、両国の役割・任
務・能力及び兵力構成といった問題を議論することについて言及した。
平 成 17 年 2 月 の 「 2+ 2」 に お い て 、 そ れ ま で の 日 米 協 議 を 踏 ま え 、 第 1 段 階
と し て「 共 通 戦 略 目 標 」が 確 認 さ れ 、第 2 段 階 と し て「 自 衛 隊 及 び 米 軍 の 役 割 ・
任務・能力」について検討が継続され、さらに第 3 段階として「在日米軍の抑
止力を維持しつつ沖縄を含む地元の負担を軽減するとの観点から、在日米軍の
兵力構成見直しに関する協議」が強化されることで一致した。
そ し て 、こ れ ま で の 検 討 を と り ま と め た も の が 平 成 17 年 10 月 29 日 の「 2+ 2」
に お い て 、「 日 米 同 盟 : 未 来 の た め の 変 革 と 再 編 ( 共 同 文 書 )」 と し て 承 認 さ れ
た。この「共同文書」は、在日米軍の兵力態勢の再編(米軍再編)に関し、個
別 の 施 設 ・ 区 域 に 係 る 勧 告 が な さ れ 、 具 体 的 な 実 施 日 程 を 含 め た 計 画 を 平 成 18
年 3 月までに作成するよう事務当局へ指示することなどを内容とするものであ
った。
こ の 「 共 同 文 書 」 を 踏 ま え 、 日 米 間 で は 事 務 レ ベ ル 協 議 の ほ か 、 平 成 19 年 1
月 と 平 成 19 年 4 月 の 2 度 に わ た り 日 米 防 衛 首 脳 会 談 が 行 わ れ 、平 成 19 年 5 月 1
日 の 「 2+ 2」 に お い て 、 本 ロ ー ド マ ッ プ が 示 さ れ る こ と と な っ た 。
これにより、米軍再編は実施段階に移行したこととなり、防衛省・防衛施設
庁が一体となってその実現に取り組む体制となった。また、米軍再編を着実に
進 め て い く た め に 、 平 成 19 年 5 月 30 日 、「 駐 留 軍 等 の 再 編 の 円 滑 な 実 施 に 関 す
る 特 別 措 置 法 ( 米 軍 再 編 特 措 法 )」( 平 成 19 年 法 律 第 67 号 ) が 公 布 さ れ た 。
資料)
「在日米軍と自衛隊の再編計画―「再編実施のための日米のロードマップ」の概要と論点―」
(外
交防衛課 福田毅、平成 18 年 5 月 29 日)
③ 各主体の責務・役割
本ロードマップでは、費用についてそれぞれの役割の分担がされており、計
画実施における施設設備に要する建設費その他の費用は、明示されない限り日
本国政府が負担することとなっている。
また米国政府は、これらの案の実施により生ずる運用上の費用を負担するこ
ととなっている。両政府は、再編に関連する費用を地元の負担を軽減しつつ抑
止 力 を 維 持 す る と い う 、平 成 17 年 10 月 29 日 の 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 文 書 に
おける誓約に従って負担することとなっている。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(7) 沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画
① 概要
本 統 合 計 画 は 、 平 成 18 年 5 月 1 日 の 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 (SCC)文 書 「 再
編 の 実 施 の た め の 日 米 ロ ー ド マ ッ プ 」( 再 編 の ロ ー ド マ ッ プ ) に 則 っ て 平 成 25
年 4 月に作成された。
本統合計画は、日米両政府が再編実現のため、沖縄に残る施設・区域に関し
て 共 同 で 作 成 し た 。 本 計 画 に お け る 土 地 の 返 還 の 概 要 は 、 図 2-6 に 示 す と お り
となっている。
米軍施設の返還は以下の 3 つの区分で計画を進めていくとされている。
Ⅰ 必要な手続の完了後に速やかに返還可能となる区域
Ⅱ 沖縄において代替施設が提供され次第、返還可能となる区域
Ⅲ 米 海 兵 隊 の 兵 力 が 沖 縄 か ら 日 本 国 外 の 場 所 に 移 転 す る に 伴 い 、返 還 可 能 と
なる区域
出典)防衛省・自衛隊 HP
図 2-6
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/okinawa.html
統合計画における嘉手納飛行場以南の土地返還(概要図)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
② 背景及び目的
本 統 合 計 画 は 、2005 年 10 月 29 日 の 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会( SCC)文 書「 日
米 同 盟 : 未 来 の た め の 変 革 と 再 編 」 で 提 示 さ れ た 、【 安 全 保 障 同 盟 に 対 す る 日 本
及び米国における国民一般の支持が、日本の施設・区域における米軍の持続的
な プ レ ゼ ン ス に 寄 与 す る も の で 、こ の よ う な 支 持 を 強 化 す る こ と が 重 要 で あ る 】
と認識する日米両政府による重要な取り組みの一つである。
ま た 、 2006 年 5 月 1 日 の SCC 文 書 「 再 編 の 実 施 の た め の 日 米 ロ ー ド マ ッ プ 」
(再編のロードマップ)にあるとおり、再編の実施により、同盟関係にとって
死活的に重要な在日米軍の存在の確保、抑止力の維持、地元への米軍の影響を
軽減、という考え方から日米両政府により再編実現のため本統合計画が作成さ
れた。
本統合計画は、沖縄に残る施設・区域を対象に作成されている。
③ 各主体の責務・役割
本統合計画では、日米両政府は、再編を着実に実施するとの誓約を再確認し
ている。
米国政府は、対象となっている米海兵隊の兵力が沖縄から移転し、また、沖
縄の中で移転を行う部隊等の施設が使用可能となるに伴って、土地を返還する
ことに引き続き誓約をしている。また、日本国政府は、残留する米海兵隊の部
隊のために必要な住宅を含め、返還対象となる施設に所在し、沖縄に残留する
部隊が必要とする全ての機能及び能力を米国政府と調整しつつ移設する責任を
負っている。
-23-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(8) 在日米軍施設・区域における環境の管理に係る枠組みに関する共同発表
① 概要
平 成 25 年 12 月 25 日 、日 米 両 政 府 は 日 米 地 位 協 定 を 環 境 面 で 補 足 す る 政 府 間
協定を含む環境管理に係る枠組みの作成に向けた協議の立ち上げに合意し「在
日米軍施設・区域における環境の管理に係る枠組みに関する共同発表」を行っ
た 。 平 成 26 年 10 月 現 在 、 日 米 地 位 協 定 の 環 境 補 足 協 定 を 含 む 環 境 管 理 に 係 る
枠組み交渉を 9 回行っている。
日米両政府は、次のことに基づいて協議を行っている。
Ⅰ. 「環境原則に関する共同発表」を実施することに対する継続的な誓約
Ⅱ. 在日米軍による高度な環境基準の適用
Ⅲ . 施 設・区 域 に 対 す る 接 受 国 に よ る 合 理 的 な 立 入 り の た め の 統 一 的 な 手 続 の 作 成
Ⅳ . 米 国 政 府 と 緊 密 に 協 議 し て 、在 日 米 軍 に よ る 環 境 に 配 慮 し た 事 業 を 支 援 す る た
めの及び地域社会と在日米軍との間の肯定的な関係を強化するための措置を
とることに対する日本国政府による誓約
② 背景及び目的
日本国政府及び米国政府は、合同委員会の環境分科委員会その他の関連分科
委 員 会 で の 緊 密 な 協 力 や 、 2000 年 に 発 表 さ れ た 「 環 境 原 則 に 関 す る 共 同 発 表 」
の実施を含む環境に関する取組を行っている。
日米両政府は、このような環境に関する二国間の取組に留意し、在日米軍に
よる環境に配慮した活動の重要性を認識するとともに、地域社会と在日米軍と
の間の肯定的な関係の強化を行うことにより、この分野における二国間の協力
を 一 層 強 化 す る こ と の 重 要 性 を 互 い に 理 解 し た 。 そ し て 、 2013 年 の 「 沖 縄 に お
ける在日米軍施設・区域に関する統合計画」において特定したものを含む、返
還を予定している在日米軍施設・区域に関し、日本国政府は、環境の回復のた
めの責任を確認した。
この合意に基づき、日米軍施設・区域に関連する環境の管理に一層取り組む
ことを目的とした枠組みの作成に向けた二国間の協議を行っている。この枠組
みは日米地位協定を補足する二国間の国際約束及びその他の文書を含むことと
なっている。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
③ 環境問題に対する対応・手続き
本枠組みでは、環境基準の設定及び立入りの項目で環境問題への対応が明記
されている。環境基準の適用においては、在日米軍は米国の政策に従い、米国
の基準、一般的に適用され執行される日本国の基準又は適用可能な国際約束の
基 準 の う ち 、 よ り 厳 し い も の か ら 導 き 出 し た 「 日 本 環 境 管 理 基 準 」( JEGS) を 適
用 す る こ と と な っ て い る 。 ま た 、 JEGS と の 整 合 性 の 確 保 の た め 、 米 国 政 府 に よ
る定期的な現地施設の見直し、及び合同委員会に対するその報告を送付する義
務付けのための枠組み作成がされる。
米軍施設・区域への立ち入りについては、環境事故後の立入りの許可や、土
地返還に関連する調査のための立入りの許可を求める枠組みの作成がされる。
2.在日米軍による高度な環境基準の適用
A. 在日米軍は米国の政策に従い、米国の基準、一般的に適用され執行される日本国の基準又は
適用可能な国際約束の基準のうち、より厳しいものから導き出した「日本環境管理基準」
(JEGS)
を適用する。
B. JEGS との整合性を確保するための現地施設における手続きの米国政府による定期的な見直し
及び合同委員会に対する報告の送付。
3.施設・区域に対する傍受国による合理的な立入りのための統一的な手続きの作成
A. 現に発生した環境事故(漏出)後の立入り。
B. 2013 年 10 月 3 日付けの安全保障協議委員会(SCC)共同発表において発表された土地の返還
に関連する現地調査のための立入り。
④ 各主体の責務・役割
本枠組みの共同発表では、日本国政府は「沖縄における在日米軍施設・区域
に関する統合計画書」において特定したものを含む返還を予定している在日米
軍施設・区域に関し、環境の回復のため責任が確認されている。
⑤ 立入に関する規定
在日米軍施設・区域に対する立入りに関しては、環境事故(漏出)後の立入
り及び、土地返還に関連する現地調査のための立入りの枠組み作成について協
議が行われる。
2.施設・区域に対する傍受国による合理的な立入りのための統一的な手続きの作成
A.現に発生した環境事故(漏出)後の立ち入り。
B.2013 年 10 月 3 日付けの安全保障協議委員会(SCC)共同発表において発表された土地の返還
に関連する現地調査のための立入り。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(9) 日米地位協定に関わる環境管理の分野における協力についての日米共同発表
① 概要
平 成 26 年 10 月 20 日 に 、環 境 補 足 協 定 の 実 質 合 意 が 公 表 さ れ 、取 り 扱 う 事 項
の4項目(環境基準・立入り・財政措置・情報共有)が示された。今後は技術
的な事項に関する付随文書をまとめることとなる。
② 背景及び目的
日米地位協定に環境条項がないことから、渉外知事会等では、環境条項の追
加 を 国 に 要 請 し て い る 。 平 成 25 年 12 月 25 日 に 「 在 日 米 軍 施 設 ・ 区 域 に お け る
環境の管理に係る枠組みに関する共同発表」が公表され、環境補足協定の交渉
開始が発表された。
③ 環境問題に対する対応・手続き
補足協定の規定は次の事項を取り扱う。
日米地位協定に関わる環境管理の分野における協力についての日米共同発表
1.環境基準:米国政府は、自国の政策に従って、「日本環境管理基準(JEGS)」を発出
し、維持する。同基準は、日本の基準、米国の基準又は国際約束のうち、より厳しいものを
一般的に採用し、漏出への対応及び防止のための規定を含む。
3.財政措置:日本政府は、環境に配慮した施設を米軍に提供するとともに、環境に配慮した
種々の事業及び活動の費用を支払うために資金を提供する。
4.情報提供:日米両政府は、利用可能かつ適切な情報を共有する。
④ 立入に関する規定
補足協定の規定は次の事項を取り扱う。
日米地位協定に関わる環境管理の分野における協力についての日米共同発表
2.立入り:次の2つの場合において、日本の当局が米軍施設・区域への適切な立入りを行う
ための手続を作成し、維持する。
(1)現に発生した環境事故(漏出)後の立入り。
(2)土地の返還に関連する現地調査(文化財調査を含む。)のための立入り。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2.2.2 そ の 他
(1) ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定(通称、ボン補足協定)
① 概要
ド イ ツ 駐 留 NATO 軍 地 位 補 足 協 定 の 正 式 名 称 は「 ド イ ツ 連 邦 共 和 国 に 駐 留 す る
外国軍隊に関して北大西洋条約当事国間の軍隊の地位に関する協定を補足する
協 定( Agreement to Supplement the Agreement between the Parties to the North
Atlantic Treaty regarding the Status of their Forces with respect to Foreign
Forces stationed in the Federal Republic of Germany )」 と い い 、 通 称 は ボ
ン 補 足 協 定 と い う 。 1959 年 8 月 3 日 に ド イ ツ 連 邦 共 和 国 (西 ド イ ツ )と 、NATO 加
盟 国 の う ち 西 ド イ ツ に 駐 留 軍 を 派 遣 す る 諸 国 と の 間 に 締 結 さ れ た 。そ の 後 、1971
年 10 月 21 日 、 1981 年 5 月 18 日 、 1993 年 3 月 18 日 に 改 定 さ れ 、 特 に 1993 年
の改定は大規模なものであった。
ドイツの補足協定に定める国内法適用原則は個別事項ごとに具体的であり、
しかもその原則の内容においては住民への配慮がみられる。対比的に見ると、
このような意味での実体的内容の欠落こそ、在日米軍地位協定での最も著しい
点の一つである。
出典)
「ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定に関する若干の考察」
(本間浩、外国の立法 平成 16 年 8 月)
② 背景及び目的
本 協 定 は 、 NATO 軍 地 位 協 定 を 補 足 す る こ と を 主 た る 目 的 と し て 結 ば れ た 。
西 ド イ ツ は 、「 ド イ ツ 占 領 体 制 終 結 に 関 す る 議 定 書 ( Protokolluber die
Beendung des Besatzungsregimes in der Bundesrepublik Deutschland)」 な ど 、
占 領 体 制 終 了 を 定 め た 1954 年 10 月 23 日 の パ リ 諸 条 約( 1955 年 5 月 5 日 に 発 効 )
に よ り 、 北 大 西 洋 条 約 機 構 ( NATO) へ 加 入 し た 。 ド イ ツ 連 邦 共 和 国 の NATO 加 盟
は 、 1955 年 5 月 6 日 に 決 定 さ れ 、 西 ド イ ツ に 駐 留 し て い た 外 国 軍 隊 は 、 西 ド イ
ツ の NATO 加 盟 実 現 と と も に 西 ド イ ツ 駐 留 NATO 軍 に そ の 名 目 を 替 え る こ と と な
った。
ただし、ドイツ連邦共和国に占領管理期から常駐していた外国軍隊が占領管
理終結後もなお、継続して駐留することができることも、パリ諸条約の一環と
して改定されたドイツ 5 条約によって合意された。しかも、ドイツ連邦共和国
(西ドイツ)に駐留する外国軍隊は、西ドイツ駐留外国軍隊と東西ドイツ全体
としてのドイツ国家に駐留する権限を有する外国軍隊の 2 つの性格を併せ持っ
っ て い た た め 、 ド イ ツ 連 邦 常 駐 の 外 国 軍 は 法 的 に 、 NATO 軍 と し て の 側 面 と 西 ド
イツ駐留軍・全ドイツ駐留軍の両側面を重ね合わせたものであった。ドイツ連
邦 共 和 国 駐 留 NATO 軍 の 法 的 地 位 に 関 し て は 、1952 年 に 締 結 さ れ た 前 述 の「 軍 隊
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
条約」など5条約がパリ諸条約の締結時に改定されて、将来締結されるべき新
協 定 の 成 立 ま で 暫 定 的 に 適 用 さ れ る こ と と な っ た 。 NATO 軍 地 位 協 定 へ の ド イ ツ
連 邦 共 和 国 の 加 入 は 、 1955 年 10 月 5 日 に 決 定 さ れ た 。
し か し 、 西 ド イ ツ で は 、 NATO 軍 地 位 協 定 は 一 般 的 原 則 の み を 定 め て い る に す
ぎず、個別具体的には不十分な点が多々生ずると考えられていた。そこで、占
領管理中に締結された駐留外国軍の地位に関わる諸条約、及びそれに対応する
べく制定され、または改定されたドイツ連邦共和国の国内法令、ならびにそれ
らの適用を通じて確立され、さらに発展した(当時における)現行の権利義務
関 係 に 、NATO 軍 地 位 協 定 の 規 定 内 容 を 適 応 さ せ る 必 要 が あ っ た 。こ の た め 、NATO
軍地位協定を補足するための協定の作成が必要である、と判断され本協定が策
定され、締結されることとなった。
出典)
「ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定に関する若干の考察」
(本間浩、外国の立法、平成 16 年 8 月)
③ 環境問題に対する対応・手続き
本 協 定 で は 、 第 54 条 に 環 境 保 全 に 関 す る 原 則 が 定 め ら れ て い る 。
第 54 条(環境保全原則)
1 人間、動物及び植物の伝染病の予防及び駆除並びに植物害虫の繁殖予防及び駆除に関しては、
ドイツの法規及び手続が軍隊及び軍属機関に対して適用される。ただし、本項に別段の定めがあ
る場合を除く。軍隊は、その使用に供される施設区域内においては前記第1文に掲げる分野につ
いて自らの規則および手続を、その軍隊構成員、軍属及びそれらの家族に対して適用することが
できる。ただし、その適用が公衆衛生及び植物栽培に危害を与える場合を除く。
出典)
「ドイツ連邦共和国に駐留する外国軍隊に関して北大西洋条約当事国間の軍隊の地位に関する協定を補足する協定 Agreement to
Supplement the Agreement between the Parties to the North Atlantic Treaty regarding the Status of their Forces with respect
to Foreign Forces stationed in the Federal Republic of Germany1959 年 8 月 3 日にボンにて署名 1971 年 10 月 21 日,1981 年 5
月 18 日,1993 年 3 月 18 日改正」
(本間浩訳、外国の立法、2004 年 8 月)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
第 54A 条
1 派遣国は、連邦共和国におけるその軍隊のあらゆる活動に関して、環境保護の重要性を認識し、
かつ承認する。(1993 年改正)
2 本協定に沿うドイツの法令への尊重及びその適用を妨げることなく、軍隊及び軍属機関の当局
は、可能な限り早急にすべての計画について環境との適合性を調査する。これに関連して、軍隊及
び軍属機関の当局は、当該計画が、人間、動物、植物、土壌、水、空気、気候及び景観に与える可
能性のある環境上重大な意味を有する影響をそれらの相互作用を含め、検出し、分析し、評価し、
また文化財その他の財産に与える可能性のある影響をも検出し、分析し、評価する。調査の目的は、
環境への負担を避けること及び環境への不可避の有害性に対しては適切な調和措置を講じて埋め
合わせを行うことにある。軍隊及び軍属機関の当局は、これに関してドイツの非軍事的当局及び軍
当局の支援を求めることができる。(1993 年改正)
第 54B 条
軍隊及び軍属機関の当局は、その航空機、船舶及び自動車の運行に当たっては、ドイツの環境法規
上低汚染物質とされる燃料、潤滑油及び添加剤のみを使用することを保証する。ただし、その使用
が当該航空機、船舶及び自動車の技術上の要求を満たさない場合には、その限りにおいて別とする。
また軍隊および軍属機関の当局は、乗用及び汎用の車両に関しては、特にそれが新型である場合は、
ドイツの騒音及び排気ガスに関する規則を遵守することを保証する。ただし、そのことが過度の負
担となる場合は、別とする。権限あるドイツの当局ならびに軍隊および軍属機関の当局は、これら
の規定の適用と監視について密接に協議し、協力するものとする。(1993 年改正)
出典)
「ドイツ連邦共和国に駐留する外国軍隊に関して北大西洋条約当事国間の軍隊の地位に関する協定を補足する協定 Agreement to
Supplement the Agreement between the Parties to the North Atlantic Treaty regarding the Status of their Forces with respect
to Foreign Forces stationed in the Federal Republic of Germany1959 年 8 月 3 日にボンにて署名 1971 年 10 月 21 日,1981 年 5
月 18 日,1993 年 3 月 18 日改正」
(本間浩訳、外国の立法、2004 年 8 月)
第 54A 条 に よ る と 、 ま ず 、 駐 留 軍 隊 派 遣 国 政 府 そ れ 自 体 と し て 、 そ の 軍 隊 の
