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Kobe University Repository
Kobe University Repository : Kernel
Title
スチームレシプロエンジンを振返る(Think back to the
steam engines and the times of them)
Author(s)
杉田, 英昭
Citation
海事資料館研究年報,24:1-16
Issue date
1996
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81005682
Create Date: 2017-03-30
スチームレシブロエンジンを振返る
杉田英昭
1.まえがき
あの阪神・淡路大震災から丸 2年経過して、
また、機側の圧力計の目盛は、高圧シリンダ
入口で
o-25kgf/c
r
t
l、中圧シリンダ入口で 0-
で、見違えるような立派な岸壁が顔を見せつつ
12kgf
/c
r
t
l、低圧シリンダ入口は連成計で -760
mmHg-2.5kgf
/C
r
t
lである 。回転計の目盛は前後
進とも o
-190rpmである シリンダカバーの
ある 。
取付けフランジの内側の直径は実測すると、高
神戸商船大学のキャンパスで最も被害の大きかっ
た繋船池を主とした護岸工事も急ピッチで進ん
一方、塀を隔てたグランド側には、解体され
D
圧で~ 410mm 、中圧で~ 540mm 、低圧で~
8
6
0
m
m
た元練習船「進徳丸」の遺品が雑然と置かれて、
であった 。 図 1に保存展示を待っているこの
工事終了後設置予定の展示施設に移されるのを
「進徳丸」の主機蒸気機関を示す 。
今や遅しと待っている状態である 口
多くの人たちがこの機関の保存を訴えたのは、
それらの中で、
偉容を誇っているのが進徳丸主
過去にこの進徳丸で航海練習を行った実習生の
.5m、幅1.7m、高さ 3.3mの真っ
機関で、長さ 3
ノスタリジアだけでなく、動力機械の技術史上
赤に錆びた蒸気往復機関すなわちスチームレシ
の文化遺産としてその価値を認めたからである D
team r
e
c
ip
r
o
c
at
i
n
ge
n
g
i
n
e
)
プロエンジン(s
いまこの機会に、かつての動力機械の王座に座っ
である
O
これは 一般に単に蒸気機関 (
s
t
e
a
m
e
n
g
i
n
e
) と呼ばれている O
進徳丸は 2軸船であり主機も 2基備えていた
が、その内の 1基がその機関でもう 1基は船体
ていた蒸気機関について理論面、実際面、発達
史の面からそれぞれ振り返ってみることにする 。
なお、本文中の圧力の値は、とくに絶対圧力
との断りが無い限りすべてゲージ圧力である D
と一緒に解体された 。機関形式は 3段膨脹往復
ちなみに、ゲージ圧力に大気圧を加えたものが
機関 2基、図示馬力は 1
,
250IHP (
6
2
5
I
H
Px2
絶対圧力である 。
基)、ボイラは片面焚自然通風缶湿燃式円缶×
2基、燃料は石炭、燃料消費量は 2
0
t
o
n
/d旬、
石炭の積載量 は7
8
5.
43
t
o
nで連続 5,
0
0
0
m
i
l
e航
海することができた 。
2
. 作動原理
(
1
) 指圧線図(インジケータ線図ともいう、
i
n
d
i
c
at
o
rdiagram)
図 2は蒸気機関のサイクルを示す理論指圧線
図で、縦軸がシリンダ内の圧力、横軸はシリン
ダとピストンで固まれる容積で、ピストンの変
位に対応している O 容積 Vc はピストンがシリ
ンダヘッドに衝突するのを避けるために設けら
れた隙間容積である 。
いま 1で給気弁を開けて圧力 P。の蒸気をシ
リンダに入れ、 2で給気弁を閉じて給気を断つ。
この 1の位置を給気点 (
a
d
m
i
s
s
i
o
np
o
i
n
t)
、
2の 位 置 を 締 切 点 ま た は 断 気 点 (
c
u
t-o
f
f
p
o
i
n
t
) といい、 Vd
/V。を締切比という o 2-3
の変化は断熱膨脹過程で、 PVk =一定の曲線で
表される
o
kの値は、かわき飽和蒸気に対し
1
.1
3
5、過熱蒸気に対し1.3を用いる 。 次に 3で
図 進 徳 丸Jの主機蒸気機関
排気弁が聞き 3-4-5の変化中に蒸気が排出
ングよくシリンダ内へ供給およびシリンダ外へ
2
圧
排出させる弁の働きが必要である。その代表的
s
l
i
d
ev
a
l
v
e
) で、図 3に
なものがすべり弁 (
カ
ピストンとすべり弁の関係を示す
6
PO
3
(1)
。
図は、ピストンが最上端である上死点(t
o
p
deadc
e
n
t
e
r
) からまさに下降しようとすると
きで、 OCはクランクを、 OEは偏心輪におけ
5
4
る偏心距離(偏心半径ともいう)を示す。偏心
9
0 +δ) だけ進
位置 Eはクランクに対して (
0
んでおり、この 3を前進角という。
蒸気機関は複動式であるため、ピストン棒は
主
旦
直線的な運動しか許されないので、回転運動を
するクランクへは、クロスヘッドガイドの内側
;
,;~",~~ハ;~刊日
ぶ Jで草寺帯時射ー寸
引
! ム‘・遡 」
LJ
叶 一
モ十戸ザ持
ι
y
.玄
方~国
図 2 理論指圧線図
をすべるクロスヘッドを介して伝えられる。ク
ランクは矢印の方向に回り、ピストンが下がる
9
00
と偏心輸の偏心位置 Eは常にクランクと (
+δ) の角度を保ちつつ同じ方向に回転し偏心
棒を引き下げ、すべり弁棒を介してすべり弁を
下降させる。そして蒸気をピストンの上部に供
される。この 3の位置を、排気点または開放点
(
r
e
l
e
a
s
ep
o
i
n
t
) という。このとき背圧 p,まで
給する。
図示の弁は、断面が D 字形をしているとこ
十分膨脹させればより多くの仕事を得ることが
ろから D形すべり弁または平形すべり弁とい
できるが、それにはピストンの行程を長くしな
われ、すべり面は平面に仕上げられ背部が蒸気
ければならず、シリンダ容積も大きくなるので
側、内部が排気側になっている。
適当な圧力 p,で膨脹を打ち切らねばならない。
図 3の① ⑥ですべり弁の作動とピストンの
排気 4-5は一定圧力 p,の下で行われ、
5で排気弁が閉じて圧縮過程 5-6に入
sの位置を圧縮点
(
c
o
m
p
r
e
s
s
i
o
np
o
i
n
t
) という。この過程では、隙
る。この
間容積を利用してシリンダ内に残った蒸
気を圧縮してピストンの緩衝作用を行わ
せる O またこれは圧力を p,から P。に高
③
めるのに要する新しい蒸気供給量を少な
会
くし、かつ圧縮によって温度を上げて後
ふ
述の初期復水を少なくするための過程で
ある。この圧縮過程が終ると同時に給気
弁が聞いて、圧力 P。の蒸気が送り込ま
れて同様の過程を繰り返す。
このように蒸気機関は 2行程で 1サイ
実際に指圧線図で示される作動を蒸気
機関に行わせるためには、蒸気をタイミ
2
@
久々
図 3 すべり弁の作動とピストンの動き
φL
(
2
) 機関の実際の作動
