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マテリアルリサイクル優先への アンチテーゼ

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マテリアルリサイクル優先への アンチテーゼ
マテリアルリサイクル優先への
アンチテーゼ
平成24年1月
日本プラスチック工業連盟
リデュース・リサイクル検討委員会
1
目
次
はじめに
§1 ラーメンを食する「シーン」提供
§2 カップ麺でプラ製容器から紙製容器への転換
§3 包材マトリックスから見た「プラスチック製容器
包装のリサイクル」
§4 LCA的時間軸
(購入⇒家庭内保管⇒調理⇒廃棄)
§5 プラスチックを燃やすと何故いけないのか
§6 エネルギーの多様化⇒ごみ焼却発電
§7 むすびにかえて
2
はじめに
• 今や国民食とも言われる「ラーメン」
日本即席食品工業協会HPによると
・平成22年度に日本で生産されたのは53億食
(※全世界の消費量は954億食である。)
・「ラーメンの包材にみる要求される機能と包装設計
(包材構成)」資料では1商品当たりの包材重量は
9.96g
・ラーメン包材で約53千㌧である。
★★★ ラーメンのプラスチック製容器包装をとおして、
マテリアルリサイクル優先への考え方に対する
アンチテーゼをまとめたものである。
★★★
3
§1 ラーメンを食する「シーン」の提供
日本の食生活を豊かにするために・・・
食品メーカーでは様々な加工食品技術を開発してきました
たとえば、みんなが大好きなラーメン!
◆世界初インスタントラーメンが開発されたのは、1958年!
日清食品の開発ストーリーを見てみましょう。
4
日清食品 チキンラーメンの開発ストーリー(HPより)
世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」が発売されたのは、1958
年8月25日。日本が高度経済成長期にさしかかった時期です。
日清食品の創業者である安藤百福が食に携わることを決意したのは、
戦後の焼け野原で飢餓状態の人びとが溢れているのを目にし、「衣食
住というが、食がなければ衣も住も芸術も文化もあったものではない」と
強く感じたからでした。
また、戦後の焼け野原に闇市が立った時、ラーメンの屋台に長い行列
ができていた様子も、安藤の脳裏に深く焼き付いていました。ようやく手
にしたラーメンを食べている人びとの顔は、幸せそうな表情に包まれて
いたのです。安藤は「日本人は本当にめん類が好きなのだ」と実感し、
漠然とではありましたが、そこに大きな需要が暗示されているのも感じ
とっていたのでした。( 一部省略))安藤はインスタントラーメンの開発に
あたって、次の5つの目標を立てました。
・おいしくて飽きがこない味
・家庭に常備できる保存性
・調理に手間がかからない簡便性
・安価
・安全かつ衛生的
日清HPhttp://www.nissinfoods.co.jp/knowledge/madeby/chikin/wish.htmlより引用
5
インスタントラーメン
麺を油で揚げるという発想で、
お湯で調理できて、長期保存も可能になりました。
袋に入れることで、
・家庭で調理可能という利便性
・家庭に常備できる保存性
・安全かつ衛生的
を実現しました。
写真は日清HPhttp://www.nissinfoods.co.jp/knowledge/madeby/chikin/wish.htmlより引用
6
ラーメン大国となった日本では・・・
有名店プロデュースカップラーメン等がコンビニに並ぶようにまで
さらに+αの付加価値(リッチな
具、風味油)をつけることにより
多様化する消費者の要望を満
たしています。
酸化から守る → バリア性 →M(アルミ)
やぶれない → 強度 →PA(ナイロン)
臭いがもれない → 保香性 → PET
液がもれない → 密封性 →PE(ポリエチレン)
用途に合わせて、色々な種類のフィルムを
張り合わせて、機能を持たせます。
7
カップラーメン
パッケージに食器の
機能をつけることにより
さまざまなシーン、オケージョンに
使用できる利便性が生まれました。
自衛隊の演習
テスト販売の呼びかけに最初に応えてくれたのが「自衛隊」
お湯さえあればどこでも食べられるという「価値」に、いち早く気づいた。
新しい価値の確立
銀座の歩行者天国でヒット
オフィスでのランチ
一人暮らし
写真は日清HPhttp://www.nissinfoods.co.jp/knowledge/madeby/chikin/wish.htmlより引用
8
§2 カップ麺に紙容器を採用
「紙化」に注目が集まる
2008年4月
日清食品は「カップヌードル」において、「ECOカップ」(紙製カップ)を採用
「ECOカップ」採用当初の広告
「ECOカップ」採用対象製品
9
「紙化」=「プラスチックをなくすこと」??
