...

資料1

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Description

Transcript

資料1
広義のものづくり論と現場発のサービス概念
2012年1月
東京大学大学院経済学研究科教授
東大ものづくり経営研究センタ 長
東大ものづくり経営研究センター長
ハーバード大学上級研究員
藤本隆宏
ものづくり現場発の戦略論とは
広義の「ものづくり」
・・・
人工物に託して、設計情報=付加価値を創造し、
転写し、発信し、お客に至る流れを作り、顧客満足を得ること
「ものをつくる」ではなくむしろ「ものにつくり込む」(設計情報を)
人工物
・・・
あらかじめ設計されたもの。有形、無形を問わない。
ものづくり現場 = 「高度5メートル」の世界
本社の戦略論 = 「高度100メートル」の世界 (企業のトップの視線)
・・・ この二つがうまくつながっていなかった
この二つがうまくつながっていなかった。
ものづくり現場に遍在するものは何か?
実はモノではない。
設計である。
したがって、「ものづくり現場発の戦略論」とは、
高度5メートルの世界に遍在する「設計情報」にこだわり、
製
製品・工程の設計のありかたを虚心坦懐に観察することから出発し、
そこから組み立てなおす戦略論である。
〔1〕
〔2〕
ものづくりの組織能力 = その企業特有の「設計情報の流し方のうまさ」
アーキテクチャ = その製品・工程の設計情報が持つ構想 (設計思想)
東京大学 藤本隆宏
組織能力とアーキテクチャの適合仮説-全体の見取り図
企業・事業・現場の担当者の主体的な行為・選択
市場・顧客の
機能・コスト要求
能力構築環境
能力構築競争
もの くりの
ものづくりの
組織能力
適合?
(特定地域に偏在)
能力構築能力
製品 工程
製品・工程
アーキテクチャ
(製品ごとに選択)
特定国・特定製品の
比較優位
その他の環境条件、偶然事象、他
東京大学 藤本隆宏
社会が課す
制約条件・規制
製品の技術的・
構造的な制約
現場の基本構造とサービス概念
現場の組織
人的操作
人
人
人
人
機能享受(生活現場の場合)
人
相互調整
人
機能情報
構造情報・環境情報
自動制御
インプット(情報・エネルギー)
人工物の構造
(制御系)
人工物の構造
(被制御系)
フィードバック情報
機能、価値
アウトプット
(情報 ネ ギ )
(情報・エネルギー)
外乱
外部環境
東京大学 藤本隆宏
c
サ ビス
サービス=
人工物〔構造)を操作して
その「機能」を提供すること
統合型(チームワーク型)の現場: 長期経験で視野が広がる
「強い現場」の場合
1 0
究極の目標:生き残り
管理者
直近の目標:QCTF向上
フィールド=現場
多能的な
チームメンバー
自分の担当する作業(ボール)
C Takahiro Fujimoto, University of Tokyo
「周辺視野」 で
仲間を把握する
設計をベースにした「広義のものづくり」への発想転換
生産現場
従来の
狭いものづくり観
製造業
良い話だが・・広がりが
無い
非製造業
製造業の生産現場
生産現場
これからの
広いものづくり観…
「開かれたものづくり」
「もの」ではなく「設計」
もの」ではなく 設計」
から発想する
東京大学 藤本隆宏
開発・購買・販売現場
開発 購買 販売現場
開発・購買・販売現場
製造業
製造業の生産現場
製造業の
開発・購買・販売現場
開発
購買 販売現場
非製造業
サービス業の
サ ビス現場
サービス現場
サービス業の
開発現場
経済活動をサービス概念で読み替える
日本経済は(生産面において)日本産業の集合体である。
日本産業は、日本の現場の集合体である。
製造業における生産とは、作業者が生産設備(人工物)を操作して
製造業における生産とは
作業者が生産設備(人工物)を操作して
生産サービス(設計情報転写という機能)を発生させることである。
製造物の消費とは、利用者が物財(人工物)を自ら操作して
製造物の消費とは
利用者が物財(人工物)を自ら操作して
機能を発生させ、それを利用する「セルフサービス」活動である。
サービスの生産・消費とは、サービス設備(人工物)を作業者が操作して
サ
ビスの生産 消費とは サ ビス設備(人工物)を作業者が操作して
機能〔サービス)を発生させ、その場で利用者に提供することである。
このように、経済活動の諸概念は、サービス、すなわち「人工物の構造を
ビ
操作して機能を発生させること」に還元して解釈することが出来る。
製造業とサービス業を峻別する考え方は、もはや古い。
東京大学 藤本隆宏
c
「ものづくり」とは「設計情報の良い流れ」を作ること
現場・現物からの発想
現物
=
・・・
モノよりはむしろ「設計」に着目
設計情報+媒体
設計
情報
アリストテレス
・・・
現物=形相+質料
形相
相
(形相が本質)
質料
媒体
製品(物財・サービス)は、人工物 (あらかじめ設計された何か) である。
媒体が有形なら製造業(物財)
設計
情報
有形媒体
無形ならサービス業
設計
情報
無形媒体
付加価値の主たる源泉は設計情報にある(媒体はそれを伝える器である)。
開かれた(広義の)ものづくり ・・・ 人工物に託して、設計情報を創造し、
人工物に託して 設計情報を創造し
転写し、発信し、お客に至る流れを作り、顧客満足と経済成果を得ること。
東京大学 藤本隆宏
媒体分析とサービスの類型
媒体は有形か無形か;
耐久的か非耐久的か
サ ビス業も 枚岩ではない 媒体特性によ て タイプに分かれる
サービス業も一枚岩ではない。媒体特性によって、タイプに分かれる。