@
@
クル、 l回転を行う 2サイクル機関であ
る
。
動きを説明する O
①
⑤
ピストンが上端に達したときで、上部蒸気
続け、上部蒸気口の排気側への開度は増して
口はすでに tだけ聞いて蒸気が供給されてお
下部蒸気口とすべり弁との重なりが減じ、い
り、下部蒸気口では排気が行われている D こ
の tの大きさをリードという。
②
③
ままさに開こうとしている O
⑥
ピストンが最下端である下死点 (bottom
ピストンが①より降下して偏心位置 Eが
dead c
e
nt
e
r)に達し、下部蒸気口はリード
真下になったときで、上部蒸気口の開きが最大
l
'だけ開いている D これから始まる上昇行
となる。この聞き mを最大蒸気口開度という。
程の場合も、いまの下降行程と同じ動作を繰
ピストンがさらに下降すると、すべり弁は
②の最低位置を過ぎて逆に上昇して蒸気口が
④
クランクがさらに回るとすべり弁は上昇を
り返す。
(
3
) すべり弁および弁線図
丁度閉じ、蒸気の供給が断たれる O これから
シリンダへ蒸気を出入りさせる役目をする弁
はシリンダ中の蒸気の膨脹によって仕事がな
には、往復運動をするすべり弁、内燃機関の給
される O
排気弁のようなドロップ弁、回転式のコーリス
ピストンは蒸気の膨脹によって押し下げら
弁の 3形式があるが、 ドロップ弁とコーリス弁
れ、すべり弁は上昇運動を続けて偏心位置 E
は機構が複雑で高速運転に向かない。代表的な
が真横になったときで、上部蒸気口の下側の
ものはすべり弁で、これには D 形弁とピスト
縁とすべり弁の上部内側の縁とが一致してい
ン弁がある O すべり面が平面ですでに図 3で模
るO ここから少しでもすべり弁が上がると、
式的に示した D 形弁は最も簡単で広く採用さ
上部蒸気口は排気側に通じて膨脹中の蒸気は
れていたが、蒸気圧力が高くなるとその背面か
ここから排出されて、ピストン上部の圧力は
ら強く弁座に押し付けられて摩擦損失が増大す
急に下がる。一方、すべり弁の上昇につれて
る。一方、すべり面が円柱面であるピストン弁
下部蒸気口の開度が次第に減じてついに排気
は蒸気圧が均衡しており、蒸気で押し付けられ
側との連絡が断たれる O しかもピストンはな
ることがないので高圧の蒸気機関にもっぱら採
おも下降しているから、残存蒸気を圧縮して
用された。
その惰力を吸収して、静かに停止させ円滑な
運転ができる O
なお、蒸気の締切り、排気、圧縮、給気の始
まりと終りの時期、ならびにそれぞれの弁開度
α
ピストン弁
D形 弁
ツオイナ線図
図 4 すべり弁とツォイナ線図
-3-
とクランクの位置(すなわちピストンの位置)
抵抗などのため 一定背圧よりも幾分高くなり、
v
a
l
v
ed
i
a
との関係を図示したものに弁線図 (
さらに、排気弁の閉じる直前では絞りのため
gram) がある 。これは、すべり 弁が機関への
蒸気の流入・流出を適正に行わせる状態にある
に余分の圧力上昇を生じる。
⑦ 圧縮は理論的に は断熱変化であるが、実際
かどうかを調べたり、すべり弁が与えられた条
には膨脹過程同様シリンダ壁やピストンなど
件の下で正しく働くように調節したり設計した
から熱損失がある 。
りするのに大変便利な線図である 。図 4にこれ
③ 給気弁が開くのにある時間を要するのでそ
らすべり弁と代表的な弁線図であるツォイナ線
図を示す (2)
れを見越して圧縮過程終り近く少し早めに開
くが、この開く時期は排気弁と同様早過ぎて
ツォイナ線図は、偏心輪の偏心距離を半径と
して円を描き、この中心を通る垂直線からクラ
も遅すぎても損失を招く
⑨
O
ピストンとシリンダ問、ピストン棒のパツ
ンクの回転方向とは逆に前進角 δの位置に直径
キンの部分、弁などから蒸気が漏れていると
AOA'をとり、 AO、OA'を直径とする 2個の
きは理論指圧線図からはずれ仕事の損失を生
小円を描いたものである 。 これにおける eは蒸
じる O
a
p)、 i
気重なり(蒸気余面ともいう、 steam l
図 5は実際の指圧線図の一例で、神戸商船大
は排気重なり(排気余面ともいう、 e
x
h
a
u
s
t
l
a
p
)、aは給排気通路の i
幅である D いまクラン
クが OCの位置にあるとすると、弁の中心位置
はf/cm2
ピストン下面
1
.0可 rー ー 一 一 ー /
からの変位は Ofで示され、給気口を e
fだけ開
0
仏.
8i
-¥ 九 - ¥
』一
、一
喝
-
いていることを示す 。 したがって Oa、 Obは
0
仏.
4 -i\~\\\ /
0
仏.
2、色
ι
.iぜ々
O 大気圧線ア
給気口の聞き始めおよび締切のクランク位置で
あり、 Oc、Odは排気口の聞き始めおよび閉じ
る位置である D
ピストン上面
/.-一一一¥
d
0.6“J\~ \\
』
r
図 5 実際の指圧線図
(
4
) 実際の指圧線図
実際の機関のシリンダ内圧力の変化は理論指
圧線図とはかなり違っている O その理由は
①
シリンダに供給される蒸気圧力は、途中の
管や弁を通るときの抵抗によってボイラにお
ける圧力より低い D
②
給気中はピストンが次第に早く移動するの
で給気速度も早くなり、弁を通るときの抵抗
が増して圧力はやや下がり気味となる o
③ 給気弁の閉鎖には時間を要し、締切点の前
で蒸気の通路面積は次第に狭くなるため蒸気
は絞られて圧力降下をきたす。
④ 膨脹過程はシリンダの断熱方法により伝熱
の程度が異なり、理論的な断熱変化にはなら
ない 。
⑤ 膨脹過程の終わり近くで排気弁が開くが、
この開く時期が早過ぎれば膨脹による仕事を
十分利用できず、また遅過ぎても排気の仕事
損失が大きくなって、いずれも出力の減少と
なる O
⑥ 排気過程では、蒸気が排気弁を通るときの
-4-
j
図 6 指圧線図の採取
表 1 蒸気機関の諸性能
学の 1年生のゼミ形式の授業において、研究室
に配属された学生がマイハーク型指圧器を用い
機関
て採取したものである o 1枚のメタリックベー
パにピストン上面および下面の 2つの線図が描
かれている。対象とした蒸気機関は図 6の写真
初温
初圧
平
.
復*
8-16
飽和
10-12 300-350
10-12
℃
10-8.5
300-350 7.25-6
る。左の学生は指圧線図を採取しており、奥に
見える学生はブレーキ荷重を測定している。測
定データは主蒸気圧力 4
.
2k
gf
/c
u
f、シリンダ入
熱効車
%
9
.5-!
l
.0
11.9-14.0
飽拘
単式
に示す「舶用立形単式不凝縮蒸気機関 j で、機
関正面に後述のスチブンソン式逆転装置が見え
蕉気消費量
k
gf
!(!HP'h)
k
g
f
/
c
.
'
飽和
複式
復木
8-12
復水
自-12
2
7
0
300-350
3段
飽和
1
1
1
限式
2
7
0
300-350
7.5-6.5*
5.2-(.5*
12.7-15.8
16.6-18.6
7.5-5.5
自4.8
5-4.2
12.7-17.2
H.7-18.(
17.3-19.9
6-5.1
6-4.5
4.5-4
15.8-18.5
17.7-19.7
19.2-20.日
*聞は単複犠慣に対する鑑である.
