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アフリカ旅行の思い出︵一九九一年八月︶

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アフリカ旅行の思い出︵一九九一年八月︶
 アフリカ旅行の思い出︵一九九一年八月︶
念願であったアフリカ旅行に参加した。
増
田
和
人
成田発インド航空、インドまでの途中、バンコク、カルカッタで給油してボンベイ着。
街に出ると、食べ物の腐った様な異臭がする。手に触れる所は何処もベトベト・ジトジトで丁度日本の梅雨期
の様で、不快指数最高。空港もバス停も、人の集まる所は何処も驚く程の人達で﹁物乞い﹂集団である。
胸のポケットに入れてあるタバコ・ボールペン等何でも﹁くれ﹂と言う仕草をする。
後の方で、旅行団の誰かが﹁財布を見せるなよ!﹂と、注意を促している声が聞こえた。
強い太陽が当たっていながら雨が降っている。クリーニング屋の集団が汚れた水で衣服を洗っている。ボンベ
イセンターホテル泊。
翌日は、いよいよ目的地アフリカへ。
眼下にアラビア海、アフリカ大陸、蛇行する大河やソマリヤ半島が見える。
二台のジープに分れ、朝から大平原へ。
動物を求めてサファリへ出発。
アンボセリ平原からキリマンジャロを眺めながら野生の王国を探検。
舗装道路が終ると、ナマンガ村のガソリンスタンドで給油。そこには林があって小さな集落がある様で、七∼
八人のおばさん達が、声高に立ち話に夢中になっていた。
車が進むにつれて見渡すかぎり集落らしいものは無く、一面乾燥した大草原。
ダチョウが、一羽道路を横切った。
マサ イ 族 の 牧 人 が 通 る。 次 第 に 野 牛、 シ マ 馬、 ヌ ー、 キ リ ン、 な ど野生 の 動物が 多 くなっ て くる。走行 中 に、
きれいな花に囲まれた家があり、同行の友人がビデオカメラを向けた途端に、ケニア軍の兵士が竹竿をかざして
家から飛び出して来て、車のボンネットをガンガン叩く。﹁軍の施設を撮るな!﹂と言う事らしい。撮った本人と
私︵最年長︶が、基地司令官に呼ばれてお説教二十分間。
司令官室まで辿り着くのが大変だった。
屋外の通路や、屋内の廊下に身長二メートル位の背の高い、ベタ金の勲章をつけた幹部が大勢並んで立っていた。
フィルムは没収され、カタコトの英語で大汗をかいて釈明する。︵隣国ソマリア紛争の前年でケニア軍は緊張し
ていた。︶
やっと車が走り、人の住む集落から遠ざかり、乾燥で砂埃が十センチも積もっている広い道路の遙か彼方から
大型トレーラーが、野菜を積んで驀進してきた。すれ違った途端、前方は砂埃で何も見えない。急ブレーキが掛
った瞬間、後からドカーン!追突の余波。
幸い誰も怪我がなくほっとした。
白人 の 車 は、 ラ ジ エ ー タ ー か ら 水 漏 れ、 我 が 日 産 車 は、 ロ ー ギ ア、セ カ ンドギ ア が駄目。我が キム 運転手 は、
ライオンの潜む原野で奮闘して、丸太を差し込んで扉が開いてしまうのを防ぐ応急処置をし、サードでゆっくり
発進し、しばらく勢いがつくまで走り、トップに入れる操作を繰り返しデコボコ道をハイスピードで走る。
案内人は、﹁次の見学地に行くよ。﹂と、簡単に言うがそれがおよそ百キロメートル先であった。シマ馬、野牛、
ヌー、象などの自然の野生の群の中に、マサイ族の放牧の群れが混じって移動しているので油断出来ない。
マサイ族にカメラを向けただけで、石や槍が飛んでくるそうである。撮影厳禁との事。
アンボセリロッジ泊。
部屋は一人部屋であり、アメリカ西部劇の酒場の様な二枚の板で出来た扉の出入口、自家発電の薄暗くなったり、
明るくなったりする電灯は、この野生の原野ではなおさら心許ない。名も知らぬ鳥の声、虫・蛙の声が夜が更け
ても止まない。
外に出ると野獣が、うろついているのではないかと不安になる。
蚊取線香をたき、その匂いで少し落着く。
鳥の声は明け方まで続いていた。
素足で踏み固めた土間が妙に冷たく気持ちが良い。マサイ集落へ向かう途中、フラミンゴで有名な、ナクル湖
へ寄る。岸は一面鳥の糞で真白である。糞が積み重なっている岸辺を歩くと、ふわふわして心許ない。
又新しいライオンの食事跡を見て、みんな恐ろしそうに急いで車に向かう。
マサイマラは、ケニヤ随一の野獣の多い所である。途中で牛糞と粘土で作ったマサイ集落を訪問する。主婦達
が十五人程それぞれ子供を背負い集落の入口で合唱しながら、我々を歓迎してくれた。子ども達が三十∼四十人
位いたが、皆人形の様に可愛い顔をしていた。
集落の周囲を茨で囲い、野獣の侵入を防いでいる。英語を上手に話す賢そうな少年が一人いた。牛との同居生
活である。
この旅で最も野性味のある、マサイマラロッジに到着した。
ジャングルの中に五メートル程の濁った川の流れる薄気味悪い葉陰に、ロッジの食堂があった。食事中、壁の
スクリーンで野生の獣の解説をしている。食堂の窓から見下ろす濁った川の表面に、先程から泡がボコボコ浮き
上がるので、何かと見ていると、野生のカバが二頭突然浮かび上がってきた。
迫力満点であった。
泊るテントは、とても広いが窓がない。
出入口は、流れる川の堤。三メートル位の所にチャックで閉められている。
川にはカバがいたが、ワニもいるらしい。
高さ二∼三メートルの堤を登って来るのではないかと不安であった。
ベットは清潔であり、蚊帳もあり、鏡台・タンス・トイレ・風呂など近代的な家具が揃えてあった。ところが
驚いた事に、風呂の蛇口をひねったところ、水や湯ではなく泥が吹き出てきたのでびっくりする。
しばらく出しっぱなしにしたところ、水や湯になり泥も薄くなってきた。
しかし浴槽いっぱいになっても濁りは消えなかった。入浴したがタオルは泥で染まらないと思ったが、タオル
は緑色に染めてあった。夜中に周囲の広場で、カバ・ワニの散歩する足音がするのではないかと心配だったが、
何事もなく朝を迎えた。
アサンテ・サーナ︵ありがとう︶
ムズーリ・サーナ︵こんにちは︶
ジャンボ
︵こんにちは︶
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