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英ポンド・ユーロ・米ドル 2016 年上半期の相場を占う

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英ポンド・ユーロ・米ドル 2016 年上半期の相場を占う
【2015年12月24日公開】
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~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『英ポンド・ユーロ・米ドル
2016 年上半期の相場を占う』
執筆者:松崎美子氏
(ロンドン在住/元為替ディーラー)
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今年も残すところ、あと一週間となった。そこで今回は、来年のマーケットについて考
えてみたい。
タイトルにわざわざ「2016 年上半期」という時間的区切りをつけたのは、来年もずっと原
油価格が 40 ドル台で推移するのであれば、2014 年に大きく下げたエネルギー価格のマイナ
ス部分が来年 2~5 月くらいの間にインフレ率の計算式から消滅する可能性が出てくるため
である。もしそうなれば、夏以降大きく変化する可能性がある。しかし、それはあくまで
も「40 ドル台での推移」と言う大前提があってはじめて可能となり、来年早々20 ドル台ま
での急落にでもなれば、低インフレまたはデフレリスクが台頭してくることを忘れてはな
らない。
●主要国の為替動向
通貨動向を見極めるためのファンダメンタルズとして、私は常に「政治・経済・財政・
金融政策」の 4 項目をチェックしている。早速ではあるが、2015 年の米英欧それぞれの通
貨を取り巻くファンダを振り返り、それが来年どう変化するのかについて簡単にまとめて
みよう。
※それぞれのイラストの見方は、左に行けば行くほどポジティブ、右に行けば行くほどネ
ガティブ。具体的には、青枠がポジティブ・良好、黒枠がニュートラル、赤枠がネガティ
ブ・悪いとなっている。
1)アメリカ (米ドル)
まずアメリカの今年のファンダメンタルを上記 4 項目から見てみると、金融と経済が良
好・財政政策は財政の壁問題がひとまず解決したということでニュートラル、それに対し
2016 年 11 月に実施される大統領選に向けての不透明感があるため、政治をネガティブとし
た。
2016 年はこれら 4 項目がどう変化するだろうか?特に 2015 年と大差はないが、もし原油安
が加速するようなことになれば、景気面で低インフレがどのような影を落とすのか、若干
不安材料が出てくるため、経済を少しだけ右にずらしてニュートラルとの間に入れた。た
だし、英欧と比較した場合、不透明感はそう高くない。
2)欧州 (ユーロ)
次は、欧州だが今年は厳しい一年となった。原油安による低インフレだけならまだしも、
ギリシャやポルトガルで反緊縮政権が誕生したことに加え、難民流入が問題になり、反ド
イツ体勢が強くなってきた一年であった。
それでは、2016 年はどんな感じであろうか?まず政治・財政は、更に悪化する可能性があ
る。金融政策に関しては、原油価格の急落がなければ、追加緩和の限界のほうが気になる
ところだ。経済に関しては、来年春以降の原油価格動向とインフレ率の動き次第と考える。
3)英国 (英ポンド)
利上げなのか据え置きなのか、どっちつかずで 2015 年を終えた英ポンドであるが、今年
の経済は良好であった。特に賃金上昇率の伸びが強かったことが、それを物語っている。
英中銀が懸念を示していた「労働市場のゆるみ(スラック、ギャップ)
」が縮小してきたか
らこそ、はじめて労働者の給与が上がる。その意味からも、経済のゆるみは、かなり消滅
したと理解してよいだろう。
来年の英ポンドであるが、2016 年 6 月 16 日に国民投票が実施される可能性が高まったこと
を受け、一躍マーケットの「主役」に躍り出てくるだろう。国際社会での英国の立ち位置
が左右される世紀の大イベントとなる国民投票は、2014 年のスコットランドの英国離脱を
問う住民投票の 100 倍、いや 1,000 倍もの重要度をもつ。あの時にあれだけ英ポンドが動
いたことを考えれば、国民投票の結果で英ポンドが動かない訳がない。
●まとめ
私は、来年上半期は「英ポンド売り」を考えている。もちろん、ユーロも戻りは売りで参戦するつ
もりであるが、英ポンドの方に不透明感が高まるのではないか?やはり投資家はそれを嫌うので、
ボラティリティーは俄然英ポンドに有利である。
英ポンドを売る対通貨としては、来年も利上げが継続するであろう米ドルが面白いだろう。大きな
レンジとして、1.40 ドルから 1.55 ドル台。
もう少し絞ってみると、200 週 SMA(移動平均線)からポンド/米ドルの乖離幅は通常で 900
~1,000 ポイント。最近は大きく動くと (チャート上の水色の縦線部分) 1,200~1,400
ポイントの開きとなっている。英国の歴史に残る国民投票となれば、乖離幅は更に拡大す
ることも考えられるが、とりあえずは 1.42 ドル~1.44 ドルを下限とし、上は 1.53 ドル台
としたい。つまりコアレンジは、大雑把に 1.43~1.53 である。
最後に、日本の個人投資家さんたちが大好きな英ポンド/円を見てみよう。英ポンド/円と
は、英ポンド/米ドルに米ドル/円を掛けると計算出来るが、同様にユーロ/円をユーロ/英
ポンドで割ると、はじき出されることに気づいている人は少ないかもしれない。
ユーロ/英ポンドとユーロ/円それぞれの月足を見ると、ユーロ/英ポンドは今年ずっと 200
月 SMA に頭を押さえられているのがわかる。もし、このレベル (0.7380 ポンド付近) が
上に抜けると、一気に 0.77 ポンド台ミドル(チャート上の緑の水平線)が見えてくる。
ユーロ/円は、やはり 200 月 SMA が 127.90 円近辺を通り、そこが下抜けすると、過去のサ
ポート/レジスタンスレベルとなった 124 円台が見えてくる。
それぞれの通貨の 200 月 SMA を使って英ポンド/円を計算すると、127.90÷0.7380=173.30
という英ポンド/円のレベルが計算上出てくる。これが、来年の英ポンド/円のひとつのタ
ーゲットをなるだろう。
究極のレベルとしては、それぞれの通貨がチャート上で引いたピンク線まで、来年中に達
成するかは判らないが、もし行くと仮定すれば、124.50÷0.7750=160.64 というターゲッ
トが出てくる。ただしこれは英ポンド安だけでなく、円高にならないと達成不可能である
ため、まずは 170 円台の攻防を期待したい。
-------------------------------------------------------------------------------執筆者: 松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスター
ト。18 ヶ月後に渡英決定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバ
ークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991 年に出産。1997 年シ
ティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の
元同僚と飲みに行き、証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
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【本レポートの趣旨】
本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として
おります。
本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ
ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明
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