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性能規定型メンテナンス契約(Performance Based Maintenance

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性能規定型メンテナンス契約(Performance Based Maintenance
性能規定型メンテナンス契約(Performance Based Maintenance Contract)の
現状と課題
吉田
武
独立行政法人土木研究所上席研究員 道路技術研究グループ(〒305-8516 つくば市南原1-6)
E-mail:[email protected]
性能規定型維持管理契約は,道路の最低限の条件を定義し,定義されたパフォーマンス基準にどれだけ達しているかに基づいて支払いがなされ,実施された作業
やサービスの量は問題とされない.性能規定型維持管理契約は,新技術の導入による維持費用の縮減,維持作業を実施すべき道路の選定に関する透明性の向上等の
メリットから,海外においては,既に議論の段階を経て,実践の段階に移行している.文献調査等により,適用範囲,契約内容,パフォーマンス基準,メリット及
び課題を整理した.
Key Words : road maintenance, performance based, maintenance contract, performance indicator
あるが人手や機材等の資源に余裕が無い,あるいは c) 直営で実施可能である
が外部委託により VFM(Value For Money)を最大化できる(コストを縮減で
きる),のいずれかである.性能規定型維持管理契約は c)の理由により導入さ
れるものである.コスト縮減について議論する場合にはトータルコストの視点
とライフサイクルコストの視点が重要である.前者は,受注者に支払うコスト
だけでなく発注者内で発生する人件費や契約手続き・性能確認等の管理費も縮
減の対象であることを指す.特に,管理費の縮減が意味する契約管理業務の軽
減は,現場の発注担当者のインセンティブとなる.後者は,契約期間内のコス
トだけでなく契約終了後の維持管理費用や更新費用も縮減の対象であることを
指す.業務の外部委託にあたり,業務内容を具体的に記述することが必要とな
る.その業務内容を直営で実施した場合のコストがコスト縮減の計測において
基本となる.
性能規定型維持管理契約は,新技術の導入による維持費用の縮減,維持作業
を実施すべき道路の選定に関する透明性の向上等のメリットから,海外におい
ては,既に議論の段階を経て,実践の段階に移行している.
1.はじめに
近年,道路の維持管理の分野での事業執行効率の向上のために,基準類の性
能規定化や業務の外部委託等が有効な方策として検討されている.道路の維持
管理に関する伝統的な契約方式は仕事量に基づいており,支払いは工種毎の数
量と単価に基づいて行われる.これに対し,性能規定型維持管理契約は道路の
最低限の条件を定義し,定義されたパフォーマンス基準にどれだけ達している
かに基づいて支払いがなされ,実施された作業やサービスの量は問題とされな
い.この契約では最終(供用時)の状態だけが定義されており,作業の実施時
期,設計,新技術あるいは新材料の採用,施工,管理に関する事項等はすべて
受注者の責任で決定される.伝統的契約がインプットベースであるのに対し,
性能規定型契約はアウトプットベースあるいはアウトカムベースであるといえ
る.
組織が業務を外部委託する理由は,a)特殊業務等で直営での実施が不可能
(第三者による実施が義務づけられている場合を含む),b)直営で実施可能で
1
は アルゼンチン,ウルグアイ(モンテビデオ),ブラジル(サンタカタリー
ナ)で見られる.アルゼンチンでは一つの契約で修繕工事とそれに続く維持作
業を委託するシステム CREMA(Contrato de Recuperacion y Mantenimiento)が確立
性能規定型維持管理契約の例はチリ・コロンビア・ウルグアイ等のラテンア
された.また,都市における性能規定型のアセットマネジメントプロジェクト
メリカ諸国,ニュージーランド(Performance Specified Maintenance Contract),オ
として米国ワシントン D.C.の”DC STREETS”が有名である.
ーストラリアのニューサウスウェールズ州・ビクトリア州等(Term Network
このほかに,パフォーマンスに着目したサービス調達に対する要求の世界的
Contract),米国のバージニア州・フロリダ州等,英国(Managing Agent Contract),
な高まりに応えるために,世界銀行が試行的に見本入札書類「道路の性能規定
カナダのブリティッシュコロンビア州,スウェーデン等で見られる.これらの
型維持管理(アウトプットに基づく役務契約)2002 年」を発行した.また,
契約では,国道・州道等の幹線道路における全ての道路資産(排水施設,路傍
AASHTO も「維持管理契約における方法と手順に関する手引(草案)2002
部,交通安全施設,舗装,橋梁)の維持管理および事故対応,道路利用者対応
年」を公表している.
を一括して複数年度委託する点が共通している.対象施設を舗装に限定した例
2.適用範囲
表-1
舗装
全ての施設
道路の性能規定型維持管理契約の適用範囲(道路の存する地域と対象施設による分類)
地方部
<AR-CREMA>
・
アルゼンチン
・
舗装済国道 12,000km
・
1990 年~
・
5年間
・
修繕/舗装とそれに続く維持管理(Contrato de Recuperación y Mantenimiento)
<LA-PILOT>
・
ラテンアメリカ諸国
・
IRF とドイツの援助機関の支援によるパイロットプロジェクト
・
1~5年間
・
舗装,砕石路面(Gravel surfaces),路肩,排水,標識標示,植栽
・
電話,救急車,レッカー移動等の利用者サービス(コロンビア)
<NZ-PSMC>
・
ニュージーランド Performance Specified Maintenance Contract
・
1998 年~
・
10年間
・
舗装(修繕を含む),路肩,デトリタス(堆積物などの回収),排水構造物,橋梁および小規模
構造物,植生管理,道路標識,防護柵,路面標示,道路照明,休憩施設の備品,散乱物撤去,事故
や自然災害への緊急応答
<AU-TNC>
・
オーストラリア Term Network Contract
・
1995 年~ (NSW)
・
10年間
2
都市部
<LA-PILOT>
・
ウルグアイ(モンテビデオ),ブラジル(サ
ンタカタリーナ)
・
1996 年~
・
3年間(3年間の延長可),5年間
・
修繕/舗装とそれに続く維持管理
<DC-STREETS>
・
米国(ワシントン D.C.)
