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平成 21 年度 社会工学類都市計画専攻 卒業研究中間発表会
東京 23 区における分譲
における分譲マンション
分譲マンション価格波及
マンション価格波及の
価格波及の時系列分析
1.背景・目的
東京都政策報道室調査部(1999)では、1983 年から
1999 年にいたる東京 23 区内の地価において、地価変動
の波及構造を分析している。このなかで、地価上昇局面
において地価上昇は都心部からはじまり区部南西部へ
波及し、地価下落局面において地価下落は区部南西部か
ら都心部へと波及していったことが認められた。
また、東京 23 区と埼玉、千葉、神奈川についての中古
分譲マンション価格を分析した隅田(2006)では、分譲マ
ンション価格の波及が東京都区部から埼玉、千葉、神奈
川各方面へ広がっていったことが認められたが、23 区
内の分譲マンション価格についての波及は検証されて
いない。東京 23 区の地価と、首都圏の中古分譲マンシ
ョンにおいては価格の波及が認められたが、東京 23 区
における新築分譲マンション価格については、物件価格
の波及が認められるのであろうか。また、東京都政策報
道室調査部(1999)で観察されるような、価格の上昇局
面・下落局面における価格波及方向の変化は見られるの
であろうか。以上を踏まえた上で、東京 23 区内におけ
る新築分譲マンション価格の波及構造を分析する。
2.使用データ
使用するデータは不動産データバンクの MRC によ
る 1996 年 3 月~2008 年6月の大規模分譲マンション
データである.分譲マンションの価格、間取り、最寄り
駅情報など 59 項目に分かれており、標本数は約 39 万
戸である。
3.分析の視点・手法
3-1 空間・時間の分割
空間方向の分割は「エリア単位での分割・区単位での
分割・鉄道沿線単位での分割」、時間方向の分割は「す
べての期間・景気循環を考慮した分割・再開発などイベ
ントを考慮した分割」などが挙げられるが、今回は住宅
インデックスフォーラム{アットホーム(株),(株)ケ
ン・コーポレーション,調査協力:日本不動産研究所}
のエリア分割(図1)と東京都政策報道室調査部(1999)
(図 2)を参考にしたうえで、同じ傾向を示す区をまと
め東京 23 区を 7 つのエリアに分割した。
(図 3)
2009/12/02
不動産・空間計量研究室 200610984:金子賢太郎
指導教員 堤盛人
3-2 ヘドニックアプローチを用いた価格指数作成
分譲マンションは、同じ物件が毎年取引されるわけで
はなく、また一般的に分譲マンション価格は 1LDK より
も 3LDK のほうが価格が高いなど、その物件の属性によ
って大きく左右される。そのため、各エリアを代表し、
品質を調整した分譲マンション価格指数の作成が必要
となる。7 つのエリアそれぞれにおいてヘドニックアプ
ローチに基づき、推定モデルを用いての価格指数を作成
した。
推定モデルは以下
ln P = a0 + ∑ a1h X h + ∑a2h Zi + ∑ a4k TDk + ε
h
i
k
住戸の分譲価格価(万円)を被説明変数(P)におき,
説明変数には専有面積や住戸タイプなどのマンション
属性(X)に加え,地震危険度などマンションをとりま
く環境に関する変数(Z)も使用した。本研究で使用し
た変数のうち,渋谷駅までの距離,MAJOR7 ダミー,
地震危険度はあまり一般的に用いられる変数ではない
ので,これらについて説明する.渋谷駅までの距離は,
23 区乗降客数上位5駅までの距離データを用いた推定
により比較し,最も説明力の高い渋谷駅を採択した.す
なわち都心までの距離の代替指標である。MAJOR7 ダ
ミーはそのマンションの事業主が MAJOR7(大手マン
ションディベロッパー8社)であれば1とするダミー変
数である.四半期ダミー(TD)を加え,エリアごと全
期間のデータを用いた推定を行った。四半期ダミーの係
数のみを抽出し、exp(四半期ダミーの係数)とすること
で価格指数を作成した。
価格指数の時系列推移をプロットした(図 4)による
と、2002 年から 2005 年にかけて North (北区・板橋区・
練馬区)と SS(新宿区・渋谷区)の間の相関が強くなっ
ていることが見て取れる。2005 年から 2008 年では、
BTT(文京区・豊島区・台東区)と SS(新宿区・渋谷
区)の間の相関が強くなっている。これらのエリアにお
いては価格指数の推移から波及(一方向の相関)が存在
するのではないかと推察できる。次章以降では実際に価
格波及があるのか、またあるとすればどういった波及な
のかを時系列分析を用いて定量的に把握することとす
る。
モデルを用いた波及構造の分析
時系列分析における典型的な検定(単位根・共和分関
係)を行った後、VEC モデルを選択した。VEC モデルと
は経済変数間の時間を通じた関係を捉えるモデルであ
る。変数間の定常性を仮定する。以下に VEC モデルの
概要を示す。
(Ct:t期 Center, St:t期 South, Nt:t期 North,Et:t
期 East, Wt:t期 West, SSt:t期 SS, BTTt:t期 BTT)
考察
南西部から価格の波及が始まる要因について考える。
南西部は人気のあるエリアのため、上昇局面では他のエ
リアに先駆けて反応する。また、高い価格をつけられる
物件が多く、下落局面では値崩れしやすい。
以上 2 点により、南西部からの波及が始まったと考えら
れる。
7.今後の課題
空間方向と時間方向両面において、分割方法を模索す
る。例えば、空間方向では各鉄道沿線に存在する物件で
の分割や、時間方向では景気循環を考慮した分割などで
ある。また、物件のタイプ別(1LDK、2LDK)によって
も、波及構造が変化するのか検討する必要がある。
6.
4.
∆Ct −1  uCt 
∆Ct 
Ct −1 
∆N
 