口圧力1.0
k
gf
/c
u
f、背圧は大気圧で 0
.
0
2
k
gf
/c
u
f、
そして回転数 1
10rpmで運転したとき、次の図
示馬力の項で計算したように出力は図示馬力で
1
.3
3IHP、制動馬力で0.60BHPであった。
3
. 図示馬力
図 2の指庄線閣において、面構 1
2
3
4
5
6
1はこ
表 2 蒸気機関による回転数とピストン速度
機関白種電
平僧ピストン述腹
・
/
.
ポンプ運転など低適用
普 通 工 場 周
0.7
1-1.7 •
売電湾高速綾部
鶴 湾 旗 開
機関車用機関
1.7-4
3.3-6.6 •
4-5
の機関が 1サイクルになす仕事量を表している O
示馬力(In
d
i
c
at
e
dH
o
r
s
ePower、略して IHP)
Wi=(
2
6
8
.
8X0
.
5
8
1十 2
5
7
.
5X0
.
5
7
1
)
1
0
/
4
5
0
0
=1
.3
3IHP
X0
.
1
8
X1
という。
となる。
この線図による仕事量から計算した馬力を、図
シリンダ内の蒸気圧力は常に変化しており、
この顕示馬力は蒸気がピストンに対してする
これを 1サイクル中で平均した値を平均有効圧
仕事であるが、クロスヘッドのすべり部など各
力という O 図示馬力 W,(
IHP) は、平均有効
部の摩擦抵抗に打ち勝っためにその仕事の一部
k
gf
/c
u
f
)、毎分回転数 N (rpm)、ピス
圧力 P (
が消費され、実際にクランク軸から取り出され
トンの有効面積 A (
c
u
f
)、 ピ ス ト ン の 行 程 L
る仕事は図示馬力よりも小さくなる O これを正
(m) から次式を用いて計算できる。すなわち、
味出力または有効馬力と呼んだり電気動力計な
Wi= (
A
t
.P,
+A
,
.P)
,.
L.N
/
4
5
0
0
ど制動動力計によって測定されるところから制
なお、添字 lはピストン上面、添字 2はピス
B
r
a
k
eH
o
r
s
ePower、略して BHP)
動馬力 (
トン下面の状態を示している。
いま、図 5の指庄線図を用いて図示馬力を求
めてみる。
まず指圧線図の面積はプラニメータで測定す
ると、ピストン上面で 1
0
.
9
c
u
f、下面で1O.
7
c
u
f、
線図の横幅は上下宿とも 7
.
5
c
mであるので、平
均高さは上面で 1
0
.
9/7.5=1
.4
5
3
c
m、下面で 1
0
.
7
/
7
.5=1
.
42
7
c
mである O 使用した指圧器のばね
ともいう。
この場合の制動馬力 Wbは、図 6にも示した
・プロニー式摩擦動力計によって測定した。すな
b口 7
.
8
5
k
g
f、アームの長
わち、ブレーキ荷量 F
さ Lb=0.5mより、
Wb
= 2π.F
b.L
b.N
/
4
5
0
0
=
0
.
6
0BHP
で、機械効率マ m は
、
亨m
=Wb/Wi=O6
0
/1
.3
3=0.
45
1
圃
の強さを示す「ばね尺度」は、 2
.
5
c
m
l(
k
gf
/c
u
f
)
すなわち 4
5.
1%
であるので、平均有効圧力民 =
0
.
5
8
1k
gf
!c
u
f、
となる O この蒸気機関は小出力であり、また適
P,
=
0
.
5
7
1
k
gf
/c
u
f、またピストン径は 1
8
.
5
c
mで
正な蒸気臣力で定格運転をしているとは考えら
あるので i
面 積 ん =2
6
8
.
8
c
u
f、この値から直控3
.
8
れず大変小さな値となった。機械効率は機関の
c
mのピストン様の断面積 1
1
.3
c
u
fを差し引くと、
A,
=
2
5
7
.
5
c
u
fとなる。したがって図示馬力 Wi
は
、 L=0.18m、N=110rpmより
大きさや形式などによって異なるが、定格状態
ではふつう横形機関で 80~93% 、立形機関で
85~96% である。
-5-
表 1に蒸気機関の諸性能、表 2に回転数と平
均ピストン速度をそれぞれ示す
(3)
4
. 蒸気機関の調速法と逆転装置
(
1
) 調速法
指圧線図の面積はこの機関が 1サイクルにな
す仕事量を表し、それは給気過程における仕事
と膨脹過程における仕事との和である。したがっ
て、機関の仕事量すなわち出力は、給気の圧力
または締切比を変えることによって調整できる O
このことを利用して蒸気機関の調速法には、
遠心調速機のスリーブの動きを利用して絞り弁
の開度を変えて蒸気の圧力および流量を変える
(
a
) スチプンソン・リンク装置
「絞り調速法 (
t
h
r
o
t
t
l
eg
o
v
e
r
n
i
n
g
)J と、軸調
すパリ片
速機の動きによって偏心輪の偏心距離および前
進角を変え、すべり弁の締切点を変えることに
よって蒸気流量を調節する「締切り調速法
(
c
u
to
f
fg
o
v
e
r
n
i
n
g
)
J がある。締切り調速法
は蒸気の圧力は一定で、蒸気流量のみを変える
から絞り調速法よりも効率はよい。
なお、機関の始動の際は急激な加熱を避ける
ため、初めシリンダ、内へ少量の蒸気を送って徐々
に暖めドレンを十分抜いた後、はずみ車を始動
(
b
) ワルシャートの弁機構
図 7 蒸気機関の逆転装置
位置に置いて蒸気弁を徐々に開いて始動する。
停止は蒸気弁を締めて蒸気の供給を断てばよい。
心輪 E1、E,があり、 E1は前進用、 E,は後進用
(
2
) 逆転装置
でいずれも前進角 8をもって図のようにクラン
発電用機関や工場用機関などは一般に回転
ク軸に取り付けられている。両偏心棒の端はそ
方向は一定であるが、舶用機関や機関車用機関
れぞれピン継手 F1、F,によってわん曲した膨
などは逆方向にも回転する必要がある O これを
脹リンクに連結されている。膨脹リンクの曲率
行うのが逆転装置である。偏心輪はクランクに
半径は偏心棒の長さに等しく、クランクの方に
対して回転方向に (
9
0 +δ) だけ前進してい
わん曲している O リンクにはすべり片 H がは
0
なければならないから、逆転するためには偏心
まっていて、それからピン継手によって弁棒 V
輪をそれと線対称の位置、すなわち現在より
に運動を伝える。リンクは榛 FG、ハンドル P
(
1
8
0 -28) の位置に移動するか、またはそ
によってすべり片に対するその位置を変えるこ
れと同じ効果をあげるような方法を用いなけれ
とができる。
0
l
図は前進の位置で、この場合には偏心輪 E
ばならない。
代表的な逆転装置に、スチブンソン・リンク
の運動だけを受け、機関は前進方向に回る。こ
S
t
e
p
h
e
n
s
o
nl
i
n
k motion)とワルシャー
装置 (
のとき、偏心輪 E,によって動かされている後
l
s
c
h
a
e
r
t
'sv
a
lv
eg
e
a
r
) があ
トの弁機構 (Wa
進用偏心棒は何の働きもしていなしミ。ハンドル
る。舶用機関には前者が多く用いられ、機関車
を Glから G,に移すと後進位置になりすべり
用機関には後者が用いられた。
片は F,にはまり、弁は偏心輪 E,だけの運動を
a
) は 2個の偏心輪とそれに付随する
図7(
受けて機関は逆転する。この中間では弁の行程
機構によって弁を動かすスチブンソン・リンク
が減じ、締切りが早くなって出力を調整するこ
2伺の偏
とができる。これをリンキング・アップという O
装置の作動を説明した図である
-6-
(3)0
一方、図 7 (
b) は 偏 心 輪 を た だ 1個 用 い る
ワルシャ-トの弁機構で、偏心輪の運動とクロ
スヘッドの運動とが合併レバーによ って合併さ
れてすべり弁に伝わる D すなわち図において偏
心輪はリンクをその 中央支点のまわりに揺動し、
その運動がす べ り片に伝わり、ラジアル棒を経
て、合併レ バ ーに伝わる 。 またクロスヘ ッ ドの
運動が揺れ棒によ って合併レバーに伝わり、す
べ り弁はこのレバーによ って動かされる O 機関
の回転方向を変えたり締切点を変えたりするに
はアームを回してすべ り片をリンクの溝の中で
移動させればよし E。
5
. 蒸気機関の構造例
蒸気機関の 主要構造は、デイーゼル機関とく
にトランクピストン形の高速中小形機関ではな
く、クロスヘッド形の低速大形機関の構造に非
常によく似ている D すなわち、シリンダ内のピ
ストンの往復運動をピストン棒、クロスヘ ッ ド
、
連接棒、クランクを介して回転運動に変える 点
(
a
) 発電用単式蒸気機関
は全 く同じである O ただ、デイーゼル機関では
シリンダ、内で、直接燃料を燃焼させてピストンに
作動圧力をかけるのに対し、蒸気機関では機関
とは別に設置されたボイラで蒸気を発生 させ、
それを機関の蒸気口を通してシリンダに供給し、
ピストンに作動圧力をかける点が異な っている 。
蒸気機関の構造例
)として、図 8 (
a
) は立
(3
g
形単式の発電用機関で、主要目は、蒸気圧 7k
f
/Cn1、背圧は大気圧 、 回 転 数 500rpm、 シ リ ン
ダ直径 2
3
c
m、行程 1
6
.