ドイツにおけるあらゆる活動に関して環境保護の重要性を認識し、かつ承認す
る、と定められており、派遣国政府が負うべき環境保全の基本的な倫理規範が
宣言されている。
第 54B 条 で は 、 駐 留 軍 隊 及 び 軍 属 機 関 が 使 用 す る 航 空 機 、 船 舶 及 び 自 動 車 の
燃料についても規定がされており、駐留軍隊及び軍属は、これらの車両の運行
にあたって原則としてドイツの環境法規上低汚染物質とされる燃料、潤滑油、
添加剤のみを使用することを保証すること。また、その燃料類の使用では車両
の技術上の要求を満たしえない場合のみ、例外的にこれら以外の燃料類の使用
が容認され、とくに新型車両の場合、騒音及び排気ガスに関するドイツの規制
を遵守することを保証すると宣言している。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
また、実際的な措置として、駐留軍隊及び軍属機関の当局がドイツ内でのあ
らゆる軍事活動計画の環境との適合性について調査する責任を負うこととされ
ており、その際、上述の計画が、人間、動物、植物、土壌、水、空気、気候及
び景観に与える可能性のある環境上重要な意味を有する影響について、当該軍
隊及び軍属機関の当局は検出、分析及び評価を行う。また、文化財その他の財
産に与える可能性のある影響についても同様のことを行うこととなっている。
出典)
「ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定に関する若干の考察」
(本間浩、外国の立法、平成 16 年 8 月)
④ 各主体の責務・役割
本協定の環境保全の原則では、駐留軍隊及び軍属機関の当局がドイツ内での
あらゆる軍事活動計画の環境との適合性について調査する責任を負うこととな
っている。
なお、駐留軍隊及び軍属機関によるドイツの規制の遵守は、ドイツ当局と駐
留軍隊・軍属機関の当局の双方による監視下におかれ、問題の解決の際には、
相互間で協議が行われることとされている。
出典)
「ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定に関する若干の考察」
(本間浩、外国の立法、平成 16 年 8 月)
⑤ 立入に関する規定
本協定では調査のため必要な場合には、ドイツの連邦政府、州及び地方自治
体の有権的当局による基地内への立入りも認められるとされている。
第 53 条について(抜粋)
(ボン補足協定の署名議定書
第5項
Protocol of Signature to the Supplementary Agreement)
第 53 条に従い、かつ適切な場合には第 53A条と連結して、軍隊の当局とドイツの当局と
の協力は、特に次の事項におよぶ。(1993 年改正)
(g)
土壌汚染により危険が生じた用地の特定及び評価を含めて、不動産に対する制限、隣接財産
の保護、都市及び地方計画、記念物及び自然保護区の保護並びに環境保護(1993 年改正)
第6項
軍隊の当局と施設区域となっている不動産の管理を所掌する連邦当局との協力は、以下の
条項に従う。
(b)
施設区域について責任を有する軍司令官又は軍隊の権限あるその他の当局は、第4②項に従
ってドイツの代表者に対し、あらゆる適切な援助を与える。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
第 53 条について(抜粋)続き
(ボン補足協定の署名議定書
第4項
Protocol of Signature to the Supplementary Agreement)
(a) 軍隊の当局は、ドイツの連邦、州及び地方自治体の各段階でそれぞれ権限ある当局に
対し、ドイツのそれらの当局が公務を遂行できるように、ドイツの利益を保護するために必要なあ
らゆる適切な援助(事前通告後の施設区域への立入りを含む。)を与える。施設区域となっている
不動産を所轄するドイツ連邦の当局は、要請に応じて軍隊の当局を援助する。緊急の場合及び危険
が差し迫っている場合には、軍隊の当局は、ドイツの当局が事前通告なしに直ちに立ち入ることが
できるようにする。軍隊の当局は、ドイツの当局に同行するかどうかをその都度決定する。
(b) いかなる場合にも、立入りは、軍事上の安全に必要とされる諸要請、特に秘密保持の下におか
れた区域、装備及び文書の不可侵性を考慮して行う。
(c) 軍隊の当局とドイツの当局は、ドイツの利益の保護と進行中の、又は開始されようとする軍事
演習のいずれをも不当に妨げない方法で立入りの手はずを整えるものとする。
(d) 本項⒜号から⒞号の場合について、何らの合意も得られないときは、双方のより上位の権限あ
る当局が問題を取り扱うものとする。(1993 年改正)
出典)
「ボン補足協定の署名議定書 Protocol of Signature to the Supplementary Agreement」
(本間浩訳、外国の立法、2004 年 8 月)
また、基地内での環境汚染、基地内での活動による都市計画・地方計画、記
念物及び自然保護区への影響を調査するための立入りが、法文上明示されてい
る ( 合 意 議 事 録 「 53 条 に つ い て 」 第 5 項 ⒢ 号 、 第 6 項 ⒝ 号 及 び 第 4 ② 項 )。
出典)
「ドイツ駐留 NATO 軍地位補足協定に関する若干の考察」
(本間浩、外国の立法、平成 16 年 8 月)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(2) 在韓米軍地位協定、合意議事録、了解事項、特別了解覚書
① 概要
正式名称は、
「アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4条に基づ
く施設及び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定(いわ
ゆ る 「 在 韓 米 軍 地 位 協 定 」)」 と い う 。
在韓米軍地位協定は、以下に掲げる⑴の「地位協定」本文と⑵以下のその他
の付属文書により構成されている。⑵⑶の二つの付属文書は、米韓両国間で⑴
の地位協定を、どのように運用、解釈するか等について、その内容を「合意議
事 録 」「 了 解 事 項 」 と い う 形 で 定 め 、 地 位 協 定 の 本 文 を 補 足 し て い る 。 同 様 に 、
⑷ ⑸ に つ い て も 、「 覚 書 」 と い う 形 式 で 、 ⑴ か ら ⑶ ま で の 文 書 で 、 具 体 的 に 触 れ
られていない韓国人の優先雇用、環境保護に関する問題について定めたもので
ある。したがって、これらの付属文書は、地位協定の本文が改正されれば、そ
れに伴って改正される場合もあり得る。
⑴ 「アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4条に基づく施設及
び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定(いわゆる
「 在 韓 米 軍 地 位 協 定 」)」( 1966 年 7 月 9 日 署 名 、 1967 年 2 月 9 日 発 効 、 1991
年 1 月 4 日 改 正 、 2001 年 1 月 18 日 改 正 )
⑵ 「アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4条に基づく施設及
び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定の合意議事
録 ( い わ ゆ る 「 合 意 議 事 録 」)」( 1966 年 7 月 9 日 署 名 、 2001 年 1 月 18 日 改
正)
⑶ 「アメリカ合衆国と大韓民国との間の相互防衛条約第4条に基づく施設及
び区域並びに大韓民国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び関連す
る 合 意 議 事 録 に 関 す る 了 解 事 項 ( い わ ゆ る 「 了 解 事 項 」)」( 2001 年 1 月 18
日署名)
⑷ 「 韓 国 人 被 用 者 の 優 先 雇 用 及 び 家 族 構 成 員 の 雇 用 に 関 す る 了 解 覚 書 」( 2001
年 1 月 18 日 署 名 )
⑸ 「 環 境 保 護 に 関 す る 特 別 了 解 覚 書 」( 2001 年 1 月 18 日 署 名 )
出典)
「在韓米軍地位協定等について」
(清水隆雄、外国の立法、平成 16 年 5 月)
② 背景及び目的
1953 年 7 月 27 日 、朝 鮮 戦 争 の 停 戦 協 定 が 締 結 さ れ た 。し か し 、停 戦 し た と は
いっても、韓国に対する外部勢力からの脅威は、依然として存在していた。こ
のため、その後も米韓両国が協力してこれらに対応することが必要だと考えら
れていた。仮に、外部勢力の侵攻があった場合には、韓国のみではこれに対処
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
することができないので、強力な軍事力を有する米軍を中心とした諸国が、韓
国内に駐留する必要があった。しかし、韓国駐留の米軍等は、他国の領土内に
駐留することになるので、予め韓国内における法的な地位について定めておく
必 要 が あ っ た 。 1953 年 10 月 1 日 、 朝 鮮 戦 争 の 停 戦 協 定 が 締 結 さ れ た 約 2 ヶ 月 、
米韓両国の間で「米韓相互防衛条約」が締結された。これにより、米軍は
引き続き韓国内に駐留することになった。
出典)
「在韓米軍地位協定等について」
(清水隆雄、外国の立法、平成 16 年 5 月)
③ 環境問題に対する対応・手続き
地位協定本文ではなく、合意議事録と特別了解覚書に含まれている。合意議
事録には、環境保護の重要性を認識し、アメリカ側は、韓国の関連環境法令を
尊重し、韓国側は、米軍の安全を十分に配慮すると規定されている
在韓米軍地位協定合意議事録第3条第2項
第 3 条第 2 項に関して次のように合意する。合衆国政府と大韓民国政府は、1953 年相互防衛条約
に基づく大韓民国における防衛活動に関し、環境保護の重要性を理解し、認める。合衆国政府は、
自然環境及び人間の健康保護と一致する方式でこの協定を履行することを確約し、大韓民国政府
の関連環境法令及び基準を尊重する政策を確認する。大韓民国政府は、合衆国人員の健康及び安
全を十分に配慮し、環境法令と基準を履行する政策を確認する。
環境保護に関する特別了解覚書
(ⅰ) 米韓両国の環境関連法令のうち、より厳格な基準に基づき、環境管理基準を、2年毎に又は
随時に検討し、更新すること。
(ⅱ)環境関連情報の共有を促進し、韓国側が、米軍の施設又は区域に立ち入るための手続を設け
ること。
(ⅲ)アメリカ側は、定期的に環境管理の実績を評価し、主な汚染を是正する。韓国側は、米軍の
健康に影響を及ぼす米軍の施設及び区域の外からの主要な汚染に対し、適切な措置をとる。
出典)
「在韓米軍地位協定等について」
(清水隆雄、外国の立法、平成 16 年 5 月)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
④ 浄化の程度を検討する際に参考となる基準
環境管理基準が設定されている。
環境保護に関する特別了解覚書
管理基準
合衆国政府及び大韓民国政府は、環境管理基準(EGS:Environmental Governing
Standards)の定期的な見直し及び更新に協力することにより、環境を保護するための努力を継続
する。これらの基準は、新しい規則及び基準に適応する目的で EGS を2年ごとに検討することによ
り、関連する合衆国の基準及び政策並びに大韓民国内で一般的に執行され、適用される大韓民国の
法令中、より保護的な基準を参照とし、在韓米軍の不利益とならないよう、継続して開発される。
合衆国政府は、新しい規則及び基準に適合させる目的で EGS の定期的見直しを遂行するという政策
を確認する。見直しの間に、より保護的な規則及び基準が発効される場合、合衆国政府と大韓民国
政府は、EGS の更新について迅速に論議する。
⑤ 各主体の責務・役割
本協定では、合衆国軍隊の構成員、軍属が韓国内で韓国法令を尊重すること
になっている。また、特別了解覚書書では環境履行実績と環境問題の協議に関
する項目が設けられている。
韓米地位協定
第7条
接受国の法令の尊重 大韓民国において、大韓民国の法令を尊重し、及びこの協定の精神
に反する活動、特に政治活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員、軍属及び第 15 条に基づき大韓
民国に居住する者並びにそれらの家族の義務とする。
環境保護に関する特別了解覚書
環境履行実績
合衆国政府及び大韓民国政府は、在韓米軍の施設及び区域又はそれらの施設及び区
域に隣接する地域社会において環境汚染により生じるどのような危険についても協議する。合衆国
政府は、環境への悪影響をできるだけ少なくするため、在韓米軍活動の環境的側面を調査し、確認
し、かつ評価する定期的な環境実施査定を遂行する政策を承認する。すなわち、必要とされる計画
を立て、プログラムを作り、予算を立てること、在韓米軍により引き起こされた健康に対する既知
の切迫した、実質的な危険を引き起こす汚染の除去を迅速に実施すること、及び人間の健康を保護
するために必要な追加的是正措置を検討することである。大韓民国政府は、在韓米軍の施設及び区
域の外部の原因により引き起こされ、健康に対し既知の切迫した、実質的な危険を引き起こす汚染
に対応するために、関係法令に基づき適切な措置を執るという政策を確認する。
環境問題の協議
合同委員会の環境小委員会及び他の関連小委員会は、在韓米軍の施設及び区域に
関係する環境問題並びにそれらの施設及び区域に隣接した地域社会に関係する環境問題を論議す
るため、定期的に会合する。合衆国政府と大韓民国政府は、合同委員会を通じて、環境保護に関す
る上記了解事項を実現するための適切な手続を準備する。
出典)
「在韓米軍地位協定等について」
(清水隆雄、外国の立法、平成 16 年 5 月)
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
⑥ 立入に関する規定
本協定では、人の健康及び環境に影響を及ぼしうる問題に関し適切な情報を
交換するため、合同委員会の枠組を通じて共同で作業を行うとともに、施設及
び区域への適切な立入りは、合同委員会において作成される手続に基づいて行
われる、とされている。
環境保護に関する特別了解覚書
情報の共有及び立入
合衆国政府及び大韓民国政府は、大韓民国国民並びに合衆国軍人、軍属及び
それらの家族の健康及び環境に影響を及ぼしうる問題に関し適切な情報を交換するため、在韓米軍
地位協定第 28 条により設置された合同委員会の枠組を通じて共同で作業する。施設及び区域への
適切な立入りは、合同委員会において作成される手続に基づいて行われる。合衆国政府と大韓民国
政府は、定期的に、合同委員会の環境小委員会を通じて 1953 年相互防衛条約の下での大韓民国で
の防衛活動と関連した環境問題の検討を継続する。環境小委員会は、情報交換のための分野、韓国
公務員の施設及び区域に対する適切な出入並びに合同査察、モニタリング及び事後評価を検討する
ため定期的に会合する。
出典)
「在韓米軍地位協定等について」
(清水隆雄、外国の立法、平成 16 年 5 月)
(3) 米比防衛協力強化協定
① 概要
東西冷戦記において、フィリピンは米国の世界軍事戦略を支援する中継・兵
站 基 地 と し て の 役 割 を 努 め て い た が 、米 軍 は 1991 年 に ス ー ビ ッ ク 湾 海 軍 基 地 か
ら 、翌 92 年 に は ク ラ ー ク 空 軍 基 地 か ら 完 全 撤 退 し た 。1998 年 2 月 に は フ ィ リ ピ
ン国内で合同軍事演習などを行う際の米軍人の法的地位を規定する「訪問米軍
に 関 す る 地 位 協 定 」 が 調 印 さ れ 、 さ ら に 2014 年 4 月 28 日 に は 米 軍 に よ る フ ィ
リピン基地の使用、構造物の建設、事前集積が可能となる二国間の新しい軍事
協定が調印された。
② 背景及び目的
同協定は、相互運用性、フィリピン軍の近代化に向けた能力構築、外的防衛
のためのフィリピン軍の強化、海洋安全保障、人道支援及び災害対応等の事項
を米比間で促進するために締結された。米軍の完全撤退後も両国は相互防衛条
約により協力体制を維持してきたが、同協定によりさらに体制が強化された。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
③ 環境問題に対する対応・手続
同協定の第 9 条には、環境、人の健康、及び安全の問題が述べられている。
両国は、環境保護、人の健康、安全について、対処療法よりむしろ予防を追求
する方法を協定に盛り込むことや発生するあらゆる問題に対して被害を未然に
防ぐために関連する情報を共有し、迅速に対応することなどに合意している。
米国は、環境、健康、安全に関するフィリピンの法律や基準を尊重するとと
もに、米側は意図的に有害物質や廃棄物を放出しないこと、万一流出があった
場合には、米側が環境汚染に対して迅速に対応することが合意された。
米比防衛協力強化協定
第9条
環境、人間の健康及び安全
1.協定国は、この協定により包括される活動の範囲内において、環境、人間の健
康及び安全を保護することの重要性を認識及び塾考し、自然保護、人間の健康及
び安全の保護に同意する手段において本協定を実施し、環境保護に受け身という
よ り む し ろ 予 防 的 ア プ ロ ー チ を 追 求 す る こ と に 同 意 す る 。最 終 的 に は 、同 盟 国 は 、
生ずる可能性のある問題が、継続する環境被害や人間の健康及び安全の危険を回
避するために、直ちに処理されることを保障する。
米比防衛協力強化協定(続き)
第9条
環境、人間の健康及び安全
2.米国は、その政策の履行において、フィリピンの環境、健康及び安全に関する
法、規則及び基準を尊重することを確約する。フィリピンは、米軍及び米軍の契
約業者の健康及び安全のために、環境、健康及び安全の法律、規則及び基準を実
施するための施策を確約する。同盟国は、同盟国を代表する者の代理者の間でそ
の都度開催される意見交換において、同意された場所における環境、健康保護に
関するすべての関連する既存情報について全面的に協力する。
米国により適用される環境コンプライアンス基準は、その施策に沿って、より保
護 的 な 米 国 、フ ィ リ ピ ン 、若 し く は 適 当 な 国 際 協 定 基 準 が 反 映 さ れ る 。最 終 的 に 、
このような環境実践の定期的な見直しと改良を通して、同盟国は、フィリピンの
基準が的確に反映されることを保障するために協力、相談する。
3.米国は、所有するいかなる危険物質・廃棄物も意図的に手放すことはなく、仮
に、漏洩が生じた場合には、漏洩から生じる環境的汚染の抑制、処理のために迅
速な行動を取る。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2.2.3 米 国 域 外 米 軍 施 設 に 対 す る 環 境 管 理 の 比 較 分 析
米 国 域 外 に お け る 米 軍 施 設 で は 、域 外 米 軍 が 作 成 し た 基 準 に 従 っ て 環 境 保 護 と 安
全 の た め の 取 り 組 み が 行 わ れ て い る 。こ こ で は 、米 軍 施 設 が 置 か れ て い る 日 本 、韓
国 、ド イ ツ の 3 国 に つ い て 、そ れ ぞ れ の 米 軍 施 設 に お け る 環 境 保 全 の 取 り 組 み に つ
いて比較することで在日米軍との類似点と相違点を整理した。
(1) 最終管理基準(FGS)の概要
米 国 防 省 で は 、 米 国 域 外 の 軍 事 施 設 の 環 境 管 理 の 基 本 指 針 と し て 、 1992 年 に
域 外 環 境 基 本 指 針 文 書 ( Overseas Environmental Baseline Guidance Document
以下、
「 OEBGD」と す る 。)を 作 成 し て い る 。各 国 に 駐 留 す る 米 軍 の 環 境 執 行 官 は 、
OEBGD と 接 受 国 の 環 境 に 関 す る 基 準 と 比 較 し て 、 よ り 厳 し い 基 準 を 反 映 さ せ て 、
最 終 管 理 基 準 ( FGS) を 作 成 し な け れ ば な ら な い と さ れ て い る 。 FGS が 適 用 さ れ
る 国 を 図 2-7 に 示 し た 。
在 日 米 軍 が 作 成 す る FGS が 日 本 環 境 管 理 基 準 ( JEGS : Japan Environmental
Governing Standards) で あ り 、 同 様 に 韓 国 で は EGS( Environmental Governing
Standards)、 ド イ ツ で は GFGS( German Final Governing Standards) と 呼 ば れ
る FGS が 作 成 さ れ て い る 。 3 国 の FGS は 、 い ず れ も 表 2-6 に 示 す 環 境 に 関 す る
項目をそれぞれ章にして規定している。
FGS に は 汚 染 に 関 す る 項 目 以 外 に 歴 史 的・文 化 的 遺 産 や 自 然 資 源 及 び 絶 滅 危 惧
種 に つ い て も 記 載 が あ る が 、騒 音 、悪 臭 、土 壌 汚 染 等 の 問 題 は 含 ま れ て い な い 。
な お 、「 環 境 騒 音 」 に つ い て は 、 2000 年 3 月 の OEBGD か ら 削 除 さ れ た の に 伴 い 、
日 本 と 韓 国 の FGS で は 削 除 さ れ て い る 。 ま た 、 表 中 の 空 白 の 欄 に は 当 初 、「 ラ ド
ン」に関する記載があったが、3 国で同様に削除されている。
FGS は 域 外 米 軍 施 設 の 最 も 重 要 な 環 境 に 関 す る 規 定 と し て 扱 わ れ る が 、あ く ま
で内部規定であり、その運用実態は明らかではない。また、定められているの
は基準であり、届出、立入調査、改善勧告等の行政手続は含まれていない。
以 下 、 3 国 の FGS の 概 要 を 述 べ る 。 な お 、 JEGS、 EGS 及 び GFGS は 何 れ も 英 語
版を正文とし、本訳の用語が必ずしも各国の法律や商習慣における同用語と一
致するものではない。
-37-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
表 2-6
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
最 終 管 理 基 準 ( FGS) に お け る 環 境 に 関 す る 項 目
