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海外インターンシップ体験報告記 07
平成 24 年 11 月 1 日 (Year/Month/Day) 工学系教育研究センター長 (To: Director of CEED) 専攻・学年:北方圏環境政策工学・修士1年 (Division/Year) 氏 名 : 北見篤史 (Name: Atsushi Kitami) インターンシップ体験報告書(Internship Report) (1) インターンシップの概要(派遣先・派遣期間・指導員など) 今回,イギリスの Wokingham にある TRL Limited 社(以下 TRL)での研修 を行った.TRL は“Transport Research Laboratory”の略で主にイギリス全土の 主要道路を管理しそれと同時に広大な研究施設を備えていることから構造物や 材料実験なども行っている.私の配属された Infrastructure division では Senior Engineer の Mike Hill さんにスーパーバイザーとして指導して頂いた.期間は 約1ヶ月(5週間)であった. (2) 研修内容(テーマ・成果概要など) i. Theme 私のプロジェクトは,主に日本と英国と の橋梁設計や交通環境を調査し比較する ことであった.日本の橋梁床版で発生して いる「押し抜き剪断破壊」が諸外国では全 く観察されておらず,その原因を突き止め るためでもある.そのため,TRL での橋梁 設計関係者や,他社の橋梁設計者とのミー ティングを通して情報収集を行った. ii. Contents 日本での押し抜き剪断破壊 まず行ったことは,英国での橋梁床版の典型的な劣化事例についての情報収 集である.そこで,TRL 内での橋梁関係者,他社の技術者そして他大学の教授 を実際に訪問し日本での橋梁床版劣化事例 を報告.その後,英国との違いや考えられる 要因そして英国の典型的な劣化事例などの 情報を集めた.事前情報と同じように英国の 橋梁床版での押し抜き剪断破壊という事例 は見られなかった.日本と似たような劣化事 例としては床版の上面でのコンクリート剥 離からの鉄筋露出が見られた西部 Gloucestershire にある Gloucester Bridge のみで あった. 英国での橋梁床版劣化事例 この Gloucester Bridge での劣化要因として,防水層の損傷と排水溝の機能低 下による床版上部の滞水,その後の水分浸透による影響が挙げられた.また複 合要因としてアルカリ骨材反応や冬期の凍結融解作用も考えられる.そこで, 床版上部からの影響と下部からのものそれぞれに着目し,設計基準の比較のみ でなく防水層や環境作用への対策などの違いも比較することにした. 設計基準は British Standard の BS 5400,材料基準の BS 8500 に加えて協力 して頂いた Highway Agency 社(以下 HA)の基準も参考にした.防水工,メ ンテナンス頻度,交通量の情報等も TRL のレポートに加えて HA に何度か伺い 情報を集めた. iii. Results 日本と英国の大きな違いとして簡単に以下の点が挙げられる. 1. 床版防水基準化の20年程度の遅れとそれに伴う防水層の低性能さ 2. 細かな環境露出基準の欠如(材料強度,床版最小厚さなど) 3. 維持管理の徹底性欠如 4. 交通量,貨物車の増加 5. 気温変化や地震などの環境作用 (3) (2)項以外で学んだこと・後輩等に伝えたいこと i. 海外でのワーキングスタイル TRL ではフレックスタイム性が取り入れられており,社員はその日によって出 勤時間や退勤時間は異なっていた.しかしその中でもコアタイムがあり,10− 12時,12−14時,14−16時の3つの時間帯の中で2つの時間帯は社内 にいなければならない.しかし,部署によっては研究施設に行っていたり,他 社を訪問していたりと社員の姿を見ないことも多かった. “Annual leave”として日本で言う有給休暇もとても簡単に申請でき,ほとん どの社員が毎年長期休暇(1週間〜1ヶ月)を取っているようだった. また,社員全員のデスクに配置される PC からは社内専用 web にアクセスで き,毎日の連絡事項や各部署のプロジェクト進行具合を確認できるだけでなく, 以前からの TRL 社内の研究報告や社員の Annual leave の日程も閲覧できる. また Annual leave の申請もこの web 上で行い, 人事担当者に確認し申請完了となる. 社員の普段の服装であるが,スーツが義務で はなかった.若い社員の多くは T シャツ,パー カーにデニム姿というのも珍しくなく,年配の 社員は皆スーツ姿というのが目立った.私はイ ンターンシップ生であり,他社を訪問すること も多かったため,常にスーツを着用していた. 社内には社員食堂とコーヒーやサンドイッ チなどを販売しているカフェ,その間には広場 があり昼時には多くの社員が情報交換を行っ ていた.