「カップ原紙」に発泡ポリエチレンをコーティングして断熱性を高める
とともに、従来の発泡ポリスチレン容器が持つ手触りを再現した。
日清食品「カップヌードル」は、
発泡ポリスチレン容器から
紙製の「ECOカップ」に切り替え。
PETフィルムなどを加えた5層構造
日清食品HPより http://www.cupnoodle.jp/story/index.html
「紙」にない機能を補うために、「プラスチック」は不可欠な素材
10
【参考資料】
Q プラスチックと紙からなる容器包装で分離不可能(複合素材)な
場合、どのように表示すればよいのですか?
A 重量比が大きい方の識別マークを表示してください。
プラスチックと紙の複合素材の場合には、重量的に主たる素材に
ついての識別マークが必要となります。すなわち、プラスチックの
重量比が50%を超える場合はプラマークを、紙の重量比が50%
を超える場合は紙マークを表示してください。
なお、異なる素材であっても容易に分離できる場合には、
各素材についての識別マークが必要になります。
経済産業省 3R政策 「資源有効利用促進法」容器包装の識別表示Q&Aより
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/02/faq/answer_08.html#q21
11
§3 包材マトリックスから見た「プラスチック製容器包装のリサイクル」
国立環境研究所資料より
再商品化および再商品化製品利用プロセス
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイク
利用段階
節約される
素材・資源
成型
ペレット化 ペレット
市町村
輸送
分別収集
選別保管施設
ケミカルリサイクル
減容
固化
ベール
人や機械
による選別
再商品化
再商品化製品利用
破砕
(洗浄)
(分離)
パレット、
ボードなど
新規
樹脂
合板
など
高炉
コークス炉
ガス化炉 ガス 石炭
油化炉 油
造粒物
ガス
還元、コークス、
石油 など
ガス、油など
エネルギー回収
容リ法では
減容
紙 固化
残渣(産廃)
残渣
“緊急避難”
としてしか
認められて
いない
造粒物
ボイラー
セメント
キルン
熱、電力など
石炭
焼却、発電、熱利用、セメント原燃料化
12
プラスチック製容器包装のリサイクル (再商品化手法の比較)
極めて低い
「歩留まり」
が問題
○○%
再商品化製品
再商品化率(基準)
マテリアル(材料)リサイクル
ベール
投入
選別
減容固化
ペレット等
再商品化製品
利用製品
45%
残さ
処理
ガス化
油化
ガス
ベール
投入
選別
減容固化
ペレット等
熱分解
(油化)
油
45%
ベール
投入
選別
減容固化
ペレット
化学原料
残さ
処理
乾留残渣
残さ
処理
熱分解
(ガス化)
ガス
65%
高炉還元剤化
コークス炉化学原料化
ガス
銑鉄
ベール
投入
選別
残さ
処理
減容固化
熱利用
ペレット等
75%
熱分解
(高炉)
ガス
ベール
投入
選別
残さ
処理
減容固化
ペレット等
85%
熱分解
(コークス炉)
油
コークス
13
【参考資料】