∆N 
N

 t 
 t −1 
 t −1  u Nt 
∆Et 
 Et −1 
∆Et −1  u Et 





 

∆St  = A1  St −1  + A2 ∆St −1  + u St 
∆W
 u 
∆W 
W

 t 
 t −1 
 t −1   Wt 
SS
SS
∆
∆
SS

 t −1 

u SSt 
t 
t −1 
∆BTT 
 BTT 
∆BTT  u 
t
t −1 
t −1 



 BTTt 
によりパラメータ A1・A2を推定する。
参考文献
価格の波及を観測するため、行列を書き換えると以下の ・隅田和人(2006),「東京大都市圏における単一中心
ようになる。
都市圏仮説と波紋効果の検証」,『計量経済学のフロ
C   0.73 − 0.07 − 0.30 0.93* 1.12* − 0.04 0.35 C

ンティア』,pp165-194,慶應義塾大学出版会
N  
N


0
.
16
0
.
51
−
0
.
32
0
.
02
0
.
30
−
0
.
01
0
.
43
 
 ・住宅インデックスフォーラム(2008), NewsRelease,



 E  − 0.01 0.13
0.28 − 0.02 0.30 − 0.28 0.54  E


 

アットホーム株式会社,株式会社ケン・コーポレーシ

 S  =  0.03 − 0.09 − 0.31 0.57 − 0.14 0.23 0.29  S

W   0.09 − 0.04 − 0.18 − 0.07 0.60 − 0.10 0.43 W
ョン,調査協力:財団法人日本不動産研究所,

 


0
.
04
−
0
.
09
−
0
.
74
−
0
.
41
0
.
09
0
.
30
0
.
90
 SS  
*SSBTT  ( http://www.reinet.or.jp/up_pdf/1222842010-2008
*
 BTT   0.09 − 0.11 0.25 − 0.42 0.07
0
.
29
0
.
97





1001NEW.pdf)
C
 u 
N
 u 
・東京都政策報道室調査部(1999),「バブル期から現

 

E
 u 
在に至る東京の土地市場の多角的分析」

 

−A S
+ u
OLS
t
t −1
t
t −1
t
t −1
t
t −1
t −1
t
t −1
t
t −1
t
t −2
Ct
t −2
Nt
t −2
2
 t −2 
W

 t −2 
 SS t − 2 
 BTT 
t −2 

Et
 St 
u 
 Wt 
u SSt 
u 
 BTTt 
%水準有意:*)
波及の有意性検定を行う。推定で求めたパラメータが有
意に 0 でないかを検定する。検定には F 検定を用いた。
5,結果
パラメータ推定より、 South( 品川区・大田区 ) と
West(世田谷区・杉並区・目黒区・中野区)から Center(千
代田区・中央区・港区)に向けての分譲マンション価格
の波及が確認された。(図 6)
ここで、23 区全体の分譲マンション価格指数の推移を
確認する。(図 5)より、景気拡大を背景とした価格指数
の上昇が確認でき、1996 年~2002 年は下落局面、2002
年~2008 年は上昇局面として期間を分割し、分析を行
った結果が(図 6),(図(7)である。1996 年~2008 年の期
間において、区部南西部から都心部への価格波及が認め
られた。特に下落局面においては東京都政策報道室調査
部(1999)の地価波及と同様である。
(95
図1 住宅インデックスフォーラム分割方法
図2 東京都(1999)分割方法
BTT
North
SS
図3
東京 23 区エリア分割
図4
単純平均
価格指数時系列推移
景気拡大
品質調整済み
品質調整済み価格指数
下落局面
図 5 23 区全体における価格指数の推移
上昇局面
図 6 1996 年~2008 年
図 7 1996 年~2002 年
図 8 2002 年~2008 年
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