5c
m、出力 3
0馬 力 で 、 ピ ス
トン弁を用いた代表的な構造のものである D 強
制j
閏滑を行い、また軸調速機を設けて弁室に入
る前の蒸気を絞り弁で絞るようにしているのが
図よりわかる O
次に、同図 (
b
) は舶用 主 機 の 3段 膨 脹 機 関
で、回転数は 8
0rpm、出力は 4,
3
0
0馬 力 で あ る
D
圧力 1
4
.
1k
gf
/cn1の蒸気 が 、 高 圧 シ リ ン ダ 、 中 圧
(
b
) 舶用主機 3段膨脹蒸気機関
シリンダ、低圧 シリンダの中で順番に膨脹して、
最 後に表面式復水器(伝熱面積 6
20m) に 排 気
2
図 8 蒸気機関の構造例
される 。高圧および中圧シリンダにはピストン
弁を用い、低圧 シ リ ン ダ に は D 形 す べ り 弁 を
用いている O この機関の高圧、中圧、低圧シリ
ンダの直径はそれぞれ
c
mで、ある
O
o
7
1
c
m、 o
1
1
9
c
m、 o
2
0
0
6
. 蒸気機関の分類
主な分類法を挙げると次のようになる O
① 蒸気が作用するピストン面による分類
s
i
n
g1
ea
c
t
i
n
ge
n
g
i
n
e
)
・単動機関 (
一
7-
蒸気が常にピストンの片側の面にのみ作用
する機関で、 1回転中の速度変動が大きく、
④ 蒸気の排気条件による分類
n
o
n
c
o
n
d
e
n
s
i
n
ge
n
g
i
n
e
)
・不凝縮機関 (
大きなはずみ車を必要とする。この機関は蒸
シリンダ内で仕事を終えた蒸気を大気中に
気機関の発達の初期の段階に用いられていた 0
放出する機関で、理想的な膨脹の場合でも背
・複動機関 (
d
o
ub
1
ea
c
t
i
n
ge
n
g
i
n
e
)
圧は大気圧までである O このため熱損失が大
蒸気がピストンの両面に交互に作用する機
きく、機関車用および、小出力機関以外には用
関で、蒸気機関のほとんどがこの形式である。
いられなかった。ふつう、背圧は絶対圧力で
一方、デイーゼル機関では、かつてピストン
1
.
1
1
.2
k
gf
/c
mであり、単流機関ではこれよ
の両側で交互に燃料を燃焼させる複動機関が
りやや低い。
用いられていたが現在では姿を消し、すべて
c
o
n
d
e
n
s
i
n
ge
n
g
i
n
e
)
・復水式機関 (
単動機関である。
蒸気を大気圧以下まで膨脹させるために、
② 蒸気の膨脹段数による分類
シリンダ内で仕事を終えた蒸気を真空容器で
・単段膨脹機関(単式機関ともいう、 s
i
n
g
1
e
ある復水器に導き、冷却水によって復水させ
x
p
a
n
s
i
o
ne
n
g
i
n
e
)
る機関で、蒸気を十分に膨脹させることがで
巴
初圧から終圧までの蒸気の膨脹をただ l個
きる。また復水はすぐれたボイラ給水ともな
のシリンダ内で行わせる機関で、構造が簡単
.
1
5
0
.
2
0
k
g
る。ふつう、背圧は絶対圧力で 0
で小出力用に多く用いられた。この機関は高
f
/c
m(-650--613mmHg) で、単流機関で
圧蒸気を用いた場合、十分に蒸気を膨脹させ
はこれよりやや低くしている O
なお、現在の蒸気タービンの復水器圧力は、
ることが困難で、排気損失が大きくなる。
m
u
l
t
i
p
1
ee
x
p
a
n
s
i
o
ne
n
g
i
n
e
)
-多段膨張機関 (
蒸気が 2個以上のシリンダ内で順番に膨脹
する機関で、段数に応じて 2段膨脹機関(2
③
舶用および発電所用ともに
7
2
2
m
r
n
H
g (絶対
.
