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龍野宏人, 安藤慎治, 高分子論文集, 60, 145
高分子論文集 (KobunshiRonbunshu),Vol .60,N o.4,p p . 145-157(Ap , . r2 0 0 3 ) 〔総説〕 固体 19F 龍 野 宏 人 *1 ・安藤慎治*1 (受付 2002年 1 2月 1 3日・審査終了 2003年 1月 20日) 要 旨 含フッ素高分子は,耐熱・耐寒性,耐薬品性,耐候性などに優れ,難燃性,絶縁性,低摩擦性, 非粘着性といった特性を有す る機能性 に富む材料である. 本報では ,特異的な物性を もつものの溶媒への 溶解性が低く, しかも多様な固体構造を有するために構造解析が困難とされてきたパーフルオロ高分子に p i n n i n g( MAS)NMR法を用いた分子構造分析や固体構造解析に焦点をあてて 着目し,叩 MagicAngleS 9 FMASNMRの測定原 理 と MASの効果について述べ,次い で この手法 を,結晶 概説した .まず,国体 1 PTFE),テトラ フルオロエチレン ( TFE) とヘキサフルオロプロピレ 性のポリテ トラフルオロエチレ ン ( ン( HFP)の ランダム共重合体 ( FEP),TFEとパー フルオ ロアル キル ピニルエーテルの 共重合体 ( PFA), 非品性のパーフルオ ロポ リマー,そして パーフル オロ エラスト マーおよびイオ ノマ ーに適用して得られた 分子構造と分子運動性に関す る知見 を紹介す る とともに,パーフルオロ 高分子のキャラクタリゼー ショ ン 手法としての 1 9 FMASNMRの有効性について まとめた . 1 緒 有 す るため, 構 造や運 動性 の 異 な る 相 の 組 成 比 を 決 定 す Eヨ るこ とカす で きる. 1 9 F核 は 天 然存 在 比 が 1 0 0% で あ り , し か も 磁 気 回 転 含フ ッ素 高 分 子 ( 含 フ ッ 素 樹 脂) は一般 に 耐 熱 ・ 耐 寒 性,耐薬品性,耐候性などに優れ,難燃性,絶縁性,低 比 が 'Hの 94% と 大 き い こ と か ら 摩擦性,非粘着性といった特性を有する機能性に富む材 の感度の高い核種である.また有機化合物において 料 で あ る 1) 現 在 市 販 さ れ て い る 含 フ ッ 素 高 分 子 は , そ の 化 学 シ フ ト の 変 化 幅 が 約 l Oppmであるのに対し, 1 9 p の フ ッ 素 化 の 程 度 と 結 晶 性 あ る い は 機 能 性 に よ っ て Ta- は 200ppm以 上 に 及 ぶ こと から , 磁 気 的 環 境 が 異 な る b l e1の よ う に 分 類 で き る . 本 報 で は こ れ ら 含 フッ 素 高 核の情報をより詳しく得ることができる.このような理 分子のうち価の元素としてフッ素のみを含むパーフ 9 pは 初 期 の 固 体 NMR研 究 に お い て も っ とも多 由から 1 Perfluoropolymers)に着 目 し,それらの 1 9 p ルオロ 高分 子 ( く 用 い ら れ た 核 の 一 つ で あ っ た が , 交 差 分 極 (CrossPo- 'H核 に 次い で NMR ' H 核および 1 3 C核 の 固 体 NMRを 用 い た 分 子 構 造 分 析 や 固 l a r i z a t i o n:Cp) 法 や MAS ( MagicAngleSpinning) 法 の 体構造解析の結果について概説する. 登場によって, 1 3 C, 1 5 N, 2 9S iな ど 希 少核 の 固 体 高 分 解 高分子の物性は,その分子構造と分子運動性に大きく 能 NMRが 実 用 的 に な る と , 固 体 1 9 pNMRの 測 定 法 の 依存することが知られている.多くの高分子材料は固体 開 発 や 応 用 は 遅 れ を と る こ と に な っ た.それは 1 9 Fに特 状態で使用されるため,分子構造および分子運動性に関 徴的な大きな化学シフト異方性や同種核問 (1 9p~1 9p) お する情報は,国体のままで得ることが望ましい.結晶状 よび異 核問 ('9p~ IH など)の 強い双極 子一双極子相 互 作 態 で の 分 子 構造 の評 価 に は X 線 解 析 が有 効 で あ る が , 用を効果的に消去するために 固 体 NMRは 結 晶 相 の み な ら ず , 非 晶 相 に 関 し て 詳 し い MAS,広 い周 波数範囲で、有効な多重 パルス,近接する 1 9 p 情 報 が 得 ら れ る と い う 特 長 を 有 し て い る. ま た , 高 分 子 と の分子運動性の評価に対しては 熱物 性 と 力 学 物性 の 測 技術的に難度の高い高速 ' Hの 信 号 を 分 離 す る 高 性 能 の フ ィ ル タ ー な ど が 必 要 とされたためである.近年 これ らの技術的課 題 が 克 服 定 が一般 的 で あ る が , 固 体 NMRを 用 い れ ば 広 い 周 波 数 され, 実用 的 な 装 置 が 市 販 さ れ る よ う に な っ た こ と か ら 範囲において非破壊での評価が可能となる.さらに測定 研 究 報告 も増加の傾向にあり 法を注意深く選択すれば,得られる情報が高い定量性を れてい るか 6) この分野の総説も発表さ *東京工業大学大学院理工 学研 究 科 ( WI52-8552東京都目黒 1 区大岡 山 2 1 2 1) 1 4 5 龍野・安藤 Table1. Re p r e s en t a ti vef 1uorop o lymer s Semi c r y s ta l l i ne Pa r t i al l yf 1u o r i n a t e d P e r f 1uo r i n a t 巴d 斗CF2-CH21 n 斗CF2-CF21 n PVDF PTFE 斗CF2-CF2廿CHrCH2九 十CFrCF2七 十?F-cF24而 EP CF3 斗CFCI-CH21 n 斗CF2-CF2iIH円 PCTFE Amorphous E l as tomer PFA 十CF2一CF一CF一CF2七 / ¥ 明 o . C F ,. ¥/ι 十?円F2七 十 <(H-CH2 、 七 ORc) 火b) LUMIFLON CYTOP CF2 寸CF2-CF2同 F-C吋 斗 村 村 C 訂F 刊 V i 比 t o n Fd;; a ORf ) CF3 k a l r e z j L OCF3 十CF2ナ 七 十CF2-町C円 F2 I o nomer OCF29FOCF2CF2S0i N a f i o n CF3 a) P e r f 1uoroal k y lgr o u p,m a i n l yCJ F7 ・ b) Fo rC. l H , OH,o rCOOH. d) Cros sl i n k i n gp o i n t c) A l k y lg r o u p st e r m i n a t e dby 2 固体試料に特徴的な相互作用とその平均化 2 . 1 化学シフト異方性 外部磁場中におかれた核が受ける“有効磁場"の大き さは,核の周囲の電子密度に依存するため,複数の核が 異なった磁気環境にあれば,それぞれは異なった磁気し ゃへ い定数 ( 化学 シフト)を有す る.一般に核の近傍の 電子分布は球対称ではなく I JC や 1 9 Fのように 2p電子 を有する 場合は 電子分布 の異方性 が顕著であるた め , 有 効磁場も 異方的となる.分子運動が停止あるいは拘束さ れている 場合,単結 晶や 配向試料 でな い限り, 分子は磁 場に対してランダムに配向しているため,化学シフトに c h e m a t i ci l l u s t r a t i o no fma g i c an g les amples p i n Fig.1. S n i n g(MAS) も分布が生じる .溶液中においては NMRの観測時間よ りも速い分子運動によってこの異方性が平均化されるの で,化学シフトは等方平均値が観測されるが,固体試料 して得る手法である ( F i g .1 ). これは化学シフト異方性 では粉末パターンと呼ばれ る幅広 の信号が観測される. に (1-3cos2t J)の 項 (θ は磁 場 と回転軸のなす角であ 粉末パターンは核近傍の電子分布の異方性に関する情報 り, t J=54.7 で この 項は ゼロとな る)が含 まれること を含む点で重要であり を利 用している .Fig.2に MASの 回転数 を 変 え て 測 定 ここから 得 られる化学 シフトテ ンソルの三つの主値とそれぞれの方向性は,分子の立体 0 F l u o r o a p a t i t e) の 1 9 FMASス ペ ク ト ル 9 ) したリン灰石 ( 構造(コンホメーションやコンフイグレーション)や凝 を示す. S t a t i cは MASを行わない場合の粉末パターン 集状態(結晶での充填様式や配向)を 強く反映すること であり,回転数の増加 とともに信号は急速に先鋭化して が知られて いる.し かし,磁気しゃへい環境の 異 なる複 いる.ここで, 周波数単位で表 した化学 シフ ト異方性よ 数の核の信号が重なると スペクトルの分離は困難とな りも MAS回転数が小さな場合には,この相互作用は完 る. MAS法は,ロ ー ターと呼 ばれ る試料管を外部磁場 全には平均化されず, 等 方平均 信号 ( 約 70ppm) か ら 0 4 . 7( Magica n g l eと呼ばれる )傾けた 軸の回 に対して 5 MAS回転数の整数倍だけ周波数の異なる位置にスピニ りに高速で回転させることにより,化学シフトの異方性 ングサイドバンド (SpinningSideBand:SSB) が出現す を消去 ( あ るいは低減) し,化学 シフトを等方平均値と る.なお, 等方平均信号は , どの回転数でも 同 じ共鳴位 1 46 l6 0,No.4( 200 3 ) 高分子論文集 , Vo. 固体 J9F-MASNMRを用いた パーフルオロ高分子のキャラク タリゼー シ ョン 2 θ の項をも つため , 1 化に 重要な 低次の成分は 1-3c o s 0 kHz以上の高速 MASにより消 去あるい は低減すること 1 4 . 0kHz が可能である.なお,化学シフト 異方性の場合 と同様, MASの 回転数が この相互作用より小さな場合には SSB が観測される. したがって,通常パーフルオロ高分子の MASスペク トル で観測される SSBには,化学 シフト異 7 . 