・
2000 年~
・
5年間
・
国道網 121km
・
舗装構造(舗装路面,路肩,マンホール),車
道清掃,排水,路側(縁石,側溝,歩道),防護
柵及び緩衝材,路側清掃,路側植栽,橋梁,トン
ネル,路面標示,標識,照明,その他の資産
<VA-PILOT>
・
米国(バージニア州)
・
4つの州際道路 402km
・
1996 年~
・
5.5年間(最初の1.5年間は1路線 162km のみ)
・
全ての道路資産(排水施設,路傍部,交通安全施設,舗装,橋梁)の維持管理および,事故対
応,道路利用者対応,雪氷対策
<FL-DOT>
・
米国(フロリダ州)
・
7年間
<UK-MAC>
・
英国(Highways Agency) Managing Agent Contractor
・
3~5年間
・
日常維持業務,ハイウェーの機能を支える一定の主要な工事,日常維持業務の計画立案,自主管
理による“適切な初動措置”が求められるエリアネットワークに重大な欠陥が発生した場合の緊急措
置および応急措置
<BC-PROVINCE>
・
カナダ(ブリティッシュコロンビア州)
・
1988 年~
・
8年間(当初3年間,1995 年に5年間)
<SW-SNRA>
・
スウェーデン
・
1992 年~
・
3年間(2年間の延長可能)
・
支払いは,月単位で精算し年末で調整を行う.また,異常気象時は,稼働時間数で別に支払う.
<WB-SAMPLE>
・
世界銀行の見本入札書類:道路の性能規定型維持管理(アウトプットに基づく役務契約)2002 年
・ パフォーマンスに着目したサービス調達に対する要求の世界的な高まりに応えるために,世界銀行が試行的に見本入札書類を発行した.
<AASHTO>
・
維持管理契約における方法と手順に関する手引(草案)
・
1990 年代から 2000 年代に,維持管理契約が導入された.維持管理契約は,従来は行政機関が直営で行っていた維持管理業務を民間企業あるいは他の公的機関に外部委託
するもので,州政府の行政機関で採用されているものには2つのタイプがある.一つは,その維持管理業務を実施するために用いる手段と方法を仕様書で規定する一般的
な方式で,仕様規定型と呼ばれる.もう一つはパフォーマンスに基づくもの(性能規定型)であり,対象となるアセット(道路資産)の維持管理に係わる全てリスクは,
契約書に記述された管理水準規定により,行政機関から請負業者に移行される.
(参考文献)
1) Cabana, Liautaud and Faiz: Areawide Performance -Based Rehabilitation and Maintenance Contracts for Low-Volume Roads, TRB# L7106 SEVENTH INTERNATIONAL CONFERENCE
ON LOW-VOLUME ROADS, 1999-5
2) Tony Porter, International Trends In Procurement Models for Highway Maintenance ,( This paper is based on a paper given by the author to the TRB Meeting in Washington DC, January
2001.), Contracting the Future NZIHT Symposium, 2001-10
3) 吉田武:パフォーマンスに基づく(性能規定型の)道路の維持管理契約,舗装, 2002-7
3
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)
K.A.Zimmerman, D.G.Peshkin, and J.B.Sorenson, "Privatizing the Maintenance of Transportation Assets," Roads, No.316, 2002-10.
PAKKALA, Pekka: Innovative Project Delivery Methods for Infrastructure ? An International Perspective. Finnish Road Enterprise. Helsinki 2002
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:ニュージーランド,オーストラリアに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2003-2
Segal,G.F., Moore,A.T. and McCarthy,S.: Contracting for Road and Highway Maintenance, Reason Public Policy Institute, Los Angels, 2003-3
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:アメリカに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2004-2
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:世界銀行が発行した道路の性能規定型維持管理契約の見本入札書類,道路建設,2004-5
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:英国の道路維持管理業務におけるマネージング・エージェント・コントラクター(MAC)契約,道路建設,2004-12
Gunter J. ZIETLOW : Cutting Costs and Improving Quality through Performance-Based Road Management and Maintenance Contracts - The Latin American and OECD Experiences ,
University of Birmingham (UK), Senior Road Executives Programme, Restructuring Road Management, Birmingham, 24-29 April 2005
12) 浅野基樹,舟橋誠:冬期道路管理に関する北欧調査,北海道開発土木研究所月報№625,2005-6
13) SAMPLE BIDDING DOCUMENT, Procurement of Performance-Based Management and Maintenance of Roads (Output-based Service Contract), The World Bank, Washington, D.C, 2002-2
14) A Guide for Methods and Procedures in Contract Maintenance (Draft), AASHTO Highway Subcommittee on Maintenance, August 2002.
えば,ニュージーランドでは性能によるボーナスまたは減額(年1回)に関す
る規定及び車線の閉鎖に伴うレーンレンタル費用(事故のリスクは受注者が負
う)に関する規定があったが,複雑で効果がないため廃止された.