0
5
k
gf
/c
m
)で設計されている O
圧力 0
⑤
シリンダ内での蒸気の流れ方による分類
連成機関または複式機関ともいう、 com
o
u
n
t
e
r
-逆流機関(向い流れ機関ともいう、 c
pound e
x
p
a
n
s
i
o
n 巴n
g
i
n
e
)、 3段膨脹機関
(3連成機関ともいう、 t
r
i
p
1
ee
x
p
a
n
s
i
o
n
f
l
o
we
n
g
i
n
e
)
シリンダ内の蒸気の流入と流出が同ーの蒸
e
n
g
i
n
e
) そしてまれに 4段膨脹機関(4連成
気口で行われる機関で、蒸気の流れ方向がピ
機関ともいう、 q
u
a
d
r
u
p
1
ee
x
p
a
n
s
i
o
ne
n
-
ストンの給気行程と排気行程とでは反対にな
g
i
n
e
) がある。高圧蒸気を用いるときは、 1
る。それ故、蒸気口の近くは排気が通るとき
個のシリンダ内で蒸気を排気圧力まで十分に
に冷やされるので、蒸気が供給されると一部
膨脹させることができないため、必然的に多
がシリンダ壁に触れて復水する O これを初期
段となる o
復水(i
n
i
t
i
a
1c
o
n
d
e
n
s
a
t
i
o
n
) といい、これ
シリンダ位置による分類
h
o
r
i
z
o
n
t
a
1e
n
g
i
n
e
)
・横形機関 (
が起こると膨脹仕事が減る O
またこの水滴は、膨脹過程の後半で圧力の
シリンダが水平に取り付けられた機関で、
減少のために蒸気温度がシリンダ壁温度より
機関車用機関や舶用補機のような小出力機関
下がり、壁から逆に加熱されて再び蒸発し、
に採用された。
排出仕事を増大させる。これを再蒸発
・立形機関 (
v
e
r
t
i
c
a
1e
n
g
i
n
e
)
シリンダが垂直に取り付けられた機関で、
据付面積が小さくてすむのでほとんどの機関
はこの形式である。
・傾斜形機関(i
n
c
l
i
n
e
de
n
g
i
n
e
)
(
r
e
e
v
a
p
o
r
a
t
i
o
n
) といい、やはり効率の低下
を招く
O
ほとんどの蒸気機関はこの形式である
0
・単流機関 (
u
n
i
f
l
o
we
n
g
i
n
e
)
図 9に示すように
(1)
給気口と排気口を別
シリンダが傾斜して取り付けられた機関で、
にして、蒸気の流入時も流出時もシリンダ内
クランク軸がある高さを保つ必要があるとき
の蒸気の流れ方向が同ーになるようにした機
に用いられた特殊な形式である。
関で、逆流機関では避けることのできない初
-8一
1
6
5
4 (承応 3)ゲーリケ(独)によるマグデブ
ルクの半球の実験
1
6
6
2 (寛文 2)ボイル(英)の法則
1
6
8
7(貞享 4)ニュートン(英)による運動の
法則
排気
図 9 単流機関
1
6
9
0 (元禄 3)パパン(仏)の真空装置
1
6
9
8(ク 1
1
) セィヴァリ(英)による火力機
関の特許
期復水をほとんど防止することができ効率が
1
7
0
5 (宝永 2)ニューコメン(英)による大気
よい。しかし、ピストンが長大となり、トル
ク変動や振動が大きくなるという欠点がある 。
圧機関の発明
1
7
1
2 (正徳 2)ニューコメンの最初の実用大気
圧機関
7.蒸気機関の長所と短所
(
ク
)セイヴァリの最初の実用火力機
①長所
関
-構造が簡単で故障が少なく、取扱いが容易で
ある
動力史で必ず最初に顔を出すのは、反動ター
・速度範囲が広く、運転が静かである
ビンの元祖ヘロンのタービンと衝動タービンの
-起動時および低速時の回転力が大きい
元祖プランカのタービンである 。 これらの蒸気
-負荷の変動によく適応し、過負荷に耐える
タービンは共に書物に記されたアイデアに過ぎ
・慣性力が小さく逆転がきわめて迅速・容易で
ず、動力として広く実用されたのは蒸気往復機
関が先である 。
ある
・耐久性に富み、寿命が長い
1
7世紀中頃、大気圧や真空に関する実験が数
多く行われ、大気の力がいかに大きいか認識さ
②短所
・蒸気が十分低圧まで膨脹しないため熱効率が
れていた。蒸気は大気圧のもとで冷却されると
凝縮して水となり、その容積が約 1
,
6
0
0分の
低い
-機関が出力の割に大きく、単位出力当たりの
重量が大となる
-ボイラ、復水器などの付属設備が必要となり、
広い据え付け面積を要する
-蒸気発生や暖機のために機関始動に時間がか
かる
l
になるので、容器に充満させた蒸気を凝縮させ
ると真空が得られる D この原理を利用して最初
に水を汲み上げることに成功したのはセィヴア
f
i
r
ee
n
g
i
n
e、
リである O セイヴァリの火力機関 (
当時の呼称)は、卵状の容器中の蒸気を冷却し
凝縮させて真空をっくり、この真空で水を吸い
0
0
・高速回転に不適である(ふつう最高で約 7
rpm)
上げ、次に蒸気圧を加えて吸い上げた水を高所
に押し出すものである D この機関は自家用の揚
-回転力に変動があり、振動が生じる
水には実用されたが、鉱山の地下水を大量に、
高いところまで汲み上げるには役に立たなかっ
8
. 蒸気機関の発達史
(
1) ニューコメンの大気圧機関の出現まで
紀元前 1
2
0 ヘロン(エジプト)のタービン
1
6
0
0(慶長 5)関ケ原の戦い
1
6
2
9(寛永 6)プランカ(伊)のタービン
1
6
3
2(/ 9
) ガリレオの宗教裁判
1
6
4
3(ク 2
0
) トリチェリ(伊)の真空
1
6
4
8(慶安元)パスカル(仏)による大気圧の
証明
たD
シリンダとピストンを用いる試みはパパンに
よって初めてなされた 口 これは、直立のシリン
ダの中の水を外部から加熱させて蒸気の力でピ
ストンを押し上げ、次に冷却させてピストンを
引き下げるものである O このパパンの真空装置
は車上の実験装置の域を出なかったが、のちの
蒸気機関の原形である D
実際に鉱山の揚水用として最初に実用された
-9
1
7
1
4 (正徳 4)ファーレンハイト(独)による
華氏温度目盛
1
7
3
6 (元文元)ハルス(英)による大気圧機関
を備えた船尾外車船
1
7
4
2 (寛保 4)セルシウス(スウェーデン)に
よる摂氏温度目盛
1
7
6
1 (宝暦 1
1
) ブラック(英)による潜熱と熱
容量の発見
1
7
6
5 (明和 2)ワット(英)の分離復水器
1
7
6
9 ( / 6) ワットによる「火力機関の蒸気
と燃料の消費を少なくする新し
い手段」の特許
1
7
7
1 ( //8) キュニョー(仏)の最初の蒸気
自動車
1
7
7
6 (安永 5)ワットの最初の実用単動式往復
機関
図1
0 ニューコメンの大気圧機関
1
7
8
1 (天明元)ワットによる「遊星歯車装置J
の特許
。
ク )ホーンプロワ(英)による 2段
のは、ニューコメンの大気圧機関である O この
膨脹機関の特許
機関が 1
7
1
2年にイギリスのスタッフォードシア
1
7
8
2 (ク 2)ワットによる 「蒸気の膨脹を利
のダッドリ一城の近くに据え付けられたことは、
用して蒸気消費量を低下させる
1
7
1
9年にパーニによって製作された版画から明
らかである 。その版画の説明文に初めて ITHE
STEAM ENGINEJ と記されており、これが
1
7
8
3 ( / 3) ワットの最初の実用複動式回転
蒸気機関についての現存している最初の記述と
1
7
8
4 (ク 4)ワットによる「平行四辺形運動
方法」の特許
機関
の機構」の特許
いわれている O その主要日は、真鋳製シリンダ
の高さ 2
3
9
c
m、直径併 5
3
c
m、茶釜形ボイラの直
3
で、版画の
径併 1
6
8
c
m、高さ 1
8
5
c
m、容量 39m
記載内容から計算すると出力は 5
.
