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Vol.6 2015年4月
参加型福祉研究センター情報紙「オプティマム」 optimum 「 市 民 が つくる 公 共 」 コミュ ニ テ ィ・ オ プ テ ィマ ム 福 祉 を 地 域にひろげる オプティマム 参加型福祉研究センター 〒 231-0006 横浜市中区南仲通 4-39 石橋ビル4F 参加型システム研究所内 「2025 年問題」を解決するのはいったい誰なのか? 参加型福祉研究センター共同代表 荻原妙子 <特集>参加型福祉まちづくりフォーラム 2014 参加型福祉研究センターは、2015 年 3 月 28 日横浜情報文化センターホールにおいて、 参加型福祉まちづくりフォーラム 2014「市民が作るオルタナティブな地域包括ケアシステ ムの形成に向けて」を開催した。 社会的セーフティネット(日本型社会保障)が ほころびていく 日本社会のセーフティネットにほころびが目立つ。戦後 の経済成長に支えられてきた公的社会保障制度、家族(教 育)、会社(雇用)といった社会経済環境は、すでに経済 成長が停滞した 90 年代以降大きく変わってきている。今 後さらに顕在化するのが《超少子・高齢、人口減少社会》 におきる様々な課題だ。高齢化とともに高まる医療 ・ 介護 のニーズを人口減少社会の中でどう支えていくのか。団塊 の世代 800 万人超が 75 歳以上になることから生じるリ スクの増大による 2025 年問題を解決するために、国は地 域包括ケアシステムを推進しようとしている。 しかし、地域包括ケアシステムの実現に向けては、医療 と介護の一体改革、 制度の持続可能性を担保するとして「公 助」 「共助」の縮小と「自助」「互助」への転換、フォーマ ル ・ インフォーマルを超えて多種の地域資源のマネジメン ト、増大するサービス供給量などへの対応など、すでに多 くの課題が指摘されている。制度からはこぼれ落ちる個別 ニーズが必ず出てくる。ニーズの当事者で ある生活者・市民にとって「私に」必 要な包括ケアシステムとは何か。そして いったいだれが必要な地域包括ケアを支 えるのか。夢や願望ではなく、公的制度の大転換に向き合 うのは誰か。 2025 年問題を解決するのはいったい誰なのか? 《超少子・高齢、人口減少社会》を豊かに生ききるため には、新たな社会的セーフティネットとして「地域のつな がり、地域にある関係性」を強めていくことが求められる。 そして一人一人の「私」に必要な包括ケアは、 「目の前に あるニーズに応えていきたい」とチャレンジしてきた参加 型福祉の 30 有余年の実績(人 ・ ノウハウ)をこそ基にし たい。生活者・市民が協同し、市民資本を拠出し合ってつ くる市民福祉社会の実現のほかに手段はないのではないだ ろうか。セーフティネットを編み上げるのは、当事者とし ての生活者 ・ 市民の協同にほかならない。 参加型福祉研究センターでは 1 年間の活動のまとめとして、 「参 加 型 福 祉 まち づくりフォ ー ラ ム 2014」 を、 《2025 年 に 向 け た 市 民がつくるオルタナティブな地域包括ケアシステムの形成》 をテーマとして開催した。3 時間に及ぶフォーラムで「2025 年問題を解決するのは一体誰なのか?」の答えを参加者お のおのが手にしたのではないだろうか。 「オプティマム」VOL.6 目次 オルタナティブ eye 「参加型福祉まちづくりフォーラム 2014」から 2ー3 「基本ビジョン」~ 2025 年を見据えた参加型福祉戦略~・・・・・・・・・・・・・・・・ 4-5 地域活動情報 NPO 法人 W.Co サポート横須賀がつくった小規模多機能居宅介護施設・・・・・・・・・・・・・・・ 6- 7 講座・研修案内 スキルアップ研修、「共育塾」リーダー講座・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 「オプティマム」vol.6 1 近未来の社会を展望する オルタナティブ eye 参加型福祉まちづくりフォーラム 2014 「市民がつくるオルタナティブな地域包括ケアシステム」 参加型福祉まちづくりフォーラムプログラム (2015 年3月 28 日) 基本報告:オルタナティブな地域包括ケアシステム研究会の報告~基本ビジョンの共有~ 五十嵐仁美氏 ( 研究会共同代表、生活クラブ生協神奈川・理事長、) 基調講演:社会保障制度改革の背景と地域包括ケアシステムの課題 