7 k H z 方性と 双極子一双極子相互作用の両方の寄与が含まれて いる可能性がある. 同種核問 の双極子 双極子相互作用 は , MASではなく “ 多重パ ルス"と呼ばれるスピン 空間での 等方回転によ 5 . 7 k H z っても平均化することができ この 手法は高速 MAS技 術 が実用的となる までしばしば用い られた .ただし,多 重パルス法では化学シ フト異方性が平均化できないこと 3 . 9kHz から,低速 MASと多重パルスを組み合わせた CRAMPS ( CombinedR o t a t i o nAndM u l t i p l eP u l s eS p e c t r o s c o p y) と 呼ばれる手法を用いるのが一般的である.なお,エラス トマーやガラス転移温度(九)以上での半結晶性高分子 の非晶部については ZOO 150 IDD 円 町 内 50 活発な分子運動によって双極子 双極子相互作用の自 発的な平均化が起 こってい る場合が -5D F i g.2. J 9 FMASNMRs p e c t r ao ff l u o r o a p a t i t ea saf u n c t i o no fs p i n n i n gr a t e . The l a r g es t a t i cl i n e w i d t h( b o t t o m ) m a i n l yo r i g i n a t e sf r o mas i g n j f i c a n tc o n t r i b u t i o nf r o mt h e c h e m i c a ls h i f ta n i s o t r o p y 9 )( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nf r o mt h e 巴m i cP r e s s ) . Acad 多 く,このようなときには低速の MASだけでも先鋭化 した信号が得られる. 3 パーフルオ口高分子に対する構造研究 3 . 1 PTFE ポリエチレンの水素をすべてフ ッ素 に置換した構造を もっポリテトラフルオロエチレン ( PTFE) は,もっと 置に現れることから判別が可能である J3C の場合,観 も代表的なパーフルオロ高分子である.高い結晶性(結 測周波数が JH の約 1 /4 と低いため 4 ~ 5 kHzの MASに 晶化度約 90%) と高いフッ素含有率 ( 76wt%) は より SSBを 効 果 的 に 抑 え る こ と が で き る が 核問の 双極子一双極子相互作用が非常に強いことを意味 J 9 Fの 場 J 9 F 合,化学シフト異方性が 3 JCと同程度かそれよ りも大き しており, く,しかも観測周波数が J Hに近いため,分子運動が拘 できないた め,高分解能の NMRスベク トルを得ること しかも分子運動による平均化がほとんど期待 束されている試料の高分解能の NMR信号を得るために は永らく困難であった.含フッ 素高分子の J 9 F高速 MAS は,通常 10kHz以上の MASが必要となる.現在で は 30 スペクトル(16 . 8kHz)を最初に観測したのは Decら ( ' 8 6 kHz以上の MASが可能な プロープが市販されてい る. 年) 7 ) であるが,彼らは 2 . 2 同種核間双極子一双極子相互作用 化学シフト異方性と並 んで ,同種核問あるいは異種核 問の双極子一双極子相互作用も高分子の団体 NMRスペ CFCI-CF2ーを主要な連鎖とす る Kel-Fを観測したのみで, PTFEのス ペク トルを報告 していない. 最初の PTFEの高分解能ス ペク トルは, ' 9 1 年H a r r i sら2) に より CRAMPS法 を 用 い た も の が報告さ クトルを幅広にする原因の 一つである.スピン 量子数 が F i g.3).一方, PTFEの J 9 F→ 3 J CCP /MASス れている ( ゼロでない(したが って NMR活性な)核スピンは双極 ベ ク ト ル は 高 速 MASや 多 重 パ ル ス を 必 要 としないた 子 モーメントをもち,隣接す る核スピンに局所磁場を与 め,つ 9年 Flemingら8) により得られている. Fig.4に示 o cの低温域で観測される先鋭化 える.この局所磁場は,核問の距離,二つの核の双極子 すように, -155 ~ -8 モーメント,そして核問ベクトルと磁場のなす角によっ した信号の線幅が, 24 C 以上で 2 ~3 倍となっ ているが, て規定さ れる. パ ーフルオロ 高 分子の固体 NMRでおも これは 1 9 C で 起 こ る 結 晶 の 1次 転 移 (三斜 晶 1 3/6ヘ 0 0 に問題となるのは,双極子モーメントが大きくしかも空 5/7ヘリ ック スへ)に 伴う分子軸 リ ックスから 六方晶 1 間的に近接することが多い J9F~J9F 聞の同種核問相互作 回りの回転運動 を反映したものと述べら れている. 用である.例えば, -CF2ーについてその運動が停止し ている場合,その双極子 相 互作 用 の 大 き さ は 約 1 1kHz となる.幸いなことにこの相互作用もスペクトルの広幅 高分子論文集 , Vo. l6 0,No.4( 2 0 0 3 ) PTFEは苛 酷 な環境のもとでも優れた特性を有するこ とから,宇宙空間で使用できる数少ない高分子材料の 一 つであり, 古く から高エネルギーの 電 子 線 や y線によ 1 4 7 龍野・安藤 十CF2-CF2+ n T e m p e r a t u r e(OC) G 35 い仲丸ル《 b F i g.4 . 1 9 F→ 1 3 CCPIMASs p e c t r ao fPTFEa saf u n c t i o no f o n t a c tt i m eus e dwas5 . 0ms ,a n dt h e1 9 F t e m p e r a t u r e8).Thec d e c o u p l i n gf i e l dwas 89kHzi ne a c hc a s e( C o p y r i g h tp e r mis si o nfromt h eAmerica nChemicalS o c i e t y ). C たが,架橋 部位である -CF一基の 存在 を分 光学的 に初 , 。 ω I u円 円 -50 めて示したのは 1 9 FMASNMRを用いた Katohら1 7 )の報 0 告と考えられる.彼らは 340 C で溶融させた PTFEに T -150 対しアルゴ ン雰囲気下で電子線を照射すると ,-CFーや -200 F i g.3 . 1 9 F CRAMP s p e c t r ao fs h o r t - a n d l o n g c h a i n 2 b )C2 F4 ow i t h PTFE . )( a )C 2 o F 4 0w i t hs pi n n i n ga t2 . 6kHz,( o n d( c )h i g h lyp u r e,h i g h l yc r y st a l l i n e s p i n n i n ga t5 . 1kHz,a i g l o n g c h a i nPTFEw i t hs p i n n i n ga t2 . 5kHz. C h a i n -巴nds n a lsa r ei n d i c a t e d by a r r o w si n( b )( C o p y r i g h tp e r m i s s i o n fromt h eAmericanChemicalSoc i e t y ) . -CF 3 に帰属される新たな信号が現れることを見いだ し , 架橋 部位に相当する -CF一信号の全信号に対する 強度比から ,架橋密度お よび架橋点の G 値 (物質が吸 収したエネルギー 100eV当たりの,反応生成物の収率 を表す指標)を算出した.その結果,架橋密度は照射量 とともに増加するのに対し,架橋効 率 を指す G 値は 2 MGyで極大となると報告している .その 後 , Fuchsと S c h e l e rl8) は,真 空下 365 C で 溶 融 PTFEに対す る電 子 0 る分子構造への影響が調べられてきた. Lovejoyら1 0 ) . 1) 線照射を行い Fig.5に示す 1 9 F高速 MASスペクトル ( 3 5 は,さまざまなパーフルオロ高分子について電子線照射 kHz) を得ている.彼らは -CF-信号 が,架橋点だ けで による溶融粘度の変化を比較し, (1)粘度の低下は,分 なく側鎖分岐点の寄与も含むことを考慮して,後者が側 子鎖の開裂により生じたラジカルが立体障害(第 2級あ CF3と 1対 1で対応すること 鎖末端の -CF3または -CF2 るいは第 3級ラ ジカルの場合)や低い分子運動性のた め から両者の寄与を分離し,結果として照射量が増すにつ に再結合せず,低分子量化した結果である, ( 2) 粘度の れ架橋数も増大するという Katohらと同様の結論を得て と -CF2 上 昇 は,高い分子運 動 の も と で -CF2 CF CF 2・ いる.また彼らは,真空下室温で電子線を照射し た PTFE 2 ーの再結合が優位に進み架橋した結果であ (-CF 2・)CF のスペクトル ( F i g .6b) も得ている .Fig.5との対比か る,と結論づけた.