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超伝導ジェットコースター
超伝導ジェットコースター 11 班 竹村玲哉 1.はじめに 近年リニアモーターカーなどで脚光を浴びている 超伝導は 1911 年に発見されて以来1),今日特に発展 が期待されている分野である.そこで私は超伝導を 用いた実験を行い,超伝導について簡単に説明する とともに,これを使った新たな移動機構を検討する. 2.理論 2.1 超伝導 超伝導とはある物質が非常に低い温度 (20 K程度)で電気抵抗が 0 になる現象のことをい う.このときの物質を超伝導体と呼ぶ.超伝導体に は 2 種類ある.まず,第一種超伝導体は純粋な超伝 導体であり,後に説明するマイスナー効果を示す. 次に第二種超伝導体だがこれは不純物が微量含まれ ており,マイスナー効果だけでなくピン留め効果も 示す.超伝導体が電気抵抗を失う温度を転移温度と いう.電気抵抗が 0 になる理由は確立された理論で はないためここでは省く.高温で超伝導に達するも のを高温超伝導体と呼ぶ 1)2). 2.2 マイスナー効果 抵抗のない完全導体だと金属 中の磁束密度は変化しない.このことから磁界が印 加されると,それを打ち消す向きに磁界を生じさせ る.この磁界と印加された磁界の合計が図 1 右のよ うな磁界になる.ところが抵抗のない導体では図 1 左下のように常伝導時に磁界を印加し,その後冷却 し印加磁界を取り除くと導体内に磁束が残ってしま う.しかし第一種超伝導体はどちらの場合でも図 1 のように 3)磁束密度を侵入させない完全反磁性を示 す.このことをマイスナー効果と呼ぶ 1)2). 図1 マイスナー効果 図2 ピン止め効果 2.3 ピン止め効果 第一種超伝導体と第二種超伝導 体の違いは不純物を含むところにある.第一種超伝 導体は印加磁界が臨海磁界 Hc を超えると磁束が超 伝導体を貫いてしまうため,常伝導に戻ってしまう. しかし第二種超伝導体には印加磁束が不純物を貫く 下部臨界磁界 Hc2 と超伝導体部を貫く上部臨界磁界 Hc1 の 2 種類の境界があり,この間の領域は混合状態 と呼ばれる.第二種超伝導体が混合状態にあるとき 図 2 のように 4)安定して浮上する.この現象をピン 止め効果という 1)2). 3.実験装置と材料 実験材料として図 3 のガドリウム系の超伝導体バ ルク(φ28 mm,高さ 10 mm,36.5 g),スペーサー(厚 さ 2mm,4.8 mm),ネオジム磁石(20 mm×20 mm×10 mm×50 個 ) , 鉄 板 JISG3141(25 mm×400 mm×0.5 mm,4 個),発泡スチロール,液体窒素を使用した. 図 4 の断熱材の作成においては浮上時に傾いてしま わないように,ネオジム磁石と超伝導体との距離を 一様にする必要があった.そのため発砲スチロール の底面を水平に掘った. 5mm 図 3 超伝導体バルク 15mm 図 4 断熱材 図 7 A部での浮上走行 100mm 図 5 ネオジム磁石レール 図 6 冷却時の様子 図 5 のように実験装置を組立てた.ここで磁界の向 きは統一する.なおこの装置を作る際に磁石同士の 吸着が強く,磁石を配置することが非常に困難であ った.また図 5 のように第一斜面をA部,ループ手前 の部分をB部と設定する. 4.実験方法 まず断熱材である発泡スチロールの容器に超伝導 バルクをいれ蓋をし,固定した.次に図 6 のように ネオジム磁石の上にスペーサーをのせ,その上に超 伝導体をのせた.液体窒素を断熱材の注ぎ口から注 入し冷却を開始した.ピンセットで磁力が生じてい るか様子を見ながら約 10 分冷やし続け,スペーサー を取り除いた.浮上を確認した後,力を超伝導体に 加え,初速を与えて磁石レールの上を走行するか検 証した.二種類のスペーサーを用いて行った. 5.結果と考察 2 種類のスペーサーで浮上させることができた. しかし,4.8 mm のときは安定せず,また着磁力も弱 くA部で脱線してしまった. 2 mm のスペーサーでは安定して浮上することが でき脱線することもなかった.しかし着磁力が強く スムーズに走行することができなかったため,手で 力を加えることで不安定ながらも走行させることが できた.図 7 のようにA部を通過することができた がB部であるループに達する前で停止してしまった. 図 8 は超伝導体を強引に移動させたとのものである. これらの結果から不安定な走行になってしまう原因 の一つとして,磁石間の距離が考えられる.今回の 実験装置ではネオジム磁石を同じ極が上向きになる よう配置した.そのため磁石間で強い反発力が働き 図 8 ループ部での浮上 10 mm~15 mm 程度の間隔が空いてしまった.これ により磁場が一様にならずスムーズな走行ができな かったと考えられる.これを解決する方法としてま ずネオジム磁石の大きさの変更である.縦長のネオ ジム磁石ならば一様磁場になりやすいと考えられる. しかし磁石が大きくなればなるほどレールの加工が 困難になるというデメリットも存在する.そのため レールを作成する際に緻密な設計,加工技術が必要 になる.次に超伝導体を小さくすることが効果的だ ろう.そうすることで磁束の弱いネオジム磁石でも 浮上させることができるため,磁石間の反発を抑え ることができる. 今回は安定したスムーズな走行ができなかったが 一様な磁場を実現できれば,新たな遊園地のアトラ クションとして,または宙に浮くスケートボードと して超伝導が活躍するかもしれない. 6.おわりに 本研究から分かったことは以下のとおりである. ・磁場を一様にするためネオジム磁石は縦長にする. ・その際,超伝導体を小さくする. ・一様磁場が実現できれば新しい移動機構として活 躍できる. 参考文献 1) A.W.B.TAYLOR,田中節子,超伝導,共立出版 株式会社 (1988) 2) A.C ローズ-インネス,E.ロディリック,島本進, 安河内昂,超伝導入門,産業図書株式会社(2000) 3) 超伝導体とは何か? http://www.material.cs.kumamoto-u.ac.jp/sup su1.html (2014/12/24 アクセス)