自動車
有形
食品
半導体
製品=設計情報+媒体
非耐久財
久財
他、耐久財
製品設計情報
ソフトウェア
無形
対面接客サービス
媒体(メディア)=素材
コンテンツ
放送
金融商品
耐久的
久
非耐久的
製品=情報+媒体
開かれたものづくり:良い設計の良い流れを部門間連携で
現場 = 開発は設計情報の創造である;生産は設計情報の転写である
顧客(市場)へ向かって設計情報が流れる場
開発 = 設計情報の創造
生産工程=製品設計情報
のストック
製品設計情報
製品開発=製品設計情報の創造
生産 = 設計情報の転写
販売= 設計情報
生産=製品設計情報の転写
の発信
購買
= 媒体の調達
素材=媒体(メディア)
= 情報
東京大学 藤本隆宏
仕掛品=媒体(メディア)
= 媒体(メディア)
製品=製品設計情報 + 媒体
お客さんが
客
カッコいいと
思ってくれる
ボディの
デザイン
これを創造するのが開発
この二つを結合するのが生産
(設計情報を素材に転写すること)
厚さ0 8ミリの鉄板
厚さ0.8ミリの鉄板
これを買ってくるのが購買
れを買
くる が購買
資産運用ビジネスのケース
顧客のための
ベース
ポートフォリオ
ポ
トフォリオ
開発:ベース・ポートフォリオの設計変更
生産: 売買取引の執行を通じた
ポートフォリオの実現
株券
(カミ)
購買:株券の購入
資産運用ビジネスの設計プロセス
(堀江、Fund Management 2004参照)
製品=「ポートフォリオの連鎖」。銘柄株を「部品」とする、きわめてオープン・モジュラー・
アーキテクチャの「組立製品」。
部品=株式は事前に設計された汎用的な金融商品。「キャッシュフローに関する条件付
の約束」。既存設計の汎用部品を寄せ集めるオープン・アーキテクチャ(PC,自転車)
製品コンセプト(運用哲学)にもとづき、製品機能(超過リターン)のみを追求する
「モデル・ポートフォリオ」を設計する。
これをもとに、個々の顧客および運用会社の取引(生産)上の制約条件を考慮した
「ベース・ポートフォリオ」の設計。
ベース・ポートフォリオを実現する株式の売買取引の実行(=生産)
ただし、使用環境が短期間で急変し、製品の実現パフォーマンスが劣化するので、頻繁
ただし
使用環境が短期間で急変し 製品の実現パフォーマンスが劣化するので 頻繁
な設計変更・組み換え(再設計・生産)が必要。
顧客は所有するポートフォリオ(=製品)のパフォーマンス(=超過リターン)を用意に把
顧客は所有するポ
トフォリオ( 製品)のパフォ マンス( 超過リタ ン)を用意に把
握できないので、パフォーマンスと要因分析・説明の付帯サービスが必要。
物財(有形媒体)とサービス(無形媒体)
不満足な消費者
•
物財(有形媒体) ・・・ 2段階の間接転写: ①媒体への転写(生産)
②顧客への転写(消費)
開発
設計
情報
②
①生産
媒体
(有形)
設計
情報
流通
媒体
(有形)
設計
情報
設計
情報
消費
満足
媒体
(有形)
満足な消費者
•
サービス(無形媒体) ・・・ 顧客への直接転写
不満足な消費者
開発
設計
情報
生産
媒体
(無形)
東京大学 藤本隆宏
設計
情報
媒体
(無形)
消費
設計
情報
満足
満足な消費者
製造現場での「良い流れ」作り ・・ 自動車組立の例
操作
操作
操作
操作
操作
設計
情報
設計
情報
設計
情報
設計
情報
設計
情報
媒体
(無形)
媒体
(有形)
媒体
(無形)
媒体
(有形)
媒体
(無形)
製造品質
= 転写精度
生産性
= 発信効率
鋼板
設計
情報
媒体
(無形)
東京大学 藤本隆宏
不満な消費者
完成車
プレス
車体溶接
車体塗装
最終組立
リードタイム=受信効率
リ
タイ
受信効率
最終検査
設計
情報
製品機能
媒体
(無形)
満足な消費者
サービス現場での「良い流れ」作り ・・ スーパーの例
案内サ ビス
案内サービス
売場設計
声掛け 説明
声掛け・説明
商品 価格設計
商品・価格設計
レジ サ ビス
レジ・サービス
設計
情報
設計
情報
設計
情報
設計
情報
設計
情報
媒体
(無形)
媒体
(有形)
媒体
(無形)
媒体
(有形)
媒体
(無形)
生産性
= 転写効率
サービス品質
= 転写精度
タイムリーで正確な設計情報転写
入口・・・
不満な消費者
東京大学 藤本隆宏
来店時間 = リードタイム
出口・・・
満足な消費者
サービス現場での「良い流れ」作り ・・ 京都花街の例
操作
東京大学 藤本隆宏
操作
操作
操作
設計
情報
設計
情報
設計
情報
設計
情報
設計
情報
媒体
(無形)
媒体
(有形)
媒体
(無形)
媒体
(有形)
媒体
(無形)
芸事鑑賞
お座敷遊び
予約・手配
インプット・・・
不満な消費者
操作
入席
お開き
アウトプット・・・
満足な消費者
「ものづくり」と「ことづくり」の融合(HDJ)
顧客の意識(体験)の流れ
潜在顧客①
設計
情報
生産
イベント開発
媒体
(無形)
設計
情報
消費
設計
情報
満足
媒体
(無形)
潜在顧客②
設計
情報
製品開発
生産
媒体
(有形)
設計
情報
販売
媒体
(有形)
設計
情報
消費
媒体
(有形)
既存顧客①
設計
情報
生産
サービス開発
媒体
(無形)
東京大学 藤本隆宏
設計
情報
媒体
(無形)
消費
設計
情報
満足
既存顧客②
競争力は多層的に把握せよ:「まず現場」か「まず利益発」か
① まず能力構築から・・・「現場=体を鍛える」トヨタ流の体育会系戦略
もの造りの組織能力とパフォーマンス
② まず利益構想から・・・「本社=頭を使う」欧米流(中国流)戦略