なお ( 2) は -CF CF と -CF2 C' 2 2. ら明 らかなように -CF一信号を 識別することは でき ず , ーの反応も含め ,Y 型 (あるいは T 型)架橋と称 FCF 2 2 ト 1 4) .PTFEに対する 電子線照射の 影響 は,熱的・ される 1 0 力学的特性などの観点からも調べ られ,融点 ( 約 327 C) 以下で は分解反応が,融点以上では架橋反応が優位に 進 0 CF CF 2 3信号のみが現れている こ とから ,室温では分 子運動性の不足により 架橋ではなく 分解反応が進行する ことを確認 してい る. 9 FNMRス 上述のように ,PTFEやその関連高分子の 1 行し,また 350 C を超えると熱分解反応が促進され る と報告されている lか 1 6 ) PTFEへの 電子線照射による架 ペク トルは,高速 MAS法を用いれば比較的容易に 得 ら 橋構造形成の考 えは,これま で も広く受け入れ られてき C 工 夫を 要する. Liuらl川こ よ り測 定 された PTFEのJ3 1 4 8 れる が,これらの固体 1 3 CNMRの高分解能化にはやや 高分子論文集, Vol .60 ,No.4( 20 0 3 ) 固体 19F-MASNMRを用いたパーフルオロ高分子のキャラクタリゼーション ーCF2・CF -CF 2l CF ( 2 < ごF 0 2・) -平 -CF F-Cf 子 l CF 3~ Vr= 5kH z ( a ) ーCF2・CF , F r F C tCt • 1 4 0 ーCF >CF-CF< 8 0 1 0 0 1 2 0 1 4 0 1 6 0 ・ o F [ p p m ) 1 2 0 … a J 1 0 0 ( b ) U 0.5 凶z~A .: J 阻 zr ' V ¥ 8 0 ppm … ' , " 1 " _ 2 8 阻 z 1 8 0 ・ 1 4 0 Fig.s .1 9 F MAS s p e c t r u mo fPTFE i r r a d i a t e da t 365o C w i t h ar a d i a t i o nd o s eo f 3MGyI8 )( C o p y r i g h tp e r m i s s i o n fromt h eAmericanChemicalS o c i e t y ) ( c )_ . - 1 2 0 .J..~ 1 4 0 1 0 0 8 0 ∞ 8 0 ppm 1 2 8kHz ~ 18Hz ( 0 . 1 8ppmγ ← ーCF. -CF-CF . ん - I ーCFi・CF CF l2 CF‘ l ( d ) - CF-CF , t ¥ 一 一 目 a ) 向 一 一 ^ 一 EE 戸U a .句 E E .・ n u - C R 一一一 CF . . b ) 1 4 0 28kH z 1 2 0 ∞ 1 T-1 8 0 ppm F i g .7 . 1 9 F→ 1 3 CCP/MAS s p e c t r ao fPTFEu n d e rv a r i o u s I 9) d e c o u p l i n gc o n d i t i o ns ,( a )s t a n d a r dc o n t i n u o u s w a v ed i p o H z .( b )fast-MAS l a rd e c o u p l i n ga tas p i n n i n gr a t eo fvr=5k (Vr=28kHz)1 3C MASs p e c t r u ma f t e rrampedCPfrom1 9 F, w i t h o u t1 9 Fd e c o u p l i n gd u r i n gd e t e c t i o n .( c )samea s( b ),b u t > 9 0kHz)continuous-wave1 9 Fd e c o u p l i n g w i t hh i g h p o w e r( u tw i t hp u l s巴d1 9 F ( e x a c t l yonr e s o n a n c e ) .( d )samea s( c ),b d e c o u p l i n g,u s i n g at r a i no fr o t a t i o n s y n c h r o n i z e d1 8 0 p u l s e s( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nfromt h eAmerican Chemical S o c i e t y ) 0 ・CF ーCF2 , . . . . r 6 0 8 0 1 0 0 1 2 0 1 4 0 ・ , . . . . . ー 守 1 6 0 ・ . . . . r 1 8 0 ・ o F [ p p 吋 ことから,電気信号伝達の高速化に 重要な 層 間絶縁膜へ F i g .6 . 1 9 FMAS s p e c t r a( a )o fFEP w i t h a comonomer c o n t e n to f8% and( b )o fPTFEi r r a d i a t e da troomt e m p e r a t u r ea tar a d i a t i o nd o s eo f 1MGyl8 )( C o p y r i g h tp e r m i s s i o n fromt h eAmericanChemicalS o c i e t y ) . の 利 用 が 期 待 さ れ る が 適 当 な 溶媒がないためスピンコ ートによる薄膜成形が困難である.このような パ ーフル オロ 高分子 の薄膜を作製する技術の一つに,原料ガスを プラズマ化させ, 重合生成物を 基板上に堆積させるプラ ズマ化学気 相成長 法 ( Plasma-EnhancedChemicalVapor NMRスペ クトルを Fig.7に示す. ( a) と ( b) の比較か Deposition:PECVD) がある.プラズマ化に必 要 なラジ ら , MAS回転数の上昇により 分解能は向上するが オ波を 原料に連続的に照射すると 1 9 F 成長種とモノマーが 3C 問の双極子相互作用やスカラー相互作用は消去し _1 複雑に 反応し,得られる高分子には相当量の CF種や第 3 CCp /MASで通常 きれないことがわかる.しかし 1H→ 1 4級炭素が含まれるが,ラジオ波を断続的な パ ルスとし 9 Fに対して行うと 用いられる広帯域デカ ップリングを 1 CF2 -分率を高 くできることが知られ て照射すれば -CF2 ( c ),MAS との干渉により信号が得られない.そこで, 1 ) Gleasonらm は ている肌 2 試料回転に同期させた多重パルスを用いてデカ ップリン ロプロピレンオキシド ( HFPO) を用い,パルス間隔を 原料ガスにヘキサフルオ グを行い ( d ), 極 め て 先 鋭 化 し た 1 9 F → 1 3 CCp /MASス 変 え て 作 製 し た 円FE状 薄 膜 の 化 学 構 造 を 2次 元 1 9 F ペクトルを得ている. NMR法により解析した.近接する核どうしの双極子相 3 . 2 PTFE状プラズマ重合膜 互作用を利用して交差 ピークを 得 る“シフト相関 2次元 PTFEは 非 常 に 低 い 誘 電 率 ( 1MHzで約 2 . 1) を示す NMR法"は,化学種の帰属にたいへん有効な 手法であ .6 0,No.4( 2 0 0 3 ) 高分子論文集, Vol 1 4 9 龍野・安藤 1 8 0 C PTf E 1 8 0 1 0 1 2 0 ・ 1 8 0 亡〉 40 1 4 0 1 2 0 = 1 2 0 申 。 , : : : 1 0~ ζ 也 寧 . a o 4 0 2 0 . a o 4 0 3 0 旬 2 0 ~ーーーーーーーーーー-r 1 2 0 唱 。 s 1 0 0 IL嚇 Y す 100 旬6 0 9 0 唱4 0 "C ppm 8 0 "C ppm 1 6 0 ~2 @亀齢 制1 4 0 0 1 ω 1 4 0 ・. 1 2 0 唱 - 40 2 0 ω E 唱 - u h F ・ P 色 . a o 6 0 G ミ5 4 ω - T- 唱 。 的 U m v e r m 3 0 唱 FM t 唱 。 4 0 ~ n a 7 a w 2 0 唱1 0 " cppm 唱 1 関 e 3 0 唱 1 0 F i g .8 . 2D 1 9 F 1 3 CWISEs p e c t r ao f( a )PTFE( 3msm i x i n g ),( b )p e r f l u o r o e i c o s a n e( 3ms m i x i n g ),( c )1 0 / 2 0f i l m( lmsm i x i n g ),( d )1 0 / 4 0 0f i l m( 750μsm i x i n g )22J. A I It h es p e c t r aa r e p l o t t e dont h 巴 s ames c a l ef o rb o t ha x e s,e x c e p tf o r( c ) .S p i n n i n gr a t 巴 wa s5kHz( C o p y r i g h t p e r m i s s i o nfromt h eAmericanCh巴m i c a lS o c i e t y ) る.特に異種核問の双極子結合の観測には,多重パルス 信号がはっきりと見える ことか ら,パルス間 隔が長いほ を含む HETCOR ( HETeronuclearCORrelation) 法山がよ ど PTFE状の く利用されるが, Gleasonらはよ り簡単なパルス系列で 2 3kHz) でも観測 きる.彼らは同じ試料を高速 MAS ( WIdel i n e 異 種核 問 の 双 極 子 結 合 を 検 知 で き る WISE ( し , Fig.9に示すスペク トルを 得ると均,隣接する炭素 一連鎖の分率が増大すると推測で CF2 CF 2 4 ) を用い ,PTFEや かC2 F4 S E p a r a t i o n ) 法2 o 2のスベ クトル C- ,2)CF CF一 , 3)CF3CF2一 , 種の差異を 考慮して 1)CF3 3 と比較することで,薄膜中に存 在す る化学種とそ れらの 4 )-CF x CF2CF x一 , 5)-CF2 CF2 CF2 )-CF CF2 CF3,7) 一,6 2 結合様式を同定した (WISE法は通常,分子運動性に関 -CF一,と帰属し た.オフタイムの増加 (スペク トル a .8に PTFE,n-C 2 0 する情報を得る目的で使われる ).F ig → F叫 1 0/20フィルム(パルスオンlOms,オフ 20ms), c ) によって 3と 5の相対的な信号強度が増大するこ 一分率の増大を確認している.また, とか ら, -CF2 CF2 より長い連鎖で考え 1 0/400フィルムの 13C_19FWISEス ペ ク ト ル ( MAS:5 各信号の線幅が異なる理由として kHz) を示す .縦軸方向の 1 9 F信号の広がり は た場合の等方平均化学シフトの分布や,運動性の差異(運 1 9 F核問 の双極子相互作用の強さに相当している. PTFEや n-C2 0 1 3 F4 9 FJ=[112;-123ppmJ 2のパターンに見られる [C ;1 動性が高いほど先鋭とな る)を挙げている .