11
12
13
14
15
16
17
18
19
環境プログラム管理
大気排出物
飲料水
排水
有害物質
有害廃棄物
廃棄物
医療廃棄物管理
石油・油脂・潤滑油
環境騒音
【米国北部司令部】
バハマ
【米国アフリカ司令部】
ケニア、アセンション島
農薬
歴史的・文化的遺産
自然資源及び絶滅危惧種
ポリ塩化ビフェニル
アスベスト
----------------------------鉛ベース塗料
流出防止及び対応計画
地下貯蔵タンク
【米国欧州司令部】
イギリス、ドイツ、イタリア、
スペイン、ギリシャ、ベルギー、
オランダ、トルコ、アゾレス諸島、
グリーンランド
【米国太平洋司令部】
日本、韓国、
ディエゴ・ガルシア
【米国太平洋司令部】
【米国中央司令部】
【米国南部司令部】
バハマ
アンティグア・バーブーダ、
キューバ
バーレーン、エジプト、クゥエート、
オマーン、カタール、サウジアラビア、
アラブ首長国連邦
出典)ウィキペディアより
図 2-7
指 定 国 防 省 環 境 統 合 指 令 部 と FGS が 適 用 さ れ る 国
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
① 日 本 環 境 管 理 基 準 ( JEGS)
JEGS は 1995 年 に 策 定 さ れ 、こ れ ま で 9 回 更 新 さ れ て い る 。 2001 年 8 月 に は 、
日 米 合 同 委 員 会 に 設 置 さ れ た 環 境 分 科 委 員 会 の 下 に JEGS 作 業 部 会 が 設 け ら れ 、
JEGS 見 直 し に 関 す る 日 米 間 の 協 力 強 化 が 図 ら れ 、 通 常 2 年 ご と に 更 新 さ れ る 。
JEGS は 、 2001 年 10 月 の 改 訂 の 際 、「 環 境 騒 音 」、「 ラ ド ン 」、「 海 外 に お け る 環 境
へ の 影 響 」の 章 が 削 除 さ れ 、
「 海 外 に お け る 環 境 へ の 影 響 」が 掲 載 さ れ て い た 17
章 は 、現 在 、
「 鉛 ベ ー ス 塗 料 」が 記 載 さ れ て い る 。削 除 の 理 由 は 、上 位 基 準 の OEBGD
からこれらの章が削除されたことによるとされている。
② ド イ ツ 最 終 管 理 基 準 ( GFGS)
ド イ ツ は 共 和 国 で あ る こ と か ら 、 GFGS は 国 防 省 施 設 ・ 部 隊 の あ る 国 内 各 州 の
基 準 に 従 っ て 環 境 規 格 ・ 基 準 を 定 め て い る 。 ド イ ツ 国 の 規 則 に 加 え 、 NATO の 環
境方針にも準じたものでなければならない。
GFGS は 、 2009 年 に 8 章 の 「 医 療 廃 棄 物 管 理 」 と 15 章 の 「 ア ス ベ ス ト 」 が 更
新されている。
③ 韓 国 の 環 境 管 理 基 準 ( EGS)
韓国では、日本と同様に、国防省施設・部隊の所在地に関係なく、接受国に
よる単一の環境規格・基準、暴露及び許容レベルが設定されている。
韓 国 の EGS に は 、2001 年 1 月 18 日 に 署 名 し た 環 境 保 護 に 関 す る 特 別 了 解 覚 書
( Memorandum of Special Understandings in Environmental Protection ) と
そ の 後 の 改 定 に 伴 っ て 根 本 的 な 変 更 が 見 ら れ る 。 覚 書 の 前 も 後 も 、 韓 国 の FGS
には期限を定めた要件の変更が行われてきたが、覚書後の改定において定めら
れた要件及び基準は極めて厳しいものとなっている。
表 2-7
更新及び再確認(有効化)リスト
更新及び再確認(有効化)リスト
第一版
1995 年 1 月 31 日
第六版
2006 年 9 月 7 日
第二版
1996 年 5 月 31 日
第七版
2008 年 9 月
第三版
1997 年 1 月 31 日
第八版
2010 年 11 月 30 日
第四版
2001 年 10 月 31 日
第九版
2012 年 12 月 17 日
バージョン 1.1
第五版
2003 年 6 月 14 日
2004 年 6 月 26 日
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(2) 域外米軍施設間の FGS 項目内容の比較
以 下 、 JEGS、 EGS 及 び GFGS の 環 境 に 関 す る 各 項 目 の 内 容 を 比 較 す る 。
1) 環 境 プ ロ グ ラ ム の 管 理
ド イ ツ 最 終 管 理 基 準 ( Final governing standards Germany:以 下 GFGS) に よ
る と 、FGS は 環 境 基 準 を 定 め る こ と を そ の 主 要 目 的 と し て い る 。JEGS は GFGS の
管 理 手 順 へ 追 加 し た も の で あ る 。 こ れ に 対 し 、 韓 国 環 境 管 理 基 準 (EGS ) は 、 環
境保護を目的とした基準と管理手順を示している。特に詳しく言及されてはい
な い が 、 EGS は 米 国 の 環 境 規 格 を 基 礎 と し て い る が 、 韓 国 で 適 用 さ れ て い な い 、
又は環境基準に反する部分については、独自の基準を加えるなどして策定され
ている。
ド イ ツ と 日 本 で 適 用 さ れ る FGS は 、 其 々 の 国 内 の 米 国 防 省 施 設 に お け る 米 各
軍 の 活 動 を 対 象 と し て い る 。EGS は 、そ の 米 軍 の 活 動 に 加 え 、在 韓 米 軍 施 設 全 て
で行われている米軍自体の運営又は管理をも対象に加えている。
国 防 省 通 達 4715.4「 汚 染 防 止 」 の 条 項 は 、 基 本 方 針 を 定 め 、 責 任 を 指 定 し 、
国 防 省 を 通 し て こ れ ら 3 国 (日 本 、 ド イ ツ 、 韓 国 )に お け る 汚 染 防 止 プ ロ グ ラ ム
を実施する手順を規定している。
但し、許認可については国によって異なる。例えば、ドイツでは一律基準で
は な く 、国 防 省 施 設 が 所 在 す る 州 に よ っ て 異 な る だ け で な く 、NATO 軍 地 位 協 定 ・
補 足 協 定 の 改 訂 版 発 効 時( 1998 年 3 月 29 日 )以 前 か ら 存 在 し て い た 基 地 施 設 を
除 い て は 、 NATO 規 則 の 順 守 も 義 務 付 け ら れ る 。
FGS で は 、こ う し た 許 認 可 及 び 公 的 な 承 認 の 要 件 が FGS に 規 定 さ れ た 保 護 基 準
を 下 回 る 場 合 は 、FGS が 引 き 続 き 優 先 規 準 と な る 。但 し 、日 本 及 び ド イ ツ に お い
て は 、 EEA( 環 境 執 行 官 : Environmental Executive Agent) の 書 面 に よ る 承 認 を
もって、免責される可能性もある。
EEA の 責 任 に つ い て 詳 細 に 言 及 し て い る の は 、EGS の み で あ る 。加 え て 韓 国 は 、
環 境 に つ い て 照 会 及 び 苦 情 プ ロ グ ラ ム を 有 し 、 さ ら に 国 防 省 通 達 8910.1-M「 情
報管理要件に係る国防省手続」に従って、全ての環境評価、検査、記録、記録
簿、管理表、通知、用紙、様式を、記録し保持することを規定している。
2) 大 気 排 出 物
蒸 気 又 は 熱 水 を 発 生 す る 装 置 に つ い て は 、3 カ 国 の FGS に 同 様 の 基 準 が 記 載 さ
れている。
焼却炉に関しては、商業及び工業固形廃棄物、焼却炉、行政の廃棄物燃焼、
下 水 汚 泥 焼 却 炉 、 及 び 医 療 廃 棄 物 焼 却 炉 を 対 象 と し た 基 準 が 3 国 其 々 の FGS で
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
規 定 さ れ て い る 。 こ の 点 に つ い て 、 JEGS は 、 他 の 2 国 の FGS で は 言 及 さ れ て い
ない、廃棄物及び特定廃棄物、ダイオキシン等の大気放出のモニタリングにつ
いて規定している。他方、韓国は、汚染物質大気放出の可能性のある施設及び
在韓米軍の特定権益である地域をタイプ別に明記している。
い ず れ の FGS で も 、 汚 染 物 の 許 容 レ ベ ル を 明 記 し て い る が 、 そ の レ ベ ル と ガ
スの種類は国によって異なる。
3) 飲 料 水
3 国 の FGS は い ず れ も 、 本 章 に お い て 、「 地 下 水 供 給 源 を 守 る た め 国 防 省 施 設
内での地下注入を管理することを目的とする」との目的を明記している。
管理について、ドイツでは、地下水資源へ流入してはならない全ての物質の
直 接 的 又 は 間 接 的 放 出 に つ い て 、 BI m A(Bundesanstalt
für
Immobilienaufgaben : ド イ ツ 連 邦 不 動 産 管 理 協 会 国 有 林 協 会 ) 又 は
WBV(Wehrbereichsverwaltung: 連 邦 国 防 省 防 衛 管 区 行 政 機 関 ) を 通 し て 許 可 を 取
得 す る こ と を 義 務 付 け て い る 。J 地 下 水 供 給 源 を 守 る た め 、国 防 省 軍 施 設 で の 地
下注入を管理することとし、最低限、近隣の地下水給水への地下注入井戸の影
響を測定するためのモニタリングを実施するよう義務付けている。ドイツと韓
国 ・ 日 本 の FGS の 大 き な 違 い は 、 ド イ ツ が 「 防 止 」 プ ロ セ ス を 確 立 し て い る の
に対して、他の 2 国がモニタリングという「抑制」措置に重きを置いているこ
とである。
消毒プロセスについては各国が同様の基準を記載し、通知要件もほぼ同じ目
的 の も と に 定 め ら れ て い る 。 す な わ ち 、「 違 反 」 の 定 義 、 健 康 へ の 脅 威 、 害 を 被
る 可 能 性 の あ る 住 民 の 範 囲 、 違 反 是 正 へ の 対 応 措 置 、( あ れ ば ) 代 替 水 供 給 源 、
及び違反が是正されるまでの間に消費者が取るべき予防措置について、明確か
つ分かり易く説明することを目的としている。
施設管理者に関する要件も同じであるが、韓国は、業務及び水処理の担当職
員については 3 年毎に実質的研修プログラムの修了と修了証明書の取得を義務
付け、検査技師にも同様な要件を課している。韓国が義務付けているこうした
再 教 育 ・訓 練 の 要 件 は 、 ド イ ツ 及 び 日 本 の FGS に は 特 に 記 載 さ れ て い な い 。
4) 排 水
一 般 的 汚 染 物 質 ( 表 2-8) の 放 出 の 廃 液 制 限 は JEGS 及 び GFGS の 両 方 に 規 定
されているが、その制限値は 2 国間で異なる。
韓 国 は 、 施 設 の 所 在 地 分 類 (1 級 か ら 5 級 )と 、 期 間 ( ① 2011 年 9 月 ま で 、 ②
2011 年 10 月 ~ 2012 年 12 月 31 日 、 ③ 2013 年 1 月 1 日 以 降 ) に 基 づ い て 、 3 つ
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
の異なる廃液制限を定めている。
これに対し、ドイツでは、制限も許認可事項も州毎に異なったカテゴリーに
分 類 さ れ て い る 。 日 本 の FGS は 、 一 定 期 間 ( 30 日 間 又 は 7 日 間 ) の 平 均 値 と し
て廃液制限を定めている。
表 2-8
一般的汚染物質について
一般的汚染物質
GFGS(ドイツ最終管理基準)
JEGS(日本環境管理基準)
EGS(韓国環境管理基準)
生物化学的酸素要求量(BOD5)
生物化学的酸素要求量(BOD5)
生物化学的酸素要求量(BOD5)
-
炭素質生物化学的酸素要求量(CBOD5)
-
-
総浮遊物質量(TSS)
総浮遊物質量(TSS)
-
pH
-
化学的酸素要求量(COD)
化学的酸素要求量(COD)
-
(海域、湖沼への直接排出)
-
全大腸菌群数
全大腸菌群数
-
銅
-
-
亜鉛
-
-
鉄(溶解性)
-
-
マンガン(溶解性)
-
-
クロム
-
-
鉱物油(N-ヘキサン抽出物質)
-
動物性及び植物性油脂
-
-
(N-ヘキサン抽出物質)
-
フェノール
-
窒素
窒素
窒素
リン
リン
リン
アンモニア(NH4N)
-
-
引火性及び爆発性の発火点についてドイツと韓国は同じ基準(密閉容器内発
火 点 が 60℃ )を 定 め て い る 。JEGS で は 比 較 的 緩 や か で 、同 発 火 点 は 70℃ で あ る 。
汚水処理タンク方式
GFGS は 家 庭 排 水 処 理 方 式 を 許 可 し て お り 、 適 切 な ド イ ツ 連 邦 共 和 国 水 管 理 局
からの排水許可証に従って設置、操作、維持管理することを義務付けている。
検査、要件、遵守証明書は全てドイツ連邦共和国水管理局によって提供してい
る。
韓国は、個人又は韓国水汚染防止当局の水汚染に関する苦情を調査する目的
で( 適 切 な 場 合 に は )EEA が 関 与 す る「 苦 情 シ ス テ ム 」を 導 入 し た 。環 境 に 関 す
る 問 合 せ ・ 苦 情 処 理 手 順 、 職 員 の 資 格 や 要 件 、 実 務 技 師 の 要 件 、 (2004 年 11 月
1 日 前 ・ 以 降 に 関 わ ら ず )生 活 ゴ ミ 廃 棄 に 関 す る 規 定 、 モ ニ タ リ ン グ の 要 件 、 工
業排水源等について、規定されている。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
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5) 有 害 物 質
本章の目的は基本的に3国とも同じである。しかし、有害物の保管及び取扱
い に 関 す る 統 合 出 版 ( 英 語 ・ 韓 国 語 )」 で 、 通 路 空 間 の 基 準 を 明 記 し て お り 、 こ
れ に つ い て は JEGS 及 び EGS の い ず れ も 触 れ て い な い 。保 管 エ リ ア に て 有 害 物 質
取 扱 い 機 材 を 操 作 す る 際 の 通 路 空 間 は 、 3m ( 10Ft) 以 上 、 も し く は 保 管 エ リ ア
にある危険物取扱い機材の中で最も幅広い機材の幅に1m加算した数値以上、
い ず れ か 大 き い 数 値 を 限 度 地 と し て い る 。 ま た 1,000 ㎡ を 超 え る 業 務 ・ 保 管 エ
リア内の通路は、容易にそれとわかるのでなければ、標識をもって示さなけれ
ばならない。
韓国は、危険物を輸送する車両に流出対策キットを備えることを義務付けて
い る 。こ う し た 車 両 の「 表 示 」は 、国 防 省 指 示 書 6050.05「 国 防 省 危 険 有 害 性 周
知 ( HAZCOM) プ ロ グ ラ ム 」 に 従 っ て 作 成 さ れ 、 米 国 基 準 に 基 づ い て 厳 格 に 守 ら
れている。これに関して、日本とドイツでは、自国の法律及び規則を盛り込ん
であるが、流出対策キットについては触れていない。
GFGS に は 、
「 危 険 物 の 典 型 的 特 性 」、
「 施 設 内 水 へ の 危 険 物 カ テ ゴ リ ー 」、
「危険
物の禁止及び制限」に加えて、こうした水危険物を保管している(バイエルン
ーヘッセンやローヌランドーファルツ)エリアについては、危険標識、表示義
務、一般的施設と特別保護エリアの基準等を、表にして記載している。
こ れ に 対 し 、 JEGS に は 「 典 型 的 な 有 害 物 質 の 特 性 」 の み 、 韓 国 は 「 典 型 的 な
有害物質の特性」と「有毒性気体化学物質の許容基準」を記載している。
表 2-9 に JEGS で 規 定 さ れ て い る 典 型 的 な 有 害 物 質 の 特 性 を 示 す 。
表 2-9
1
典型的な有害物質の特性
健康や物理的に有害な物質。健康被害は、発癌性物質、腐食性物質、刺激物、増感剤、毒性物質、
皮膚や眼、内臓器官に損傷を与える物質を含む。物理的に有害な物質は、可燃性液体、圧縮ガス、
爆発物、易燃性物質、有機過酸化物、酸化性物質、自然発火性物質、不安定な(反応性)物質、禁
水性物質を含む。
2
その危険性のため、日本国政府によりその物質及び/又はその廃棄が規制されている。
3
引火点試験装置での引火点が摂氏 93°(華氏 200°)未満であること、自然加熱しやすいこと、または
不適切な管理での取り扱い、保管、輸送時に多量のエネルギーを放出して重合しやすい。
4
可燃性固体物質、酸化剤または標準還元電位が 1.0 ボルト以上または-1.0 ボルト以下の強酸化還元剤。
5
通常の作業、事故、漏出または流出の際に、上記の特性のうち一つ以上を示す粉じん、ガス、ヒュ
ーム、蒸気、ミストまたは煙。
6
製造元または国防省各軍が不適切な使用や保管により生体への影響があると判断した特殊な性質を
有する物質。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
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6) 有 害 廃 棄 物
本 章 に つ い て は 、3 国 と も「 有 害 廃 棄 物 の 識 別 、保 管 、輸 送 、及 び 環 境 に 対 し
て健全な方法で再利用するための統合管理プログラムの基準を示す」という目
的を同じくし、これを明確に記している。また韓国は、これに「同プログラム
には有害・指定廃棄物の排出から最終処理までの管理を追跡するシステムが含
まれる」と付記している。
有 害 廃 棄 物 規 制 に つ い て 最 も 厳 格 な の は JEGS で あ る 。( GFGS 及 び EGS で は 触
れられていない)汚染土壌の処分についても特別に指示されている。管理手順
及 び 管 理 票 は 国 に よ っ て 異 な り 、ド イ ツ は 、廃 棄 物 が 5 t を 超 え な い 限 り 、比 較
的 簡 便 な 証 明 手 続 き を 採 用 し て い る 。た だ し 、ド イ ツ で は 、廃 棄 作 業 開 始 前 に、
排出施設と処理業者等の当事者間において、管理手続き(申告書)が全て完了
していなければならない。有害廃棄物は再利用されない。
年 間 2t 以 上 の 有 害 廃 棄 物 を 排 出 す る 施 設 は 、① 義 務 的 証 拠 手 続 き 、 ② 集 合 体
廃棄管理手続き、③優先的証拠手続き、のいずれかを行うべきである。
排 出 す る 有 害 廃 棄 物 が 2t を 超 え な い 排 出 者 ( 施 設 )は 廃 棄 物 処 理 文 書 を 必 要
と す る が 、 こ れ は 廃 棄 物 タ イ プ 毎 の 受 理 票 を 維 持 す る だ け で よ い 。 GFGS は 、
10,000L を 超 え る 可 燃 性 廃 液 保 管 容 量 の 施 設 等 を 要 監 督 施 設 と し て 特 定 し て い
る。不和合性廃棄物の特別要件も言及している。
ド イ ツ と 韓 国 で は 、危 険 廃 棄 物 の 入 出 の 管 理 票 の 保 管 を 3 年 と 定 め て い る が 、
日本は 5 年としている。
タンクシステム:ドイツでは、有害廃棄物を保管するタンクシステムと有害
物質のタンクシステムを特に区別していない。
有 害 廃 棄 物 処 理 : 全 て の 国 防 省 有 害 廃 棄 物 は DLA ( 米 国 国 防 兵 站 局 Defense
Logistics Agency: 以 下 DLA) 処 分 業 務 部 門 を 通 し て 処 分 さ れ る 。 日 本 で は 、 国
防省の各軍の活動により排出された廃棄物が、米国又は日本国いずれかの法律
で 危 険 と 判 明 し た 場 合 、( 特 別 な 例 外 の 条 件 を 満 た す の で な け れ ば )こ れ ら の 廃
棄物が日本国内で廃棄されることがないよう保証しなければならない。
JEGS に 基 づ い て こ れ ら の 有 害 廃 棄 物 が 日 本 国 内 で 廃 棄 処 分 で き な い 場 合 、 そ
の 廃 棄 物 は 米 国 へ 輸 送 、又 は( 国 際 協 定 で 許 可 さ れ て い る 場 合 の み )米 国 外 で、
環 境 に 対 し て 健 全 な 方 法 で 廃 棄 で き 、FGS を 適 用 で き る 第 三 国 が あ れ ば 、そ こ へ
輸送することになる。
GFGS に は 「 ド イ ツ 国 内 で 排 出 さ れ た 有 害 廃 棄 物 は 、 可 能 な 限 り ド イ ツ 国 内 で
処理、再利用、もしくは廃棄するべし」という条項がある。有害廃棄物の国外
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
輸送は、ドイツ国内に適切な処理又は廃棄施設が存在しない場合を除き、許可
されない。
韓国でも同様に自国内での処理施設での廃棄を認めているが、特定の危険物
質・廃棄物リストに限定されている。
危 険 廃 棄 物 の 埋 立 処 分 : JEGS は 日 本 国 内 の 米 国 防 省 施 設 に お い て 有 害 廃 棄 物
を 陸 上 埋 立 処 分 す る こ と を 認 め な い 。 GFGS で は 、 ド イ ツ 連 邦 政 府 州 政 府 当 局 承
認の適切な埋立施設に限定して処分することを認めている。韓国は、国内の米
軍施設内の既存の埋立地、新設される埋立地、もしくは既存埋立地を拡張した
埋立地において、危険廃棄物の埋立処分を認めている。こうした埋立地の使用
は、適切な正当性を有し、環境管理官に承認されなければならない。但し、陸
上埋立施設についても準拠すべき基準が定められている。
7) 廃 棄 物
JEGS: 基 地 外 の 処 理 施 設 を 利 用 す る 米 軍 施 設 は 、 収 集 ・ 運 搬 及 び 処 分 業 者 が 、
管轄する地方自治体から産業廃棄物の処理に関して適切な許認可を受けている
ことを保証しなければならない。但し、米軍施設がこうした処理施設を検査す
ることは義務付けられていない。
産業廃棄物の排出者が、許可を受けた収集・運搬業者との契約に、許可を受
け た 処 分 施 設 業 者 と の 下 請 け 契 約 を 求 め る こ と は 禁 じ ら れ て い る 。し た が っ て 、