3.契約内容
契約期間,契約金に含まれる費用,支払いの方法,受注者の責務等契約の内
容は道路管理者毎に様々であり,また,時間の経過と共に見直されている.例
表-2
契約期間
契約金に含ま
れる費用
・
・
LA-PILOT/AR-CREMA
1~5年
5年<AR-CREMA>
道路の性能規定型維持管理契約における契約内容
NZ-PSMC
10年(従来型との混
合モデルは5年)
・
性能基準を達成す
るために必要な検査,
計画,優先順位付け,
維持サービスの実施に
要する費用
・
アセットを契約水
準に改善する費用
・
発注者に移管でき
ない全てのリスク管理
費用
・
事故処理費用
AU-TNC
10年
・
緊急時の対応
・
日常的な維持管理
・
定期的な維持管理
・
打換,修繕
・
アセットの状態の検査
と監視
4
VA-PILOT
5.5年
契約金額には,規定された
管理水準を維持するため
の,作業,労務,材料,機
械,および業務(事故対応
等)の全ての費用が含まれ
るが,それらの量の多寡に
よる増減はない.
また,インフレリスクや事
故・災害など予見できない
全ての費用が含まれる.
UK-MAC
3~5年
(a)一括払いの日常維持・冬期維持業務
価格
(b)リニューアル・改良工事・緊急対応
価格
(c)マネジメント・エンジニアリング業
務の時間単価
(d)施主車両の運営・維持価格
(e)ネットワークの変更に対する調整費
用
(f)偶発事象に対する補償費
(g)年 6%の仮金利費用
当初修繕工事
(維持管理に
先立ち修繕工
事が必要な場
合)
支払いの方法
ボーナス/ペ
ナルティ
・
発注者の設計による数
量と単価に基づく伝統的契約
方式による(チリ,コロンビ
ア,ウルグアイ)
・
設計は受注者の裁量に
委ねられ,費用は維持管理契
約の総額(lump sum)に含ま
れる<AR-CREMA>
総額の 55%を1年目(修繕時
期)に3回に分けて支払い,
45%を 48 分割し4年間で支
払う<AR-CREMA>
(チリ)
・
毎月の調査の結果に基
づき基準達成度を計算し,達
成度 100%の時のみ満額支払
う
・
基準逸脱箇所をある期
限までに修正しなかった場合
ペナルティが科される
維持管理仕様書に従っ
てアセットが維持され
ていれば毎月均等分割
払いされる
性能によるボーナスま
たは減額(年1回)が
あったが,複雑で効果
がないため廃止した
・
価格変動に伴う調
整
・
車線の閉鎖に伴う
レーンレンタル費用
(事故のリスクは受注
者が負う)を設定して
いたが,複雑で効果が
ないため廃止した
契約後の契約
金額の調整
(上記以外)
道路の状態の
調査/性能の
評価(検査)
小規模工事(150 万豪ドルま
で)に関する変更条項がある
・
4種類の調査;10%の
道路に対する毎月の調査(調
査区間は契約書に記載されて
いる)/任意抽出 5%の道路
に対する毎週の調査/道路利
用者の苦情に対応した突発的
調査/基準逸脱箇所に対し適
切な措置が受注者によって執
られたことを確認する調査
(チリ)
年1回実施
契約金額の年度毎の内訳額
に基づき毎月均等分割払い
される.
MAC が毎月 15 日に請求書を提出し,4
週間以内に支払いが実行される.
性能によるボーナスまたは減
額がある
価格の増減に対する引当金を
備えている
独立したコンサルタントによ
って路面性状を測定し,毎年
アセットが契約基準を満たし
ているか評価している
5
性能の評価は年1回実施さ
れ,請負業者が契約基準を
満足していない場合は,原
則として 30 日以内に是正
しなければならない.な
お,州交通局の定常監理に
より管理水準を下回ってい
ることが指摘された場合
は,請負業者は原則として
10 日以内(道路利用者の要
・
材料等の物価上昇による価格変動
だけでなく,天候不良による価格調整
も,それぞれ契約された条件に従って
認められる.
・
MAC は,契約期間中に当初設定さ
れた Highways Agency の全体予算を超過
することが予測された場合,直ちに
(14 日以内)Highways Agency に報告し
なければならない.
検査には,分類 1(原因は何であれ緊急
の対応を必要とするもの)の損傷に対
応する安全検査,通常の維持管理計画
に従って行われる一般通常検査,およ
び専門的な資格又は機材を要求する専
門検査がある.
受注者の責務
・
調査員が少なくとも月
2回ランダムチェックを行う
<AR-CREMA>
・
道路の状態の調査,品
質管理,実施した作業に関す
る記録(チリ,コロンビア)
・
電話,救急車,レッカ
ー移動等の利用者サービス
(コロンビア)
・
道路の状態の調査,品
質管理,実施した作業に関す
る記録<AR-CREMA>
マネジメント評価指標
について契約基準と対
応時間を規定;
・
安全衛生管理計
画
・
品質計画
・
緊急時対策計画
・
交通管理計画
・
作業実施計画と
年間計画
・
事故報告
・
月例報告
・
ハザード管理
対策規準と対応時間を規定;
・
道路ユーザーからの問
い合わせへの対応
・
内部からの問い合わせ
への情報提供と支援
・
データ収集と報告
・
データシステムの維持
管理
・
道路へのアクセス管理
・
道路周辺の公共施設の
管理
・
特別なイベントの管理
・
損傷したインフラに対
する費用回収
・
緊急事態への対応
請による場合は 48 時間以
内)にこれを是正しなけれ
ばならない.
事故対応,道路利用者対
応,および雪氷対策につい
ては,対応の適時性(対応
までの許容時間)などが規
定されている.
MAC は性能規定仕様に規定され一括支
払いがなされる日常維持業務の計画立
案に対して契約上責務を有するととも
に,自主管理による“適切な初動措置”が
求められるエリアネットワークに重大
な欠陥が発生した場合の緊急措置およ
び応急措置の責務も有する.
