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平成26年の年頭にあたり・・・児童生徒事故の防止を考える Ⅰ 小学校

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平成26年の年頭にあたり・・・児童生徒事故の防止を考える Ⅰ 小学校
平成26年の年頭にあたり・・・児童生徒事故の防止を考える
事故はないことが理想です。しかし現実には事故は毎日のように日本中のどこかの学校で起きて
います。これだけ多くの子どもたちが在籍する学校では「事故は起きる」という目を持つことが危機
管理の出発点であり、事故防止に繋がるのではないでしょうか。軽微な怪我と死亡事故との間に
はほとんど差がなく、紙一重だということが報告されています。改めて事故防止を考えてみます。
Ⅰ 小学校における事故防止の留意点
(1)行動の特徴
子どもたちは好奇心旺盛である。大人がほとんど関心を示さないことも夢中になって挑戦する。
例えば高いところに登り、狭いところを通り、歩道では同じタイルの色を選んで歩いたり、友だちとの
話に夢中になり横に広がり歩いたりする。興味を引くものが目に入ると周りが見えなくなる。
(2)事故の起こる場面
子どもの性格や行動パターンは同じものは一つとしてない。そのため各学校ではきまりを設けて
指導を繰り返している。それでも事故は起こる。事故の発生は①休憩時間②授業中が多い。
①休憩時間の事故
休憩時間は子どもたちが最も解放されるときである。子どもたちは「夢中」になり、周りが見えない
注意散漫な状態となる。
②授業時間の事故
授業中の事故で一番多いのが「体育」である。子どもの悪ふざけや不注意によるものから教師の
指導力不足や安全面での配慮不足によるものもある。体育以外では図工の時間に針金を切っ
ていた際に針金の先が目に刺さったという事例や算数の時間に蹴った鉛筆の先が目に当たり、
角膜を傷つけたという事例もある。授業とはまったく関係のない事例も多い。
③その他の場面の事故
様々な場面で事故は発生する。友だちの机の横に掛かっていた体操着に足を引っかけて前歯
を欠損したり、給食の食缶を教室の入り口のドアレールを通過する際、スープが溢れて火傷した
り、清掃時間中に振り回したぞうきんが目に当たり視力が低下した事例も多い。
(3)事故を未然に防ぐ
①防げる事故と防げない事故
(A)事故が起こりやすい場面
・子どもが解放されたとき(授業後、運動会の練習後、下校中)
・子どもが興奮状態にあるとき(体育のゲーム、お楽しみ会、休憩時間)
・教師の目が届かないとき(休憩時間の教室、グループ活動、朝や放課後の教室)
・狭い場所に集中したとき(下足箱付近、教室の出入り口)
・急いでいるとき(教室の移動、休憩時間に校庭に出る際)
・予定が変更されたとき(急な予定変更、計画が不十分なままの活動)
(B)防げる事故
事故には適切な対策で防げるものも多い。典型的なものは「熱中症」である。事前の子どもたち
への指導、危険を感じた場合の計画変更等の対応で防止を図る。事故が発生した際に要する
エネルギーに比べたら、事故防止に費やすエネルギーは微々たるものである。
(C)防げない事故
事故には防げない事故があることも事実である。無謀運転の車が歩道に飛び込んできたときに
は避けようがない。あらゆる場面を想定し、どんな危険を予測したとしても想定外の事故は起こり
うる。しかし想定外を想定内に変える努力はできる。
(D)事故を最小限に
事故を完全に防ぐことができなくても被害を最小限に食い止めることはできる。廊下の角に尖っ
た柱があったとする。子どもたちは当然注意するが、そこに柱がある限りぶつかる可能性はなくな
らない。しかしクッションを巻くなどして工夫はできる。学校管理をする上でこの点が重要である
・教室等を見回してどんな危険があるかを想定することが危機管理の第一歩
・気がついたらすぐに実行する
・危険を予知する鋭い感覚を磨いておく
・危険に対する正しい判断力・知識・行動力を磨いておく
・「まあいいか」の心の緩みが事故を招く