香取照幸氏 ( 厚生労働省 年金局長 ) トークセッション:市民がつくるオルタナティブな地域包括ケアシステムのあり方を考える 中島 修氏(文京学院大学准教授) 川名佐貴子氏(「シルバー新報」、「月間ケアマネジメント」編集長) 桜井 薫氏(さがみ生活クラブ理事長) 小川泰子氏(( 社福)いきいき福祉会専務理事) コメンテーター:香取照幸氏 コーディネーター:荻原妙子 ( 参加型福祉研究センター共同代表 ) 参加型福祉研究センター1年の活動報告 冒頭、生活クラブ生協理事長で「オルタナティブな地域包 に対応する「伴走型の支援」を欠くことはできず、地域包括 括ケアシステム研究会」( 以下、研究会 ) 共同代表の五十嵐仁 ケアシステムは介護保険制度の枠内では完結しない―そのモ 美さんから研究会報告書ー 2025 年を見据えた参加型福祉戦 デルの一つは小規模多機能居宅介護施設だと語った。 略「基本ビジョン」が報告された。この研究会は、 《地域に住 続いて香取さんは、 「一人ひとりの利用者の状態に合わせて行 み暮らす人々が当事者となって 2025 年モデルを描く》ことを うケアカンファレンス・チーム会議は、多職種協働 ・ マネジメント 目的に、生活クラブ生協と ( 社福 ) いきいき福祉会が共同研究 が重要。それは野球型か、サッカー型か、 どちらに似ていますか?」 (2014 年 8 月 ~2015 年 3 月:10 回) 。 を行ってきた。 と会場に問うた。選手の専門性が固定化している野球に対し、 ※ 「基本ビジョン」 は本紙 4 ~ 5 pの 「基本ビジョン (概要) 」 を参照ください。 サッカーではピッチにたつ選手の個々が判断する。サッカー 2015 年度は基本ビジョンを基に、生活クラブ運動グループ のように、行動の予後の予測、目標の共有、言語の共通化が、 諸団体・組織による議論の共有・合意づくりと、具体化に向 地域包括ケアシステム実現には必要なのだと強調した。 けた人材育成、W.Co 形成等の体制・システム・事業モデルの トークセッション 検討に入る。 ここからセッションに入る。文京学院大准 地域包括ケアシステムは地域づくり 教授の中島修さんから、生協型・W.Co 型 続いて、“ 介護保険の鉄人 ” の異名をもつ には生活支援サービスの先進事例や実績が 厚労省年金局長の香取照幸さんの基調講演 あるのが強み。柔軟に動ける生協・W.Co は地域包括ケアに適 「社会保障制度改革の背景と地域包括ケアシ しているとエールが送られた。 ステムの課題」 、まず情勢分析から始まった ( 図) 。高齢化が進 要介護者は「お客様化」 、行政は「市民参加」に無頓着 む首都圏。2040 年までに神奈川では 75 歳以上人口が 2 倍に シルバー新報編集長の川名佐貴子さんは、 「みんなが前向き なる。高齢者の単身世帯、夫婦のみ世帯が全世帯の 3 割に、 に理想に向かう時、ちょっと後ろ向きの意見も」と、エッジの 認知症高齢者は 345 万人から 470 万に増大する。高齢人口 効いたスピーチになった。デイサービスは今や 4 万を超えコ は増大していくが支える人口は減少する構造が続く。香取さ ンビニより多い状態となった。利用者獲得のために、要介護 んは、人を真ん中に切れ目ないケアをつくる包括ケアシステム 者は「ご利用者様」となり、アジアンリゾート風、ジャグジー は地域づくりだという。日常生活圏で介護 + 医療 + 保健 + 福 祉 + 居住などの多職種 間の協働・連携による 「チームアプローチ」と、 付、クルーズ風などのデイがお客を呼び込む現実をどうとらえ るか?サービスを使う権利意識が増し供給が需要を生み、共 人口大変動期を迎える日本 地方 中核都市 益という意識が薄くなっているのではな 大都市 いか。サービスが多様化すればさらに利 1.急速な「高齢化」 ・都市部を中心に、高齢者が急増 する 要介護者の状態の変化 用が目的化し、 「もっとサービスを使お 2.「人口急減社会」の出現 ・地方を中心に、人口が急減する 3.「単身・孤立化」の深刻化 ・地方、都市部を問わず、社会的・経済的に孤立化した人が 増える 2 2 「オプティマム」vol.6 図 オルタナティブ eye 参加型福祉まちづくりフォーラム 2014 う」という人が増えるだろう。一方予防給付が地域支援事業 生活に必要な多業種 152 団体が参加してい に移行する自治体はまだノーアイディア る。2014 年度オルタナティブな地域包括ケ だ。