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生工研ニュース
発行日/平成18年7月1日
茨城県農業総合センター
編集・発行/茨城県農業総合センター
生工研ニュース
住所/〒319-0292
生物工学研究所
笠間市安居3165-1
TEL/0299-45-8330
NO.15
ホームページ/
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/seibutsu/
春先から7月にかけて、スーパーの店頭に甘く香りの良いメロン
が出回ります。茨城県の春メロンは、全国一の生産量を誇り、茨
城の顔となる品目です。
生物工学研究所では、県オリジナル品種の育成を目指して、果
実の肥大性が良く、食味の良いメロンの育種に取り組んでいます。
母本の育成、F1系統の選抜を重ねる中で「ネット型露地メロンの
培養系統」×「アールス型メロンの自殖系統」の交配組み合わせ
で育成したF1系統が「ひたち交3号」です。
ひたち交3号の果実
「ひたち交3号」は、果実が「オトメ」と同等以上に大きく、
また糖度が高くさわやかな甘さが特長です。また「オトメ」
「ア
ンデス5号」と同様にネットが密に発生し、外観も良好です。
日持ち性は「オトメ」よりも優れ、肉質は安定しています。
生育、開花は、
「オトメ」よりもやや遅いものの、
「アンデス
5号」よりは早くなります。また着果から収穫までの成熟日数
は「オトメ」と同程度で、「アンデス5号」よりも短くなりま
す。このことから、早出しに向く「オトメ」と、5月中下旬以降出荷の「アンデス5号」の間の5月
上中旬収穫の作型で、果実肥大性の優れる系統として期待されます。
現在、水戸及び鉾田地域農業改良普及センター管内の農家で現地試験を行い、適応性を確認してい
ます。
「ひたち交3号」の果重及び果実品質(平成17年、生工研)
品種名
雌花
着生率
13節
開花日
果実重
(g)
果形比
ネット2)
果肉硬度3)
1)
密度
盛上
(%)
収穫
収穫
3日後
7日後
糖度
(Brix%)
オトメ
95
3/29
1026
0.98
3.3
3.5
0.91
0.46
16.2
アンデス5号
98
4/3
890
1.00
2.8
3.2
1.04
0.74
16.0
ひたち交3号
96
3/30
1075
1.00
3.5
3.7
0.99
0.71
17.0
1)果形比=果高/果径
2)密度:密(5)~粗(1)、盛上:高(5)~低(1)
3)ユニバーサル果実硬度計(木屋・円錐型Φ12mm)による果肉中央部貫入抵抗値
野菜育種研究室
宮城
慎
新しい品種の育成をめざした茨城農業改革実践会議の開催
グラジオラスの新品種育成
平成17年7月19日、グラジオラスの新品種育成をめざした茨城農業改革実践会議を農業
総合センター大研修室および生工研圃場において行政各課、試験研究機関、農業改良普及セ
ンター、生産農家、JA農協等28名の参加により開催
しました。本会議では生工研が育成したグラジオラス
「ひたち8号」や選抜中の系統等についての商品性の
評価や栽培特性について意見をいただきました。その
結果、「ひたち8号」は、市場流通の少ないオレンジ
色の花色と極早生性を有することから高い評価を得
ました。一方、選抜中の系統では今後の需要が期待で
きるアンティーク調など、これまでにない花色の系統
を中心に注目が集まりました。
(果樹・花き育種研究室)
イチゴの新品種育成
平成 17 年 12 月 21 日にイチゴの新品種育成をめざした農業改革実践会議を開催しまし
た。会議は上記同様の関係者 66 名が参加しました。検討会では、新品種「ひたち姫(登録
出願中)」の特性と栽培方法について、
「栽培マュアル」をもとに討議しました。12 月の寒
波の影響で生育が遅れ気味ということもあり、果実肥
大等に関する質問が多く出されました。次に新品種育
成に係る育種の取り組みについて、平成 17 年度の交
配・選抜の状況およびバイテクを用いた品種開発の現
状について説明しました。
その後、参加者の皆様にはあまり立ち入る機会のな
い育種用大型ハウス内において、育成中の様々な選抜
系統を見ながら、担当者を囲んで熱心な話し合いがな
されました。最後に新品種「ひたち姫」の試食会も行
い、最後まで活発な意見交換が行われました。
(イチゴ開発グループ)
平成 18 年度も、メロン(6 月)、小菊、グラジオラス(7 月)、水稲、梨(8 月)、大豆(10 月)、
イチゴ(12 月)について同様な会議を開催し、育種の早い段階から消費者、実需者、生産者等
からのご意見をいただき、効率的に優良品種の育成を進めてまいりますので、ご協力の程よ
ろしくお願い致します。
平成 18 年度 新規研究課題の紹介
色大豆品種育成に取り組みます
納豆は茨城県の特産品であり、本県の大豆生産量の約半分は納豆品種である「納豆小粒」が占めて
います。近年の健康ブームから納豆の機能性が注目されており、その原料として「納豆小粒」だけで
なく様々な品種が使用されています。当研究所では新規性や機能性といった付加価値のついた納豆用
原料大豆として、小粒の色大豆の育成を行うことになりました。(独法)農業生物資源研究所ジーンバ