排出者は収集・運搬と処分の両方の免許を有する単一の業者と契約するか、或
いは運搬と処分施設業者を別々の有免許業者と個別に契約するか、を選択する
必要がある。
GFGS: 固 形 廃 棄 物 処 分 を 目 的 に こ れ を 運 搬 す る に は 、 許 可 を 必 要 と す る 。 こ
の 要 件 は 、 処 理 責 任 の あ る 公 的 機 関 、( 下 請 業 者 を 含 む ) 民 間 業 者 、 及 び そ の 他
全ての固形廃棄物運搬業者へ適用される。米国防省施設排出の固形廃棄物を同
じく国防省車両で運搬することについては特に許可を必要としない。
米国防省施設は、廃棄物処理管理計画プロセスにおいて、ドイツ連邦政府・
州政府当局に対して可能な限り協力する。固形廃棄物の管理には他の個人、会
社もしくは機関が関与していたとしても、当該固形廃棄物の再利用及び処分が
発生した際にそれが法的及び環境上適合していることを保証することは、排出
者の責任である。
EGS: 固 形 廃 棄 物 管 理 プ ロ セ ス に お い て 、国 防 省 施 設 は 可 能 な 限 り 韓 国 政 府 当
局と協力する。国防省施設は固形廃棄物削減を目的とした管理戦略を策定し実
行する。同戦略には、再利用や堆肥化、ゴミ削減努力等が含まれる。建設、改
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
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築 、取 り 壊 し 等 の 事 業 に お い て は 、事 業 か ら 発 生 し た 余 剰 資 材 を 、EGS の 基 準 及
び基本指針等に従って、最大限に再利用及び再資源化する。
JEGS 及 び EGS と の 比 較 に お い て GFGS の 主 要 な 差 異 は 次 の 通 り :
・生物分解可能な廃棄物は堆肥化する。
・適切なシステムとスペースがあれば、米軍施設内で堆肥化を実施してよい。
・焼却には、事前にドイツ連邦政府州政府当局からの承認を得なければならない。
・廃棄物の埋立処分を決定する前に「再利用」の可能性を検討すべきである。
・ 行 政 固 形 廃 棄 物 埋 立 処 分 ( MSWLF) の 事 業 者 は 、 有 資 格 職 員 数 を 十 分 に 確 保 し 、
最初とその後 2 年毎に職員研修訓練を実施する。
・ MSWLF 事 業 者 は 職 員 研 修 の 責 任 を 負 う 。 研 修 で は 次 の 各 テ ー マ が 含 ま れ る :
ドイツ廃棄物管理基準と環境関連法規;埋立処分場の建設、運営、閉鎖、
及び閉鎖後の手続き;処分場の運営から生じる環境への影響、被害、迷惑と
それらの防止又は軽減措置;取扱いが予測される廃棄物のタイプと構成物;
危険物質に適用される規則;事業の法的責任;職員の安全保護。
・現場に、消毒剤、清浄剤、スキンケア用品が提供され、勤務と勤務の間に
濡れた作業着を乾かすことができるような、洗浄施設を設置することが義務付け
られている。事業運営開始前に、運用面と組織面の両方について、適用される安
全規則等を明記した整理された基準を策定しなければならない。
8) 医 療 廃 棄 物 管 理
3 国 の FGS は い ず れ も 医 療 廃 棄 物 管 理 の 手 順 を 説 明 し て い る 。 基 本 的 に 、 全
ての感染性医療廃棄物はその(医療施設の)発生源において、現実的に可能な
限 り 、固 形 廃 棄 物 と 分 離 さ れ る べ き で あ る 。GFGS は 、全 て の 容 器 は 施 錠 可 能 で 、
耐湿性と耐臭気性を有し、取扱い及び運搬に耐えうる耐久性のあるものでなけ
れ ば な ら な い こ と を 強 調 し て い る 。袋 の 厚 さ に つ い て の 基 準 は 3 FGS 同 様 で あ る
が 、 GFGS は 「 各 袋 の 最 大 容 量 は 70L」 と の 規 定 を 付 加 し て い る 。
GFGS で は さ ら に 、 医 療 施 設 司 令 官 に 対 し 、 個 々 の 職 員 へ 安 全 保 護 具 を 提 供 す
る等の必要衛生措置を講ずることを義務付けている。
保管庫基準
GFGS は 発 生 源 で の 感 染 性 医 療 廃 棄 物 の 貯 留 及 び 保 管 は 、 施 設 内 中 央 倉 庫 へ 移
さ れ る ま で 、最 長 24 時 間 と 規 定 し て い る 。JEGS 及 び EGS は 感 染 性 医 療 廃 棄 物 に
ついて、こうした最終期限を設けていない。
感 染 性 医 療 廃 棄 物 の 保 管 に つ い て 、 EGS は 「 感 染 性 医 療 廃 棄 物 は 30 日 を 超 え
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
て 保 管 し て は な ら な い 」 と し 、 GFGS は 「 保 管 庫 内 の 温 度 は 15℃ 未 満 を 維 持 し 、
保 管 期 間 は 最 長 7 日 間 で あ る 。但 し 保 管 庫 内 の 温 度 が 8℃ 未 満 で 維 持 さ れ 、且 つ
衛生監督官の承認が得られた場合に限っては、期間延長の可能性がある」とし
て い る 。 USEUCOM(欧 州 統 合 軍 United States European Command)の 廃 棄 物 リ ス ト
の 18.01.02 に 属 す る 医 療 廃 棄 物 に つ い て は 、保 管 場 所 が 0 ℃ 未 満 に 維 持 さ れ て
い れ ば 、 医 療 施 設 内 で 最 長 6 ヶ 月 ま で 保 管 す る こ と が で き る 。 JEGS は 保 管 期 間
他の規制については言及していない。
EGS も 医 療 廃 棄 物 の 処 理 、 焼 却 、 消 毒 、 微 粉 化 を 許 可 し て い る 。
保 管 に 関 し て 、 JEGS は 汚 染 防 止 を 適 用 し 、 韓 国 及 び ド イ ツ は 消 毒 の 手 順 ・ 工
程を示している。
JEGS は 化 学 的 消 毒 法 に は 触 れ て い な い 。 韓 国 は 基 地 施 設 外 で の 医 療 廃 棄 物 処
理について追記している。韓国内で処分される米国防省施設の感染性医療廃棄
物は、施設から輸送される前に、有害医療廃棄物、一般医療廃棄物、もしくは
隔離医療廃棄物に、必要に応じて分類される。集荷と輸送の責任は米国政府に
ある。
9) 石 油 、 油 脂 、 潤 滑 油
JEGS は「 貯 油 施 設 」の 定 義 を 詳 述 し 、
「 貯 油 施 設 と は 、①( 地 下 貯 蔵 容 器 を 除
く ) 容 積 5,000L 以 上 の 地 上 貯 蔵 容 器 、 ② 容 積 159,091L 以 上 の 地 下 貯 蔵 容 器 、
③ C9.2.5「 パ イ プ ラ イ ン 施 設 」 で 特 定 さ れ て い る パ イ プ ラ イ ン 施 設 で 新 設 ・ 既
存 の 配 管 、 パ イ プ ラ イ ン 敷 設 権 、( バ ル ブ 等 の ) 補 助 装 置 、 POL ( 石 油 滑 油 ) 輸
送を目的に使用される全ての建物や施設を含む、のいずれかに該当する施設で
ある」としている。
一 方 、 韓 国 及 び ド イ ツ の 定 義 は 、「 POL 容 量 に 関 わ ら ず 、 独 立 し 、 固 定 又 は 準
固 定 さ れ た 施 設 群 で 、 POL 給 油 施 設 、 POL 保 管 施 設 、 POL 使 用 施 設 、 ハ ー ド ス タ
ン ド 、 油 水 分 離 器 を 含 む 。」 と し て い る 。
日本は「容積」について詳述しているが、他の2国より厳しい制限というわ
けではない。
韓国は全ての施設に対して、貯蔵容器管理計画の策定と維持を義務付けてお
り 、他 の 2 国 は 特 に こ れ に 言 及 し て い な い 。韓 国 は さ ら に 、POL の 保 管 コ ン テ ナ 、
コ ン テ ナ の デ ザ イ ン 、 金 属 性 POL 保 管 コ ン テ ナ の 腐 食 防 止 、 漏 れ 防 止 対 策 等 に
関連するパイプの地下埋設について細かく要件を定めている。
GFGS は 、 POL 貯 蔵 施 設 を 「 水 源 へ の 脅 威 と な る 物 質 を 保 管 す る 施 設 と し て 調
査・検査を要する施設」の適用範囲とし、地域の灯油タンクの要件も同時に課
す等、より厳しく規制している。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
10) 環 境 騒 音
JEGS 及 び EGS は 本 章 を 削 除 し て い る 。GFGS は 主 に 米 国 防 省 施 設 が 管 理 し て い
る各軍から発生し、周辺の施設外地域に影響する環境騒音について記述してい
る。この騒音は、機材、訓練、公式及び非公式の活動といった様々な発生源が
想定され、これらは有形ではない。騒音は、発生源に関わらず国防省施設から
発生したものと見なされる。施設外に影響を及ぼさない騒音については、施設
内の如何なる発生源も本章の要件は適用されない。訓練、演習、航空機や船舶
の操作から発生する騒音の管理については、ここでは言及されていない。
11) 農 薬
一 般 的 に 3 国 は 、 国 防 省 通 達 8910.1-M「 国 防 省 情 報 要 件 管 理 手 順 」 に 従 っ て
国 防 省 様 式 1532-1「 害 虫 管 理 維 持 報 告 書 」 又 は そ の 電 子 版 を 使 用 し て い る 。 皮
膚及び衣類への防虫剤を除く全ての農薬の使用を記録しなければならない。同
記録は特定の業務手順に従って作成され保存される。農薬の混合及び保管施設
を 含 む 全 て の 農 薬 管 理 施 設 は 軍 用 ハ ン ド ブ ッ ク 1028/8A「 害 虫 管 理 施 設 の 設 計 」
に準拠しなければならない。
韓国は、全体的又は部分的に関わらず農薬使用を伴う全ての業務契約は、該
当する害虫管理顧問から書面による承認を得なければならないとしている。ま
た、米軍有害生物管理委員会登録に記載されていない農薬、韓国国内で購入さ
れる化学薬品を使用したい場合は、農業生産、魚に毒性がある薬剤、水を汚染
す る 薬 剤 、農 薬 の 被 毒 ・事 故 に 関 連 し た 基 準 及 び 取 扱 い 制 限 等 の 特 別 要 件 が 適 用
される。
GFGS は 農 薬 使 用 の 条 項 に 、 農 薬 の 保 管 と 使 用 、 処 分 、 植 物 保 護 製 品 、 蜜 蜂 関
連植物保護議定書、手順通知、機材規格他の関連要件を定めている。
12) 歴 史 的 ・ 文 化 的 資 源
3 国 と も 本 章 で は 同 じ 要 件 を 定 め て い る 。 す な わ ち 施 設 司 令 官 は 、「 世 界 遺 産
リスト」又は「米国国家歴史登録材」に相当するホスト国のリストに登録され
た地域や構造物について、ある行為がこれらへ与える影響を十分に考慮し、悪
影響を回避又は軽減しなければならない。
JEGS に は 、 他 の 2 国 と 異 な り 、 国 内 の 遺 骨 の 取 扱 い に 関 す る 一 般 的 制 度 を 説
明した表が記載されている。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
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13) 天 然 資 源 及 び 絶 滅 危 惧 種
JEGS と ROKEG は 絶 滅 寸 前 或 い は 絶 滅 が 危 惧 さ れ る 動 植 物 の リ ス ト を 其 々 自 国
語での名前、英名、学名で表記したリストを掲載している。また天然記念物及
び侵略的外来種も記載している。韓国はさらに生態系、土地保全、湿地保護の
対象地域も付加している。
GFGS は ( FGS に は リ ス ト を 掲 載 し て い な い が ) ド イ ツ の 特 別 保 護 種 、 厳 格 保
護種の指定に言及し、連邦政府及び州政府それぞれによる地域レッドデータを
作 成 し て あ る 。 GFGS は 施 設 司 令 官 に 対 し 、「 施 設 内 の 土 壌 に 悪 影 響 を 与 え る か 、
施設周辺の土地に影響を与えるような、施設内変化を回避する予防措置を講じ
る 。ま た 人 体 へ の 被 害 又 は 自 然 資 源 に 悪 影 響 を 及 ぼ す 汚 染 が 発 生 し た 場 合 に は 、
施設内の立ち入り調査、報道、通知等についてこれを許可する」ことを義務付
けている。土地及び植生管理活動、保護的植物被覆等、侵食防止対策及び砂防
対策、自然資源及び景観の用途区分に影響するようなプロジェクト計画、指定
保護エリアの破壊、処分、損害、変更、障害等の害の禁止、等について明記し
ている。
14) ポ リ 塩 化 ビ フ ェ ニ ル
ポ リ 塩 化 ビ フ ェ ニ ル( PCB)濃 度 の 制 限 は 国 に よ っ て か な り 異 な る( 表 2-10)。
GFGS と JEGS に よ る と 、 立 入 制 限 区 域 外 に あ る 汚 染 土 壌 に つ い て は 、 最 低 10 イン
チの 深 さ 、も し く は PCB レ ベ ル が 10ppm 以 下 に な る と こ ろ ま で の 土 壌 が 取 り 除 か
れる。
一 方 EGS は よ り 厳 格 に 、 土 壌 の PCB 検 査 値 が 1ppm 以 上 を 認 め な い 。
3 国 は 、 PCB レ ベ ル 1ppm 未 満 の 清 浄 な 土 に よ る 埋 め 戻 し を 同 じ く 適 用 し て い
る。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
表 2-10
PCB の 基 準 比 較 ( ド イ ツ ・ 日 本 ・ 韓 国 )
PCB 変圧器使用に関する基準
PCB 含有物に対する証明書の添付基準
Identification and marking for items
containing PCBs
再利用により、汚染リスクを生じさせる用途に用いない
PCB 変圧器(PCB 濃度基準)
PCB transformers reuse that poses risk of
contamination will not be used
誘導性流体として使用できるPCB 変圧器
(PCB 濃度基準)
PCB transformer will be service only with
dielectric fluid containing
使用中 PCB 変圧器の検査期間
In service PCB transformer inspection
漏出した変圧器の修理及び交換期間
Leak transformer repair or replace deadline
すべての変圧器及びその他絶縁体や油圧油を
含む機器の調達の際に、製造業者の証明書を
添付する基準
Procurement of transformer or any other
equipment shall be accompanied by
Manufacturer’s certification
GFGS(ドイツ最終
管理基準)
50ppm 以上
JEGS(日本環境管
理基準)
任意の濃度
EGS(韓国環境管
理基準)
2ppm 以上
≥50 ppm
Any
concentration
50ppm 超過
500ppm 以上
言及なし
>50 ppm
≥500 ppm
No mention
50ppm 未満
500ppm 未満
言及なし
< 50 ppm
< 500 ppm
No mention
≥ 2 ppm
3 ヵ月ごと
3 ヵ月ごと
Every 3 months
Every 3 months
48 時間以内
48 時間以内
48 時間以内
Within 48
hours
Within 48
hours
Within 48
hours
2ppm 未満
検出可能な PCB
なし
2ppm 未満
< 2 ppm
No detectable
PCBs
-
< 2 ppm
JEGS は PCB の 識 別 と 表 示 を 厳 格 に 規 定 し て い る 。 PCB が 検 出 さ れ る と 、 そ の
濃 度 に 関 わ ら ず 、 英 語 及 び 日 本 語 で PCB を 含 む 品 目 を 表 示 し 、 流 出 が あ っ た 場
合 や 処 分 に 対 す る 問 合 先 を 明 記 す る こ と と し て い る 。 ま た PCB 含 有 品 目 に つ い
ては(既に表示されているのでなければ)使用後の除去時点で表示しなければ
ならない。
GFGS は PCB 含 有 設 備 機 器 か ら の PCB 除 去 を 容 認 し て い る 。し か し こ う し た PCB
含有機材設備が浄化後再使用もしくは保管される場合は、その表示を義務付け
ている。
JEGS は PCB 含 有 変 圧 器 の 取 扱 い に つ い て 、 管 轄 消 防 署 で の 登 録 を 義 務 付 け 、
商業建築物の内部又はその近隣にある変圧器は、故障時の障害を最小化するた
めの電気防食装置を備える、とする等、より具体的に定めている。さらに、変
圧器の再利用のための移動及び保管は、当初の使用方法及び場所に限定され、
1年以内に代替となる場所が無いと判断される場合を除いては、当初の場所以
外で使用されてはならない。
EGS は GFGS や JEGS と は 異 な っ た パ ラ メ ー タ ー を 使 用 し て い る 。 韓 国 は 2ppm
を 超 え る PCB 含 有 量 の 全 て の 変 圧 器 の 交 換 を 次 の よ う に 要 請 し て い る : 2005 年
9 月 30 日 を も っ て PCB 含 有 量 50ppm 以 上 の 変 圧 器 は 廃 止 さ れ 、 新 た に 非 PCB 変
圧 器 へ 交 換 さ れ る 。 PCB 含 有 量 2ppm 以 上 の 変 圧 器 は 2015 年 9 月 30 日 ま で に 廃
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
止され、これらは既存の変圧器及び他の電気系統の部分的保守管理を含む如何
な る 形 態 で も 使 用 さ れ て は な ら な い 。 PCB 濃 度 が 2ppm 以 上 の 帯 電 流 体 が 廃 棄 さ
れ た 場 合 、 こ れ は PCB 汚 染 液 と 見 な さ れ る 。
15) ア ス ベ ス ト
ド イ ツ 及 び 韓 国 で は 、 ア ス ベ ス ト を 重 量 比 1%以 上 含 む 物 質 を 、 ア ス ベ ス ト 含
有 物 質 と 定 義 し て い る 。 日 本 は さ ら に 厳 格 に 、 重 量 比 0.1%以 上 を ア ス ベ ス ト 含
有物質としている。
こ う し た 基 準 の 違 い は 、分 析 方 法 の 差 異 に 直 結 し た も の で あ る 。日 本 で は 、
(ア
ス ベ ス ト を 含 有 し な い ) 物 質 は 0.1%未 満 で な け れ ば な ら ず 、 偏 光 顕 微 鏡 に よ っ
て ( 微 量 も し く は 1%未 満 の ) 如 何 な る 分 量 の ア ス ベ ス ト が 検 出 さ れ た 場 合 に お
いても、下記の適切な試験方法をもって「アスベスト非検出」と証明されるの
で な け れ ば 、 こ れ を 0.1%以 上 の ア ス ベ ス ト 含 有 物 質 と 見 な す :
透 過 電 子 顕 微 鏡 法 ( TEM) も し く は 1000 ポ イ ン ト カ ウ ン テ ィ ン グ 法
アスベストの基準及び等級は国によって異なる。ドイツは、アスベスト軽減
対策の目的から、使用形態、アスベストの種類、アスベスト製品の表層構造、
製品の外傷、室内使用、製品設置位置等に分類した評価システムを採用してい
る。
・ 80 ポイントを 超 え る 場 合 :( 優 先 レ ベ ル I) 即 時 対 応 及 び ア ス ベ ス ト フ ァ イ バ
ー放出削減の軽減措置を要する。
・ 70 ポイントか ら 79 ポイント:( 優 先 レ ベ ル II) 中 期 的 対 応 及 び 2 年 毎 の 再 評 価 を
要する。
・ 70 ポイント未 満 :( 優 先 レ ベ ル III) 長 期 的 対 応 及 び 5 年 毎 の 再 評 価 を 要 す る 。
一 方 で 韓 国 は 、 ア ス ベ ス ト 含 有 廃 棄 物 ( ACWM ) を よ り 問 題 視 し 、 そ の 手 順 や
要 件 を 細 か く 記 載 し て い る 。 ま た 解 体 工 事 や 改 築 工 事 に お い て 如 何 に し て ACM
を取扱い除去するのかについても指示している。影響を受けうる労働者全員に
対 し て 、 米 国 EPA の 認 証 評 価 規 定 に 従 っ て 周 知 ・ 教 育 プ ロ グ ラ ム を 実 施 す る 。
なお、日本では、アスベストに関して、米軍施設内における建築(解体)工
事 に お い て は 、建 設 元 請 け 業 者 に 対 し 、米 国 要 件 に 加 え て 、表 2-11 の 日 本 政 府
の法令遵守が義務付けられる。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
表 2-11
所管省庁
環境省
アスベストに関する日本国内の法令
関係する法令及び管理指針について
・大気汚染防止法
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律
・石綿含有家庭用品を処理する際留意すべき事項について
厚生労働省
・労働安全衛生法
・石綿障害予防規則
国土交通省
・建築基準法
・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
16) 未 使 用
( JEGS、 EGS、 GFGS 共 に 記 述 無 し )
17) 鉛 ベ ー ス 塗 料
3 ヶ 国 の 環 境 管 理 基 準 ( EGS) は 、 子 供 が 利 用 す る 施 設 や 軍 人 家 族 住 居 ( MFH)
において、人体と環境を保護する手法による暫定的管理や被害軽減措置を通じ
て 、 鉛 ベ ー ス 塗 料 ( LBP) に よ る 危 険 を 特 定 、 管 理 又 は 排 除 す る た め の 鉛 被 害 管
理プログラムを策定、実施するための同様な基準を定めている。
1 ㎠ 当 た り 1.0 ㎎ 以 上 、 重 量 比 0.5 %以 上 、 又 は 重 量 比 5,000 ppm 以 上 の 鉛 を
含 有 す る 塗 料 又 は 他 の 表 面 塗 装 剤 に 適 用 さ れ る 規 格 も 3 ヶ 国 同 じ で あ る 。ま た 、
鉛含有粉塵の危険性としては、拭き取ったサンプルを基に単位面積当たりの濃