その他の環境要因
ものづくり
組織能力
深層の
組織能力
裏の競争力
パフォーマンス
他社が簡単に真似できない
組織ルーチン
現場にできることのレベル
お客から見えない
生産性
現場の実力を測る指標
整理整頓・清掃
整
整
清掃
問題解決、改善
ジャストインタイム
フレキシブル生産
生産リードタイム
生産性 スト
生産性、コスト、
適合品質
生産リードタイム
開発リードタイム、
開発リードタイム
開発生産性
能 構築競争
能力構築競争の対象領域
象
能力構築競争
東京大学 藤本隆宏
表層の
パフォーマンス
表の競争力
価格
お客が評価する
製品の実力を測る指標
納期
製品内容の訴求力
製
内容 訴求力
価格、性能、納期
ブランド、広告の効果
広告内容の訴求力
市場シェア、お客の満足度
利益
パフォーマンス
収益力
会社のもうけ
株価
金融業への応用:
資金運用ビジネスの例
もの造りの組織能力とパフォーマンス
その他の環境要因
ものづくり
組織能力
深層の
深
組
組織能力
裏の競争力
パフォーマンス
組織ルーチン
生産性
ポートフォリオ設計変更の
生産リードタイム
リードタイム
適合品質
売買取引執行の頻度
開発リードタイム
ポートフォリオ設計の
組織的問題解決能力
能力構築競争の対象領域
能力構築競争
東京大学 藤本隆宏
表
表層の
パフォーマンス
表の競争力
利益
パフォーマンス
収益力
価格
ベンチマークに対する
ベンチマ
クに対する
納期
超過リターン
製品内容の訴求力
リターン情報の
広告内容の訴求力
迅速・正確な報告
運用会社のもうけ
株価
サービス産業におけるベンチマーキング
組織能力の切磋琢磨(能力構築競争)に、ベンチマーキングは不可欠。
現場と現場、企業と企業、そして産業と産業の間で。製造業とサービス業も。
サービス業の製造業化、製造業のサービス業化は、すでに起こっている。
ただし、やみくもな比較は無意味
何を比較するのか(組織能力を体現する正しいメトリック)
誰と比較するのか(比較の単位をあわせること)
何のために比較するのか(目的意識)
「組織能力→裏の競争力→表の競争力→収益」という流れで、
競争力を多面的 多層的に把握すること
競争力を多面的・多層的に把握すること。
「設計情報の創造・転写システム」としてみた
統合型 開発 生産組織能力( タは典型例)
統合型の開発・生産組織能力(トヨタは典型例)
生産:「工程から製品への、密度・精度の高い設計情報の転写」
生産
「工程から製品 の 密度 精度の高い設計情報の転写」
・・・ 設計情報(付加価値)をお客様に向けて「よどみなくスーっと流す」
製品開発:「早期で統合的な問題解決サイクルの束」
製品開発
早期で統合的な問題解決サイクルの束」
・・・ 未完設計情報の待ち時間を減らし、 「よどみなくスーっと流す」
サプライヤー・システム:
サプライヤ
システム
「長期安定取引」「少数者間の能力構築競争」「まとめて任せる」
・・・ 設計情報がサプライヤーとの間で淀みなく流れる
販売・サービス・システム
お客様に、高質な経験(customer experience)を、正確かつタイムリーに発信する
・・・ 設計情報(付加価値)がお客様に向けて淀みなく流れ転写される
要するに・・・「知のめぐりの良い組織」である
東京大学 藤本隆宏
「不足の経済」 による統合型組織能力の偏在
急成長期の共通体験が、現場群(産業)における組織能力の偏在を生む
「不足の経済」(economy of scarcity) ・・ 若いころの貧乏暮らし
→
企業内分業を抑制し (多能工化)
(多能 化)
企業間分業を促進し 、
企業内 企業間の協業(チ ムワ ク)を促進する
企業内・企業間の協業(チームワーク)を促進する
生産資源の不足は、ある条件 (能力構築能力の存在)の下で、
生産性の向上を、なかば強制する (高地トレーニング効果)。
その後、生産資源が充足されれば、爆発的にアウトプットが成長する。
その後
生産資源が充足されれば 爆発的にアウトプ トが成長する
その後、アウトプットが過剰になれば、競争は促進される。
以上は、意図せざる結果(怪我の功名、ひょうたんから駒)の色彩が強い。
東京大学 藤本隆宏
優良現場の頑張り ・・ 日本に残るための生産性向上
(1) 作業・機械の正味作業時間比率(=正味作業/工数)アップ = 転写密度のアップ
・手待ちのムダとり
手待ちのムダとり ・・・ ラインバランス、多作業持ち、助け合い
ラインバランス 多作業持ち 助け合い
・動作のムダとり ・・・ 動作の合理化(動作経済)
・搬送・物流のムダとり ・・・ 二度手間
・段取り替時間の圧縮・ゼロ化 ・・・ 外段取り化、段取りレス化、技術改良
・歩行時間、ワーク選択・取り出し、ワーク着脱、起動時間の圧縮
歩行時
択
着脱 起動時
縮
・設備可動率アップ(設備故障・チョコ停への対応時間の短縮)
・設備稼働率アップ(ラインあたりの生産量アップ、品種数アップ)
(2) 作業・機械の正味作業スピード(正味作業時間/個)アップ = 転写速度のアップ
・習熟曲線の利用
習熟曲線の利用 ・・・ 安定的な作業配分、動作の標準化
・新技術による転写速度アップ ・・・ 切削速度(回転・送り)、反応速度アップ
・新技術による作業の省略・統合 ・・・ 自動化・無人化、加工レス、仕上レス、組立レス
(3) 原材料生産性(歩留まり・原単位)のアップ
原材料生産性(歩留まり 原単位)のア プ ・・・ 被転写側の効率アップ
被転写側の効率ア プ
・製品あたりの組み付け部品点数の低減・削除 ・・・ VA/VE活動