市民参加のモチベーションにも無頓 アシステム研究会にオブザーバー参加し、サービスの担い手 着と指摘した。 として W.Co 形成を話し合ってきた。組織の力を駆使しないと 市民の参加によって たすけあうまちづくりにつなげる さがみ生活クラブ理事長桜井薫さんは、生活クラブの自治 組織 ( コモンズ ) の運営委員会を中心に、 組合員が自己決定し、 福祉拠点生活リハビリクラブを建設した経験を話した。おお ぜいの組合員の参加・当事者性を引出し、100 人以上の組合 員に「どんな拠点にしたい?一緒に働きませんか?」と話し合 う中から、サービスの担い手として決意する人が出てきたとい う。建設委員会で構想づくりと物件探しをやり切り、市場化す るサービスの多様化を、市民の参加によって「たすけあうまち づくり」に結びつける意味を発見、働くニーズの掘り起こしに もつながることを実感した、と結んだ。新たな参加と協同を生 み出したさがみ生活クラブに会場から温かい拍手が送られた。 地域での事業連携が参加型福祉の真の力に 最後のスピーカーは研究会共同代表でもあるいきいき福祉 会専務の小川泰子さん。神奈川の生活クラブグループの福 祉事業は 390 か所に広がっている、基本ビジョンで想定した 130 の W.Co 形成は可能な数字だ。会議だけの連携では地域 の力とすることはできず、地域での事業連携が真の力となるは ずと、参加型福祉の伸びしろを強調した。 会場から 超少子高齢社会は支えられない。組織の合力を提案していく。 」 と連携の意思を表明した。 2つのワーキングチームより また研究会では、平塚、川崎の二つのワーキングチーム(WT ) を形成し、W.Co や組合員の現状、ニーズ、行政計画、地域 資源等を調査し、今後の具体化に向けた連携を展望しつつ、 検討を行ってきた。君島湘南生活クラブ理事長は、 「平塚で検 討している新規デポー建設を機会に、さまざまな機能を持っ た地域の拠点としたい。 」また川崎 WT の大久保かわさき生活 クラブ理事長は、 「調査により、バスの本数が減っている、空 き家が増えているなどいろんなところがみえてきた。世代を超 えて集える居場所・たまり場が必要。そんな活動が、結果的 にオルタナティブな地域包括ケアシステムにつながると思った。 」 非営利・協同の連帯でこそ実現する セッションの最後にコメンテーターの香取さんから、 「地域 の課題解決のために、行政 ( パブリックセクター ) に提案を受 け止めさせるには活動の実績をバックにした発言力をもつこと が大事だ。 「官と民」 と考えるのではなく、パブリックとして 公も市民も同じ立場であることを意識することでうまくいくの ではないか。それが非営利・協同セクターが民間事業者とは 違うところだ」と、今後の非営利・協同セクターに対する期待 1980 年代、生活クラブは、福祉専門生協 ( 福祉クラブ ) の設立、ワーカーズ・コレク ティブ ( 以下 W.Co) による参加型福祉、生 協初の特養建設の 3 つの大テーマを掲げ た。福祉クラブ生協の村上芳子理事長は会場から、 「福祉クラ ブ生協は地域のニーズに応え、組合員が W.Co を作り地域を 支え、現在 107 の W.Co がある。今後は、サービスの地域格 差の解消、 医療生協との連携を深めていく。地域で W.Co のコー ディネーターが、18 業種のサービスをつなぎ、一人ひとりの 組合員を支えていく」 と抱負を語った。続いて会場発言として、 神奈川 W.Co 連合会豊永眞知子理事長が、 「W.Co 連合会には、 が述べられた。 トークセッションのまとめとして、ケアの市場化 ・ 顧客化を 牽制するのは非営利事業。揺らぐ公的セクターに異議申し立 てで牽制できるのも非営利セクターではないか。参加型福祉 30 年で培った、地域での支え合いによって生活の質を獲得す るコミュニティ・オプティマム福祉の実践力は強まっている。 地域拠点の創出、自前の医療と看護など新たな取り組みは、 非営利・協同の連帯でこそ、実現する。改めて地域の参加型 福祉のネットワークをつくる生活者・市民の覚悟が問われてい ることを共有し、参加型福祉研究センターから 2014 年度の 活動を報告した後、フォーラムを終了した。 (荻原妙子) 「オプティマム」vol.6 3 オルタナティブな地域包括ケアシステム研究会報告書より 2025 年を見据えた参加型福祉「基本ビジョン」( 概要 ) 「2025 年問題」を解決する主人公はいったい誰なのか? それは当事者としての私たち生活者・市民にほかならない ・・・・ そもそもの問題意識 2010 年から 2025 年までのわずか 15 年間に 800 万人が減少するという「人口減少」 、1 人の高齢者に対して 1.9 人の 現役世代という比率になるという「人口構造の変化」 、高齢者世帯の半分以上になると予測される高齢者の単身世帯、夫婦 のみ世帯の増大、非正規雇用労働者の増加も、 「2025 年問題」の大きな要因となっています。 「2025 年問題」をターゲットに、国が進めようとしている地域包括ケアシステムは、医療や介護のみならず、福祉サー ビスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常生活の場 ( 日常生活圏域 ) で適切に提供できるような地域での体制を整備 しようとしています。しかし今後爆発的に増えていくことが予測される生活支援サービスニーズに対応するための供給体 制をどうつくろうとしているのか、その実現性は極めて不透明です。 また、医療制度改革により、入院日数の短縮化が進み、医療ケアの必要な人たちが地域に戻されてきています。高齢社 会は多死 ・ 多病の社会でもあり、介護と医療の連携体制の整備も喫緊の課題となっています。 参加型福祉の実績は? 私たち、生活クラブ運動グループがこの 30 年来積み重 3.「ケアの自給圏」という共通の目標と計画をもって地 域で連携し、問題解決を進めよう! は約 50 億円です。そのうち、 福祉クラブ生協や地域の W.Co 手で生み出していくために共通の目標と計画をもって地域 ねてきた参加型福祉の取り組みの年間事業高 (2013 年度 ) 地域に必要な機能・しくみや共同施設を生活者 ・ 市民の が担う自主事業 ( 公的制度外の事業)は以下のとおりです。 で連携し参加型で問題解決を進めましょう。 生活クラブ運動グループ団体の生活支援サービス ( 単位 : 円 ) 家事介護サービス 食事サービス 移動サービス 居場所 福祉用具 その他 計 181,067,352 387,201,184 146,657,261 2,001,000 14,454,349 28,232,000 979,064,146 一方、生活クラブ生協組合員は、10 年前には 35 歳か ら 50 歳が組合員の中心層でしたが、現在の中心は 50 歳 台から 60 歳台。助け合える関係性を広げていくことがま すます重要になっています。 そのためにも、生活クラブ運動グループの中でも同じ地域 の中で日常的な情報共有にとどまらない、地域課題の解決 へ向けたヨコのつながりによる検討や活動が求められます。 オルタナティブな地域包括ケアシステム形成に 向けた基本ビジョン 1.国や行政が主導する公共政策 ( 制度・政策 ) に対する 生活者 ・ 市民の意識転換を進めよう! 2025 年を見据えた 3 つの参加型福祉戦略 1.戦略テーマ1/生活者・市民である組合員参加の拡大 ビジョン ~生活者・市民である組合員の参加拡大によって、地域の ケア力を高め、新たな機能・しくみづくりを進める~ ●これまで培ってきた実践やノウハウを地域に拓き、市民 同士のたすけあいを基盤とした「オルタナティブな地域包 括ケアシステム形成」につなげていきましょう。 ●生活者 ・ 市民が自らの個人資源やコミュニティ資源を持 ち寄ることで、ケアを必要とする人々を支えたすけあう地 域のケア力を高めていきましょう。 ●生活者 ・ 市民である組合員をコアとして、W.Co、関係 当事者の主体的な参画により民主的に活動を進め、有用な 地域資源としての価値を高めていきましょう。 2.戦略テーマ2/新たな事業展開ビジョン ~オルタナティブな地域包括ケアシステムの形成に向けた 新たな地域拠点の創出~ 市民の参加と協同で公共を「つくり・かえる」活動を通 1)オルタナティブな地域包括ケアシステム形成の土台で あるコミ・オプ福祉の地域拠点をつくる の基本ビジョンといえるものです。 小規模多機能居宅介護やグループホームなどの制度事業と じて、社会の公正を実現していくことがこれからの私たち 市民事業による多様な生活支援サービス事業はもとより、 2.2025 年を見据え、地域に必要な機能・しくみや共同 施設を生活者・市民の手で生み出そう! の連携を図りつつ、市民参加やコミュニティワークの拠点とし 民が自らその基盤となる機能やしくみをつくっていくこと。 たすけあいを基盤に個別多様な生活ニーズに向き合ってき オルタナティブな地域包括ケアシステムとは、生活者 ・ 市 4 「オプティマム」vol.6 ての特色を持つ新たな地域拠点を創出していきましょう。 