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設計製図試験のポイント
第 20 回 第 20 回(平成 23 年度)設計製図試験のポイント 年度)設計製図試験のポイント 【出題のポイント】 リフォーム対象住戸は、大都市郊外にある鉄筋コンクリートラーメン構造の 6 階建、片廊 下型のマンションにある住戸で、東側にルーフバルコニーがある。依頼者はパーティーが出 来るルーフバルコニーに惹かれてこのマンションを購入し、リフォームに際し、ルーフバル コニーの近くにリビングやキッチンを配置すること、玄関近くにリビングを配置することを 望んだ。専有部分のリフォームは、自由にプランニング出来ると思われがちだが、建築基準 法などの法令を遵守し、管理規約等マンション特有のルールに従った上で、依頼者の要望に 応えなければならない。今回の出題は、キッチンの位置を隣戸側からルーフバルコニー側に 移動することが求められ、プランニング力とともに、設備配管に考慮した設備機器の配置が ポイントになった。 【解答のポイント】 1.採光上の無窓居室 居室には自然採光が必要で、床面積に対し一定割合以上の面積をもった採光上有効な窓が 必要であるが、子供室を隣戸側に配置し採光が採れていない解答があった。また、依頼者の 要望で主寝室に書斎コーナーを求めたが、主寝室の隣に独立した書斎を造り、片開きドアを 付けた解答があった。居室は採光の採れない「あんどん部屋」にしてはならない。書斎コー ナーに独立性をもたせるならば、出入り口はふすまのように引違いとし、間口の 1/2 程度が 随時開放できる状態にすることで、寝室と書斎コーナーの 2 室を 1 室とみなし採光をとるこ とが出来る。 2.水廻りの移動 キッチンの位置の移動が求められ、それに伴う設備配管の検討が求められた。排水は位置 が変更できない排水立主管につながなければならず、エスキースの段階で、シンクや洗面化 粧台から排水立主管までの距離と排水管の水勾配を考慮しプランを検討しなければならない。 床下の排水横枝配管は、適正な管径や勾配が求められ、勾配は管径 65 ㎜以下は勾配 1/50 以 上、75~100 ㎜は勾配 1/100 以上必要である。 実際にリフォームの計画をする場合に、水廻りを移動する場合は、排水管の勾配だけでな く、給水管やガス管との交差、排水立主管の継ぎ手の向きや高さを検討する。また、トイレ の位置を変更する場合は、排水管の水勾配だけでなく、上下階の音の問題などを含め慎重な 検討が求められる。 3.電気温水器の地震対策 阪神淡路大震災や東日本大震災震において、電気温水器が倒れたり、移動したり大きく揺 れたことにより接続配管が折れ、下階に漏水した事故が多く見られた。その対策としては、 電気温水器の脚を、専用基礎金物を使用し床スラブにボルトで固定するとともに、頂部や中 間部を天井や壁の躯体に機器と一体に固定する。また、電気温水器が揺れたときに接続配管 が折れないよう、フレキシブル継手で接続することが求められる。 4.バルコニーやルーフバルコニーへの固定物の設置 バルコニーやルーフバルコニーは、共用部分でありながら特定の区分所有者だけが専ら使 うことが出来る専用使用部分であり、標準管理規約では躯体に固定するような設置物を認め ていない。ところが、マンションに初めて住む人は、そのような事を知らなかったり、軽く 考えている場合が多いので注意が必要である。出題で、依頼者はルーフバルコニーへの電動 オーニングの設置を希望し、また住戸内のスペースの有効活用のため屋外への電気温水器の 設置を希望した。管理規約を確認した上で、躯体に固定するような設置物や、電気温水器用 の配管を通すために構造躯体部分に新たなスリーブをあけるようなリフォームは認められな い旨を説明し理解を得ることが求められる。