会社はイギリスということもあり週に 1回は部署ごとにティータイムというものも あった.仲良くなった社員とは,ランチタイムに卓球をしたりと,社内にはリ ラックスする場所などが多くありとても魅力的に感じた一面であった. ii. 苦労した点・感じた点 英語:正直なところ,英語でのコミュニケーションが極端にできなかったと いう印象はない.ただしやはりネイティブの国であり社内には日本人が一人も いない状況で理解が出来ないことも中には沢山あった.特に会議中など社員同 士が速いスピードで話された時には理解するのが難しい.イギリス英語で単語 自体知らないということもある.ただそこで黙るのではなく,分からないとこ ろはすぐに「What is ○○?」「Do you mean ○○?」と聞き返すことがコミ ュニケーションで特に重要だと感じた.当たり前のことだが海外にでると萎縮 してしまうかもしれない.最初は私も不安で心配であった.しかしそうやって コミュニケーションを取るうちに相手も自分のことを徐々に理解してくれ,難 しい説明などは「Did that make sense?」と確認してくれたりや簡単に言い直 してくれたりする.失敗を恐れずまずは言葉に出して自分の考えていることを 伝えることが非常に大事だと感じ,苦労した点でもある. 環境:派遣先がイギリスということもあり,天候がとても不安定であった. 天気予報は基本的に確認する必要がないと感じた.というのも一日のうちに快 晴・曇り・雨が短時間で変化するからだ.私は常に防水のジャケットと折りた たみの傘を持ち運んでいた.ただ最初はこの天候が好きではなかったが,次第 に「これがイギリスらしさ」と受け入れ天候を楽しむこともできた. 友人:今回は派遣先が会社とい うこともあり,同年代の友人を作 ることが出来るか非常に不安であ った.しかし,この1ヶ月という 貴重な機会を絶対に無駄にはした くないと最初に決めていたのでと にかく積極的に動くことにしてい た.初めの週は退社後社員の集ま るパブに行き,日本からのインタ ーンシップ生だと自己紹介してま わった.週末には,有名な都市へ 観光に行き,そこでロンドンの学生の旅行者と仲良くなり,そこから知り合い を増やしていった.インターンシップ最終日には,仲良くなった社員の家に呼 ばれパーティーを開いてくれ,沢山の珍しいビールやビリヤード台もあり夜遅 くまで楽しく過ごすことが出来た.帰国 のフライト前日は,観光で知り合った繋 がりでロンドン大学の学生シェアハウ スに泊めてもらうこともできた.これは ロンドンの生の学生生活を見ることが でき本当に貴重な体験だったと思う. 様々な国籍,バックグラウンドを持つ学 生達に混ざり刺激的な夜であった. iii. 普段の生活 普段はロンドンから電車で1時間のブラックネルという町でシェアハウスを していた.結構大きなシェアハウスで一ヶ月のうちに様々な分野の社会人そし て同じようにインターンシップで UK に来たヨーロッパの大学生など,沢山の 人と出会うことができた.赤ちゃんのいる家族が来た時もありその時はその赤 ちゃんをハウスメイト全員で可愛がっていて皆が常に笑顔で過ごしていた.ま たキッチンやバスルームを共有して生活していたので各国の料理方法を見てい るだけで楽しむことができ勉強にもなった. 週末には,イギリスを旅行してとても楽しむことができた. London ( 左 上 ) , Dublin ( 右 上 ) , Oxford Beer Festival ( 左 中 ) , Oxford university matriculation ceremony(右中),Edinburgh(左下),Edinburgh bag pipe(右下). (4) 最後に 今回のインターンシップを通じて,就業体験を積めただけでなく外国での生 活から多くの文化や価値観に触れとても貴重な経験をすることが出来ました. 自分としては積極性がとにかく養われたと感じています.以前までは英語での 会話だとつい黙りがちになり自分の意見を言えずじまいなことも多くありまし たが会社での生活は常に自分の仕事に対して考え意見を発しないと仕事になり ません.わからないことももちろんそのままにはできないので常に調べるか質 問に行かなければなりません.英語を読むか英語を話すか,そんな環境に自分 を置けたことでたった4週間という短期間でも成長できた要因だと思います. 日本企業でのインターンシップや語学学校との大きな違いは他の日本人に甘え ることができず,自分でなんとかしなければ行けないという点だと思います. 仕事にも慣れ,楽しくなってきた頃に帰国というのは本当に寂しいと感じまし たが,日本に帰国してからもこの気持ちを忘れず勉学に励んで行きたいです. また現地で知り合った友人達とはこの繋がりを大切にし,連絡を取り合うこと でモチベーションを保って行きたいと思います. 最後に派遣の実現に尽力して下さった山下先生をはじめとする CEED の先生 方,このインターンシップ中に支えて下さったすべての人に感謝します.僕の 人生で一生忘れられないすばらしい体験でした.本当にありがとうございまし た. 以上