5馬力となる O
また、初期のニューコメン機関の効率は 0
.5%
程度であった 口
0に
ニューコメンの大気圧機関の模式図を図 1
示す
。作動原理は簡単で、上死点にあるピ
(4)
1
7
8
5 ( / 5) マード ック(英)の揺動機関
(
ク
)フイツチ(米)の蒸気船
1
7
8
7 (ク 7)ワットの円錐振子式遠心調速器
1
7
9
8 (寛政 1
0
) ランフォード(英)の摩擦によ
る熱の発生
1
7
9
9 (ク 1
1
) ヴォルタの電池
1
8
0
0 (ク 1
2
) ワットの 3
1年間の特許切れる
ストンの下部のシリンダ内に蒸気を導き冷却水
を噴射して真空にし、大気圧によってピストン
大気圧機関は、 1
7
1
2年以降の約 7
0年間、鉱山
を押し下げ、ビームを介してポンプロッドを引
の排水などに広く用いられイギリスの産業が必
き上げる O 次に、ポンプロッドの重さでピスト
要としていた石炭を安価に供給するという重要
ンが元の上死点の位置に戻り再び同じ操作を繰
7
7
0年代にはシリンダ
な役割を果たしてきた 。 1
り返す 。 ピストン上部へ水を供給するのは、往
直径が 1
9
0
c
m、長さ 3
2
0
c
m、重さ 6
.
5
t
o
nという
復運動をするピストンと固定したシリンダとの
巨大なものがつくられた。もしシリンダ内が完
聞の気密を保たせるためである O
全真空と仮定すれば、大気圧によってこのピス
(
2
) 大気圧機関の発達とワットの蒸気機関
出力は 1
0
0馬力近くに達するものもあり、効率
トンにかかる力は 2
8
t
o
nにもなる O また当時、
-10-
は1.2%に増加していた。
この機関は大量に蒸気を消費するために、ニュー
コメンのようなボイラ 1基では容量不足で、 2
基以上をシリンダに対して対称に置くようになっ
た。また、大気圧機関で回転運動を得るために
ラチェット機構を応用した装置が考えられたり、
汲み上げた水を貯水槽から水車に導いて間接的
に回転運動を得たりした。しかし、大気圧機関
はワットの機関の出現によって徐々にその姿を
消していった。
7歳のとき、グラスゴ一大学所有の
ワットは 2
大気圧機関の模型を修理中に、シリンダから復
図1
2 ワットの複動式回転機関
水器を分離させれば蒸気が大いに節約できるこ
とに気がついた。この逸話は有名であるが、そ
のアイデアの背景には 4年前のブラックによる
2のような機関がワッ
式機関は標準化されて、図 1
潜熱の発見がある。
8
0
0年までつくられた。ワッ
トの特許の切れる 1
ワットの単動機関は、分離復水器のほかに、
トの蒸気機関は、 1
7
7
6年からの 2
5年間イギリス
抽気ポンプ、シリンダの断熱、大気圧の代りに
0
0基つくられたが、そのうち 37%が往復
で約 5
蒸気圧力の使用、それに伴うピストンやシリン
動のポンプ用で、 62%が回転式であった D 回転
4
式機関の大半は繊維産業用である o 1基当たり
4
6
c
m、行程 1
5
2
c
mの小さな機関をつくって実験
7
7
6年に初めてシリンダ径 4
を進めた。そして 1
1
2
7
c
mの炭鉱用の蒸気機関を完成させたが、当
時の大気圧機関と比べて燃料消費量が約 4分の
5馬力と考
の平均出力を当時の妥当な値として 1
ダの改良を特徴とし、ワットはシリンダ径
5年間に総計で 7,
5
0
0馬力の機関がつ
えると、 2
くられたことになるは)。
この時代、ホーンブロワが 2段膨脹機関をっ
くり、ワットがピストン行程の一部を蒸気の膨
lと大幅に減少させることができた。
1に、パパン、ニューコメン、ワットの各
凶1
脹によって行わせようとしたが、いずれも当時
。その
は大気圧よりわずかに高い程度の圧力であった
後、ワットは遊星歯車装置によって往復運動を
ので、これらのすぐれたアイデアを生かすこと
機関の作動部分の機能の違いを示す
(4)
回転運動に変えて機関の利用範囲を著しく広め、
ができなかった。これらが効果を発揮するには、
さらにピストンの両側に蒸気を交互に作用させ
次の高圧機関の時代を待たねばならなかった。
7
8
7年頃までには回転
る複動機関を開発した o 1
(
3
) 高圧機関の発達と交通用機関への適用
1
8
0
1 (享和元)トレヴイシック(英)の最初の
ク
&F
スリ
ンダ
ピシ水
)シーミントン(英)の蒸汽船
「シャーロット・ダンダス号」
‘,,
vJ担r
rヘU1
門
1l
11
il
圃
﹂一広 'J〆
蒸気自動車
(
1
8
0
2 (ク 2)トレヴイシックによる高圧機関
の特許
1
8
0
3 (ク 3) ドルトン(英)の法則
J
'
¥パン
(
ク
)トレヴィシックの蒸気機関車
1
8
0
7 (文化 4)フルトン(米)の初の河川商船
「クラーモント号」
ニューコメン
ワット
図1
1 蒸気機関における機能分化の進展
1
8
1
2 (ク 9) ベ ル ( 英 ) の 初 の 欧 州 旅 客 船
「コメット号」
-11-
1
8
1
4 (ク 1
1
) スチブンソン(英)の蒸気機関
車
1
8
1
7(ク 1
4)炉筒ボイラの発明
1
8
1
9 (文政 2
)I
サバンナ号」の汽力帆力併用
による大西洋横断
1
8
2
0(ク 3)英国海軍初の蒸気船「マンキー号」
1
8
2
4 (ク 7)カルノー(仏)の「火の動力に
ついての考察」でカルノーサイ
図1
3 トレヴィシックの高圧機関
クルを発表
1
8
2
5(タ 8)エベの初の水管ボイラ
(
ク
)スチブンソン(英)の蒸気機関
車「ロコモーション号」による
世界最初の鉄道開始
1
8
2
8(ク 1
1)工業用で初めての過熱蒸気の使
ク
1
8
2
4年のカルノーの研究により、ょうやく蒸
気機関の理論的裏付けができ、ボイラも発達し
てきて、次第に高圧高温の蒸気が用いられるよ
うになった。
用
(
の一部がボイラの蒸気部に入り込んでいる 。
)煙管ボイラの発明
1
8
3
0(天保元)スチブンソン、リパプール・
マンチェスター聞に鉄道敷設
1
8
3
4 (ク 5)ホールによる表面式復水器の特
高圧機関は小形にでき、大気放出が可能であ
るので、蒸気自動車、蒸気機関車、小形舟艇の
動力として急速に発達してきた 。 また、ホール
によって噴射式ではなく蒸気を間接的に冷却で
きる表面式復水器が発明された。これによって、
許
1
8
3
5(ク 6) ドイツ最初の鉄道、ニュールン
ベルヒ・フアース聞に開通
1
8
3
6(ク 7)スミス(英)とエリクソン(ス
ウェーデン)のスクリュープロ
大形船舶においてボイラ水として海水でなく清
水を用いることができ、ときどき機関を停止し
てボイラから塩の塊を除去する作業から解放さ
れた o
また、舶用の推進器として、スクリュープロ
ペラ
1
8
3
8(ク 9)英国蒸気船「シリウス号」の蒸
ペラが発明されたが、英海軍は従来の外車(パ
気力のみによる初の大西洋横断
ドルホイールという)との優劣を調べるために、
1
8
3
9(ク 1
0
) スミスの最初のスクリュープロ
1
8
4
0年から 1
8
4
9年頃まで実験を続けた 。 1
8
4
5年
ベラ船「アルキメデス号」
1
8
4
3 (ク 1
4
) ジ、ユール(英)の熱の仕事当量
1
8
4
8(嘉永元)ケルビン(英)による熱力学的
温度目盛
ここでいう「高圧」とは、ワット機関の大気
に行われた「ラトラー」と「アレクト」の綱引
きが有名である D
(
4
) 幕末の日本に押し寄せる蒸気のうねり
1
8
4
8(嘉永元)島津斉彬、 1
8
3
7年編纂のオラン
ダの蒸汽機関書「水蒸機盤精説J
.