度 が 床 の 上 で は 40μg/ft 2 以 上 、屋 内 の 窓 台 で は 250μg/ft2 以 上 と 規 定 し て い る
が 、 鉛 含 有 粉 塵 選 抜 検 査 で 、 粉 塵 中 の 鉛 含 有 レ ベ ル が 床 上 で 25μg/ft 2 以 上 、 屋
内 窓 枠 で 125μg/ft 2 以 上 と 判 明 し た 場 合 は 、鉛 ベ ー ス 塗 料 の 危 険 性 査 定 を 実 施 す
べきとしている。
鉛 汚 染 廃 棄 物 は 、第 6 章「 有 害 廃 棄 物 」に 従 っ て 処 理 さ れ な け れ ば な ら な い 。
EGS で は 、鉛 危 険 の お そ れ の あ る 場 所 を 具 体 的 に 例 示 し 、鉛 軽 減 作 業 に 従 事 す
る職員、鉛リスク審査官、保全・再塗布監督官、鉛検査技師、鉛低減監督官に
対 し LBP 低 減 に 係 る 訓 練 を 実 施 す る よ う 規 定 し て い る 。 ま た 、 ど の 日 で も 限 界
値以上の鉛暴露する、又はその恐れのある職員全てに対し、鉛被害教育プログ
ラムを確立・実施することを義務付けている。保守営繕指導、古い建物の改築
や近代化、建物塗り替えの手順、住宅及び非住宅施設における鉛被害軽減対策
手段等についても詳しく述べている。
GFGS は 無 水 、 中 性 の 炭 酸 鉛 、 含 水 炭 酸 鉛 、 硫 酸 鉛 を 含 有 す る 塗 料 を 使 用 す る
ことを禁止し、表示についても言及している。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
18) 流 出 防 止 対 応 計 画
本 章 で は POL 及 び 有 害 物 質 の 流 出 に 係 る 計 画 、 防 止 、 管 理 及 び 報 告 に 関 す る
計 画 の 基 準 を 定 め る 。3 国 の FGS は い ず れ も 、国 防 省 の 活 動 に よ り 生 じ え る こ れ
ら物質の流出を防止し、流出事故が発生した場合、封じ込め、汚染除去するた
め の 国 防 省 の 政 策 を 示 し て い る 。初 期 対 応 で 求 め ら れ る 以 上 の 修 復 作 業 は 、1998
年 2 月 2 日 付 け 国 防 省 指 示 書 4715.8「 海 外 に お け る 国 防 省 の 活 動 に 係 る 環 境 修
復」に従って実施されるとしている。
日 本 国 内 で 下 記 に あ て は ま る 場 合 、USFJ 書 式 50 を 使 用 し て 報 告 書 を 提 出 す る 。
1.国 防 省 施 設 内 で 流 出 が 発 生 し 、 必 要 な 防 壁 や 二 次 容 器 で も 封 じ 込 め る こ と
ができないとき。
2. 400 リットルを 超 え る POL が 流 出 し た 場 合 。
3. 水 資 源 が 汚 染 さ れ て い る と き 。
4. 施 設 事 故 指 揮 官 ( FIC) が 流 出 を 重 要 事 故 で あ る と 決 定 し た と き 。
EGS は 、毎 年 、同 計 画 で 指 定 さ れ て い る 場 所 の 一 つ で 施 設 流 出 対 応 行 動 演 習 を
行うこと、及び 3 年に 1 度は、流出最悪シナリオを想定した特別訓練を行うこ
とを義務付けている。
19) 地 下 貯 蔵 タ ン ク
本 章 で は 、3 国 と も 同 じ 目 的 及 び 基 準 を 記 載 し て い る 。そ の 目 的 と は 、地 下 貯
蔵 タ ン ク ( UST) に 保 管 さ れ た POL 製 品 や 有 害 物 質 か ら 生 じ る 汚 染 を 管 理 、 軽 減
す る こ と で あ る 。 UST に 保 管 さ れ る 有 害 廃 棄 物 に つ い て は 第 6 章 「 危 険 廃 棄 物 」
で 、 地 上 及 び 地 下 POL 貯 蔵 容 器 に つ い て は 第 9 章 「 石 油 ・ 油 脂 ・ 潤 滑 油 」 に 記
載されている。
JEGS 及 び GFGS は 、全 て の 軍 施 設 で 地 下 貯 蔵 タ ン ク 一 覧 を 有 す る こ と を 義 務 付
けている。
漏 出 探 知 シ ス テ ム に つ い て は 、 JEGS 及 び EGS で は 、 UST は 、 タ ン ク 自 動 計 測 、
蒸気監視、地下水監視、タンク間隙内監視のうち少なくとも 1 つを使用するこ
と を 定 め て い る 。 こ れ に 対 し 、 GFGS は UST に 間 隙 内 監 視 を 備 え る こ と を 義 務 付
け、タンク自動計測、蒸気監視、及び地下水監視は適用外としている。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
但し、韓国は漏出探知システムについて次のように記載している。
(a)二 次 容 器 を 漏 出 探 知 装 置 と し て 備 え て い る UST に つ い て は 、 最 低 で も 年 1
回、同封じ込め容器の気密試験を行わなければならない。
(b)二 次 容 器 以 外 の 漏 出 探 知 装 置 を 備 え て い る UST に つ い て は 、 UST シ ス テ ム
設置エリアの 4 地点で年 1 回土壌検査をおこなわなければならない。検査対
象 と な る の は 、 UST の 最 も 深 い 部 分 か ら 約 1.5m 掘 り 下 げ た と こ ろ の 土 壌 で あ
る 。埋 設 配 管 は 、 ラ イ ン か ら 1.5m 掘 り 下 げ た と こ ろ か ら 10m 分 の 土 壌 を 検 査
す る 。 汚 染 が 検 出 さ れ た 場 合 、 国 防 省 通 達 4715.8「 海 外 に お け る 国 防 省 の 活
動 に 係 る 環 境 修 復 」 及 び USFK 規 則 200-1 が 適 用 さ れ る 。
POL タ ン ク 建 設 に 関 し て 、 韓 国 は 、POL 貯 蔵 タ ン ク を 可 能 な 限 り 地 上 タ ン ク へ
取り替えるよう指示している。
漏 出 探 知 機 能 を 備 え て い な い 全 て の UST 及 び 配 管 に つ い て は 、 直 ち に 改 善 措
置 を と ら な け れ ば な ら な い 。 こ う し た EGS の 要 件 に 加 え 、 JEGS は 米 国 工 業 規 格
に従って手動気密試験と状況確認を毎月行い、その気密性を確認することを義
務 付 け て い る 。 GFGS は 機 能 的 漏 出 探 知 シ ス テ ム を 備 え な い UST 及 び 配 管 を 認 め
ていない。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2.3 米 軍 駐 留 国 に お け る 主 な 環 境 関 連 法 規
2.3.1 日 本
(1) 跡地利用推進法について
日 本 国 内 に お け る 米 軍 基 地 に か か る 関 連 法 規 と し て 、日 米 地 位 協 定 第 25 条 に
規定する合同委員会において返還が合意された駐留軍用地跡地(=米軍基地跡
地)を対象とした「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推
進 に 関 す る 特 別 措 置 法 」( 以 下 、「 跡 地 利 用 推 進 法 」 と い う 。) が あ る 。 以 下 に 当
該法律の概要を整理した。なお、当該法律内で引用のある、土壌汚染対策法、
水質汚濁防止法、ダイオキシン類対策特別措置法については、別途「第 4 章日
本国内の米軍施設外の環境問題とその対応状況」にて整理を行った。
① 概要
本 法 律 は 、旧 沖 振 法 (沖 縄 振 興 特 別 措 置 法 )第 7 章 と 返 還 特 措 法 (沖 縄 県 に お け
る 駐 留 軍 用 地 の 返 還 に 伴 う 特 別 措 置 に 関 す る 法 律 )の 二 法 に 分 か れ て 規 定 さ れ
ていた駐留軍用地跡地に関する規定を一元化したものである。本法律は、基本
理念として、①沖縄の自立的発展及び豊かな生活環境の創造のための基盤とし
ての跡地の有効かつ適切な利用の推進、②国は、国の責任を踏まえ跡地利用を
主体的に推進、③跡地の返還を受けた所有者等の生活の安定への配慮、を定め
て い る 。 概 要 に つ い て は 、 図 2-8 に 示 す と お り で あ り 、 環 境 に 関 し て は 、 駐 留 軍
用地の立入りの国へのあっせん、支障除去措置に関る規定がある。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
出典 1)「新たな沖縄の米軍基地跡地利用推進のための法制度
-跡地利用特措法の成立-」(立法と調査
No.331、笹本浩、2012 年 8 月)を元に作成
出典 2)官邸 HP
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2014/okinawa_shinkou/os_09.pdf
図 2-8 沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(跡地利用特措法)の概要
② 背景及び目的
本法律の目的は、本法第一条にて、以下のとおり明記されている。
跡地利用推進法(目的)
第一条
この法律は、駐留軍用地及び駐留軍用地跡地が広範かつ大規模に存在する沖縄県の
特殊事情に鑑み、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別の措置を講
じ、もって沖縄県の自立的な発展及び潤いのある豊かな生活環境の創造を図ることを目的
とする。
米軍基地の返還は沖縄県の復帰以前から行われていたが、跡地整備に関する
法的枠組みは、平成 7 年 5 月に「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別
措 置 に 関 す る 法 律 」( 以 下 「 返 還 特 措 法 」 と い う 。) が 成 立 す る ま で 整 備 さ れ て
おらず、既存の法制度が利用されていた。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
沖 縄 県 に お け る 米 軍 基 地 ( 以 下 「 駐 留 軍 用 地 」 と い う 。) は 、 沖 縄 戦 終 結 後 、
米軍が農地、宅地等の多くの民有地を強制的に接収して構築された歴史的経緯
か ら 、 現 在 も な お 民 有 地 の 占 め る 割 合 が 非 常 に 高 い ( 約 33% 、 2011 年 沖 縄 県 資
料)ことなどもあり、駐留軍用地の地主が駐留軍用地の賃借料を主な収入源と
して生計を立てざるを得ないなどの特殊な事情をもつ。
出典)「沖縄の米軍基地」(沖縄県知事公室基地対策課、平成 25 年 3 月)
図 2-9
在沖米軍基地における民有地の割合
さらに駐留軍用地が返還される場合でも、細切れ返還や返還後の利活用が配
慮されていなかった等の理由により、広範かつ長期間にわたり駐留軍用地跡地
が遊休化し、地権者が経済的に困難な状況に陥ることも多かった。このため、
沖縄県を始めとする地元関係者から、駐留軍用地の返還跡地利用の在り方や、
返還後の土地所有者に対する補償(給付金)などについて立法化が要望されて
いた。
こうした要望などを踏まえ、平成 7 年 5 月に返還特措法が議員立法として可
決 ・ 成 立 し 、 そ の 後 、 SACO 最 終 報 告 で 普 天 間 飛 行 場 の 返 還 が 合 意 さ れ た こ と な
どもあり、それらに対応するため沖縄県や関係市町村及び国との間で協議が行
わ れ 、 平 成 14 年 に 沖 縄 振 興 特 別 措 置 法 ( 以 下 「 旧 沖 振 法 」 と い う 。) が 制 定 さ
れ た ( 同 年 4 月 施 行 )。 こ の 法 第 7 章 と し て 「 駐 留 軍 用 地 跡 地 の 利 用 の 促 進 及 び
円滑化のための特別措置」が盛り込まれ、跡地利用の基本原則、財政上の措置
などを国の責務として講ずること、大規模跡地における国の取組方針の策定、
大規模跡地又は特定跡地における給付金支給に関する特例措置等が規定される
こととなった。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
そ の 後 、昭 和 36 年 1 月 1 日 ~ 平 成 21 年 3 月 31 日 ま で に 返 還 さ れ た 駐 留 軍 用
地 は 、 12,313.1ha と な り 、 そ の う ち 、 公 共 事 業 に よ り 整 備 さ れ た も の ( 昭 和 36
年 1 月 1 日 ~ 平 成 21 年 3 月 31 日 時 点 の 実 施 中 及 び 計 画 中 の も の を 含 む 。) は
4,479.5ha で 、 返 還 面 積 の 36.4% を 占 め て い る 。 利 用 形 態 で は 、 個 人 、 企 業 に
よ る 利 用 が 3,822.8ha で 31.0% 、 次 い で 、 保 全 地 が 3,529.5ha で 28.7% 、 公 共
の 利 用 は 2,534.5ha で 20.6% 、 自 衛 隊 の 利 用 は 486.5ha で 4.0% 、 米 軍 へ の 再
提 供 が 320.0ha で 2.6% 、 ま た 、 利 用 困 難 地 等 に つ い て は 1,619.8ha で 13.2%
となっている。
返還された駐留軍用地は、主に土地区画整理事業や土地改良事業等の公共事
業や民間による開発が行われた。具体的には、那覇市の那覇新都心地区、小禄
金 城 地 区 、北 谷 町 の 桑 江 ・ 北 前 地 区 の 跡 地 利 用 が 成 功 例 と し て 挙 げ ら れ 、3 地 区
合 計 の 経 済 波 及 効 果 は 返 還 前 と 比 較 し て 25 倍 、 2,148 億 円 と な っ て お り 、 都 市
地区の住宅地の確保や不足がちな公共施設の建設、農地の拡大あるいは工業用
地に使用されるなど、地域振興に大きな役割を果たしている。しかし、この開
発が行われ、跡地利用が完了するまで、那覇新都心地区(旧牧港住宅地区)で
は 約 19 年 、 小 禄 金 城 地 区 ( 旧 那 覇 空 軍 海 軍 補 助 施 設 ) で は 約 12 年 、 北 谷 町 桑
江 ・ 北 前 地 区 ( 旧 キ ャ ン プ 瑞 慶 覧 ( バ ン ビ ― 飛 行 場 )) で は 約 9 年 と い う 長 い 時
間 が か か っ た 。( 図 2-10)
出典)「駐留軍用地跡地利用推進法(仮称)の新たな制度・施策」(沖縄県、平成 23 年 3 月)
図 2-10
土地返還から事業完了までの期間
-58-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
このような現状を踏まえ、駐留軍用地の跡地利用の推進に関しては、返還特
措法及び旧沖振法の法的枠組みの下で進められてきたが、両法の有効期限が平
成 23 年 度 末 と さ れ て い た こ と や 、 沖 縄 県 や 関 係 市 町 村 か ら 、法 律 の 期 限 延 長 と
新たな施策を盛り込むことが要請されていた。このため沖縄県は、関係市町村
と の 協 議 を 踏 ま え 、 平 成 22 年 7 月 に 「 基 地 利 用 に 関 す る 新 た な 法 制 度 提 案 の 基
本 的 考 え 」 を 、 平 成 23 年 6 月 に は 「 駐 留 軍 用 地 跡 地 利 用 推 進 法 ( 仮 称 ) 県 要 綱
案」を取りまとめ、新法の制定について国に要請を行った。
これらの要請では、跡地利用の推進は長年基地を提供してきた国の責務とし
て行われるべきであり、跡地の有効利用が沖縄県の自立的な経済の発展につな
がるものとすべきという基本スタンスに基づき、①国の責任を明確にして国が
積極的に関与する仕組みとすること、②給付金は、返還から跡地整備完了まで
の間を、土地が使用収益できないことに対する補償として支給する仕組みとす
ること、③沖振法第7章と返還特措法を一元化し、新たな制度を盛り込んだ特
別法とし、全ての基地跡地の整備が終了するまでの恒久立法とすること、④返
還前の環境調査及び汚染等の原状回復措置の徹底を法制化すること等を求めて
いた。
政 府 側 に お い て も 返 還 特 措 法 改 正 に つ い て 、「 沖 縄 振 興 審 議 会 」 や 「 沖 縄 政 策
協議会」等における議論がなされた。また、与党民主党においても「沖縄協議
会」や「沖縄政策プロジェクトチーム」が設置され検討が行われた。
こ の よ う な 経 緯 を 経 て 、 平 成 24 年 2 月 9 日 の 「 沖 縄 政 策 協 議 会 」 に お い て 、
政府側から、
「沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律の
一 部 を 改 正 す る 法 律 案 」 の 概 要 に つ い て 説 明 さ れ 、 翌 10 日 、 同 法 律 案 は 閣 議 決
定後、国会(衆議院)に提出され、その後本法律が成立することとなった。
出典)「新たな沖縄の米軍基地跡地利用推進のための法制度-跡地利用特措法の成立-」(笹本浩、立法と
調査 No.331、2012 年 8 月)をもとに加筆修正
-59-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
③ 環境問題に対する対応・手続き
環境問題に対する対応は、本法第八条にて、返還実施計画として以下のとお
り明記されている。
跡地利用推進法(返還実施計画)
第八条
国は、合同委員会(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第
六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(第三十
一条第二項において「日米地位協定」という。)第二十五条に規定する合同委員会をいう。
以下同じ。)において返還が合意された駐留軍用地の区域の全部について、返還後におい
て当該土地を利用する上での支障の除去に関する措置を当該土地の所有者等に当該土地
を引き渡す前に講ずることにより、その有効かつ適切な利用が図られるようにするため、
速やかに、当該駐留軍用地の返還に関する実施計画(以下この条及び第十一条第一項「返
還実施計画」という。)を定めなければならない。ただし、駐留軍用地の所有者等が、自
ら当該土地を使用する目的で行った申請に係る返還については、この限りでない。
2
返還実施計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一
返還に係る区域
二
返還の予定時期
三
第一号の区域内に所在する駐留軍が使用している建物その他土地に定着する物件の
概要及び当該建物その他土地に定着する物件の除却をするとした場合に当該除却に要
すると見込まれる期間
四
第一号の区域において次に掲げる事項について、調査を行う区域の範囲、調査の方法、
調査に要すると見込まれる期間及び調査の結果に基づいて国が講ずる措置に関する方
針
イ
土壌汚染対策法 (平成十四年法律第五十三号)第二条第一項 に規定する特定有害
物質又はダイオキシン類(ダイオキシン類対策特別措置法 (平成十一年法律第百五
号)第二条第一項 に規定するダイオキシン類をいう。ロにおいて同じ。)による土
壌の汚染の状況
ロ
水質汚濁防止法 (昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項第一号 に規定す
る物質又はダイオキシン類による水質の汚濁の状況
ハ
不発弾その他の火薬類の有無
ニ
廃棄物の有無
ホ
その他政令で定める事項
-60-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
本法律では、国は、日米合同委員会において返還が合意された駐留軍用地の
区域の全部について、返還後において当該土地を利用する上での支障の除去に
関する措置を当該土地の所有者等に引き渡す前に講ずることにより、その有効
かつ適切な利用が図られるようにするため、速やかに「返還実施計画」を定め
なければならないとされた。
返還実施計画には、①返還に係る区域、②返還の予定時期、③当該区域内に
所在する米軍が使用している建物等の概要及び建物の除去に要する期間、④当
該区域において特定有害物質及びダイオキシン類による土壌の汚染の状況等に
ついて調査を行う区域の範囲、調査の方法、調査に要すると見込まれる期間及
び調査の結果に基づいて国が講ずる措置に関する方針について定めるとされ、
国は返還実施計画を定めたときは、当該返還実施計画に基づき必要な措置を講
ずるとされた。
跡地利用推進法では、
「 返 還 実 施 計 画 」と「 駐 留 軍 用 地 を 返 還 す る 場 合 の 措 置 」
に分かれ規定されているが、沖縄県や土地の所有者等から、不発弾処理や汚染
物質の除去等の徹底した原状回復措置が求められたことを踏まえ、新たに両規
定を統合した。
従来、返還実施計画に定める原状回復に関する具体的な措置は、返還特措法
施行令に規定されてきたが、本改正により、建物等の除去、土壌汚染物質、水
質汚染、不発弾等調査等が法律上明記された。
また、従来の政令においては、土壌汚染物質等については「駐留軍の行為」
に起因するものに限定されてきたが、本法律では駐留軍の行為に起因しないも
の ( 大 戦 中 の 不 発 弾 な ど ) も 対 象 と な る 。 な お 、 当 初 の 閣 法 で は 、「 国 が 調 査 を
行う必要があると認められる場合」に限定されていたが、衆議院修正の結果、
引渡し前に当該土地の区域の全部について支障除去措置を実施することが義務
付けられた。
出典)「新たな沖縄の米軍基地跡地利用推進のための法制度
-跡地利用特措法の成立-」(笹本浩、立法
と調査 No.331、2012 年 8 月)
④ 浄化の程度を検討する際に参考となる基準
環境に関する基準は以下のとおり記載されている。
跡地利用推進法(返還実施計画)
第八条
7
国は、返還実施計画を定めたときは、当該返還実施計画(変更があったときは、その変
更後のもの)に基づき支障の除去に関する措置を講ずるものとする。
-61-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
ま た 、 第 18 回 沖 縄 振 興 審 議 会 ( 平 成 22 年 9 月 9 日 ) に お け る 審 議 資 料 で あ
る沖縄県作成の「新たな沖縄振興の必要性について」によると、新たな沖縄振
興の枠組みの一つとして、国に「徹底的な環境浄化等」を求めている。
第 18 回沖縄振興審議会資料
3
新たな沖縄振興の必要性について
駐留軍用地跡地利用推進法(仮称)の制定
国の責務による既存の枠組みを超えた駐留軍用地跡地利用に関する法制度(別枠の予算
の確保と行財政上の特別措置、給付金制度の見直し、基地の返還前の立ち入り調査、徹底