ここで非常に重要なことは,品質管理
システム内で健全な手続による運営を
行うことである.HA は,監査基準によ
り MAC の品質管理システムを検査す
る.MAC が品質管理システムに従って
いない場合は,罰則表に基づき罰則点
が与えられる.
(参考文献)
1)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:ニュージーランド,オーストラリアに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2003-2
2)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:アメリカに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2004-2
3)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:英国の道路維持管理業務におけるマネージング・エージェント・コントラクター(MAC)契約,道路建設,2004-12
4)
Gunter J. ZIETLOW : Cutting Costs and Improving Quality through Performance-Based Road Management and Maintenance Contracts - The Latin American and OECD Experiences ,
University of Birmingham (UK), Senior Road Executives Programme, Restructuring Road Management, Birmingham, 24-29 April 2005
5)
田崎忠行:オセアニアにおける道路のサービス水準・管理目標,性能規定型契約に関する調査報告,道路,2005-6
は 24 時間以内に対応する.米国バージニア州では性能の評価は年1回実施さ
れ,受注者が契約基準を満足していない場合は,原則として 30 日以内に是正
しなければならない.なお,州交通局の定常監理により管理水準を下回ってい
ることが指摘された場合は,受注者は原則として 10 日以内(道路利用者の要
請による場合は 48 時間以内)にこれを是正しなければならない.米国ワシン
トン D.C. の”DC STREETS”では性能指標は5段階評価が可能なパフォーマ
ンス基準に細分され,5段階評価のうち「Good:4」の状態がパフォーマンス標
準を満足した状態である.
4.パフォーマンス基準
対象となる道路資産について,性能(平坦,安全,すべり抵抗,耐久等),
性能指標の管理水準,およびパフォーマンス基準(管理水準を満足する道路資
産の割合)を契約により定めたものが多い.さらに,対策規準と対応の適時性
(対応までの許容時間)を定めることもある.ニュージーランドでは作業評価
指標(Operational Performance Measures)について契約基準と対応時間が規定して
あり受注者はこれを満足するようにアセットを管理しなければならないが,安
全上のハザードとなる可能性がある場合および直ちに補修すべき欠陥について
6
表-3
LA-PILOT
受注者により達成される
べき最低条件
管理目標(性能基
準)の位置づけ
ラフネス
IRI(International
Roughness Index)国
際ラフネス指数
NAASRA(National
Association of
Australian State
Road Authorities)
(アスファルト)
・ IRI < 2.0 (Argentina)
・ IRI < 2.8 (Uruguay)
(瀝青処理)
・ IRI < 2.9 (Argentina)
・ IRI < 3.4 (Uruguay)
(砕石路面)
・ IRI < 6 (Uruguay)
・ IRI < 11 (Chile)
道路の性能規定型維持管理契約における路面/舗装の管理目標(性能基準)
NZ-PSMC
作業評価指標(Operational Performance
Measures)について契約基準と対応時間
が規定してあり受注者はこれを満足す
るようにアセットを管理しなければな
らないが,安全上のハザードとなる可
能性がある場合および直ちに補修すべ
き欠陥については 24 時間以内に対応
する.
<主要評価指標>
・ ラフネス,テクスチャー,わだち
掘れ量,すべり抵抗値を受注者が
年1回の高速データ調査により収
集
・ 契約基準として各年末に受注者が
満たすべき最低の基準を規定
・ 政策説明に用いられる
<主要評価指標>
・ NAASRA 平均値:70.0 程度
・ 20m ごとの NAASRA の測定値が
その閾値(100~150)より大きい
比率:3%程度
・
テクスチャー
過剰または緩んだ砕石チップが通
行上のハザードまたは苦情となる
場合や補修した表層が周囲の表面
のテクスチャーと同じテクスチャ
ーでない箇所が1年に3例以内
・ 過剰または緩んだ砕石チップの対
応時間:2時間
<主要評価指標>
・ 平均プロフィル深さ(MPD):
0.5mm
・ 水準(0.5mm)より低い MPD の
比率:2%程度
7
VA-PILOT
全ての道路資産について,性能(平
坦,安全,すべり抵抗,耐久等),性
能指標の管理水準,およびパフォーマ
ンス基準(管理水準を満足する道路資
産の割合)が規定されている.
性能の評価は年1回実施され,請負業
者が契約基準を満足していない場合
は,原則として 30 日以内に是正しな
ければならない.なお,州交通局の定
常監理により管理水準を下回っている
ことが指摘された場合は,請負業者は
原則として 10 日以内(道路利用者の
要請による場合は 48 時間以内)にこ
れを是正しなければならない.
パフォーマンス基準は車道舗装で 95%
以上,路肩で 90%以上
DC-STREETS
性能指標は5段階評価が可能なパフォー
マンス基準に細分され,5段階評価のう
ち「Good:4」の状態がパフォーマンス標
準を満足した状態である.
以下,「Good:4」の状態を記す.