2)W.Co による多様な市民事業の展開とネットワーク オルタナティブな地域包括ケアシステム研究会報告書より 2025 年を見据えた参加型福祉「基本ビジョン」(概要) た W.Co による多様な生活支援サービスを創出し、連携を 拡げていきましょう。 リードしていきます (2)オルタナティブなケアマネジメントモデルを構築し、 3)新たな事業展開ビジョンにおける基本単位エリア 基礎自治体の「介護保険事業計画」をはじめとする施策に ~ 4 中学校区を基本として検討を進めます。 (3 ~ 4 中学 生活者・市民の立場でサービスのあり方や制度を検証し、 新たな事業展開ビジョンにおける基本単位エリアは、3 校区=人口 75,000 ~ 100,000 人、半径 3km ~ 4km) 4)「介護と医療の連携」に向けた新たなチャレンジ 運動グループの連携によって、訪問看護事業を自前化し ていくことを中心に検討を深めていきます。 5)シミュレーションに基づく 2025 年までの仮説モデル ①新たな地域拠点は、生活クラブ運動グループの基盤が あるエリアを中心に 90 ヶ所の創出が想定されます。 ②新たな W.Co 形成については、地域拠点の創出と合わせ て高齢化伸長率 120%増を踏まえ、家事介護サービスを中 心とする 130W.Co の新たな形成が想定されます。 ③訪問介護事業所については、基礎自治体単位、政令市行 政区単位に各 1 ヶ所の展開とすると 40 ヶ所の創出が想定 されます。 ④上記の事業仮説モデルに関しては、2015 年度に設置が 予定されている研究プロジェクトをはじめ、多くの関係者 との議論と検討を深めていきます。 戦略テーマ3/ 2025 年を見据えたコミュニティ・オプ ティマム福祉の拡充ビジョン ●セクター論としてのコミュニティ・オプティマム福祉の 対する発言を強める 生活者・市民の声を制度・政策につないでいきます。 (3)基礎自治体・行政区ごとにオルタナティブな地域包 括ケアシステム形成に向けた新たなコーディネートの仕組 み・機能を創出する 社会経済連携の促進 「社会経済連携」とは、 「社会的な目的を持ち」、同時に「労 働者と生産者と消費者との間に協同と連帯の関係を持ち」、 「民主主義と自主管理がある」ことを特徴とし、問題解決 のために法人形態を問わず、事業を含む多種多様な主体間 の連携を意味します。 さらにオルタナティブな地域包括ケアシステムの形成に あたっては、医療との連携や「住まい」問題へのチャレン ジは避けて通れない課題となっています。 それらの分野も含めて、社会経済連携の促進は、オルタ ナティブな地域包括ケアシステム形成に向け、ますます欠く ことのできない重要な役割を担っていくことになります。 今後の進め方 限界を克服する 1.生活クラブ運動グループ諸団体・組織による議論の共 有と合意づくり とを支える豊かな地域社会づくりを目的とするコミュニ ループ諸団体・組織による検討を深め、合意づくりと準備 「参加型福祉」を基底としたコミュニティ・オプティマ 2.オルタナティブな地域包括ケアシステム形成の具体化 に向けた検討を深める 誰もが住みなれた地域で「私が私らしく住み続ける」こ 本研究会報告を踏まえ、2015 年度は生活クラブ運動グ ティ・オプティマム福祉がますます際立っていきます。 を進めていきましょう。 ム福祉のめざすべき姿は、法制度の転換などに左右される ことなく、制度事業をも包み込み、文字通り、 「地域に最 適な生活条件」を生み出すことです。 ●コミュニティ・オプティマム福祉を市民がつくるオルタ ナティブな地域包括ケアシステムの中心的事業・活動と位 置付ける (1)コミュニティ・オプティマム福祉事業・活動の多様 な創出と開発を強める 地域に必要とされるコミュニティ・オプティマム福祉事 業・活動を多様に創出、開発を通じて、例えば介護保険給 付から外れる要支援 1・2 の高齢者をはじめとして、ケア を必要とする人々に対する事業・活動の体制づくりなどを ( 生活クラブ、神奈川 W.Co 連合会、いきいき福祉会の三 者による共同研究のためのプロジェクトを設置 ) 1)生活クラブ運動グループ各団体・組織による検討経過、 準備状況・合意づくりの共有 2)生活クラブ運動グループ間の組織間調整 3)オルタナティブな地域包括ケアシステム形成の具体化 を促進するための、人材育成や W.Co 形成をはじめとする 体制・システムや事業モデルの検討 4)社会経済連携の促進に向けた検討 ■「オルタナティブな地域包括ケアシステム研究会報告書」 ( A 4 版 73 ページ ) をご覧になりたい方は、下記へお問合 せください。 