・保護者と連絡を取り合って信頼関係をつくっていく
・事故後の初期対応によって、その後の展開が大きく変わる
・日常的な安全指導を行い、記録しておく
・常に子どもの所在を把握しておく
・緊急連絡体制を見直し、いつも目にするところに掲示しておく
・定期点検や安全点検を必ず実行する
②教師の危機管理意識の高揚
(A)教師の危機意識が子どもを守る
廊下の掲示物の画鋲が取れてポスターが斜めになっていた。みっともないから直すのではなく
子どもが取れた画鋲で怪我をするかもしれないから画鋲を探す・・この感覚が危機管理意識の
第一歩である。また給食の配膳台の角がささくれ立っていた。「危ないから後で直そう」では危機
管理失格です。教師は子どもを守る危機管理のプロでありたいです。
(B)日常の研修と訓練
どの学校にも職員室の一角に緊急連絡体制が貼られているが、もし突発的な事故が発生した
場合、果たしてマニュアルどおりに事が進むでしょうか。マニュアルを自分のものにするためには
見ただけとか読んだだけではダメです。事故を想定した実践的な訓練を行う必要があります。頭
で考えたことと実践から学んだことにはギャップがあり、その課題をもう一度マニュアルに落とし込
む必要があります。常にマニュアルを見直し新しい情報を共有することが求められています。
(D)正しい知識を身に付ける
昔は雷が鳴ったら金属類をすぐに外せという言われていた。またレインコートやゴム長靴を履いて
いると安全だと信じる人もいた。地震が発生したらすぐに火を消すことが常識となっていた。これ
らすべては現代では否定されている。常に新しく正しい知識を身に付けることが大切である。
(E)当たり前のことを当たり前に行う
どの学校にも安全点検マニュアルがあるが、ただチェック用紙にレ点を入れるだけでは点検にな
っていない。理科実験のガラス容器にヒビが入っていないか、薬品の濃度は適切かなどを教師
自身の目で見なければ点検にはならない。こうした当たり前のことを当たり前にやらないで事故に
繋がったケースは多い。
③児童の危機回避能力の育成
(A)自分の命は自分で守る
どんなに教職員が事故防止の方策を取ろうとも事故は発生する。子どもたち一人ひとりに自ら危
険を察知し、それを回避する能力を育てる必要がある。子どもにいくら「廊下を走ってはいけな
い」「車に気をつけなさい」と言っても実際場面ではなかなかできない。特効薬は見当たらないが
繰り返して指導するしかない。安全確保は子どもとの根気比べである。
(B)日頃の指導がものを言う
いくら教師が指導したと言っても実際には指導になっていないことが多い。教室には古くなって色
褪せた「きまり」「めあて」が貼られていても、効果の点でも同じように色褪せている。定期的に更
新しその度に指導することが必要である。
(C)児童主体の活動
児童の危機管理能力を向上させるためには、児童会等を活用するのも効果的である。教師の
指導とともに集会等で子どもたちが子どもたち自身に呼びかけるのである。それを各学級に持ち
帰りみんなで話し合わせる。その延長線上で保護者や地域との連携もより効果的である。
(4)事故が起きてしまったら
①児童の安全確保(二次災害の防止)
まず子どもから危険を排除する。危険から子どもを遠ざける。そして同時に「けが人の応急処置」
「他の児童の安全確保」「他の教師へ応援要請」を行う。
②管理職・養護教諭への連絡(管理職から教育委員会へ)
ケガが大きい場合は迷うことなく救急車を呼ぶ。そして管理職から教育委員会へ一報する。
③状況の把握(5W1Hの確認)
大切なことは正しい情報を正確に記録することである。慌てているので後で思い出そうとしても難
しい。誰かに記録係を頼む。聞き取りはできるだけ複数の大人が立ち会う。
④保護者への連絡(正しい情報の伝達)
管理職の指示のもと、正しい情報を保護者へ連絡する。この時の管理職の対応の善し悪しが
後々に大きく影響する。
⑤マスコミ対応(慎重かつ丁寧な対応)
窓口を一つにして慎重に対応する。一つの失言やあいまいな説明が事を大きくする。マスコミの取