後者は,ス ピ ン エ コ ー 法 (高い運動 性 を 反 映 し て 長 い ス ピ ン ス ピ の 信 号 は -C5CF2 - , [112; - 128ppmJ は -C5 CF3 , ン緩和 時間 T2 を有する部位を選択的に観測する測定法) [118;-83ppm] は -CF CF3に 帰 属 さ れ る . 10/20フ 2 によるスペクトルに運動が拘束されていると予想される ィルムのパターンは複雑で,さまざまな化学種がある上 4や 7の信号が現れないことか らも 確認している.さら に -CF2 CF2 の信号強度が弱いが,10/400フ ィルムはか ,CF3の 積 分 比 が XPSか ら 得 ら れ た 強 度 比 に CF,CF2 ーや -CF2 C2 F4 2に似たパタ ー ンを 示し, -CF2 CF CF 2 3の o によく 一致 したことから 1 5 0 フィルム全体にわたり構造は 高分子論文集, Vol .60 ,No.4( 2 0 0 3 ) 固体 1 9 F 3 D . . c 」μJ~ b . 1111hL P例明 A 人一 ・ 5 0 -60・ 7 0 -80・ 9 0ぺ ∞1 1 0・ 1 2 01 3 01 4 0・ 1 5 0・ 1 6 0・ 1 7 01 8 01 9 0・ 2 0 0 。 ppm ・・ 1 ・ ・ ・ ・1 , ・ "I' ・ ・ . , ・ ・ ・ ・ 1・ ・ .' " ・ ・ ・ 1・ ・ ・ ・ 1"" E に A C . E B 1 0 0 2 0 0 3 0 0 F i g .1 0 . 1 9 pMASs p e c t r ao fFEPi r r a d i a t e du n d e rt h ef o l .0MGy,( B )90C a n d l o w i n gc o n d i t i o n s :( A )30 C and1 2 . 5MGy,( C )1 5 0o Ca n d3 . 0MGy,a n d( D )250o Ca n d2 . 0 1 l .P 巴a k smarkedby# r e p r e s e n te x p e r i m e n t a la r t i f a c t s M Gy3 ( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nfromt h eE l s e v i e rS c i e n c eB .V . ) . 0 F i g .9 . 1 9 FMASs p e c t r ao f( a )1 0 / 5 0,( b )1 0/200,a n d( c ) 1 0 / 4 0 0p u l s e dPECVDf i l m so fHFPO( s e et e x t )a tas p i n 2 5 巳 o f2 3kHz . )TheTOSSp u l s es e q u e n c ewasu s e d n i n gr a t f o rt h ee l i m i n a t i o no fs p i n n i n gs i d e b a n d s .Thes e v e nm a i n r e s o n a n c ea s s i g n m e n t sa r ed e s c r i b e di nt e x t( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nfromt h eAmericanC h e m i c a lS o c i e t y ) . 0 見いだし,赤外吸収スベクトルにより得られた値と良い 相関にあることを確認している. 固体試料の 1 9 F高速 I 8 MASスベクトルは S c h e l e r) , 2 9)や H i l lら3 0 ), 3 1 )によって 均一であると述べている. 3 . 3 FEP テトラフルオロエチレン ( TFE) とヘキサフルオロプ 得られており, 32kHzの MASを用いると F i g .6aのよ うなスペクトルとなる.小川らにより帰属され た信号の ロピレン ( HFP) のランダム共重合体 は FEPと呼ばれ, ほか,磁気環境がわずかに 異なる -CF3および -CFーの HFP のモル分率は 一般に 6~ 1O%である. FEPは , CF3 微弱な信号が観測されている. PTFEは溶融状態で十分 基を 側鎖にもつために分子全体は 断続的ならせ ん構造を な分子運動性がないと電子線照射により架橋しないが, とり,結晶相中の CF3基が格子欠陥として存在するとい FEPは九 ( 約 90 C) 以上であれば架橋反応が進行する 1 FEPは溶融状態 ( 約 265 C 以上)で分解 われている ) 0 ), 1 1 ) H i l lら3 1 )が y線の照射条件を変え といわれている 1 6)や 能の良い 1 9 Fスベクトルを与えることから, Wilson2 9 FMASス ペ ク ト ル を Fig.l0に示 て 測 定 し た FEPの 1 E n g l i s hら2 7 )により信号の帰属と HFP分率の定量がなさ れている.小川らお)はあらかじめ溶融成形したロッド す.照射条件は温度,照射量の順に A)30o C, 1 .0MGy, o o o B) 90 C,2.5MGy,C) 150 C,3.0MGy,D) 250 C, 状の試料を用いると,粉末試料に比べて信号が先鋭化す 2.0MGyである.彼らは信号の積分比より,当初から存在 ることを見いだし, TFE連鎖 -CF2 - (-120ppm)と CF z する側鎖 -CF3 ( -68 ~ 一 75 ppm) お よび分岐点 0 0 CF HFP部 位 の -CF )CF z一 3 (-71ppm),一 C5CF(CF 3 (-183~ 一 187 ppm) の G 値 と , 新 た に 生 成 す る 末 端 (-110ppm), -CF一 (-182ppm) のほかに, TFE連鎖 -C5CF 3 (-128ppm) お よ び 末 端 -CF3 (- 55~-65 信号のやや低磁場側に現れる信号を TFE-HFP連鎖の ppm, -83ppm) の G 値を算出した.その結果, HFP ーに帰属している.また,信号 -CF CF2 CF(CF3 )CF2 CFz z 側鎖の消失量 は全温度 にわたってほぼ一定であるのに対 の積分比から HFP含有量を精度よく算出できることを し,分子鎖の開裂に 伴う末端の 生成は 250 C 以上で急 高分子論文集, Vol .60 ,No.4( 2 0 0 3 ) 0 1 5 1 龍野・安藤 2 . 5 2 . 0 1 . 5 。 1 . 0 . a 0 . 5 6 a 干 0.0 0 . . ( ) . 5 . 1 . 0 . 1 . 5 . 2 . 0 F i g .1 2 . The G v a l u e sf o rPPVE,CF i d ec h a i n s,l o n g 3s b r a n c hp o i n ts ,a n dnewc h a i ne n d sf o ri n a d i a t i o nt e m p e r a t u r e so f3 0o C,200' C , a nd300' c3 3 )( C o p y r i g h tp e r m i s s i o n f r o mt h eA m e r i c a nC h e m i c a lS o c i e t y ) 0 0 0 F i g .1 2には 30 C,200 C,300C で照射した 場合の, . 6 4 ・68 ・72 ・76 . 8 0 . 8 4 ・ 事1 . 9 2 . 9 6 PPVE,-CF CF(-CF ) CF2-,分岐点 -CF一,末端 2 3 (pp 副} CF 2 CF 3( PPVE側鎖の寄与は 除いである )の G 値を示しで F i g .1 1 . 1 9 FMASs p e c t r ao fPFAo b t a i n e db y( a )s i n g l e ) . The 33 p u ls ee x p e r i m e n ta n d( b )H a h n e c h oe x p e l i m e nt s p e c t r ah a v巴 b e e nnorm a l i z e dt ot h ef l u o r o m e t h y lp e a ka t -8 3 . 6ppm ( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nf r o mt h eA m e r i c a n C h e m i c a lS o c i e t y ) . ある.彼らは,負の G 値 が PPVEのみに見られること から,鎖の開裂がおもに PPVE部位で起こると述べてい る.また, PTFE山と異なり 室温付近 の照射でも CF3側 鎖が生成す るが,末端 CF3の G 値は 分岐点 -CFーの G 値より大きいことから,架橋反応よりも 分子鎖の開裂お よび多分岐化が優先的 に進行すると 結論づけている.そ 0 0 激に増加するとしている.また分岐点の G 値は, HFP して, 末端 CF3の G 値は 200 C と 300 C でほぼ一定な 単位の開裂により室温で負の値を示すが,温度の上昇に のに対し,分岐点の G 値は劇的に増大していることか 伴 って増加し ,250 C で正の値に転じており, 227 C近 ら,融点 ( 約 307 C) よりも高温では PTFEと同様に分 2 ) 傍 で 放 射 線 に 対 す る 特 性 が 変 化 す る と い う Zhongら3 子間架橋すると推測している. 0 0 0 3 . 5 /'¥ーフルオ口工ラストマー の報告に一致すると述べている. DuPont( 株)の Vitonに代表され る含フッ素 エラスト 3. 4 PFA TFEとパーフルオロアルキルピニルエーテル (FVE) マーは, 炭化水素系 のゴムよりも優れた耐熱性や耐薬品 の共重合体は PFAと呼ばれ, FVEのモル分率は 一般に 性をもつが, C-F結合 に比べて結合 エネルギーの低い 1 ~ 2% である. FVEとし ておもにノ fーフルオロ プロピ C-H結合も数多く存在し ,200 C 以上で熱分解が始ま 0 CF 2 =CF-O-C 3 F7:PPVE) が用い ルビニルエーテル ( a l r e zは , TFE/パ ー フルオロメ る.