参加型システム研究所 Tel045-222-8720 Fax045-222-8721 「オプティマム」vol.6 5 神奈川における 地域活動情報 W.Co がつくった 小規模多機能型居宅介護事業所第 1 号 「サポート横須賀くごう」 ※ W.Co:ワーカーズ・コレクティブの略 NPO 法人 W.Co サポート横 のみでは事業展開が厳しくなるとの認識があった。「訪 子育てから高齢者まで、多様 れらの事業拠点を集中し、W.Co にとってもメンバーが 須 賀 は 1996 年 の 設 立 以 来、 なニーズに即した事業活動を 展開している。コンセプトは 「我が家で暮らし続けたい思 いを支援するため、利用者 の あ り の ま ま を 受 け 入 れ、 寄り添うケアを大切に」。 ごう サポート横須賀く 1999 年、介護保険制度 問」と並ぶもう 1 つの柱となるような事業の必要性、そ 集えるような箱モノが欲しいという問題意識や希望も明 らかになった。もう 1 つの柱としての小規模多機能型居 宅介護事業への取り組みの可能性が見えてきた。 情報をキャッチし、行動に移す力 そのような背景の中で、2014 年度の横須賀市の「小 導入以前から特定非営利活動法人 規模多機能型居宅介護の建設補助金申請の募集」をきっ 訪問介護事業、精神障害者ホームヘルプ事業と次々に事 事業へのチャレンジへの大きな一歩を踏み出した。8 月 を取得し、 事業を行っている。その後、 居宅介護支援事業、 業を拡大してきた。また、赤ちゃんからお年寄りまで、 多様な困りごとに対応するコミュニティ事業 ( 自主事業 ) への取り組みやミニデイ、講座開催なども行う広場事業 ではボランティアを中心に運営し、地域に開かれた参加 型福祉の拠点としての機能も高めている。2009 年には 認知症対応型デイサービスも開始し、利用者の思いを大 切にした寄り添うケアの実践を広げている。横須賀市か ら「ファミリーサポートセンター事業 ※1 」の委託も受け た。2015 年 2 月 1 日には新たな事業として小規模多機 能型居宅介護「サポート横須賀くごう」を開設。このよ うな多様な事業展開を精力的に進める背景にはどのよう かけに、サポート横須賀での小規模多機能型居宅介護 の募集から 10 月末まで申請締切の短期間に建設土地探 し、建物設計、資金調達と申請に必要な全ての準備を進 めた。土地の購入、建物建設にかかわる資金の一部は銀 行からの融資を受けたものの、会員に借り入れを呼びか けて 40 名程から賛同を得ることができた。中心となっ てこの新たな事業開設の準備を進めてきた先岡麻子さん ( ケアマネジャー ) は、「申請締切まで 2 か月しかなく、 厳しい条件はあったけど、横須賀市からの 3,000 万円の 補助があることがこの事業を決めた後押しになった」と 振り返る。 これだけのスピード感を持って対応できたのには、時 な問題意識があったのか? 代の先を読む先見性と、制度情報をキャッチしてそれを もう一つの事業の柱が必要と ・・・ ンバーが何年にもわたって議論を積み重ねて物事を決定 NPO 法人 W.Co サポート横須賀では、かねてより 10 年後を見据えてどのような事業があったらいいかの議論 を始めていた。監査から中・長期計画を持つ必要性につ いて指摘を受けていたこともあり、2011 年には特別プ 活用するだけの力を感じる。次なる事業展開に向けてメ する民主的な運営 を続けてきたから こそであろう。 ロジェクトを立ち上げて、メンバーの様々な思いを反映 させた中・長期計画の策定に取り組んだ。設立以来、 「訪 問」事業を中心にして、さまざまに多様に事業展開し てきたが、 制度改定も予測される中、 将来的には「訪問」 ※ファミリーサポートセンター事業:子育ての「援 助を受けたい人」と「援助したい人」を結ぶ有償ボ ランティア制による会員組織。保育施設等への送迎、 開始時間前・帰宅後の子ども預かりなどが中心。 6 「オプティマム」vol.6 管理者の松浦里香さん 明るい室内 ( 右 ) と先岡麻子さん W.Co がつくった小規模多機能型居宅介護事業所「サポート横須賀くごう」 で前向きに捉えている。これまで地域の中で事業拡大に オープンしたサポート横須賀くごう 小規模多機能型居宅介護「サポート横須賀くごう」は 登録定員 24 人、通い 12 人、宿泊 5 人の定員で、通い を中心に利用者の様子や希望に応じて宿泊、訪問サービ スを組み合わせて「自宅での生活の継続」を支援してい る。