材には基本的に逃げない。取材の申し込みがあったならば内容を把握した上で、改めて連絡する
と約束していったん電話を切り、教育委員会と相談しながら説明内容を吟味することが望ましい。
⑥児童の心のケア(すべての中で最優先事項)
事故対応で最も配慮しなければならないことは子どもを守ることである。大きな事件や事故の場
合、子どもは深く傷ついていることを忘れてはならない。
Ⅱ 中学校における事故防止の留意点
(1)体育活動中(課外活動及び保健体育の授業中)
最も事故が発生しているケースは課外活動(部活動)での野球である。特に顔面にボールが直
撃するなど、顔面のケガが多い。続いてサッカー・テニスの順である。
<課外活動(部活動)中の事例>
※手指切断・機能障害
野球部員数名と可動式のバッティングケージを片付けている際、ケージとケージの間に右手中
指を挟み、激痛でとっさに指を抜いたところ、挟んだ中指を切断した。
※外貌・露出部分の醜状障害
野球部の部活動中、校庭の雪かきをしていたところ、別の生徒が雪を掃こうとスコップを振った
ところ、隣にいた生徒の顔に当たり、顔面を負傷した。
※視力・眼球運動障害
サッカーの試合中、ゴールキーパーとディフェンダーが交錯し、ゴールキーパーの顔面にディフ
ェンダーの足が入り、顔面を縫う大けがをした。
※外貌・露出部分の醜状障害
バレーボールの練習会場の設営を行っていた。ある生徒がネットの巻き上げ作業をしていた
際、普段は固定されているはずのネット締め金具が50cm上昇し、生徒の前頭部を直撃した。
更に直撃後に後方に倒れ、後頭部を床に強打して脳挫傷及び尾骨骨折を負った。
※歯牙障害
バスケットボール部の活動の試合中、ロングパスを双方が捕ろうとして相手チームの選手の右
腕が味方チームの選手の顔面に当たり、前歯上2本と下1本が折れたり欠けたりした。
※足指切断・機能障害
卓球部の活動中、下級生が体重の重い上級生を背負って早歩きのトレーニングをしていたと
ころ、バランスを崩して転倒した際に左膝に全体重がかかり、大けがをした。
※胸腹部臓器障害
剣道の部活動中、基本練習をしていた際、突然ある生徒が前のめりに倒れた。苦しそうな様
子でうなり声をあげていたが、約1分後意識を失い心肺停止となった。すぐに扇風機や氷で体
を冷やすとともに心臓マッサージや人工呼吸、AEDの使用を行った。その結果、脈と呼吸は
戻ったが意識は戻らず、救急車で搬送された。
(2)保健体育の授業中
※視力・眼球運動障害
体育館でマット運動をしていた。ある生徒はバック転に挑戦していたところ、着地に失敗して頭
からマットに落ちて自分の膝で顔面を強打した。
※視力・眼球運動障害
運動場でソフトボールでのキャッチボールをしていた。相手の投げたボールを捕ろうと失敗し
ボールが左目のめがねに当たった。その際も左目も痛めた。
(3)その他
※外貌・露出部分の醜状障害
美術の授業中、席に座りナイフを使ってガラストレーを制作していた。後ろからある生徒がいた
ずらでカーボン紙を顔につけた。それを振り払おうとナイフで自分の顔を切った。
※外貌・露出部分の醜状障害
ある生徒が清掃中に誤って窓ガラスを破損させた。その破損した窓ガラスを覗いていた別の
生徒が後ろからその生徒の頭を叩き、その拍子に割れたガラスで額をぶつけて負傷した。
※外貌・露出部分の醜状障害
友人数名で窓ガラスに顔を付ける遊びをしていた。その際ある生徒が別の生徒の顔を無理矢
理窓ガラスに押しつけようとした。両手を付いたその生徒は窓ガラスを破り両手を突っ込んだ。
※視力・眼球運動障害
雨の日に傘をめぐって二人の生徒同士が口論となった。その際、カッとなったある生徒が別の
生徒の左顔面を殴打した。
以上具体例として示した事例はすべて今年度実際に多く発生した事故です。これ以外にも死亡例
として、登下校中の交通事故や修学旅行時の突然死や部活動中の事故も件数は少ないながらも
発生しています。事例をとおして事故防止を図る校内研修などの参考資料にご活用ください。
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