製品あたりの素材使用量の削減 ・・・ 材料取りの効率化、素形材の加工しろ削減
材料取りの効率化 素形材の加工しろ削減
・製品あたりの素材使用量の削減
・工程内良品率アップ(品質作りこみ、工程内検査、最終検査の充実)
・新技術による原単位(製品あたり材料・燃料使用量)の低減・削除
東京大学 藤本隆宏
優良現場の頑張り ・・ 良い流れを作る工程改善
(1) 生産期間に占める正味作業時間比率のアップ = 転写密度のアップ
・原材料・仕掛品・製品の安全在庫、不要在庫削減
・拠点間輸送の近接化・高速化
拠点間輸送の近接化 高速化
・ライン間搬送の近接化、高速輸送化
・機能別レイアウトの製品別ライン化、ライン短縮、工程間距離の短縮(間締め)
・拠点間搬送ロットサイズの縮小
・ライン間搬送ロットサイズの縮小
ライ 間搬送
トサイズの縮小
・可動率アップ (設備故障・チョコ停時間低減、段取り替え時間低減)
・ラインバランスの改善(同期化)
(2)生産期間内の正味作業スピード(正味作業時間/個)アップ = 転写速度のアップ
・習熟曲線の利用 ・・・ 安定的な作業配分、動作の標準化
・新技術による転写速度アップ ・・・ 切削速度(回転・送り)、反応速度アップ
・新技術による作業の省略・統合
新技術による作業 省略 統合 ・・・ 自動化・無人化、加工レス、仕上レス、組立レス
自動化 無人化 加
仕上
組立
(3) 需要予測の高精度化
(4) 工数計画の柔軟化:需要にあわせた生産能力の弾力的調整
(5) 生産計画の柔軟化:需要変動に合わせた生産計画の段階的調整
(6) 生産統制の厳格化:計画通りの生産の実現(可動率、直行率などのアップ)
東京大学 藤本隆宏
ものづくり概念のサービス産業への応用可能性
組織能力・裏の競争力から日本のサービス産業を見直す
能力構築競争を活性化できるか・・・お客へ向かう設計の流れを作る競争
組織能力
ア キテクチャ選択
アーキテクチャ選択
コンセプト・仕様の創造
サプライヤーとの共同開発
開発フェ ズのオ バ ラップ
開発フェーズのオーバーラップ
重量級プロダクトマネージャー、他
裏の競争力
設計品質
製造品質
開発生産性
開発リードタイム
サービス業と製造業は確かに違う。しかし、それは、分析の最後に言うこと
業 製造業 確
違う。
、そ
、分析 最後 言う
である。最初から「違う」といえば、思考停止に陥り、業際学習の機会を失う。
例:
トヨタ・システムとサービス業の知識交流
病院(5S)、三重県庁(プロジェクト管理)、警察(予防保全) ・・・ 幅広い応用可能性
越谷郵便局 入り口で仕分け作業を加えることで整流化
越谷郵便局:入り口で仕分け作業を加えることで整流化
某スーパーマーケット大宮支店
白線引き、JITてんぷら揚げ、JIT肉切り、キャベツ1個流し・・
線
、
、
、
半年の指導。しかし何が一番勉強になったと言っているか? (顧客を喜ばせること)
自動車販売ディ ラ
自動車販売ディーラー:
店頭販売(ホームで組織能力対応)
店頭販売(ホ
ムで組織能力対応)
訪問販売(アウェイで個人能力対応)
トヨタ的組織能力を活かすなら店頭販売へシフトする必要。しかし我慢できるか。
ディーラー本社の意思をどうやって店舗に伝えるか。店舗の自主性とのバランス
「イライラ取り」と「ワクワク作り」は顧客満足の異なる軸。トヨタは前者重視。しかし・・・
高級ホテルビジネス
・・・リピート客を毎回びっくりさせ喜ばせる。即興対応能力
トヨタ自動車の伝統は標準作業の徹底。即興でお客を驚かせ続けることは?(レクサス店)
損害保険商品における設計情報とものづくりプロセス(1)
(木下 日本開発工学会発表論文 参照)
(木下、日本開発工学会発表論文
(1)開発=設計情報の創造
製品=「将来において一定の事象が発生した場合におけるキャッシュフロー
および役務提供(示談代行など)に関する約束、およびその履行」
顧客に約束する設計情報の内容:
①補償内容(対象者範囲、リスク範囲、保険金支払金額)
②役務提供(示談代行 付帯サ ビス)
②役務提供(示談代行、付帯サービス)
③保険料区分(自動車や加入者の属性)
(2)生産・販売・消費 = 契約締結プロセス+保険金支払いプロセス
本社が 般的な製品設計情報を紙媒体に転写(約款集、パンフ、企画書)
本社が一般的な製品設計情報を紙媒体に転写(約款集
パンフ 企画書) →
代理店が企画書で説明 →カスタマイズした設計情報(保険証券)を紙媒体に
転写 → 事故発生 → 事故情報を入手 → 支払可否判断 → 支払・示談
代行など
損害保険商品における設計情報とものづくりプロセス(2)
(木下、日本開発工学会発表論文 参照)
保険金不払い・支払漏れ問題の背景
あらゆる将来事象の可能性を言語で表現するため、保険約款は10万字を超える。
あらゆる将来事象の可能性を言語で表現するため
保険約款は10万字を超える。
預金商品などと違い、構造の複雑な金融商品。
正確なリスク記述のため難解な表現が多い。(顧客の言葉というより役所・法律用語)
競争オープン化により、商品の複雑化(特約の複雑化など)が加速。
損保会社自身がその複雑さに対応しきれず、不払い問題(製造品質問題)を起こした。
適合品質・顧客満足向上のための「ものづくり発想」の取り組み
・・・NS社の『ご契約内容確認マップ』
顧客の情報処理可能量に合わせて、A3で1枚(説明20分)に設計情報を絞る。
顧客にとっての重要性に応じ、マップ上の各「部品」の位置、面積、粒度などを決定。
プ
各
顧客ごとにマップをカスタマイズして紙媒体に転写。色やイラストで分かりやすく。
顧客にとって「お薦め」の内容がよくわかるように提供情報の表示方法を工夫。