再商品化製品と再商品化利用製品(その1)
①再商品化製品
日本容器包装リサイクル協会HPより
14
【参考資料】
再商品化製品と再商品化利用製品(その2)
②再商品化利用製品
日本容器包装リサイクル協会HPより
15
【参考資料】
再商品化手法別の落札量構成比の推移
日本容器包装リサイクル協会HPより
16
ラーメン包材マトリックスから見た「再商品化原料」としての位置づけ
【形態】
F:フィルム P:袋 L:ふた材 B:本体
【再商品化手法】
MR:マテリアルリサイクル CR:ケミカルリサイクル TR:サーマルリサイクル
再商品化手法
品質
歩留
経済
レベ
まり
性
M C T
ル
R
R R
形
態
プラスチック系部材
F
外装シュリンク
OPP単
△
○
○
△
△
○
○
印刷ありはMR不可
P
麺袋(チルド系)
単~
OPP/CPP
△
○
○
△
△
○
○
印刷ありはMR不可
水分、油汚れは不可
P
麺袋(半生系)
OPP/CPP
~複合
△
-
△
△
△
○
○
回収システム構築不可
B
トレー
PP単~複
合
○
○
△
△
△
○
○
印刷ありはMR不可
B
どんぶり、カップ
PS単~複
合
△
-
△
△
×
○
○
油吸着汚れでMR不可
回収システム構築不可
L
ふた材
複合 AL
複合
△~
×
-
△
-
-
-
-
液体、粘体系汚れは不可
回収システム構築不可
P
調味料袋
複合
×
-
×
×
×
△
○
液体、粘体系汚れは不可
P
かやく袋
複合
△
-
×
×
×
○
○
スパイス系の臭気吸着は不可
包材仕様
分別選
別手間
備考
材料リサイクルが成立するための5つの要件
(神戸山手大学教授中野加都子氏)を満たしていない。
<①対象の廃棄物が大量に存在する②有用な属性がある③リサイクル技術が存在する④再生品への需要がある
⑤経済的な整合性がとれている>
TR(エネルギー回収)が効率的
17
§4 LCA的時間軸
◆CO2排出量を下げる方法
容器包装
店舗販売
家庭保管
重量重い
印刷多い
冷凍
冷蔵
調理
食事後
煮込む
洗いあり
お湯だけ
重量軽い
印刷少ない
常温
レンジ
洗いなし
18
◆ラーメンの場合
容器
重量
スープ
かやく
店舗・家庭
保管
調理
食事
廃棄・
リサイクル
CO2大
かや
く
スー
プ
カップ麺
カップ
約10g
カ
常温
沸騰した湯
カップ麺
カップの
まま
ッ
プ
カップ麺
?
スープ
袋
袋麺
約4g
冷蔵
or
冷凍
麺
スー
プ
沸騰した湯 どんぶり
で煮込み (食後洗う)
CO2大
19
◆適したリサイクル方法?!
カップ
ふた
カ
カップ麺
袋
ッ
スー
プ
袋
プ
袋
かや
袋 麺
く
透明でも
複合素材
ポリスチレン
単一素材
だが
紙
PET
ポリエチレン
アルミ箔
PSは油分に弱いため物性
は劣化しており
ケミカルリサイクルか焼却
PET
ポリエチレン
アルミ箔
汚れが多かったり
アルミ箔を含むため
焼却
ポリプロピレン
ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリエチレン
汚れがなければ
ケミカルリサイクル
汚れが多ければ焼却
燃やすのはもったいないのでは?