「できることは利用者ご自身で」を実践し、時には 利用者が夕食づくりのためエプロンをつけてキッチンに 立つこともある。開設から 1 か月が経過し、 利用者は 3 人。 初めての宿泊対応というチャレンジに対しても、他施設 での経験者がいたことも大きな支えになって順調に進ん でいる。また、地域に新たな事業 取り組むことで、子育てから高齢者まで様々な課題に寄 り添ったケアを展開して きたサポート横須賀。新 たなチャレンジとして、 小規模多機能型居宅介護 というもう1つの柱を据 えて「自宅での暮らしを 継続するため」の支援 を広げていくことに サポート横須賀本部 ( 大津 今後も期待をしたい。 ) ここ では地域に開放した「ひろ ば」も実施 (城田喜子) を生み出したことをきっかけに、 30 代から 70 代と多世代にわた るスタッフが新しい仲間として加 わったことも頼もしい。一方で持 続的な W.Co を追求する上での課 題もある。 泊まれます W.Co のあり方・働き方について話合う 事業が拡大し W.Co が大きくなるにつれ、新たに参加 したメンバーとこれまでサポート横須賀を形作ってきた メンバーとの間には、W.Co が果たす役割や分配金の考 え方などについてどうしてもギャップが生まれる。W.Co だからこうあるべきというこれまでの領域・観念に捉わ れず、新たな若い仲間と共に、意見を出し合いながら自 らの働く場の環境整備のために環境改善委員会をつく り、納得のいく解決ができるよう話合いを続けている。 メンバーが働き続けられるような W.Co のあり方を模索 し、合意を高めて前に進もうとするやり方はいかにも W.Co らしい。 在宅生活を継続するために 2015 年度介護報酬改定では、小規模多機能型居宅介 護費も大方の予測に反してかなりの減額となった。新規 「非営利・協同によるコミュニティ経済 の促進をともに考える研究会」報告書 ができました! 【A4 版 20 ページ】 生活困窮者の就労支援、路上生活者の生活再建、農 的空間の活用などについて 5 回のゲストスピーカーか らの情報提供、参加者からの意見提案等を行ってきま した。まとめ討議をもとに、2015 年度には、非営利・ 協同によるコミュニティ経済の促進をめざす以下の 3 つの研究プロジェクトが予定されています。 (1)( 公財 ) かながわ生き活き市民基金「社会的連帯経 済創出に向けた研究プロジェクト」の設置 (2)「( 仮称 ) 生活困窮者の社会的自立をサポートし市 民活動のエンパワーメントを促進する連絡会」の発足 (3) 参加型システム研究所 2015 年自主研究会「( 仮 ) ケア・コミュニティの形成に向けた「農的空間」の活 用に関する調査・研究」 <読んでみたい方は下記へお問 合せください。> 参入にとっては大きな痛手だが、加算をとっていく方向 ( 特非 ) 参加型システム研究所 Tel045-222-8720 Fax045-222-8721 e-mail:[email protected] 「オプティマム」vol.6 7 参加型福祉研究センターからのお知らせ 2015 年度参加型福祉研究センター講座・研修 受講のご案内 申込み・問合せ:参加型福祉研究センター Tel045-222-8720 Fax045-222-8721 コース C D E F G 2015 年度スキルアップ研修 ( 前半 ) テーマ 内容 対象者 受講料 H 急増する精神障がい。援助にあたっ 精神障がいの方 て配慮すべき点について事例を中心 のヘルパー支援 に学びます。 全 I 認知症の理解と 認知症について、基本的理解を深め 援助 ます。 認知症の方への適切な援助と留意点 について考えます。 全 日程 時間 講師 会場 6 月 14 日 本間めぐみ氏 13:30 社会福祉法人いき オ ル タ ~ いき福祉会 館 ま な 16:30 友澤ゆみ子氏 びや NPO 法 人ピッピ 親 木 子サポートネット 9:30 ~ 日 12:30 鈴木正貴氏 ラ ポ ー 社会福祉法人いき ル藤沢 いき福祉会 日 7 月 15 日 水 8 月 19 日 水 1,500 円 9 月 11 日 金 高齢者に関わる自治体施策の全体像 自治体の高齢者 の把握とその課題について一緒に学 全 1,500 円 保健福祉計画 びます。 自 治 体 の 子 ど 子ども・子育てに関わる自治体施索 も・子育て支援 の全体像の把握とその課題について 全 1,500 円 事業計画 一緒に考えます。 