これに対し同社の K られている. PFAも FEPと同様に,溶融試料の J 9 Fスペ チルピニルエーテル ( TFE /PMVE) 系 の パ ーフルオロ クトルにより信号の帰属がなされ,共重合体組成比の算 6 C とほかの含 エラストマー で,熱分解開始温度 が 31 8 ) D a r g a v i l l eら川 は PFAの J 9 FMAS測 出が可能である 2 フッ素ゴムに比べ はるかに高い耐熱性を示し ,耐薬品性 0 定 を 行 い,信号強 度 比 か ら PPVEの モ ル 分 率を 1 .7土 o r s y t h eら3 4 )により測 や耐プラズマ性にも優れている. F 0.2% と算出するとともに, PFAに対する y線照射実験 l r e zの 1 9 FMASス ペ ク ト ル を Fig.13に示 定 さ れ た Ka の結果を Katohら1 7 )や S c h e l e rら1 8 )による PTFEの 実 験 a l r e zの 九 は 約 一 1 0O C 1 )のため,低速の MASスペ す. K 結果と 比 較 , 考 察している. F i g .1 1 に 30C で 1MGy 3kHz) でも常温においては 主鎖 を含むほとん クトル ( 照身サした PFAの ( a )1 9 FMASスペク トルと ( b) 1 9 FMAS どの信号が先鋭化している.この試料に常温減圧下で y スピンエコースペクトルを示す.彼らは ( a ) で見られ 線を照射す ると F i g . 14 に示すような新たな 信号 ( A~F ) .7ppmの 信 号 を と も に -CF2 CF る -68.6ppmと 71 が観測され る.彼らは Lovchikovら3 5 )による帰属 をもと 0 b) で は T 1 . 7ppm (-C5)CF2 に帰属し, ( 2の 長 い 一 7 に,これらの新たな 信号 が PMVE部分の開裂反応から の信号のみが観測されることから,低磁場側の信号を結 のみ生じう ることを見いだし,その 生成機構 を提案して 晶部由来, 高磁場側の信号を非晶部 由来であると 考えた . いる.特に分岐 点の -CF2 CF(-CF ーに帰属され 一)CF2 2 1 5 2 .6 0,N o .4( 2 0 0 3 ) 高分子論文集,Vol 固体 19F-MASNMRを用いたパーフルオロ高分子のキャラクタリゼーション CF3 1 0 0 2 0 4 ゆ 6 0 8 0 ・ 1 1 0 1 0 0 ・ 1 2 0 1 2 0 , ・ 1 4 0 1 3 0 1 6 0 ・ 1 4 0 1 8 0 2 0 0 C h e m i c a lS h i f t( C F C I ppm) F i g .1 3 . 1 9 F MAS s p e c t r u mo fu n i r r a d i a t e d TFE/PMVE. The s p e c t r u mwasa c q u i r e da t1 4 7o C . Peaksmarkedby # r 巴p r e s巴n ts p i n n i n gs i d eb a n d s .Sequenced i s t r i b u t i o n so ft h e CF2and-CFr e s o n a n c e shav巳 beenexpanded( C o p y r i g h t p e r m i s s i o nfromt h eAmericanChemicalS o c i e t y ) 3 4 ) . :~ノ l r . t . 1 3 0 ノ 1 1 2 0 1 1 0 1 0 0 9 0 dc(ppm) Fig, 1 5 . 1 9 F→!3C CPIMAS s p e c t r u mo fap e r f l u o r o td i f e l a s t o m e r( K a l r e z )measureda tas p i nr a t eo f4kHza f e r e n ts e tt e m p e r a t u r e s up t o1 0 0O C 3 8 ), The c o n t a c tt i m e usedwas1 . 5ms, 一般に,エラストマーの固体 1 3 CN M Rは,その高い 分子運動性のために各種の相互作用が平均化され,比較 的容易に高分解能のスペクトルが得られる.また, MHz 領域の運動に敏感な“実験室系のスピン一格子緩和時間" . 2 0 4 0 曲 8 0 1 0 0 1 2 0 . 1 4 0 1 6 0 1 8 0 . 2 0 0 T1 の挙動は,溶液状態のそれによく似ていることが知 6 , )3 7 ) 筆者ら 3 8 )が最近測定した Kalrezの温度 られている 3 C h e m i c a lS h i f t( C F C J ) p p m ) r F i g .1 4 . 1 9 FMASs p e c t r u mo fTFE/PMVEi r r a d i a t e dby r a y so fu p t o4 . 2M G y 3 4 ) . The s p e c t r u m was a c q u i r e da t 1 4 7o C . New f u n c t i o n a l i t i e si n c 1ude (A) -CF20CF3,(B) -CF2-CF3,( C ) -CF20CF3,( D ) -CF2COOH,( E ) -CF2 C. E (-CF2-)CF2一 ,( F ) -CE . =CF2.Peaksmarkedby# r e p r e s e n ts p i n n i n gs i d ebands( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nfrom t h e AmericanChemicalS o c i e t y ) 可変 1 9 F →1 3 CCP/MASスベクトルを F i g .1 5に示す.運 動が相対的に拘束されている室温付近での CF2 およ び -CF一信号は幅広だが,温度上昇に伴って先鋭化す ることがわかる.これに対し CF3信号は室温ですでに先 鋭化しているが,温度上昇により消失する.交差分極法 3 Cを直接観測 ( D i r e c tP o l a r i z a t i o n ) すると, を用いずに 1 いずれの温度においてもすべての信号が観測できるが, 温度上昇に伴って広帯域のデカップリングが困難となっ る E の信号は,末端ラジカル CF2 CF2・と分子鎖中の C .FCF2 ラジカル -CF2 ーの再結合,すなわち Y 型の架 2卜 1 4 ) により生じたものであるとしている.これは, 九 1 橋1 1 三 i 0 的 仇 削 以上での FEp附l, 川 , ) , 川 1 ) り l川 却 3O 肌 た(スペクトルは示していない).したがって, C巴 基 の活発な分子運動により 1 9 F →1 3 Cの磁化移動と 1 9 Fのデ カップリングの効率がともに低下したことが信号消失の 原因と考えられる. 様に,室温において Kalrezのラジカル再結合反応が効 3 . 6 非品質パーフルオ口ポリマー 果的に進行することを示している.一方,照射量が 2 旭硝子(株)の CYTOPは,可視光線透過率 95%以 上 MGyを 超 え て も -CF2C , !( -CF2一)CF2 の G 値 が 変 わ と極めて高い透明性を有する非品質のパーフルオロ高分 らないことから,架橋の進行により分子鎖の運動性が低 子である.一般的なパーフルオロ高分子と異なり,特殊 下すると,架橋反応がそれ以上進行しないと述べている. な溶媒に溶解するため,スピンコートによる薄膜形成が 高分子論文集, Vol .6 0,No.4( 2 0 0 3 ) 1 5 3 龍野・安藤 -+CF2~γCF2 先 , . / ¥ . . . . F F' 、F ( c )c . 鼠 ・2( 25 , 35) ( b )ci~ト 1 (2R , 3R) Fg ~h F l Fa Fh F f , = eF I ~j '.$' ‘~屯~ 必1- 込-ぶーと:~ d } ; ふ ふ ふ ¥..../、 し 5 _ _, ¥ 1 l ' 品 、¥JC「 ( ' 、 /¥ O . yfFc Fe F i F I 一 C4..J d} ; ふ い h J て長 時 即 A 品 FaFb 八y¥* * . , ¥ / 、 剛1 即 J ; ι S . 川 , .‘ ( e )tram ト2( 2R , 35) ( d )t r a n s -1(25, 3R) -+C1 、 ーも C1剣山一 C2ーC3 一川 C4~ 、 ιFb Fa Fh F f Fe F iF I メy¥* *,¥人 C2 ー C 3 ァ Fg Fh F f Fe F IF j バF た 一cJ ¥/ 、 一 4ι-C1-C2 α 3 司一馴"叫 dC6'、 } ; ふ 旦 旦 5九A ¥. . . . ‘/、 5 . . . . . .' I I ¥ F d 柿川 川 川 , 川 川 , 、 川 杭 柿 訓 州 、 仇 , 叫 、 , 鳩 、 川 川爪 d 川 刷州品、机引,¥1、 川 ¥/、 ¥ ¥ ' μ β J乞 c ιFb FaFb F c Scheme1 . Mol巴c u l a rs t r u c t u r eo fCYTOP( a )a n di t spos s i b l es t e r e o i s o d )( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nf r o mt h eA m e r i c a nC h e m i c a lS o c i m e r s( b )~ ( e t y ) . 可能であり,屈折率や誘電率 も極めて低いことから,光 学 ・電子材料用途に応用が広がりつつある. Andoら列) は , 1 9 pMASお よ び 1 9 p→ 1 3CCP /MASNMRと量 子 化 学 計算を用いて, CYTOPの分子構造および分子運動性の 解析を行っている. CYTOPは主鎖に 2種類の不斉中心 ( C2と C3 ) をもつことから, Scheme1に 示 す よ う な 4 種のジアステレオマーが存在する.彼らは密度汎関数法 1 4 00C ( D e n s i t yP u n c t i o n a lTheory:DPT) を 用 い た モ デ ル 化 合 物の構造最適化により どのジアステレオマーにも 5員 環上にアキシアルと エクアトリアルのフ ッ素が存在し, これらが異なる化学シフトを有することを予測した.そ 1 0 0C 0 して,室温下の 1 9 pMASスペクトルにおいて, P aと Ph は異なる化学シフト (-75.1, 8 9 . 