(施工後5年以内の道路)
110≤IRI<181
(施工後5年以上の道路)
・ IRI<181 の舗装が変わらないあるいは
10%未満の増加
・ IRI≥250 の舗装が変わらないあるいは
10%未満の減少
注:(inches per mile) (1 m/km = 63.36 in/mi)
契約時の状態と同等以上
(施工後5年以内の道路)
90≥PCI>80
(施工後5年以上の道路)
・ PCI>80 の舗装が変わらないあるいは
10%未満の増加
・ PCI≤60 の舗装が変わらないあるいは
10%未満の減少
すべり抵抗指数>20
45 ≥Skid Number > 40
・
・
PCI(Pavement
Condition Index)舗
装状態指数
すべり抵抗
ポットホールがない
<主要評価指標>
平均 SCRIM がその閾値(0.40 程度)
を下回る割合:2.0%
注:SCRIM(Sideways Force Coefficient
Routine Investigation Machine)
・ 100m 区間の 97%において直径
100mm 以上のポットホールがない
・ 対応時間:2~7 日(ただし,直
径 250mm 以上または苦情が寄せ
られたポットホールは 24 時間)
・
ポットホールの大きさ≤(縦横)
3*4*(深さ)1in (76*100*25mm)
対応の適時性:安全上問題がある
場合は即座に,それ以外の場合は
認知後2日以内に補修する
ポットホール
ブリージング
ラベリング
パッチング
わだち掘れ
・
< 12mm (Argentina)
・
< 10mm (Uruguay,
Chile)
深さ 30mm 以上の水溜まりまたは
水が集中する箇所がない.走行車
線内のわだちやくぼみは深さにか
かわらずハイドロプレーニングま
たは安全上のハザードを生じさせ
てはならない.
・ 対応時間:2週間
<主要評価指標>
・ 20mm より大きいわだち掘れの比
率:0.5%程度
・
8
ブリージングの面積< 50ft2/車線
0.1mile(30m2/車線 1km)
ラベリングの面積< 50ft2/車線
0.1mile(30m2/車線 1km)
パッチングの段差<0.5in (13mm)
わだち掘れ量≤0.5in(13mm)
安全の障害となるポットホールある
いはブロウアップのすべてが通報後
4時間以内に除去される
・ 報告されたすべてのポットホールあ
るいはブロウアップの 95%以上 97%
以下が通報後 48 時間以内に修繕され
る
・ 64in.2 (413 ㎠)を超えるポットホール
がない
・ 64 in.2 (413 ㎠)未満かつ深さ1
in.(2.54cm)未満のポットホールが車線
mile あたり4つ
・
・
平均わだち深さが 0.3in.(7.6mm)を超
え 0.5in. (12.7mm)以下
0.5in.(12.7mm)を超えるわだちはすべ
て通報後1ヶ月以内に再舗装される
深さ 30mm 以上の水溜まりがな
い.走行車線内の水溜まりは深さ
にかかわらずハイドロプレーニン
グまたは安全上のハザードを生じ
させてはならない.既存の舗装沈
下箇所を含む.
・ 対応時間:2週間
・ 1km 区間の 95%においてひび割
れの総延長は 10m 以下
・ 対応時間:1ヶ月
・
沈下
シールされている
ひび割れ
コンクリート舗装
の目地
100m 区間の 99%において舗装に
20~40mm の隆起や押出しがない
・ 対応時間:2週間
・ 1km 区間の 95%において端部破
損の総延長は2m 以下
・ 対応時間:幅 0.5m 以下のシール
した路肩で2週間,幅 0.5m 以上
のシールした路肩で1ヶ月
<主要評価指標>
RAMM(道路評価維持管理システム)
(Road Asset Management Model)データ
ベースから決定した平均残存寿命:3
~6 年
<主要評価指標>
受注者の FWD 調査データから求めた
所要オーバーレイ厚に基づくオーバー
レイ材料容積
・ 1km 区間の 98%において縁石お
よび側溝が隣接する舗装に影響を
及ぼすほど損傷または損失してい
ない
・ 対応時間:3ヶ月
・
隆起,押出し
端部破損
表層の残存寿命
構造的条件
縁石と側溝
9
・
ひび割れ幅(未シール)
≤0.5in(13mm) (アスファルト)
・ ひび割れ幅(未シール)
≤0.25in(6mm) (コンクリート)
・ 目地段差<0.5in(13mm)
・ 目地材喪失または補修が必要な目
地<10%
0.25in.(6.4mm)を超えるひび割れ(ジョイ
ントを含む)の 80%がシールされている
ポットホールがない
・
安全上問題となるポットホールが
ない
シールされている
舗装損傷(ひび割れ,ラベリング,ブ
リージング,わだち掘れ)の発生延長
<10%
0.5in(13mm)超の分離延長<10%
路肩におけるポッ
トホール
路肩におけるひび
割れ
Vertical alignment <
1cm (Chile, Uruguay)
・ シールされている
(Peru)
・
路肩と車線の間の
段差
・
安全の障害となるポットホールある
いはブロウアップのすべてが通報後
4時間以内に除去される
・ 報告されたすべてのポットホールあ
るいはブロウアップの 95%以上 97%
以下が通報後 48 時間以内に修繕され
る
・ 64 in.2 (413 ㎠)を超えるポットホール
がない
・ 64 in.2 (413 ㎠)未満かつ深さ1
in.(2.54cm)未満のポットホールが車線
mile あたり4つ
・
・
路肩の肩欠け
1.5in(38mm)超の肩欠け延長<10%
路肩の肩上がり
横断排水が車道へ逆流するような肩上
がりがない
1in.(2.54cm)を超える段差が
0.1mile(161m)区間あたり 10%未満(延
長比)
2in.(5.08cm)を超える段差はない
マンホールと車道
すべてのマンホールは車道面とのズレが
面とのズレ
1/2in. (12.7mm)以内
(参考文献)
1)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:ニュージーランド,オーストラリアに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2003-2
2)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:アメリカに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2004-2
3)
吉田武:性能規定型維持管理契約に用いられる評価の指標と手法-米国 DC STREETS プロジェクトの1年目評価より-,舗装,2004-4
4)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:英国の道路維持管理業務におけるマネージング・エージェント・コントラクター(MAC)契約,道路建設,2004-12
5)
Gunter J. ZIETLOW : Cutting Costs and Improving Quality through Performance-Based Road Management and Maintenance Contracts - The Latin American and OECD Experiences,
University of Birmingham (UK), Senior Road Executives Programme, Restructuring Road Management, Birmingham, 24-29 April 2005
6)
田崎忠行:オセアニアにおける道路のサービス水準・管理目標,性能規定型契約に関する調査報告,道路,2005-6
に改善しつつ道路管理者費用を数割低減させた例がいくつも報告されている.