介護技術 ( 移動・ 安全で安心な移動・移乗介助の基本 全 1,500 円 移乗 ) を学びます。 プライバシーに配慮しながら行う安 介護技術 ( 着脱・ 全・安心な着脱・排泄介助の基本を 全 1,500 円 排泄 ) 学びます。 ” 地域包括ケアシステム ” の時代、本 地域包括ケアシ 来のケアマネジメントの意義・目的か ケアマネ 3,000 円 ステムにおける らプロセスについて学びます。 ジャー (2 回分 ) ケアマネジメント インテークから終結に向けての演習を 中心に、実践に役立てます。 3,000 円 (2 回分 ) 5 月 11 日 6 月 11 日 6 月 14 日 月 坂本文典氏 逗子市社会福祉協 議会 13:30 ~ オ ル タ 16:30 伊藤多恵子氏 シトラス会 ( 川崎 館 ま な 市訪問介護事業所 びや 連絡会 ) 10 月 14 日 水 10 月 23 日 金 武田英子氏 社会福祉法人いき いき福祉会 「共育塾」 リーダー講座開催 生活クラブ運動グループのトップリーダーやワーカーズ・コレクティブのリーダーを対象とした「共育塾」を開催します。 市民の自治力を高め、参加型福祉の社会化と地域の非営利・協同セクターの連携に向けたリーダー育成をめざします。 講師および受講者間での意見交換をもとにテーマの内容の理解を深め、共有します。 回 1 2 月日 時間 6 月 10 日 14 時~ (水) 16 時 6 月 30 日 14 時~ (火) 16 時 7 月 17 日 14 時~ 3 (金) 16 時 4 5 6 8 月 22 日 14 時~ (土) 16 時 9 月 9 日 14 時~ (水) 日程未定 16 時 テーマ 講師等 ねらい オリエンテーション 講座の趣旨、受講の心構え等 参加型福祉研究センター代 参加型福祉取り組みの歴史と今日的意 表、生活クラブ生協理事長、厳しい時代における参加型福祉の今後 義 「市民がつくる地域包括ケアシステ いきいき福祉会 の方向性、戦略は? ム・基本ビジョン」 社会の現状、地域の課題から考える 「 生活クラブ理事長、いきいき 地域に噴出する個別 ・ 多様な課題。市 市民がつくる地域包括ケアシステム」福祉会、佐 塚 玲 子 氏 ( 横浜 民としての役割は? の意義を考える 地域福祉研究センター ) 近所の人たち、学校帰りの子どもたち 地域の中の小規模多機能拠点「おたが 加藤忠相氏 ( 株式会社あお と、地域の中の「おたがいさん」をプ いけあ代表 ) いさん」 ロデュースする。 上野善則氏 ( 昭和クリニッ 医療と介護の連携~いのちを支える現 いのちを支える現場から、在宅で暮ら ク院長、平塚の在宅ケアを し続けるために何が必要か? 場から~ 考える会代表 ) 村井祐一氏 ( 田園調布学院「連携する」とはどういうことか?効 参加型組織における情報マネジメント 大学教授 ) 果的な会議や広報とは? ラポール城南、おたがいさ 拠点を中心とした地域ネットワークの フィールドワーク ん他 あり方 会場 オルタ館 まなびや ( 新横浜 ) 現地 1 0 月 1 6 14 時~ 連携力でつくるオルタナティブな地域 参加型福祉研究センター代 より身近な地域での可能性を考えて見 オルタ館 まなびや 表、佐塚玲子氏 ます。 17 時 包括ケアシステムの可能性 ( 新横浜 7 日(金) ※ 2015 年度後半には、「共育塾」コーディネーター編を開催する予定です。 「オプティマム」vol.6 < 1,600 部> 2015 年 4 月 25 日発行 発行者:参加型福祉研究センター 〒 231-0006 横浜市中区南仲通 4-39 石橋ビル 4 F 参加型システム研究所内 Tel045-222-8720 Fax045-222-8721 e-mail:[email protected] http://www.sanka-fukushi.org 8 「オプティマム」vol.6 「参加型福祉まちづくりフォーラム 2014」では、2025 年を見据 えた 3 つの参加型福祉戦略テーマを共有した。これを基に各組織で の議論と具体化の検討が始まる。一口に神奈川といっても地域ごと にそれぞれが特徴ある。地域に暮らしているからこそ見えてくる課 題がある。それを自分事と捉えた時に、問題解決に向けて必要なし くみ・機能をつくる主体者への道を一歩踏み出すことになる。 やはり 2025 年問題を解決するのは、地域社会に暮らす私たち自 身であろう。 (城田喜子)