イトーヨーカ堂の事例: 販売の現場でも「ものづくり」の能力構築を
スーパーは、バブル期に比べ店舗数は約倍増、店舗あたり売上は半減に近い。量を追い、店舗数拡
大と個別店の採算悪化の悪循環に陥った企業、企画オンリーの「PPPPサイクル」(フォローなし)企業
も没落
質をまず重視し、顧客へ向かう設計情報の流れを重視し、PDCAサイクルをまわし、結果として量を
得る、「ものづくり精神」の強い企業が結果を残した ・・・ 例えばイトーヨーカ堂/セブン-イレブン
お客様は、まず店を選び、ついで品物を選ぶ
お客様は
まず店を選び ついで品物を選ぶ ・・・ 店舗設計、売り場設計、品揃え設計とその実施
店舗設計 売り場設計 品揃え設計とその実施
が鍵。地域ごと、店ごとの顧客ニーズをデータと実感で把握、シミュレーション(思考実験・実物実験)
による先取り的な試行錯誤。現状を否定する仮説検証を全社員(パート従業員も含めて)が心がける。
データに基づく問題の顕在化が先行。トップから従業員に、問題指摘と解決事例が常に発信される。
づ
プ
個別商品は、品揃えという組立製品の「部品」である。MDによる個別商品の開発は、売り場開発に対
する 先行開発」と位置 けられる。 ンセプト創造に基 く試作と評価の繰り返し。
する「先行開発」と位置づけられる。コンセプト創造に基づく試作と評価の繰り返し。メーカーとの連携。
カ との連携。
売り場や品揃えの詳細設計の権限は現場に委譲。発注(品揃え設計の更新)、陳列設計、パック設
計、作業設計など、「顧客へ向かう流れ」を作る設計作業は、パートを含む売り場担当が行う。
売り場間・店舗間のローテーション、情報共有、相互学習により、多能工化、全体知識の蓄積(周囲
が見える従業員)、チームワークなど、現場の「統合型組織能力」が構築される。
現場の従業員が粗利意識を持つ。粗利に在庫コストも含まれる。つまり在庫意識を持った現場による
現場の従業員が粗利意識を持つ
粗利に在庫コストも含まれる つまり在庫意識を持った現場による
発注。個々の担当者が全体最適を指向、売り場全体で粗利を確保する戦略を考える。
シミ レ シ ンとしての製品開発
シミュレーションとしての製品開発
開発
顧客満足プロセスの
シミュレーション
消
費
製品構造の
形成プロセスの
シミュレーション
シミュレ
ション
製品機能の
発現プロセスの
シミュレーション
シミュレ
ション
生産工程
製品構造
製品機能
顧客満足
工程設計
構造設計
機能設計
コンセプト創造
販
売
生
産
サービス業の例:イトーヨーカ堂の売り場開発
ビ 業 例
カ堂 売り場開発
(ものづくり=設計情報の流れ作り)
売り場開発
顧客満足プロセスの
仮説発見・仮説検証
(娯楽としての
買い物の魅力)
店舗機能の
発現プロセスの
仮説発見・検証
売り場の機能
顧客満足
消
費
(顧客に転写する
情報の束・・見映え、
価格、声かけ、接客)
売り場作りの
作業設計
売り場・品揃えの
構造設計
売り場・品揃えの
機能設計
顧客満足の
コンセプト創造
店舗構造の
形成プロセスの
仮説発見・検証
売り場作り作業
売り場・品揃えの
構造
販
売
(レイアウト・陳列形態) 生
産
(発注・開梱・調理・
パック、陳列など)
サービス業の例:顧客指向の損保商品開発
売り場開発
保険機能の設計
顧客満足重視の
コンセプト創造
(対象、リスク、
支払、役務、属性)
顧客満足プロセスの
仮説発見・仮説検証
(文言、レイアウト)
店舗機能の
発現プロセスの
仮説発見・検証
損害保険の機能
顧客満足
(事故発生時の安心感)
消
費
(事故発生時の
保険金支払い)
契約・支払プロセス
契約
支払
の設計
(企画書、保険証券、
支払判定、支払履行)
損害保険書類
の設計
店舗構造の
形成プロセスの
仮説発見・検証
契約・支払プロセス
損害保険の構造
(保険証券、付帯書類)
生
産
生
産
販
売
(企画書、保険証券、
支払判定、支払履行)
応用:サービスとしての建築(野城・安藤教授との研究)
「大地に根を張った人工物」としての建築物。
地形との擦り合せ。 完成品の移動なし。 最終生産地 = 消費地
現地での現物あわせ (設計を現物にあわせる) →
総合品質を設計品質と製造(施工)品質に分解することが難しい。
サービスとしての建築: 建築物から利用者への無形の情報発信。
情報発信体としての建築物。「場づくり」としての建設業
顧客システムの多層性: 利用者、施主、設計事務所、ゼネコン・・
構造を所有する建築主
機能を享受する利用者
設計(基本設計・実施設計)を行なう設計事務所
施工管理を(あるいは設計も)するゼネコン
施工するサブコン(専門工事業者)
設備・部品・部材を製造する部材・設備サプライヤー
「普通のものづくり産業」として、建設業の
諸
諸慣行、組織能力、アーキテクチャを見直す必要がある?
組
直
が
東京大学 藤本隆宏
モジュラー(組み合わせ)型アーキテクチャと
インテグラル(擦り合わせ)型ア キテクチャ
インテグラル(擦り合わせ)型アーキテクチャ
パ
パソコンのシステム
Modular Architecture
モジュラー(組み合わせ)型
計算
パソコン
印刷
プリンター
投影
プロジェクター
製品の機能
製品の構造
乗用車
走行安定性
Integral Architecture
インテグラル(擦り合わせ)型
乗り心地
燃費
製品の機能
東京大学 藤本隆宏
サスペンション
ボディ
エンジン
製品の構造
アーキテクチャの位置取り(ポジショ ニング)戦略
顧客の製品・工程は?
インテグラル
インテグラル
自社の
製品 工程
製品・工程
は?