ンクから種皮色が緑・黒・茶で小粒の大豆を選抜し、茨城県工業技術センター、県内納豆加工業者と
協力して納豆加工適性の高い品種を育成する予定です。
(普通作育種研究室
岡野克紀)
加工・業務用メロン品種育成に取り組みます
量販店では「カットフルーツ」等の新たな商材が人気を集めており、今後とも需要は拡大傾向と考
えられます。しかし、従来の品種では「栽培コスト」「加工適性」の面で対応が難しく、パック詰め
のカットフルーツには「ハネデュー」等の輸入品が多く用いられています。これらの品種は加工適性
には優れますが、最も重要な食味の点で劣るため、実需者からは加工適性に優れた国産品種が強く求
められています。当研究所では、これまで省力的な栽培を可能とする「短側枝性」および「うどんこ
病抵抗性」の育種素材の開発を進めてきました。そこで、これらの省力化育種素材を活用してカット
フルーツ等の業務用需要にも対応できる新品種を育成します。育成にあたって、園芸研究所メロング
ループと連携を取りながら、優良系統をいち早く現場に提供できるように育種を進めていきます。
(野菜育種研究室
宮城
慎)
バラの新品種育成に取り組みます
茨城県におけるバラは県花であるとともに、切り花の産出額が約5億円の重要な品目となっていま
す。当研究所では、新規課題として「本県オリジナルバラ品種の育成」に取り組みます。今日の切り
花の販売は、従来の一般小売店に加えてスーパーマーケットなどでも小さな花束やアレンジメントの
販売が拡大し、業務用から家庭で飾られるホームユース用が徐々に拡大しています。このような中で
より花持ちのよい品種が求められており、今回の品種育成においては、花持ち性を1つの育種目標に
しました。茨城県の顔となるオリジナル品種の育成にご期待ください。
(果樹・花き育種研究室 鈴木一典)
微生物を用いたアザミウマの防除技術に取り組みます
アザミウマ等の微小害虫は狭い場所に生息し、世代間隔が短いことなどから薬剤散布に
よる防除が困難であり、化学農薬の多数回散布により薬剤が効かなくなってきています。また、消費
者からは化学農薬の使用をできるだけ少なくした、安全、安心な農産物の生産が求められています。
当研究所では、アザミウマに特異的に寄生する微生物(カビ)を選抜してきました。平成 18 年度か
ら5年間で、今までに選抜したカビを用いて、ピーマン等で発生するアザミウマの防除に効果が高い
処理方法を検討するとともに、民間企業と共同して選抜したカビを微生物農薬として開発します。
(生物防除研究室
木村貴好)
新スタッフ紹介
平山正賢 普通作育種研究室
仕事ができるようがんばりたいと思います。
3年ぶりに普通作育種研
手塚孝弘
究室に戻りました。水稲
メロンのつる割病抵抗性に関し
育種を担当します。生産
て、DNA マーカーを用いた研究
者、消費者の皆様の要望
を行っています。 分からないこ
にかなう品種を育成できるようがんばりますの
とばかりで大変な毎日ですが、
で、よろしくお願いします。
早く慣れるようにがんばりたい
宮本勝
究室
普通作育種研
野菜育種研究室(流動研究員)
と思います。 よろしくお願い致します。
普通作育種は 4 年ぶりと
小林由美
員)
なり、以前に担当していた
研究の仕事は実に 15 年ぶりです。身体が思い
陸稲の試験がほぼないた
出せる事は思い出して、足りない部分は物覚え
め、ちょっとさびしいです。今年度より大豆と
が悪い頭で勉強したいと思います。一年間どう
サツマイモを担当することとなり、皆様にはご
ぞよろしくお願いします。
迷惑をおかけすることと思いますが、よろしく
木村貴好
お願いします。
生物防除研究室(生物工学研究
生物防除研究室(流動研究員)
生物防除研究室で、アザミウマ防除
喜多晃一 果樹・花き
育種研究室(育休任期付
職員)
に有効な天敵糸状菌に関する研究を
1年間、カーネーション
り深い仕事ができることを嬉しく思
行います。今までも環境保全と農業
に携わる仕事をしていましたが、よ
います。よろしくお願いいたします。
の新品種育成を担当する
ことになりました。短い期間ですが、前任者か
らの仕事をしっかり引き継いで、次につながる
陸稲育種指定試験が終了しました。
本県は、昭和 4 年から平成 17 年まで 77 年間陸稲育種の指定試験地として存続してきましたが、
平成 18 年 3 月を持って終了することになりました。この間、全国で 70%以上の作付け面積を占め
る「トヨハタモチ」など 28 品種を育成してきました。平成 17 年度には早生の多収品種「ひたちは
たもち」を命名登録しました。また、平成 15 年度には、日本育種学会から「トヨハタモチ」と「ゆ
めのはたもち」の育成に対して日本育種学会賞を受賞しました。このように多くの成果を上げてきた
陸稲育種事業でありましたが、時代の流れとともに終了することを残念に思っております。
3月末、当所で所有していた陸稲種子を(独法)農業生物資源研究所ジーンバンクに搬入しました。
これまでの本県の陸稲育種に携わってきたすべての方々に敬意を表すとともに、陸稲育種指定試験に
対するこれまでの関係機関の支援に謝意を表し、陸稲育種の終了を報告します。
茨城県農業総合センター
生物工学研究所
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