8ppm) をもっ 2本 1 08O C )よ の信号として分離して観測される上に ,Tg ( 800C り 20 C 以上の高温域では 5員環の分子運動 ( p u c k e r i n g) 0 のために,これらの 信号が融合することを 見いだした ( P i g . 16).彼らはさらに,数 10kHzオーダーの分子運 動に敏感な“回転系のスピンー格子様和時間 " Tl/が , 一様 にフルオロピニル系ポリマーの結晶成分に近い値を 示 すことから, CYTOPが完全な非 品質であり,室温下 で自発的な分子運動をしていないことを確認した.ま た 1 9 p →1 3 CCP /MASスペ ク トルで観測され る 2本の信 号に対して Fから Cへの磁化移動を動力学的に解析し 3 0C 0 1i ii 50 II -50 ii i1 i ii iI i -100 ・150 ! I ii i I ii ¥i -200 -250 -300 d F(ppm) F i g .1 6 . 1 9 FMASs p e c t r u mo fCYTOPmea s u r e db yd i r e c t 2p u l s e )a ts p i nr a t e so f13 .4 ~ 14.0kHz a t p o l a r i z a t i o n( π1 d i f f e r e n ts e tt e m p e r a t u r e sb e t w e e n 30o Ca n d1 4 0o C3 9 ). P e a k sshownw i t ha s t e r i s k sa r es p i n n i n gs i d e b a n d s( C o p y i c a lS o c i e t y ). r i g h tp e r m i s s i o nf r o mt h eA m e r i c a nCh巴m ( Pig.17),C-P間の有効結合距離や P-P聞のスピン拡 散の速度を求めている .その解析から 得られた結合距離 1 5 4 高分子論文集,Vol .6 0,N o .4( 2 0 0 3 ) 国体 "P-MASNMRを用いたパーフルオロ高分子のキャラクタリゼーション 。 7 0 2・ 同 言 S. 吾 団 . 側 、 ' ". . ' ' . ,. " . " . , . . . . . a . . . . . C. 一 .一 . ・ . 2 言醐 - . . . . . . . , . 。 0 • ' 0 m・f e . . ( m ・ } 印 刷 叫 " 2・ 00 • 。 旬 Con飾..tim ・ ら , (m・ } " ' 0 7 0 ・ 航1 0 宮 言 醐 d . 0o ・ 0 . 1 0. 2 0 . 3 COs' 祖国首 OA o . a 0. 1 0 . 7 0 . 1 。唱D.2 m・』加叫 0 . 3 0. 4 D . 5 0 . 6 ,(同} ・ f c 印 刷d 舗m 0 . 7 o . a F i g .1 7 . C o n t a c tt i m ed e p e n d e n c eo fs i g n a li n t e n s i t i e sf o rt h e19p→¥3CCP/MASe x p e r i 3 9 1 ;( a )t h ee v o l u t i o no ft h em a i n p e a k( 11 2ppm),( b )a ne x p a n s i o no f( a ) mento nCYTOP c )出ee v o l u t i o no ft h es u b p e a k( 9 3ppm),a n d( d )a ne x p a n s i o no f a tt h ei n i t i a ls t a g e,( ( c ) .Thef i t t e dc u r v e sb a s e do nd e n s i t ym a t r i xc a I cu l a t i o n sa r ea l s oi n c o 中o r a t e d( C o p y r i g h tp e r r n i s s i o nf r o mt h eA m e r i c a nC h e m i c a lS o c i e t y ) , . F は D円 計 算 の 結 果 と 一致するとともに,特定の C-P 問 (Scheme1の C, -p ,)の距離がほかの C-F閑距離よ りも有意に長く,しかもこのスピン系がほかのスピン系 から相対的に孤立している(空間的に離れている)こと を明らかにしている.このように非品質の物質において も,原子レベルの構造情報が得られることが固体 NMR 法の大きな利点、の 一つである. F i g .1 8には最近,筆者 B ) 43" c ら40)が測定した CYTOPの (A) 145"cおよび ( での I ' FMASスベクトルを示す.流動域に近い高温で のスベクトル (A) は,活発な分子運動により信号が先 鋭化されるため,より詳細な帰属が可能である. -122 ppm,一 175ppm, -181ppmの先鋭化した信号は,主 鎖に直接結合した F fと F,(Scheme1)に帰属されるが, これらは近接するフッ素をもたないため同種核聞の双極 子相互作用がより効果的に平均化されたためと考えられ る.高磁場側の 2本の R は , DFT法によるしゃへい定 数の計算結果39) によく対応しており,コンホメーショ fの化学 ンの異なる構造異性体に相当している.また F シフトも計算と 一致している.加えて, 145"cではこれ o 1 0 0 2 0 0 OF(ppm) F i g .1 8 . 1 9 pMASs p e c t r u mo fCYTOPm e a s u r e d(A)b y t r1 2p u l s e )a t1 4 5" C( c a l i b r a t e dt e m p e r a d i r e c tp o l a r i z a t i o n( t u r e ),a n d (B) b yd i 問 c tp o l a r i z a t i o nf o l l o w e db y TOSS C 柏 Thes p i n n i n gr a t ewas1 6k H z . p u l s es e q u e n c ea t4 3" らの信号の T l /がほかの信号の 3倍程度長いことを見い だした.これは p, やF fを含む 5員環の主鎖部分の分子 運動性が側鎖部分や主鎖のー CF,一部分よりもさらに拘 3 . 7 I~ ーフ'I-オ口イオノマー 束されていることを示しており, 5員環を有する CYTOP DuP o n t (株)の N a f i o nは,側鎖の末端に強酸性の SO , に特異的な挙動といえる. l6 0 ,No.4( 2 0 0 3 ) 高分子論文集, Vo. 基やその塩 (Na塩やむ塩)を有するパーフルオロ高分 1 5 5 龍野・安藤 -ra-L 一 , ‘ -- r a L 'H 一& z i - - E , ‘ , 一 vi-- ﹁ILl--et ζu ﹃ などについて,緩和時間 Tt,T1/ ,Tlを測定し,わず :: r 1414 1 . ノ IE- ( C F 0・cb?F ・ 0・C F 2 C F 2 S 0 3 CF3 から NMRによる研究が行われた. Boyleら4 1 )は,含水 + 塩 率を変化させた酸型の Nafion (Nafion-H) やその Fe3 二 6 τ一 t こ ・ 1 綱、 ﹁ ,.嶋田町 E E . 巧叫CFz-CF2-L6)n 'D 9 Fスベクトルを与えるため,早く くても解析に耐える 1 -VA2 E且 といわれている ) 1 Nafionはエタノールなどの極性溶媒 との親和性が高く,膨潤状態では高速 MAS法に頼らな v d isムii ご x 一 fu-・ -争よ 三 、-11 01l 団 ・ 1 3 C AE4 イオンクラスターを形成している F スとミクロ相分離し ; : ; l d CF2 連鎖の主鎖マトリック 間&・・‘﹄- の高い側鎖は極性の低い E 一 , ,-4eaLF られている.少量の溶媒を含む Nafionにおいて,極性 8FILl- ご ll v a - 子 (Table1 ) であり,代表的なイオン交換膜として知 F2 +:C かな含水によるイオンクラスター構造の形成が主鎖マト リックスの運動性を低下させることを報告した.これは 熱分析や動的粘弾性挙動からの結果4 2 ) とも一致してい る.また Schlickら州は 室温で溶媒を含む Nafion-Hと 高温で溶媒を含まない Nafion-Hの分子運動性を 1 9 F信号 の半値幅から評価している.溶媒がエタノールの場合, 膨j 閏に伴う分子運動によって室温でも 1 9 F信号が先鋭化 し,無溶媒のまま 172o cにした場合と同程度のスベク トル分解能を得ている.さらに Nafion-Hについて 1 9 F 信号の半値幅のアレニウスプロットから主鎖の動的活性 化エネルギーや α 分散(ガラス転移に相当)の温度を 2 ) と符合する結果を得ている.一方, Nafion 求め,熱分析4 のイオンクラスターの大きさは C-CF3 1i5.li0.ib l i o ld5.160ppdl F i g .1 9 . ( a )P u l s es e q u e n c ef o ro b t a i n i n gaJm o d u l a t e d p e c t r u m .( b )Darkl i n e :Jm o d u l a t e d1 9 F →¥3C 1 3 CCP/MASs p e c t r u mo fN a f i o n,o b t a i n e dw i t ht h ep u l s es e CPIMAS s q u e n c eshowni n( a ),a tt l = 3 . 5 7ms,w hichi s1 0 0t i m e st h e 9 i g r o t a t i o np e r i o dI . )CF2s i g n a l sa r ep o s i t i v e,CFandCF3s n a l sn e g a t i v e .L i g h tl i n e : unmodulated 1 9 F→¥3C CP/MAS s p e c t r u mo fN a f i o nshownf o rr e f e r e n c e,w i t ht h esam 巴 l i n 巴 b r o a d e n i n ga st h eJm o d u l a t e ds p e c t r u m( C o p y r i g h tp e r m i s s i o nfromt h eAmericanChemicalS o c i e t y ) 小角 X 線散乱や中性 子線回折などにより数 nm程度と見積もられ4川 ヘ 溶 媒 や対イオンに依存して変化することが知られている.