20
§5 プラスチックを燃やすと何故いけないのか
以前
●塩素系樹脂焼却によるダイオキシン発生問題
●オレフィン系樹脂の高発熱量による焼却炉の傷み
焼却炉の更新・改良が進み、問題は解決されているが、
いまだに尾を引いている。 (誤解されたまま)
現在
●容リ法におけるマテリアルリサイクル優先
洗って分別回収 ⇒ 燃やすべきではないとの考え
●燃やすとCO2が排出される
地球温暖化への影響を懸念
●焼却は資源の無駄遣いとの考え
自治体では、容器包装を除くプラスチック廃棄物の埋立
から焼却への転換が進んでいる。
●焼却すれば熱回収ができる。 ⇒ 埋立よりも役立つ
●熱回収も立派なリサイクル ⇒ 啓発活動の必要性
●複合素材である軟包材では特に有効な手段
21
§6 エネルギーの多様化
見直し
必至
出典:「原子力・エネルギー」図面集2011 1-19
見直し必至! ⇒ 東日本大震災で日本は原子力に頼れなくなった
原発1基 =100万kW
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§6 エネルギーの多様化②
既に進んでいるプラスチック廃棄物のサーマルリサイクル
ごみ発電のメリット
●小規模である ⇒ 各地域(自治体)に根ざした発電が可能
●燃料費の削減 (石油、石炭、天然ガス不要)
●プラスチックは高発熱量 ⇒ 廃プラスチックは貴重なエネルギー源
●風力、太陽光は天候に左右される
原子力に代わる新しいエネルギー源に
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【参考資料】
発熱量比較
(MJ/kg)
注:1MJ(メガジュール)=239kcal、1kcal=4.18605kJ
10,000kcal
プラスチック処理促進協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2010」より一部加筆
24
【参考資料】
日本におけるごみ発電
原発1基分
25
§7 むすびにかえて
・産廃系は製造ラインで発生するものや、世に出回った後回収
されたものなど量的にまとまっており、樹脂の組成・物性等の
把握が比較的容易である。一方の一般系は樹脂の組成・物
性等の把握は産廃系と比較しても極めて難しいと言わざるを
えない。
⇒分別ができない=「品質」が安定しない
⇒分別しようとすると工数・手間=「コスト」がかかる
産廃系
一般系
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品質
廃プラのマテリアルリサイクルは、
使う側が求める品質をどこまで担保できているかが疑問!!
コスト
• 容リ法に基づくマテリアルリサイクルの再商品化手法による
歩留まりは45%といわれているが(資料P13参照)、単純に
言えばコストは約2倍になるということである。
• この負担は誰が?
• また、ラーメン包材でみて分かるように、多種多様にわたって
おり、分別する側(消費者)の工数・手間も相当なものである。
• 「マテリアルリサイクル優先」という「錦の御旗」をかざして、
「無駄な努力」やリサイクル効率の悪さという「見えないコス
ト」のつけを消費者や自治体に回しているようなもので、科学
的合理性に程遠いといわざるをえない。
27
【参考資料】
欧米に比べて日本はごみ焼却施設の数は1269
(2008年)と多いが、このうちごみ発電施設は300施設
で総発電能力は162万キロワットと少ない。その大半が
小さな施設で、(中略)高効率発電は望めないという状
況である。今は廃プラスチックを物質回収型のリサイク
ルにしているが、分別収集のコストが思いの外かかっ
ているとか、資源ごみの選別残渣の問題に直面して
困っているところも多いと思われる。そのような市町村
で新たに焼却施設を建設するときには、廃プラスチック
の熱回収型のリサイクルを検討する価値があると思わ
れる。(中略)広域的な廃棄物処理を基本として施設規
模を大きくし、カロリーの高い廃プラスチックを利用して
発電効率を高めることが求められる。(後略)
(『日本エネルギー学会誌 第90巻第7号 2011年7月
特集:エネルギー利用の観点からみた廃プラスチックのあるべき姿
「廃プラスチックのごみ発電燃料としての利用可能性調査」
田中 勝 石坂 薫 相良敏正 共著 』より抜粋)
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◆マテリアルリサイクル優先に固執せず、
それぞれの主体の努力を無にしない
仕組み作りを!
◆事業者の負担を含めた社会的総コスト
の削減を図る観点からも、熱回収型の
リサイクル検討といった支援も視野に!
◆「真の連携」を!
29
附属資料
Ⅰ ラーメンの包材にみる要求される機能と
包装設計(包材構成)
Ⅱ ラーメンの包材にみる機能性等(家庭内
調理フロー・「食」の楽しみや諸データ)
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