また,受注者としては長期維持管理契約により技術革新の可能性を最大化でき
ることが期待される.
5.メリット
性能規定型維持管理契約を通して目標設定型の維持管理を行うことにより維
持管理に関する透明性を向上させることができる.さらに,道路状態を全体的
10
表-4
立場
メリット
ネットワークのより良い
管理
道路利用者
・
・
・
・
維持管理に関する透明性
の向上
・
・
維持管理費用の縮減
・
・
・
・
・
契約事務の軽減
道路管理者
リスクの移転
ネットワークデータに関
する情報の改善
・
・
・
・
・
・
・
・
所有権によるリターン
コスト縮減
受注者
技術革新の可能性
・
・
・
・
・
・
道路の性能規定型維持管理契約のメリット
経験者の考察/意見
受注者による緊急時対応の改善
事故対応に関して従来よりも優れた方法が採られた.
表層厚をより厚くすることによって砂利道の改善を実現<AU-TNC>
1年目で市民やマスコミからの苦情が激減した.長年道路管理者を悩ませてきたポットホールに対する苦情が激減したことは
特筆に値する.<DC-STREETS>
目標を定めた維持管理
PSMC005 においては安全性に関する主要指標 KPI として交通事故による社会的リスク5%削減を目標としている<NZ-PSMC
>
従来型モデルと比較して 25%のコスト削減<NZ-PSMC>
10~35%のコスト削減<AU-TNC>
契約金額は 5.5 年間で 1 億 3,160 万ドルである.バージニア州の従来型の維持管理方法に比べて約 2,200 万ドルの経費が節減
(17%)できると試算された.<VA-PILOT>
受注者の入札額は道路局の試算を 12.2%(1年間)~22.2%(7年間)下回っていた.<FL-DOT>
民間委託により,コストは 1992 年と比較して 1993 年は 20%(4億クローネ≒65 億円)の削減に成功した. なお,毎年,
1992 年と比較して 20%のコスト削減を達成している.<SW-SNRA>
一括契約方式によりコストの確実性
検査業務の重複がない
作業が平準化できた.
パートナーシップとチーム力の効果
多くのリスクを受注者へ移管
契約金額には,インフレリスクや事故・災害など予見できない全ての費用が含まれる.実際,受注者は交通事故による橋梁の
補修に 47 万ドル超を費やしたが,従来の維持管理契約と異なり追加支払は全く受けていない.<VA-PILOT>
受注者は主要性能指標に関連する道路ネットワークデータを収集,分析し,道路管理者も同じエリアについてデータを収集す
る.これにより,必要に応じて,性能の検証が可能となる.性能要件の検証において道路管理者と受注者が合同で測量や調査を
行うこともある
道路管理者がその道路資産に関する全ての履歴記録を維持できるように,選定された受注者に実施するすべての仕事を記録さ
せて,関係する道路資産目録およびデータ・ベースを更新するように契約上義務づけなければならない.<AASHTO>
受注者は維持管理業務にあたり革新的な技術を使用したが,これらは州交通局が全州に適用できる.<VA-PILOT>
ネットワークにおける他の改善に伴うコスト削減
費用対効果の高い解決策
長期維持管理契約による技術革新の可能性の最大化
代替措置や革新的手法の採択
契約の目的の一つは革新的技術の導入であったが,1年目には携帯式スプレー・ポットホール・パッチャーが導入された.<
DC-STREETS>
(参考文献)
1)
吉田武:パフォーマンスに基づく(性能規定型の)道路の維持管理契約,舗装, 2002-7
11
2)
3)
4)
5)
6)
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:ニュージーランド,オーストラリアに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2003-2
Segal,G.F., Moore,A.T. and McCarthy,S.: Contracting for Road and Highway Maintenance , Reason Public Policy Institute, Los Angels, 2003-3
(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:アメリカに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2004-2
田崎忠行:オセアニアにおける道路のサービス水準・管理目標,性能規定型契約に関する調査報告,道路,2005-6
浅野基樹,舟橋誠:冬期道路管理に関する北欧調査,北海道開発土木研究所月報№625,2005-6
約期間,複数の工種(施設管理)の一括契約,修繕工事とそれに続く維持作業
の一体的契約,さらには,それらを踏まえた価格設定等の制度的課題が明らか
になる.当該契約方式を導入した機関はそれぞれの社会的・制度的制約の下で
課題の解決を図っているが,多くの機関が官民のパートナーシップの重要性と
道路管理者の役割の変化を指摘していることは興味深い.