的な環境浄化等)
⑤ 各主体の責務・役割
跡地利用推進法(国の責務)
第四条
国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、沖縄県
及び関係市町村との密接な連携の下に、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関
する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2
政府は、この法律の目的を達成するため、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を推進
するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を講じなければな
らない。
(地方公共団体の責務)
第五条
沖縄県及び関係市町村は、基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえ、
当該地域の状況に応じた駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を推進するために必要な
駐留軍用地跡地の利用に関する整備計画の策定その他の措置を講ずるよう努めなければ
ならない。
(国、沖縄県及び関係市町村の協力)
第六条
国、沖縄県及び関係市町村は、この法律の目的を達成するため、相互に協力しなけ
ればならない。
本法律においては、国の責務及び地方公共団体(沖縄県及び関係市町村)の
責務も新たに規定された。国の責務については、基本理念にのっとり沖縄県及
び関係市町村との密接な連携の下に、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の
推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施するとされた。その上で、政府
は、この法律の目的を達成するため、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を
推進するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を
講じなければならないとされた。
沖縄県及び関係市町村の責務としては、基本理念にのっとり、国との役割分
担を踏まえ、当該地域の状況に応じた駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
推進するため必要な駐留軍用地跡地の利用に関する整備計画の策定その他の措
置を講ずるよう努めなければならないとされた。国や地方公共団体の責務に関
する規定については、従来、旧沖振法第 7 章の「駐留軍用地跡地の利用の促進
及 び 円 滑 化 の た め の 特 別 措 置 」に 、国 や 地 方 公 共 団 体 の 講 ず る 措 置( 努 力 規 定 )
として定められていた。沖縄県側は、新たな跡地法制定に当たって、跡地利用
の推進は長年基地を提供してきた国の責務として行われるべきであるとして、
新法に国の責務を明示することを求めていた。こうした動きを受けて、今回の
法改正では、旧沖振法の規定を移し替えた上で、新たに国の責務を明示する規
定が盛り込まれた。
出典)「新たな沖縄の米軍基地跡地利用推進のための法制度
-跡地利用特措法の成立-」(笹本浩、立法
と調査 No.331、2012 年 8 月)
⑥ 立入に関する規定
跡地利用推進法(駐留軍用地についての調査及び測量の実施に関するあっせん)
第九条
沖縄県知事又は関係市町村の長は、総合整備計画の策定その他この法律に基づく施
策を実施するため日米安全保障協議委員会(日米安保条約に基づき、日本国政府とアメリ
カ合衆国政府の間の相互理解を促進することに役立つとともに安全保障の分野における
両国間の協力関係の強化に貢献するような問題であって安全保障問題の基盤をなすもの
のうち、安全保障問題に関するものを検討するために設置された特別の委員会をいう。第
十二条第一項において同じ。)又は合同委員会において返還が合意された駐留軍用地にお
いて調査及び測量を行う必要があると認めるときは、国に対し、当該駐留軍用地について
の調査及び測量の実施に関してあっせんを申請することができる。
2
国は、前項の規定によるあっせんの申請を受けた場合には、当該申請をした沖縄県又は
関係市町村による当該駐留軍用地についての調査及び測量の実施に関するあっせんを行
わなければならない。
3
国は、第一項の規定によるあっせんの申請をした沖縄県知事又は関係市町村の長からの
求めがあった場合には、あっせんの状況について通知するものとする。
本法律において、沖縄県知事又は関係市町村の長は、総合整備計画の策定等
の た め 、 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 ( い わ ゆ る 「 2+ 2」) 又 は 日 米 合 同 委 員 会 に お
いて返還が合意された駐留軍用地において調査及び測量を行う必要があると認
められるときは、国に対し、当該駐留軍用地についての調査及び測量の実施に
関してあっせんを要請することができるとされた。
当該申請をした沖縄県又は関係市町村による調査及び測量の実施に関するあ
っせんを行わなければならないこととするとともに、当該申請をした沖縄県知
事又は関係市町村の長からの求めがあった場合には、あっせんの状況について
-63-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
通知するものとされた。
返還予定の駐留軍用地の調査及び測量のあっせんに関する規定は、返還特措
法においても存在したが、あっせん申請までの規定しかなく、基地返還後の速
やかな事業着手のための返還前からの基地内立入調査の計画的な実施が困難な
状況であった。
沖縄県側は、返還が大筋合意された基地について、返還前の基地内立入調査
が着実に実施できる制度の創設を求めていた。国は、こうした県側の要望を踏
まえ、当初の閣法において、あっせんの要請を受けた場合に国が米側に対して
あ っ せ ん に 「 努 め る 」 旨 の 規 定 を 新 設 し た 。 衆 議 院 修 正 に お い て 、「 努 め る 」 を
「行わなければならない」とし、さらにあっせんの状況について県知事等に対
して通知することが国に義務付けられることとなった。このあっせん及び通知
の義務付けについて田中防衛大臣(当時)は、沖縄県の地方公共団体からあっ
せんの申請があった場合には、返還前の駐留軍用地への立入りができるよう、
沖縄防衛局を窓口として米側に対しあっせんを行い、義務化された通知も含め
て全力を挙げたいと決意を述べた。
なお、従来の規定では、日米合同委員会において返還が合意された場合のみ
が 対 象 と さ れ て い た が 、 今 回 の 改 正 で は 、「 2+ 2」 で 返 還 が 合 意 さ れ た 場 合 も 対
象とされた。
こ の 結 果 、 SACO 最 終 報 告 や 日 米 ロ ー ド マ ッ プ で 返 還 が 合 意 さ れ た 駐 留 軍 用 地
も対象となる。
出典)「新たな沖縄の米軍基地跡地利用推進のための法制度
と調査 No.331、2012 年 8 月)
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-跡地利用特措法の成立-」(笹本浩、立法
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2.3.2 米 国 本 国
(1) 米合衆国本土における環境関連法規及び環境へ取り組みの歴史的推移
米合衆国において環境に関連する規則、取り決めは、歴史をたどると慣習法
の時代に遡り、州や地域によって数多く存在する。近代においては魚類、野生
動物の保護や、森林保護などが主であり、初めて連邦政府の法律として制定さ
れ た の は 1899 年 の 河 川 及 び 港 湾 法 ( 仮 訳 ) で あ っ た 。
そ の 後 、 1963 年 に 制 定 さ れ た Clean Air Act( 大 気 浄 化 法 ) や 、 1965 年 制 定
の Solid Waste Disposal Act( 固 形 廃 棄 物 処 理 法 )、 続 い て 1972 年 制 定 の Clean
Water Act( 水 質 浄 化 法 ) な ど 、 産 業 や 工 業 の 発 展 に よ り 人 間 の 創 り 出 す 化 学 物
質や廃棄物などの環境汚染が深刻になりつつある中で、特に環境に関する関心
が 高 ま り 、1960 年 代 終 わ り か ら 1970 年 代 に か け て 、様 々 な 法 改 正 、環 境 関 連 の
法整備がなされるようになった。主な流れを追うと次の通りとなる。
1) Solid Waste Disposal Act( 固 形 廃 棄 物 処 理 法 ・ 1965 年 制 定 )
急速な科学技術の発達により、過去に類をみない様々な種類の合成化合物の
生産とその廃棄や処分と、巨大都市の形成によってもたらされる、生活廃棄物
に対する経済的、技術的、管理上の問題に対処するために制定された。
2) National Environmental Policy Act( 国 家 環 境 政 策 法 ・ 1969 年 制 定 )
本 法 第 1 章 、 Congressional Declaration of National Envirionmental Policy
( 国 家 環 境 政 策 に 関 す る 議 会 宣 言 ) の (a) に 謳 わ れ て い る 、「 米 議 会 は 、 人 間
の営みが自然環境を構成する全ての要素の相互関連に多大な影響を及ぼすこ
と、特に人口増加、都市の高密度化、工業の拡大、資源開発や科学技術の進歩
拡大を認識し、さらに総合的な国民の福祉と発展のために環境の保全が非常に
重要であることを理解する。そして、米連邦政府が継続的な政策として、各州
政府ならびに地方行政及びその他の公共または民間の組織と協力して、実行で
きるあらゆる手段手法を活用し、財政的かつ技術的な支援策を含め、総合的な
福祉を育み促進できるよう、人間と自然が実り多くかつ調和して共存できる状
態の創出と維持と、次の世代に必要とされる社会的、経済的、その他重要な要
件 を 満 た す こ と を 、 議 会 は 宣 言 す る 。( 意 訳 )」 と の 宣 言 の も と 、 人 間 の 営 み と
それを取り巻く環境の調和を国家的政策として掲げた。
本法で、米国連邦政府による政策や事業計画、実施の際に、人間や生態系に
著しい影響を与えると懸念される場合、環境アセスメントを行うことを義務づ
け、環境保全の役割、責任等を法的に定め、環境保全・保護への本格的な取り
組みを決めた。また、本法では、自然環境や資源の他に、米国の歴史的、文化
-65-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
的遺産についても同様に保全、保護の対象とする姿勢を打ち出した。
本 法 の 成 立 と と も に 、 Council on Environmental Quality( 環 境 諮 問 委 員 会 )
の設立も法律に盛り込まれた。この委員会は、大統領直属の行政機関のひとつ
であり、大統領指名と議会の承認による諮問委員会である。この委員会は、環
境 問 題 に つ い て 大 統 領 に 助 言 を 行 い 、毎 年 1 回 は Environmental Quality Report
(環境の質に関する報告書)を作成し、議会に提出することとなっている。
3) Environmental Protection Agency( 環 境 保 護 庁 ・ 1970 年 7 月 設 立 )
アメリカ政府は、人間の健康と地球の環境を保護し、環境破壊の予防と回復
の た め の 研 究 を 行 い 、 政 策 を 実 施 す る 環 境 保 護 庁 (EPA) を 設 立 し た 。
4) Clean Air Act( 大 気 浄 化 法 ・ 1970 年 12 月 制 定 )
人体や環境に影響を及ぼす恐れのある工場や施設等の固定発生源からの排
気・排煙や、移動発生源からの自動車、航空機等からの排出ガスなどが及ぼす
大 気 汚 染 に つ い て の 規 則 に 関 す る 法 律 。 1955 年 に Air Pollution Control Act
と し て 最 初 に 制 定 さ れ 、 1963 年 に Clean Air Act と な っ た 。 1970 年 に は 全 面 改
正 さ れ 、 そ の 後 更 に 1977 年 及 び 1990 年 に 大 き な 改 正 が 行 わ れ て い る 。
本法は、大気の質の保護と向上といった目的を達成するため、連邦大気質基準
( オ ゾ ン 、窒 素 酸 化 物 な ど 6 物 質 )を 設 定 す る こ と を EPA( 環 境 保 護 庁 )に 義 務
づけ、また当該基準を達成するために必要な施策を講ずる責任を州に課してい
る。固定発生源対策として、新規発生源に対する性能基準、及び既存発生源を
含 む 全 て の 発 生 源 に 適 用 さ れ る 有 害 大 気 汚 染 物 質( 188 物 質 、1990 年 改 正 前 は 7
物質)に関する排出基準が定められている。
ま た 移 動 発 生 源 対 策 と し て 、 新 型 車 に 対 す る 排 気 ガ ス 規 制 が 1970 年 ( い わ ゆ
る マ ス キ ー 法 )及 び 1990 年 の 改 正 で 実 施 ・ 強 化 さ れ て い る ほ か 、1990 年 改 正 に
よ り 燃 料 へ の 規 制 が 追 加 さ れ て い る 。 さ ら に 同 年 改 正 で は 、酸 性 雨 対 策 と し て 、
二酸化硫黄の排出量取引プログラムが法制化されている。
5) Clean Water Act( 水 質 浄 化 法 ・ 1972 年 10 月 制 定 )
1948 年 に Federal Water Pollution Control Act と し て 制 定 さ れ 、 1972 年 に
全 面 改 正 。 そ の 後 、 1977 年 、 1987 年 に も 改 正 さ れ て い る 。 水 域 の 化 学 的 ・ 物 理
的・生物学的状態を修復し維持することを目的とし、産業廃棄物を海・川・湖
に排出するための基準を環境保護庁が規定する。
本 法 は 、 汚 染 源 ポ イ ン ト か ら の 汚 染 物 質 の 可 航 水 域 へ の 排 出 を National
Pollutant Discharge Elimination System ( 全 国 汚 染 物 質 排 出 削 減 制 度 ) に よ
-66-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
る許可とし、その許可には排出限度を付している。これには技術基準と水質基
準とがある。技術基準は全国で統一的に適用される最低限度の基準であり、汚
染物質により内容が異なる。水質基準は、技術基準による排出限度のみでは水
質の修復・維持が困難な水域において付されるより厳格な基準であり、当該水
域の利用目的に応じ州が内容を決定する。
なお新規発生源ポイントには既存発生源とは異なるより厳格な基準が適用さ
れる。このほか本法では、汚染源ポイントが確定できない汚染排出の規制プロ
グラム、及び湿地等の浚渫・埋立に係るプログラムなどが設けられている。
6) Toxic Substances Control Act 1976( 有 毒 物 質 管 理 法 ・ 1976 年 10 月 制 定 )
化学物質から健康と環境を保護するため、新規の化学物質を製造、輸入、ま
たは廃棄する事業者に対して、環境保護庁への報告を義務付け、環境保護庁は
報告された化学物質が健康と環境を侵害する可能性が高い場合は製造と輸入を
禁止する。
7) Resource Conservation and Recovery Act( 資 源 保 全 回 復 法 ・ 1976 年 10 月 制 定 )
通 称 RCRA。本 法 は 、都 市 や 産 業 の 発 展 に 伴 う 生 活 ・産 業 廃 棄 物 の 増 加 に よ り 、
有 害 危 険 廃 棄 物 か ら 市 民 の 健 康 と 自 然 環 境 を 守 る た め に 、既 に 1965 年 に 制 定 さ
れ て い た Solid Waste Disposal Act( 固 形 廃 棄 物 処 分 法 ) を 改 定 し 、 制 定 さ れ
た も の で あ る 。 こ の 法 律 は EPA( 環 境 保 護 庁 ) に 対 し 、 有 害 危 険 廃 棄 物 の 生 産 、
取 扱 い 、 保 管 、 輸 送 、 廃 棄 に つ い て 、 い わ ゆ る ”cradle-to-grave”( 発 生 時 点 か
ら最終処分場まで)の運用・管理に対して規定する包括的な法律である。これ
はまた、有害危険物質以外の廃棄物に対しても同様にその管理枠組みを設けた
ものである。更に、上記の目的の他に、省エネ、天然資源や原材料の使用削減
や再利用を通じ、廃棄量全体の削減とその管理について、環境の上から様々規
定をしている。
1984 年 の 改 定 で は 、 従 来 の 固 形 廃 棄 物 以 外 に 、 地 下 水 源 の 汚 染 に つ な が る 地
下埋設タンクからの油漏れ対策や汚染除去、その他の危険有害物質についても
新たに規定を加えている。
米 国 で は 、 こ の 連 邦 法 で あ る RCRA に 規 定 さ れ て い る 法 律 ・ 基 準 以 外 に 、 よ り
厳しい法律・基準を定めている州もあり、その管轄するところの法律・基準を
遵守しなければならない。
-67-
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
8) Comprehensive Environmental Response, Compensation, and Liability Act
( 包 括 的 環 境 対 処 補 償 責 任 法 ・ 1980 年 11 月 制 定 )
スーパーファンドとして知られる法律である。本法は、公衆衛生や環境に危
険 を 及 ぼ す 有 害 物 質 汚 染 が 起 こ っ た 際 、環 境 保 護 庁 が 汚 染 の 調 査 や 浄 化 を 行 い 、
汚染責任者を特定するまでの間、浄化費用は科学・石油産業に対し石油税など
で創設した信託基金(スーパーファンド)から支出するよう定めた。浄化の費
用 負 担 を 有 害 物 質 に 関 与 し た 全 て の Potential Responsible Parties-PRP( 潜 在
的 責 任 当 事 者 )が 負 う と い う 責 任 範 囲 の 広 範 さ が 特 徴 的 で あ る 。PRP に は 、現 在
の施設所有・管理者だけでなく、有害物質が処分された当時の所有・管理者、
有害物質の発生者、有害物質の輸送業者や融資金融機関を含む。これにより汚
染の発生防止に寄与する一方で、資金が直接の浄化事業よりも裁判や調査費用
につぎ込まれ浄化が進まない問題も指摘される。
① CERCLA 制 定 に 至 る 、 歴 史 的 背 景 と そ の
目的
1970 年 代 後 半 に 、人 体 と 環 境 に 悪 影 響 を
及ぼす恐れのある多量の廃棄物、漏出物、
有害廃棄物が米国内で多量に発見される
よ う に な り 、 そ の 対 策 と し て 1980 年 に 制
定 さ れ た の が 本 法 で あ る 。そ の 最 も 顕 著 な
事 例 と し て は 、1978 年 に ニ ュ ー ヨ ー ク 州 ナ
イアガラフォール市のラブキャナル運河
で起きた有害化学物質による汚染事件で
あった。
19 世 紀 の 終 わ り ま で に ナ イ ア ガ ラ フ ォ
ー ル ズ 市 は 、少 な か ら ず ナ イ ア ガ ラ 川 の 急
流 が 提 供 す る 巨 大 な 電 力 の た め に 、重 工 業
地 帯 と な っ て い た 。1920 年 か ら こ の 地 域 は
化 学 産 業 廃 棄 物( 後 に 毒 性 産 業 廃 棄 物 )の
埋 立 地 に 使 わ れ 、後 に 住 宅 地 域 と し て 開 発
されることとなった。
そ の 後 、急 激 な 経 済 発 展 と 人 口 増 加 に 伴
い 、学 校 や 住 宅 街 建 設 が 進 ん だ 。同 時 に 下
水道施設などのインフラ整備が進む中で、
-68-
ラブキャナル事件
1978 年にニューヨーク州ナイアガラフォール市
のラブキャナル運河で起きた有害化学物質によ
る汚染事件。ラブキャナルは 19 世紀に水路とし
て用いられたのち、1920 年代頃から廃棄物の投棄
場として使用されはじめ、化学合成会社や電力開
発会社、ナイアガラフォール市や陸軍なども廃棄
物の投棄を行っていた。
その後 1940 年代前半に、フーパー・ケミカル社
が大量の有害化学物質を廃棄しており、1953 年ま
でに 21,000t の化学物質を廃棄しており、廃棄物
の中には、BHC や DDM、TCP、ベンゾクロライ
ド、ダイオキシンやトリクロロエチレン等の猛毒
物質も含まれていた。その後、この化学合成会社
が同運河を土砂で埋め立て、その土地をナイアガ
ラフォール市に売却した。開発に伴い、小学校や
住宅などが後に建設されていった。
埋立後約 30 年を経て、投棄された化学物質等が
漏出し、地下水や土壌汚染の問題が表面化して、
地域住民の健康調査でも流産や死産の発生率が
高いことが確認され社会問題となった。
小学校は一次閉鎖、住民の一部は強制疎開、一帯
は立入禁止となり、連邦緊急災害区域に指定され
た。
第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
埋設されていた有害物質が漏出した。
1970 年 代 中 ご ろ か ら 、 地 域 住 民 の 出 生 児 の 中 か ら 、 先 天 性 欠 損 症 や 、 手 足 や
頭部の巨大症など、奇形児が生まれるようになった。また、それ以外に癲癇や
喘息、尿路感染症、低白血球症などの健康被害を訴える人々も出てきた。
様々な訴えが地域住民からなされたが、土地から漏出する汚染有害化学物質
の汚染源の特定と、その有害物質と住民の健康被害との因果関係が証明されな
い ま ま で あ っ た が 、1978 年 ま で に は 、
「 公 衆 衛 生 上 の 時 限 爆 弾 」と し て 取 り 上 げ
ら れ る よ う に な る 。 1979 年 の EPA の 調 査 で は 、 高 い 流 産 率 、 精 神 疾 患 、 癌 、 軽
度の知的障害などの健康被害があることがわかった。
1978 年 に ア メ リ カ 合 衆 国 大 統 領 の ジ ミ ー ・ カ ー タ ー は 緊 急 事 態 を 宣 言 し 、 連
邦災害区域に指定して、米連邦政府の歴史上初めて、自然災害以外に、連邦予
算を投入して救済にあたった。
