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心に残る映画『グッドナイト&グッドラック』 鈴木さとみ(LIBRA2012年4月
心に残る映画 『グッドナイト&グッドラック』 2005 年/アメリカ/ジョージ・クルーニー監督作品 報道のあるべき姿とは 権力と戦ったジャーナリストたち 会員 鈴木 さとみ(63 期) ※DVD 発売情報は 2012 年 3 月現在のものです。 この作品は,1950 年代のアメリカで,ニュース 対しても,報道のあるべき姿を説いていく。彼らの キャスターであるエドワード・R・マローと CBS ス 信念と仲間を信じる姿が描かれている。また,報道 タッフが,真実の報道のためにマッカーシズムと戦 の現場もリアルに映し出されている。 った姿を描いたノンフィクション作品である。 世の中が,一方向に流されているときに,「それ 公開は 2005 年だが,当時の雰囲気を出すため は違う。」と大衆に向かって言うことは勇気のいる モノクロの作品となっている。また,全体を通じて ことだと思う。また,権力に対して,言葉の力で ジャズが流れていて, 大 人の映 画という雰 囲 気で 厳然と立ち向かうことも勇気のいることだと思う。 ある。 マローらはそれをやってのける。また,映画の中で 1950 年代のアメリカは冷戦下にあり,マッカー は,人は生まれながらにして自由であることや,適 シー 上 院 議 員が赤 狩りを行 っていた。 その中で, 正な手続きを踏まなければ不当な処分を受けないこ 空軍に所属していた人が,親や兄弟が共産党員だ となども述べられている。ジャーナリストも,本来, という内 部 告 発があったというだけで, 事 実 調 査 人の権 利を守るという役 目があるはずなのである。 もなければ適正な手続きも経ずして空軍からいきな ジャーナリストの仕事と法曹の仕事の間には共通項 り除 隊 勧 告を受けたという新 聞 報 道がなされる。 があると思った。 この新聞記事を見たマローらは,自分たちの報道 グッドナイト&グッドラックという言葉は,マロー 番組の中でマッカーシーに対して異議を申し立て, らの報道番組「See It Now」の最後に,マローが, マッカーシーと戦っていく。また,マロー自身もマ 「Everybody, good night and good luck」と ッカーシーに歯向かったことで共産主義者だと決め あいさつすることに由来している。マローのあいさつ つけられる。このような恐怖政治はおかしいと思う をする姿は, 格 好いい。 登 場 人 物のほとんどが, 良 識 人も多くいたようだが, 誰もが, 次は自 分が 半端でないほどのヘビースモーカーで,肺がんにな 標的にされるのではないかと恐れて発言を控えるよ らないかと思わず心配してしまったが‥。だが,そ うな時代であった。 こに,また現実のやるせなさというようなものも感 そのような中で,マローや CBS のスタッフらが, じられて映 画の雰 囲 気を出している。 たまには, ジャーナリズムとは真 実を報 道することであると 大人の硬派映画を,と思われた方は,是非ご覧に 信じ,勇気を持って,マッカーシーに挑んでいく。 なってください。 また,会社経営を優先させようとする会社トップに 46 『グッドナイト&グッドラック』【通常版】 DVD 発売中 3,990 円 (税込) 発売元・販売元:㈱東北新社 Ⓒ 2005 Good Night Good Luck, LLC. All Rights Reserved. LIBRA Vol.12 No.4 2012/4