6.課題
性能規定型維持管理契約の導入にあたっては,性能基準の適切な定義,性能
評価のためのデータ収集,さらには性能予測に必要なデータの蓄積等の工学的
課題の解決が前提となることが経験した機関により指摘されている.また,長
期間の大型契約という側面からは,具体的に,複数年度あるいは長期に及ぶ契
表-5
視点
工学的課題
課題
性能基準の適切な定
義
道路の性能規定型維持管理契約の課題
経験者の考察/意見
目標を定めた維持管理を,通常,道路管理者は必ずしも達成していない
管理水準とパフォーマンスとの実際の関係を行政機関は把握しているか
作業評価指標(Operational Performance Measures)は道路ネットワークのサービス性能に対する道路ユーザーの期待を表している<NZPSMC>
・
プロジェクトでは,維持要素に適した性能指標が選定され,さらに,性能指標は5段階評価が可能なパフォーマンス基準に細分さ
れた.5段階評価のうち「Good:4」の状態がパフォーマンス標準を満足した状態である.ここで注目すべきは,パフォーマンス標準
を満足しない状態が想定されており,パフォーマンス標準が必ずしも遵守すべき補修基準というわけではない,また,パフォーマン
ス基準の下限が設定されておらず,基準自体が,通常有すべき安全性から規定される管理限界との関連性を求めていない,の2点で
ある.これらの点は,IRI 等路面性状に関する基準を道路の供用期間に応じて設定する,不具合の発生を前提とし,不具合が発生し
た場合の一定時間内の処理を目標とした時間が決め手となる(time critical)基準を設定する,等の手法と併用することで有効に機能
していると考えられる.特に,時間が決め手となる基準については,例えばポットホールの発生を完全に防止することも,その時期
を予測することも不可能に近く,安全の障害となるポットホールは通報後4時間以内に除去されるという基準は管理の基準としても
現実的である.<DC-STREETS>
・
道路管理者がパフォーマンス基準を定める際は契約期間中達成可能な基準としなければならない.ただし,道路管理者が直営作業
で適用している基準と同程度以上とすべきである<AASHTO>
・
管理水準規定には,性能指標,評価方法,測定の頻度と対象範囲,許容値,許容値を超えている場合の対処時間などを示さなけれ
ばならない<AASHTO>
・
パフォーマンス基準の定義は難しい.道路の長期的管理費用と道路利用者の費用を含む全体費用の最小化が目的である.曖昧さを
避けるために,パフォーマンス基準は明確に定義されると同時に客観的に計測可能なものである必要がある<LA-PILOT>
・
・
・
12
性能評価のためのデ
ータ収集
性能予測に必要なデ
ータの蓄積
・
・
・
・
・
・
・
・
長期間の大型契約:
総論
制度的課題
・
・
・
・
・
・
・
長期間の大型契約:
各論「複数年度,長
期」
・
・
・
・
長期間の大型契約:
各論「一括契約」
・
長期間の大型契約:
各論「当初工事」
・
高速データ収集の再現性と信頼性
性能測定のロバスト性(測定条件が多少いい加減でも正常に作動すること)
管理水準の評価システムは客観的で再現性があるか
IT 技術などの技術革新のプロセスへの反映
信頼性の高い舗装劣化モデル
入札時の道路データの信頼性
道路管理者は受注者に可能な限り多くの情報を供給しなければならない.情報がなければ,受注者は,その道路資産の過去の維持
履歴,経年数,現場の舗装構造を推定しなければならず,明らかに不利になる.舗装管理システム,他の社会資本データ・ベースや
維持管理システムは,これら情報についての適切な情報源である<AASHTO>
MAC の新規契約用競争入札で必要なネットワーク情報を収集するために,ネットワーク情報のモデルが開発されており,その内容
を 12 のサービス情報に分類して概要が理解できるようになっている.1)エリアネットワークの詳細な情報:重大緊急警報の応答位
置,車道・歩道と自転車道,排水,通信設備,土木工事,軟弱地盤地域,掃除と清掃,フェンス,路面表示,交通標識と交通信号,
照明,構築物,トンネル,冬季メンテナンス,公共設備 2)目録および記録 3)事務所,倉庫,車両と装置 4)オフサイトの設備 5)作業
制限 6)過去の情報:(緊急事態,冬季維持,検査,交通情報,第 3 者要求) 7)過去および今後の投資額 8)交通管理 9)作業調整リスト
10)指定協会 11)第 3 者 12)保証規則
受注者コスト,社会的コストの低減
システム適用時における政治の重要な役割(社会的圧力)
プロジェクトの適切な発注
地方部における政治的,社会的影響
舗装は従前から請負化していたが,1991 年9月,国会で道路維持管理(草刈りなども含む)は全て民間委託することが決定し,性
能規定で発注を行っている<SW-SNRA>
受注者の着工準備費用をカバーするために,少なくない割合の費用が最初に支払われることもあるが,特定量の作業実施後の支払
に慣れている道路管理者では,このことは完全には受け入れられていない<AASHTO>
受注者による不手際のリスクを考慮してボンド等の保証で確認することは重要である.しかしこれらの保証に関する制約は必要最
低限にすべきである.制約が大きすぎると,有能でも小規模な企業が参加できず競争性が低下する(Segal, 2003)
長期間の関係の不確実性
契約期間については州交通局側が契約オプションを行使して,2001 年 6 月に 5 年間延長で契約を更新している<VA-PILOT>
契約期間は 5-10 年と幅がある.ほとんどの国は近年 7-8 年に延長している.これに対し米国は5年の契約期間+5年の延長可能と
いうアプローチをとっている(PAKKALA, 2002)
日常的維持と定期的維持の組み合わせの最適化にはアスファルト舗装の場合少なくとも10年を要することから,契約期間10年
以上の長期契約が望ましい.長期契約によるインセンティヴが新技術の利用をもたらし,さらに新技術活用のための研究を促進する
<LA-PILOT>
パッケージ契約では,1業務を大きく4つの作業に分割(①冬期道路管理,②草刈り,③照明・標識清掃外,④その他)してそれ
ぞれ見積・入札させ,費用の最も大きな部分(通常,冬期道路管理作業で全体の 60~ 80%)を落札した者が1業務全体を落札す
る.2番手以降の者はその下請けに入るよう規定(発注時の条件とされ,元請け契約に明記)されている.なお,この契約方法は現
在も模索中ということである.また,発注時には,発注者側は予定価格を作成しない<SW-SNRA>
この契約は,当初に大規模な修繕が必要となるような劣悪な状態の道路には適さない.このような道路の場合にはアウトプットに
基づく契約では受注者に多大のリスクを負わせることになるため,当該契約に先立ち,通常の土木工事契約に基づく修繕工事を実施