RCRA は 、 有 害 危 険 廃 棄 物 の 製 造 、 管 理 ・ 取 扱 い 、 輸 送 、 処 分 に つ い て 規 定 す
る法律であり、過去に廃棄された有害物質や今後漏出等の事故によって発生す
る 問 題 へ の 対 応 又 は 解 決 策 を 包 括 す る 法 律 で は な か っ た た め 、新 た に CERCLA を
制定するきっかけとなった。
CERCLA で は 主 な 目 的 を 次 の 通 り と し た :
・環境に悪影響を及ぼす有害危険物質の流出・拡散等が存在する、又はその恐れのある土地、
施設を確定する。
・流出、拡散に対して適切に対応する。
・汚染原因者に対する汚染除去費用賠償を命じる。
更に、上記の汚染除去費用準備資金として、石油化学関連企業に対する税金
を 課 し 、当 時 の 金 額 で 16 億 ド ル の フ ァ ン ド を 立 ち 上 げ る こ と を 法 律 に 盛 り 込 み 、
その解決に充てるとした。
し か し な が ら 、 CERCLA は 、 環 境 関 連 の 法 律 が 未 整 備 だ っ た 時 代 ま で 遡 っ て そ
の 対 策 を 行 う 必 要 が あ り 、ま た 汚 染 の 責 任 者 を 特 定 で き な い ま ま の 環 境 問 題 等 、
当 時 想 定 し た 以 上 に 拡 大 し た た め 、 米 連 邦 議 会 は CERRA に 改 正 を 加 え 、 1986 年
に ス ー パ ー フ ァ ン ド 改 正 ・ 再 授 権 法
(Superfund
Amendments
and
Reauthorization Act )を 制 定 し た 。 こ れ は 、 フ ァ ン ド を 当 初 の 16 億 ド ル か ら
85 億 ド ル へ 拡 大 す る も の で あ っ た 。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
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② CERCLA に 基 づ き 作 成 さ れ る 汚 染 場 所 の 浄 化 手 法 を 示 す 書 類 に つ い て
CERCLA は 、 有 害 物 質 に よ り 汚 染 さ れ た サ イ ト の う ち 、 リ ス ク が 高 い と 判 断 さ
れたサイトを浄化し、人の健康及び環境への影響を最小化することを目的とし
ている。
ま た 、CERCLA の 対 象 と な る 汚 染 サ イ ト の 浄 化 に 供 す る た め の 巨 額 の 有 害 物 質
対策信託基金(スーパーファンド)を有する。この基金は、サイト浄化に責任
を負う浄化責任者が特定できない場合、あるいは特定された浄化責任者が支払
い不能の場合に基金を利用できる。軍を含む連邦政府機関はスーパーファンド
の対象となっていない。
ROD(Record of Decision)は 、 CERCLA に 基 づ き 作 成 さ れ る 汚 染 場 所 の 浄 化 手 法
を 示 し た 書 類 で あ る 。ROD に は 当 該 浄 化 手 法 を 選 定 し た 前 提 で あ る 、汚 染 場 所 の
情 報 、浄 化 手 法 の 選 定 過 程 や 実 行 性 に つ い て 記 載 さ れ て い る 。な お 、ROD は 同 じ
基 地 内 で あ っ て も 汚 染 場 所 ( OU; Operable Unit) ご と に 作 成 さ れ る 。
ROD に は 基 地 内 OU に お け る 汚 染 情 報 や 浄 化 手 法 が 記 載 さ れ て い る 。 米 軍 で は
基 地 の 施 設 の 配 置 を テ ン プ レ ー ト と し て 一 定 の 基 準 で 作 成 し て い る 。こ の た め 、
目的が類似するそれぞれの施設における環境面の課題は類似したものになると
考えられる。そのため、このような事例調査は重要な情報源となる。
出典)「Defense Environmental Restoration Program (DERP) Management」Department of Defense
USD(AT&L)(2012)
図 2-11
CERCLA に お け る ROD の 位 置 づ け
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
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③ 資 源 保 全 回 収 法 ( RCRA) と 包 括 的 環 境 対 策 ・ 補 償 ・ 責 任 法 ( CERCLA) の 違 い
1976 年 制 定 の RCRA と 1980 年 制 定 の CERCLA の 主 な 違 い と し て は 次 の 通 り と な
る。
RCRA は 、 環 境 や 人 体 に 悪 影 響 を 与 え る 可 能 性 の あ る 危 険 有 害 物 質 ・ 廃 棄 物 を
どのように取り扱い、管理するかという、環境の保護・予防的観点から様々な
規 則 を 定 め て い る 。 そ の 意 味 で RCRA は 、 運 用 ・ 稼 働 中 の 施 設 ・ 工 場 な ど に お け
る危険有害物質・廃棄物における、安全上の取扱全般を定めた法律である。そ
れ に 対 し CERCLA は 、 予 期 し な い 汚 染 物 質 の 漏 洩 や 、事 故 な ど に 起 因 す る 環 境 汚
染 問 題 へ の 対 応 に 主 眼 を 置 く 。し た が っ て CERCLA は 、RCRA で 定 め て い な い 、放
棄された、又は使用していない施設や土地での、危険有害物質・廃棄物に起因
する汚染の除去、復旧、また、汚染場所の管理などに焦点をおいている。
さ ら に 言 え ば CERCLA と RCRA は 同 じ く 環 境 に 対 す る 様 々 な 危 険 有 害 物 質 に つ
い て 規 制 ・ 基 準 を 定 め て い る が 、 CERCLA は よ り 包 括 的 で あ る 。 CERCLA が 扱 う 範
囲 は 、 RCRA で 定 め た 危 険 有 害 物 質 は も ち ろ ん の こ と 、 大 気 浄 化 法 (Clean Air
Act) 、 水 質 浄 化 法
(Clean Water Act) 、 有 害 物 質 規 制 法
(Toxic Substance
Control Act) 等 、 そ の 他 の 法 律 で 定 め る 有 害 物 質 も 包 括 し て 規 制 を し て い る 。
9) Defense Enivironmental Restoration Program-DERP( 国 防 汚 染 除 去 プ ロ グ ラ ム
1986 年 )
冷 戦 終 結 前 後 、 米 軍 基 地 の 閉 鎖 ・ 返 還 と も 関 わ っ て Formerly Used Defense
Sites (FUDS) ( 国 防 総 省 軍 事 施 設 と し て 使 用 さ れ て い た 跡 地 ) に お け る 水 質 や
土壌の多くの汚染が発見され、それに伴ってスーパーファンド法と同様の措置
が米国内基地に適用されることとなった。この制度は、アメリカ陸軍工兵隊が
主 導 と な る も の で 、 環 境 汚 染 の ア セ ス と そ の 回 復 を 目 的 と し て 、 1986 年 に 公 式
に制度化された。
こ の 制 度 は 、 約 10,000 ヵ 所 に お よ ぶ 軍 事 訓 練 、 物 品 製 造 、 武 器 の 組 み 立 て 及
び 検 査 点 検 等 に 使 用 さ れ た 国 防 総 省 軍 事 施 設 の う ち 、 9800 ヵ 所 以 上 に つ い て 検
証 を 行 い 、 約 2700 ヵ 所 が 環 境 汚 染 対 策 ・ 除 去 が 必 要 で 、 約 140~ 180 億 ド ル の
費用が掛かる予測された。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
① 制度の目的
この制度は、国防総省軍事施設における有害な建造物、建築材料の除去や、
有害かつ差し迫った危険となりうる不発弾やその他の放棄された爆発物の探
知、除去、さらに危険有害物質等による汚染の特定、究明、調査研究と除去な
どである。
U.S. Army Environmental Command( 米 陸 軍 環 境 司 令 部 ) が プ ロ グ ラ ム マ ネ ー
ジ ャ ー と し て 、 Installatioon Restoration Proguram ( 施 設 修 復 プ ロ グ ラ ム )
のもとに、運用中の米陸軍施設における包括的な環境問題への調査、特定、除
去 な ど の 対 応 を 行 っ て お り 、 ま た Military Munitions Response Program( 軍 事
弾薬対応プログラム)のもとでは、運用されていない射撃演習場等における不
発弾処理、投棄または放置された爆発物、それに関連する汚染への対応を行う
ことになっている。
② DERP に お け る 汚 染 除 去 の プ ロ セ ス
(ア ) 調 査
国 防 総 省 は 、報 告 書 の 内 容 や 実 地 見 分 、ま た 聞 き 取 り 等 に よ る 調 査 に よ っ て 、
有 害 化 学 物 質 の 漏 洩 、 露 出 の 事 実 が あ っ た か ど う か の Preliminary assessment
( PI)即 ち 、予 備 的 ア セ ス メ ン ト を 行 う 。実 際 に そ の よ う な 事 故 事 例 が あ る と 、
更 な る 調 査 が 必 要 と の 判 断 を 下 す 。 EPA か ら 汚 染 の 可 能 性 が あ る と の 報 告 に よ
り、国防総省は実地調査を行い、収集されたデータの解析をもとに、より詳細
な研究調査が必要かどうか、汚染に対する対応が必要かどうかを判断する。こ
れらの予備アセスメントと現地調査を比較検討し、リスク評価を行う。
現地調査において、より詳細な調査が必要と判断された場合、国防総省は
Remedial Investigation (RI)、 即 ち 環 境 修 復 の 為 の 調 査 を 実 施 す る 。 こ の RI
では、汚染によって引き起こされるリスクの性質、程度、範囲など、総合的な
データ収集が汚染現場で行われる。得られた収集データは、環境修復または汚
染 除 去 の 目 標 を 設 定 す る Feasibility Study (FS)、 実 行 可 能 性 調 査 に 用 い ら れ
る 。 こ の RI と FS の 結 果 か ら 、 適 切 な 環 境 汚 染 の 除 去 又 は 修 復 対 策 と し て 報 告
書 に ま と め 上 げ た の が 、 Record of Decision( 決 定 記 録 ) と な る 。 こ れ ら の 調
査 手 順 の 過 程 で 、 特 に 対 策 の 必 要 が な い と 判 断 さ れ た 場 合 は 、 Response
Complete (RC)、 い わ ゆ る 対 処 完 了 と し て 取 り 扱 わ れ る 。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(イ ) 汚 染 除 去
汚 染 除 去 は 、 除 去 計 画 と し て 決 定 さ れ た Remedial Design (RD)に 基 づ い て 開
始 さ れ る 。 Remedial Action Construction (RA-C)は 、 汚 染 除 去 及 び 修 復 に か か
る 実 施 計 画 で あ り 、 そ の 計 画 の 中 に 、 実 施 作 業 開 始 か ら 汚 染 現 場 が ROD で 示 さ
れ た 汚 染 修 復 ・ 除 去 の 目 標 に 到 達 す る ま で の 継 続 的 な 運 用 で あ る Remedial
Action Operation (RA-O)が 含 ま れ る 。 汚 染 現 場 に よ っ て は 、 修 復 作 業 開 始 か ら
最低 5 年に1回は、その作業内容が適切に実施されているか、計画通りの効果
を発揮しているか、検証を行う。
(ウ ) プ ロ グ ラ ム 実 行 状 況
国防総省は、それぞれのプログラムのカテゴリーごとに、リスクの減少と除
染完了の度合いによって汚染修復・除去の進捗状況を測定する目標を決めてお
り 、 Department of Defense Environmental Programs Annual Report to Congress
で、そのプログラムごとの実行状況について確認することができる。
10) Base Realignment and Closure(軍 事 基 地 整 理 縮 小 ・ 閉 鎖 )
近 年 の 軍 事 基 地 閉 鎖 に お い て 重 要 な 存 在 で あ る BRAC は 、ア メ リ カ 合 衆 国 連 邦
政 府 委 員 会 に お い て 1988 年 に 策 定 さ れ た プ ロ セ ス 「 Base Realignment and
Closure(軍 事 基 地 整 理 縮 小 ・ 閉 鎖 )」 の 頭 文 字 を と っ た も の で あ る 。
従来の基地整理縮小に加えて、同プロセスは冷戦終了後の米国が最も効率良
い軍事施設・機能の維持と国防予算の削減の両立を目標として策定された。
同 年 の BRAC88 を 始 め と す る 軍 事 基 地 整 理 縮 小 ・ 閉 鎖 法 ( BRAC91・93・95) は 、
同プロセスに基づいて閉鎖・整理縮小が行われる軍事施設の譲渡及び処分の基
本 的 枠 組 み を 定 め た も の で あ る 。( 特 に 1990 年 の 軍 事 基 地 整 理 縮 小 閉 鎖 法 は 、
財務的な面から、基地閉鎖に関連した助成金・補助金に係る財政的負担を削減
す る 内 容 が 含 ま れ る 。)
以 来 、 1989 年 、 1991 年 、 1993 年 、 1995 年 、 2005 年 の 5 ラ ウ ン ド に わ た っ て
実 行 さ れ た BRAC に よ っ て 、米 国 内 350 以 上 の 軍 事 基 地 が 閉 鎖 さ れ た 。
( 2014 年
11 月 本 事 業 の 一 環 と し て 視 察 し た コ ロ ラ ド 州 デ ン バ ー 市 の 旧 ロ ー リ ー 基 地 は
1991 年 ラ ウ ン ド の BRAC 基 地 の 一 つ で あ る 。)
BRAC は 厳 格 に 米 国 内 の ( 多 く の 場 合 連 邦 政 府 が 所 有 す る ) 基 地 の 整 理 縮 小 閉
鎖に適用されるもので、海外の米軍施設には適用されない。また沖縄県内の基
地返還に係る諸事情とはかけ離れた部分が多い。しかし、詳細かつ実務的に記
載 さ れ た BRAC ク リ ー ン ア ッ プ に 関 す る 評 価 及 び 計 画 は 重 要 で あ り 、 過 去 の 5
ラウンドの実行の過程や結果、課題、成果は、海外の米軍施設、特に在沖米軍
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
施設の返還のガイドラインの作成において参考となるところが大きい。
BRAC で は 対 象 基 地 に 適 用 さ れ る 環 境 関 連 法 律 及 び 規 則 が 明 確 に 示 さ れ て い
る 。こ れ ら は 、BRAC 対 象 基 地 が 従 う べ き 環 境 対 応 の 法 制 度 と プ ロ セ ス を 明 確 に
特 定 し た 情 報 を BRAC ク リ ー ン ア ッ プ 実 施 チ ー ム 及 び 支 援 チ ー ム へ 提 供 す る も
のであり、チームが策定するクリーンアップ基本計画の土台となる。
BRAC プ ロ セ ス は 、 90 年 に 制 定 さ れ た BRAC 法 に 基 づ い て 進 め ら れ る ( 図
2-12)。BRAC プ ロ セ ス の 主 な 作 業 は 、国 防 省 と 、大 統 領 に 任 命 さ れ る BRAC 委 員
会によって実施される。まず国防省が閉鎖統合リストを作成し、その案の内容
に つ い て BRAC 委 員 会 が 審 査 す る 。 そ の 後 、 BRAC 委 員 会 が 大 統 領 に 答 申 を 提 出
し、大統領はそれを承認ないし却下する。大統領が承認した場合、閉鎖統合リ
ストは議会に提出される。議会は、閉鎖統合リスト全体に対して承認するか却
下し、議会が承認した場合は、答申は法的効力を持つようになる。
アメリカ本国においては、基地返還時にこの一連の手続きを通じて、基地返
還時の環境影響の検討、環境法令との適合性チェック等が行われている。
BRAC に 記 載 さ れ る 法 律 ・ 規 則 の 主 な も の は 表 2-12 に 示 す と お り で あ る 。
国防省;基地の閉鎖統合リスト案の作成
BRAC 委員会;閉鎖統合リスト案の審査・修正
【環境面】
基地返還時の環境影響
環境浄化のための費用
環境法令との適合性
大統領;閉鎖統合リスト修正案の承認・却下
承認時
議会;閉鎖統合リスト修正案の承認・却下
承認時
閉鎖統合リストの法的効力の発効
出典)東アジア戦略概観 2006(防衛庁防衛研究所編)、2005 DEFENSE BASE CLOSURE AND REALIGNMENT COMMISSION
REPORT(DEFENSE BASE CLOSURE AND REALIGNMENT COMMISSION, September 8, 2005)をもとに作成。基本的に
BRAC は連邦政府国防省、EPA と地元行政及び地元住民との協働アプローチの仕組みとされている。同制度は
国外(NATO のもと)でも応用されている。
図 2-12
アメリカ本国内の基地閉鎖・再編手続きにおける環境上の配慮
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第2章
法律名
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
表 2-12(1)
BRAC に 記 載 さ れ る 主 な 法 律 ・ 規 則 等
日本語名称
略称
概要
BRAC 施設に対して、EPA(環境保護庁)、該当する州の政府
機関、軍 3 者それぞれの役割を明確に定める。
〇予備環境評価・全国汚染地リスト(National Priority List、
Comprehensive
Environmental
Response,
Compensation and
Liability Act
以下 NPL)・全国石油危険物質汚染不測事態対応計画(The
包括的環境
対応・補
償・義務法
National
CERCLA
Oil
and
Hazardous
Substances
Pollution
Contingency Plan;以下、NCP)・危険物等級システム
〇汚染除去調査(Remedial Investigation :RI)及び可能性
調査(Feasibility Study :FS)・EPA 及び州政府との合意
書(Federal Facility Agreements :FFA)・環境対応行動
計画・汚染区画売却譲渡・環境団体対応活動(Community
Environmental Response Facilitation Act 以下、CERFA)
大統領令 12580 は、CERCLA における大統領の義務と権限を定
める。
大統領令 12580
-
-
〇該当する軍への職務委譲・除染作業決定の委譲・国民意見
の把握
〇司法長官との連携
DERP の目的は、以下 3 点があげられる。
Defense
Environmental
Restoration
Program
国防省環境
回復
プログラム
〇汚染の認定、調査、除去作業
DERP
〇人体及び環境に被害を及ぼす可能性のある他の汚染の確定
と是正
〇危険性のある建物の破壊又は除去
NEPA は連邦規制集 40 篇に基づいて、連邦所有建物の破壊・
除去が公的機関又は民間機関へ与える影響の検証のプロセス
を定める。
National
Environmental
Policy Act
環境政策
基本法
〇環境アセスメント
NEPA
〇Finding of No Significant Impact ;(深刻な影響のない
かの)確認結果(FONSI)、Description of Proposed Action
and Alternatives ;複数案の概要(DOPAA)、Notice of
Intent ;計画提示(NOI)、Draft Environmental Impact
Statement ;環境影響評価報告書草案(DEIS)、等
出典)U.S. Environmental Protection Agency「Overview of Primary Environmental Regulations
Pertinent to BRAC Cleanup Plan Development: Appendix A」
http://www.epa.gov/swerffrr/documents/appenda.htm
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
ま た 、重 大 な 影 響 が な い 検 出 事 項 に つ い て は CERCLA に 加 え て 、BRAC 施 設 が 従
うべき連邦及び州政府が定める環境関連法律及び規則には以下の法律が含まれ
る。
表 2-12 (2)
法律名
日本語名称
BRAC に 記 載 さ れ る 主 な 法 律 ・ 規 則
略称
Resource
Conservation and
概要
包括的危険廃棄物管理及び油地下タンク等の規
資源保全・回収法
RCRA
Recovery Act
制対象物質の管理制度を詳細に定め、NPL、非 NPL
に関らず適用される。
包括的危険廃棄物管理及び油地下タンク等の規
Toxic Substances
有害物質規制法
TSCA
Control Act
制対象物質の管理制度を詳細に定め、NPL、非 NPL
に関らず適用される。
汚染物質の米国領海への点・非点源汚染排出に
Clean Water Act
水質汚濁防止法
CWA
飲料水安全法
SDWA
大気汚染防止法
CAA
Safe Drinking
Water Act
Clean Air Act
ついて定める。
飲料水の汚染による人体への影響を防止するこ
とを目的とする。
特定物質の大気への排出について定める。
出典)U.S. Environmental Protection Agency「Overview of Primary Environmental Regulations
Pertinent to BRAC Cleanup Plan Development: Appendix A」
http://www.epa.gov/swerffrr/documents/appenda.htm
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
(2) 米国以外の米連邦政府施設から発する環境問題への対応について