モジュラー
東京大学 藤本隆宏
モジュラー
中インテグラル・
外インテグラル
中インテグラル
中インテグラル・
外モジュラー
日本の自動車 2輪部品
日本の自動車・2輪部品
自動車用樹脂
システムLSI
コピー・プリンタ消耗品・・
インテル、シマノ(ギア)
インテル
シマノ(ギア)
信越化学(半導体シリコン)
村田製作所(コンデンサ)
超小型家電、プリンタ・・・
中モジュラー
外インテグラル
中モジュラー・
外モジュラー
デル(カスタマイズPC)
デンソー(一部の部品)
キーエンス(ソリューション)
キ
エンス(ソリュ ション)
ダイキン(ソリューション)
汎用樹脂、
汎用グレード鋼、
汎用液晶
汎用液晶、DRAM・・・
建設関連の位置取り(ポジショ ニング)戦略
東京大学・吉田発表より(野城研究室)
顧客の製品・工程は?
インテグラル
インテグラル
自社の
製品 工程
製品・工程
は?
モジュラー
東京大学 藤本隆宏
モジュラー
中インテグラル・
外インテグラル
中インテグラル
中インテグラル・
外モジュラー
鉄骨躯体 木軸躯体
鉄骨躯体・木軸躯体
ダクト
マルチ空調機
標準型エレベータ
中モジュラー
外インテグラル
中モジュラー・
外モジュラー
特注サッシ・システム
空調ソリューション
ホテル用ユニットバス
システムキッチン
組立家具
標準型サッシ
サービス業としての医療のケース:
サ
ビス業としての医療のケ ス:
統合型組織能力の構築
東京大学 藤本隆宏
サービス業としての医療
① 「健康でない人・健康に不安のある人」をインプットとして受け入れ、
② 医療行為という設計情報 (=付加価値) を患者に直接転写し、
を患者に直接転写し
③ 「健康な人・健康に不安のない人」をアウトプットとして送り出す。
医薬・医療システム開発
設計
情報
生産
媒体
(無形)
医療行為
=サービス
サ ビ
設計
情報
媒体
(無形)
設計
情報
健康が不安な人
受診
健康な人
「究極のサービス」としての医療行為 ・・・
受診者の「経験の流れ」という観点から見れば、やはり「サービス」である。
東京大学 藤本隆宏
医療における「裏の競争力」(品質・期間・生産性)
健康が不安な人
受診
健康な人
① 品質: 設計情報の転写ミス(医療過誤)は重大な結果を引き起こす (5S)
② リードタイム: 患者の待ち時間+受診時間の短縮化
患者の受診時間 (設計情報受信側) の正味作業時間の最大化
③ 生産性: 医療行為 (設計情報発信側) の正味作業時間の最大化
統合型ものづくりによる「正確で淀みのない設計情報の流れを作る」という原則は、
病院経営の原則にも通じる。(トヨタ自動車;ハーバード大学)
基本は、「上流の整流化」
例: 患者情報の管理 ・・・ 過去の問題発見・問題解決活動の蓄積
次回の治療における期間短縮・効率化・精度アップ
ここを電子化する努力は ものづくり現場IT導入
ここを電子化する努力は、ものづくり現場IT導入
東京大学 藤本隆宏
洛和会音羽病院・電子カルテ導入の事例
健康が不安な人
受診
健康な人
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
41
洛和会音羽病院・電子カルテ導入の事例
健康が不安な人
受診
健康な人
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
42
出所:山本・佐藤(2004)p.175より引用
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
43
情報技術の特徴
日付順に担当医師と検査記
録ファイルが表示されている。
(あるひとつのパートをクリッ
クすると 右画面にその詳し
クすると,右画面にその詳し
い内容が表示される)
►情報のオープン化
►情報の明確化
►情報伝達の自動化
情報伝達の自動化
►コミュニケーション・ツール
►情報の保存・抽出
出所:洛和会ヘルスケアシステム提供
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
44
電子カルテ導入の事例 (洛和会音羽病院)
(具 承桓 久保亮一
久保亮
『ものづくり経営学』 3部6章)
電子カルテ・システム(EMR:Electronic Medical Record)
医療政策は、医療機関の経営効率の向上よりも公平性・平等性に重点をおいてきた。
しかし、収益性や効率性を考える必要が (1病院当たり約100億円の赤字 )。
① オペレーションの効率化による「ムダ」(患者・医者・スタッフの待ち時間)の短縮化。
② 品質管理 ・・ 医療過誤の防止
診察・問診 → 設計図にあたる処置案・処方箋を医師が描く
→ それを正確に患者に転写
正確な診察結果(設計品質) → 的確な処置(製造品質)
カルテは医療オペレーションのフェーズによって、設計図、作業指示書、品質管理表とし
ズ
書
て機能
EMRが医療機関に導入されつつあるが、目立った成果が得られていない。
EMRが医療機関に導入されつつあるが
目立 た成果が得られていない
ITのみで成果があがる訳ではなく、その情報を用いる組織能力の構築が重要。
東京大学 藤本隆宏
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一 『ものづくり経営学』 3部6章)
図 1. 患者の流れとカルテの流れ(模式図)
受付
診察券
診察選定・指示
専門科での治療
調剤
発行
請求
会計
検査機関
会計・計算
処方薬剤の記録
看護師の転記
医師の診察記録
Cのバッチ処理
C探し準備
C作成
保管場所
:業務の流れと患者の流れ
:カルテ(C)の流れ
:患者さんの待ち時間(無駄な時間)
点線内 :カルテ(C)の流れ
出所:インタビューより筆者作成(具・久保・児島,2005 より)
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一
久保亮
『ものづくり経営学』 3部6章)
病院は、診察科目や規模に応じて医師数、看護師数、病床数、設備、診療行為の単価、
建物の形状等が規制される
建
規
。 → 時間当たり診察可能な患者数を増やす必要。
数
外来患者の場合 ・・・ 発信側からみれば、
① 診療プロセス(受付、診察選定・指示、診療、検査、調剤、請求、会計)
② カルテの流れ(バッチ処理で探す、運ぶ、転記)
紙カルテでは、「カルテの流れ(検索や各工程への伝達)」と「患者の診察の流れ」にズレ
診察が終わっても、作業指示書としてのカルテがなかなか来ないため、次の工程 (検
査、調剤、会計)は作業を進めることができず、現場の手待ち時間と患者待ち時間が同
時に発生していた 「患者をよどみなく流す ことができず 診察可能な患者数が限定
時に発生していた。「患者をよどみなく流す」ことができず、診察可能な患者数が限定。
患者の流れと設計情報(カルテ)の流れにズレが生じ、工程が分断され、時間のムダと
診察可能患者数の制約が生じていた。
診察可能患者数の制約が生じていた
組織的な問題 ・・ 病院は医師、看護師、コ・メディカル(薬剤師・検査技師など)、事務
職などの専門家集団の集合 部門横断的な調整が難しい。権限体系が曖昧。
職などの専門家集団の集合。
部門横断的な調整が難しい 権限体系が曖昧
→ 各組織間に「壁」が存在。 部門間調整が難しかった。
東京大学 藤本隆宏
紙カルテの保管場所
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
