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景気循環論
景気循環論 vol.5 高度成長 :投資の二面性 小巻泰之 高度成長期(1955年から1973年までの約18年間 ) (背景) ・戦後復興 旺盛な需要(消費,住宅) vs 不足する供給力 →戦後インフレ 戦後インフレからの脱却→ 需要の減少(均衡財政) ・アメリカ中心の経済圏へ 巨大な市場 安価な原油(1バーレル2ドル程度) 高値での販売(1ドル360円固定相場) 高度成長期(1955年から1973年までの約18年間 ) 実質GDPの推移 14.0% 12.0% 後退期 実質GDP 10.0% 8.0% 6.0% 岩戸景気 4.0% 神武景気 いざなぎ景気 オリンピック景気 2.0% 0.0% ▲2.0% ▲4.0% 5501 5803 6201 6503 6901 7203 7601 7903 8301 8603 9001 9303 9701 200003 200401 200703 (四半期) (注)グラフは原系列GDPの前年同期比伸び率を、3期中心移動平均をとったもの 経済成長率が10%を下回ると不況と呼ばれた時期 実質GDPは「経済成長率」とも呼ばれる 景気の見方に注 目 (参考)景気の見方 景気局面の考え方 不況期 好況期 不況期 山 ● 景気の好況・不況時を区 分する判断の基準(経済 の水準) 谷 谷 ● ● 拡張期 後退期 拡張期 ミッチェルの2局面法:拡張期・後退期⇒変化を重視 (景気循環の判断) シュムペーターの2局面法:好況・不況⇒水準を重視 高度成長・前期の特徴 高度成長・前期の成長分解 20.00% 民間消費 民間投資 政府消費 政府投資 在庫品増加 外需 GDP 15.00% 10.00% 5.00% 0.00% 国際収支悪化に伴 い、金融引き締めへ 国際収支悪化に伴 い、金融引き締めへ 在庫調整で他の最 終需要は大きく落 ち込まず ▲5.00% ▲10.00% 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 (注)①輸出入には要素所得を含む ②数値は1934-36年基準と1965年基準を接続した系列により算出したもの (出所)大川一司「長期経済統計、『1.国民所得』より作成したもの ・消費の拡大:三種の神器(テレビ・冷蔵庫・洗濯機 ) ・設備投資の拡大 1962 1963 高度成長・前期の特徴 1) 神武景気(1954 年 12 月~1957 年 6 月) となべ底景気 (発端)世界の投資ブームに対応した輸出の増加 (波及過程)輸出⇒国内生産⇒設備投資⇒所得増⇒消費増加⇒輸入増加・物価上昇 設備投資の寄与度:1956 年 3.9%、1957 年 3.1% 消費:「三種の神器、テレビ・冷蔵庫・洗濯機」 (景気転換)物価上昇と輸入増加による国際収支悪化.固定相場制維持のための金融引き締め政策へ ⇒国内の生産設備能力が不十分であり、物価上昇を引き起こした (景気悪化後の状況)「ストック調整原理」の実現への懸念 ・ しかし、在庫調整にとどまり他の最終重要は大きく落ち込まなかった ・ 設備投資は生産技術高度化や、鉄鋼・石油などの新工場の付帯工事・生産力化に時間を要するものが主 体であったため、過剰化しなかった. 特徴 2) 岩戸景気(1958 年 6 月~1961 年 12 月) (発端)世界の経済の好転に対応した輸出の増加 1. 国際収支の天井 2. 投資の二面性 (波及過程)輸出⇒国内生産⇒設備投資⇒所得増⇒消費増加 設備投資の寄与度:1960 年 6.2%、1961 年 6.2% (特徴)「投資が投資を呼ぶ」,産業連関の緊密化 (持続要因)物価上昇や輸入の増加はみられず。岩戸景気は 42 カ月の持続的景気拡張 ① 投資の生産力効果の現れ:消費や輸出等需要へ対応。需給の均衡が崩れにくかった ② 貿易為替自由化による短期外資の流入 ③ 予防的な金融引き締め政策:1959 年 9 月準備預金制度、12 月公定歩合の引き上げ (景気転換)国際収支赤字、「国際収支改善対策(61/9 月)」から再び財政金融引締めへ 国際収支の天井 (原因) ・当時の日本は需要拡大(戦後復興) ・潜在成長力が大きくても国際収支に余力がない 国際競争力がなく輸出できない. 輸入は国内需要で伸びる ⇒輸入代金を支払えない でも,固定為替相場を維持しないとダメ! (波及過程)国内景気拡大⇒輸入の増加⇒外貨準備縮小・ 仕方なく,景気を悪化させることに(金融引締政策) ドル買い円売り圧力⇒ドル高⇒・・・・ 実際の成長が潜在成長力よりも低く押さえられてしまうこと 投資の二面性 直近の動き 設備投資は途中 で中止できない ストックは、その 後増加へ 需要の将来予測 設備投資計画 適正な投資水準 見込み違い 設備投資 = 資本ストック 過剰な投資水準 ・投資はフロー,需要(需要効果) ・積み上がれば資本ストックへ.ストックは供給能力(生産力効果) (問題点)投資決定段階と完工後における経済環境の違い(ラグ)→ストック調整(モデル) 高度成長・前期の特徴(まとめ) 高度成長期では,戦争により生産設備などが不足 だから,当初は輸入が増えた 最新設備の導入により輸出の競争力も回復.輸出拡大 ⇒国内の儲け拡大 高度成長・後期の特徴 いざなぎ景気の成長分解 16.00% 3Cブーム 14.00% なだらか調整 12.00% 10.00% 8.00% 6.00% 4.00% 2.00% 0.00% 財政・外需が牽引 ⇒設備投資へ ▲2.00% 外需 政府投資 民間投資 GDP 国際収支悪化に伴 い、金融引き締めへ 40年不況 在庫品増加 政府消費 民間消費 ▲4.00% 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 ・消費の拡大:3Cブーム(自動車,クーラー,カラーTV ) ・更なる投資の拡大:産業連関の高まり 1971 まとめ:高度成長の特徴 (契機)輸出の増加 (波及過程)輸出⇒国内生産⇒設備投資⇒所得増⇒消費増加 (特徴)投資ブームと資本蓄積:供給能力の向上 (持続要因)投資の生産力効果の現れから,物価上昇や輸入 の増加はみられず(国際収支の天井の克服) でも,注目して欲しい・・・ 景気拡張の契機は,全て「輸出」です どこへ..「アメリカ」です. また,国際競争力が付いてきたのに,固定為替相場 さらに,「安い原油」,,当時:1バレル=2ドル程度 次回の講義予定 次回は, vol.6 証券不況 を検討します.