すべきである.リスク分析によれば,当初修繕工事の割合が契約額の 40%を超えないようにしなければならない.3~5百万ドル以
下の小規模契約にも適さない.これら小規模契約はコンサルタントとの管理契約等が適している<WB-SAMPLE>
13
・
・
価格設定
・
・
・
・
・
道路管理者の役割の
変化
・
・
・
・
・
パートナーシップ
・
・
・
・
・
・
その他の課題
コスト削減効果と品
質維持のバランス
オーストラリア,ニュージーランド,イングランドは resurfacing and rehabilitation/reconstruction を契約に含んでいるが,他の国は
rehabilitation/reconstruction を含んでいない.カナダは resurfacing を含んでいない.いくつかの国では upkeep/improvements(resurfacing
and rehabilitation) を capital 経費と見なしている(maintenance 経費と見なしていない)(PAKKALA, 2002)
当初修繕工事を契約に含める利点は二つある.一つは,維持費用の増加に繋がる早期補修を避けるために修繕工事のパフォーマン
スを高めるという受注者インセンティヴが働くこと.もう一つは,修繕工事完了後直ちに維持管理に着手できること<AR-CREMA>
入札過程での技術革新の考慮の難しさ
リスクリウォードボーナス(契約時に,より大きいリスクに対してより多い報酬を与える)
規定した管理水準を満足するための合理的な費用の水準を行政機関は把握しているか
実際,作業単価の見積額には業者間で大きな差が現れる.予定価格の算定や最低入札価格の設定はないが,ダンピング行為は契約
不履行時の罰金で対応する<SW-SNRA>
フロリダ道路局は「自然災害や緊急事態に起因する準備,修理,移設等は受注者の責任であり,受注者は追加報酬を受け取れな
い.受注者は災害に起因する賠償を求めることができる」と規定している.受注者に対し連邦政府からの賠償がなされることもある
が手続きに数年を要するため,応札者はこの高レベルのリスクを契約に包含させ,入札額が上昇する(Segal, 2003)
より良い管理スキル
コスト情報の蓄積,管理技術の伝承は民へ
瑕疵修復計画に関して詳細に記述しなかった<VA-PILOT>
適時性規定の監督に関する計画が必要であった<VA-PILOT>
道路管理者と受注者の間のリスクバランスを適切にすることが重要である.委託契約のゴールを決めることで官に残す責任(例:
環境に関する許可,道路に関する権利)と民が管理すべきリスク(例:工期,費用,品質)が明かになる(Segal, 2003)
成功するかは人的資源,人間関係,信用にかなり依存
望ましい資源の確保
自己診断に対する重い信頼が潜在的リスク
受注者間の不充分な指揮
ネットワーク展開のため最初の数年は品質低下
道路管理者は受注者による最低限の水準のサービスしか受けられないことがある
(参考文献)
1) Gunter J. ZIETLOW and Alberto BULL : Performance Specified Road Maintenance Contracts - The Road to the Future - The Latin American Perspective , XXIst WORLD CONGRESS,
KUALA LUMPUR, 3-9 October 1999
2) 吉田武:パフォーマンスに基づく(性能規定型の)道路の維持管理契約,舗装, 2002-7
3) PAKKALA, Pekka: Innovative Project Delivery Methods for Infrastructure ? An International Perspective . Helsinki 2002. Finnish Road Enterprise
4) (社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:ニュージーランド,オーストラリアに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2003-2
5) Segal,G.F., Moore,A.T. and McCarthy,S.: Contracting for Road and Highway Maintenance , Reason Public Policy Institute, Los Angels, 2003-3
6) (社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:アメリカに見る先進的な道路維持管理,道路建設,2004-2
7) 吉田武:性能規定型維持管理契約に用いられる評価の指標と手法-米国 DC STREETS プロジェクトの1年目評価より-,舗装,2004-4
8) (社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会:英国の道路維持管理業務におけるマネージング・エージェント・コントラクター(MAC)契約,道路建設,2004-12
9) Gunter J. ZIETLOW : Cutting Costs and Improving Quality through Performance-Based Road Management and Maintenance Contracts - The Latin American and OECD Experiences ,
University of Birmingham (UK), Senior Road Executives Programme, Restructuring Road Management, Birmingham, 24-29 April 2005
10) 田崎忠行:オセアニアにおける道路のサービス水準・管理目標,性能規定型契約に関する調査報告,道路,2005-6
11) 浅野基樹,舟橋誠:冬期道路管理に関する北欧調査,北海道開発土木研究所月報№625,2005-6
14
謝辞:(社)日本道路建設業協会企画委員会・国際部会に感謝の意を表します.
貴重な調査資料をお借りしました.
後記:2006 年 5 月,雑誌「道路建設」に「道路の性能規定型維持管理契約の
現状と課題」が掲載されると同時に,与えられた紙幅に収まりきらない情報
(表及び参考文献)を土木研究所 HP にアップロードした.その後,論文・報
告等の参考文献として扱えるよう報告書の形でまとめて欲しい旨の要請が外部
研究者等から寄せられた.今般,これらの要請に応えるべく,HP に掲載して
いた情報を PDF ファイルとしてまとめた.(2008 年 2 月)
15
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