米国の環境法令は、特に明文化されていない限り、総じて海外においては適
用されない。
例 を 挙 げ る と 、 Asbestos School Hazard Abatement of 1984 ( ア ス ベ ス ト 学
校有害物排除法)では、各州及び教育機関・学校が、その児童・生徒や教師、
従業員の健康を守るため、施設内に存在するアスベスト物質の危険性を確認・
特 定 ・ 排 除 で き る よ う に 、EPA が 、各 州 及 び 教 育 機 関 に 科 学 的 技 術 的 経 済 的 な 支
援を行うことを目的とする法律を定めた。
こ の 法 律 は 、海 外 の 国 防 総 省 学 校 を 含 む い か な る 学 校 に お い て も 適 用 さ れ る 。
こ の よ う に 、法 律 に 規 定 の な い 米 国 外 に お け る 環 境 関 連 の 取 り 扱 い に つ い て 、
特に世界各国に展開する国防総省施設における環境遵守の取り決め事は、接受
国との間における条約や合意、また国防総省の政策方針により、米国基準とそ
れ ぞ れ の 接 受 国 の 基 準 と の 調 整 が 行 わ れ 、 Final Governing Standard ( 環 境 管
理基準)を設定し、数年ごとに見直し、改定がなされるよう定められている。
1973 年 12 月 17 日 に 出 さ れ た 大 統 領 令 第 11752- 環 境 汚 染 防 止 並 び に 除 去 に
関 す る 大 統 領 令 (Executive Order 11752 – Prevention, Control, and Abatement
of Environmental Pollution at Federal Facilities) は 、 米 本 土 以 外 の 米 合
衆国連邦政府施設において、環境に関する管理責任を負うことを課す最初の指
令であった。
そ の セ ク シ ョ ン 3. (c) に よ る と 、米 連 邦 政 府 機 関 の 責 任 者 は 、米 本 土 以 外 の
国・地域において、連邦政府関連施設の建設並びに運営を行う場合は、その接
受国の環境汚染基準、また関連法令を遵守しなければならないとしている。
1978 年 10 月 13 日 、 ジ ミ ー ・ カ ー タ ー 大 統 領 の 署 名 に よ る 大 統 領 令 第 12088
で は 、 先 の 第 11752 に 定 め ら れ た 環 境 管 理 基 準 を 改 定 し 、 連 邦 政 府 関 連 機 関 の
遵守すべき環境汚染に対する要件を増やした。
具 体 的 に は 、Toxic Substance Control Act( 有 害 物 質 規 制 法 ), Federal Water
Pollution Control Act( 連 邦 水 質 汚 濁 防 止 法 - 改 正 )、 Safe Drinking Water Act
( 飲 料 水 安 全 法 ) の 改 定 に よ る Public Health Service Act( 公 衆 衛 生 事 業 法 )、
Clean Air Act( 大 気 浄 化 法 )、 Noise Control Act of 1972( 騒 音 対 策 法 )、 Solid
Waste Disposal Act ( 固 形 廃 棄 物 処 理 法 )、 Atomic Energy Act of 1954 ( 原 子
力 法 ) に 基 づ い た 放 射 能 、 X 線 撮 影 要 領 、 Marine Protection, Research and
Sanctuaries Act of 1972,( 海 洋 保 護 、 調 査 、 保 護 区 域 に 関 す る 法 律 )、 Federal
Inscticide, Fungicide, and Rodenticide act ( 連 邦 殺 虫 剤 殺 菌 剤 殺 鼠 剤 法 )
等の法令の改定に伴う基準を用いて、環境保全・汚染防止にあたるものとして
いる。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
本 命 令 で は 、 各 連 邦 政 府 行 政 機 関 が EPA や 州 政 府 並 び に 州 政 府 間 、 地 方 行 政
機関と協力をし、法律に定められた環境基準に基づき、環境汚染、保全、汚染
の 防 止 と 除 去 に 関 す る 問 題 に 対 応 す る こ と を 義 務 づ け て い る 。ま た EPA に 対 し 、
これらの環境法令を遵守する際に必要となる最善かつ費用効果の高い技術、手
法などの情報の提供と支援を義務づけ、適切に保全管理がなされているか検
査・検証も行うこととしている。更に、各連邦政府行政機関は、環境の保全管
理 に 必 要 な 施 設 建 物 や 改 善 や 運 営 ・ 維 持 管 理 計 画 年 次 予 算 を EPA を 通 じ て 米 合
衆 国 行 政 管 理 予 算 局 に 提 出 し 、 そ れ に 基 づ き EPA が ガ イ ド ラ イ ン を 策 定 し て 、
各機関が実施することとしている。そしてその環境関連に割り当てられた予算
は、他の使用目的に流用されることなく、確実に環境保護、保全管理、汚染除
去 等 に 使 用 さ れ な け れ ば な ら な い と 定 め ら れ て い る 。本 命 令 の 最 後 の 章 General
Provisions ( 総 則 ) で は 、 米 国 外 に お け る 連 邦 政 府 施 設 に お い て 、 そ の 長 は 、
接受国の法令・諸規則に準じた環境管理規則基準に基づいて、施設建物の建設
並びに運営を行う責任があると明記している。
1979 年 1 月 4 日 、同 じ く ジ ミ ー・カ ー タ ー 大 統 領 の 署 名 に よ る 大 統 領 令 第 12114
(Executive Order 12114--Environmental effects abroad of major Federal
actions) で は 、 米 国 外 に お い て も 、 連 邦 政 府 機 関 が あ る 特 定 の 範 疇 に お い て 、
自然や資源、生態系など、環境に著しく影響を及ぼすような大きな行動を実施
す る 際 ( ※ Major Federal action includes actions with effects that may be
major
and
which
are
potentially
subject
to
Federal
control
and
responsibility.) に お い て は 環 境 影 響 評 価 を 行 う こ と を 求 め て い る 。
本 命 令 は 、 National Environmental Policy Act ( 国 家 環 境 政 策 法 )、 Marine
Protection, Research and Sanctuaries Act of 1972 ( 海 洋 保 護 、 調 査 、 保 護
区 域 に 関 す る 法 律 )、 Deepwater Port Act( 深 海 港 法 ) 等 、 米 国 以 外 の 領 域 に ま
で米連邦政府の行動範囲が及ぶ際に、その国家・領域の環境に対し、充分な配
慮を払うことを定めている。具体的には、環境影響評価を行い、その国家(接
受 国 )・ 領 域 の 関 係 者 側 と 環 境 に 関 す る 共 同 研 究 を 実 施 し 、米 国 が 実 施 し よ う と
し て い る 行 動 に 対 し 、ど の よ う な 環 境 問 題 が 起 こ り え る か 検 証 し 、 環 境 ア セ ス 、
分析に関する概要を作成するよう定めている。
ただしながら、具体的な拘束力をもつ条項は含まれていない。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
1) Executive Order 12114 – Environmental Effects Abroad of Major Federal
Actions
( 1979 年 1 月 4 日 ジ ミ ー ・ カ ー タ ー 大 統 領 の 署 名 に よ る 大 統 領 令 、 第 12114
-連邦政府の重大かつ大規模な動きから派生する海外での環境影響について
( 仮 訳 ))
① 目的と範囲
この大統領令が目的とするものは、米国による事業・行動が環境に影響を及
ぼす可能性がある場合、その実行権限者が、国家並びに人類の現在及び将来に
渡る福祉と繁栄に重要である環境に対し、配慮と責任を持ち、環境の保護にあ
たらなければならないということである。
それと同時に、海外における米軍基地によって環境影響が起こった場合は、
米国の外交、経済、並びに安全保障政策上の目標と利益を損なう為、慎重に配
慮 を 行 う と い う も の で あ っ た 。し た が っ て 運 用 を 行 う 際 に は 、「 主 要 な 国 防 総 省
活 動 の 域 外 に お け る 環 境 影 響 」 と い う 主 題 の 米 国 防 総 省 司 令 指 令 6050.07( DoD
Directive 6050.07) で 、 大 統 領 令 第 12114 で 示 さ れ た 、 環 境 に 関 す る 配 慮 に つ
いてガイダンスを示している。
この中で、米国防総省が行う行動により、地球的共有物である環境に、多大
な 影 響 を 与 え る 恐 れ が あ る こ と を 考 慮 し て 、そ の 行 動 に 関 連 す る 環 境 影 響 調 査 、
分析、影響評価、報告書の作成と報告義務、責任の所在、他の関連連邦機関と
の連携、影響評価を受けての対応策、行動決定等を命令としている。更には、
この環境評価、配慮事項の報告は海外における接受国にも提供することと命じ
られている。また、環境配慮に関する報告と、その他の接受国との合意に関す
る連絡調整は、米国務省を通じて行うことと定めている。
但しながら、この命令書では、接受国間との環境に関する調査・研究は相互
で行うものとしながらも、その評価・検証においては米側が一方的に判断する
ものとしている。また、災害時や緊急時、紛争勃発の際の国家安全保障に関す
る際、国際条約締結時や大統領命令、議会による議決事項、機密事項に関わる
こと等、環境配慮に関する要件を免除する様々な例外規定を設け、また環境評
価に関する一般公開は行わないなど、必ずしも接受国にとって、環境保全を担
保するものとなってはいない。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2) 海 外 に お け る 米 国 防 総 省 施 設 ( 米 軍 施 設 ) の 環 境 遵 守 に 関 す る 規 定
大 統 領 令 第 12114 を 受 け て 、 海 外 に お け る 米 国 防 総 省 施 設 の 環 境 遵 守 に 関 す
る 規 定 と し て は 、「 米 国 防 総 省 指 示 書 4715.05 (DoD Instruction 4715.05) 」 に
おいて、より具体的に規定されている。
こ の 国 防 総 省 指 示 書 4715.05 は 主 題 を 「 海 外 に お け る 米 国 防 総 省 施 設 の 環 境
遵守に関する規定
(Environmental Compliance Installation Outside the
United States) と 銘 打 た れ て い る 通 り 、 海 外 に お け る 米 軍 施 設 の 環 境 遵 守 に お
ける細目が決められている。
こ の 国 防 総 省 指 示 書 4715.05 の 中 で 、 国 家 防 衛 を 果 た す 一 端 と し て 、 国 防 総
省施設資産の維持管理上、全ての各軍の運営、活動、組織計画、行動計画等に
おいて、安全健康衛生基準を遵守することとある。
さらに、海外の連邦政府施設における安全健康衛生基準を遵守するため、そ
の 接 受 国 の 環 境 法 令 と の 調 整 を 図 り 、 環 境 に 関 す る 管 理 基 準 ( Final Governing
Standard) を 策 定 し 、 そ れ に 基 づ い て 運 用 を 行 う こ と を 規 定 し て い る 。
こ の 管 理 基 準 は 、 接 受 国 ご と の 管 理 基 準 ( 日 本 に お い て は JEGS が Final
Governing Standard ) に 基 づ い て 、 そ れ ぞ れ の 基 準 が 設 け ら れ て お り 、 更 に 米
国とその接受国どちらかの基準の厳しい方を採用することとしている。また、
この管理基準には、定期的に環境評価を行うことや、そのモニタリング、接受
国 に お け る 環 境 関 連 の 趨 勢 や 進 展 な ど 、接 受 国 の 環 境 法 令 等 に 常 に 配 慮 を 払 い 、
国防総省関係機関と連携をとるように定めている。
また、この管理基準の改定において、接受国が新たに法整備を行った環境法
令や基準などについては従わなくてはならないと規定しており、政府が承認を
行えば、地方自治体の条例などもこれに含まれるとしている。
前 述 の RCRA 同 様 、海 外 に お け る 国 防 総 省 施 設 か ら の 危 険 有 害 物 質 等 の 廃 棄 物
は、米国内と同様に厳しい管理基準をもとに取り扱われ、同時に接受国の法令
に準拠して行われる。
これまで述べてきた様に、海外における米軍施設において、接受国との調整
の 上 で 厳 格 な 環 境 基 準 を 遵 守 す る こ と を 規 定 し て い る が 、 CERCLA の よ う に 、 環
境問題が発生した際の具体的なアクションは定められていない。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
3) DoD Instruction 4715.08 Remediation of Environmental Contamination Outside
the United States.( 国 防 総 省 指 示 書 4715.08 米 合 衆 国 外 に お け る 環 境 汚 染
修復について)
本指令は、タイトルにある通り、特に海外での米軍事施設における環境汚染
修復について、その実行責任者と手続きに関する指示指令書である。
本指令は、国防総省内の担当責任所在は、国防長官府、統合参謀本部議長、
統合参謀本部、各統合軍司令本部、監察総監室、国防総省内各部局、各現業部
門に適用される。
本指令において、国防総省の各機関の責任者にそれぞれ担当する役割を負わ
せている。
調達・技術・兵站担当国防事務次官、施設環境事務副次官、国防総省法律顧
問、国防総省指揮下の各機関の長、地域別統合軍司令、環境関連部局長の役割
責任が示されている。
特に環境関連部局が、実質的な環境汚染に関する調査、アセス、汚染除去対
策の策定、受入国との調整を担う。
本 指 令 が 目 的 と す る の は 、国 防 総 省 の 使 命 で あ る 国 家 防 衛 の 機 能 を 支 え る 為 、
軍施設内に従事する兵士職員の健康と安全衛生に努める旨の指令を行っている
ことである。従って、環境汚染除去の実行に関しては、施設内で働く職員への
健康の確保と安全衛生上、実質的な悪影響が存在する場合に、早急かつ必要な
措 置 を 取 る こ と を 示 し て い る 。同 時 に 実 質 的 な 汚 染 影 響 が 認 識 さ れ な い 場 合 は 、
特に対策を取ることはない旨の指示も行われている。
本 指 示 書 DoD Instruction 4715.08 は 、 2013 年 11 月 1 に 出 さ れ 、 1998 年 2
月 2 日 に 出 さ れ た DoD Instruction 4715.8 Environmental Remediation for DoD
Activities Overseas( 海 外 に お け る 国 防 総 省 の 活 動 に つ い て の 環 境 修 復 ) の 改
訂版とみられるが、二つの指示書の指令の比較をすると、海外における環境汚
染対応について、姿勢の変化がみられる。
例 え ば 、 1998 年 の Instruction 4715.8、 セ ク シ ョ ン 5.1.1 で は 、 ”The DoD
Components
shall
take
prompt
action
to
remedy
known
imminent
and
substantial endangerments to human health and safety due to environmental
contamination that was caused by DoD operations and that is located on or
is emanating from a DoD installation or facility.( 人 体 に と っ て 健 康 と 安
全を害する、周知かつ差し迫った、実質的な危険を及ぼす恐れのある環境汚染
が、米国防総省軍事活動によって軍事施設内で発生、または施設から流出した
場合、国防総省機関は早急な改善策を取らなくてはならない。-意訳)として
い る が 、 2013 年 の Instruction 4715.08 で は 、 Enclosure 3( 添 付 書 類 3) の 中
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
で 、 ”In accordance with this instruction, a DoD Component will take prompt
action to address a substantial impact to human health and safety due to
environmental contamination that is caused by DoD activities and is located
on a DoD installation.”( 国 防 総 省 機 関 は 、 人 体 に と っ て 健 康 と 安 全 に 実 質 的
な悪影響を及ぼす環境汚染が、国防総省の活動によって米軍事施設内で引き起
こされた場合、本指令に従って早急に対応をしなければならない-意訳)とや
や柔らかな表現となっている。
ま た 、 Instruction 4715.8 、 セ ク シ ョ ン 5.1.3. で は 、 ”International
agreements may also require the United States to fund environmental
remediation. ( 国 家 間 の 合 意 に よ り 、 米 合 衆 国 政 府 へ 環 境 修 復 の 資 金 を 求 め る
こ と も 出 来 る - 意 訳 ) と も 明 記 さ れ て い た が 、 2013 年 の Instruction 4715.08
では、その様な文言は削除されており、逆に国防総省が責任を負わなければな
らない環境汚染であったとしても修復が必要であると判断されなければ対策は
実施しないし、国防総省の活動が汚染原因であると特定されない際の汚染につ
い て も 、責 任 を 負 わ な い な ど 、環 境 修 復 に 対 し て よ り 限 定 的 に し た 印 象 が あ る 。
一方、環境汚染に関する文書の保管は、旧版では施設返還後 5 年間の保管を
義 務 づ け て い た が 、新 版 で は 10 年 と な っ て い る 。ち な み に こ の DoD Instruction
4715.08 で は 、 受 入 国 へ の 施 設 返 還 後 は 、 両 国 間 の 合 意 に よ る 定 め が な け れ ば 、
国防総省はいかなる環境調査、環境汚染修復を行わないと明記している。
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第2章
「米軍施設内の環境問題に関連する政府間の主な取り決め
及び環境関連法規」に関する情報収集
2.3.3 ド イ ツ
(1) 連邦土壌保護法
連 邦 土 壌 保 護 法 は 、「 土 壌 の 機 能 を 持 続 的 に 確 保 し 、 あ る い は 回 復 す る こ と 」
を目的に、土壌汚染対策全般の枠組みを定め、同法の政令である土壌保護・汚
染サイト令は、法の補足、基準値及び調査方法等を定めている。
連邦土壌保護法は汚染サイト一般を対象にした法律であり、第 3 条で列挙さ
れた他の法令が土壌への影響を規制しない限りにおいて適用される。これは、
土壌環境保全において、先に制定されていた連邦イミシオン防止法注)や、水
管理法等の複数の法令で対応しきれなかった部分を、総括的に法制度として統
合するために連邦土壌保護法が制定されたためである。このため、ドイツの土
壌環境保護制度では、連邦イミシオン防止法や建築法等といった他の法令によ
る土壌汚染調査や、浄化の義務が発生する。
連 邦 土 壌 保 護 法 で は 、 土 壌 汚 染 調 査 や 、 浄 化 を 義 務 付 け ら れ る 汚 染 地 を 、「 汚
染 サ イ ト 」又 は「 有 害 な 土 壌 変 質 」と 定 義 し て い る 。こ こ で 規 定 さ れ て い る「 汚
染 サ イ ト 」と は 、休 止 し た 廃 棄 物 処 分 場 や 、休 止 し た 工 場 施 設 の 土 地 等 で あ り 、
建 築 物 の 有 無 を 問 わ ず 、 休 止 し た 汚 染 サ イ ト を 広 く 対 象 と し て い る 。「 有 害 な 土
壌変質」は土壌機能の侵害に関する広い概念であり、日本の掘削工事による形
質変更とは異なる概念である。
連 邦 土 壌 保 護 法 の 目 的 は 、第 1 条 に 定 め ら れ て お り 、
「土壌の機能を持続的に
確 保 し 、あ る い は 回 復 す る こ と に あ る 」( 法 1 条 1 文 )。こ の 目 的 を 実 現 す る た
め に 、 次 の 諸 原 則 を 定 め て い る ( 法 1 条 2 文 及 び 3 文 )。
・有害な土壌変質を防止する(危険防止義務)
・土壌及び汚染サイト、そこに起因して発生する水域汚染を浄化する(浄化
義務)
・土壌への不利益な影響に対する事前配慮(予防、事前配慮義務)
注)連邦イミシオン防止法;人及び動植物、土壌、水及び大気、ならびに文化財及びその他の財産
を有害な環境影響から保護し、有害な環境影響の発生を予防することを目的とした法律である。
本 法は 、 土 壌 環 境 保 全 に 特 化 し た法令で はないが、工 場の設置や稼 働、増改築の 際に、土壌環
境対策を義務付けており、土壌環境保全制度の一つとして、重要な役割を持っている。
出典)「平成 25 年度地球温暖化問題等対策調査事業(土壌環境の保全に関する動向調査)報告書」
経済産業省委託調査(一般社団法人産業環境管理協会、2014)
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