最 新の固体 NMR手法が駆使されており,今後このような 近 , Meresiら4 6 )は,水あるいはエタノールを含浸させ 測定法が普及すれば,固体 NMRによるパーフルオロ高 た Nafion-Hの 1 9 FMASNMRを用いた 1 9 Fスピン拡散実 分子の分子構造解析はさらに発展すると期待される. 験を行い,主鎖ドメイン(ほぼ等量の結晶領域と非晶領 4 まとめ 域からなる)と側鎖ドメイン(運動性の高い非品領域か らなる)の大きさとその繰返し周期(ドメイン聞の間隔) 高い機能性を有する高分子材料として独自の位置を占 を数 nm程度と算定した.また,側鎖ドメインと,相対 めるパーフルオロ高分子を,固体高分解能 1 9 FMAS 的に運動性の低い主鎖ドメインの 2相モデルを仮定して 9 F → ¥ 3C CP /MASNMRi 去による構造解 NMR法 お よ び 1 解析を行い,乾燥状態と比較して水は側鎖ドメインのみ 析という観点から概説した.固体 NMRは,測定のため を膨潤させるが,エタノールは両ドメインを効果的に膨 の試料調製をほとんど必要とせず,国体状態でしかも非 潤させる,ただし,エタノール含有量 40%では,側鎖 破壊のまま観測できる優れた分光学的手段であり,パー ドメインの大きさが主鎖ドメインよりも 1桁大きいと述 フルオロ高分子材料の分子構造や分子運動性に関するさ 2 9 X eNMRの測定からも 2相モデルの べている.また 1 9 FMAS まざまな情報を得ることができる.実際に 1 妥当性を主張し, Nafionにおけるイオン伝導は側鎖ド NMR法から得られる解析結果は,ほかの構造解析手法 メインの高い分子運動性によって説明できるとしてい や物性測定による結果と一致する場合が多く,しかも分 る. 子レベル,原子レベルでの構造や運動性に関する詳細な 最後に, L i u ら1 9 )により測定された Nafionの 1 9 F →1 3 C 情報が得られる点で優れている.今後,ハードウエアと i g .1 9に示す. 19F-13Cスカラ CP/MASス ペ ク ト ル を F ソフトウエア両面での技術的な進展により,パーフルオ ー結合を考慮した周波数変調により, CF3と CFの信号 ロ高分子のキャラクタリゼーションにおける 1 9 FMAS が反転することを利用して NMR法の役割は,ますます大きくなると考えられる. 明解な信号帰属が行われて いる.彼らは固体 NMRの新しい測定法の開発を主眼と 文 しているので, Nafionの構造や物性に関する考察はな されていないが 1 9 Fのスピンロック強度を可変とする RampCPや多重パルスによる 1 9 Fデカップリングなど最 1 5 6 献 1 )里川孝臣編,“ふっ素樹脂ハンドブックペ日刊工業新聞社,東京 ( 19 9 0 ) 高分子論文集, Vol .60, N o .4( 2 0 0 3 ) 固体 1 9 F-MASNMRを 用 い た パ ー フ ル オ ロ 高 分 子 の キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 2 )R .K.H a r r i sa n dP .Jac k s o n,Chem.R e v .,91,1 4 2 7099¥) 3 )R .K .Ha 打 i s,S .A .C a r s s,R.D .Chambers,P .H o l s t e i n,A .P .Mi n dU .S c h e l e r,B u l l .Magn.R e s o n .,1 7,3 7( 19 9 5 ) n o j a,a r o g .Nuc / .M agn.R e s o n .S p e c t r o s c .,2 8,2 5 5( 1 9 9 6 ) 4 )J .M.M i l l e r,P a r r i s,G .A.M o n t i,a n dP .H o l s t e i n, “S o l i dS t a l eNMRo f 5 )R .K.H d s .,E l s e v i e rS c i e n c e( 19 9 8 ), P o l y m e r sぺ1.Andoa n dT.A s a k u r a,e p.2 5 3,p .6 6 7 6 )S.Ando,R .K.H a r r i s,a n dU l r i c hS c h e l e r,“F 1u o r i n e -1 9NMRo f u p p l e m e n to f S o l i d sC o n t a i n i n gB o t hF l u o r i n ea n d Hydrogen",S Encyc Io p e d i aNucl .M agn.R e s o n .,9( A d v a n c e si n NMR),J o h n o n s,C h i c h e s t e r,UK( 2 0 0 2 ),p p .531-550 W i l e y& S .A.Wind,a n dG .E .M a c i e l,J .Magn.Reson. ,7 0,3 5 5 7 )S .F .Dec,R ( 19 8 6 ) .A .F y f e,J .R .L y e l a,H .V a n n i,a n dC .S .Y a n 8 )W.W.F l e m i n g,C n o n i,Macromolecules,1 3,460( 1 9 8 0 ) 9 )A .T .Kre i n b r i n k,C .D .S a z a v a s k y,J .W.P y r z,D.G .A .N e l s o n, a n dR.S .Honkonen,J .Magn .R e s o n .,8 8,2 6 7( 1 9 9 0 ) n d .E n g .Chem.Prod .Re s .Dev . , 1 0 )G .H .Bowersa n dE .R .L o v e j o y,l 1 ,8 9( 19 6 2 ) 1 1 )E .R .L o v e j o y,M.I .B r o,a n dG .H .Bowers,J .App. lP o l y m .S c i ., 9,4 0 1( 19 6 5 ) . .T a b a t a,H .Kudoh,a n dT .S e g u c h i,R a d i a t .P h y s 1 2 )A .Oshima,Y 5,2 6 9( 1 9 9 5 ) Chem.,4 1 3 )Y .T a b a t a,A .Oshima,K .T a k a s h i k a,a n dT .S e g u c h i,R a d i αt .P h y s Chem.,4 8,5 6 3( 1 9 9 6 ) r o g .P o l y m .S c i .,2 5,1 0 1( 2 0 ) 1 4 )J .S .F o r s y t h ea n dD .1 .T .H i l l,P .Zhang,X.Zhong,a n dX.Zhu,R a d i a t .P h y s.Chem.,44, 1 5 )J .Sun,Y 6 5 5( 19 9 4 ) 1 6 )A .Oshima,S .I k e d a,T.S e g u c h i,a n dY .T a b a t a,R a d i a t .P h y s 7 9( 19 9 7 ) Chem.,49,2 u g i s a w a,A .Oshima,Y .T a b a t a,T .S e g u c h i,a n dT . 1 7 )E .K a t o h,H S a d i a t .P h y s .Chem.,5 4,1 6 5( 19 9 9 ) Yamazaki,R c h e 1 e r,Macromolecules,3 3,1 2 0( 2 0 0 0 ) 1 8 )B .F u c h sa n dU.S 1 9 )S .F .L i ua n dK.S c h m i d t R o h r,Macromolecules,3 4,8 4 1 6( 2 0 0 1 ) .S a v a g e,R .B .Timmons,a n d1 .W.L i n, “A d v a n c e sChem 2 0 )C.R . ",2 3 6,A m e r i c a nC h e m i c a lS o c i e t y,W a s h i n g t o n,DC( 1 9 9 3 ),P S er 7 4 5 2 1 )S .J .L imb ,D .J .E d e l l,E .F.G 1 e a s o n,a n dK .K.G l e a s o n,Plasma 1( ¥ 9 9 9 ) P o l y m .,4,2 .P h y s . Chem.B,1 0 1,6 8 3 9 2 2 )K .K .S .Laua n dK .K.G l e a s o n,J ( 19 9 7 ) 2 3 )A.B i e l e c k i,D .P .Burum,D .M.R i c e,a n dF .E .K a r a s z,Macro4,4820( 19 9 1 ) m o l e c u l e s,2 ∞ 目 .C l a u s s,a n dH.W.S p i e s s,M a c r o m o ! e c u ! e s, 2 4 )K.S c h m i d t R o h r,1 2 5,3 2 7 3( 1 9 9 2 ) .P h y s . Chem. B,1 0 2,5 9 7 7 2 5 )K .K .S .L a ua n dK .K .G l e a s o n,J ( 19 9 8 ) 2 6 )C .W.W i l s o n,よ P o l y m .S c i .,5 6,S1 6( ¥9 6 2 ) 2 7 )A.D .En g l i s ha n dO .T .G a r z a,Macromolec u l e s,1 2,3 5 1( ¥9 7 9 ) 2 8 )小 川 孝 生,実 桐 幸 男 , 米 森 