48
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
49
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一
久保亮
『ものづくり経営学』 3部6章)
音羽病院では 2000年にEMR導入
音羽病院では、2000年にEMR導入。
導入目的は、紙カルテの保管費用の削減、患者(受信側)の待ち時間の短縮、
病院側(発信側)における付加価値を生まない時間の削減 業務改善・構造改革
病院側(発信側)における付加価値を生まない時間の削減、業務改善・構造改革。
トップダウン型で導入を決定し、権限を与えたプロジェクトチームを発足。
本部はプロジェクトの背後から支援。
導入日程に合わせ、投資資金の確保、スタッフのITリテラシーの向上、
メディカル・システム・エンジニア(MSE:Medical
メディカル
システム ンジ ア(MSE:Medical Systems Engineer)の育成。
医療現場のオペレーション担当者によるプロジェクトチーム。チームリーダーは医師。医
師、看護師、放射線技師、臨床検査部、薬剤部、管理部、情報システム部(MSE)から
各1名の計8人で構成。
各工程の前後にムダ時間が発生という事実をチームで情報共有し、継続的に問題解決。
東京大学 藤本隆宏
医局における電子カルテ決定事項の掲示
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
51
資料:洛和会ヘルスケアシステム提供。
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一 『ものづくり経営学 3部6章)
MSEを育成 →
医療現場の医師、看護師、薬剤師に使い勝手のよいソフトを
自製でカスタマイズ(画面の見易さ マウスのクリック数 項目など)
自製でカスタマイズ(画面の見易さ、マウスのクリック数、項目など)
プロジェクトチームで、オペレーション上の綿密な動作・工程分析
→ 医療現場に適したソフトであるか否かを事前に判断
導入後必要となる「ITリテラシー」を院内教育でレベルアップ
工程数の圧縮によるオペレーションの簡素化
カルテの電子化によって、患者情報と人の流れをほぼ同期化
現場のムダ時間を削減
→
収益増、診察可能患者数の増加
例えば、受付での本人確認と同時に、診察室の医者のPC画面で患者情報を表示
→ 最も時間を要したカルテのバッチ処理がなくなり、待ち時間の短縮
も時 を
バ
がな な 待 時
短縮
診察完了後、処方や請求書作成の時間が短縮。34分から3分に
健康が不安な人
受診
東京大学 藤本隆宏
健康な人
外来患者に対する業務フローの変化
紙カルテ
電子カルテ
出所 洛和会内部資料より
出所:洛和会内部資料より
EMCS導入後に,
各専門職の工程数の減少
健康が不安な人
受診
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
健康な人
電子カルテ導入のメリット・オペレーションの効率性
電子カルテ導入のメリット
オペレ ションの効率性
一工程
工程
一工程
工程
無駄な時間
一工程
工程
無駄な時間
一工程
工程
無駄な時間
淀みのない
淀
な
流れを作る
一工程
一工程
一工程
一工程
約4割が外来
①1人あたりにかかる診療総時間の短縮
②1人あたりの診察時間(賞味作業時間)が同様であれば
出所:筆者作成
短縮された時間分だけ,より多くの患者を診察可能になる
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
54
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一 『ものづくり経営学』 3部6章)
これらの効果により、全体で外来患者の待ち時間が約70分から約35分に
測定時期
2000
1 時間以上の比率
平均待ち時間
10 月
(導入前
均 72.7
72 7
N 4 832
N=4,832
54 8%
54.8%
を見ると、導入前38工程で考えるとむしろ短縮
されている。
2002 年 10 月
(導入後) 平均 33.6 分(N=5,877)
17.8%
2003 年 2 月(導入後)
平均 36.1 分(N=6,482)
18.8%
EMR導入による工程数の変化
導入前の38工程から14工程にまで短縮。医師の担当工程のみ、カルテの入力作業で
1工程が増加したが、全体としては大幅短縮。
Co-medical
医師
看護師
事務員
計
紙カルテ
5
11
18
4
38
EMR
6
2
5
1
14
+1
-9
-13
-3
-24
R導入による工程数の変化を見ると、導入前38工程だったのが14工程まで短縮され、紙カルテの時と比べて24工程が削減できた。医師の担当工程のみ、
工程数の増減
健康が不安な人
受診
健康な人
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一
久保亮
『ものづくり経営学』 3部6章)
看護師の場合、カルテの検索、搬送、記載、転記など、紙カルテ時代に行っていたタスク
紙
がなくなった。 → 患者関連業務に集中、質のよいサービスを提供。
転記ミスや読み違いなどの初歩的なミスを回避できるようになった。
例えば、全体医療費の2~3%を占めていた請求漏れと未徴収医療費額が低減。
1万処方当たりの誤薬が2000年に1.10だったが、導入後の2001年には0.50と半減以下。
カルテは「医師のみのもの」から「共有できる情報」となった。
健康が不安な人
受診
健康な人
東京大学 藤本隆宏
ベッドサイド端末
「患者さま参加カルテ のイメ ジ
「患者さま参加カルテ」のイメージ
患者さまカルテ参照画面
医療関係サイト
画像表示画面
検査結果表示
患者さま記入画面
Copyright by KAMEDA MEDICAL CENTER, All rights reserved 13
電子カルテ導入の事例
(具 承桓 久保亮一
久保亮
『ものづくり経営学』 3部6章)
音羽病院におけるEMR導入の成功要因 ・・・
① 院内オペレーションの工程分析を綿密に実施
インダストリアル・エンジニアリング(IE)における作業研究。
患者の流れと各工程の所要時間を測定し、ボトルネックを発見。
その問題を解決する手段としてEMRを想定 。
② 機能横断的なチームを設置
問題を事前にシミュレーション。
組織全体に徐々に伝達する浸透型プロセス。
継続的な改善で、現場にフィットしたEMRを作り上げる。
医局間のコミュニケーションの活性化を図り、組織間の壁を低くする。
③ 工程分析によりソフトの評価・実行能力を組織内に構築
この結果、使いやすいソフトをカスタマイズできた。
東京大学 藤本隆宏
EMRの予期せぬ効果
・・・ 医師同士のコミュニケーション活性化と知識のトランスファー
 EMR導入と同時に医局の大部屋方式へ
 異なる診療科に所属する医師同士が,診療前に電子カルテを見ながら,
診療に関する議論が行われるようになった。
 IT技術導入によって,今までには見られなかった知識移転が。
技術導入 よ
,今ま
見られな
知識移転 。
Copyrights © KU All Rights
Reserved
2008.1.24
61
まとめ:
「ものづくり現場」発の競争戦略
競争と相性を常に意識せよ!
