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ロシア極東地域の戸建て住宅建設に関わる 北海道の
ロシア 極 東 地 域 の戸 建 て住 宅 建 設 に関 わる 北 海 道 の 寒 冷 地 技 術 適 用 の可 能 性 北海道支部 1.はじめに ロ シ ア で は 市 場 経 済 化 と と も に 、住 戸 面 積 の 狭 い 公 営 の 集 合 住 宅 よ り も 良 好な住環境を求めて、個人による戸建て住宅の建設が始まっている。しか し現在では、戸建て住宅の建設は一部の高所得世帯に限られている。 一 方 、北 海 道 に は 積 雪 寒 冷 地 に 適 し た 木 造 戸 建 て 住 宅 の 建 設 技 術 が 開 発 さ れ、北方型住宅として普及している。 本 調 査 研 究 は 、ロ シ ア 極 東 ハ バ ロ フ ス ク 市 に お け る 戸 建 て 住 宅 の 建 設 実 態 を明らかにし、北海道で独自に開発された北方型住宅の、同じ寒冷地であ るロシア極東地域における適用の可能性を検討する基礎調査である。ロシ アは森林大国で木材資源が豊富なことから、北海道の北方型住宅の技術は ロシア極東において有用と考えられる。 調 査 は 2001年 8 月 に 、 ロ シ ア 極 東 の 拠 点 都 市 ハ バ ロ フ ス ク 市 を 対 象 に 、 行政組織や設計事務所、建設会社、個々の戸建て住宅の居住者にヒアリン グを行った。また、各種の戸建て住宅の建設現場を実際に視察した。 2.ハバロフスク市内の戸建て住宅の建設プロセス ハ バ ロ フ ス ク 市 内 で 建 設 さ れ て い る 戸 建 て 住 宅 の 建 設 は 、お も に 以 下 の 5 つの方法で行われている。 ①個人が専門の施工者に依頼して戸建て住宅を建設する 建て主が戸建て住宅の建設を請け負う施工者(日本の工務店のようなも の)に依頼して建設する。建て主が設計事務所や施工業者と個々に直接対 応し、また自分で建設資材を調達することもある。建物の施工を部分的に 依頼する場合もある。施工者は法人格を持っていないものが多く、戸建て 住宅の建設ごとに職人を集めて、建設が終わると組織を解散する。建設の 仕事は建て主の評判から口コミで入る場合が多い。このような建設組織は ハバロフスク市内に100程度あると言われている。 ②個人がセルフビルドで戸建て住宅を建設する 建 て 主 が 建 築 材 料 の 調 達 か ら 施 工 ま で 、す べ て を 自 分 で 行 う 。躯 体 の 施 工 など人手を必要とする作業は友人などの協力を得て行う。ただし、市への 確認申請は個人ではできないため、設計事務所などに依頼する。 ③ディベロッパーの建て売り住宅を購入する デ ィ ベ ロ ッ パ ー が 戸 建 て 住 宅 地 を 開 発 し 、個 人 が 建 て 売 り の 戸 建 て 住 宅 を 購入する。購入者は大企業の幹部職員やビジネスで成功した人など、所得 の高い世帯に限られる。購入者は設計段階から、標準プランをもとに、住 宅の間取りやファサードなどに注文を付ける。わが国の建て売り住宅のよ う に 、完 成 住 宅 を 購 入 す る の と は 違 い 、設 計 は 購 入 者 の 意 向 を 反 映 さ せ る 。 そのため、住宅地内の戸建て住宅のファサードはすべて異なる。 ④企業が幹部職員のために戸建て住宅を建設する 土 地 や 建 設 部 門 を 独 自 に 所 有 す る 企 業 な ど が 、幹 部 職 員 を 対 象 に 戸 建 て 住 宅を建設し販売する。わが国の社宅とは異なり、戸建て住宅の権利は入居 した職員が有する。販売価格は一般の戸建て住宅よりは安く、企業での勤 続年数によって異なるのが一般的である。水道やガス、熱供給など、戸建 て住宅地へのインフラ整備は企業が行う。 ⑤法人格を持つ住宅協同組合が戸建て住宅地を開発する 戸 建 て 住 宅 の 建 て 主 が 集 ま っ て 、法 人 格 を 持 つ 住 宅 協 同 組 合 を 結 成 し 、戸 建て住宅地を開発する、コーポラティブ住宅に似た開発形態である。残念 ながら調査ではヒアリングのみで、この住宅地は視察できなかった。 ①専門の施工者に依頼した戸建て住宅②セルフビルドで建てた戸建て住宅 ③ディベロッパーの戸建て住宅地 ④企業幹部職員向けの戸建て住宅地 3.おわりに 調査研究の結果、北海道とロシア極東地域は同じ寒冷地ではあるが、従 来の住宅建設システムが違うため、北方型住宅を適用するには以下の課題 があることがわかった。①戸建て住宅建設システムの構築/②木造戸建て 住宅の建材生産システムの確立/③価格が割高な木材/④未熟な木材施工 技術/⑤住宅取得のための長期低利の融資システム。具体的な内容は調査 レポートに示してある。 しかし、ハバロフスク市では戸建て住宅の建設は徐々に普及し始めてお り、将来的に北方型住宅の技術が活かされる可能性は大きい。実際、カナ ダ政府はハバロフスク市内の戸建て住宅地にモデル住宅を建てて、カナダ 製の高断熱住宅の普及を図っている。今後、北海道とロシア極東地域の間 で研究交流や技術交流が盛んになることを期待したい。最後に、わが国で はこのような調査は今まで行われておらず、本調査研究により北海道の学 界のみならず、行政や産業界にも有用な資料が得られている。 調 査 研 究 チ ー ム:瀬 戸 口 剛 (北 海 道 大 学 大 学 院 )/ 大 垣 直 明 (北 海 道 工 業 大 学 ) / 荒 井 信 雄 ( 札 幌 国 際 大 学 ) / 久 保 田 克 巳 (北 海 道 日 建 設 計 ) / 谷 口 尚 弘 ( 北 海 道 工 業 大 学 )/ 久 保 勝 裕 (北 海 道 工 業 大 学 ) (文責 瀬戸口剛)