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健康食品のことを知っていますか? -食品の安全・安心から機能性まで

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健康食品のことを知っていますか? -食品の安全・安心から機能性まで
特別講義1
健康食品のことを知っていますか?
-食品の安全・安心から機能性まで -
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
食品研究部門 食品健康機能研究領域長
山本(前田) 万里
氏
「健康食品」という言葉を良く耳にしますが、健康
では、大豆製品・魚・海藻・野菜・果物・緑茶の食事
食品でなければ不健康な食品というわけではありま
パターンで心血管疾患のリスクが低下する、といった
せん。
「健康食品」とは、一般的に体の調子を整える機
食と健康との関係が明らかにされて、各国の健康ガイ
能があることを強調した食品を、また、
「機能性食品」
ドラインに活かされてきました。
とは、食品(農産物)には病気の予防や老化を防止す
食の安全・安心もよく話題になります。安全は、科
るなど体の調子を整える成分(機能性成分)が含まれ
学的事実に基づいて獲得されるもので、予期された方
ており、その成分を活用した食品のことをさします。
法や意図された方法で食べた場合、その食品が食べた
皆さんが普段召し上がっている食品・食事は、これま
人に害を与えないという保証です。安心は受け手によ
での長い経験を元に、健康を維持するために選ばれて
り受容の可否が決まるもので、安全とは異なるもので
きました。食品に最も重要なことは安全で、その次が
す。食品の安全性は量で決まり、どんなに体に良い食
栄養です。医食同源という言葉があるように、食品は
品であっても、過剰量摂取で毒にもなります。ハザー
健康の維持増進や疾病予防に大きな役割を果たして
ド(危害の要因となるもの)とリスク(ハザードの毒
きました。農産物や食品の機能性研究においては、機
性とハザードの体内への吸収量を掛け合わせたもの)
能性成分の探索、同定、分析、エビデンス獲得、作用
から食の安全性を考えますが、ハザードは生物的、化
メカニズムの解析や機能性成分を多く含む農産物開
学的、物理的ハザードに分けられ、リスクは、急性の
発などを経て機能性食品が生み出されてきました。食
ものでは、微生物、藻類毒、有毒植物、かび毒、人為
品が健康に寄与しているかどうかを調べるためには、
的汚染物質、残留農薬、食品添加物の順に高いとされ
ヒト試験(コホート研究などの観察研究、介入試験)
ています。そのため食品の安全・安心で大切なのは、
による検証が必要です。世界には色々なコホート研究
①どんな食品にもリスクはあることを理解し科学的
があり、フラミンガム心臓病コホート(USA;1948
に考えること、②食中毒に注意すること、③一方から
年~)では、野菜と果物の継続的摂取が脳卒中発症リ
の情報を鵜呑みにせず、食品の健康維持や疾病予防の
スクを減少させる、7カ国コホート(1957 年~)で
情報を過大に信じないことです。
は、地中海食(一価不飽和脂肪酸(オリーブオイル)
また、新たな機能性表示制度の検討が規制改革の一
と野菜(トマト)
)の継続的摂取が心血管疾患発症のリ
環として消費者庁で実施され、2015 年 4 月から、事
スクを減少させる、大崎コホート(日本;2007 年~)
業者の自主的な表示制度(農林水産物も対象)が施行
されました。2016 年 11 月 17 日現在 509 品目の機
よる生活習慣病等疾病の予防、健康寿命の延伸、国民
能性表示食品が届出・受理されています。農研機構で
の生活の質の向上が期待されます。そのためには、一
も農業生産者と連携して機能性表示農林水産物の開
次~三次機能を一体とした栄養・健康機能性の解明、
発を行い、ウンシュウミカン(骨の健康維持)と緑茶
世代別個人に適合した健康維持・増進効果を持つ食品
(ハウスダストなどによる目や鼻の不快感軽減)につ
の開発や新たな機能性研究の推進が求められます。ま
いて、農水省の公開した研究レビューを活用して機能
た、自分の健康を自分でデザインするセルフメディケ
性表示食品の届出を行い受理・上市されました。
ーションのためには、個人が機能性食品をよく知るこ
このように、今後、ますます機能性農産物・食品に
とが重要となります。
[講師プロフィール]
1986 年 千葉大学(院)園芸学研究科修士課程修了
農林水産省入省 農業研究センター
農林水産省 中国農業試験場 流通利用研究室研究員
1992 年 農林水産省 野菜・茶業試験場 製品開発研究室研究員
2002 年 独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所 茶機能解析研究室長
2006 年 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜・茶機能性研究チーム長
2011 年 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
茶品質・機能性研究グループ長(上席研究員、中課題推進責任者)
2012 年 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 食品機能研究領域長
2015 年 筑波大学協働大学院グローバル教育院 教授
2016 年 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域長
現在に至る
≪受賞歴≫
2002 年 日本食品科学工学会奨励賞「動物細胞を用いた緑茶機能性の解明」
2007 年 世界緑茶協会 O-CHA フロンティア賞産業技術大賞
「
「べにふうき」茶葉中抗アレルギー成分に関する研究と実用化への取組」
2013 年 産学官連携功労者表彰農林水産大臣賞
「メチル化カテキン高含有「べにふうき」緑茶とそれを利用した外用剤の開発」
2016 年 日本農芸化学会 農芸化学技術賞「健康機能を有する緑茶「べにふうき」の効果、作用機序、茶葉特性の解明な
らびに飲食品の開発」
2016 年 飯島藤十郎記念食品科学振興財団 食品技術賞「機能性表示食品に対応したべにふうき緑茶活用食品の開発」
2016 年 日本食品免疫学会 食品免疫産業賞「緑茶の抗アレルギー作用の解明及び応用開発」
≪役職≫
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域長
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