能力構築競争
お客から見えない
現場の実力を測る指標
他社が簡単に真似できない
ものづくり現場の実力
統合型ものづくり
組織能力
統合型ひとづくり
(多能工が中心)
統合型 IT構築
(協調環境対応)
裏の競争力
お客が評価する
製品の実力を測る指標
結果としての
会社の儲け・株価
表の競争力
収益力
相
性
統合型設備作り
(ローコスト自働化)
営業・販売の
オペレーション力
本社の
戦略構想力
ものづくり発の
ブランド力
本社のその他の
組織能力
東京大学 藤本隆宏
実践的な含意・・製造業・サービス業の枠を取り払え
設計で人を感動させる。 設計で違いを出す。 それが、「開かれたものづくり」の本質
顧客に向かう「設計情報の良い流れ」をつくり、差をつける。 「技術の離れ小島」にしない
常に競争意識を持つ (ただし、設計と流れの良さを競うこと。 企画書の競争ではない)
常に戦略観を持つ (自社の強み、弱み、攻めどころ、守りどころはどこか)
生産現場の枠を超える。 開発・生産・購買・販売の連係によるビジネスモデル構築
製造業・サービス業の枠を超える。 製造業のサービス化、サービス業の製造化
既存の業界意識を超える 護送船団はもはや成り立たぬ。
既存の業界意識を超える。
護送船団はもはや成り立たぬ フロントランナーを走らせる
フロントランナ を走らせる
固有技術の壁を超える。
業界を超えて「ものづくり知識」を共有する
地域に根ざしつつ地域を超える。 地域素材は活かすが、地域素材に縛られない
「ものづくりインストラクター」を誘致
「ものづくりインストラクタ
」を誘致。 悠々自適+ものづくり貢献で有意義な定年後を
東京大学 藤本隆宏
日本は現場を鍛え「設計立国・ものづくり立国」を目指せ
① 実需経済のグローバル化
③ 微細な産業内貿易
細な産業 貿
② 国際分業型の産業構造
④ 設計に対する厳しい制約条件
す 厳
約条
以上が21世紀の「意外に常識的で古典的なトレンド」であるなら、
産官学は 何をすべきか? 企業は、産業は、現場は、地域は、何をすべきか
産官学は、何をすべきか?
企業は 産業は 現場は 地域は 何をすべきか ・・・ ?
(1)日本の「現場力」(ものづくり力・設計力)
(1)日本の「現場力」(ものづくり力
設計力) を維持せよ
不況脱出後の復元力は、「良い現場」を日本に残せるか次第だ!
(2)日本の現場力と相性の良い製品に集中せよ。
本
場力と相性 良 製
集中
当面、その中心は、
中心
厳しい制約条件の中で設計する「擦り合わせ設計」「作りこみ生産」の製品
(3)日本の産官学は、地道な「設計立国」をめざせ
「良い現場」を日本に残し、それを活かす製品に産官学が集中し、
「難しい設計は日本に任せろ!」という声価を世界から得られれば、
難しい設計は日本に任せろ!」という声価を世界から得られれば、
日本住民は、比較的高い生活水準で、食べていくことが可能になる。
東京大学 藤本隆宏
参考文献
製品開発の基本的「成功パターン」とは何か(自動車)
製品開発の基本的「成功パタ
ン」とは何か(自動車)
→ 藤本・クラーク『製品開発力』ダイヤモンド社
効果的製品開発手法の異なる産業間での比較(コンピュータ、医薬、他)
→ 藤本・安本共編著『成功する製品開発』有斐閣
トヨタ自動車の強さの源泉は何か? → 藤本『生産システムの進化論』有斐閣
製品アーキテクチャのコンセプトを戦略に活かすこと
→ 藤本・武石・青島編『ビジネス・アーキテクチャ』有斐閣
文系・理系の溝を埋めることをねらった生産管理・技術管理の教科書
系
系 溝を
を
生産管
技術管
教科書
→ 藤本『生産マネジメント入門(上)(下)』日本経済新聞社
自動車産業はなぜ強かったのかを問う同時代史 → 藤本『能力構築競争』中公新書
ものづくり現場発の戦略論の提案
→ 藤本『日本のもの造り哲学』日本経済新聞社
対中国戦略へのアーキテクチャ論の応用
対中国戦略
キ ク
論 応
→ 藤本・新宅編著『中国製造業のアーキテクチャ分析』東洋経済新報社
サービス業にも広がる「開かれたものづくり」
サ
ビス業にも広がる 開かれたものづくり」 → 藤本他『ものづくり経営学』光文社新書
日本の強いプロセス産業への応用 → 藤本・桑嶋編『日本型プロセス産業』有斐閣
Fly UP