1
~0.5kg f/ CnTの圧力と比較した
圧以上わず、か0
6巻、付図 2巻の翻訳を蘭学者
3~ 1
0
k
gf
/CnT程度を考えればよい。ま
箕作院甫に依嘱し、翌年「水蒸
もので、
船説略J6巻、図 1巻完成
た、場合によっては真空を利用せず、排気を大
気に放出する不凝縮機関の意味ももっている D
1
8
0
0年のワ ッ トの特許が切れると、トレヴイ
.
5k
gf
/CnTにして排気を大気
シックは蒸気圧を 3
放出する高圧機関を発明し、 1
8
0
2年に特許をとっ
3
た。 トレヴイシックの高圧機関とボイラを図 1
に示すが、従来のワット機関とはかなり異なっ
た背列犬になっている
-12-
(7)
。 たとえ l
まシリンダー
1
8
5
0 (ク 3)佐賀藩にわが国最初の反射炉
1
8
5
1 (ク 4)ケルビン(英)による熱力学の
第二法則
(
ク
)ランキン(英)によるランキン
(
ク
)島津斉彬、翻訳書「水蒸船説略J
サイクルの発表
により蒸気機関の製作に着手
1
8
5
3 (ク 6)ペルリ(米)浦賀に来航、蒸気
1
8
6
7(ク 3)ツォイナ(独)による初めての
蒸気の状態式
機関車等の模型を幕府に献上
(
ク
)幕府、大船建造の禁を解き水戸
(
ク
)バブコック・ウイルコック式ボ
イラの特許
藩に洋式軍艦の建造を命ず
(
ク
)幕府、石川島と浦賀に造船所設
(
ク
)オランダに注文の幕府艦船「開
陽」にてオランダ留学生帰朝
JL
1
8
5
4 (安政元)日章旗、わが国の船舶信号と定
(
ク
)兵庫開港
む
わが国で初めて蒸気機関に関心を持ったのは
(
ク
)ケルヴインの絶対温度目盛
(
ク
)ジョンエルダーによる「プラン
薩摩藩島津斉彬で、次いで佐賀藩の鍋島直正で
ドン号」に最初の 2段膨脹機関
あった。ベルリ来航で鎖国の眠りから覚めてか
1
8
5
5 (ク 2)オランダ艦「スンピングJ幕府
に献上、「観光丸 J と命名され
気工業の発達に力を注いだことがこの年表から
わが国最初の蒸気軍艦
(
ク
)島津膏彬による「運行丸」の機
関完成、最初の国産舶用機関
1
8
5
6(ク 3)わが国最初のスクリュープロペ
らは、幕府も先進諸国の知識を吸収し日本の蒸
よく分かる O
日本初期の蒸汽船の要目を分かる範囲で示す
と、次のようになる
(5) (6)
I
雲行丸」外車、
サイドレバー機関(黄銅製 2シリンダ)、復水
ラ船「成臨丸Jと「朝陽」オラ
器銅板約 9m
m、ボイラ銅板約 6m
町
町
l
π
r
恥
TI
ンダにて竣工、英国海軍のスク
外車、軽圧揺動機関(15
0馬力)、復水器噴射式、
リュープロペラ採用より遅れる
角缶 2個缶管銅製 0
.
3
5
k
gf
/Cr
Io I
成臨丸J
2
5
0
t
o
n、
こと 1
5年
1
8
5
8(ク 5)英国女王の御召艦「エンピロル」
幕府に献上、のちに「幡龍丸」
と命名
1
8
5
9 (ク 6)横浜開港
1
8
6
0 (万延元)この頃より欧米において表面式
復水器採用
(
ク
)遣米使新見豊前守、軍艦奉行木
村摂津守一行、軍艦「成臨丸」
にて渡米
1
8
6
1 (丈久元)幕府、鎖国令の一部を撤廃、民
間人にも大船製造・輸入を許可
(
ク
)サイドレバー機関装備の最後の
函1
4
r
観光丸 Jの主機関全体図
航洋外車船「スコシア号」進水
1
8
6
2 (ク 2)長崎の商人入来屋重平、米国船
「コロンピア号」購入、後に
「大鵬丸」と命名、初の民間所
有の蒸気船
1
8
6
5 (慶応元)幕府、横浜に製鉄所、横須賀に
造船所設立
1
8
6
6 (ク 2)わが国最初の国産蒸気軍艦「千
代田形」竣工
(
ク
)島津藩、わが国初の洋式蒸気紡
績工場建設
図1
5
r
千代田形 j機関配置図
-13-
6
.
0
k
n
o
t、 1
0
0馬力、スクリュー 1個。「朝陽」
1
0
0馬力、スクリュー 1個。「幡龍丸 J7
.
5
k
n
o
t、
2 シリンダ(径~ 9
6
.
5
c
m、千
子
手
皇3
8.
1c
m
)、1
2
8馬
力
、 8
2rpm、復水器噴射式、スクリュー 1個 2
翼、円缶 l個缶管鉄炉筒 2個 9
8本1.0
5k
gf
/Cn
I
。
「千代田形J
1
5
8
t
o
n、横置歯車増速式 2シリンダ
(径~ 4
0
.
0
c
m、行程4
0
.
0
c
m
)、推定6
0
馬力、 67rpm
、
復水器なし、スクリュー 1個 2翼 、 低 円 缶
r
(鉄製) 3個 炉 筒 1個
、 2
.
6
6
k
gf
/c
n
Io 開陽 J
2
.