重 明 , 旭 硝 子 研 究 報 告 , 4 0( 1 ) ,7 5 ( 1 9 9 0 ). u l l .Magn R e s o n .,1 9,5 2( 1 9 9 9 ) 2 9 )U .S c h e 1 e r,B 3 0 )J .S .F o r s y t h e,D .J .T .H i l l,S .M o h a j e r a n i,a n dA .K .W h i t t a k巴r , R a d i a t .P h y s .Chem.,6 0,439( 2 0 0 1 ) .G 1 e a s o n,D .J .T .H i l l,K .K .S .Lau,S .M o h a j e r a n i,a n dA 3 1 )K.K K .W h i t t a k e r,Nuc / .l n s t r u m .MethodsP h y s .R e s .,S e c t .B,1 8 5,8 3 ( 2 0 0 1 ) .Sun,F .Wang,a n dY .Zhang,J .A p p l .P o l y m .S c i ., 3 2 )X .Zhong,1 4 4,6 3 9( 1 9 9 2 ) le ,G .A.G e o r g e,D .J .H il 1,U .S c h e 1 e r,a n dA.K 3 3 )T .R .D a r g a v iI a c r o m o l e c u l e s,3 5,5 5 4 4( 2 0 0 2 ) W h i t t a k e r,M 3 4 )J .S.F o r s y t h e,D .J .T .H i l l,A .L .L o g o l h e t i s,T .S e g u c h i,a n dA K .W h i t t a k e r,Macromolecules,30,8 1 0 1( 19 9 7 ) 3 5 )V .A .L o v c h i k o v,V .P .S a s s,A .1 .K o n s h i n,I .M.D o l g o p ol 's k i i, a n dS .V .S o k o l o v,Vysokomo . lS o y e d .,B1 7,6 2 2( 19 7 5 ) 3 6 )R .D e j e a nd el aB a t i e,F .L a u p r e t r e,a n dL .M o n n e r i e,Macromolec u l e s,2 1,2 0 4 5( ¥9 8 8 ) .D e j e a nd el aB a t i e,F .L a u p r e t r e,a n dL .M o n n e r i e,Macromole3 7 )R 1,2 0 5 2( 1 9 8 8 ) c u l e s,2 t ob es u b m i t t e d ) 3 8 )H.T a t s u n oa n dS .Ando,( .H a r r i s,J .H i r s c h i n g e r,S .A .R e i n s b e r g,a n dU 3 9 )S . Ando,R.K S c h e l e r,Macromolecules,34,6 6( 2 0 0 1 ) 4 0 )H .T a t s u n oa n dS .Ando,( t ob es u b m i t t e d ) .J .M c B r i e r t y,a n dA .E i s e n b e r g,M a c r o m o l e c u l e s, 4 1 )N .G .B o y l e,V 1 6,8 0( 19 8 3 ) e r . ぺ A.EisenbergandH. L. Yeager,eds.,180, 4 2 )“ACSSymp. S Am巴r i c a nC h e m i c a lS o c i e t y,W a s h i n g t o n,DC( 19 8 2 ),p .7 9 e b e l,M.P i n e r i,a n dF .V o l i n o,M a c r o m o l e c u l e s, 4 3 )S .S c h l i c k,G.G 2 4,3 5 1 7( 19 9 1 ) 4 4 )P .A l d e b e r t,B.D r e y f u s,a n dM.P i n e r i,Mac r o m o l e c u l e s,1 9,2 6 5 1 ( 19 8 6 ) 4 5 )G .G e b e l,P .A 1 d e b e r t,a n dM.P i n e r i,M a c r o m o l e c u l e s,2 0,1 4 2 5 ( 19 8 7 ) .Wang,A .B a n d i s,P .T .I n g l e f i e l d,A .A .J o n e s,a n d 4 6 )G .M e r e s i,Y W.Y .Wen,Polymer ¥42,6 1 5 3( 2 0 0 1 ) 目 [ReviewA r t i c l e s ] C h a r a c t e r i z a t i o no fPerfluoropolymersUsingS o l i dS t a t et 9 F恥lASNMRSpectroscopy H i r o t oTATSUNO * IandS h i n j iANDO本 l * 'DepartmentofOrganicandPolymericM a t e r i a l s,TokyoI n s t i t u t eofTechnology ,(Ookayama ,Meguro-ku ,To 付o152-8552,Japan) P e r f l u o r o p o l y r n e r se x h i b i tv e r yu n i q u ep r o p e r t i e sando u t s t a n d i n gf u n c t i o n a l i t i e s,b u tt h ec h a r a c t e r i z a t i o ni sg e n e r a l l yd i f f i c u l tb e c a u s e o ft h e i ri n s o l u b i l i t yi no r g a n i cs o l v e n t sandt h e i rh i g hm e l t i n gt e r n p e r a t u r e s .1 9 Fr n a g i ca n g l es p i n n i n g(MAS)NMRh a sc o n s i d e r a b l ep o t e n t i a lf o rt h ec h a r a c t e r i z a t i o no fc h e r n i c a ls t r u c t u r e s,r n o r p h o l o g y,andr n o l e c u l a r l e v e lm o b i l i t yo fp e r f l u o r o p o l y r n e r si nt h 巴s o l i ds t a t e .The s t r o n gm a g n e t i cd i p o l emornentands u b s t a n t i a lr a n g eo fi s o t r o p i cc h e m i c a ls h i f t so f c o n s i d e r a b l eb e n e f i t sfromt h eh i g hn a t u r a labundance, f l u o r i n ec a nbeu t i l i z e db e c a u s et h 巴 t e c h n i c a lp r o b l e r n st h a th i n d巴r e dt h ea c q u i s i t i o no fh i g h r e s o l u t i o n1 9 Fs p e c t r aw i t he x c e l l e n tq u a l i t y have been o v e r c o r n e.I nt h i sa r t ic 1e,we reviewed s o l i ds t a t e1 9 F MAS NMR s t u d i e s on p o l y( t e t r a f l u o r o e t h y l e n e ) (P1下E, ) p o l y (t e t r a t l u o r o e t h y l e n e c o・h e x a f l u o r o p r o p y l e n e ) (FEP), p e r f l u o r o a l k o x yp o l y r n e r s (PFA), a p e r f l u o r o屯 l a s t o m e r( K a l r e z ), a p e r f l u o r o e r f l u o r o i o n o m e r( N a f i o n ),ands o r n ep e r t l u o r o p o l y r n e r sproduc巴dbyc h e m i c a lv a p o rd e p o s i t i o n and amorphousp o l y r n e r(CYTOP),ap s o r n 巴i r r a d i a t e dbyy r a yo re l e c t r o nb e a r n s . KEYWORDS P e r f l u o r o p o l y r n e r/F lu o r i n e 1 9/MAS/NMR/C h a r a c t e r i z a t i o n/Morphology/MolecularMotion/C h e r n i c a lS h i f t/Re l a x a t i o nP a r a r n e t e r/ ( R e c e i v e dD e c e r n b e r1 3,2 0 0 2 :AcceptedJ a n u a r y20,2 0 0 3 ) [KobunshiRonbunshu,6 0 ( 4 ),145-157( 2 0 0 3 ) ] 高 分 子 論 文 集,Vo l .60 ,N o.4( 2 0 0 3 ) 157