8
17
to
n、4
0
0馬力、スクリュー。
図1
4に「観光丸」主機関全体図を、図 1
5に
「千代田形j機関配置図をそれぞれ示す
(6)
ピンの特許
。
シ
イ
「カウンテイ・オブ・ヨーク号J
に 4段膨脹機関採用
1
8
8
5 ("
'1
8
) トッド(英)の単流機関
シ
イ
)英国海軍 3段膨脹機関採用
1
8
8
6 (ク 1
9
) わが国初の電灯用火力発電所大
。
阪紡績三軒家工場送電開始
1
8
8
7 (ク 2
0
) ドラバル(スウェーデン)の衝
動タービン
。
シ
イ
)軍艦「八重山 Jにわが国初めて
3段膨脹機関採用
1
8
8
9 (ク 2
2
) わが国初の 3段膨脹機関搭載商
船相次いで起工
(
5
) 蒸気機関の全盛
1
8
9
1 ("
'2
4
) 英国海軍「スピィーデイ号」に
1
8
6
8 (明治元)明治維新
(
ク
)清国初の蒸気船建造
初の水管ボイラ採用
1
8
9
2 (ク 2
5
) 九州鉄道会社にてわが国最初の
1
8
6
9 ("
' 2) わが国初の舶用機関教科書「蒸
気器械書・海軍蒸気器械図」海
複式蒸気機関車採用
1
8
9
3 ("
'2
6
) ディーゼル(独)によるディー
ゼル機関
軍学校より刊行
1
8
7
2 (ク 5)新橋横浜聞に官設鉄道開設
( "
' )英国海軍にてこの年以降 2段膨
脹機関採用
シ
イ
少
イ
〉
イ
〉
イ
)世界船舶統計にて初めて汽船数
が帆船数を上回る
1
8
7
3 (ク 6)ファン・デル・ワールス(オラ
)わが国初の複式 2気筒タンク蒸
気機関車製作
ンダ)の状態方程式
( "
' )わが国最後の外車式軍艦「迅鯨」
起工
(
ク
日本では明治に入っているこの頃、蒸気機関
は熟成期を迎えようとしている。すでに明治維
)わが国最初の表面式復水器付複
新1
0年前の 1
8
5
9年には、巨船「グレートイース
式 3筒機関装備の軍艦「清輝」
4,
0
0
0
t
o
nには 1
0,
0
0
0馬力の機関が搭
タン号J2
起工
載されていた。蒸気圧力も高くなっていき、 2
1
8
7
4 (ク 7)英国「プロポンチス号」初の 3
段膨脹機関から、 3段膨脹機関へと進み、 4段
段膨脹機関装備
膨脹機関の採用まで見られるようになってきた。
(
ク
)神戸大阪間の官設鉄道開業
1
8
7
6 (ク 9)オットーのガス機関
(
ク
)明治維新後最初の軍艦「清輝」
竣工
1
8
8
1 (ク 1
4
)最初の 4段膨脹機関船「ツアー・
ニコライ H世号」試運転
1
8
8
2 ("
'1
5
) エジソンによる世界初の電灯用
発電所、運転開始
(
ク
パーソンスが蒸気タービンの特許をとり、
1
8
8
5年の博覧会に 7.5kWのパーソンスタービ
ンを展示しでも誰も注意を払わなかった。全盛
のこの頃、これが蒸気往復機関の強烈な競争相
手になるとは誰も気がつかなかった。
(
6
) 蒸気タービン時代に向かう
1
8
9
4 (ク 2
7
) パーソンスによる初の蒸気ター
)ドイツ最初の動力および発電用
3段膨脹機関完成
ピン船「ターピニア号j航走
1
8
9
6 (ク 2
9
) カーチス(米)によるカーチス
1
8
8
3 ( 11 1
6
) 汽走専用の最初の軍艦「筑紫」
英国より購入
1
8
8
4 (ク 1
7
) パーソンス(英)による反動ター
1
4
式衝動ターピンの特許
(
ク
)ラトー(仏)によるラト一式多
段衝動タービンの特許
。
。 )新橋一神戸聞に初の蒸気機関車
けん引の急行列車
1
8
9
7 (" 3
0
) 宮原式水管ボイラの特許
ク
ク
)マルコーニ(イタリア)の無線
電信
1
8
9
9( ク 3
2
) ツエリー(スイス)によるツェ
リ一式衝動タービンの特許
1
9
0
1(" 3
4
) カレンダ(英)による蒸気の状
態式
1
9
0
3( ク 3
6
) ライト兄弟の初飛行
1
9
0
4(" 3
7
) 深川発電所に初の 500kW立形
カーチスターピン採用
1
9
0
5( ク 3
8
) 「鹿島」と「香取」、旧海軍最
後の立形 3段膨脹機関
1
9
0
6 ("
'3
9
) ネルンスト(独)による熱力学
第三法則
ク
シ
イ
)米海軍、蒸気機関とパーソンス
その後、蒸気の低圧のエネルギーを有効に利
用できないという蒸気機関の基本的な欠点を補
うために、低圧シリンダからの排気を蒸気ター
ビンに導き、復水器真空まで完全膨脹させると
いう、蒸気機関と蒸気タービンを組み合わせる
方式が採用されてきた。有名な「タイタニツク
号」の主機関もそうであった。のちの「パウエ
ルワッハ式排気タービン付蒸気機関 Jもこのよ
うな考えのもとで生まれた機関である。
9
. あとがき
「進徳丸」解体を機会に蒸気機関を振り返っ
てみると、多くの人の英和と努力がその影に見
7
1
2年のニューコメンの大気圧機関
えてくる。 1
0年
から、旧国鉄が蒸気機関車を廃止した昭和 5
(
19
7
5年)までの 2
6
3年聞は、果たして長かった
のか短かったのかはよく分からない。蒸気機関
式およびカーチス式ターピンの
に取って代わった蒸気タービンは、現在発電所
3種を比較試験(カーチス式が
3
0万キロ
用原動機として 1基当たりの出力が 1
最良の実績を発揮)
ワットにもなって他の追随を許していない。し
1
9
0
7 (" 4
0
) わが国最初のカーチスタービン
かし舶用の分野では、蒸気タービンはパーソン
艦「安芸」進水
9
7
3年のオイルショックまでの約 8
0年の
スから 1
ク
シ
イ
)ユングストローム兄弟(スウェー
寿命であったと云えないでもない。しかしまだ、
デン)による半径流反動ターピ
LNG船、原子力船、石炭だき船等の主機とし
ンの特許
て頑張っており、エネルギー事情の変化によっ
1
9
0
8 (ク 41)わが国最初のパーソンスターピ
ン艦「最上」進水
1
9
1
4 (大正 3)第一次世界大戦勃発
1
9
1
5 (ク 4)アインシュタイン(独)による
一般相対性理論
1
9
2
3 (ク 1
2
) 関東大震災
1
9
2
5 (ク 1
4
) モリエル(独)による蒸気の状
(
1
1
)
ては起死回生のチャンスは残されている O
しかし、蒸気機関に対して起死回生はないで
あろう。ただ、この機関には本文にも記載した
ように蒸気タービンや内燃機関にないすぐれた
特性がある。その魅力に期待したい。
近年、人間世界では効率重視が見直され、無
駄の必要性が叫ばれている。機械の世界でも効
態式
率以外のすぐれた特徴が重視されるようになる
ラモント(米)強制循環ボイラ
だろう。
1
9
2
7 (昭和 2)リンドパーグの大西洋横断飛行
いま手元にある、明治2
0
年発行の「尋常小撃
譲 本 巻 五j の一文を紹介する。
パーソンスに続いて、ドラパル、カーチス、
此の園は、松の航海するところなり、帆舞般
ラトー、ツエリーそしてユングストローム兄弟
は、帆を揚げて走り、蒸気松は、姻を噴きて
と次々にタービンの開発者が出てきて、蒸気ター
走る O
ビンは急速に発達してきた。特に舶用において、
蒸気松は、何故に能く走るや。
パーソンスの「ターピニア号」が1
8
9
6年にピク
0年祝典観艦式で、 2,
0
0
0馬力
トリア女王即位6
これは湯を沸し、蒸気の力にて、機関を動し、
車輪にて波をかきて進むなり
O
のタービンにものをいわせて 3
4
.
5
k
n
o
tの猛ス
蒸気の力にて、車輸を動すことを費明せしは、
ピードでデビューしたのは強烈であった。
英圃のワットといふ人なり
O
-15-
蒸気配にて、焚く所の石炭は、上古の世に茂
りたる、大木の化したるものにて、山を穿ち
関史(上巻、下巻、別冊)、原書房、昭5
6
.
(6) ワット誕生二百年記念会編:図説日本蒸
て掘り出すなり。
汽工業発達史、日本動力協会内ワット誕
なお、本文を記すに当たり多くの文献を参考
生二百年記念会、昭 1
3
にさせていただいた。最後に、著者の方々に深
く謝意を表する O
(7) J
.T
. van R
i
e
m
s
d
i
j
k and K
. Brown:
The P
i
c
t
o
r
i
a
l H
i
s
t
o
r
y o
f Steam
Power,G
a
l
l
e
yP
r
e
s
s,1
9
8
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山川敏夫訳:蒸気機関発達史、伊藤書宿、
昭1
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.(ともに原書は、 H.W.Dickinson
著
、 A S
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o
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海事資料館年報
N
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1
5、昭 6
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